無線送受信装置および方法
【課題】フェーズドアレイアンテナの量子化ローブのエネルギ平均値を低減することができる無線送受信装置および方法を提供する。
【解決手段】送信機が、複数回電波を放射する送信信号発生器を含み、受信機が、アンテナ素子とアンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器とを含むフェーズドアレイアンテナと、指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器と、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む。
【解決手段】送信機が、複数回電波を放射する送信信号発生器を含み、受信機が、アンテナ素子とアンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器とを含むフェーズドアレイアンテナと、指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器と、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線送受信装置および方法に係り、特に、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方にフェーズドアレイアンテナを使用する無線送受信装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ等の無線送受信装置にあっては、アンテナの指向性を電気的に制御可能なフェーズドアレイアンテナが使用されるようになってきている。
フェーズドアレイアンテナは、1次元あるいは2次元的に配列されたアンテナ素子ごとに所定の位相差で給電することにより、全体として所定の指向性を有することとなる。
【0003】
このため、フェーズドアレイアンテナでは、位相を調整するための移相器をアンテナ素子ごとに設置する必要があるが、移相器としていわゆるデジタル移相器を適用した場合には、指向特性に量子化ローブが生じることが知られている。
【0004】
量子化ローブを含むサイドローブは、所望の方向(メインローブの方向)以外の方向にも感度を有することとなり、無線送受信装置をレーダとして使用した場合には誤探知の原因となるので、フェーズドアレイアンテナにおいては量子化ローブを低減することが重要となる。
【0005】
量子化ローブを低減するためには、移相器の量子化ビット数を増加することが有効であるが、多段階に移相を制御することのできる移相器は構成が複雑となるだけでなく、経済性も悪化してしまう。
このため、できる限り少ない量子化ビットの移相器を使用して量子化ローブを低減することが望ましく、従来から種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
すなわち、特許文献1に開示された発明では、各アンテナ素子の移相器で理想位相値にランダムな位相値を加算した移相を付与し、量子化ローブの周期的な規則性を乱すことにより量子化ローブを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−236740号公報([0008]〜[0009]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、量子化ローブのエネルギを分散させているに過ぎず、量子化ローブのエネルギの平均値は変化しない。
このため、新たな方向に感度が発生するおそれがあり、レーダにあっては、特に多数のターゲットが存在する場合は、新たな誤探知の原因となるおそれもある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、フェーズドアレイアンテナの量子化ローブのエネルギ平均値を低減することができる無線送受信装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る無線送受信装置は、電波を放射する送信機と、送信機から放射された電波を受信する受信機と、から成る無線送受信装置であって、
前記送信機および前記受信機の少なくとも一方の機器が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを備え、
前記フェーズドアレイアンテナを備えた前記一方の機器が、前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部を含み、
前記送信機が、前記複数回数電波を放射する送信信号発生器を含み、
前記受信機が、受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
本発明に係る無線送受信装置によれば、フェーズドアレイアンテナの量子化ローブのエネルギ平均値を低減することができることとなる。
【0011】
本発明に係る無線送受信装置は、前記受信機が前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である構成を有している。
【0012】
本発明に係る無線送受信装置は、前記送信機が前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である構成を有している。
【0013】
本発明に係る無線送受信装置は、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含む送受信用フェーズドアレイアンテナと、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナから前記複数回数電波を放射する送信信号発生器と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナで受信された受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
【0014】
本発明に係る無線送受信方法は、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方に、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを使用する送受信方法であって、
前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御段階と、
前記複数回数電波を放射する送信信号発生段階と、
受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正段階と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成段階と、から成る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る無線送受信装置および方法によれば、フェーズドアレイアンテナに量子化ビット数の小さいデジタル移相器を適用した場合であっても、量子化ローブのエネルギ平均値を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】1次元フェーズドアレイアンテナの模式図である。
【図2】シミュレーション実験に使用したフェーズドアレイアンテナであるリフレクトアレイアンテナの概略図および緒元である。
【図3】フェーズドアレイアンテナのビーム指向方向をブロードサイド方向、オフセット位相値を零とした場合のビームパターンである。
【図4】メインビームの方向をブロードサイド方向、オフセット位相値をπ/2とした場合のビームパターンである。
【図5】オフセット位相値が零のときのビームパターンとオフセット位相値をπ/2としたときのビームパターンとをオフセット位相値を補正した後にコヒーレント合成したビームパターンである。
【図6】オフセット位相値をΔP=π/20ごとに零からπ/2まで11段階に変更して得られたビームパターンをオフセット補正した後コヒーレント合成したビームパターンである。
【図7】量子化ビットmを"1"とした場合の繰り返し処理回数と平均サイドローブレベルの関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る無線送受信装置の第1の実施例である第1のレーダ装置のハードウエア構成を示すブロック線図である。
【図9】レーダ制御プログラムのフローチャートである。
【図10】移相器制御処理のフローチャートである。
【図11】1つのデジタル移相器の一例を示すブロック図である。
【図12】受信処理のフローチャートである。
【図13】本発明に係る無線送受信装置の第2の実施例である第2のレーダ装置のハードウエア構成を示すブロック線図である。
【図14】本発明に係る無線送受信装置の第3の実施例である第3のレーダ装置のハードウエア構成を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず本発明に係る無線送受信装置および方法の基本的な考え方を説明する。
図1は、1次元フェーズドアレイアンテナの模式図であって、アンテナ素子1n(n=1、2・・・N)をX軸方向に間隔dごとにN個配置した構成を有する。
なお、フェーズドアレイアンテナは送信アンテナとして使用されるものとして説明するが、受信アンテナとして使用される場合であっても考え方は同じである。
N個のアンテナ素子に同位相で給電すれば、フェーズドアレイアンテナはY軸方向の指向性を有する。
【0018】
フェーズドアレイアンテナのビーム指向方向をY軸に対してθ傾けるためには、アンテナ素子1nを伝播する信号に対して、[数1]で算出される位相φn(以下「理想位相値」と呼ぶ)を付与することが必要となる。
【0019】
【数1】
【0020】
しかし、デジタル移相器では位相を連続的に変更することはできず、量子化ビットがmである場合には、付与できる位相は(2π/2m)刻みでしか制御できない。
前述したように、量子化ローブを低減するには、量子化ビットmを大きくすることが本来的な解決方法であるが、多段階に位相を制御可能なデジタル移相器は構成が複雑となり、経済性も悪化する。
【0021】
本発明にあっては、量子化ビットmが少ない(例えば"1")場合であっても量子化ローブの平均エネルギを低減できるように、理想位相値φnとオフセット位相値Poの和であるオフセット理想位相値ψn(=φn+Po)に基づいてデジタル移相器の制御信号を生成することにより、量子化ローブの平均エネルギを低減するようにしている。
【0022】
なお、量子化ビットは"1"とし、オフセット理想位相値ψnが0≦ψn<πである場合は移相器でπ/2の位相を付与し、オフセット理想位相値ψnがπ≦ψn<2πである場合は3π/2の位相を付与するものとする。
たとえば、理想位相値φnがπ/4、オフセット位相値Poがπ/6である場合は、オフセット理想位相値ψnは5π/12(<π)となり、オフセット位相値Poが零の場合と同じく受信信号にπ/2の位相が付与されるので、量子化誤差QE(φn,Po)は[数2]で算出されるようにπ/12となる。
【0023】
【数2】
【0024】
なお、オフセット位相値Poが零の場合の量子化誤差は、π/4である。
理想位相値φnがπ/4であっても、オフセット位相値Poが5π/6である場合は、オフセット理想位相値ψnは13π/12(>π)となり、受信信号に3π/2の位相が付与されるので、量子化誤差QE(φn,Po)は[数3]で算出されるように5π/12となる。
【0025】
【数3】
【0026】
このことは、デジタル移相器を適用した場合には、理想位相値φnが一定であってもオフセット位相値Poを変更すると、量子化誤差が変化するため、量子化ローブのパターンも変動することを示している。
【0027】
したがって、送信機でオフセット位相値Poの送信信号を送信し、受信機でオフセット位相値を補正した後の受信信号を記憶する送受信操作を複数のオフセット位相値Poについて実行し、複数のオフセット位相値Poに対応する複数の受信信号をコヒーレント合成することにより、量子化ローブレベルの平均値を低減できるものと予測できる。
【0028】
ここで、受信後にオフセット位相値Poの補正を行う理由は、コヒーレント合成するときに、メインローブで受信した信号が同相で合成されるように、送信時に加算したオフセット位相値Poを受信信号の位相から減算する必要があるからである。
【0029】
上記のことを確認するために以下のシミュレーション実験を行った。
図2はシミュレーション実験に使用したフェーズドアレイアンテナであるリフレクトアレイアンテナの概略図および緒元である。
リフレクトアレイアンテナは、1次放射器から放射された電波を各アンテナ素子が反射するが、アンテナ素子ごとに設置される移相器によりアンテナ素子から放射される反射波の位相を変更できる構成となっている。
【0030】
図3はフェーズドアレイアンテナのビーム指向方向をブロードサイド方向(アジマス(Az)=0度、エレベーション(El)=0度)、オフセット位相値Poを零とした場合のビームパターンであって、(イ)は2次元表示されたビームパターンを、(ロ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
【0031】
図4はメインビームの方向をブロードサイド方向(アジマス(Az)=0度、エレベーション(El)=0度)、オフセット位相値Poをπ/2とした場合のビームパターンであって、(ハ)は2次元表示されたビームパターンを、(ニ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
【0032】
図3と図4とを比較すると、メインローブ以外の量子化ローブを含むサイドローブのパターンは相違している。すなわち、理想位相値φnが同じであっても、オフセット位相値Poを変更すれば、サイドローブパターンを変更できることがシミュレーション実験により確認されたこととなる。
なお、オフセット位相値Poが零およびπ/2のときの平均サイドローブレベル(量子化ローブを含む)は、それぞれ−28.8dB、−28.7dBである。
【0033】
図5は、オフセット位相値Poが零のときのビームパターンとオフセット位相値Poをπ/2としたときのビームパターンとをオフセット位相値Poを補正した後にコヒーレント合成したビームパターンであり、(ホ)は2次元表示されたビームパターンを、(ヘ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
【0034】
この場合の平均サイドローブレベルは−37.0dBであり、図3および図4に比べ約8dB低減している。すなわち、オフセット位相値Poの相違する受信信号をオフセット位相値の補正後にコヒーレント合成することによって、平均サイドローブレベルを低減できることがシミュレーション実験により確認されたこととなる。
【0035】
図6は、オフセット位相値PoをΔP=π/20ごとに零からπ/2まで11段階に変更して得られたビームパターンをオフセット補正した後コヒーレント合成したビームパターンであって、(ト)は2次元表示されたビームパターンを、(チ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
この場合の平均サイドローブレベルは−44.7dBであり、図3および図4に比べ約16dB、図5に比べて約8dB低減している。
【0036】
そして、図7は量子化ビットmを"1"とした場合の繰り返し処理回数と平均サイドローブレベルの関係を示すグラフであって、繰り返し回数を増加するに従って、アナログ移相器を用いて理想位相値を付与して指向性を形成したときの平均サイドローブレベル−45.7dBに漸近していることが判る。
【0037】
以上から、送信機でオフセット位相値Poの送信信号を送信し、受信機でオフセット位相値を補正した後の受信信号を記憶する送受信操作を複数のオフセット位相値Poについて実行し、複数のオフセット位相値Poに対応する複数の受信信号をコヒーレント合成することにより、量子化ローブレベルの平均値を低減できることがシミュレーション実験により確認された。
【実施例1】
【0038】
本発明に係る無線送受信装置の第1の実施例である第1のレーダ装置3は、受信機が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、アンテナ素子ごとに設けられ、アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナと、フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えたオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含み、送信機が、複数回電波を放射する送信信号発生器を含む構成を有している。
【0039】
図8は、本発明の第1の実施例である第1のレーダ装置3のハードウエア構成を示すブロック線図である。
フェーズドアレイアンテナ4は、ターゲットで反射された電波を受信信号として受信する受信アンテナとして使用され、受信電波を受信する1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子41、アンテナ素子41ごとに配置され、受信信号の位相を所定量変更する複数のデジタル移相器42、およびデジタル移相器42で位相が変更された受信信号を合成して出力する合成器43から構成されている。
【0040】
フェーズドアレイアンテナ4から出力される受信信号は、受信信号増幅回路31で増幅されたのち、局部発信信号発生回路32で発生された局部発信信号と混合回路33で混合されて中間周波信号に変換され、デジタル処理部5に出力される。
なお、送信信号発生器34が発生した送信信号は、送信信号増幅回路35で増幅され、送信アンテナ36から空中に放射される。
【0041】
デジタル処理部5は、マイクロプロセッサシステムであり、バス51に、レーダ制御プログラムを実行するCPU52、レーダ制御プログラムおよびCPU52の演算結果を記憶するメモリ53、デジタル移相器42および送信信号発生器34に対する制御信号を出力する制御信号インターフェイス(以下「I/F」と記す)54、混合回路33から出力される中間周波信号に変換された受信信号をデジタル信号に変換するA/D変換器55、およびデジタル処理部5での処理結果をたとえば影像信号として出力する出力I/F56が結合された構成を有する。
そして、デジタル移相器制御部、オフセット補正部およびコヒーレント合成部はデジタル処理部5の中にソフトウエア的に構成される。
【0042】
なお、出力I/F56には、たとえば液晶パネルである表示器37が接続されており、第1のレーダ装置3の補足したターゲットの画像を表示するために使用される。
【0043】
図9は、デジタル処理部5で実行されるレーダ制御プログラムのフローチャートである。
CPU52は、まず、初期化処理を実行(ステップS91)する。
初期化処理では、オフセット位相値Poを初期値の零とするほか、メモリ53の一部に構成される受信信号メモリをリセットする。
CPU52は、次に、[数1]を用いて理想位相値φnを算出(ステップS92)する。
そして、CPU52は、移相器制御処理を実行(ステップS93)する。
【0044】
図10は、移相器制御処理のフローチャートであって、CPU52は理想位相値φnにオフセット位相値Poを加算して、オフセット理想位相値ψnを算出(ステップS931)する。
さらに、CPU52はオフセット理想位相値ψnに基づいて移相器制御信号を生成(ステップS932)する。
【0045】
前述した量子化ビットが"1"の移相器を使用する場合には、移相器制御信号Cpは、0≦ψn<πの場合には"0"と、π≦ψn<2πの場合には"1"となるものとする。
最後に移相器制御信号Cnを制御信号I/F54を介して、デジタル移相器42に出力(ステップS933)する。
【0046】
図11は、1つのデジタル移相器42n(n=1,2・・・N)の一例を示すブロック図であって、アンテナ素子41nは第1の切換え器421のc端子421cに接続されている。
また、第2の切換え器422のc端子422cは、合成器43に接続されている。
【0047】
第1の切換え器421のa端子421aと第2の切換え器422のa端子422aの間は、伝搬する信号の位相をπ/2遅らすことのできる遅延線423で接続されている。
第1の切換え器421のb端子421bと第2の切換え器422のb端子422bの間は、伝搬する信号の位相を3π/2遅らすことのできる遅延線424で接続されている。
【0048】
第1の切換え器421および第2の切換え器422は、切換え制御回路425から送られる切換え信号によって制御され、切換え信号が"0"の場合は第1の切換え器421および第2の切換え器422のa端子とc端子とが導通する状態となり、切換え信号が"1"の場合は第1の切換え器421および第2の切換え器422のb端子とc端子とが導通する状態となるように構成されている。
【0049】
そして、制御信号I/F54を介して出力される移相器制御信号Cnは、切換え制御回路425に供給される。
したがって、移相器制御信号Cnが"0"の場合はアンテナ素子41nで受信された受信信号の位相はπ/2遅延され、移相器制御信号Cnが"1"の場合はアンテナ素子41nで受信された受信信号の位相は3π/2遅延されることとなる。
【0050】
図9のレーダ制御プログラムにもどって、CPU52は、制御信号I/F54を介して送信信号発生器34に送信開始信号を出力する送信処理を実行(ステップS94)する。
すると、送信信号発生器34で生成された送信信号は、送信信号増幅回路35で増幅されたのち、送信アンテナ36から電波として放射される。
次に、CPU52は、受信処理を実行(ステップS95)する。
【0051】
図12は、受信処理のフローチャートであって、CPU52は、中間周波信号に変換された入力信号を順次読み込む(ステップS951)。
次に、CPU52は、入力信号の位相からオフセット位相値Poを減算して、オフセット補正(ステップS952)を行う。
【0052】
そして、CPU52は、オフセット補正後の入力信号を受信信号メモリにすでに記憶されている入力信号とコヒーレント的に合成して受信信号メモリに記憶(ステップS953)してこの処理を終了する。
図9のレーダ制御プログラムに戻って、CPU52は、オフセット位相値P0に予め定めた増量ΔPを加算(ステップS96)し、オフセット位相値P0が2π/2m以上となったか否かを判定(ステップS97)する。
量子化ビットmが"1"である場合には、オフセット位相値P0がπに到達するまでステップS93からS95までの処理を繰り返す。
【0053】
CPU52は、オフセット位相値P0が2π/2m未満であると判断したときは、ステップS93の処理に戻る。
CPU52は、オフセット位相値P0が2π/2m以上となったと判断したときは、受信信号メモリに記憶されている情報を出力I/F56を介して表示器37に出力(ステップS98)して、レーダ制御プログラムを終了する。
【実施例2】
【0054】
本発明に係る無線送受信装置の第2の実施例である第2のレーダ装置6は、送信機が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、アンテナ素子ごとに設けられ、アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナと、フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えたオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、複数回電波を放射する送信信号発生器と、を含み、受信機が、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
【0055】
図13は、本発明の第2の実施例である第2のレーダ装置6のハードウエア構成を示すブロック線図であって、第1のレーダ装置3とは、フェーズドアレイアンテナ4が送信アンテナとして使用され、ターゲットで反射された電波は受信アンテナ38により受信される点が相違する。
よって、第1のレーダ装置3と同一の要素は同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
ハードウエア構成における第1のレーダ装置3との相違点は、フェーズドアレイアンテナ4が送信信号増幅回路35に接続されており、受信信号増幅器31には受信アンテナ38が接続されていることである。
なお、デジタル処理部5で実行されるレーダ制御プログラムには変更はなく、動作も同じであるので説明を省略する。
【実施例3】
【0057】
本発明に係る無線送受信装置の第3の実施例である第3のレーダ装置7は、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、アンテナ素子ごとに設けられ、アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナと、フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えたオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、複数回電波を放射する送信信号発生器と、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
【0058】
図14は、本発明の第3の実施例である第3のレーダ装置7のハードウエア構成を示すブロック線図であって、第1のレーダ装置3とは、フェーズドアレイアンテナ4が送受信共用である点が相違する。
よって、第1のレーダ装置3と同一の要素は同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
ハードウエア構成における第1のレーダ装置3との相違点は、フェーズドアレイアンテナ4の合成器43の後段にアンテナ共用器61が設けられており、受信信号増幅器31および送信信号増幅器35がアンテナ共用器61に接続されていることである。
デジタル処理部5で実行されるレーダ制御プログラムも第1のレーダ装置3用とほとんど同じであるが、フェーズドアレイアンテナ4を送受信に使用しているために、図12の受信処理のステップS952のオフセット補正で、受信信号の位相から"2P0"を減算する点のみが相違する。
【0060】
以上、本発明に係る無線送受信装置をレーダ装置に適用した実施例について説明したが、本発明に係る無線送受信装置を通信装置として適用できることは当業者にとって明らかである。ただし、オフセット位相値Poの増量および増量の回数をプロトコルとして取り決めておくことが必要とある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、フェーズドアレイアンテナを使用した無線送受信装置および方法において、デジタル移相器を使用したときに不可避的に発生する量子化ローブの平均レベルを低減する上で極めて有用であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0062】
3:第1のレーダ装置
5:デジタル処理部
6:第2のレーダ装置
7:第3のレーダ装置
31:受信信号増幅器
32:局部発信信号発生回路
33:混合回路
34:送信信号発生器
35:送信信号増幅器
36:送信アンテナ
37:表示器
38:受信アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は無線送受信装置および方法に係り、特に、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方にフェーズドアレイアンテナを使用する無線送受信装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ等の無線送受信装置にあっては、アンテナの指向性を電気的に制御可能なフェーズドアレイアンテナが使用されるようになってきている。
フェーズドアレイアンテナは、1次元あるいは2次元的に配列されたアンテナ素子ごとに所定の位相差で給電することにより、全体として所定の指向性を有することとなる。
【0003】
このため、フェーズドアレイアンテナでは、位相を調整するための移相器をアンテナ素子ごとに設置する必要があるが、移相器としていわゆるデジタル移相器を適用した場合には、指向特性に量子化ローブが生じることが知られている。
【0004】
量子化ローブを含むサイドローブは、所望の方向(メインローブの方向)以外の方向にも感度を有することとなり、無線送受信装置をレーダとして使用した場合には誤探知の原因となるので、フェーズドアレイアンテナにおいては量子化ローブを低減することが重要となる。
【0005】
量子化ローブを低減するためには、移相器の量子化ビット数を増加することが有効であるが、多段階に移相を制御することのできる移相器は構成が複雑となるだけでなく、経済性も悪化してしまう。
このため、できる限り少ない量子化ビットの移相器を使用して量子化ローブを低減することが望ましく、従来から種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
すなわち、特許文献1に開示された発明では、各アンテナ素子の移相器で理想位相値にランダムな位相値を加算した移相を付与し、量子化ローブの周期的な規則性を乱すことにより量子化ローブを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−236740号公報([0008]〜[0009]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、量子化ローブのエネルギを分散させているに過ぎず、量子化ローブのエネルギの平均値は変化しない。
このため、新たな方向に感度が発生するおそれがあり、レーダにあっては、特に多数のターゲットが存在する場合は、新たな誤探知の原因となるおそれもある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、フェーズドアレイアンテナの量子化ローブのエネルギ平均値を低減することができる無線送受信装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る無線送受信装置は、電波を放射する送信機と、送信機から放射された電波を受信する受信機と、から成る無線送受信装置であって、
前記送信機および前記受信機の少なくとも一方の機器が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを備え、
前記フェーズドアレイアンテナを備えた前記一方の機器が、前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部を含み、
前記送信機が、前記複数回数電波を放射する送信信号発生器を含み、
前記受信機が、受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
本発明に係る無線送受信装置によれば、フェーズドアレイアンテナの量子化ローブのエネルギ平均値を低減することができることとなる。
【0011】
本発明に係る無線送受信装置は、前記受信機が前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である構成を有している。
【0012】
本発明に係る無線送受信装置は、前記送信機が前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である構成を有している。
【0013】
本発明に係る無線送受信装置は、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含む送受信用フェーズドアレイアンテナと、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナから前記複数回数電波を放射する送信信号発生器と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナで受信された受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
【0014】
本発明に係る無線送受信方法は、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方に、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを使用する送受信方法であって、
前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御段階と、
前記複数回数電波を放射する送信信号発生段階と、
受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正段階と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成段階と、から成る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る無線送受信装置および方法によれば、フェーズドアレイアンテナに量子化ビット数の小さいデジタル移相器を適用した場合であっても、量子化ローブのエネルギ平均値を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】1次元フェーズドアレイアンテナの模式図である。
【図2】シミュレーション実験に使用したフェーズドアレイアンテナであるリフレクトアレイアンテナの概略図および緒元である。
【図3】フェーズドアレイアンテナのビーム指向方向をブロードサイド方向、オフセット位相値を零とした場合のビームパターンである。
【図4】メインビームの方向をブロードサイド方向、オフセット位相値をπ/2とした場合のビームパターンである。
【図5】オフセット位相値が零のときのビームパターンとオフセット位相値をπ/2としたときのビームパターンとをオフセット位相値を補正した後にコヒーレント合成したビームパターンである。
【図6】オフセット位相値をΔP=π/20ごとに零からπ/2まで11段階に変更して得られたビームパターンをオフセット補正した後コヒーレント合成したビームパターンである。
【図7】量子化ビットmを"1"とした場合の繰り返し処理回数と平均サイドローブレベルの関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る無線送受信装置の第1の実施例である第1のレーダ装置のハードウエア構成を示すブロック線図である。
【図9】レーダ制御プログラムのフローチャートである。
【図10】移相器制御処理のフローチャートである。
【図11】1つのデジタル移相器の一例を示すブロック図である。
【図12】受信処理のフローチャートである。
【図13】本発明に係る無線送受信装置の第2の実施例である第2のレーダ装置のハードウエア構成を示すブロック線図である。
【図14】本発明に係る無線送受信装置の第3の実施例である第3のレーダ装置のハードウエア構成を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず本発明に係る無線送受信装置および方法の基本的な考え方を説明する。
図1は、1次元フェーズドアレイアンテナの模式図であって、アンテナ素子1n(n=1、2・・・N)をX軸方向に間隔dごとにN個配置した構成を有する。
なお、フェーズドアレイアンテナは送信アンテナとして使用されるものとして説明するが、受信アンテナとして使用される場合であっても考え方は同じである。
N個のアンテナ素子に同位相で給電すれば、フェーズドアレイアンテナはY軸方向の指向性を有する。
【0018】
フェーズドアレイアンテナのビーム指向方向をY軸に対してθ傾けるためには、アンテナ素子1nを伝播する信号に対して、[数1]で算出される位相φn(以下「理想位相値」と呼ぶ)を付与することが必要となる。
【0019】
【数1】
【0020】
しかし、デジタル移相器では位相を連続的に変更することはできず、量子化ビットがmである場合には、付与できる位相は(2π/2m)刻みでしか制御できない。
前述したように、量子化ローブを低減するには、量子化ビットmを大きくすることが本来的な解決方法であるが、多段階に位相を制御可能なデジタル移相器は構成が複雑となり、経済性も悪化する。
【0021】
本発明にあっては、量子化ビットmが少ない(例えば"1")場合であっても量子化ローブの平均エネルギを低減できるように、理想位相値φnとオフセット位相値Poの和であるオフセット理想位相値ψn(=φn+Po)に基づいてデジタル移相器の制御信号を生成することにより、量子化ローブの平均エネルギを低減するようにしている。
【0022】
なお、量子化ビットは"1"とし、オフセット理想位相値ψnが0≦ψn<πである場合は移相器でπ/2の位相を付与し、オフセット理想位相値ψnがπ≦ψn<2πである場合は3π/2の位相を付与するものとする。
たとえば、理想位相値φnがπ/4、オフセット位相値Poがπ/6である場合は、オフセット理想位相値ψnは5π/12(<π)となり、オフセット位相値Poが零の場合と同じく受信信号にπ/2の位相が付与されるので、量子化誤差QE(φn,Po)は[数2]で算出されるようにπ/12となる。
【0023】
【数2】
【0024】
なお、オフセット位相値Poが零の場合の量子化誤差は、π/4である。
理想位相値φnがπ/4であっても、オフセット位相値Poが5π/6である場合は、オフセット理想位相値ψnは13π/12(>π)となり、受信信号に3π/2の位相が付与されるので、量子化誤差QE(φn,Po)は[数3]で算出されるように5π/12となる。
【0025】
【数3】
【0026】
このことは、デジタル移相器を適用した場合には、理想位相値φnが一定であってもオフセット位相値Poを変更すると、量子化誤差が変化するため、量子化ローブのパターンも変動することを示している。
【0027】
したがって、送信機でオフセット位相値Poの送信信号を送信し、受信機でオフセット位相値を補正した後の受信信号を記憶する送受信操作を複数のオフセット位相値Poについて実行し、複数のオフセット位相値Poに対応する複数の受信信号をコヒーレント合成することにより、量子化ローブレベルの平均値を低減できるものと予測できる。
【0028】
ここで、受信後にオフセット位相値Poの補正を行う理由は、コヒーレント合成するときに、メインローブで受信した信号が同相で合成されるように、送信時に加算したオフセット位相値Poを受信信号の位相から減算する必要があるからである。
【0029】
上記のことを確認するために以下のシミュレーション実験を行った。
図2はシミュレーション実験に使用したフェーズドアレイアンテナであるリフレクトアレイアンテナの概略図および緒元である。
リフレクトアレイアンテナは、1次放射器から放射された電波を各アンテナ素子が反射するが、アンテナ素子ごとに設置される移相器によりアンテナ素子から放射される反射波の位相を変更できる構成となっている。
【0030】
図3はフェーズドアレイアンテナのビーム指向方向をブロードサイド方向(アジマス(Az)=0度、エレベーション(El)=0度)、オフセット位相値Poを零とした場合のビームパターンであって、(イ)は2次元表示されたビームパターンを、(ロ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
【0031】
図4はメインビームの方向をブロードサイド方向(アジマス(Az)=0度、エレベーション(El)=0度)、オフセット位相値Poをπ/2とした場合のビームパターンであって、(ハ)は2次元表示されたビームパターンを、(ニ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
【0032】
図3と図4とを比較すると、メインローブ以外の量子化ローブを含むサイドローブのパターンは相違している。すなわち、理想位相値φnが同じであっても、オフセット位相値Poを変更すれば、サイドローブパターンを変更できることがシミュレーション実験により確認されたこととなる。
なお、オフセット位相値Poが零およびπ/2のときの平均サイドローブレベル(量子化ローブを含む)は、それぞれ−28.8dB、−28.7dBである。
【0033】
図5は、オフセット位相値Poが零のときのビームパターンとオフセット位相値Poをπ/2としたときのビームパターンとをオフセット位相値Poを補正した後にコヒーレント合成したビームパターンであり、(ホ)は2次元表示されたビームパターンを、(ヘ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
【0034】
この場合の平均サイドローブレベルは−37.0dBであり、図3および図4に比べ約8dB低減している。すなわち、オフセット位相値Poの相違する受信信号をオフセット位相値の補正後にコヒーレント合成することによって、平均サイドローブレベルを低減できることがシミュレーション実験により確認されたこととなる。
【0035】
図6は、オフセット位相値PoをΔP=π/20ごとに零からπ/2まで11段階に変更して得られたビームパターンをオフセット補正した後コヒーレント合成したビームパターンであって、(ト)は2次元表示されたビームパターンを、(チ)はAz=0度の切断面のビームパターンを示す。
この場合の平均サイドローブレベルは−44.7dBであり、図3および図4に比べ約16dB、図5に比べて約8dB低減している。
【0036】
そして、図7は量子化ビットmを"1"とした場合の繰り返し処理回数と平均サイドローブレベルの関係を示すグラフであって、繰り返し回数を増加するに従って、アナログ移相器を用いて理想位相値を付与して指向性を形成したときの平均サイドローブレベル−45.7dBに漸近していることが判る。
【0037】
以上から、送信機でオフセット位相値Poの送信信号を送信し、受信機でオフセット位相値を補正した後の受信信号を記憶する送受信操作を複数のオフセット位相値Poについて実行し、複数のオフセット位相値Poに対応する複数の受信信号をコヒーレント合成することにより、量子化ローブレベルの平均値を低減できることがシミュレーション実験により確認された。
【実施例1】
【0038】
本発明に係る無線送受信装置の第1の実施例である第1のレーダ装置3は、受信機が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、アンテナ素子ごとに設けられ、アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナと、フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えたオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含み、送信機が、複数回電波を放射する送信信号発生器を含む構成を有している。
【0039】
図8は、本発明の第1の実施例である第1のレーダ装置3のハードウエア構成を示すブロック線図である。
フェーズドアレイアンテナ4は、ターゲットで反射された電波を受信信号として受信する受信アンテナとして使用され、受信電波を受信する1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子41、アンテナ素子41ごとに配置され、受信信号の位相を所定量変更する複数のデジタル移相器42、およびデジタル移相器42で位相が変更された受信信号を合成して出力する合成器43から構成されている。
【0040】
フェーズドアレイアンテナ4から出力される受信信号は、受信信号増幅回路31で増幅されたのち、局部発信信号発生回路32で発生された局部発信信号と混合回路33で混合されて中間周波信号に変換され、デジタル処理部5に出力される。
なお、送信信号発生器34が発生した送信信号は、送信信号増幅回路35で増幅され、送信アンテナ36から空中に放射される。
【0041】
デジタル処理部5は、マイクロプロセッサシステムであり、バス51に、レーダ制御プログラムを実行するCPU52、レーダ制御プログラムおよびCPU52の演算結果を記憶するメモリ53、デジタル移相器42および送信信号発生器34に対する制御信号を出力する制御信号インターフェイス(以下「I/F」と記す)54、混合回路33から出力される中間周波信号に変換された受信信号をデジタル信号に変換するA/D変換器55、およびデジタル処理部5での処理結果をたとえば影像信号として出力する出力I/F56が結合された構成を有する。
そして、デジタル移相器制御部、オフセット補正部およびコヒーレント合成部はデジタル処理部5の中にソフトウエア的に構成される。
【0042】
なお、出力I/F56には、たとえば液晶パネルである表示器37が接続されており、第1のレーダ装置3の補足したターゲットの画像を表示するために使用される。
【0043】
図9は、デジタル処理部5で実行されるレーダ制御プログラムのフローチャートである。
CPU52は、まず、初期化処理を実行(ステップS91)する。
初期化処理では、オフセット位相値Poを初期値の零とするほか、メモリ53の一部に構成される受信信号メモリをリセットする。
CPU52は、次に、[数1]を用いて理想位相値φnを算出(ステップS92)する。
そして、CPU52は、移相器制御処理を実行(ステップS93)する。
【0044】
図10は、移相器制御処理のフローチャートであって、CPU52は理想位相値φnにオフセット位相値Poを加算して、オフセット理想位相値ψnを算出(ステップS931)する。
さらに、CPU52はオフセット理想位相値ψnに基づいて移相器制御信号を生成(ステップS932)する。
【0045】
前述した量子化ビットが"1"の移相器を使用する場合には、移相器制御信号Cpは、0≦ψn<πの場合には"0"と、π≦ψn<2πの場合には"1"となるものとする。
最後に移相器制御信号Cnを制御信号I/F54を介して、デジタル移相器42に出力(ステップS933)する。
【0046】
図11は、1つのデジタル移相器42n(n=1,2・・・N)の一例を示すブロック図であって、アンテナ素子41nは第1の切換え器421のc端子421cに接続されている。
また、第2の切換え器422のc端子422cは、合成器43に接続されている。
【0047】
第1の切換え器421のa端子421aと第2の切換え器422のa端子422aの間は、伝搬する信号の位相をπ/2遅らすことのできる遅延線423で接続されている。
第1の切換え器421のb端子421bと第2の切換え器422のb端子422bの間は、伝搬する信号の位相を3π/2遅らすことのできる遅延線424で接続されている。
【0048】
第1の切換え器421および第2の切換え器422は、切換え制御回路425から送られる切換え信号によって制御され、切換え信号が"0"の場合は第1の切換え器421および第2の切換え器422のa端子とc端子とが導通する状態となり、切換え信号が"1"の場合は第1の切換え器421および第2の切換え器422のb端子とc端子とが導通する状態となるように構成されている。
【0049】
そして、制御信号I/F54を介して出力される移相器制御信号Cnは、切換え制御回路425に供給される。
したがって、移相器制御信号Cnが"0"の場合はアンテナ素子41nで受信された受信信号の位相はπ/2遅延され、移相器制御信号Cnが"1"の場合はアンテナ素子41nで受信された受信信号の位相は3π/2遅延されることとなる。
【0050】
図9のレーダ制御プログラムにもどって、CPU52は、制御信号I/F54を介して送信信号発生器34に送信開始信号を出力する送信処理を実行(ステップS94)する。
すると、送信信号発生器34で生成された送信信号は、送信信号増幅回路35で増幅されたのち、送信アンテナ36から電波として放射される。
次に、CPU52は、受信処理を実行(ステップS95)する。
【0051】
図12は、受信処理のフローチャートであって、CPU52は、中間周波信号に変換された入力信号を順次読み込む(ステップS951)。
次に、CPU52は、入力信号の位相からオフセット位相値Poを減算して、オフセット補正(ステップS952)を行う。
【0052】
そして、CPU52は、オフセット補正後の入力信号を受信信号メモリにすでに記憶されている入力信号とコヒーレント的に合成して受信信号メモリに記憶(ステップS953)してこの処理を終了する。
図9のレーダ制御プログラムに戻って、CPU52は、オフセット位相値P0に予め定めた増量ΔPを加算(ステップS96)し、オフセット位相値P0が2π/2m以上となったか否かを判定(ステップS97)する。
量子化ビットmが"1"である場合には、オフセット位相値P0がπに到達するまでステップS93からS95までの処理を繰り返す。
【0053】
CPU52は、オフセット位相値P0が2π/2m未満であると判断したときは、ステップS93の処理に戻る。
CPU52は、オフセット位相値P0が2π/2m以上となったと判断したときは、受信信号メモリに記憶されている情報を出力I/F56を介して表示器37に出力(ステップS98)して、レーダ制御プログラムを終了する。
【実施例2】
【0054】
本発明に係る無線送受信装置の第2の実施例である第2のレーダ装置6は、送信機が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、アンテナ素子ごとに設けられ、アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナと、フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えたオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、複数回電波を放射する送信信号発生器と、を含み、受信機が、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
【0055】
図13は、本発明の第2の実施例である第2のレーダ装置6のハードウエア構成を示すブロック線図であって、第1のレーダ装置3とは、フェーズドアレイアンテナ4が送信アンテナとして使用され、ターゲットで反射された電波は受信アンテナ38により受信される点が相違する。
よって、第1のレーダ装置3と同一の要素は同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
ハードウエア構成における第1のレーダ装置3との相違点は、フェーズドアレイアンテナ4が送信信号増幅回路35に接続されており、受信信号増幅器31には受信アンテナ38が接続されていることである。
なお、デジタル処理部5で実行されるレーダ制御プログラムには変更はなく、動作も同じであるので説明を省略する。
【実施例3】
【0057】
本発明に係る無線送受信装置の第3の実施例である第3のレーダ装置7は、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、アンテナ素子ごとに設けられ、アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナと、フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じてアンテナ素子ごとに算出されアンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えたオフセット理想位相値に基づいてデジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、複数回電波を放射する送信信号発生器と、受信信号の位相をオフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む構成を有している。
【0058】
図14は、本発明の第3の実施例である第3のレーダ装置7のハードウエア構成を示すブロック線図であって、第1のレーダ装置3とは、フェーズドアレイアンテナ4が送受信共用である点が相違する。
よって、第1のレーダ装置3と同一の要素は同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
ハードウエア構成における第1のレーダ装置3との相違点は、フェーズドアレイアンテナ4の合成器43の後段にアンテナ共用器61が設けられており、受信信号増幅器31および送信信号増幅器35がアンテナ共用器61に接続されていることである。
デジタル処理部5で実行されるレーダ制御プログラムも第1のレーダ装置3用とほとんど同じであるが、フェーズドアレイアンテナ4を送受信に使用しているために、図12の受信処理のステップS952のオフセット補正で、受信信号の位相から"2P0"を減算する点のみが相違する。
【0060】
以上、本発明に係る無線送受信装置をレーダ装置に適用した実施例について説明したが、本発明に係る無線送受信装置を通信装置として適用できることは当業者にとって明らかである。ただし、オフセット位相値Poの増量および増量の回数をプロトコルとして取り決めておくことが必要とある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、フェーズドアレイアンテナを使用した無線送受信装置および方法において、デジタル移相器を使用したときに不可避的に発生する量子化ローブの平均レベルを低減する上で極めて有用であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0062】
3:第1のレーダ装置
5:デジタル処理部
6:第2のレーダ装置
7:第3のレーダ装置
31:受信信号増幅器
32:局部発信信号発生回路
33:混合回路
34:送信信号発生器
35:送信信号増幅器
36:送信アンテナ
37:表示器
38:受信アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する送信機と、送信機から放射された電波を受信する受信機と、から成る無線送受信装置であって、
前記送信機および前記受信機の少なくとも一方の機器が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを備え、
前記フェーズドアレイアンテナを備えた前記一方の機器が、
前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部を含み、
前記送信機が、前記複数回数電波を放射する送信信号発生器を含み、
前記受信機が、受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む無線送受信装置。
【請求項2】
前記受信機が、前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項3】
前記送信機が、前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項4】
1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含む送受信用フェーズドアレイアンテナと、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナから前記複数回数電波を放射する送信信号発生器と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナで受信された受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む無線送受信装置。
【請求項5】
送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方に、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを使用する送受信方法であって、
前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御段階と、
前記複数回数電波を放射する送信信号発生段階と、
受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正段階と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成段階と、から成る無線送受信方法。
【請求項1】
電波を放射する送信機と、送信機から放射された電波を受信する受信機と、から成る無線送受信装置であって、
前記送信機および前記受信機の少なくとも一方の機器が、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを備え、
前記フェーズドアレイアンテナを備えた前記一方の機器が、
前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部を含み、
前記送信機が、前記複数回数電波を放射する送信信号発生器を含み、
前記受信機が、受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む無線送受信装置。
【請求項2】
前記受信機が、前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項3】
前記送信機が、前記フェーズドアレイアンテナを備える機器である請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項4】
1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含む送受信用フェーズドアレイアンテナと、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御部と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナから前記複数回数電波を放射する送信信号発生器と、
前記送受信用フェーズドアレイアンテナで受信された受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正部と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成部と、を含む無線送受信装置。
【請求項5】
送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方に、1次元または2次元に配列された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子ごとに設けられ、前記アンテナ素子を伝播する信号の位相を離散的に変更するデジタル移相器と、を含むフェーズドアレイアンテナを使用する送受信方法であって、
前記フェーズドアレイアンテナの指向方向に応じて前記アンテナ素子ごとに算出され前記アンテナ素子を伝播する信号に付与されるべき理想位相値にオフセット位相値を加えた複数のオフセット理想位相値に基づいて前記デジタル移相器を制御するデジタル移相器制御段階と、
前記複数回数電波を放射する送信信号発生段階と、
受信信号の位相を前記オフセット位相値に応じて補正するオフセット補正段階と、
オフセット補正後の受信信号をコヒーレント合成するコヒーレント合成段階と、から成る無線送受信方法。
【図1】
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図6】
【公開番号】特開2012−134643(P2012−134643A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283338(P2010−283338)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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