説明

無線通信モジュールおよび電気・電子機器

【課題】携帯機器端末などに内蔵される、安定した通信特性を有し、かつ低コストである無線通信モジュール、およびそれを備えた電気・電子機器を提供する。
【解決手段】無線通信モジュールは、ICチップモジュールと、ICチップモジュールに接続される導体を絶縁被覆した電線からなるループアンテナ部分と、電線をはめ込み保持するための溝を有する枠とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信モジュールおよびそれを実装した携帯端末など電気・電子機器に関するものであり、特に、電気・電子機器に実装した場合に、所望の通信特性を安定して発揮するだけでなく、機器の低コスト化に寄与できる無線通信モジュールおよびそれを内蔵した電気・電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency-Identification)回路を内蔵した非接触型ICカード(以下、RFIDカードと称す)が、使い易い、耐久性が高い、複数カードへの同時アクセスが可能、メンテナンス性が高いなどの特徴を活かし大きく普及している。RFIDカードと非接触ICカードリーダ/ライタ(以下、RFIDカードリーダ/ライタ)との通信は、RFIDカードリーダ/ライタから発信される電磁波によって行われる。RFIDカードは、例えばICチップと回路およびループアンテナを樹脂でラミネートした構造である。そのシステムの適用事例として、電子マネー、交通機関決済、社員証/会員証などの個人認証、カードキーなど多岐に渡っている。
【0003】
また、RFIDカードを内蔵した携帯電話端末が提供されており、携帯電話端末を用いることにより、例えば、店舗に設置されているカードリーダ/ライタとの間で精算を容易に行える。RFIDカード内蔵携帯電話端末は、日本における主要携帯電話会社で採用が進んでいる。また、自販機やパソコンなどにもRFIDカードリーダ/ライタが搭載され始めており、RFIDカードを内蔵した携帯機器端末の用途が大きく広がっている。
【0004】
携帯電話など携帯機器端末へ実装されるRFIDカードには、主として(1)ラミネートによるカードタイプや(2)リジッド基板タイプ、(3)FPC(フレキシブル基板)タイプがある(例えば、特許文献1,2,3)。図2は(1)ラミネートによるカードタイプの無線通信モジュールの概略図である。アンテナ回路21とICチップモジュール22にプラスチックフィルムなどの絶縁フィルム23を貼り合わせて形成される。図3は(2)リジット基板タイプの無線通信モジュールの概略図である。リジット基板24の表面にICチップモジュール25を搭載するともに金属膜のアンテナ回路パターン26を形成するものである。
【特許文献1】特開2004−304634号公報
【特許文献2】特開2005−217946号公報
【特許文献3】特開2007−114952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
普及に伴い、RFIDカードには低コスト化が要求されている。コスト面から(2)リジット基板タイプが主流になりつつある。しかしながら、(2)リジット基板タイプでもコスト的に十分とは言えず、更なる低コスト化が必要となっている。
【0006】
そこで本発明の目的は、携帯機器端末などに内蔵される、安定した通信特性を有し、かつ低コストである無線通信モジュール、およびそれを備えた電気・電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の無線通信モジュールは、ICチップモジュールとICチップモジュールに接続される導体を絶縁被覆した電線からなるループアンテナ部分と、電線をはめ込み保持するU字状溝を有する枠を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の電気・電子機器は上記無線通信モジュールを内蔵したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ガラエポ基板による無線通信モジュールのさらなる低コスト化が実現できる。また、無線通信モジュールのループアンテナ部を電線にすることで生ずる問題点(電線の動き)を対策し、安定した通信特性を付与できる。その結果、それを実装する携帯機器等の電気・電子機器の低コスト化に貢献ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、リジット基板、例えばガラス繊維入りエポキシ樹脂(以下、ガラエポ基板と称す)におけるループアンテナパターン部分を、絶縁被覆した電線に置換したものを提案する。
【0011】
但し、電線をループアンテナとしたガラエポ基板による無線通信モジュールは、アンテナの役目を果たす電線が柔軟で動き易いため、携帯電話の組み立て、輸送そして使用時にその部品(電池パックや基板など)と振動などで距離が変化し、アンテナ特性が不安定になる可能性がある。そこで、電線について、その動きをできるだけ抑える目的で短尺化することが考えられる。しかしその結果、ガラエポ基板にループアンテナ部分を一部回路形成する必要があり、電線を適用したコスト低減効果が十分得られないことが懸念される。
【0012】
そこで本発明では、電線をU字状溝の枠に挿入して固定する構成を採用している。それにより電線の動きが防止できるため、基板の寸法を必要以上に大きくする必要がない。基板と枠は接着剤などで接着させる。また、電線によるアンテナ部分を挿入するU字状溝の構造は、実装する携帯機器端末構造に合わせて3次元的に自由に変化可能である。プラスチックの枠を製作し、それにワイヤを挿入する作業を加えても、本発明ではガラエポ基板が小さく済むため、結果としてコスト低減が図れる。加えて、電線を枠に入れることで機器構造設計の裕度が広がる、電線長のミスが軽減するなどの効果も現われる。
【0013】
図1(a)は本発明の無線通信モジュール全体の概略図である。無線通信モジュール1はリジット基板部2と電線からなるループアンテナ部分3とから構成される。リジット基板部2は、リジット基板4と、リジット基板4表面に搭載されたICチップモジュール5と、リジット基板4表面に形成されたループアンテナの一部を構成する回路パターン6とからなる。ICチップモジュール5と回路パターン6は電気的に接続されるように配線されている。
【0014】
本発明においてループアンテナ部分3は複数の電線7からなる。図1(b)にループアンテナ部分3の断面図を示す。電線7は銅線などの導体8を絶縁層9により絶縁被覆したものである。本実施形態では4本の電線7を用いている。電線7の本数は適宜選択することができる。また、複数の電線7は撚り合わせても良い。電線7はU字溝状の枠10にはめ込まれて保持される。電線7はリジット基板部4の回路パターン6と接続部11において電気的に接続される。接続ははんだ接合により行われる。
【0015】
U字状溝の枠10の材質は、絶縁性の高い硬質のプラスチックで、かつ射出成形性の高いPP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファィド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、そしてPBT(ポリブチレンテレフタレート)などとする。電線7とリジット基板部4をはんだ接合するため、枠10は耐熱性の高いものが好ましい。尚、生産量が少なく、射出成形で製造するとコスト高になる場合など、その加工は状況に応じてフライス盤などを使った切削であってもよい。剛性の高いプラスチックの枠に電線を挿入することによって、アンテナ形状が安定維持され、上記不具合が大きく改善される。
【0016】
従って、本発明は従来のガラエポ基板による無線通信モジュールと比較し、アンテナ特性を維持しつつ、低コスト化できる効果が得られる。
【0017】
本発明は、無線通信モジュールのループアンテナに採用した電線をU字溝状の枠に挿入し固定した点に大きな特徴がある。重量面からU字溝状の枠が好ましいが、平板に切削機械等で溝を掘り電線を埋設する形式であっても構わない。
【0018】
本発明の効果の検証のため、ループアンテナ部分を電線としたガラエポ基板による無線通信モジュールの製作し、従来のガラエポ基板による無線通信モジュールと性能及びコストの比較評価を実施した。
【0019】
無線通信モジュールはFeliCa(登録商標)タイプとし、アンテナ部分は4ループとし、32AWGの電線で成形した。電線を挿入するU字状溝による枠はPP(ポリプロピレン)から成るものを射出成形で製作した。
【0020】
アンテナ部となる電線は4ループ分を撚り合せて一纏めに束ね、U字状溝の枠に挿入した。枠の肉厚は0.2mmとした。モジュールに印加する電波はFeliCaの規格である13.56MHzとした。
【0021】
上記モジュールを携帯電話に実装し評価した。その結果、本発明は従来技術と同等の通信特性を有しつつ、低価格で製作できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の無線通信モジュールを示す図であり、(a)は全体の概略図、(b)はAA線断面図である。
【図2】ラミネートによるカードタイプ無線通信モジュールの概略図である。
【図3】リジッド基板タイプ無線通信モジュールの概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 無線通信モジュール
2 リジット基板部
3 ループアンテナ部分
4 リジット基板
5 ICチップモジュール
6 回路パターン
7 電線
8 導体
9 絶縁層
10 枠
11 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップモジュールと
前記ICチップモジュールに接続される導体に絶縁被覆した電線からなるループアンテナ部分と、
前記電線をはめ込み保持するための溝を有する枠を備えることを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項2】
前記ICチップモジュールが搭載されるとともにループアンテナの一部の回路パターンが形成されたリジット基板部を備え、
前記回路パターンと前記電線からなるループアンテナ部分を接続した構成を特徴とする請求項1記載の無線通信モジュール。
【請求項3】
前記枠はPP、PPS、PET、PBTなどの絶縁性プラスチックからなることを特徴とする請求項1記載の無線通信モジュール。
【請求項4】
前記絶縁性プラスチックを射出成型や切削加工で製作することを特徴とする請求項3記載の無線通信モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の無線通信モジュールを内蔵したことを特徴とする電気・電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−15454(P2009−15454A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174382(P2007−174382)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】