説明

無線通信システム、基地局、移動局および無線通信方法

【課題】無線通信帯域のさらなる有効利用を実現する無線通信システムを得ること。
【解決手段】移動局との間でレンジングを行う基地局4が、移動局からレンジングを実行するための規定信号を受信した場合に、当該規定信号が送信されたレンジングスロットの基準タイミングとの差、受信電力値の受信電力基準値との差、受信周波数の規定の周波数との差、の少なくともいずれか1つを検出する受信手段(61,62に相当)と、受信手段により検出された差が許容範囲外であると判定した場合に、当該差を許容範囲内に補正するための補正情報を含ませたレンジング応答情報を作成するスケジューラ手段(69,72,73,74に相当)と、下りバースト信号送信タイミングを通知するMAPメッセージにレンジング応答情報を含めて送信する送信手段(65,61)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジングを実施する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムは、移動局が基地局との通信を開始する際に、上り信号の送受信を適切に行うことを目的として、移動局の信号送信タイミングなどを補正するレンジングを実行する。詳細には、基地局が、移動局から受信した信号に基づき、移動局の信号送信タイミング,送信電力,送信周波数などについて補正量を算出し、補正情報を移動局へ通知する。移動局は、基地局から通知された補正情報にしたがい補正を行う。レンジングは、通信を開始する場合だけでなく通信開始後においても、周期的に、または基地局が補正を必要と判断した場合に行われる(下記、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】IEEE P/D3(February 2008)“Part16:Air Interface for Broadband Wireless Access Systems” p.83-p.85,p.90-p.94,p.335−p.349,p.695−697
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、移動局が送信するCDMA(Code Division Multiple Access)コードなどへの応答として基地局が送信するRNG−RSP(Ranging Response)メッセージは、応答の内容によってはメッセージサイズが数バイト程度の非常に短いメッセージとなるにもかかわらず、送信にはMAC PDU(Protocol Data Unit:MAC層が扱うデータ単位)構築に付随するMACヘッダ,CRC(Cyclic Redundancy Check),およびメッセージを含むバーストの位置やサイズ、などを含むバースト固有情報が必要となる。従来の技術においては、これらのオーバヘッドが無線通信帯域の有効利用を妨げる、という問題があった。また、これらのオーバヘッドによって、メッセージに誤りの発生する確率が高くなる、という問題もあった。
【0005】
また、従来のRNG−RSPメッセージでは、基地局において移動局の識別や無線品質の特定ができないので、変調方式や符号化率をロバストな設定としてブロードキャスト送信する必要があるが、このときにも、上述のオーバヘッドが無線通信帯域を圧迫する、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レンジングを行う場合において、無線通信帯域を有効利用する無線通信システム、基地局、移動局および無線通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、基地局と移動局の間でレンジングを行う無線通信システムであって、前記基地局が、下り同期を確立した移動局からレンジングを実行するための規定信号を受信した場合に、当該規定信号が送信されたレンジングスロットにおける基準タイミングとの差、受信電力値の受信電力基準値との差、受信周波数の規定の周波数との差、の少なくともいずれか1つを検出する受信手段(後述する実施の形態のTRX部61,復調・復号部62に相当)と、前記受信手段により検出された差が許容範囲内であるか否かを判定し、当該差が許容範囲外であると判定した場合に、当該差を許容範囲内に補正するための補正情報を含ませたレンジング応答情報を作成するスケジューラ手段(スケジューラ69,補正判定部72,比較判定部73,レンジング応答生成部74等に相当)と、下りバースト信号送信タイミングを通知するブロードキャストメッセージであるMAPメッセージに、前記レンジング応答情報を含めて送信する送信手段(符号化・変調部65,TRX部61等に相当)と、を備え、前記移動局が、前記基地局からレンジング応答情報を含むMAPメッセージを受信した場合に、当該レンジング応答情報に含まれる補正情報にしたがって補正を行う補正手段(TRX部41,復調・復号部42,MAP解析部43,送信管理部44,符号化・復調部50,送信補正部51等に相当)、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、レンジングにおける無線通信帯域を削減できる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる無線通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における無線通信システムの構成例を示す図である。この無線通信システムは、ネットワーク1と、サーバ2と、上位局3と、基地局4と、移動局5とを備える。ネットワーク1は、IP(Internet Protocol)ネットワークやATM(Asynchronous Transfer Mode)ネットワークなどのネットワークであって、サーバ2と上位局3との間でパケットの送受信を行う。上位局3は、基地局4を収容するアクセスゲートウェイ装置や無線制御装置である。基地局4は、上位局3に接続され、上位局3との間でユーザデータや制御情報などのパケット送受信を行う。なお、図1では、基地局4配下の移動局として移動局5のみが示されているが、実際には複数の移動局が接続される。
【0011】
移動局5は、基地局4との通信を開始する場合、レンジングを開始し、CDMAコードを基地局4に対して送信する。基地局4は、CDMAコードを受信すると、移動局5について補正の要否を判定し、レンジングの応答に必要な情報を生成する。基地局4は、生成した情報をレンジング応答情報としてDL−MAP(Downlink MAP)メッセージに含めて移動局5へ送信する。移動局5は、レンジング応答情報で補正情報が示された場合には、これにしたがって補正を行い、その後、再度レンジングを実施する。なお、レンジングの動作は、移動局5が基地局4との通信を開始する場合だけでなく、通信開始後においても周期的に実施され、また、移動局5がCDMAコードの送信により、基地局4に対して上り帯域割当てを要求する場合にも行われる。
【0012】
ここで、本実施の形態の特徴を説明する前に、その前提となる従来のレンジングの方法について、フレームに着目して説明する。レンジングは、たとえばモバイルWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)においては、ネットワークエントリ時に以下のような手順で行われる。始めに、移動局5は、基地局4との下り同期確立に成功した後、基地局4がブロードキャストするUCD(Uplink Channel Descriptor)メッセージから、レンジング用のCDMAコード番号,レンジング領域の情報などのULサブフレームに関するパラメータを取得する。
【0013】
図2は、レンジング時に移動局と基地局が使用するフレーム内のシンボルおよびサブチャネルの従来の配置を示す図である。各フレームは、DLサブフレーム10−n(n=1,2,…)とULサブフレーム11−nとを備える。なお、サブフレーム間の空隙は送受信の切り替えギャップである。図2では、DLサブフレーム10−1およびULサブフレーム11−1により構成されるフレーム#1と、DLサブフレーム10−2およびULサブフレーム11−2により構成されるフレーム#2とを示している。
【0014】
図2のDLサブフレーム10−1は、プリアンブル12−1と、FCH(Frame Control Header)13−1と、DL−MAPメッセージ14−1と、UL−MAP15−1と、を備える。プリアンブル12−1は、物理層レベルの同期を確立するためのデータである。FCH13−1は、DL−MAPメッセージ14−1の構成情報を格納するヘッダである。DL−MAPメッセージ14−1は、下りのバースト構成情報を収容し、UL−MAP15−1は、上りのバースト構成情報を収容する。図2のULサブフレーム11−1は、レンジング領域16を備える。また、DLサブフレーム10−2は、DLサブフレーム10−1と同じ構成であるが、DL−MAPメッセージ14−2は、自身内に、下りバースト17の情報を示すバースト固有情報18を備える。
【0015】
移動局5は、CDMAコード番号およびレンジング領域16内に配置されたレンジングスロットをランダムに選択し、選択したスロットを用いてそのCDMAコードを送信する。基地局4は、移動局5が送信したCDMAコードを検出すると、レンジングスロットの基準タイミングとの差,受信電力の受信電力基準値との差,受信周波数の規定の受信周波数との差を算出する。そして、これらの差異について、通信を開始する上で許容範囲外であると判定した場合、応答メッセージ(RNG−RSPメッセージ)に補正情報を設定して送信する。このRNG−RSPメッセージは、基地局4での処理遅延のため別のフレーム(フレーム#2)で送信される。すなわち、基地局4は、RNG−RSPメッセージの送信に必要となるスロット数を算出し、下りバースト(下りバースト17)を割当てると、DL−MAPメッセージ14−2に、下りバースト17の送信位置およびサイズを示したバースト固有情報18をセットし、DL−MAPメッセージ14−2と下りバースト17をブロードキャスト送信する。
【0016】
図3は、下りバーストで送信される、RNG−RSPメッセージを含むMAC PDUの従来の構成を示す図である。図3のMAC PDUは、MACヘッダ20と、RNG−RSPメッセージ21と、CRC22とを備える。また、RNG−RSPメッセージ21は、メッセージタイプ23と、CDMAコード受信情報24と、ステータス受信情報25と、補正情報26と、周波数変更情報27とを備える。ここで、メッセージタイプ23は、メッセージの種別である。CDMAコード受信情報24は、メッセージの宛先を移動局が判別するための情報であって、基地局4がCDMAコードを受信したときのフレーム番号,シンボルオフセット,サブチャネルオフセット,CDMAコード番号を含む。ステータス受信情報25は、レンジングの成否を示す情報であって、“Success”,“Continue”,“Abort”のいずれかを示す。たとえば、補正情報26を付与する場合は、“Continue”をセットすることでレンジングを再度実施するように移動局5へ通知する。補正すべき情報がない場合は、“Success”をセットすることでレンジングの終了を移動局5へ通知する。周波数変更情報27を付与する場合は、“Abort”をセットすることで異なる周波数への移行を指示する。補正情報26は、移動局5の送信タイミング補正量,送信電力補正量,送信周波数補正量等、基地局4が補正すべきと判断した情報を含む。周波数変更情報27は、異なる周波数への移行を指示するための情報を含む。
【0017】
図4は、DL−MAPメッセージ(DL−MAPメッセージ14−2)の従来の構成を示す図である。バースト固有情報18は、下りバーストの送信位置としてシンボルオフセット32およびサブチャネルオフセット33を、サイズの情報としてシンボル数35およびサブチャネル数36を含む。電力ブースト34は、その副搬送波に適用された電力ブーストの値である。バースト固有情報18は、さらに、下りバーストの変調方式および符号化率を示すバーストプロファイル31や、同一情報の繰り返し数としてレペティション数37などの情報も含む。
【0018】
つづいて、以上のような従来のレンジング方法を前提として、本実施の形態の無線通信システムについて説明する。図5は、本実施の形態の移動局(移動局5)の構成例を示す図である。移動局5は、送受信アンテナ40と、TRX部41と、復調・復号部42と、MAP解析部43と、送信管理部44と、無線品質測定部45と、通信制御部46と、パケット組立部47と、上位レイヤ部48と、上り送信バッファ部49と、符号化・復調部50と、送信補正部51とを備える。
【0019】
TRX部41は、送受信アンテナ40を介して基地局4と無線信号の送受信を行う。復調・復号部42は、基地局4から受信した信号をデジタル信号処理し、受信信号の復調および復号を行う。そして、得られた制御情報およびユーザデータを通信制御部46へ出力し、MAPメッセージ(DL−MAPメッセージ,UL−MAP)をMAP解析部43に出力する。MAP解析部43は、MAPメッセージから、下りバーストを受信するためのバースト固有情報を取得して復調・復号部42へのバースト受信指示を行う。また、MAPメッセージから、上り信号/上りバーストを送信するための情報として、図2のULサブフレームの中のULバースト(図示せず)に含まれる上り帯域割当情報を取得して送信管理部44に通知する。また、MAP解析部43は、レンジング応答情報解析機能を有する。すなわち、MAP解析部43は、MAPメッセージから、レンジング応答情報を取得して送信管理部44に通知する。
【0020】
通信制御部46は、基地局4との間で送受信する制御メッセージの生成および解析を行い、また、受信したユーザデータをパケット組立部47へ出力する。たとえば、受信した制御メッセージが制御メッセージ(RNG−RSPメッセージ)の場合は、そのメッセージを解析後、レンジング応答情報を送信管理部44へ通知する。パケット組立部47は、通信制御部46から出力される上位レイヤ部48宛てのパケットを組立てる。なお、ここでは、ハイブリッドARQ(Automatic repeat-request)など、再送制御に関する説明は省略する。
【0021】
送信管理部44は、通信制御部46が送信しようとする信号/メッセージや、上り送信バッファ部49で保持している上位レイヤ部48からのユーザデータの送信を管理する。具体的には、基地局4への帯域割当要求の送信指示、または、MAP解析部43から通知された上り帯域割当情報に基づいた上り送信の指示を、符号化・変調部50に対して行う。符号化・変調部50は、送信管理部44からの指示にしたがって上り送信信号に対して符号化処理および変調処理を行う。そして、TRX部41が、変調後の信号を、送受信アンテナ40を介して基地局4へ送信する。また、無線品質測定部45は、受信した信号に基づきCINR(Carrier to Interference plus Noise Ratio)などの下り無線品質情報を測定する。そして、TRX部41が、送信管理部44の送信指示にしたがって符号化・変調部50にて処理された測定結果を、基地局4へ送信する。
【0022】
つづいて、以上のように構成された移動局5が、レンジングを実施する場合の処理について説明する。レンジングを開始する場合、通信制御部46は、送信管理部44にCDMAコードの送信要求を行う。送信管理部44は、CDMAコード番号および上りのレンジング領域16内のレンジングスロットを選択し、符号化・変調部50に対して基地局4へのCDMAコード番号の送信を指示する。また、その応答として、基地局4からレンジング応答情報を受信した場合、送信管理部44は、MAP解析部43または通信制御部46から通知された補正情報を送信補正部51に対して通知する。送信補正部51は、符号化・変調部50に対して信号送信タイミング,送信電力,送信周波数などの補正を指示する。符号化・変調部50は、指示された補正情報に基づいた補正を行い、送信周波数については、TRX部41に対して補正を指示する。なお、上記補正に伴い、レンジングを再度実施する場合は、送信管理部44が主導し、上記同様の処理を実行する。
【0023】
つづいて、本実施の形態の基地局の動作について説明する。図6は、本実施の形態の基地局(基地局4)の構成例を示す図である。基地局4は、送受信アンテナ60と、TRX部61と、復調・復号部62と、マッピング部63と、無線品質管理部64と、符号化・変調部65と、有線送受信部66と、分配機能部67と、パケット保持部68と、スケジューラ69と、通信制御部70と、パケット組立部71と、補正判定部72と、比較判定部73と、を備える。また、マッピング部63は、さらに、レンジング応答生成部74を備える。
【0024】
TRX部61は、送受信アンテナ60を介して移動局5と無線信号の送受信を行う。復調・復号部62は、移動局5から受信した信号をデジタル信号処理し、受信信号の復調および復号を行う。復調・復号は、マッピング部63から通知される、上りバーストを受信するためのバースト固有情報に基づき実施される。また、符号化・変調部65は、移動局5へ送信する信号の符号化および変調を行う。そして、TRX部61が、得られた変調信号を、送受信アンテナ60を介して移動局5へ送信する。符号化/変調は、マッピング部63から通知される、下りのバースト固有情報に基づき実施される。
【0025】
有線送受信部66は、上位局3からパケットを受信すると、分配機能部67に出力する。分配機能部67は、自身と上位局3との間で送受信する制御メッセージのパケットを通信制御部70へ出力する。また、ユーザデータのパケットについては、移動局や通信の品質(QoS,優先度など)に応じて、パケット保持部68のキュー68−1〜68−m(m=1,2,…)に分類して蓄積する。
【0026】
無線品質管理部64は、移動局5から受信した信号について、CINRなどの上り無線品質を測定し、その結果を上り無線品質情報として保持する。また、移動局5から報告される下り無線品質情報を保持する。
【0027】
スケジューラ69は、各移動局の無線品質およびQoS,移動局間の公平性,キュー68−1〜68−mのパケット滞留量,通信制御部70が各移動局へ送信する制御メッセージの量などに基づいて、下りの帯域割当てを行う。また、下り送信の変調方式や符号化率を決定して、マッピング部63に通知する。また、パケット保持部68の該当するキュー、または通信制御部70から受信した制御メッセージより、送信可能な情報量に見合うパケットを取り出し、送信パケットを構築してマッピング部63へ通知する。取り出すパケットは、パケットの一部分でもよく、複数パケットでもよい。
【0028】
また、スケジューラ69は、移動局5から帯域割当要求を受信した場合、各移動局の無線品質およびQoS,移動局間の公平性,移動局からの帯域要求量に基づき上り帯域割当てを行う。さらに、上り送信の変調方式や符号化率を決定して、それらをマッピング部63に通知する。また、スケジューラ69は、上り帯域割当てにより移動局5から送信されたパケットを復調・復号部62を介して受信すると、制御メッセージであれば通信制御部70へ出力し、ユーザデータであればパケット組立部71へ出力する。なお、スケジューラ69は、復調・復号部62から受信するCDMAコード,制御メッセージ,ユーザデータを区別する場合、それらの情報を受信したスロット(チャネル種別)やコネクション識別情報など、受信情報のメッセージフォーマットを参照する。なお、ここでは、ハイブリッドARQなど、再送制御に関する説明は省略する。
【0029】
マッピング部63は、スケジューラ69から通知された下りパケットおよび下り帯域割当情報に基づいて、バースト固有情報を含む下りのMAPメッセージを構築する。また、同様に通知された上り帯域割当情報に基づいて、上りのMAPメッセージを構築する。そして、下りパケットおよび上記で構築したMAPメッセージとともに、下り送信の指示を符号化・変調部65へ通知する。なお、スケジューラ69における下り帯域割当ては、マッピング部63が構築するMAPメッセージ送信のための帯域も考慮して実施される。
【0030】
パケット組立部71は、パケット組立を行い、組立が完了すると有線送受信部66へ出力する。有線送受信部66は、組み立てられたパケットを上位局3へ送信する。
【0031】
つづいて、以上のように構成された基地局4が、レンジングを実施する場合の処理について説明する。基地局4のTRX部61が、移動局5からCDMAコードを受信すると、復調・復号部62が、CDMAコードを検出し、レンジングスロットの基準タイミングとの差,受信電力の受信電力基準値との差,受信周波数の規定の受信周波数との差、などを検出する。そして、検出した差異を、受信したCDMAコード番号,フレーム番号,シンボルオフセット,サブチャネルオフセットとともにスケジューラ69に通知する。スケジューラ69は、これらの差異が、通信を開始/継続する上で許容範囲内であるか否かを補正判定部72に問い合わせる。補正判定部72は、問い合わせを受けた差異を、予め定めた受信タイミング,受信電力,受信周波数についての許容範囲と比較することで判定する。そして、1つでも許容範囲外の値があった場合、移動局5の送信タイミング補正量,送信電力補正量,送信周波数補正量などを含む補正情報を作成してスケジューラ69に通知する。また、判定の結果、補正が不要の場合には、その旨をスケジューラ69に通知する。
【0032】
また、スケジューラ69は、補正情報を含めたレンジング応答情報を、RNG−RSPメッセージとして送信するか、DL−MAPメッセージの情報要素として送信するかを比較判定部73に問い合わせ、比較判定部73の判定(後述)にしたがってレンジング応答情報を送信するための制御を行う。たとえば、比較判定部73がレンジング応答情報をDL−MAPメッセージの情報要素として送信すると判定した場合、スケジューラ69は、その旨をマッピング部63へ依頼する。依頼を受けたマッピング部63のレンジング応答生成部74は、レンジング応答情報としてのDL−MAPメッセージの情報要素を生成する。
【0033】
一方、比較判定部73がレンジング応答情報をRNG−RSPメッセージとして送信すると判定した場合、スケジューラ69は、通信制御部70にRNG−RSPメッセージの生成を依頼する。通信制御部70は、RNG−RSPメッセージを生成してスケジューラ69に出力し、スケジューラ69は、RNG−RSPメッセージを送信するようにマッピング部63へ通知する。なお、RNG−RSPメッセージの生成は、生成処理時間を短くするため、スケジューラ69が行ってもよい。
【0034】
このように生成されたMAPメッセージまたはRNG−RSPメッセージは、マッピング部63が、符号化・変調部65へ下り送信を指示することで送信される。なお、補正判定部72が補正不要と判定した場合は、上記RNG−RSPメッセージやMAPメッセージの情報要素による応答を行っても良いが、CDMAコードに対する応答として実施する上り帯域割当てで、補正不要である旨の応答を兼ねることができるため、上記応答を省略してもよい。
【0035】
つづいて、以上のように構成された移動局および基地局を備える無線通信システムにおけるレンジング動作について、フレームに着目して説明する。図7は、本実施の形態の無線通信システムにおいて、レンジング時に移動局と基地局が使用するフレーム内のシンボルおよびサブチャネルの配置例を示す図である。図7では、フレーム#1と同等のフレーム#3と、フレーム#2とは異なるフレーム#4を示す。図7のフレームは、図2の従来のフレームと比較すると、DLサブフレーム10−2の代わりにDLサブフレーム10−2Bを備える点が異なる。DLサブフレーム10−2Bは、バースト固有情報18の代わりにレンジング応答情報18Bを備え、バースト固有情報18で通知して下りバースト17で送信していた情報を、直接、レンジング応答情報18Bで送信する。
【0036】
移動局5は、フレーム#3のULサブフレーム11−1のレンジング領域16内に配置されたレンジングスロットをランダムに選択し、基地局4に対してCDMAコードを送信する。CDMAコードを受信した基地局4では、比較判定部73が、CDMAコードに対するレンジング応答情報を、RNG−RSPメッセージとして送信するか、DL−MAPメッセージの情報要素として送信するかを判断する。詳細には、比較判定部73は、仮にレンジング応答情報をDL−MAPメッセージの情報要素として送信した場合の、レンジング応答情報のデータ長を算出し、所定の閾値と比較する。たとえば、上記で算出したレンジング応答情報のデータ長が所定の閾値以下である場合、比較判定部73は、DL−MAPメッセージ(DL−MAPメッセージ14−2B)の情報要素としてレンジング応答情報(レンジング応答情報18B)を送信すると判定する。一方、所定の閾値を超える場合は、DL−MAPメッセージ長が長くなりメッセージ誤り率が高くなるので、従来通り、RNG−RSPメッセージを用いてレンジング応答情報を別バーストで送信すると判定する。
【0037】
なお、上記所定の閾値は、たとえば、DL−MAPメッセージの情報要素である「バースト固有情報長」に基づいて決定される。また、比較判定部73は、上述のデータ長の算出処理の負荷を軽減するため、レンジング応答情報18Bに含める補正情報の数によって判定することとしてもよい。すなわち、補正内容である送信タイミング補正量,送信電力補正量,送信周波数補正量の項目数が所定の定数以下の場合に、DL−MAPメッセージ14−2Bでレンジング応答情報18Bを送信すると判定する。
【0038】
図8は、レンジング応答情報18Bを含めて構築したDL−MAPメッセージ14−2Bの構成例を示す図である。レンジング応答情報18Bは、図3に記載の従来のRNG−RSPメッセージ同様、CDMAコード受信情報24と、ステータス受信情報25と、補正情報26と、周波数変更情報27とを備える。補正すべき情報がなければ、補正情報26を含まなくてもよい。また、異なる周波数への移行を指示する必要がなければ、周波数変更情報27を含まなくてよい。
【0039】
また、無線通信システムにおけるフレームが、DL−MAPメッセージにバースト固有情報を含めるのではなく、DL−MAPメッセージから分離したSUB−MAPにバースト固有情報を含める構成である場合、レンジング応答情報18BをSUB−MAPに含めてもよい。図9は、DL−MAPメッセージから分離したSUB−MAPを備えるDLサブフレーム10−2Cにおいて、レンジング応答情報18BをSUB−MAP19に含めた例を示す図である。DLサブフレーム10−2Cは、DLサブフレーム10−2Bと比較すると、DL−MAPメッセージ14−2Bの代わりに従来のDL−MAPメッセージ14−2を備え、さらに、SUB−MAP19を備える。
【0040】
なお、本実施の形態では、レンジングの方法としてCDMAコードを用いる場合について説明したが、これに限定するものではない。たとえば、基地局が定めた信号送信タイミングにおいて、移動局が規定の信号を送受信することによりレンジングを実施する無線通信システムであれば、本実施の形態の通信方法を適用することが可能である。この場合、レンジング応答情報に含めるCDMAコード受信情報としては、無線通信システムに応じた信号識別情報、すなわち、基地局が受信した規定の信号を移動局で識別するための情報や、基地局が定めた信号送信タイミングを移動局で識別するための情報が考えられる。また、上記移動局で識別するための情報があれば、送信タイミングおよび規定の信号がそれぞれ複数存在することとしてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態では、レンジング応答情報をDL−MAPメッセージの情報要素として送信した場合における、レンジング応答情報のデータ長が所定の閾値以下である場合は、レンジング応答情報を、RNG−RSPメッセージでなくDL−MAPメッセージに含めて送信することとした。これにより、メッセージ長が短い場合には、従来RNG−RSPメッセージを送信することで発生していたオーバヘッド情報の送信が不要となるので、無線通信帯域を有効利用できる。また、無線回線上での、メッセージ誤りによるレンジング応答情報の消失を低減することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、DL−MAPメッセージに含めるレンジング応答情報のデータ長が所定の閾値を超える場合は、DL−MAPメッセージ長が長くなり、メッセージ誤り率が高くなるので、従来同様、RNG−RSPメッセージを別バーストで送信するとした。これにより、無線帯域の利用効率を最適化するとともに、DL−MAPメッセージ消失による他の移動局への影響を低減することができる。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態1では、基地局が、レンジング応答情報をDL−MAPメッセージの情報要素とした場合のレンジング応答情報のデータ長を算出し、そのデータ長によって、移動局へのレンジング応答情報の送信方法を切替えることとした。本実施の形態では、CDMAコードを複数受信した場合に、複数のRNG−RSPメッセージを同一フレームで送信する方法について説明する。以下、前述した実施の形態1と異なる処理について説明する。
【0044】
従来、RNG−RSPメッセージを送信する場合は、DL−MAPメッセージに設定するバースト固有情報を、各RNG−RSPメッセージに対してそれぞれ必要としていた。このため、CDMAコードを複数受信し、同一フレーム内で複数のRNG−RSPメッセージを送信する場合は、RNG−RSPメッセージ数に応じてDL−MAPメッセージ長が長くなる。
【0045】
図10は、本実施の形態におけるRNG−RSPメッセージを含むMAC PDUの構成例を示す図である。図10のRNG−RSPメッセージ21Bは、上述のメッセージタイプ23と、複数のレンジング応答情報(図示の太枠部分に相当)と、新たに定義する応答情報数28と、を備える。応答情報数28はレンジング応答情報の数である。レンジング応答情報は、CDMAコード受信情報24−pと、ステータス受信情報25−pと、補正情報26−pと、周波数変更情報27−pと、を備える(p:自然数)。RNG−RSPメッセージ21Bは、実施の形態1と同様、図6に示した通信制御部70により生成されるが、スケジューラ69により生成されてもよい。ここで、スケジューラ69は、同一フレーム内で送信しようとしている複数のレンジング応答情報について、比較判定部73に対して問い合わせを行い、比較判定部73がRNG−RSPメッセージで送信すると判定したレンジング応答情報についてのみ、1つのRNG−RSPメッセージに含める。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態では、1つのRNG−RSPメッセージに複数のレンジング応答情報を含めることとした。これにより、DL−MAPメッセージに設定するバースト固有情報を1つにすることができる。また、実施の形態1の構成と合わせることによって、無線通信帯域のさらなる有効利用が可能となり、また、DL−MAPメッセージの消失率をさらに低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる無線通信システムは、レンジングを実施する無線通信システムに有用であり、特に、当該システムにおいて、基地局がレンジング応答情報をRNG−RSPメッセージに含ませて送信する機能を有する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】レンジング時に移動局と基地局が使用するフレーム内のシンボルおよびサブチャネルの従来の配置を示す図である。
【図3】RNG−RSPメッセージを含むMAC PDUの従来の構成を示す図である。
【図4】DL−MAPメッセージの従来の構成を示す図である。
【図5】移動局の構成例を示す図である。
【図6】基地局の構成例を示す図である。
【図7】レンジング時に移動局と基地局が使用するフレーム内のシンボルおよびサブチャネルの配置例を示す図である。
【図8】レンジング応答情報を含めて構築したDL−MAPメッセージの構成例を示す図である。
【図9】レンジング応答情報をSUB−MAPに含めた例を示す図である。
【図10】RNG−RSPメッセージを含むMAC PDUの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ネットワーク
2 サーバ
3 上位局
4 基地局
5 移動局
40 送受信アンテナ
41 TRX部
42 復調・復号部
43 MAP解析部
44 送信管理部
45 無線品質測定部
46 通信制御部
47 パケット組立部
48 上位レイヤ部
49 上り送信バッファ部
50 符号化・復調部
51 送信補正部
60 送受信アンテナ
61 TRX部
62 復調・復号部
63 マッピング部
64 無線品質管理部
65 符号化・変調部
66 有線送受信部
67 分配機能部
68 パケット保持部
68−m キュー
69 スケジューラ
70 通信制御部
71 パケット組立部
72 補正判定部
73 比較判定部
74 レンジング応答生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動局の間でレンジングを行う無線通信システムであって、
前記基地局が、
下り同期を確立した移動局からレンジングを実行するための規定信号を受信した場合に、当該規定信号が送信されたレンジングスロットにおける基準タイミングとの差、受信電力値の受信電力基準値との差、受信周波数の規定の周波数との差、の少なくともいずれか1つを検出する受信手段と、
前記受信手段により検出された差が許容範囲内であるか否かを判定し、当該差が許容範囲外であると判定した場合に、当該差を許容範囲内に補正するための補正情報を含ませたレンジング応答情報を作成するスケジューラ手段と、
下りバースト信号送信タイミングを通知するためのブロードキャストメッセージであるMAPメッセージに、前記レンジング応答情報を含めて送信する送信手段と、
を備え、
前記移動局が、
前記基地局からレンジング応答情報を含むMAPメッセージを受信した場合に、当該レンジング応答情報に含まれる補正情報にしたがって補正を行う補正手段、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記スケジューラ手段は、
前記レンジング応答情報を前記MAPメッセージに含めて送信した場合の、当該レンジング応答情報のデータ長を算出し、当該算出したデータ長と所定の閾値とを比較し、
前記データ長が所定の閾値以下であった場合、前記レンジング応答情報をMAPメッセージに含めて送信すると判断し、その旨を前記送信手段に通知し、
前記データ長が所定の閾値を超える場合、前記レンジング応答情報を前記MAPメッセージとは別の下りメッセージに含めて送信すると判断し、当該下りメッセージを生成して前記送信手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記受信手段が複数の移動局から規定信号を受信した場合、前記スケジューラ手段は、前記下りメッセージに含めて送信すると判断した複数のレンジング応答情報を、当該下りメッセージである1つのRNG−RSPメッセージに含めて前記送信手段に出力することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
下り同期を確立した移動局からレンジングを実行するための規定信号を受信した場合に、当該規定信号が送信されたレンジングスロットにおける基準タイミングとの差、受信電力値の受信電力基準値との差、受信周波数の規定の周波数との差、の少なくともいずれか1つを検出する受信手段と、
前記受信手段により検出された差が許容範囲内であるか否かを判定し、当該差が許容範囲外であると判定した場合に、当該差を許容範囲内に補正するための補正情報を含ませたレンジング応答情報を作成するスケジューラ手段と、
下りバースト信号送信タイミングを通知するブロードキャストメッセージであるMAPメッセージに、前記レンジング応答情報を含めて送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項5】
前記スケジューラ手段は、
前記レンジング応答情報を前記MAPメッセージに含めて送信した場合の、当該レンジング応答情報のデータ長を算出し、当該算出したデータ長と所定の閾値とを比較し、
前記データ長が所定の閾値以下であった場合、前記レンジング応答情報をMAPメッセージに含めて送信すると判断し、その旨を前記送信手段に通知し、
前記データ長が所定の閾値を超える場合、前記レンジング応答情報を前記MAPメッセージとは別の下りメッセージに含めて送信すると判断し、当該下りメッセージを生成して前記送信手段に出力することを特徴とする請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
前記受信手段が複数の移動局から規定信号を受信した場合、前記スケジューラ手段は、前記下りメッセージに含めて送信すると判断した複数のレンジング応答情報を、当該下りメッセージである1つのRNG−RSPメッセージに含めて前記送信手段に出力することを特徴とする請求項5に記載の基地局。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一つに記載の基地局からレンジング応答情報を含むMAPメッセージを受信した場合に、当該レンジング応答情報に含まれる補正情報にしたがって補正を行う補正手段、
を備えることを特徴とする移動局。
【請求項8】
基地局と移動局の間でレンジングを行う無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記基地局が、下り同期を確立した移動局からレンジングを実行するための規定信号を受信した場合に、当該規定信号が送信されたレンジングスロットにおける基準タイミングとの差、受信電力値の受信電力基準値との差、受信周波数の規定の周波数との差、の少なくともいずれか1つを検出する検出ステップと、
前記基地局が、前記検出ステップにより検出された差が許容範囲内であるか否かを判定し、当該差が許容範囲外であると判定した場合に、当該差を許容範囲内に補正するための補正情報を含ませたレンジング応答情報を作成するレンジング応答情報作成ステップと、
前記基地局が、下りバースト信号送信タイミングを通知するブロードキャストメッセージであるMAPメッセージに、前記レンジング応答情報を含めて送信するレンジング応答送信ステップと、
前記移動局が、前記基地局からレンジング応答情報を含むMAPメッセージを受信した場合に、当該レンジング応答情報に含まれる補正情報にしたがって補正を行う補正ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−56765(P2010−56765A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218433(P2008−218433)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】