無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法
【課題】無線局の間の伝搬路情報を、高速且つオーバヘッドを少なく送信側にフィードバックする無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信システムを、通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて該影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局とを含み構成する。
【解決手段】無線通信システムを、通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて該影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局とを含み構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、詳しくは、パイロット信号を用いる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パイロット信号を用いた無線通信方法については、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された無線通信システムは、パイロット信号を基地局からセル内に在圏している端末に対して通知し、そのパイロット信号を用いて通信の確立および通信品質の向上を行なっている。また、当該無線通信システムの基地局は、複数パターンのパイロット信号を送信でき、セル環境に応じて送信するパターンを決定する。
【0003】
また、送信側と受信側とでフィードバックループを構築して通信品質を向上させる無線通信方法については、例えば特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0004】
特許文献2に記載された無線通信システムでは、受信側の無線通信機は、送信側の無線通信機からのフィードバック要求に応じて無線通信機間の伝搬路(チャネル)の情報を推定する推定部を有して、推定された情報に基づいて通信を行なうことに良好であろう送信方法を選択して、送信側の無線通信機に通知する。その後、送信側の無線通信機は、指定された送信方法に従って受信側の無線通信機と通信する。
【0005】
特許文献3に記載された無線通信システムでは、受信側のユーザ端末は、送信側のアクセスポイントからのフィードバック要求に応じて、アクセスポイントとユーザ端末間の伝搬路(チャネル)の情報を推定して、推定した情報をフィードバック情報(ダウンリンクの伝搬路情報)として送信側のアクセスポイントに通知する。その後、アクセスポイントは、通知されたフィードバック情報に基づいてダウンリンクの伝搬路情報から定まる通信を行なうことに良好であろう送信方法を用いて受信側のユーザ端末と通信する。
【0006】
ダウンリンクの伝搬路情報は、例えば、MIMO(Multi Input Multi Output)やビームフォーミング(Beamforming)で送信する基地局において用いられている。当該伝搬路情報を用いることによって基地局は、伝搬路の状況に応じて最適なビーム形状や送信ウェイトで信号を送信できる。ダウンリンクの伝搬路情報を得るため、端末が得たダウンリンクの伝搬路情報を量子化し、アップリンクを利用して基地局へフィードバックしている。
【0007】
また、MIMO伝搬路でのパイロット信号の具体例は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】再表2007−125889号公報
【特許文献2】特開2010−081092号公報
【特許文献3】特表2008−545293号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE std 802.16e−2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、ダウンリンクの伝搬路情報を端末から基地局にフィードバックするにあたり、端末において推定したダウンリンクの伝搬路情報を量子化している。
【0011】
しかしながら、端末において量子化を行なうことによって、基地局への情報のフィードバックに数シンボルを必要とすることもある。数シンボルの伝搬路情報は、フィードバックに要するオーバヘッドとなり、アップリンクの伝送速度の低下につながっている。
【0012】
また、端末において量子化を行って得た伝搬路情報を基地局へフィードバック処理するには処理時間が掛かる。このため、例えば、基地局において、フィードバックされた伝搬路情報を得て、その後、計算して最適なウェイトを決定して、そのウェイトに基づくように動作して信号を送信するときには、ダウンリンクの伝搬路の現実の状況が既に変化してしまうことがあり、最適なウェイトからずれてしまう問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題をふまえて、1の無線局と他の無線局との間の伝搬路情報を、高速且つリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックする無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る無線通信システムは、通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、前記基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、前記第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、前記第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1の無線局と他の無線局との間の伝搬路情報を、高速且つリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックする無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態にかかる無線通信システム1の構成を示す説明図である。
【図2】モバイルWiMAXで用いられている基準信号を示す説明図である。
【図3】第2の実施形態にかかる無線通信システム2の構成を示す説明図である。
【図4】第3の実施形態にかかる無線通信システム3の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の無線通信システムを図1に基づいて説明する。なお、本発明と関係が少ない構成や自明な構成については説明を簡単にする為、記載を省略する。
【0018】
無線通信システム1は、基地局100(BS)、無線端末装置200(MS)から構成される。BSやMSは通信規格毎に定められた名称であるが、他にもNodoBやUEなど様々な名称を有する無権局であっても同様に動作させればよい。
【0019】
基地局100は、通信の基準として用いられるパイロット信号(基準信号)を生成して送出するパイロット信号送信部110と、受信した第1の返送パイロット信号(第1の返送基準信号)および第2の返送パイロット信号(第2の返送基準信号)から、ダウンリンクの伝搬路情報を推定する伝搬路情報推定部120を有する。
パイロット信号は、通信規格で定められた他の局に対して基準となるタイミングや信号を通知する1ないし複数定義された信号である。例えば、非特許文献1に記載されているモバイルWiMAXにて定義されている、DL PUSC(Downlink Partially Used SubChannelization)と呼ばれるサブキャリアの配列方法では、図2のようになる。2x14のサブキャリアのうち、4つのサブキャリアがパイロットサブキャリア(=基準信号)となっている。
【0020】
また、LTE通信規格では、基準信号は、レファレンス信号と呼ばれて用いられている。
【0021】
何れの基準信号も、周波数と時間のサブキャリアからなるフレームの中にパイロットとして用いられる基準信号が配置されており、それぞれの基準信号は所定のシンボル(例えば、ランダム信号のBPSKシンボルなど)となっている。また、アンテナが複数の場合は、アンテナごとにパイロットとする信号の配置パターンが準備されている。それぞれの信号の時間軸と周波数軸上の位置では、他のアンテナからはサブキャリアを送信しないようにすることで、それぞれの基準信号が干渉しないように規格化されている。
【0022】
パイロット信号送信部110では、複数準備されたパイロット信号を使用して、基地局100が無線端末装置ごとに決定する。例えば、基地局100は、無線端末装置200とリンクを確立するとき、制御信号として基地局100から無線端末装置200へとその決定の内容が通知される。例えば、PN系列などのランダムな系列として準備しておけば、無線端末装置ごとに異なるパイロット信号を使用することができ、かつ、他の基地局から送信されたパイロット信号とが干渉した場合でも受信側で相関をとることで所望のパイロット信号を検出することができる。
【0023】
無線端末装置200は、基地局100から受信したパイロット信号を量子化を行わずに第1の返送パイロット信号として送信するパイロット信号返送部210と、基地局100から受信したパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信するパイロット信号送信部220とを有する。
【0024】
パイロット信号返送部210は、受信した伝搬路の影響を受けたパイロット信号を受けて、その信号を、デジタル処理回路などに送らずに、アナログ波の状態で、既知の値をかけ加えて増幅して第1の返送パイロット信号を生成してアンテナから送信する。なお、既知の値は、1種類でもよいし、複数種類のなかか選択されるようにしてもよい。また、動的に選択されるようにしてもよい。
【0025】
パイロット信号送信部220は、基地局100から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信する。なお、パイロット信号の種別は、上記のように予め制御信号等を用いて通知されているか、もしくは受けたパイロット信号から識別する。
【0026】
次に、無線通信システム1の全体の動作を説明する。説明は、図1中に記号を例示しながら行なう。
基地局100からパイロット信号Pを送信する。パイロット信号Pは、無線端末装置200においても既知の信号である。基地局100から送信されたパイロット信号Pは、ダウンリンクの伝搬路によって歪みを受けた状態となり無線端末装置200にて受信される。このとき、ダウンリンクの伝搬路の歪みをHとすると、無線端末装置200で受信される信号は、HPと表現できる。
【0027】
次に、端末装置200から、受信した歪みを受けたパイロット信号HPに定数aを掛けて第1の返送パイロット信号として送信する。このとき、第1の返送パイロット信号を生成するパイロット信号返送部210は、量子化などの処理を行わずに、受信したパイロット信号から即座に第1の返送パイロット信号を生成する。送信する第1の返送パイロット信号は、品質の良いアップリンクチャネル、例えば、アップリンクの中で周波数軸の品質の良いサブチャネルを適応的に選択して送信するようにしてもよい。
【0028】
定数aは、基地局100で受信したときのダイナミックレンジを調整する既知の値であり、伝搬路で減衰したパイロット信号の振幅を補償するための係数として設定される。定数aは、下記に示すように基地局100での伝搬路情報の推定に使用される。
また、aの値は、基地局100で既知としておく。例えば、a≒1/|H|となるように設定されるのがよい。このとき、第1の返送パイロットの振幅は、|aHP| ≒ |P|となる。従って、この基地局で第1の返送パイロットを受信したとき、良好なS/Nを得ることができる。
また、Hの振幅は状況に応じて変化するため、aの値もHの変化に応じて変化させると好ましい。例えば、複数のaの値を基地局100およびそれぞれの端末装置の双方で準備しておき、どの値を使用するかの情報を、基地局または端末局が決定し、制御チャネルを介して伝達されてもよい。
なお、aの値は、基地局100で既知の値とできる値であれば、上記に限定されるものではない。
【0029】
端末装置200から送信された第1の返送パイロット信号aHPは、アップリンクの伝搬路によって歪みを受け基地局100にて受信される。このとき、アップリンクの伝搬路の歪みをH’とすると、基地局100で受信される歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1は、aH’HPと表現できる。
ここで、通信周波数と時間がほぼ同一とみなすことができる場合は、ダウンリンクの伝搬路の係数Hをフィードバックしなくとも、アップリンクのH’をHと基地局でみなせばよい。他方、ここではダウンリンクの伝搬路の係数Hとアップリンクの係数H’は、周波数または時間の関数であれば、HとH’は一致しないことが多々在る。特に周波数ダイバシティ効果を望むように構成された無線通信システムでは、一致しないことが多い。また、FDD(Frequency Division Duplex)方式や多数のサブキャリアを用いる通信方式の無線通信システムなども同様である。
【0030】
端末装置200から、第1の返送パイロット信号と同じフレーム(周波数)の別のスロットを使用して、先ほど基地局100から送信されたパイロット信号Pと同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信する。すなわち、第1の返送パイロット信号と第2の返送パイロット信号は、同一周波数帯でほぼ同時に送信される。
このとき、第2の返送パイロット信号は、パイロット信号送信部220によって生成される。端末装置200から送信された第2の返送パイロット信号(パイロット信号P)は、アップリンクの伝搬路の歪みH’を受けて、基地局100で受信される。基地局100で受信される歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2は、H’Pと表現できる。
【0031】
次に、基地局100において伝搬路情報推定部120は、端末装置200から受信した歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1と歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2とを用いて、ダウンリンクの伝搬路情報を推定する。
伝搬路情報推定部120による伝搬路情報の推定は、歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1及び歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2を比較演算することによって伝搬路歪みHを得る。
当該比較演算を数式化すれば下記数1に記載された式1となる。当該式1は、S1を変形してS2を代入した式である。式1から分かるようにS1とS2と既知の実定数である定数aとから容易にHを算出できる。なお、定数aは、端末装置200において第2の返送パイロット信号に対しても掛け加えておくことによって、動的に変動させることができる。ただし、第2の返送パイロット信号の送出が大きくなる。
【0032】
【数1】
【0033】
また、端末装置200から、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号について、それぞれの振幅を時間軸に対して反転させて送信するようにしてもよい。このようにすれば、基地局100で反転したそれぞれの歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1及び歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2から、容易にHを算出できると共に、既知のパイロット信号と異なる信号波形となり、混信などの問題が生じにくくなる。
【0034】
このように動作させることによって推定された伝搬路情報は、基地局100および端末装置200によって通信品質の向上に使用される。当該基地局100および端末装置200とのダウンリンクの伝搬路情報の推定は、高速且つアップリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックできている。
【0035】
以上、説明の簡略化のため基地局100および端末装置200において一つずつのアンテナを利用して、ダウンリンクの伝搬路情報を、基地局側にフィードバックする方法を示した。
【0036】
次に、第2の実施形態の無線通信システム2を図3に基づいて説明する。
【0037】
第1の実施形態では、1つの基地局100のアンテナと1つの端末装置200のアンテナの構成において、伝搬路情報をフィードバックする方法を示した。
しかしながら、基地局においてダウンリンクの伝搬路情報を使用する無線通信システムでは、送信側においてビームフォーミングを行う場合や、固有モード伝送などのMIMO通信を行う場合が例示できる。ビームフォーミングは、基地局のアンテナが複数であることが必要条件である。また、MIMOは、基地局と端末のアンテナの双方が複数であることが必要条件である。
従って、第2の実施形態では、基地局のアンテナと端末装置のアンテナがそれぞれ複数の場合を示す。以下では、基地局のアンテナをM個、端末装置のアンテナをN個として説明する。
【0038】
無線通信システム2は、基地局300(BS)、無線端末装置400(MS)から構成される。
【0039】
基地局300は、それぞれのアンテナから送出するパイロット信号を生成して送出するパイロット信号送信部310と、各アンテナから受信したそれぞれの第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号から、そのアンテナを介して通信したダウンリンクの伝搬路情報を推定する伝搬路情報推定部320を有する。
【0040】
無線端末装置400は、基地局300からそれぞれのアンテナを介して受信したパイロット信号を量子化を行わずにそれぞれ第1の返送パイロット信号として送信するパイロット信号返送部410と、それぞれのアンテナを介して基地局300から受信したパイロット信号と同様の内容の信号をそれぞれ第2の返送パイロット信号として送信するパイロット信号送信部420とを有する。
【0041】
無線通信システム2において複数のアンテナを利用して通信すると、複数の伝搬路が形成される。基地局300でM個のアンテナ、無線端末装置400でN個のアンテナを使用すると、M×N個の伝搬路(MIMO伝送路)を定義することができる。M×N個の伝搬路についてそれぞれの伝搬路情報を取得することで、基地局300と端末装置400間の通信品質を向上させることができる。なお、複数のアンテナを利用する場合は、予め割当てられたり通知されるなどして、それぞれのアンテナから送信されるパイロット信号は受信側にて分離可能に扱われる。
【0042】
次に、無線通信システム2の動作を説明する。
【0043】
基地局300から、それぞれのアンテナからそれぞれのパイロット信号P1〜Mを送信する。パイロット信号P1〜Mは、無線端末装置400においても既知のものである。基地局300から送信されたパイロット信号P1〜Mは、それぞれのダウンリンクの伝搬路によって歪みを受け無線端末装置200にて受信される。
【0044】
次に、端末装置400から、受信した歪みを受けたそれぞれのパイロット信号に既知の値をかけ加えてそれぞれ第1の返送パイロット信号として送信すると共に、受信したパイロット信号P1〜Mと同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号としてそれぞれのアンテナから送信する。
このとき、端末装置400は、品質のよいアンテナを適応的に選択して、第1及び第2の返送パイロットを送信することとしてもよい。
なお、上記第1の実施形態で示したように、第2の返送パイロット信号に第1の返送パイロット信号と同じ既知の値をかけ加えて送信などの変更を加えてもよい。
【0045】
次に、基地局300において伝搬路情報推定部320は、適宜使用するそれぞれのMIMO伝搬路について、端末装置400から送信されて所定のアンテナから受信したそれぞれの第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号から、パイロット信号P1〜Mのたどったダウンリンクの伝搬路情報を推定する。
【0046】
ここで、MIMO伝搬路の基地局300のアンテナ1と無線端末装置400のアンテナ1との間の伝搬路のダウンリンクとアップリンクの係数h11とh’11に着目すると、係数h11とh’11は、第1の実施形態のダウンリンクの係数Hをh11に、アップリンクの伝搬路の係数H’をh’11にと見做すことができる。
【0047】
すなわち、第1の実施形態と同様のパイロット信号の送信方法で、伝搬路歪みh11を基地局300にフィードバックでき、伝搬路歪みh11について伝搬路情報を取得することができる(図3参照)。
【0048】
他のhnmについても同様に、第1の返送パイロット信号S1nmと歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2nmを用いて比較演算することで、伝搬路歪みhnmを求めることができる。ここで、nとmは、それぞれ基地局300のm番目のアンテナ、無線端末装置400のn番目のアンテナを示す。
【0049】
以下にMIMO伝搬路のそれぞれの伝搬路歪みを示す式2を数2に示す。
【0050】
【数2】
【0051】
図3中では、最後のMIMO伝搬路にあたる伝搬路歪みhNMについて、伝搬路歪みh11と同様に示している。伝搬路歪みhNMは、基地局300のM番目のアンテナと無線端末装置400のN番目のアンテナとの間にあたるMIMO伝搬路の伝搬路情報である。なお、他の伝搬路歪みについては図中の記載を省略する。
【0052】
推定された各MIMO伝搬路情報は、基地局300および端末装置400によって通信品質の向上に使用される。
【0053】
なお、本実施形態では、基地局と端末装置とが1対1のMIMO通信について説明したが、1対多のMIMO通信(マルチユーザMIMO)や多対1通信などでも同様に、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送り返すことで伝搬路情報をフィードバックできる。
【0054】
すなわち、基準信号を送信する無線機と基準信号を受信する無線機との間の伝搬路情報を、高速且つフィードバックに要するオーバヘッドを少なくして取得できる。
【0055】
次に、第3の実施形態の無線通信システム3を図4に基づいて説明する。
【0056】
無線通信システム3は、基地局500(BS)および無線端末装置600(MS)から構成される。
【0057】
基地局500は、第1の実施形態の基地局100と同様の構成(パイロット信号送信部510、伝搬路情報推定部520)に加え、品質計測部530とフィードバック方法選択部540を有する。
【0058】
品質計測部530は、アップリンクの品質を計測する手段として動作する。品質は、例えば、S/N比を用いる。
【0059】
フィードバック方法選択部540は、品質計測部530からの品質を示す情報に応じて、無線端末装置600でのフィードバック方法を適応的に選択する。
【0060】
無線端末装置600は、第1の実施形態の無線端末装置200と同様の構成(パイロット信号返送部610、パイロット信号送信部620)に加え、ダウンリンクの伝搬路情報を量子化してフィードバックする方法を行う伝搬路情報量子化フィードバック部630を有し、基地局500からのフィードバックする方法の指示に従い、伝搬路歪みをフィードバックする方法を選択する。
【0061】
伝搬路情報量子化フィードバック部630は、受信した信号に基づき伝搬路の歪みを推定する推定する手段と基地局500側に推定した値をフィードバックする手段などから構成させる。
【0062】
次に、無線通信システム3の全体の動作を説明する。
基地局500は、制御信号などを用いて通信品質を無線端末装置600から取得する。基地局500は、取得した通信品質に基づき、アップリンクの通信品質(S/N比など)がよいときには、第1の実施形態で説明したフィードバック方法を選択する。他方、アップリンクの品質が悪いときは、ダウンリンクの伝搬路情報を量子化してフィードバックする方法を選択する。基地局500は、選択した方法を無線端末装置600に通知する。
【0063】
その後、無線通信システム3は、選択された方法に基づいて、ダウンリンクの伝搬路の歪みについてフィードバックを行なう。
【0064】
このように動作させることで、伝搬路情報を基地局側で取得できる確実性などが向上する。
【0065】
なお、本実施形態では、第1の実施形態を用いて説明したが、第2の実施形態で示したMIMO通信においても同様に適用でき、通信品質の向上に寄与できる。また、基地局は、推定又は取得したダウンリンクの伝搬路情報を使用して、複数のアンテナを用いて行なうビームフォーミングを行なうビームフォーミング決定部やMIMO通信の送信ウェイトを決定する送信ウェイト決定部を動作させるようにしてもよい。
【0066】
次に、効果について説明する。
【0067】
1)ダウンリンクの伝搬路情報を量子化せずにアップリンクにのせて1シンボルでフィードバックできるため、伝搬路情報をフィードバックするためのオーバヘッドを軽減することができる。即ち、通信のスループットを向上させる効果がある。
【0068】
2)無線端末装置において、受信したパイロット信号をほぼそのまま送信するため、無線端末装置での演算量を軽減することができる。
【0069】
3)さらに、無線端末装置での処理が少ないため、フィードバックの時間を短縮できる。すなわち、パイロット信号を基地局が送信してから、その伝搬路情報を使用した送信を行うまでの、伝搬路の時間変化にかかる通信品質の劣化を軽減できる。換言すれば、時間変化の大きい伝搬路において通信品質を大きく向上させることができる。
本発明は、移動体通信方式や固定通信方式など様々な無線通信システムに使用できる。とりわけ、周波数分割複信および同様に複数の周波数帯を利用する無線通信システムにおいて、送信ビームフォーミング、固有モード伝送を行う場合に大きな効果を奏する。
また、無線端末装置が移動している場合にも大きな効果が期待できる。
【0070】
また、同様の信号処理方法で、無線端末装置から送信した基準信号を用いて、基地局から第1の返送基準信号および第2の返送基準信号を送信し、無線端末装置側でアップリンクの伝搬路情報を推定することもできる。
【0071】
また、一の無線局が、送信側と受信側の両方の手段を有することとしてもよい。当該構成は、メッシュ型、ツリー型ネットワークを構成し得る無線局に適する。また、ネットワークの構築に、伝搬路情報を使用できる。
【0072】
以上説明したように、本発明によれば、本発明によれば、一の無線局と他の無線局との間の伝搬路情報を、高速且つリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックする無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法を提供できる。
【0073】
尚、無線通信システムの各部は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて適宜実現すればよい。ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた形態では、基地局又は無線端末装置をそれぞれ上記説明したフィードバック方法を実現するようにハードウェアをソフトウェアによって動作させればよい。例示すれば、RAMにフィードバックプログラムを展開し、当該プログラムに基づいて各装置の制御部(CPU)を各種手段として動作させる。
【0074】
また、上記実施の形態は適宜組み合わせることができる。
【0075】
また、本発明の具体的な構成は前述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。
【0076】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、前記基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、
前記第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、前記第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局と、
を有することを特徴とする伝搬路情報を推定する無線通信システム。
【0077】
[付記2]
パイロット信号を送信する手段と、アップリンクを介して受信した第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を比較演算してダウンリンクの伝搬路情報を推定する手段とを備える基地局と、
前記基地局からダウンリンクを介して受信したパイロット信号を量子化を行わずに第1の返送パイロット信号として送信する手段と、前記基地局から受信したパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信する手段とを備える無線端末装置と、
によって構成され、
前記基地局において、パイロット信号を送信し、
前記無線端末装置において、受信したダウンリンクの伝搬路の影響を受けたパイロット信号を量子化せずにその内容を第1の返送パイロット信号として送信すると共に、前記基地局から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信し、
前記基地局において、受信したアップリンクの伝搬路の影響を受けた前記第1及び第2の返送パイロット信号に基づいてダウンリンクの伝搬路情報を推定する
ことを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報をフィードバックする無線通信システム。
【0078】
[付記3]
前記基地局は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に伝搬路情報を推定可能とすることを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0079】
[付記4]
前記基地局は、推定した伝搬路情報を使用して、ビームフォーミングを決定可能とする手段、および/またはMIMO通信に用いる送信ウェイトを決定可能とする手段を有することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0080】
[付記5]
前記基地局および前記無線端末装置は、FDD(Frequency Division Duplex)方式を用いて通信することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0081】
[付記6]
前記無線端末装置は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送信可能であることを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0082】
[付記7]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいアンテナを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0083】
[付記8]
前記基地局は、制御信号を用いて取得したアップリンクの品質に基づいて、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を用いて伝搬路情報を推定する方法と、前記無線端末装置に伝搬路に関する情報を量子化させてフィードバックさせる方法を、適応的に選択する手段を有することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0084】
[付記9]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいチャネルを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0085】
[付記10]
第1の無線局から通信の基準として用いられる所定の基準信号を送信し、
受信側となる第2の無線局において、受信した伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信すると共に、前記所定の基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信し、
前記第1の無線局において、送り返されてきた前記第1の返送基準信号および前記第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった無線局間の伝搬路に関する伝搬路情報を推定して取得する
ことを特徴とする伝搬路情報の取得方法。
【0086】
[付記11]
基地局からパイロット信号を送信し、
端末において、受信したダウンリンクの伝搬路の影響を受けたパイロット信号を量子化せずにその内容を第1の返送パイロット信号として送信すると共に、前記基地局から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信し、
前記基地局において、受信したアップリンクの伝搬路の影響を受けた前記第1及び第2の返送パイロット信号に基づいてダウンリンクの伝搬路情報を推定する
ことを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0087】
[付記12]
前記基地局は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に伝搬路情報を推定することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0088】
[付記13]
前記基地局は、推定した伝搬路情報をビームフォーミングを決定することに用いることを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0089】
[付記14]
前記基地局は、推定した伝搬路情報をMIMO通信に用いる送信ウェイトを決定することに用いることを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0090】
[付記15]
前記基地局および前記無線端末装置は、FDD(Frequency Division Duplex)方式を用いてパイロット信号、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を通信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0091】
[付記16]
前記無線端末装置は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0092】
[付記17]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいアンテナを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0093】
[付記18]
前記基地局は、制御信号を用いて取得したアップリンクの品質に基づいて、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を用いて伝搬路情報を推定する方法と、前記無線端末装置に伝搬路に関する情報を量子化させてフィードバックさせる方法を、適応的に選択して前記無線端末装置に行わせることを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0094】
[付記19]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいチャネルを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0095】
[付記20]
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、
前記基準信号を受信した他の無線局から送信された、伝搬路の影響を受けた基準信号に既知の値をかけ加えた第1の返送基準信号および前記基準信号と同様の内容の信号とを第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える
ことを特徴とする伝搬路情報を推定する無線局。
【0096】
[付記21]
通信の基準として用いられる基準信号を送信すると共に伝搬路情報を推定する無線局から、伝搬路の影響を受けて到達した基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、
前記基準信号の受信を受けて、前記無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段と
を備えることを特徴とする伝搬路情報を推定させる無線局。
【0097】
[付記22]
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、
他の無線局から基準信号を受信した場合に、受信した伝搬路の影響を受けている基準信号に既知の値をかけ加えて第1の返送基準信号として送信する手段と、
前記基準信号の受信を受けて、前記他の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段と、
自らが送信した基準信号に応じて送信された、第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、自らが送信した基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える
ことを特徴とする伝搬路情報を推定する無線局。
【符号の説明】
【0098】
1、2、3 無線通信システム
100、300、500 基地局(第1の無線局)
110、 310、510 パイロット信号送信部(基準信号送信部)
120、320、520 伝搬路情報推定部
200、400、600 無線端末装置(第2の無線局)
210、410、610 パイロット信号返送部(基準信号返送部)
220、420、620 パイロット信号送信部(基準信号送信部)
530 品質計測部
540 フィードバック方法選択部
630 伝搬路情報量子化フィードバック部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、詳しくは、パイロット信号を用いる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パイロット信号を用いた無線通信方法については、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された無線通信システムは、パイロット信号を基地局からセル内に在圏している端末に対して通知し、そのパイロット信号を用いて通信の確立および通信品質の向上を行なっている。また、当該無線通信システムの基地局は、複数パターンのパイロット信号を送信でき、セル環境に応じて送信するパターンを決定する。
【0003】
また、送信側と受信側とでフィードバックループを構築して通信品質を向上させる無線通信方法については、例えば特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0004】
特許文献2に記載された無線通信システムでは、受信側の無線通信機は、送信側の無線通信機からのフィードバック要求に応じて無線通信機間の伝搬路(チャネル)の情報を推定する推定部を有して、推定された情報に基づいて通信を行なうことに良好であろう送信方法を選択して、送信側の無線通信機に通知する。その後、送信側の無線通信機は、指定された送信方法に従って受信側の無線通信機と通信する。
【0005】
特許文献3に記載された無線通信システムでは、受信側のユーザ端末は、送信側のアクセスポイントからのフィードバック要求に応じて、アクセスポイントとユーザ端末間の伝搬路(チャネル)の情報を推定して、推定した情報をフィードバック情報(ダウンリンクの伝搬路情報)として送信側のアクセスポイントに通知する。その後、アクセスポイントは、通知されたフィードバック情報に基づいてダウンリンクの伝搬路情報から定まる通信を行なうことに良好であろう送信方法を用いて受信側のユーザ端末と通信する。
【0006】
ダウンリンクの伝搬路情報は、例えば、MIMO(Multi Input Multi Output)やビームフォーミング(Beamforming)で送信する基地局において用いられている。当該伝搬路情報を用いることによって基地局は、伝搬路の状況に応じて最適なビーム形状や送信ウェイトで信号を送信できる。ダウンリンクの伝搬路情報を得るため、端末が得たダウンリンクの伝搬路情報を量子化し、アップリンクを利用して基地局へフィードバックしている。
【0007】
また、MIMO伝搬路でのパイロット信号の具体例は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】再表2007−125889号公報
【特許文献2】特開2010−081092号公報
【特許文献3】特表2008−545293号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE std 802.16e−2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、ダウンリンクの伝搬路情報を端末から基地局にフィードバックするにあたり、端末において推定したダウンリンクの伝搬路情報を量子化している。
【0011】
しかしながら、端末において量子化を行なうことによって、基地局への情報のフィードバックに数シンボルを必要とすることもある。数シンボルの伝搬路情報は、フィードバックに要するオーバヘッドとなり、アップリンクの伝送速度の低下につながっている。
【0012】
また、端末において量子化を行って得た伝搬路情報を基地局へフィードバック処理するには処理時間が掛かる。このため、例えば、基地局において、フィードバックされた伝搬路情報を得て、その後、計算して最適なウェイトを決定して、そのウェイトに基づくように動作して信号を送信するときには、ダウンリンクの伝搬路の現実の状況が既に変化してしまうことがあり、最適なウェイトからずれてしまう問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題をふまえて、1の無線局と他の無線局との間の伝搬路情報を、高速且つリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックする無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る無線通信システムは、通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、前記基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、前記第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、前記第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1の無線局と他の無線局との間の伝搬路情報を、高速且つリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックする無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態にかかる無線通信システム1の構成を示す説明図である。
【図2】モバイルWiMAXで用いられている基準信号を示す説明図である。
【図3】第2の実施形態にかかる無線通信システム2の構成を示す説明図である。
【図4】第3の実施形態にかかる無線通信システム3の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の無線通信システムを図1に基づいて説明する。なお、本発明と関係が少ない構成や自明な構成については説明を簡単にする為、記載を省略する。
【0018】
無線通信システム1は、基地局100(BS)、無線端末装置200(MS)から構成される。BSやMSは通信規格毎に定められた名称であるが、他にもNodoBやUEなど様々な名称を有する無権局であっても同様に動作させればよい。
【0019】
基地局100は、通信の基準として用いられるパイロット信号(基準信号)を生成して送出するパイロット信号送信部110と、受信した第1の返送パイロット信号(第1の返送基準信号)および第2の返送パイロット信号(第2の返送基準信号)から、ダウンリンクの伝搬路情報を推定する伝搬路情報推定部120を有する。
パイロット信号は、通信規格で定められた他の局に対して基準となるタイミングや信号を通知する1ないし複数定義された信号である。例えば、非特許文献1に記載されているモバイルWiMAXにて定義されている、DL PUSC(Downlink Partially Used SubChannelization)と呼ばれるサブキャリアの配列方法では、図2のようになる。2x14のサブキャリアのうち、4つのサブキャリアがパイロットサブキャリア(=基準信号)となっている。
【0020】
また、LTE通信規格では、基準信号は、レファレンス信号と呼ばれて用いられている。
【0021】
何れの基準信号も、周波数と時間のサブキャリアからなるフレームの中にパイロットとして用いられる基準信号が配置されており、それぞれの基準信号は所定のシンボル(例えば、ランダム信号のBPSKシンボルなど)となっている。また、アンテナが複数の場合は、アンテナごとにパイロットとする信号の配置パターンが準備されている。それぞれの信号の時間軸と周波数軸上の位置では、他のアンテナからはサブキャリアを送信しないようにすることで、それぞれの基準信号が干渉しないように規格化されている。
【0022】
パイロット信号送信部110では、複数準備されたパイロット信号を使用して、基地局100が無線端末装置ごとに決定する。例えば、基地局100は、無線端末装置200とリンクを確立するとき、制御信号として基地局100から無線端末装置200へとその決定の内容が通知される。例えば、PN系列などのランダムな系列として準備しておけば、無線端末装置ごとに異なるパイロット信号を使用することができ、かつ、他の基地局から送信されたパイロット信号とが干渉した場合でも受信側で相関をとることで所望のパイロット信号を検出することができる。
【0023】
無線端末装置200は、基地局100から受信したパイロット信号を量子化を行わずに第1の返送パイロット信号として送信するパイロット信号返送部210と、基地局100から受信したパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信するパイロット信号送信部220とを有する。
【0024】
パイロット信号返送部210は、受信した伝搬路の影響を受けたパイロット信号を受けて、その信号を、デジタル処理回路などに送らずに、アナログ波の状態で、既知の値をかけ加えて増幅して第1の返送パイロット信号を生成してアンテナから送信する。なお、既知の値は、1種類でもよいし、複数種類のなかか選択されるようにしてもよい。また、動的に選択されるようにしてもよい。
【0025】
パイロット信号送信部220は、基地局100から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信する。なお、パイロット信号の種別は、上記のように予め制御信号等を用いて通知されているか、もしくは受けたパイロット信号から識別する。
【0026】
次に、無線通信システム1の全体の動作を説明する。説明は、図1中に記号を例示しながら行なう。
基地局100からパイロット信号Pを送信する。パイロット信号Pは、無線端末装置200においても既知の信号である。基地局100から送信されたパイロット信号Pは、ダウンリンクの伝搬路によって歪みを受けた状態となり無線端末装置200にて受信される。このとき、ダウンリンクの伝搬路の歪みをHとすると、無線端末装置200で受信される信号は、HPと表現できる。
【0027】
次に、端末装置200から、受信した歪みを受けたパイロット信号HPに定数aを掛けて第1の返送パイロット信号として送信する。このとき、第1の返送パイロット信号を生成するパイロット信号返送部210は、量子化などの処理を行わずに、受信したパイロット信号から即座に第1の返送パイロット信号を生成する。送信する第1の返送パイロット信号は、品質の良いアップリンクチャネル、例えば、アップリンクの中で周波数軸の品質の良いサブチャネルを適応的に選択して送信するようにしてもよい。
【0028】
定数aは、基地局100で受信したときのダイナミックレンジを調整する既知の値であり、伝搬路で減衰したパイロット信号の振幅を補償するための係数として設定される。定数aは、下記に示すように基地局100での伝搬路情報の推定に使用される。
また、aの値は、基地局100で既知としておく。例えば、a≒1/|H|となるように設定されるのがよい。このとき、第1の返送パイロットの振幅は、|aHP| ≒ |P|となる。従って、この基地局で第1の返送パイロットを受信したとき、良好なS/Nを得ることができる。
また、Hの振幅は状況に応じて変化するため、aの値もHの変化に応じて変化させると好ましい。例えば、複数のaの値を基地局100およびそれぞれの端末装置の双方で準備しておき、どの値を使用するかの情報を、基地局または端末局が決定し、制御チャネルを介して伝達されてもよい。
なお、aの値は、基地局100で既知の値とできる値であれば、上記に限定されるものではない。
【0029】
端末装置200から送信された第1の返送パイロット信号aHPは、アップリンクの伝搬路によって歪みを受け基地局100にて受信される。このとき、アップリンクの伝搬路の歪みをH’とすると、基地局100で受信される歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1は、aH’HPと表現できる。
ここで、通信周波数と時間がほぼ同一とみなすことができる場合は、ダウンリンクの伝搬路の係数Hをフィードバックしなくとも、アップリンクのH’をHと基地局でみなせばよい。他方、ここではダウンリンクの伝搬路の係数Hとアップリンクの係数H’は、周波数または時間の関数であれば、HとH’は一致しないことが多々在る。特に周波数ダイバシティ効果を望むように構成された無線通信システムでは、一致しないことが多い。また、FDD(Frequency Division Duplex)方式や多数のサブキャリアを用いる通信方式の無線通信システムなども同様である。
【0030】
端末装置200から、第1の返送パイロット信号と同じフレーム(周波数)の別のスロットを使用して、先ほど基地局100から送信されたパイロット信号Pと同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信する。すなわち、第1の返送パイロット信号と第2の返送パイロット信号は、同一周波数帯でほぼ同時に送信される。
このとき、第2の返送パイロット信号は、パイロット信号送信部220によって生成される。端末装置200から送信された第2の返送パイロット信号(パイロット信号P)は、アップリンクの伝搬路の歪みH’を受けて、基地局100で受信される。基地局100で受信される歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2は、H’Pと表現できる。
【0031】
次に、基地局100において伝搬路情報推定部120は、端末装置200から受信した歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1と歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2とを用いて、ダウンリンクの伝搬路情報を推定する。
伝搬路情報推定部120による伝搬路情報の推定は、歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1及び歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2を比較演算することによって伝搬路歪みHを得る。
当該比較演算を数式化すれば下記数1に記載された式1となる。当該式1は、S1を変形してS2を代入した式である。式1から分かるようにS1とS2と既知の実定数である定数aとから容易にHを算出できる。なお、定数aは、端末装置200において第2の返送パイロット信号に対しても掛け加えておくことによって、動的に変動させることができる。ただし、第2の返送パイロット信号の送出が大きくなる。
【0032】
【数1】
【0033】
また、端末装置200から、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号について、それぞれの振幅を時間軸に対して反転させて送信するようにしてもよい。このようにすれば、基地局100で反転したそれぞれの歪みを受けた第1の返送パイロット信号S1及び歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2から、容易にHを算出できると共に、既知のパイロット信号と異なる信号波形となり、混信などの問題が生じにくくなる。
【0034】
このように動作させることによって推定された伝搬路情報は、基地局100および端末装置200によって通信品質の向上に使用される。当該基地局100および端末装置200とのダウンリンクの伝搬路情報の推定は、高速且つアップリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックできている。
【0035】
以上、説明の簡略化のため基地局100および端末装置200において一つずつのアンテナを利用して、ダウンリンクの伝搬路情報を、基地局側にフィードバックする方法を示した。
【0036】
次に、第2の実施形態の無線通信システム2を図3に基づいて説明する。
【0037】
第1の実施形態では、1つの基地局100のアンテナと1つの端末装置200のアンテナの構成において、伝搬路情報をフィードバックする方法を示した。
しかしながら、基地局においてダウンリンクの伝搬路情報を使用する無線通信システムでは、送信側においてビームフォーミングを行う場合や、固有モード伝送などのMIMO通信を行う場合が例示できる。ビームフォーミングは、基地局のアンテナが複数であることが必要条件である。また、MIMOは、基地局と端末のアンテナの双方が複数であることが必要条件である。
従って、第2の実施形態では、基地局のアンテナと端末装置のアンテナがそれぞれ複数の場合を示す。以下では、基地局のアンテナをM個、端末装置のアンテナをN個として説明する。
【0038】
無線通信システム2は、基地局300(BS)、無線端末装置400(MS)から構成される。
【0039】
基地局300は、それぞれのアンテナから送出するパイロット信号を生成して送出するパイロット信号送信部310と、各アンテナから受信したそれぞれの第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号から、そのアンテナを介して通信したダウンリンクの伝搬路情報を推定する伝搬路情報推定部320を有する。
【0040】
無線端末装置400は、基地局300からそれぞれのアンテナを介して受信したパイロット信号を量子化を行わずにそれぞれ第1の返送パイロット信号として送信するパイロット信号返送部410と、それぞれのアンテナを介して基地局300から受信したパイロット信号と同様の内容の信号をそれぞれ第2の返送パイロット信号として送信するパイロット信号送信部420とを有する。
【0041】
無線通信システム2において複数のアンテナを利用して通信すると、複数の伝搬路が形成される。基地局300でM個のアンテナ、無線端末装置400でN個のアンテナを使用すると、M×N個の伝搬路(MIMO伝送路)を定義することができる。M×N個の伝搬路についてそれぞれの伝搬路情報を取得することで、基地局300と端末装置400間の通信品質を向上させることができる。なお、複数のアンテナを利用する場合は、予め割当てられたり通知されるなどして、それぞれのアンテナから送信されるパイロット信号は受信側にて分離可能に扱われる。
【0042】
次に、無線通信システム2の動作を説明する。
【0043】
基地局300から、それぞれのアンテナからそれぞれのパイロット信号P1〜Mを送信する。パイロット信号P1〜Mは、無線端末装置400においても既知のものである。基地局300から送信されたパイロット信号P1〜Mは、それぞれのダウンリンクの伝搬路によって歪みを受け無線端末装置200にて受信される。
【0044】
次に、端末装置400から、受信した歪みを受けたそれぞれのパイロット信号に既知の値をかけ加えてそれぞれ第1の返送パイロット信号として送信すると共に、受信したパイロット信号P1〜Mと同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号としてそれぞれのアンテナから送信する。
このとき、端末装置400は、品質のよいアンテナを適応的に選択して、第1及び第2の返送パイロットを送信することとしてもよい。
なお、上記第1の実施形態で示したように、第2の返送パイロット信号に第1の返送パイロット信号と同じ既知の値をかけ加えて送信などの変更を加えてもよい。
【0045】
次に、基地局300において伝搬路情報推定部320は、適宜使用するそれぞれのMIMO伝搬路について、端末装置400から送信されて所定のアンテナから受信したそれぞれの第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号から、パイロット信号P1〜Mのたどったダウンリンクの伝搬路情報を推定する。
【0046】
ここで、MIMO伝搬路の基地局300のアンテナ1と無線端末装置400のアンテナ1との間の伝搬路のダウンリンクとアップリンクの係数h11とh’11に着目すると、係数h11とh’11は、第1の実施形態のダウンリンクの係数Hをh11に、アップリンクの伝搬路の係数H’をh’11にと見做すことができる。
【0047】
すなわち、第1の実施形態と同様のパイロット信号の送信方法で、伝搬路歪みh11を基地局300にフィードバックでき、伝搬路歪みh11について伝搬路情報を取得することができる(図3参照)。
【0048】
他のhnmについても同様に、第1の返送パイロット信号S1nmと歪みを受けた第2の返送パイロット信号S2nmを用いて比較演算することで、伝搬路歪みhnmを求めることができる。ここで、nとmは、それぞれ基地局300のm番目のアンテナ、無線端末装置400のn番目のアンテナを示す。
【0049】
以下にMIMO伝搬路のそれぞれの伝搬路歪みを示す式2を数2に示す。
【0050】
【数2】
【0051】
図3中では、最後のMIMO伝搬路にあたる伝搬路歪みhNMについて、伝搬路歪みh11と同様に示している。伝搬路歪みhNMは、基地局300のM番目のアンテナと無線端末装置400のN番目のアンテナとの間にあたるMIMO伝搬路の伝搬路情報である。なお、他の伝搬路歪みについては図中の記載を省略する。
【0052】
推定された各MIMO伝搬路情報は、基地局300および端末装置400によって通信品質の向上に使用される。
【0053】
なお、本実施形態では、基地局と端末装置とが1対1のMIMO通信について説明したが、1対多のMIMO通信(マルチユーザMIMO)や多対1通信などでも同様に、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送り返すことで伝搬路情報をフィードバックできる。
【0054】
すなわち、基準信号を送信する無線機と基準信号を受信する無線機との間の伝搬路情報を、高速且つフィードバックに要するオーバヘッドを少なくして取得できる。
【0055】
次に、第3の実施形態の無線通信システム3を図4に基づいて説明する。
【0056】
無線通信システム3は、基地局500(BS)および無線端末装置600(MS)から構成される。
【0057】
基地局500は、第1の実施形態の基地局100と同様の構成(パイロット信号送信部510、伝搬路情報推定部520)に加え、品質計測部530とフィードバック方法選択部540を有する。
【0058】
品質計測部530は、アップリンクの品質を計測する手段として動作する。品質は、例えば、S/N比を用いる。
【0059】
フィードバック方法選択部540は、品質計測部530からの品質を示す情報に応じて、無線端末装置600でのフィードバック方法を適応的に選択する。
【0060】
無線端末装置600は、第1の実施形態の無線端末装置200と同様の構成(パイロット信号返送部610、パイロット信号送信部620)に加え、ダウンリンクの伝搬路情報を量子化してフィードバックする方法を行う伝搬路情報量子化フィードバック部630を有し、基地局500からのフィードバックする方法の指示に従い、伝搬路歪みをフィードバックする方法を選択する。
【0061】
伝搬路情報量子化フィードバック部630は、受信した信号に基づき伝搬路の歪みを推定する推定する手段と基地局500側に推定した値をフィードバックする手段などから構成させる。
【0062】
次に、無線通信システム3の全体の動作を説明する。
基地局500は、制御信号などを用いて通信品質を無線端末装置600から取得する。基地局500は、取得した通信品質に基づき、アップリンクの通信品質(S/N比など)がよいときには、第1の実施形態で説明したフィードバック方法を選択する。他方、アップリンクの品質が悪いときは、ダウンリンクの伝搬路情報を量子化してフィードバックする方法を選択する。基地局500は、選択した方法を無線端末装置600に通知する。
【0063】
その後、無線通信システム3は、選択された方法に基づいて、ダウンリンクの伝搬路の歪みについてフィードバックを行なう。
【0064】
このように動作させることで、伝搬路情報を基地局側で取得できる確実性などが向上する。
【0065】
なお、本実施形態では、第1の実施形態を用いて説明したが、第2の実施形態で示したMIMO通信においても同様に適用でき、通信品質の向上に寄与できる。また、基地局は、推定又は取得したダウンリンクの伝搬路情報を使用して、複数のアンテナを用いて行なうビームフォーミングを行なうビームフォーミング決定部やMIMO通信の送信ウェイトを決定する送信ウェイト決定部を動作させるようにしてもよい。
【0066】
次に、効果について説明する。
【0067】
1)ダウンリンクの伝搬路情報を量子化せずにアップリンクにのせて1シンボルでフィードバックできるため、伝搬路情報をフィードバックするためのオーバヘッドを軽減することができる。即ち、通信のスループットを向上させる効果がある。
【0068】
2)無線端末装置において、受信したパイロット信号をほぼそのまま送信するため、無線端末装置での演算量を軽減することができる。
【0069】
3)さらに、無線端末装置での処理が少ないため、フィードバックの時間を短縮できる。すなわち、パイロット信号を基地局が送信してから、その伝搬路情報を使用した送信を行うまでの、伝搬路の時間変化にかかる通信品質の劣化を軽減できる。換言すれば、時間変化の大きい伝搬路において通信品質を大きく向上させることができる。
本発明は、移動体通信方式や固定通信方式など様々な無線通信システムに使用できる。とりわけ、周波数分割複信および同様に複数の周波数帯を利用する無線通信システムにおいて、送信ビームフォーミング、固有モード伝送を行う場合に大きな効果を奏する。
また、無線端末装置が移動している場合にも大きな効果が期待できる。
【0070】
また、同様の信号処理方法で、無線端末装置から送信した基準信号を用いて、基地局から第1の返送基準信号および第2の返送基準信号を送信し、無線端末装置側でアップリンクの伝搬路情報を推定することもできる。
【0071】
また、一の無線局が、送信側と受信側の両方の手段を有することとしてもよい。当該構成は、メッシュ型、ツリー型ネットワークを構成し得る無線局に適する。また、ネットワークの構築に、伝搬路情報を使用できる。
【0072】
以上説明したように、本発明によれば、本発明によれば、一の無線局と他の無線局との間の伝搬路情報を、高速且つリンクのオーバヘッドを少なくフィードバックする無線通信システムおよび伝搬路情報の取得方法を提供できる。
【0073】
尚、無線通信システムの各部は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて適宜実現すればよい。ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた形態では、基地局又は無線端末装置をそれぞれ上記説明したフィードバック方法を実現するようにハードウェアをソフトウェアによって動作させればよい。例示すれば、RAMにフィードバックプログラムを展開し、当該プログラムに基づいて各装置の制御部(CPU)を各種手段として動作させる。
【0074】
また、上記実施の形態は適宜組み合わせることができる。
【0075】
また、本発明の具体的な構成は前述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。
【0076】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、前記基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、
前記第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、前記第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局と、
を有することを特徴とする伝搬路情報を推定する無線通信システム。
【0077】
[付記2]
パイロット信号を送信する手段と、アップリンクを介して受信した第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を比較演算してダウンリンクの伝搬路情報を推定する手段とを備える基地局と、
前記基地局からダウンリンクを介して受信したパイロット信号を量子化を行わずに第1の返送パイロット信号として送信する手段と、前記基地局から受信したパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信する手段とを備える無線端末装置と、
によって構成され、
前記基地局において、パイロット信号を送信し、
前記無線端末装置において、受信したダウンリンクの伝搬路の影響を受けたパイロット信号を量子化せずにその内容を第1の返送パイロット信号として送信すると共に、前記基地局から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信し、
前記基地局において、受信したアップリンクの伝搬路の影響を受けた前記第1及び第2の返送パイロット信号に基づいてダウンリンクの伝搬路情報を推定する
ことを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報をフィードバックする無線通信システム。
【0078】
[付記3]
前記基地局は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に伝搬路情報を推定可能とすることを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0079】
[付記4]
前記基地局は、推定した伝搬路情報を使用して、ビームフォーミングを決定可能とする手段、および/またはMIMO通信に用いる送信ウェイトを決定可能とする手段を有することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0080】
[付記5]
前記基地局および前記無線端末装置は、FDD(Frequency Division Duplex)方式を用いて通信することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0081】
[付記6]
前記無線端末装置は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送信可能であることを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0082】
[付記7]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいアンテナを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0083】
[付記8]
前記基地局は、制御信号を用いて取得したアップリンクの品質に基づいて、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を用いて伝搬路情報を推定する方法と、前記無線端末装置に伝搬路に関する情報を量子化させてフィードバックさせる方法を、適応的に選択する手段を有することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0084】
[付記9]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいチャネルを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の無線通信システム。
【0085】
[付記10]
第1の無線局から通信の基準として用いられる所定の基準信号を送信し、
受信側となる第2の無線局において、受信した伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信すると共に、前記所定の基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信し、
前記第1の無線局において、送り返されてきた前記第1の返送基準信号および前記第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった無線局間の伝搬路に関する伝搬路情報を推定して取得する
ことを特徴とする伝搬路情報の取得方法。
【0086】
[付記11]
基地局からパイロット信号を送信し、
端末において、受信したダウンリンクの伝搬路の影響を受けたパイロット信号を量子化せずにその内容を第1の返送パイロット信号として送信すると共に、前記基地局から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信し、
前記基地局において、受信したアップリンクの伝搬路の影響を受けた前記第1及び第2の返送パイロット信号に基づいてダウンリンクの伝搬路情報を推定する
ことを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0087】
[付記12]
前記基地局は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に伝搬路情報を推定することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0088】
[付記13]
前記基地局は、推定した伝搬路情報をビームフォーミングを決定することに用いることを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0089】
[付記14]
前記基地局は、推定した伝搬路情報をMIMO通信に用いる送信ウェイトを決定することに用いることを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0090】
[付記15]
前記基地局および前記無線端末装置は、FDD(Frequency Division Duplex)方式を用いてパイロット信号、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を通信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0091】
[付記16]
前記無線端末装置は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0092】
[付記17]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいアンテナを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0093】
[付記18]
前記基地局は、制御信号を用いて取得したアップリンクの品質に基づいて、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を用いて伝搬路情報を推定する方法と、前記無線端末装置に伝搬路に関する情報を量子化させてフィードバックさせる方法を、適応的に選択して前記無線端末装置に行わせることを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0094】
[付記19]
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいチャネルを適応的に選択して送信することを特徴とする上記付記に記載の伝搬路情報の取得方法。
【0095】
[付記20]
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、
前記基準信号を受信した他の無線局から送信された、伝搬路の影響を受けた基準信号に既知の値をかけ加えた第1の返送基準信号および前記基準信号と同様の内容の信号とを第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える
ことを特徴とする伝搬路情報を推定する無線局。
【0096】
[付記21]
通信の基準として用いられる基準信号を送信すると共に伝搬路情報を推定する無線局から、伝搬路の影響を受けて到達した基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、
前記基準信号の受信を受けて、前記無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段と
を備えることを特徴とする伝搬路情報を推定させる無線局。
【0097】
[付記22]
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、
他の無線局から基準信号を受信した場合に、受信した伝搬路の影響を受けている基準信号に既知の値をかけ加えて第1の返送基準信号として送信する手段と、
前記基準信号の受信を受けて、前記他の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段と、
自らが送信した基準信号に応じて送信された、第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、自らが送信した基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える
ことを特徴とする伝搬路情報を推定する無線局。
【符号の説明】
【0098】
1、2、3 無線通信システム
100、300、500 基地局(第1の無線局)
110、 310、510 パイロット信号送信部(基準信号送信部)
120、320、520 伝搬路情報推定部
200、400、600 無線端末装置(第2の無線局)
210、410、610 パイロット信号返送部(基準信号返送部)
220、420、620 パイロット信号送信部(基準信号送信部)
530 品質計測部
540 フィードバック方法選択部
630 伝搬路情報量子化フィードバック部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、前記基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、
前記第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、前記第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局と、
を有することを特徴とする伝搬路情報を推定する無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の無線局は基地局であり、前記第2の無線局は無線端末装置であり、
前記基準信号には、パイロット信号を用いて、第1の返送基準信号および第2の返送基準信号を第2の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号として、
前記基地局において、パイロット信号を送信し、
前記無線端末装置において、受信したダウンリンクの伝搬路の影響を受けたパイロット信号を量子化せずにその内容を第1の返送パイロット信号として送信すると共に、前記基地局から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信し、
前記基地局において、受信したアップリンクの伝搬路の影響を受けた前記第1及び第2の返送パイロット信号に基づいてダウンリンクの伝搬路情報を比較演算して推定する
ことを特徴とする請求項1記載の伝搬路情報をフィードバックする無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に伝搬路情報を推定可能とすることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局は、推定した伝搬路情報を使用して、ビームフォーミングを決定可能とする手段、および/またはMIMO通信に用いる送信ウェイトを決定可能とする手段を有することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局および前記無線端末装置は、FDD(Frequency Division Duplex)方式を用いて通信することを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末装置は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送信可能であることを特徴とする請求項2ないし5の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいアンテナを適応的に選択して送信することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記基地局は、制御信号を用いて取得したアップリンクの品質に基づいて、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を用いて伝搬路情報を推定する方法と、前記無線端末装置に伝搬路に関する情報を量子化させてフィードバックさせる方法を、適応的に選択する手段を有することを特徴とする請求項2ないし7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいチャネルを適応的に選択して送信することを特徴とする請求項2ないし8の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項10】
第1の無線局から通信の基準として用いられる所定の基準信号を送信し、
受信側となる第2の無線局において、受信した伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信すると共に、前記所定の基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信し、
前記第1の無線局において、送り返されてきた前記第1の返送基準信号および前記第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった無線局間の伝搬路に関する伝搬路情報を推定して取得する
ことを特徴とする伝搬路情報の取得方法。
【請求項1】
通信の基準として用いられる基準信号を送信する手段と、前記基準信号を受けて送り返されてきた第1の返送基準信号および第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった伝搬路に関する伝搬路情報を推定する手段とを備える第1の無線局と、
前記第1の無線局から伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信する手段と、前記第1の無線局から送信された基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信する手段とを備える第2の無線局と、
を有することを特徴とする伝搬路情報を推定する無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の無線局は基地局であり、前記第2の無線局は無線端末装置であり、
前記基準信号には、パイロット信号を用いて、第1の返送基準信号および第2の返送基準信号を第2の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号として、
前記基地局において、パイロット信号を送信し、
前記無線端末装置において、受信したダウンリンクの伝搬路の影響を受けたパイロット信号を量子化せずにその内容を第1の返送パイロット信号として送信すると共に、前記基地局から送信されたパイロット信号と同様の内容の信号を第2の返送パイロット信号として送信し、
前記基地局において、受信したアップリンクの伝搬路の影響を受けた前記第1及び第2の返送パイロット信号に基づいてダウンリンクの伝搬路情報を比較演算して推定する
ことを特徴とする請求項1記載の伝搬路情報をフィードバックする無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に伝搬路情報を推定可能とすることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局は、推定した伝搬路情報を使用して、ビームフォーミングを決定可能とする手段、および/またはMIMO通信に用いる送信ウェイトを決定可能とする手段を有することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局および前記無線端末装置は、FDD(Frequency Division Duplex)方式を用いて通信することを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末装置は、複数のアンテナを備え、伝搬路毎に第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を送信可能であることを特徴とする請求項2ないし5の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいアンテナを適応的に選択して送信することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記基地局は、制御信号を用いて取得したアップリンクの品質に基づいて、第1の返送パイロット信号および第2の返送パイロット信号を用いて伝搬路情報を推定する方法と、前記無線端末装置に伝搬路に関する情報を量子化させてフィードバックさせる方法を、適応的に選択する手段を有することを特徴とする請求項2ないし7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記無線端末装置は、前記第1及び第2の返送パイロットを送信するときに、品質のよいチャネルを適応的に選択して送信することを特徴とする請求項2ないし8の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項10】
第1の無線局から通信の基準として用いられる所定の基準信号を送信し、
受信側となる第2の無線局において、受信した伝搬路の影響を受けた基準信号を受信して、既知の値をかけ加えて前記影響を受けた基準信号を第1の返送基準信号として送信すると共に、前記所定の基準信号と同様の内容の信号を第2の返送基準信号として送信し、
前記第1の無線局において、送り返されてきた前記第1の返送基準信号および前記第2の返送基準信号から、前記基準信号がたどった無線局間の伝搬路に関する伝搬路情報を推定して取得する
ことを特徴とする伝搬路情報の取得方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−134820(P2012−134820A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285938(P2010−285938)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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