説明

無線通信モジュール

【課題】小サイズ基板に、効率的に無線通信回路を配置することができる無線通信モジュールを提供する。
【解決手段】外部接続領域20と、ホストインターフェース領域40と、送信回路部32、受信回路部35、36及び通信制御部31を備える無線通信回路領域30とを基板10上に有する無線通信モジュールであって、
前記外部接続領域を前記基板の短手方向の一方の端部、前記ホストインターフェース領域を前記基板の短手方向の他方の端部、前記無線通信回路領域を前記外部接続領域と前記ホストインターフェース領域との間に配置し、
前記通信制御部を、前記基板上の長手方向の一方の端部に配置し、
前記送信回路部の部品を、前記通信制御部から前記基板上の長手方向に前記通信制御部の反対側の端部近傍まで延びるように配置するとともに、該端部近傍から前記外部接続領域側に向かって前記基板上の短手方向端部に沿って延びるように配置して略L字型を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信モジュールに関し、特に、外部通信用部品と接続するために外部接続領域と、ホスト機器と接続するためのホストインターフェース領域と、送信回路部、受信回路部及び通信制御部を備える無線通信回路領域とを基板上に有する無線通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)と呼ばれる高速モバイル通信技術が着目されている。かかるWiMAXにおいては、無線通信回路を搭載したUSB(Universal Serial Bus)タイプのWiMAXモジュールを用いるが、USBタイプのWiMAXモジュールは、通常のUSBの大きさを有しているのが一般的であった。
【0003】
かかる一般的なUSBのサイズを有するWiMAXモジュールにおいては、無線通信回路を構成する部品は、送受信の信号の移動が最短距離となるように、基板の長手方向に、送受信の信号の流れに沿って一直線に配置することが可能であり、信号の流れに沿った自然な部品配置を行うことができた。
【0004】
なお、プリント回路基板上の部品配置方法として、配置すべき部品の位置を容易に確定でき、設計者の負担を軽減し、放射雑音の削減が達成できることを目的とし、プリント回路基板の実装面における給電部の位置を決定する工程と、給電部の位置に基づいて部品配置領域を決定する工程と、それぞれが給電部の位置から所定距離離間した仮想の等距離線の複数で部品配置領域を分割し、複数の距離区分を決定する工程と、部品の消費電力の大きいものから小さくなる順に部品を選択して、距離区分の中の給電部の位置に近いものから遠くなる順に、選択された部品を距離区分に充填配置する工程と、を有する部品配置方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−251717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、WiMAXモジュールは、USBタイプだけではなく、ハーフミニPCI(Peripheral Component Interconnect)カードを内蔵するタイプも提案されている。かかるハーフミニPCIカードは、接続端子が規格で定められているため、規格に合わせてUSBタイプよりも小さなサイズの基板を用いる必要がある。その場合、無線通信回路の部品を、基板内に送受信の信号の流れに沿って一直線に配列することが不可能になってしまい、従来のデザインをそのまま適用することができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の構成においても、基板のサイズが小さくなった場合の部品配置方法までは考慮されておらず、やはりこの部品配置方法をそのまま適用することはできないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、ハーフミニPCIカード用の基板を始めとする小サイズ基板に、優れた回路機能を保ちつつ効率的に無線通信回路を配置することができる無線通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る無線通信モジュールは、外部通信用部品と接続するために外部接続領域(20)と、ホスト機器と接続するためのホストインターフェース領域(40)と、送信回路部(32)、受信回路部(35、36)及び通信制御部(31)を備える無線通信回路領域(30)とを基板(10)上に有し、該基板(10)が、前記無線通信回路領域(30)を送受信の信号の流れに沿って長手方向に一直線に配列できる長さを有しない無線通信モジュールであって、
前記外部接続領域(20)を前記基板(10)の短手方向の一方の端部、前記ホストインターフェース領域(40)を前記基板(10)の短手方向の他方の端部、前記無線通信回路領域(30)を前記外部接続領域(20)と前記ホストインターフェース領域(40)との間に配置し、
前記通信制御部(31)を、前記基板(10)上の長手方向の一方の端部に配置し、
前記送信回路部(32)の部品を、前記通信制御部(31)から前記基板(10)上の長手方向に前記通信制御部(31)の反対側の端部近傍まで延びるように配置するとともに、該端部近傍から前記外部接続領域(20)側に向かって前記基板(10)上の短手方向端部に沿って延びるように配置して略L字型を形成し、
前記受信回路部(35、36)を、前記通信制御部(31)と前記送信回路部(32)との間に配置したことを特徴とする。
【0010】
また、前記受信回路部(35、36)の部品は、受信信号の流れ及び前記送信回路部(32)の部品に沿って略L字型に配置されてもよい。
【0011】
また、前記無線通信領域(30)の角部に発振回路(37)を有してもよい。
【0012】
また、前記発振回路(37)は、前記受信回路部(35、36)と離間した位置に配置されてもよい。
【0013】
また、前記送信回路部(32)はパワーアンプ(50)を有し、
該パワーアンプ(50)は、前記通信制御部(31)と離間した位置に配置されてもよい。
【0014】
また、前記発振回路(37)は、前記通信制御部(31)に近接した位置に配置されてもよい。
【0015】
また、前記外部接続領域(20)、前記インターフェース領域(40)及び前記無線通信領域(30)は、前記基板(10)の表面(11)上に配置され、
前記発振回路(37)は、前記基板(10)の裏面上に配置されてもよい。
【0016】
また、前記発振回路(37)の直下には基板貫通孔(100)が形成され、
前記パワーアンプ(50)の直下にはスルーホール(101)が形成されてもよい。
【0017】
また、前記パワーアンプ(50)は、略L字型に配置された前記送信回路部(32)の角部に配置されてもよい。
【0018】
また、前記受信回路部(35、36)は、並列して配置された第1の受信回路部(35)と第2の受信回路部(36)とを有してもよい。
【0019】
なお、括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた無線通信機能を維持しつつ、小さなサイズの基板上に無線通信回路を効率的に配置することができ、省スペースで無線通信モジュールを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る無線通信モジュールに搭載される基板の一例を示した構成図である。
【図2】本実施例に係る無線通信モジュールに搭載される基板の一例の構成を配線パターンも含めて示した図である。
【図3】本実施例に係る無線通信モジュールの一例の機能ブロックを示した図である。
【図4】本実施例に係る無線通信モジュールの放熱構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0023】
図1は、本発明の実施例に係る無線通信モジュールに搭載される基板10の一例を示した構成図である。図1において、基板10は、表面11上に外部接続領域20と、無線通信回路領域30と、ホストインターフェース領域40とを有する。外部接続領域20とホストインターフェース領域40は、基板10の短手方向の端部にそれぞれ配置されている。つまり、一方の短手方向端部に外部接続領域20が配置され、他方の短手方向端部にホストインターフェース領域40が配置された構成となっている。そして、外部接続領域20とホストインターフェース領域40との間に、無線通信回路領域30が配置されている。つまり、基板10の短手方向に、外部接続領域20、無線通信領域30及びホストインターフェース領域40が順に配置されている。
【0024】
図1において、本実施例に係る無線通信モジュールは、基板10の表面11上の無線通信回路領域20内に無線通信回路が搭載され、WiMAXモジュール等に用いられる無線通信モジュールとして装置内部に搭載可能な構成となっている。基板10には、ハーフミニサイズPCIカード等の、USBタイプに用いられる基板よりも小さいサイズの基板10が用いられる。USBタイプに用いられる基板の場合、外部接続領域20とホストインターフェース領域30とを基板の長手方向の両端部に、無線通信回路をその間に配置し、送受信の信号の流れに沿って長手方向に一直線状に配置することが可能である。しかしながら、ハーフミニサイズPCIカードのようなUSBタイプ用基板よりも大幅に小さい、例えば、1/2程度の長さしか有しない基板10の場合には、無線通信回路の部品を、基板10の長手方向に一直線状に配置することができない。よって、本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、USB用基板の場合と異なり、基板10の短手方向に、外部接続領域20、無線通信領域30及びホストインターフェース領域40が配置された構成となっている。
【0025】
外部接続領域20は、外部通信用の部品又は装置と接続を行うための領域であり、外部通信用の部品又は装置と接続するためのコネクタ等が配置される。図1においては、外部接続領域20は、アンテナコネクタ21、22と、GNDパターン23、24とを有する。
【0026】
アンテナコネクタ21、22は、基板10の外部に設置されたアンテナとの接続を行うための端子であり、外部との接続が容易な位置に設けられる。アンテナコネクタ21、22は、複数備えられてよく、例えば、図1に示すように、2つ備えられてもよい。一般的に、無線通信の受送信は、アンテナの電波状況に応じて、電波状況の良いアンテナを用いるという切り替え動作を行うことが多いため、必要に応じて複数のアンテナコネクタ21、22を備えるようにしてよい。
【0027】
また、GNDパターン23、24は、接地電位を供給するための配線パターンであり、必要に応じて設けられてよい。図1においては、GNDパターン23、24は、アンテナコネクタ21、22の外側に設けられている。
【0028】
無線通信回路領域30は、無線通信回路が形成された領域であり、無線通信回路を構成するのに必要な部品が搭載されて配置される。無線通信回路領域30は、通信制御部31と、送信回路部32と、受信回路部35、36と、発振回路37と、スイッチ61、62とを有する。
【0029】
通信制御部31は、ベースバンド処理を行うとともに、送信回路部32及び受信回路部35、36の通信動作を制御する手段である。通信制御部31は、例えば、BB(Base Band、ベースバンド)IC(Integrated Circuit、集積回路)と、RF(Radio Frequency)ICとが一体となったBB/RF/ICが用いられてよい。よって、通信制御部31は、ベースバンド処理部と、RF回路部とを内部に備えてよい(図示せず)。
【0030】
ベースバンド処理部は、送信を行う前のデジタル信号を処理するデジタル回路部である。RF回路部は、ベースバンド処理された信号をアンテナ送信周波数に変換するとともに、アンテナ受信信号をベースバンド処理部で処理できる周波数に変換する。また、通信制御部31は、上述のように、送信回路部32と受信回路部35、36の通信制御も行う。
【0031】
通信制御部31は、基板10の表面11の長手方向の端部、つまり無線通信回路領域30内の端部に設けられる。これにより、通信制御部31に接続される送信回路32及び受信回路35、36を、基板10の長手方向に延在させて配置することが可能となる。また、通信制御部31は、基板の短手方向において、外部接続領域20と隣接するように、無線通信回路領域30の外部接続領域20側の端部に配置されている。これにより、無線通信回路領域30内の短手方向のホストインターフェース領域40側に、部品配置スペースを形成することが可能となる。
【0032】
送信回路部32は、通信制御部31から出力された送信信号を送信するための送信回路を構成し、信号送信に関与する信号送信回路33と、電力供給を管理する電力回路34とを有する。信号送信回路33は、パワーアンプ50と、バンドパスフィルタ53と、ローパスフィルタ54と、スイッチ55とを有する。また、電力回路34は、コンデンサ51と、FET(Field Effect Transistor、電界効果トランジスタ)52とを有する。なお、各回路とも、主要な構成要素のみ参照符号を付し、細かな構成要素には参照符号を付していない。参照符号を付していない構成要素については、その説明を省略する。
【0033】
送信回路部32は、全体的に見ると、通信制御部31の中央のホストインターフェース領域40側の位置から、基板10の長手方向に沿って右側に延びて形成されている。そして、基板10の右側の長手方向端部に到達してから、基板10の短手方向端部に沿ってホストインターフェース領域40側から外部接続端子領域20の側に延びた略L字型の形状となっている。かかる配置構成により、送信回路部32は、無線通信回路領域30の長手方向及び短手方向の両方を延在方向の配置スペースとして用いることができ、基板10の長手方向に送信回路部32の部品を一直線状に配列することができない場合であっても、略L字型に折り曲げた形状で、送信信号の流れに沿った部品の配置に必要な長さを確保することができる。
【0034】
また、送信回路部32は、送信信号を生成する信号送信回路33と、電力供給を管理する電力回路34とを有するが、信号送信回路33のみの形状についても、通信制御部31のホストインターフェース領域40側から右側に基板10の長手方向に延び、基板10の長手方向端部に到達した地点から基板短手方向端部に沿って外部接続領域20側に向かって延びる略L字型の形状となっている。このように、本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、基板10は、信号送信回路33のみの部品についても、長手方向に一直線に配列できる長さを有しないが、信号送信回路33を基板10の長手方向及び短手方向の双方に延在させる略L字型の形状とすることにより、送信信号の流れの順序に沿った状態で部品を配列することができる。
【0035】
なお、信号送信回路33において、バンドパスフィルタ53は、希望の周波数帯域の高周波信号のみを取り出す手段であり、パワーアンプ50は、高周波信号を増幅する手段である。また、ローパスフィルタ54は、余分な高調波を除去する手段であり、スイッチ55は、送信信号をアンテナコネクタ21、22のいずれから送信するかを切り替えるための手段である。なお、スイッチ55は、スイッチ61、62を介してアンテナコネクタ21、22に接続されているので、実際には、スイッチ61とスイッチ62との接続を切り替えることにより、アンテナコネクタ21とアンテナコネクタ22との接続切り替えを行う。
【0036】
電力回路34においては、コンデンサ51は電荷を蓄積するための手段であり、FET52は、パワーアンプ50に電力供給を行うためのスイッチング素子である。電力回路34は、送信信号の生成の流れには関与していないが、信号送信回路33のパワーアンプ50に電力供給を行うという点で、送信回路部32の一部を構成している。
【0037】
なお、電力回路34は、必ずしも基板10の表面11側に形成されている必要は無く、例えば、基板10の裏面側に形成されていてもよい。電力回路34においては、送信信号の流れを意識する必要が無いので、パワーアンプ50に適切に電力を供給できれば、種々の位置に配置することができる。
【0038】
受信回路部35は、アンテナコネクタ21及びスイッチ61を介して入力された信号を受信するための第1の受信回路部である。受信回路部35は、バンドパスフィルタ70と、ローノイズアンプ71と、バンドパスフィルタ72とを有する。バンドパスフィルタ70、72は、希望の周波数帯域の受信信号を得るための手段であり、ローノイズアンプ71は、受信信号を増幅するための手段である。
【0039】
図1に示すように、受信回路部35も、基板10の短手方向と長手方向に延在する部分を有する略L字型の形状を有する。これにより、受信回路部35を一直線状に配列することができない場合であっても、受信信号の流れに沿って部品を配列することができる。
【0040】
受信回路部36は、アンテナコネクタ22及びスイッチ62を介して入力された信号を受信するための第2の受信回路部である。受信回路部36は、バンドパスフィルタ73と、ローノイズアンプ74と、バンドパスフィルタ75とを有する。受信回路部35と同様に、バンドパスフィルタ73、75は、希望の周波数帯域の受信信号を得るための手段であり、ローノイズアンプ74は、受信信号を増幅するための手段である。
【0041】
図1に示すように、受信回路部36も、受信回路部35と同様に、基板10の短手方向と長手方向に延在する部分を有する略L字型の形状を有する。受信回路部36は、受信回路部35の更に内側にあり、受信回路部35より更に許容スペースが小さいが、基板10の長手方向と短手方向の双方を用いて引き回すように延在させることにより、受信信号の流れに沿った状態で、受信信号の処理順序通りに部品を配列することができる。
【0042】
図1において、送信回路部32は、受信回路部35、36よりも外側に配置されている。これは、細かい部品も含めて考えると、送信回路部32の方が、受信回路部35、36よりも部品点数が多く、占める領域の長さが長くなるからである。よって、送信回路部32は、受信回路部35、36よりも外側に配置し、回路を配置するスペースをより長く確保できる構成としている。
【0043】
また、送信回路部32は、パワーアンプ50を構成部品として備えているが、パワーアンプ50を通過した後の増幅信号は、通信制御部31から送信回路部32に信号が入力される位置から離間させることが好ましい。これは、増幅後の信号が、送信回路部32への入力信号に影響を与え、雑音等を発生させるおそれがあるからである。図1に示すように、本実施例に係る無線通信モジュールの構成によれば、パワーアンプ50を通過した後の送信信号は、通信制御部31とは反対側の長手方向端部に配置されたローパスフィルタ54、スイッチ55、スイッチ61、62を通過する。よって、増幅後の送信信号は、通信制御部31とは反対側の基板端部を通過する配置となっているので、送信回路部32への入力信号に与える影響を最小限にすることができる。
【0044】
この点、例えば仮に、電力回路34を基板10の裏面側に配置し、送信回路部32を受信回路部35、36よりも内側に配置し、信号送信回路33の部品を密集させて最も内側に配置したとすると、パワーアンプ50を通過した後の増幅された送信信号が、送信回路部32への入力信号と接近し、信号経路上も好ましくない配置となる。
【0045】
これに対し、本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、送信回路部32を最も外側に配置し、受信回路部35、36を通信制御部31と送信回路部32との間に挟むような配置に構成している。これにより、部品点数の比率のみならず、パワーアンプ50により増幅された送信信号が送信回路部32に入力される送信信号に与える影響も最小限とすることができ、回路機能上も優れた配置構成とすることができる。
【0046】
パワーアンプ50は、送信回路部32の経路内のいずれの箇所にも配置することができるが、通信制御部31から離間して配置することがより好ましい。パワーアンプ50は、駆動により発熱するので、通信制御部31に熱を与えるおそれがあるからである。本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、パワーアンプ50は、送信回路部32の略L字型の角部に配置されており、通信制御部31と反対側の基板端部に配置されている。よって、本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、パワーアンプ50の発熱が、通信制御部31に悪影響を与えるおそれが少ない配置構成となっている。
【0047】
発振回路37は、送信回路部32及び受信回路部35、36の基準となるクロック信号を生成する回路である。発振回路37で生成されたクロック信号は、通信制御部31に入力される。発振回路37は、適切なクロック信号を生成することができれば、種々の発振機能を有する回路を用いることができるが、例えば、温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated Crystal Oscillator、TCXO)を用いるようにしてもよい。
【0048】
発振回路37は、受信回路部35、36と離間して配置することが好ましい。発振回路37は、受信回路部35、36にとっては、ノイズ源となり得る。よって、発振回路37から通信制御部31にクロック信号が入力されるクロックラインは、受信回路部35、36から離間して配置することが好ましい。本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、図1に示すように、発振回路37は、受信回路35、36と離間し、かつ、通信制御部31を間に挟むように、無線通信回路領域30の角部に配置されている。よって、本実施例に係る無線通信モジュールによれば、発振回路37で発生するクロック信号を受信回路35、36に影響させずに、優れた受信回路機能を実現させることができる。
【0049】
また、発振回路37は、通信制御部31と近接して配置されているため、クロック信号を供給するクロックラインを極めて短くすることができる。この点においても、クロック信号が受信回路35、36に与える影響を極めて小さくすることができる。
【0050】
発振回路37は、パワーアンプ50と離間して配置されることが好ましい。パワーアンプ50は、発熱源となる部品であるが、発振回路37自身は発熱せず、また熱を嫌う回路である。よって、発振回路37は、パワーアンプ50と離間した位置に配置されることが好ましいが、本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、発振回路37が通信制御部31側の基板端部にあるのに対し、パワーアンプ50は通信制御部31と反対側の基板端部にあり、丁度基板10の長手方向反対側端部同士に配置されている。よって、本実施例に係る無線通信モジュールにおいては、発振回路37は、パワーアンプ50の発熱の影響を受けることなく、正確にクロック信号を生成することができる。
【0051】
発振回路37は、基板10の裏面上に設けられてもよい。基板10の裏面であっても、通信制御部31に正確なクロック信号を供給することができ、また、パワーアンプ50と離間して配置することができるからである。
【0052】
このように、本実施例に係る無線通信モジュールの無線通信回路領域30は、種々の配置上の工夫がなされ、無線通信回路の機能を低下させることなく、小さな基板サイズの基板10に、送信回路部32及び受信回路部35、36の部品を送受信の信号の流れに沿って配置することができる。
【0053】
ホストインターフェース領域40は、パーソナルコンピュータ等のホストとなる機器との接続を行う領域である。ホストインターフェース領域40は、基板10の短手方向における外部接続領域20と反対側に設けられる。ホストインターフェース領域40には、接続端子(図示せず)の他、基板端子GND41が形成されている。
【0054】
図2は、本実施例に係る無線通信モジュールに搭載される基板10の一例の表面11側の構成を配線パターンも含めて示した図である。図2において、本実施例に係る無線通信モジュールの基板10の表面11側の構成が示されている点は図1と同様であるが、更に配線パターンが示されている点で、図1と異なっている。
【0055】
図2において、基板10の表面11上に外部接続領域20、無線通信回路領域30及びホストインターフェース領域40が形成されている点は、図1と同様である。また、外部接続領域20は、アンテナコネクタ21、22及びGNDパターン23、24を備え、無線通信回路領域30は、通信制御部31と、送信回路部32と、受信回路部35、36と、発振回路37を備える点も、図1と同様である。
【0056】
しかしながら、図2においては、通信制御部31と送信回路部32とを結ぶとともに送信回路部32の内部を接続する配線パターン80、通信制御部31と受信回路部35とを結ぶとともに受信回路部35の内部を接続する配線パターン81、通信制御部31と受信回路部36とを結ぶとともに受信回路部36の内部を接続する配線パターン82が示されている点で、図1と異なっている。更に、図2においては、アンテナコネクタ21とスイッチ61、アンテナコネクタ22とスイッチ62とを接続する配線パターンも各々示されている。
【0057】
図2において、送信回路部32の配線パターン80は、通信制御部31の右側中央寄りから右の方に基板10の長手方向に沿って延び、パワーアンプ50の位置から基板10の短手方向に沿って上方(奥側)に延びる略L字型の配線パターン形状であることが分かる。このような形状とすることにより、送信回路部32の部品を送信信号の流れの順序通りに通信制御部31からスイッチ55に向かって配置することができ、小さな基板10上に効率よく部品配置を行うことができる。
【0058】
同様に、受信回路部35の配線パターン81及び受信回路部36の配線パターン82も、右側に延びて上方に折れ曲がる略L字型の形状をしており、スイッチ61から通信制御部31までの部品と、スイッチ62から通信制御部31までの部品をともに受信信号の流れに沿って順序よく配列することができ、省スペースで効率よく必要な部品の配置を行うことができる。
【0059】
図2において、ホストインターフェース領域40では、パーソナルコンピュータ等のホスト機器との接続を行う接続端子90が示されている。図2に示すように、接続端子90を用いて、ホスト機器との接続を行うことができる。
【0060】
図2に示したように、本実施例に係る無線通信モジュールは、送信回路部32及び受信回路部35、36のいずれにおいても、基板10の長手方向と短手方向の双方に延在する略L字型の配線パターン80、81、82を設けることにより、送信回路部32及び受信回路部35、36を効率よく配置することができる。
【0061】
図3は、本実施例に係る無線通信モジュールの一例の機能ブロックを示した図である。図3において、本実施例に係る無線通信モジュールの機能ブロックが示されているが、図1及び図2で示した構成要素と対応するブロックについては、図1及び図2と同様の参照符号を付し、その詳細な説明は省略又は短縮するものとする。まず、送信側から説明を行う。
【0062】
図3において、ホストインターフェース領域40にある端子90は、パーソナルコンピュータ等のホスト機器に接続される。ホスト機器から端子90を介して入力された信号は、通信制御部31に入力される。一方、ホスト機器からの電力供給は、電力回路34に供給される。
【0063】
また、発振回路37からのクロック信号が通信制御部31に入力されるとともに、フラッシュメモリに記憶されたプログラムやデータを通信制御部31が読み込む。なお、フラッシュメモリは、図1及び図2には図示されていないが、例えば、基板10の裏面側に設けられてよい。
【0064】
通信制御部31は、ベースバンド処理部とRF回路部とを備え、デジタル信号から出力周波数に変換した送信信号をバンドパスフィルタ53に出力する。バンドパスフィルタ53を通過した所定の周波数の出力信号は、パワーアンプ50に入力されて増幅される。なお、パワーアンプ50は、電力回路34により電力供給及び電力管理が行われている。パワーアンプ50を通過して増幅された送信信号は、ローパスフィルタ54に入力される。ローパスフィルタ54で不要な高調波ノイズが除去された送信信号は、スイッチ55に出力される。スイッチ55では、アンテナ(図示せず)の送信状況に応じて、アンテナコネクタ21側のアンテナを用いるか、又はアンテナコネクタ22側のアンテナを用いるかを判断し、送信状況の良好な側のスイッチ61、62に送信信号を出力する。送信信号は、スイッチ61又はスイッチ62を通過し、アンテナコネクタ21又はアンテナコネクタ22のいずれかから出力され、送信される。
【0065】
ここで、バンドパスフィルタ53、パワーアンプ50、ローパスフィルタ54及びスイッチ55は、信号送信回路33の構成要素であり、略L字型に配置された部品から構成されている。また、電力回路34は、通信制御部31からパワーアンプ50に向かって基板10の長手方向に延びる形状を有している。そして、信号送信回路33と電力回路34とで、送信回路部32を構成しており、この部品も全体で基板10の長手方向及び短手方向に延びる略L字型の配置構成を有している。これらは、図1及び図2で説明した通りである。このように、本実施例に係る無線通信モジュールによれば、小さい基板10のスペースに、送信回路部32を送信信号の流れに沿った順序で部品を効率的に配置できていることが分かる。
【0066】
次に、受信側の説明を行う。アンテナコネクタ21から受信された受信信号は、スイッチ61を介して、バンドパスフィルタ70に入力される。バンドパスフィルタ70で所定の周波数範囲とされた受信信号は、ローノイズアンプ71で増幅され、バンドパスフィルタ72に入力される。バンドパスフィルタ72を通過した所定の周波数範囲の受信信号は、通信制御部31のRF回路部で検波され、デジタル信号に復元される。この、アンテナコネクタ21からの受信信号の流れは、受信回路部35の信号の流れであり、バンドパスフィルタ70、ローノイズアンプ71及びバンドパスフィルタ72は、受信回路部35を構成する。受信回路部35においても、バンドパスフィルタ70、ローノイズアンプ71及びバンドパスフィルタ72は、基板10の長手方向及び短手方向に延びる略L字型の構成で配置されており、受信回路部35においても、受信信号の流れに沿って部品が配置されていることが分かる。
【0067】
同様に、アンテナコネクタ22から受信された受信信号は、スイッチ62を介して、バンドパスフィルタ73に入力される。バンドパスフィルタ73で所定の周波数範囲とされた受信信号は、ローノイズアンプ74で増幅され、バンドパスフィルタ75に入力される。バンドパスフィルタ75を通過した所定の周波数範囲の受信信号は、通信制御部31のRF回路部で検波され、デジタル信号に復元される。受信回路36においても、バンドパスフィルタ73、ローノイズアンプ74及びバンドパスフィルタ75は、受信回路部36を構成するとともに、受信回路35よりも更に内側にある略L字型に配置構成されている。
【0068】
このように、送信回路部32及び受信回路部35、36は、送受信の信号の流れに沿って、信号処理の順序に従って構成部品が略L字型に折れ曲がるように配置されている。そして、部品点数の多い送信回路部32は、受信回路部35、36よりも外側でL字を描くように配置され、効率よく、またノイズ等を防ぎつつ配置されている。これにより、USBタイプの基板よりも遥かに小さいハーフミニPCIカード等の基板10上に、回路機能を低下させることなく無線通信回路を搭載することができる。
【0069】
図4は、本実施例に係る無線通信モジュールの放熱構造を説明するための図である。図4において、本実施例に係る無線通信モジュールに用いられた基板10の表面11の構成が透過的に示されている。
【0070】
図4において、発振回路37とパワーアンプ50に着目すると、発振回路37の直下の基板10には、放熱用の基板貫通孔100が形成され、パワーアンプ50の直下には、スルーホール101が形成されている。
【0071】
発振回路37の直下に形成された基板貫通孔100は、発振回路37の空気への接触面積を増やし、発振回路37を冷却し易くするための孔であり、基板10に貫通孔を形成して設けた貫通孔である。
【0072】
一方、パワーアンプ50の直下のスルーホール101は、孔の側面が金属膜で覆われ、電気的接続が可能となった孔である。パワーアンプ50は、駆動により発熱し、パワーアンプ50から発生する熱を、積極的に外部に放出することが好ましい。かかる観点から、スルーホール101は、基板端子GND41と接続されている。これにより、パワーアンプ50で発生した熱を、基板端子GND41に伝達させ、基板端子GND41から基板10の外部に放出することができる。なお、基板10は、積層構造を有し、何層目かの配線パターンにおいて、基板端子GND41を形成することが可能な構成となっている。スルーホール101は、基板端子GND41が形成された配線層に接続され、パワーアンプ50の発熱を積極的に基板10の外部に放出することができる構成となっている。
【0073】
一方、発振回路37は、パワーアンプ50のような駆動による発熱は無く、自分自身は発熱源とはならない。よって、外部からの発熱を受けないように、また受けた熱を素早く冷却できる構成を有していれば十分である。よって、発振回路37の直下には、電気的接続機能を有しない基板貫通孔100を設けている。
【0074】
このように、本実施例に係る無線通信モジュールは、必要に応じて、発振回路37の直下に基板貫通孔100、パワーアンプ50の直下にスルーホール101を設けるようにしてもよい。これにより、小さいスペースに部品が配置された基板10であっても、効率よく放熱を行い、無線通信機能を高性能に維持することができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、WiMAX等のネットワークに無線通信接続を行う無線通信モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 基板
11 表面
20 外部接続領域
21、22 アンテナコネクタ
23、24 GNDパターン
30 無線通信回路領域
31 通信制御部
32 送信回路部
33 信号送信回路
34 電力回路
35、36 受信回路
37 発振回路
40 ホストインターフェース領域
41 基板端子GND
50 パワーアンプ
51 コンデンサ
52 FET
53、70、72、73、75 バンドパスフィルタ
54 ローパスフィルタ
55、61、62 スイッチ
71、74 ローノイズアンプ
80、81、82、83 配線パターン
90 接続端子
100 基板貫通孔
101 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信用部品と接続するために外部接続領域と、ホスト機器と接続するためのホストインターフェース領域と、送信回路部、受信回路部及び通信制御部を備える無線通信回路領域とを基板上に有し、該基板が、前記無線通信回路領域を送受信の信号の流れに沿って長手方向に一直線に配列できる長さを有しない無線通信モジュールであって、
前記外部接続領域を前記基板の短手方向の一方の端部、前記ホストインターフェース領域を前記基板の短手方向の他方の端部、前記無線通信回路領域を前記外部接続領域と前記ホストインターフェース領域との間に配置し、
前記通信制御部を、前記基板上の長手方向の一方の端部に配置し、
前記送信回路部の部品を、前記通信制御部から前記基板上の長手方向に前記通信制御部の反対側の端部近傍まで延びるように配置するとともに、該端部近傍から前記外部接続領域側に向かって前記基板上の短手方向端部に沿って延びるように配置して略L字型を形成し、
前記受信回路部を、前記通信制御部と前記送信回路部との間に配置したことを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項2】
前記受信回路部の部品は、受信信号の流れ及び前記送信回路部の部品に沿って略L字型に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項3】
前記無線通信領域の角部に発振回路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信モジュール。
【請求項4】
前記発振回路は、前記受信回路部と離間した位置に配置されたことを特徴とする請求項3に記載の無線通信モジュール。
【請求項5】
前記送信回路部はパワーアンプを有し、
該パワーアンプは、前記通信制御部と離間した位置に配置されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の無線通信モジュール。
【請求項6】
前記発振回路は、前記通信制御部に近接した位置に配置されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の無線通信モジュール。
【請求項7】
前記外部接続領域、前記ホストインターフェース領域及び前記無線通信領域は、前記基板の表面上に配置され、
前記発振回路は、前記基板の裏面上に配置されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の無線通信モジュール。
【請求項8】
前記発振回路の直下には基板貫通孔が形成され、
前記パワーアンプの直下にはスルーホールが形成されたことを特徴とする請求項5に記載の無線通信モジュール。
【請求項9】
前記パワーアンプは、略L字型に配置された前記送信回路部の角部に配置されたことを特徴とする請求項5に記載の無線通信モジュール。
【請求項10】
前記受信回路部は、並列して配置された第1の受信回路部と第2の受信回路部とを有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか一項に記載の無線通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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