説明

無線通信ネットワークのノード群によって転送される信号からデバイスが位置する領域を特定するための方法及び装置

【課題】無線通信ネットワークのノード群によって転送される信号からデバイスが位置する領域を特定するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、デバイスのために繰返し実行される以下のステップ、ノード群の各ノードから、当該ノードが位置する領域を表す情報を受信するステップと、デバイスとノード群の各ノードとを隔てる距離を表す情報を取得するステップと、受信された情報及び取得された情報から、デバイスが位置する領域を計算するステップと、デバイスが位置する上記計算された領域を、ノード群の各ノードに転送するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、無線通信ネットワーク内のデバイスのロケーションを特定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、新たに設置される無線セルラー通信デバイスの基地局のように、グローバルポジショニングシステム(GPS:Global Position System)の機能又はデバイスを提供する専用デバイス又は移動電話のようなデバイスが益々多くなっている。
【0003】
そのような端末は、衛星からブロードキャストされる信号を受信することができない建物のようなエリア内に位置する場合がある。
【0004】
衛星によってブロードキャストされる信号を受信できる場合であっても、デバイスのロケーション、たとえば、デバイスが位置している建物の階を正確に特定することはできない。
【0005】
陸上通信装置のような複数の発信源によって送信されてデバイスによって取得可能である信号の到着時刻の観測結果に基づいて、デバイスとそれらの発信源とを隔てる距離を推定することは、デバイスの位置を特定できるようにする既知の技法の一例である。
【0006】
無線通信ネットワーク、たとえば、無線セルラー通信ネットワーク、又はアドホックネットワーク、又はセンサーをリンクするネットワークにおける、送信又は受信能力を有するノードの相対的又は絶対的なロケーションを、それらのノードを隔てる距離から特定することは多くの場合に正確ではない。Xmをd次元内のノードmの位置ベクトルとし、dm,nをノードmとnとの間の観測される距離とすると、十分な数の完全な観測結果がある場合には、各ノードの位置を厳密に計算することができる。これは、全ての観測値dm,nに対する連立非線形方程式dm,n=|Xm−Xn|を解くことによって行うことができる。グラフ剛性(graph rigidity)の原則を考慮に入れることによって、一意の解を得るための条件を取り扱うことができる。既知の絶対的なロケーションを有する幾つかのノードが存在する場合には、計算される位置は絶対的な位置であるが、そうでない場合には、幾つかのノードを基準として選択し、それらの基準に対して残りのノードのロケーションが相対的に特定される。
【0007】
実際には、それらの測定値は誤差em,nによって劣化しており、dm,n=|Xm−Xn|+em,nである。誤差は、たとえば、受信機における同期誤差、信号を転送する複数のノードの非同期性、及び信号サンプリングに起因する時間測定値の精度の欠損を含む場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡単な方法で、かつノードの場所がアプリオリ(a priori)に正確にわかっていない場合であっても、ノードが位置する領域を特定できるようにするための方法及びデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、無線通信ネットワークのノード群によって転送される信号からデバイスが位置する領域を特定するための方法に関する。
この方法は、デバイスのために繰返し実行される以下のステップ:
− ノード群の各ノードから、当該ノードが位置する領域を表す情報を受信するステップと、
− デバイスとノード群の各ノードとを隔てる距離を表す情報を取得するステップと、
− 受信された情報及び取得された情報から、デバイスが位置する領域を計算するステップと、
− デバイスが位置する上記計算された領域を、ノード群の各ノードに転送するステップと
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、無線通信ネットワークのノード群によって転送される信号からデバイスが位置する領域を特定するための装置にも関する。
この装置は、
− ノード群の各ノードから、当該ノードが位置する領域を表す情報を受信する手段と、
− デバイスとノード群の各ノードとを隔てる距離を表す情報を取得する手段と、
− 受信された情報及び取得された情報から、デバイスが位置する領域を計算する手段と、
− デバイスが位置する上記計算された領域を、ノード群の各ノードに転送する手段と、
− 上記受信する手段、上記入手する手段、上記計算する手段、及び上記転送する手段を繰返し制御する手段と
を備えることを特徴とする。
【0011】
それゆえ、何回かの繰り返しの後には、デバイスは自身が存在する領域のさらに良好な推定値を有するようになる。当該特定された領域をデバイスが転送するので、各ノードは自身が位置する領域を、デバイスが位置する領域を用いて精緻化することができる。
【0012】
特定の特徴によれば、ノード群の各ノードから受信される各領域は、少なくとも1つの多面体によって近似される。
【0013】
それゆえ、多面体は簡単な幾何学図形であるため、それらの多面体は容易に処理することができ、出力精度に大きな影響を及ぼすことなく、アルゴリズムの複雑度が低減される。
【0014】
特定の特徴によれば、少なくとも1つの多面体は、四面体に分解される。
【0015】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0016】
特定の特徴によれば、1つの多面体を分解した後に得られる各四面体について、当該四面体の少なくとも1つの点から少なくとも第1の距離だけ離れている、空間内の点を含む第1の中間領域が求められる。
【0017】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0018】
特定の特徴によれば、1つの多面体を分解した後に得られる各四面体について、当該四面体の少なくとも1つの点から多くとも第2の距離だけ離れている、空間内の点を含む第2の中間領域が求められる。
【0019】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0020】
さらに、デバイスが存在する領域を画定するために、ノードのロケーションの不確定性を考慮に入れることができる。
【0021】
特定の特徴によれば、1つの多面体を分解した後に得られる各四面体について、当該四面体に対して求められた第1の中間領域及び第2の中間領域の交わりである第3の中間領域が求められる。
【0022】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0023】
さらに、デバイスが存在する領域を画定するために、ノードのロケーションの不確定性を考慮に入れることができる。
【0024】
特定の特徴によれば、各第3の中間領域は、少なくとも1つの多面体によって近似される。
【0025】
それゆえ、多面体は簡単な幾何学図形であるため、それらの多面体は容易に処理することができ、出力精度に大きな影響を及ぼすことなく、アルゴリズムの複雑度が低減される。
【0026】
特定の特徴によれば、ノード群のうちの1つのノードから受信された領域を近似する各多面体について、第4の中間領域が求められ、第4の中間領域は、ノード群のうちの1つのノードから受信された領域を近似する多面体を構成する四面体に対して求められた第3の中間領域の和集合である。
【0027】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0028】
特定の特徴によれば、デバイスが位置する計算された領域は、第4の中間領域の交わりである。
【0029】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0030】
さらに、デバイスは幾つかのノードの領域を考慮に入れることができ、それによって、デバイス自体の領域のサイズが小さくなる。
【0031】
特定の特徴によれば、デバイスが位置する上記計算された領域は、少なくとも1つの多面体によって近似される。
【0032】
それゆえ、領域の計算の複雑度は非常に低い。
【0033】
特定の特徴によれば、この方法は、上記計算された領域が以前に計算された少なくとも1つの領域と異なる限り実行される。
【0034】
そのため、各ノードの領域は繰返しを通じて狭められる。
【0035】
特定の特徴によれば、本発明は、領域が特定されるデバイスによって実行される。
【0036】
特定の特徴によれば、デバイスは無線通信ネットワークのノードであり、この方法は各ノードによって実行される。
【0037】
そのため、ノード領域は相互に計算され、繰返しを通じて狭められる。
【0038】
さらに別の態様によれば、本発明は、プログラム可能デバイス内に直接ロード可能であるコンピュータープログラムに関する。このコンピュータープログラムは、プログラム可能デバイス上で実行される際に本発明による方法のステップを実施するための命令又はコードの一部を含む。
【0039】
コンピュータープログラムに関連する特徴及び利点は、本発明による方法及びデバイスに関連して先に記述されたのと同じであるので、ここでは繰り返さない。
【0040】
本発明の特徴は、一例の実施形態に関する以下の説明を読むことからさらに明らかになり、当該説明は添付の図面を参照しながら提示される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が実施される無線セルラー通信ネットワークを表す図である。
【図2】本発明が実施される基地局のようなデバイスのアーキテクチャを表す図である。
【図3】本発明による、デバイスのロケーションを特定するためのアルゴリズムの一例を開示する図である。
【図4】本発明による、領域を特定するためのアルゴリズムの一例を開示する図である。
【図5】デバイスが位置する領域を特定するために用いられる第1の中間領域の一例の図である。
【図6】デバイスが位置する領域を特定するために用いられる第2の中間領域の一例の図である。
【図7】デバイスが位置する領域を特定するために用いられる第1の中間領域及び第2の中間領域を合成することによって求められる第3の中間領域の一例の図である。
【図8】第3の中間領域の多面体への分解の一例の図である。
【図9】本発明に従って特定される、デバイスが位置する領域の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明が実施される無線セルラー通信ネットワークを表す。
【0043】
本発明は、本発明を実行するノードが基地局BSである一例において開示されることになる。
【0044】
本発明は、アドホックネットワーク又はセンサーネットワークにおいて実施することもできる。
【0045】
基地局BSは、ピコ基地局又はフェムト基地局及び/又はホーム基地局とすることもできる。
【0046】
ピコ基地局又はフェムト基地局は、数百又は数十平方メートルをカバーするセルを管理する。
【0047】
ホーム基地局は、ユーザーの自宅に位置する。
【0048】
図1においては、4つの基地局BS1、BS2、BS3、及びBS4からなる基地局群が示されている。基地局BS1、BS2、BS3、及びBS4からなる群の各基地局BSは信号を送信することができ、その信号は基地局群内の他の基地局BSによって受信され、基地局群内の基地局間を隔てる距離を求めるために用いられる。信号は、その信号を転送する基地局BSの地理的な位置に関する情報を含むことができる信号であってもよいし、または、基地局BSの位置をアプリオリに知っている移動端末MTによって受信される複数の信号の中から基地局BSiを一意に認識できるようにする信号である。
【0049】
図1の例においては、デバイスがノードである。ここで、デバイスは移動端末であってもよいことに留意されたい。
【0050】
簡単にするために、図1には4つの基地局BSしか示されていないが、基地局群は、さらに多くの数の基地局BSを含んでもよいし、さらに少ない数の基地局BSを含んでもよい。
【0051】
基地局BS群は、基地局BSiとそれに隣接する基地局を含む。
【0052】
図1において、基地局BS群は、基地局BS1とそれに隣接する基地局BS2〜BS4を含む。
【0053】
基地局BS1と基地局BS2との間の距離はd1,2で表される。基地局BS1と基地局BS3との間の距離はd1,3で表される。基地局BS1と基地局BS4との間の距離はd1,4で表される。基地局BS2と基地局BS3との間の距離はd2,3で表される。基地局BS3と基地局BS4との間の距離はd4,3で表される。基地局BS2と基地局BS4との間の距離はd4,2で表される。
【0054】
本発明によれば、各基地局BSi(i=1〜4)は、既知の距離又は区間に測定誤差があるものと仮定して、基地局BSiが位置する空間の領域を計算する。基地局BSiが位置する領域は、基地局BS群内の他の基地局BSから受信される信号と、基地局BS群内の互いの基地局BSによって計算されて転送される領域とから計算される。
【0055】
本発明によれば、基地局BS群内の各基地局BSiは、基地局群内の他の基地局から受信される領域に従って基地局BSiが位置する領域を精緻化し、当該基地局BSiが位置する精緻化された領域を、基地局群内の他の基地局に再び転送する。
【0056】
このプロセスは、領域精緻化の改善が見られなくなるまで繰り返し実行されるか、若しくは所定の繰返し回数だけ繰返し実行されるか、または、この繰返しプロセスは長期に渡って周期的に実行される。
【0057】
領域精緻化の各ステップにおいて、d次元における基地局BSiの領域Riは、基地局群内の他の基地局BSkによって与えられる領域Rkの推定値から、以下のように計算される。
【0058】
【数1】

【0059】
ただし、Ii,kは誤差ei,kの区間であり、Ω(i)は基地局BSiが属する基地局BS群内の他の基地局の集合であり、
【0060】
【数2】

【0061】
は次元dの数の集合であり、dは当該領域が特定される空間の次元である。
【0062】
そして、これらの領域は繰返し計算される。開始時においては、大きな領域が特定される基地局もあれば、その位置が分かっている場合には完全にロケーションを特定することができる基地局もある。収束するまでの間、繰り返しの度に領域は収縮し、収束するとそれ以上の改善がもたらされなくなって領域の収縮が止まる。
【0063】
本発明の特定の実現形態によれば、各領域は1つ又は複数の多面体によって近似することができる。その場合、1つ又は複数の多面体の角のみを基地局間で交換することができる。多面体の1つの特性は四面体に分解されることである。四面体は3次元における三角形である。
【0064】
1つの変形では、領域輪郭の定義を円弧、線に分割することができ、領域輪郭のみが交換される。
【0065】
基地局BSiの領域Riは、以下のように表すことができる。
【0066】
【数3】

【0067】
ただし、Ai,kは基地局BSkの領域Rkのみによって特定される領域であり、∩は交わりを表す。
【0068】
各領域Rkを四面体Tk,jの和集合に分解することによって、Aj,kは以下のように書き換えることができる。
【0069】
【数4】

【0070】
ただし、Bi,k,jは基地局BSkのみの四面体Tk,jのうちの1つから特定される領域であり、∪は和集合を表す。
【0071】
基地局BSiとBSkとの間で観測される距離はdi,kであり、距離di,kに関する誤差区間は[a,b]である。エリアBi,k,jは以下のように定義することができる。
【0072】
【数5】

【0073】
min(x,Tk,j)及びdmax(x,Tk,j)を、点xとTk,jの点との間の最小距離及び最大距離とする。
【0074】
このとき、Bi,k,jを以下のように定義することができる。
【0075】
【数6】

【0076】
本発明の特定の実現形態によれば、Bi,k,jは多面体Tk,jの境界要素から計算される。
【0077】
i,k,jは、以下の2つの集合の交わりによって求めることができる。
【0078】
【数7】

【0079】
第1の中間領域Ci,k,jの計算は、Tk,j内の少なくとも1つの点から少なくともdi,k−bだけ離れている、空間内の全ての点を見つけることによって行なわれる。
【0080】
第2の中間領域Di,k,jの計算は、Tk,j内の少なくとも1つの点から多くともdi,k−aだけ離れている、空間内の全ての点を見つけることによって行なわれる。
【0081】
第1の中間領域Ci,k,jと第2の中間領域Di,k,jとの交わりが、第3の中間領域Bi,k,jを与える。
【0082】
次のステップは、領域Riを少なくとも1つの四面体によって近似することである。
【0083】
図2は、本発明が実施される基地局のようなデバイスのアーキテクチャを表す図である。
【0084】
基地局BSは、たとえば、バス201によって互いに接続される構成要素と、図3及び図4において開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とに基づくアーキテクチャを有する。
【0085】
基地局BSは、専用の集積回路に基づくアーキテクチャを有することもできることに留意されたい。
【0086】
バス201は、プロセッサ200を、リードオンリーメモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203、無線インターフェース205、及びネットワークインターフェース206に接続する。
【0087】
メモリ203は、図3及び図4において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの変数及び命令を受信するように意図されるレジスタを含む。
【0088】
プロセッサ200は、ネットワークインターフェース206の動作及び無線インターフェース205の動作を制御する。
【0089】
リードオンリーメモリ202は、図3及び図4において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含み、それらの命令は、基地局BSが起動される際にランダムアクセスメモリ203に転送される。
【0090】
基地局BSは、ネットワークインターフェース206を通して通信ネットワークに接続することができる。たとえば、ネットワークインターフェース206は、DSL(デジタル加入者線)モデム、或いはISDN(統合サービスデジタル網)インターフェース等である。
【0091】
図3は、本発明によるデバイスのロケーションを特定するためのアルゴリズムの一例を開示する。
【0092】
本アルゴリズムは、基地局BS群の各基地局によって実行される。
【0093】
より厳密には、本アルゴリズムは、基地局BS群の各基地局BSのプロセッサ200によって実行される。
【0094】
本アルゴリズムは、基地局BS1のプロセッサ200によって実行される場合として開示されることになる。
【0095】
ステップS300は初期化段階であり、プロセッサ200は、基地局BS1が位置する領域を初期化する。たとえば、領域は、グローバルポジショニングシステム又はエリアコードから特定される。
【0096】
次のステップS301において、プロセッサ200は、無線インターフェース205において幾つかの測定値を取得できるか否か、及び、ネットワークインターフェース206を通して基地局群内の他の基地局BS2〜BS4から領域が受信されるか否かを調べる。
【0097】
測定値は、距離d1,2、d1,3、及びd1,4を表す。測定値は、たとえば、基地局間で転送される信号の信号減衰或いは到着時間から求められる。
【0098】
無線インターフェース205において測定値が取得でき、かつ、領域が受信されない限り、プロセッサ200はステップS301を実行する。
【0099】
無線インターフェース205において幾つかの測定値が取得でき、また基地局群内の他の基地局BS2〜BS4から領域が受信される場合には、プロセッサ200はステップS302に進む。
【0100】
受信される領域は、たとえば、多面体の角という形式で受信される。
【0101】
ステップS302において、プロセッサ200は、受信された領域、及び以前に特定された基地局BS1の領域を用いて、基地局BS1が位置する領域を計算する。
【0102】
領域計算は、図4を参照しながら詳細に開示される。
【0103】
次のステップS303において、プロセッサ200は、計算された領域を、ネットワークインターフェース206を通して基地局群内の他の基地局BS2〜BS4に向けて転送する。
【0104】
次のステップS304において、プロセッサ200は、基地局BS1の領域が精緻化される必要があるか否かを調べる。
【0105】
計算された領域が以前に特定された1つ又は複数の領域と概ね同一である場合には、領域は再び精緻化される必要はない。または、ステップS301〜S304が所定の回数だけ実行されると、基地局BS1の領域は精緻化される必要がなくなる。
【0106】
基地局BS1の領域が精緻化される必要があるとき、プロセッサ200はステップS301に戻る。
【0107】
そうでない場合には、プロセッサ200はステップS305に進む。
【0108】
ステップS305において、プロセッサ200は、最後に特定された領域において基地局BS1の位置を特定するために、位置決めアルゴリズムを実行する。
【0109】
たとえば、位置決めアルゴリズムが測定誤差の確率モデルに基づき、かつ基地局BS1の潜在的な位置xiについての事前確率密度関数pi(xi)が既知である場合には、結合確率密度を以下のように表すことができる。
【0110】
【数8】

【0111】
基地局BS1の位置が完全にわかっているか、或いは基地局BS1の位置が基準として選択される場合には、「事前(a priori)」はディラック関数であると見なされる。基地局BS1の位置が完全にわかっていない場合には、「事前(a priori)」は単に省かれる。
【0112】
たとえば、位置決めアルゴリズムは、最大事後(MAP)アルゴリズムを用いる。その場合、
【0113】
【数9】

【0114】
である。
【0115】
たとえば、位置決めアルゴリズムは、確率モデルが仮定されない場合には、観測値と推定値との間の距離を最小にする非線形最小二乗(NLLS)推定器を用いる。
【0116】
【数10】

【0117】
MAP及びNLLSは非凸最適化問題であり、回避されるべき極小値(local minima)が存在する。領域を計算すると、最適化問題は制約条件付き最適化問題になり、各領域は1つの基地局の位置に関する1組の制約と見なすことができる。
【0118】
領域が多面体によって近似される場合には、制約は一次不等式になる。また、ニュートン法、最急降下法、擬似焼きなまし法、拡張カルマンフィルタ(EKF)のような制約条件付き最適化アルゴリズムのための良好な出発点を選択するために、それらの領域を用いることもできる。
【0119】
たとえば、位置決めアルゴリズムは、ノンパラメトリック信念伝搬(NBP)のような確率的手法を使用し、この手法では、各基地局における周辺確率密度を求めるために、粒子によって表されるメッセージが異なる基地局間で交換される。粒子はモンテカルロ技法を適用することによって選択される。領域が構成されるとき、粒子はこれらの領域内で選択されることになる。
【0120】
次のステップS306において、プロセッサ200は、自身の位置を、他の基地局BSに向けて、かつ/又は移動端末に向けて、かつ/又は無線セルラー通信ネットワークのコアネットワークデバイスに向けて転送する。
【0121】
次のステップS307において、プロセッサ200は、基地局BS1の位置が精緻化される必要があるか否かを調べる。
【0122】
特定された位置が以前に特定された1つ又は複数の位置と概ね同一である場合、その位置は再び精緻化される必要はない。
【0123】
基地局BS1の位置が精緻化される必要がある場合には、プロセッサ200はステップS305に戻る。
【0124】
そうでない場合には、プロセッサ200は本アルゴリズムを中断する。
【0125】
図4は、本発明による、領域を特定するためのアルゴリズムの一例を開示する。
【0126】
本アルゴリズムは、基地局BS群の各基地局によって実行される。
【0127】
より厳密には、本アルゴリズムは各基地局BSのプロセッサ200によって実行される。
【0128】
本アルゴリズムは、基地局BS1のプロセッサ200によって実行される場合として開示される。
【0129】
ステップS400において、プロセッサ200は、基地局BS群内の他の各基地局BS2〜BS4によって転送された領域を入手する。領域は多面体形状を有する。
【0130】
次のステップS401において、プロセッサ200は、必要であれば、各領域を四面体に分解する。
【0131】
次のステップS402において、プロセッサ200は、以下の公式を用いて各第1の中間領域Ci,k,jを計算する。
【0132】
【数11】

【0133】
ただし、iは基地局BS1のインデックスであり、kは他の基地局BSkによって転送された領域のインデックスであり、jは領域Rkを形成する四面体のインデックスである。
【0134】
i,k,j領域の一例が図5に与えられる。
【0135】
図5は、デバイスが位置する領域を特定するために用いられる第1の中間領域の一例を示している。
【0136】
第1の中間領域Ci,k,jの計算は、Tk,j内の少なくとも1つの点から少なくともdi,k−bだけ離れている、空間内の全ての点を見つけることによって行なわれる。
【0137】
結果として、第1の中間領域Ci,k,jは、Tk,jの角を中心にして半径がdi,k−bに等しい球の外側領域の和集合をとることによって得られる。これは、図5によって示されており、図5は2次元の例であるので、Tk,jは三角形である。
【0138】
半径Radbがdi,k−bに等しい円Circ1は、その中心が角Cor1である円である。
【0139】
半径Radbがdi,k−bに等しい円Circ2は、その中心が角Cor2である円である。
【0140】
半径Radbがdi,k−bに等しい円Circ3は、その中心が角Cor3である円である。
【0141】
この場合、第1の中間領域Ci,k,jは、3つの円板Circ1〜Circ3の交わりを除く、全てのハッチングされた空間である。
【0142】
次のステップS403において、プロセッサ200は、以下の公式を用いて各第2の中間領域Di,k,jを計算する。
【0143】
【数12】

【0144】
第2の中間領域Di,k,jの一例が図6に与えられる。
【0145】
図6は、デバイスが位置する領域を特定するために用いられる第2の中間領域の一例を示している。
【0146】
第2の中間領域Di,k,jの計算は、Tk,j内の少なくとも1つの点から多くともdi,k−aだけ離れている、空間内の全ての点を見つけることによって行なわれる。
【0147】
四面体を考えるとき、第2の中間領域Di,k,jは、Tk,jと、半径di,k−aの球である構造要素との膨張演算(又は畳み込み)によって生成される。
【0148】
それは、各面をそれに直交する方向においてdi,k−aだけ外側に平行移動し、結果として生じた面を円柱及び球の一部と繋げることによって求めることができる。図6は、Tk,jが三角形であるときの2次元における第2の中間領域Di,k,jの一例を示している。
【0149】
半径Radbがdi,k−aに等しい円Circ1’は、その中心が角Cor1である円である。
【0150】
半径Radbがdi,k−aに等しい円Circ2’は、その中心が角Cor2である円である。
【0151】
半径Radbがdi,k−aに等しい円Circ3’は、その中心が角Cor3である円である。
【0152】
次のステップS404において、プロセッサ200は、第1の中間領域Ci,k,jと第2の中間領域Di,k,jとの交わりを求めることによって、各第3の中間領域Bi,k,jを計算する。
【0153】
第3の中間領域Bi,k,jの一例が図7において与えられる。
【0154】
図7は、デバイスが位置する領域を特定するために用いられる、第1の領域と第2の領域とを合成することによって求められる第3の領域の一例を示している。
【0155】
図7は2次元の例である。
【0156】
第3の中間領域Bi,k,jは、図7においてハッチングされている。
【0157】
ひとたび、図7のような各第3の中間領域Bi,k,jが求められると、各第3の中間領域Bi,k,jは多面体によって近似され、2次元の場合には図8に示されるような三角形によって近似される。
【0158】
図8は、第3の中間領域の多面体への分解の一例である。
【0159】
第3の中間領域Bi,k,jの輪郭の近似は、平面から構成される、より小さな領域輪郭dを考えることによって実行することができる。輪郭は円弧から構成されるので、幾つかの接平面を形成することができる。
【0160】
第3の中間領域Bi,k,jの2つの近似が図8に示されている。
【0161】
図8は2次元の例である。
【0162】
図8に示されるように、第1の近似は多面体Appr1及びAppr3から構成され、近似Appr1は単一の三角形から構成され、近似Appr3は複数の三角形から構成される多面体から構成される。
【0163】
第2の近似は多面体Appr2及びAppr3から構成され、近似Appr2は1つの多面体から構成され、近似Appr3は複数の三角形から構成される多面体から構成される。
【0164】
次のステップS405において、プロセッサ200は、第3の中間領域Bi,k,jから各第4の中間領域Ai,kを計算する。
【0165】
第3の中間領域Bi,k,jの和集合が、第4の中間領域Ai,kを形成する。
【0166】
次のステップS406において、プロセッサ200は、基地局BS1の領域R1を計算する。第4の中間領域Ai,kの交わりが、基地局が位置する領域R1の近似となる。
【0167】
基地局が位置する領域R1の一例が図9において与えられる。
【0168】
図9は、本発明に従って特定される、基地局が位置する領域の一例である。
【0169】
図9は2次元の例である。
【0170】
図9において、第4の中間領域A1,2は、基地局BS2が位置する領域R2から計算された第4の中間領域である。図9において、基地局BS2が位置する領域R2は、三角形T2,1である。第4の中間領域A1,2は、垂直線によってハッチングされているエリアである。
【0171】
図9において、第4の中間領域A1,3は、基地局BS3が位置する領域R3から計算された領域である。図9において、第4の中間領域A1,3は、第3の中間領域B1,3,1及びB1,3,2から構成されている。領域R3は、三角形T3,1及びT3,2から構成されている。第4の中間領域A1,3は、斜線によってハッチングされているエリアである。
【0172】
第4の中間領域A1,4は、基地局BS4が位置する領域R4から計算された領域である。図9において、領域R4は三角形T4,1である。第4の中間領域A1,4は、水平線によってハッチングされているエリアである。
【0173】
領域R1は、第4の中間領域A1,2とA1,3とA1,4との交わりである。
【0174】
当然、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の本発明の実施形態に対して数多くの変更を行なうことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークのノード群(BS2、BS3、BS4)によって転送される信号からデバイス(BS1)が位置する領域を特定するための方法であって、
該方法は、前記デバイスのために繰返し実行される以下のステップ:
− 前記ノード群の各ノードから、該ノードが位置する領域であって少なくとも1つの多面体によって近似される領域を表す情報を受信するステップと、
− 前記デバイスと前記ノード群の各ノードとを隔てる距離を表す情報を取得するステップと、
− 前記受信された情報及び前記取得された情報から、前記デバイスが位置する領域を計算するステップ(S303)と、
− 前記デバイスが位置する前記計算された領域を、前記ノード群の各ノードに転送するステップ(S304)と
を含むことを特徴とする、無線通信ネットワークのノード群によって転送される信号からデバイスが位置する領域を特定するための方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの多面体は、四面体に分解されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの多面体を分解した後に得られる各四面体について、該四面体の少なくとも1つの点から少なくとも第1の距離だけ離れている、空間内の点を含む第1の中間領域を求めるさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つの多面体を分解した後に得られる各四面体について、該四面体の少なくとも1つの点から多くとも第2の距離だけ離れている、空間内の点を含む第2の中間領域を求めるさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
1つの多面体を分解した後に得られる各四面体について、該四面体に対して求められた前記第1の中間領域及び前記第2の中間領域の交わりである第3の中間領域を求めるさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項3及び4に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の中間領域は、少なくとも1つの多面体によって近似されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ノード群のうちの1つのノードから受信された領域を近似する各多面体について、第4の中間領域が求められ、該第4の中間領域は、前記ノード群のうちの1つのノードから受信された領域を近似する多面体を構成する四面体に対して求められた前記第3の中間領域の和集合であること特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイスが位置する前記計算された領域は、前記第4の中間領域の交わりであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイスが位置する前記計算された領域は、少なくとも1つの多面体によって近似されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記計算された領域が以前に計算された少なくとも1つの領域と異なる限り実行されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記領域が特定されるデバイスによって実行されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイスは無線通信ネットワークのノードであり、前記方法は各ノードによって実行されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
無線通信ネットワークのノード群(BS2、BS3、BS4)によって転送される信号からデバイス(BS1)が位置する領域を特定するための装置であって、
− 前記ノード群の各ノードから、該ノードが位置する領域であって少なくとも1つの多面体によって近似される領域を表す情報を受信する手段(200)と、
− 前記デバイスと前記ノード群の各ノードとを隔てる距離を表す情報を取得する手段(200)と、
− 前記受信された情報及び前記取得された情報から、前記デバイスが位置する領域を計算する手段(200)と、
− 前記デバイスが位置する前記計算された領域を、前記ノード群の各ノードに転送する手段(200)と、
− 前記受信する手段、前記取得する手段、前記計算する手段、及び前記転送する手段を繰返し制御する手段(200)と
を備えることを特徴とする、無線通信ネットワークのノード群によって転送される信号からデバイスが位置する領域を特定するための装置。
【請求項14】
プログラム可能デバイス内に直接ロード可能であるコンピュータープログラムであって、該コンピュータープログラムは、プログラム可能デバイス上で実行される際に請求項1〜12に記載の方法のステップを実施するための命令又はコードの一部を含む、コンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−259434(P2011−259434A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−126615(P2011−126615)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【Fターム(参考)】