無線通信リンクのロバスト性を向上させる方法及び装置
基地局と移動通信デバイスとの間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法方法及び装置を提供する。本方法は、移動通信デバイスから基地局へ送信される上りリンク通信信号に含まれる複数の部分について選択的に電力を増加させる。本方法は、移動通信デバイスにおける品質メトリック値をモニタリングするとともに、モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内にある場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを第1の送信電力レベル値に設定し、モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内にある場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを第2の送信電力レベル値に設定する。上りリンク通信信号の第1の部分は、無線通信リンクの接続を維持するために基地局によって使用される制御信号を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載されている実施形態は、全体として無線移動通信に関するものである。具体的には、信号の一部で送信される電力を選択的に増加させることによって通信リンクのロバスト性を向上させる方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
移動通信デバイスは、変動する通信リンク状況下で、1つ以上の種々のプロトコルを使用して基地局と通信する。基地局によって受信される通信信号は、移動通信デバイスまでの距離が増加するにつれて、放射される電力の散逸によって著しく減衰しうる。この信号減衰は、受信された通信信号の、雑音・干渉に対する影響の受けやすさを増大させうる。通信プロトコルは、一般に、通信信号を、ユーザ生成データと通信リンクの制御用に使用される補助情報とを含む、複数の部分に分割する。通信信号の特定の部分は、基地局と移動通信デバイスとの間の通信リンクの完全性を制御及び維持するために、当該信号の他の部分よりも、重要である可能性がある。信号の制御部分の破損は、通信リンクを遮断させうる。このため、信号の制御部分についての高品質の受信を保障することが望ましい。通信信号用に送信される電力の増加は、干渉及び雑音と比較して信号強度を増加させうる。しかし、通信プロトコルは、ユーザによって吸収される総無線周波数エネルギーを制限するために、または、移動通信デバイスと、同一の無線周波数帯域を使用する他のデバイスとの間の無線干渉を最小化するために、移動通信デバイスによって放射される最大電力の限界を設定しうる。このため、移動通信デバイスの総送信電力の制限の範囲内で、無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本書では、移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法及び装置に関連する種々の実施形態を説明する。移動通信デバイスから基地局へ送信される上りリンク通信信号に含まれる複数の部分の送信電力を、選択的に増加させる方法に適合した方法及び装置について説明する。
【0004】
一実施形態では、移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法について説明する。本方法は、移動通信デバイスの送信電力レベルを、無線通信リンクに関連付けられた品質メトリック値に応じて適応させることによって実行される。本方法は、移動通信デバイスにおける品質メトリック値をモニタリングするステップと、モニタリングされた品質メトリック値に応じて、移動通信デバイスから基地局への無線通信リンクで送信される上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップとを含んでいてもよい。一実施形態では、モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルが第1の送信電力レベル値に設定される。しかし、モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルは、第2の送信電力レベル値に設定されてもよい。第2の送信電力レベル値は、第1の送信電力レベル値よりも大きくてもよく、それにより、無線通信リンクのロバスト性を向上させる。
【0005】
本方法は、無線通信リンクが接続されている間に、品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、モニタリングされた品質メトリック値に応じて送信電力レベルを適応的に設定されてもよい。更に、上りリンク通信信号の第1の部分は、移動通信デバイスとの無線通信リンクの接続を維持するために基地局によって使用される制御信号を含んでいてもよい。
【0006】
更なる実施形態では、本方法は、上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定してもよい。上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルは、モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の第1の範囲にある場合には、第1の電力レベル値に設定され、モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の第2の範囲にある場合には、第3の電力レベル値に設定されてもよい。第3の電力レベル値は、第1の電力レベル値よりも小さくてもよい。いくつかの実施形態では、総平均送信電力は、第2の電力レベル値を使用する、上りリンク通信信号の第1の部分と、第3の電力レベル値を使用する、上りリンク通信信号の第2の部分とにわたってバランスが保たれていてもよい。
【0007】
別の実施形態では、移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させることが可能な装置について説明する。本装置は、移動通信デバイスにおける品質メトリックをモニタリングするためのプロセッサを含んでいてもよく、モニタリングされた品質メトリックが、品質値の第1の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを、第1の電力レベルに設定する。しかし、モニタリングされた品質メトリックが、品質値の第2の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを、第2の電力レベルに設定してもよい。記載されている実施形態では、無線通信リンクが接続されている間に、モニタリングと設定とが継続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明及び本発明の効果は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって、最も良く理解されうる。
【0009】
【図1】2つの重なり合う無線セル内の基地局と通信する移動通信デバイスを示す図。
【図2】無線デバイスと基地局との間で伝達される2つのタイプの情報を示す図。
【図3A】等電力で送信される音声データ及び制御データを含む時分割フレームの構造を示す図。
【図3B】異なる電力レベルで音声データと制御データとを送信するように図3Aを修正した、時分割フレームの構造を示す図。
【図4A】専用ユーザデータ及び専用チャネルを含む広帯域符号分割フレームの構造を示す図。
【図4B】異なる電力レベルでデータチャネル部分と制御チャネル部分とを送信するように図4Aを修正した、広帯域符号分割フレームの構造を示す図。
【図4C】異なる電力レベルでデータチャネル部分と制御チャネル部分とを送信するように図4Aを修正した、広帯域符号分割フレームの構造を示す図。
【図5】基地局と移動通信デバイスとの間の通信用の伝搬遅延及びタイミング・アドバンスを示す図。
【図6】品質メトリックとともに変化する送信電力レベルを示す図。
【図7】電力蓄積メトリックとともに変化する最大送信電力レベルを示す図。
【図8】通信リンクのロバスト性を向上させるための代表的な方法を示す図。
【図9】通信リンクのロバスト性を向上させるための第2の代表的な方法を示す図。
【図10】代表的な無線通信デバイスについての複数の処理ブロックのセットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、記載されている実施形態の基礎となる概念の十分な理解をもたらすために、数多くの具体的な詳細について説明している。しかし、記載されている実施形態が、それらの具体的な詳細の一部または全てを用いることなく実施されうることは、当業者には明らかである。他の例では、基礎となる概念を不必要に分かりにくくすることを避けるために、周知の処理ステップについては説明していない。
【0011】
セルラ電話または無線パーソナル・デジタル・アシスタント等の移動通信デバイスは、
様々な状況下で動作するように設計されうる。例えば、ユーザが移動中に移動通信デバイスを動作させうるという事実に起因して、移動通信デバイスは、基地局からの距離が著しく変化する際に動作可能であることが期待される。また、基地局は、通常、複数の移動通信デバイスに対して同時にサービングを行い、その結果、1つ以上の移動通信デバイスが相互に干渉する可能性がある。この干渉は、同一または近い周波数帯域を共有できる移動通信デバイスに対して起こりうる。
【0012】
基地局が、各移動通信デバイスに対して種々の送信パラメータを設定することによって、同一の無線通信セルを共有する複数の移動通信デバイスからの上りリンク通信信号を管理しうることは、当業者には理解されよう。送信パラメータは、例えば、送信すべき期間、使用すべき送信周波数の範囲、及び送信電力レベルを含む。移動通信デバイスは、基地局からの距離が変化しうるため、基地局と移動通信デバイスとの間の通信リンクの品質が著しく変化しうる。例えば、基地局と移動局との距離が長くなりすぎると、通信リンクが弱くかつ信頼できなくなるほど、通信リンクの品質が著しく劣化する可能性がある。通信リンクのこの劣化は、上りリンク通信信号が受信された際に(または受信された際であっても)著しい雑音及び干渉が基地局において存在する場合に、特に問題となりうる。
【0013】
無線通信プロトコルは、データ形式、送信周波数、誤り訂正機構、及び送信電力レベルといった具体的な特徴を含む情報を、2つの無線通信デバイス間でどのように送信しうるのかを特定するルールのセットを規定する。移動通信用グローバルシステム(GSM:Global System for Mobile communications)は、移動通信デバイス用の、標準化された周知の無線通信プロトコルである。無線通信プロトコルは、ユーザの音声及びデータを運ぶ信号に加えて、通信リンクの信頼性に関する情報を提供する、移動通信デバイスと基地局との間で定期的に伝送される制御信号を規定しうる。一定期間内に十分な数の制御信号が基地局によって認識されない場合、基地局は、通信リンクを終了する。
【0014】
通信リンクの終了は、「無線インタフェース障害(radio interface failure)」として知られており、移動通信デバイスと基地局との間で許容範囲内の(不完全な)音声及びデータ通信が依然として可能である場合に、特定の状況において発生しうる。音声信号が依然として理解可能であっても、制御信号における誤りに対する過剰な感度は接続を終了させうる。この早過ぎる終了は、制御信号と音声/データ信号とが個別かつ不均一に特定の通信システムプロトコルで符号化されうることを理由として発生しうる。低ビットレートでの音声符号化の進歩は、改善した音声伝送と低い信号対干渉比における改善した理解性(comprehensibility)とを可能にしうる。このような劣悪な動作状況下では、制御信号は、基地局によって受信された際の信号の完全性の喪失の影響をより受けやすい可能性があり、その結果、呼の損失につながる。
通信リンクのロバスト性を向上させるために、制御信号のために使用される送信電力を増加させることによって、制御信号の信頼性のある受信を向上させうる。バッテリ電力を節約し、かつ、規定された電力制約の範囲内にとどまるために、音声/データ信号の送信電力は、同時に低減されうるか、少なくとも増加させないようにされうる。移動通信デバイスは、1つ以上の品質メトリックをモニタリングすることによって、制御信号の送信電力をいつ変更するのかを決定できる。
【0015】
以下では、図1乃至図10を参照して特定の実施形態について検討する。しかし、これらの図面に関して本明細書で提供される詳細な説明は、例示のみを目的としたものであって、与えられた実施形態に限定されるものと解釈されることはないことを、当業者は容易に理解しよう。
【0016】
図1は、記載されている実施形態に係る無線通信セル100及び無線通信セル102を示している。同図に示すように、無線通信セル100は、基地局106と通信可能な移動通信デバイス104を含みうる。デバイス112及び116等の、他の複数の移動通信デバイスも、移動通信デバイス104と同時に、無線通信セル100内で基地局106と通信可能である。移動通信デバイス116は、隣接する無線通信セル102内の基地局118とも通信可能である。周知のように、放射された電磁エネルギーは、発生源からの距離の二乗の逆数で減衰する。基地局106が、受信信号を適切に処理できるようにするために、基地局106からそれぞれ距離d1及びd2の位置にある移動通信デバイス104及び116は、基地局106により近い距離d3の位置にある移動通信デバイス112よりも高い出力電力レベルで、基地局106に送信しうる。ここで、距離d3は、距離d1またはd2よりも短い。例えば、移動通信デバイス104から発せられた無線信号108は、基地局106で受信される無線信号110に関連する電力レベルP2よりも非常に大きい電力レベルP1を有しうる。受信電力レベルP2は、移動通信デバイス104と基地局106との間の距離の二乗d12で除算された送信電力レベルP1に比例しうる。
【0017】
それぞれ基地局106から異なる距離に位置する、異なる多数の移動通信デバイスから信号を受信するために、基地局106内で同一のアナログ増幅回路が使用されうる。異なる移動通信デバイスから受信した信号ごとに基地局増幅回路のアナログ利得設定を変更するのではなく、基地局106は、無線通信セル100内で送信帯域幅を共有する異なる複数の移動通信デバイスからの信号を、同様の電力レベルで受信することが望ましい。基地局106によって管理される電力制御方法を用いて、無線通信セル100内の複数の移動通信デバイスから送信された信号を正規化することで、基地局106内のアナログ受信回路を、所望の範囲で動作させることが可能になりうる。このようにして、基地局106は、通常、無線セル100内の複数の移動通信デバイスによって出力される送信電力レベルを管理することが可能である。
【0018】
距離減衰を補償することに加えて、送信信号が基地局106で受信された際の背景雑音及び干渉に対処するために、移動通信デバイスにおいて送信信号電力も増加されうる。基地局106から距離d3(d3≪d1)に位置している移動通信デバイス112が、基地局106から距離d1に位置している移動通信デバイス104によって送信される電力レベルP1とほぼ同一でありうる電力レベルP3で送信する場合、基地局106において電力レベルP2≪P1を有する(距離d1によって減衰した信号108に対応する)受信信号110が、移動通信デバイス112が送信した電力レベルP4を有する信号120からの干渉によって、圧倒される可能性がある。
したがって、基地局から更に遠くに位置している別の装置からの非常に強い信号からの、基地局により近いデバイスからの信号の尤度を減少させるために、複数の移動通信デバイスの送信電力レベルを基地局からの個別の距離に少なくとも基づいて、適応的に制御する技術が開発されている。これらの適応的な送信電力制御技術は、例えば、特定の基地局により近い移動通信デバイス(例えば、図1において基地局106に関連した移動通信デバイス112)の送信電力レベルを、基地局から更に遠くに位置している移動通信デバイス(例えば、移動通信デバイス104)の送信電力レベルと比較して、減少させうる。無線通信セル内の複数のデバイスの送信電力レベルを調整することによって、近い移動通信デバイスと遠い移動通信デバイスとの両方から受信される信号が、ほぼ同一の電力レベルで基地局に到達しうる。基地局106は、受信信号110及び120が、同様の電力レベル(即ち、P2≒P4)を有するように、距離d1に位置する移動通信デバイス104からの信号108の送信電力レベルP1を増加させうるとともに、距離d3に位置する移動通信デバイス112からの信号114の送信電力レベルP3を減少させうる。無線通信セル内の各移動通信デバイスの送信電力レベルは、移動通信デバイスがセル内で移動して、基地局までの距離が変化するにつれて、適応的に変更されうる。無線通信セル100内の通信デバイス104、112及び116の送信電力レベルの適応制御は、基地局106によって管理されうる。
【0019】
共通の無線周波数帯域を共有する複数の通信デバイス間で干渉を最小にするために、連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)は、移動通信デバイスの総放射送信電力に制限を設定している。この送信電力の制限は、移動通信デバイスによって放射される無線周波数スペクトルを、隣接する複数の周波数から成る帯域にわたる特定の電力スペクトル密度マスクよりも低く制限するか、または、特定の期間に送信される平均電力レベルに制限することを要求する。同様に、(上述のGSM移動無線プロトコル等の)通信規格は、移動通信デバイスのユーザの体によって吸収される無線周波数エネルギーを最小にするために、移動通信デバイスに対して許容される比吸収率(SAR:specific absorption rate)を制限しうる。
【0020】
無線通信セル100は、移動通信デバイスが通信可能な、半径Rの実効動作範囲を有しうる。基地局106から距離d1にある、無線通信セル100内の移動通信デバイス104等の、無線通信セル100の実効動作範囲Rの限界の近くで動作している通信デバイスは、(放射された電力の損失を克服し、ロバストな通信リンクの完全性を維持するために)より高い電力レベルで送信することが要求されうる。移動通信デバイス104は、最大送信電力レベルで動作できるとしても、基地局106で受信される信号にそれでも誤りが生じるため、基地局106と移動通信デバイス104との間の通信リンクの品質は劣化しうる。このような誤り率の増加は、背景雑音及び干渉と比べて不十分な信号強度を有することによって生じる、低い信号対雑音比を受信信号が有する場合に、特に顕著となる可能性がある。誤り率の増加は、不明瞭な音声、再送を必要としうる破損したデータ等の、多くの問題を引き起こす可能性がある。SNRが低いと、基地局106と移動通信デバイス104との間の通信リンクを維持する制御信号を破損する可能性もある。
なお、無線セル100の中心付近で動作する(即ち、移動通信デバイス112等の基地局106に近い)移動通信デバイスは、バッテリ電力を節約し、かつ、同一の周波数帯域を共有するデバイスへの干渉を制限するために、送信電力レベルを低くしうる。しかし、基地局106に対して短い距離で動作している通信デバイスの送信電力についてのこのような低減は、それらの通信デバイスを、増加したレベルの干渉及び雑音の影響をより受けやすい状態にする可能性もある。基地局で受信された弱い低電力の信号は、上りリンク性能を劣化させる可能性があり、その結果、基地局は移動通信デバイスを「聞き取る(hear)」ことができないため、呼が損失し、知覚されるサービス品質が劣化する。
【0021】
例えば図1に、領域122において重なり合っている無線通信セル100及び102によって示されているように、隣接する無線通信セルの動作範囲の境界部分が重なり合う可能性がある。移動通信デバイス116は、無線セル100の基地局106から、及び無線セル102の基地局118から、遠い距離d2に位置付けられうる。無線通信セルの重なり合いは、移動通信デバイスが1つの無線通信セルから別の無線通信セルに移動する際にハンドオフを可能にする。例えば、移動通信デバイス116は、重複領域122において動作している場合、無線通信セル100の基地局106との通信から、無線通信セル102の基地局118との通信に、受け渡されうる。
しかし、移動通信デバイス116は、ハンドオフ等の間、(制御部分を含む)受信信号が、受け渡す基地局106か受け取る基地局118とのいずれかで受信される際に弱くなるにつれて、呼の損失の影響を受けやすくなりうる。基地局は、移動通信デバイス116の送信電力を増加させることは可能であるものの、標準規格の仕様本体で許容されている最大レベルまでのみである。最大送信電力レベルは、移動通信デバイス116から基地局106または118のいずれかまでの距離d2をトラバースする信号が被る減衰を克服するには不十分である可能性がある。このため、特に移動通信デバイスが最大電力レベルで動作する場合に、通信リンクのロバスト性を増加させる方法が、通信システム全体の性能を向上させるために望ましい。
【0022】
基地局は、移動通信デバイスから受信される通信信号をモニタリングすることで、当該デバイスに対する通信リンクについての品質メトリックを推定しうる。通信リンクの品質は、移動通信デバイスが通信セル内で移動し、それにより、基地局までの距離が変化して、異なる干渉レベルに直面するにつれて、大幅に変化しうる。通信信号は、無線通信プロトコルに従って、符号化されたユーザデータを運びうる音声/データ部分と、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクを管理するための制御信号を運びうる制御部分との組み合わせに、フォーマットされうる。図2は、移動通信デバイス202と基地局200との間で伝送される通信信号を示しており、ユーザデータ(圧縮された音声等)専用の部分204/208と、通信リンクの制御用に使用される他の部分206/210とを含んでいる。一般に、通信信号のかなり多くの部分は、ユーザデータ専用である一方で、制御情報は、低頻度ではあるものの通常は一定間隔で送信される。
【0023】
図3Aは、例示的なGSM通信プロトコル・フォーマットを示しており、120msのマルチフレーム300の期間を26個の個別のフレームに分割し、24個のフレーム304は、トラヒックチャネル(TCH)音声データ専用であり、「低速」付随制御チャネルまたは「高速」付随制御チャネル(SACCH/FACCH)バーストフレーム302は、制御用に使用される。マルチフレーム300内の個別のフレームのそれぞれは、ほぼ等しい「非上昇(non-boosted)」電力レベル308で送信される。図3AのSACCH/FACCHバースト302は、図2の制御信号206/210に相当する一方、TCH音声データ304は、データ信号204/208に相当する。SACCH/FACCH制御フレーム302は、基地局200と移動ハンドセット202との間の送信を管理するためのタイミング制御及び電力制御を含んでいてもよい。
移動通信デバイス202から送信される上りリンク通信信号の制御部分206は、通信リンク性能が、ネットワークによって要求されるサービス品質を提供するのに十分であるかどうかを突き止めるために、基地局200によって信号の完全性のためにモニタリングされうる。基地局200は、信号のSACCH/FACCH制御フレーム302のモニタリングに基づいて、通信リンク性能が低いと判定した場合、基地局200は、移動通信デバイス202との通信リンクを切断することを選択しうる。通信リンクの切断は、TCH音声データ304フレームがまだ使用可能であっても起こりうる。システムによっては、例えば、基地局は、SACCH/FACCH制御フレーム302で受信された、比較的少数の連続するメッセージが、劣悪な品質を有すると判定された場合に、通信リンクを中断しうる。TCH音声データフレーム304が、SACCH/FACCHバースト制御フレーム302とは独立して符号化されうるため、SACCH/FACCHバースト制御フレーム302における劣悪な品質は、TCH音声データフレーム304における劣悪な品質と、必ずしも対応しない。
【0024】
基地局によって受信された信号が、減衰によって弱まった際に、または、高いレベルの干渉によってマスキングされた際に、通信リンクを維持するためには、リンクの完全性のために基地局によってモニタリングされる送信信号の少なくとも一部分について、移動通信デバイスで放射される送信電力を増加させようとしうる。総放射送信電力には制限があるため、移動通信デバイスによって基地局へ送信される信号の全ての部分について送信電力を増加させることはできない。その代わりに、図3Bに示すように、マルチフレーム310内のSACCH/FACCHバースト制御フレーム312の電力を、「非上昇」電力レベル308よりも上方へ選択的に増加させることができ、それにより、送信信号のこれらの制御部分が、基地局で受信された際にマルチフレーム310についての信号の完全性をモニタリングするために使用できるようにする。なお、「非上昇」電力レベル308は、図3Aにおいて、TCH音声データ304によって使用されており、かつ、SACCH/FACCHバースト302用に使用されている電力レベルに相当しうる。
信号の音声データ部分よりも上方に、当該信号の制御部分の電力レベルを上昇させることによって、基地局で受信された際により高い電力の制御部分を提供でき、基地局は、当該信号のより高い強度を有する制御部分をより容易に「聞き取る」ことができ、通信リンクを維持することができる。このように、送信信号の一部分のみについての送信電力を増加させることによって、基地局と移動通信デバイスとの間の通信リンクのロバスト性を増加させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、マルチフレーム310にわたって平均化された総送信電力は、マルチフレーム310のSACCH/FACCH制御部分312の電力を上昇させているか否かによらず、ほぼ一定であることが要求されうる。具体的には、移動通信デバイスが、最大送信電力レベルで送信している場合、即ち、「非上昇」電力レベル308が、所与の通信プロトコルについて可能な最大値に設定されている場合、マルチフレーム310のいずれかの部分の増加は、電力規制限界を超える、移動通信デバイスからの送信につながりうる。
移動通信デバイスからの、マルチフレーム310全体にわたって平均化された総電力送信が、指定された送信電力限界の範囲内に必ずとどまるようにするために、SACCH/FACCH制御部分312の電力を増加させる際に、TCH音声データフレーム314及びアイドルフレーム316の両方を含む、他の全ての(即ち、SACCH/FACCH制御部分312を除く)信号の送信電力を低くしうる。通信信号のSACCH/FACCH制御部分312は、マルチフレーム310ごとの総送信時間のうちの、限られた一部分を占有しうるため、SACCH/FACCH制御部分312は、適度に電力が簡易に増加されうる一方で、マルチフレーム310内の残りの信号は、わずかにのみ低減される必要がある。例えば、図3Bに示すように、SACCH/FACCH制御部分312は、約1dB電力が増加し、これにより、通信リンクが維持される可能性が十分に向上する一方、TCH音声データ部分314は、より高い電力のSACCH/FACCH制御部分312を補償するために、約0.1dBのみ低くされる必要がある。TCH音声データ314を比較的少量だけ減少させることによって、許容可能な音声/データ復号性能を、移動通信デバイスと基地局との間で維持することが可能である。
【0026】
図4Aは、ユニバーサル移動通信システム(UMTS:Universal Mobile Telecommunications System)広帯域符号分割多元接続(WCDMA:Wideband Code Division Multiple Access)の例示的な通信プロトコル・フォーマットを示しており、当該フォーマットは、15個の連続するタイムスロットから成る10msのフレーム400を使用し、各タイムスロットは、データ及び制御情報の両方を含んでいる。タイムスロット402の期間では、上りリンク(UL)専用物理データチャネル(DPDCH)404とUL専用物理制御チャネル(DPCCH)406とは、各チャネルが直交拡散符号によって拡散された状態で、同時に送信可能である。UL DPCCH406は、以下の4つの部分、
(1)同期及びチャネル推定用の予め定められたパターンを含むパイロット情報を送信するために使用される部分、
(2)ビットレート及び符号化パラメータを含むトランスポート・フォーマット組合せインジケータ(TFCI)部分、
(3)閉ループ形式ダイバーシチのために使用されるフィードバック・インジケータ(FBI)部分、及び
(4)基地局に送信電力レベルの変更を要求するために使用される送信電力御部分、
を含んでいる。基地局は、上りリンクDPCCHのパイロット部分及びTFCI部分のうちの少なくとも1つをモニタリングすることによって、上りリンク通信信号の完全性を評価しうる。
基地局と移動デバイスとの間の通信リンクのロバスト性を増加させるために、パイロット部分及びTFCI部分のうちの少なくとも1つの電力レベルが増加されうる一方、データ部分の電力レベルの一部分は、電力レベルの変更なしで使用された際の適切な利得比を維持するために、同時に低減される。図4Bに示すように、UL DPCCH416内のパイロット部分は、非上昇電力レベル408よりも上方に増加されうるとともに、UL DPDCH414についての比例するセグメントは、非上昇電力レベル408よりも下方に低減されうる。UL DPCCHの一部分のみが増加した電力を有するため、UL DPDCHについての同様の一部分は、補償のために低減された電力を有する。図4Cは、UL DPCCH426のTFCI部分の電力レベルの増加と、非上昇電力レベル408に対する、UL DPDCH424の一部分の電力レベルの低減とを示している。
【0027】
移動通信デバイスから基地局への通信信号に含まれる制御部分の送信電力レベルの増加を選択することは、基地局からの介入なしで、移動通信デバイスでモニタリングされる1つ以上の条件によってトリガされうる。例えば、移動通信デバイスは、受信基地局から遠く離れた位置に移動通信デバイスがあることを示しうる、総平均送信電力レベルの最大値に、到達したかどうかを判定するために、総平均送信電力レベルをモニタリングしうる。いくつかの実施形態では、基地局は、移動通信デバイスの総平均送信電力を、下りリンク制御メッセージに当該デバイスの電力制御レベルを設定することによって制御しうる。基地局は、基地局が受信する信号の電力レベルの低下を観測することに基づいて、移動通信デバイスの総平均送信電力を増加させることを選択しうる。移動通信デバイスは、総平均送信電力レベルを増加させることを下りリンク制御メッセージ内で基地局によって要求された場合、基地局から遠く離れた位置にあることを推定できる。
【0028】
あるいは、移動通信デバイスは、当該移動通信デバイスからバーストを送信する際に基地局によって要求されるタイミング・アドバンス(TA)の量をモニタリングしうる。このタイミング・アドバンスは、上述の電力制御レベルと同様、基地局からの移動通信デバイスの距離に間接的に関連しうる。図5に示すように、基地局における送信通信バースト及び受信通信バーストは、タイムスロットの境界に位置合わせされうる。例えば、送信通信バースト502は、BSタイムスロット0の始点に位置合わせされており、受信通信バースト512は、BSタイムスロット3の始点に位置合わせされている。基地局は、同一の無線通信セル内の異なる移動通信デバイスから受信される通信バーストが、当該基地局で受信された際に当該基地局のタイムスロット境界に位置合わせされるよう、要求しうる。基地局における2つ隣接するタイムスロットが、2つの異なる移動通信デバイスによって使用される可能性があるとともに、それぞれの移動通信デバイスは、基地局から異なる距離に位置付けられている可能性がある。
移動通信デバイスと基地局との間の距離の変化に対処するために、移動通信デバイスは、基地局への通信バーストの送信を開始するタイミングを調整しうる。このタイミング調整は、送信通信バーストの「タイミング・アドバンス」として知られている。通信バーストが移動通信デバイスのタイムスロット境界の始点以前に「進められ(アドバンスされ)」うるためである。基地局は、当該基地局のタイムスロット境界に位置合わせされた送信通信バーストが基地局に到達するようにするために、通信バースト送信をどの程度「進める(アドバンスさせる)」のかを移動通信デバイスに指示しうる。
【0029】
図5は、BSタイムスロット0の期間に基地局から送信され、移動通信デバイス(MD)においてMDタイムスロット0の期間に通信バースト506として受信された、通信バースト502を示している。通信バースト502/506は、基地局から移動通信デバイスまでの距離を伝わる際に、τ単位の伝搬遅延504を被る。移動通信デバイスから基地局への、逆方向に送信される通信バーストは、順方向に送信される通信バーストが被るのと同様に、同一の伝搬遅延504τを被る。したがって、移動通信デバイスは、基地局と移動通信デバイスとの間の往復伝搬遅延に対処するために、通信バースト508を送信する際に、移動通信デバイスのタイムスロット境界に対して、2τ単位のタイミング・アドバンス(TA)510だけ進める。図5に示すように、送信通信バースト508は、MDタイムスロット3の始点から、TA510だけMDタイムスロット2内に「進められ」うるとともに、基地局における対応する受信通信バースト512は、BSタイムスロット3の先頭の境界に位置合わせされうる。
タイミング・アドバンスは伝搬遅延に対応し、タイミング・アドバンスが長い値であるほど、より長い伝搬遅延、または、移動通信デバイスと基地局との間のより大きな距離に対応しうる。このため、高い値のタイミング・アドバンス設定が、下りリンク制御メッセージにおいて基地局によって移動通信デバイスに要求された場合には、移動通信デバイスは、通信バーストがより長い距離を移動する可能性があること、またそれ故に、当該通信バーストは、基地局で受信された際に電力がより弱まっている可能性があることを推定しうる。
【0030】
基地局によって要求される電力制御レベルまたはタイミング・アドバンス設定は、基地局における弱い信号(及び、それ故に劣悪な受信SNR)をもたらしうる、移動通信デバイスと基地局との間の遠い距離についての指標を提供しうる。電力制御レベル及びタイミング・アドバンス設定は、モニタリングされうるとともに上りリンク通信バースト一部分の送信電力レベルを変更するタイミングを決定するために使用される、移動通信デバイスにおける品質メトリックを、間接的に提供しうる。
図6は、移動通信デバイスについての、品質メトリック614と送信(TX)電力レベル612とを関連付けるグラフ600を示している。高い品質値QHI608以上の範囲の品質メトリック614に対して、TX電力レベル612は、より低い(または、等価的には増加されていない)値TXLO604に設定されうる。低い品質値QLO606以下の範囲の品質メトリック614に対して、TX電力レベル612は、より高い(または、等価的には増加されている)値TXHI602に設定されうる。低い品質値QLO606と高い品質値QHI608との間の品質メトリック614に対して、TX電力レベル612は、TXHI602とTXLO604とのいずれかの、前回設定された送信電力レベルを維持しうる。グラフ600に示すヒステリシスは、測定された品質メトリックがQLO606とQHI608との間の領域内で推移する場合には、安定性を提供しうる。
初めに、移動通信デバイスは、基地局との通信リンクの確立後、低い送信電力レベル値TXLO604のTX電力レベル612を送信しうる。モニタリングした品質メトリック614が、低い品質値QLO606を下回ると、移動通信デバイスは、上りリンク通信バーストが、基地局において劣悪なSNRで受信されている可能性があると推測しうる。次に、移動通信デバイスは、基地局との通信リンクのロバスト性を向上させるために、制御部分等の、上りリンク通信バーストの一部分について、TX電力レベル612を、高い値TXHI602に増加させうる。移動通信デバイスは、品質メトリックが低い品質値QLO606を超えて増加したとしても、高い値TXHI602を使用し続けうるとともに、当該品質メトリックが、高い品質メトリックQHI608を超えるまで、送信電力レベル612を、低い値TXLO604に低減しえない。
劣悪な上りリンクSNRについての他の指標も、移動通信デバイスによって推定されうる。例えば、移動通信デバイスは、復号誤りについての、下りリンク受信信号の性能をモニタリングしうる。下りリンク信号が、移動通信デバイスにおいて劣悪な状態で受信された場合、上りリンク信号も、基地局において劣悪な状態で受信される可能性がある。これは、下りリンク信号と上りリンク信号の両方は、基地局と移動通信デバイスとの間で同様のパスをトラバースする可能性があるためである。下りリンク性能は、RxQUALまたはCRC誤り等の、移動通信デバイスにおいて測定または推定された性能パラメータを使用して、モニタリングされうる。
【0031】
バッテリ電力の低下等、特定の状況下では、上りリンク通信バーストの一部分に適用される送信電力レベル調整は、移動通信デバイスによる電力消費を減少させるように変更されうる。総平均送信電力を、電力の上昇なしと同程度のレベルに維持するために、上りリンク通信バーストの他の一部分を低下させたとしても、上りリンク通信バーストの一部分についての送信電力レベルが高いほど、移動通信デバイスによる電力消費が高くなる。このような電力消費の増加は、移動通信デバイス内のアナログ増幅器によって消費される電力量が、送信される電力量と「非線形に」関連しているために発生しうる。一実施形態では、バッテリ電力レベルが、移動通信デバイスにおいて予め定められた閾値を下回る場合には、上りリンク通信バーストに含まれる一部分についての送信電力レベルの選択的な増加は適用されえない。他の実施形態では、移動通信デバイスにおいてモニタリングされた電力蓄積メトリックに基づいて、図7に示すように、選択的な電力の上昇を段階的に徐々に停止させる。
【0032】
図7は、電力蓄積メトリック710を、移動通信デバイスからの上りリンク通信バーストの一部分に対して提供されうる高送信電力レベルTXHI612と関連付けるグラフ700を示している。電力蓄積レベルPHI708以上の電力蓄積メトリック710の値に対して、上りリンク通信バーストの一部分を上昇させる際に使用されうる、高送信電力レベルTXHI612は、最大で高送信値TXMAX702までとりうる。この場合、電力蓄積メトリック710は、移動通信デバイスが、制限なしで最大の送信上昇機能を使用可能な、蓄積された十分な予備電力を有していることを示しうる。電力蓄積レベルPLO706以下等の、低い電力蓄積メトリック710では、高送信電力レベルTXHI612が、最小の高送信値TXMIN704に制限されうる。この場合、電力蓄積メトリック710は、送信電力が節約されるように、移動通信デバイスが、蓄積された不十分な予備電力を有していることを示しうる。
いくつかの実施形態では、TXMIN704は、送信電力の上昇が生じないような値であってもよい。電力蓄積メトリック710が、電力蓄積レベルPLO706とPHI708との間に収まっている場合、高送信電力レベルTXHI612は、最小値TXMIN704と最大値TXMAX702との間に収まりうる。TXMAX702とTXMIN704との間に収まる、中間のTXHI電力レベル612は、通信リンクのロバスト性を向上させるための送信電力レベルの上昇と、移動通信デバイスのバッテリ電力消費の節約との、バランスを保ちうる。図7は、TXMIN704とTXMAX702との間で線形なカーブを示しているが、最小のTXMIN704と最大のTXMAX702とをつなぐ他のカーブ形状が使用されてもよい。
代表的な実施形態では、最小の高送信値TXMIN704は、品質メトリック614が高い値QHI608以上である場合に使用される、「通常の」非上昇送信レベルTXLO604であってもよい。図7の電力蓄積メトリックのグラフ700は、図6の品質メトリックのグラフ600を修正するものと考えられうる。
【0033】
図8は、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクのロバスト性を向上させるための、代表的な方法800を示している。
ステップ802で、移動通信デバイスと基地局との間の上りリンク通信バーストに含まれる第1の部分についての送信電力レベルが、第1の電力レベルに初期化されうる。この第1の電力レベルは、例えば、「通常の」非上昇電力レベルと考えることができ、上りリンク通信バーストの第1の部分は、制御信号のフレーム(例えば、図3Aに示した、マルチフレーム300内のSACCH/FACCHバースト302のフレーム)と考えることができる。
ステップ804で、移動通信デバイスは、上述した送信電力制御レベルまたはタイミング・アドバンス値等の品質メトリックを、定期的に(例えば、整数個のマルチフレーム300が受信または送信されるごとに)モニタリングしうる。
ステップ806で、品質メトリック値が、値の第1の範囲内に収まるか否かを判定するために検査されうる。値の第1の範囲は、例えば、図6に品質メトリック614について示したように、QHI608以上であってもよい。
ステップ806で、品質メトリック値が、値の第1の範囲内に収まっていると判定された場合、ステップ808で、移動通信デバイスと基地局との間の上りリンク通信バーストの第1の部分についての送信電力レベルが、第1の電力レベルに設定されうる。高い品質メトリックレベルは、送信電力レベルが「通常の」非上昇レベルにとどまることを示しうる。
ステップ806で、品質メトリック値が、値の第1の範囲内に収まっていないと判定された場合、ステップ810で、品質メトリック値が、値の第2の範囲内に収まっているか否かを判定するために再び検査されうる。値の第2の範囲は、例えば、図6に品質メトリック614について示したように、QLO606以下であってもよい。
ステップ810で、品質メトリック値が、値の第2の範囲内に収まっていると判定された場合、ステップ812で、移動通信デバイスと基地局との間の上りリンク通信バーストの第1の部分についての送信電力レベルが、第2の電力レベルに設定されうる。低い品質メトリックレベルは、送信された上りリンク通信バーストが、弱まった状態で基地局で受信されうるとともに、それ故に、雑音または干渉による破損の影響を受けやすいことを示しうる。上りリンク通信バーストの第1の部分の送信電力レベルは、雑音及び干渉のある環境において性能を向上させるために増加されうる。
ステップ814で、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクが接続されたままである場合、ステップ804における品質メトリックのモニタリング及び検査と、ステップ808及び812における送信電力レベルの設定とが、繰り返されうる。
【0034】
図9は、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクのロバスト性を向上させるための、第2の代表的な方法900を示している。
ステップ902で、移動通信デバイスから基地局への上りリンク通信バーストに含まれる、第1の部分及び第2の部分の両方についての送信電力レベルが、第1の電力レベルに設定されうる。ステップ904で、図8のステップ804と全く同様に、品質メトリック値がモニタリングされうる。
ステップ906で、品質メトリック値が、第1の範囲内に収まっているか否かを判定するために検査されうる。ステップ906で、品質メトリック値が第1の範囲内に収まっていると判定された場合、第1及び第2の部分の送信電力レベルが第1の電力レベルに設定されうる。ステップ906で、ステップ906で、品質メトリック値が第1の範囲内に収まっていないと判定された場合、ステップ910で、品質メトリック値が、値の第2の範囲内に収まっているか否かを判定するために検査されうる。
ステップ910で、品質メトリック値が、第2の範囲内に収まっていると判定された場合、ステップ912で、上りリンク通信バーストの第1の部分についての送信電力レベルが、第2の電力レベル(例えば、上昇させた電力レベル)に設定されうる一方で、第2の部分が、第3のレベル(例えば、減少させた電力レベル)に設定されうる。送信される上りリンク通信バーストの、第1の部分を上昇させるとともに、第2の部分を減少させることによって、総平均送信電力は、第1の部分及び第2の部分を「通常の」電力レベルに設定した場合のレベル以下にとどまりうる。
ステップ914で、通信リンクが接続されたままであるかが判定されうるとともに、そうであると判定された場合、モニタリング・ステップ、検査ステップ、及び設定ステップが、繰り返されうる。
【0035】
図10は、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクのロバスト性を向上させることが可能な、移動通信デバイスについての複数の処理ブロック1000を示している。無線デジタル・プロセッサ1006は、無線アナログ・プロセッサ1004によって増幅される前のデジタル通信バースト、及び、アンテナ1002を介した受信後のデジタル通信バーストを、それぞれ送信及び受信しうる。圧縮された音声等の無線データは、アプリケーション・プロセッサ1008から無線デジタル・プロセッサ1006に伝達されうる。無線デジタル・プロセッサ1006は、当該無線データを、上りリンク通信バーストとしての送信のために、フォーマットし、符号化し、変調する。無線アナログ・プロセッサ1004は、上りリンク通信バーストを、適切な送信電力レベルに増幅しうる。無線デジタル・プロセッサとアプリケーション・プロセッサとのいずれかは、モニタリングした品質メトリック及び電力蓄積レベルの少なくともいずれかに基づいて、上りリンク通信バーストに含まれる異なる複数の部分のために使用される送信電力レベルを設定しうる。上りリンク通信バーストに含まれる異なる複数の部分を、送信電力レベルが部分ごとに変化するように形成する処理は、無線アナログ・プロセッサ1004による増幅の前に、無線デジタル・プロセッサ1006によって出力された信号を変化させることによって、実現できる。
【0036】
記載されている実施形態の種々の態様は、ソフトウェア、ハードウェア、またはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実装できる。また、記載されている実施形態は、製造作業を制御するための、コンピュータ読取可能媒体上のコンピュータ読取可能コードとして、熱可塑性成形の(thermoplastic molded)部分を加工するために使用される製造ラインを制御するための、コンピュータ読取可能媒体上のコンピュータ読取可能コードとして、実施できる。コンピュータ読取可能媒体は、その後にコンピュータシステムによって読み取られうるデータを格納可能な任意のデータ記憶デバイスである。コンピュータ読取可能媒体の例には、リード・オンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、CD−ROM、DVD、磁気テープ、光学データ記憶デバイス、及び搬送波を含む。コンピュータ読取可能媒体は、更に、コンピュータ読取可能コードが分散的に格納され実行されるように、ネットワーク接続型のコンピュータシステムに対して分散されていてもよい。
【0037】
記載されている実施形態に含まれる、種々の態様、実施形態、実装、または特徴は、個別に使用されうるか、または、任意の組み合わせで使用されうる。説明の目的のための上述の記載では、本発明の完全な理解をもたらすために、具体的な用語を使用した。しかし、その具体的な細部は、本発明を実施するために必要とされないことは、当業者には理解されよう。このため、本発明の具体的な実施形態についての上述の記載は、例示と説明のために提示している。それらは、完全であることを意図したものではなく、または、本発明を開示した形態そのものに限定することを意図したものではない。上記の教示を考慮して、多数の変更及び変形が可能であることは、当業者には理解されよう。
【0038】
本発明の原理及びその実際の適用について最も良く説明するために、実施形態を選択及び説明しており、それにより、他の当業者が、本発明及び種々の実施形態を、予期される特定の使用に適するように種々の変更を加えて最も良く利用することが可能になる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
記載されている実施形態は、全体として無線移動通信に関するものである。具体的には、信号の一部で送信される電力を選択的に増加させることによって通信リンクのロバスト性を向上させる方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
移動通信デバイスは、変動する通信リンク状況下で、1つ以上の種々のプロトコルを使用して基地局と通信する。基地局によって受信される通信信号は、移動通信デバイスまでの距離が増加するにつれて、放射される電力の散逸によって著しく減衰しうる。この信号減衰は、受信された通信信号の、雑音・干渉に対する影響の受けやすさを増大させうる。通信プロトコルは、一般に、通信信号を、ユーザ生成データと通信リンクの制御用に使用される補助情報とを含む、複数の部分に分割する。通信信号の特定の部分は、基地局と移動通信デバイスとの間の通信リンクの完全性を制御及び維持するために、当該信号の他の部分よりも、重要である可能性がある。信号の制御部分の破損は、通信リンクを遮断させうる。このため、信号の制御部分についての高品質の受信を保障することが望ましい。通信信号用に送信される電力の増加は、干渉及び雑音と比較して信号強度を増加させうる。しかし、通信プロトコルは、ユーザによって吸収される総無線周波数エネルギーを制限するために、または、移動通信デバイスと、同一の無線周波数帯域を使用する他のデバイスとの間の無線干渉を最小化するために、移動通信デバイスによって放射される最大電力の限界を設定しうる。このため、移動通信デバイスの総送信電力の制限の範囲内で、無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本書では、移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法及び装置に関連する種々の実施形態を説明する。移動通信デバイスから基地局へ送信される上りリンク通信信号に含まれる複数の部分の送信電力を、選択的に増加させる方法に適合した方法及び装置について説明する。
【0004】
一実施形態では、移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法について説明する。本方法は、移動通信デバイスの送信電力レベルを、無線通信リンクに関連付けられた品質メトリック値に応じて適応させることによって実行される。本方法は、移動通信デバイスにおける品質メトリック値をモニタリングするステップと、モニタリングされた品質メトリック値に応じて、移動通信デバイスから基地局への無線通信リンクで送信される上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップとを含んでいてもよい。一実施形態では、モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルが第1の送信電力レベル値に設定される。しかし、モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルは、第2の送信電力レベル値に設定されてもよい。第2の送信電力レベル値は、第1の送信電力レベル値よりも大きくてもよく、それにより、無線通信リンクのロバスト性を向上させる。
【0005】
本方法は、無線通信リンクが接続されている間に、品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、モニタリングされた品質メトリック値に応じて送信電力レベルを適応的に設定されてもよい。更に、上りリンク通信信号の第1の部分は、移動通信デバイスとの無線通信リンクの接続を維持するために基地局によって使用される制御信号を含んでいてもよい。
【0006】
更なる実施形態では、本方法は、上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定してもよい。上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルは、モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の第1の範囲にある場合には、第1の電力レベル値に設定され、モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の第2の範囲にある場合には、第3の電力レベル値に設定されてもよい。第3の電力レベル値は、第1の電力レベル値よりも小さくてもよい。いくつかの実施形態では、総平均送信電力は、第2の電力レベル値を使用する、上りリンク通信信号の第1の部分と、第3の電力レベル値を使用する、上りリンク通信信号の第2の部分とにわたってバランスが保たれていてもよい。
【0007】
別の実施形態では、移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させることが可能な装置について説明する。本装置は、移動通信デバイスにおける品質メトリックをモニタリングするためのプロセッサを含んでいてもよく、モニタリングされた品質メトリックが、品質値の第1の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを、第1の電力レベルに設定する。しかし、モニタリングされた品質メトリックが、品質値の第2の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを、第2の電力レベルに設定してもよい。記載されている実施形態では、無線通信リンクが接続されている間に、モニタリングと設定とが継続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明及び本発明の効果は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって、最も良く理解されうる。
【0009】
【図1】2つの重なり合う無線セル内の基地局と通信する移動通信デバイスを示す図。
【図2】無線デバイスと基地局との間で伝達される2つのタイプの情報を示す図。
【図3A】等電力で送信される音声データ及び制御データを含む時分割フレームの構造を示す図。
【図3B】異なる電力レベルで音声データと制御データとを送信するように図3Aを修正した、時分割フレームの構造を示す図。
【図4A】専用ユーザデータ及び専用チャネルを含む広帯域符号分割フレームの構造を示す図。
【図4B】異なる電力レベルでデータチャネル部分と制御チャネル部分とを送信するように図4Aを修正した、広帯域符号分割フレームの構造を示す図。
【図4C】異なる電力レベルでデータチャネル部分と制御チャネル部分とを送信するように図4Aを修正した、広帯域符号分割フレームの構造を示す図。
【図5】基地局と移動通信デバイスとの間の通信用の伝搬遅延及びタイミング・アドバンスを示す図。
【図6】品質メトリックとともに変化する送信電力レベルを示す図。
【図7】電力蓄積メトリックとともに変化する最大送信電力レベルを示す図。
【図8】通信リンクのロバスト性を向上させるための代表的な方法を示す図。
【図9】通信リンクのロバスト性を向上させるための第2の代表的な方法を示す図。
【図10】代表的な無線通信デバイスについての複数の処理ブロックのセットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、記載されている実施形態の基礎となる概念の十分な理解をもたらすために、数多くの具体的な詳細について説明している。しかし、記載されている実施形態が、それらの具体的な詳細の一部または全てを用いることなく実施されうることは、当業者には明らかである。他の例では、基礎となる概念を不必要に分かりにくくすることを避けるために、周知の処理ステップについては説明していない。
【0011】
セルラ電話または無線パーソナル・デジタル・アシスタント等の移動通信デバイスは、
様々な状況下で動作するように設計されうる。例えば、ユーザが移動中に移動通信デバイスを動作させうるという事実に起因して、移動通信デバイスは、基地局からの距離が著しく変化する際に動作可能であることが期待される。また、基地局は、通常、複数の移動通信デバイスに対して同時にサービングを行い、その結果、1つ以上の移動通信デバイスが相互に干渉する可能性がある。この干渉は、同一または近い周波数帯域を共有できる移動通信デバイスに対して起こりうる。
【0012】
基地局が、各移動通信デバイスに対して種々の送信パラメータを設定することによって、同一の無線通信セルを共有する複数の移動通信デバイスからの上りリンク通信信号を管理しうることは、当業者には理解されよう。送信パラメータは、例えば、送信すべき期間、使用すべき送信周波数の範囲、及び送信電力レベルを含む。移動通信デバイスは、基地局からの距離が変化しうるため、基地局と移動通信デバイスとの間の通信リンクの品質が著しく変化しうる。例えば、基地局と移動局との距離が長くなりすぎると、通信リンクが弱くかつ信頼できなくなるほど、通信リンクの品質が著しく劣化する可能性がある。通信リンクのこの劣化は、上りリンク通信信号が受信された際に(または受信された際であっても)著しい雑音及び干渉が基地局において存在する場合に、特に問題となりうる。
【0013】
無線通信プロトコルは、データ形式、送信周波数、誤り訂正機構、及び送信電力レベルといった具体的な特徴を含む情報を、2つの無線通信デバイス間でどのように送信しうるのかを特定するルールのセットを規定する。移動通信用グローバルシステム(GSM:Global System for Mobile communications)は、移動通信デバイス用の、標準化された周知の無線通信プロトコルである。無線通信プロトコルは、ユーザの音声及びデータを運ぶ信号に加えて、通信リンクの信頼性に関する情報を提供する、移動通信デバイスと基地局との間で定期的に伝送される制御信号を規定しうる。一定期間内に十分な数の制御信号が基地局によって認識されない場合、基地局は、通信リンクを終了する。
【0014】
通信リンクの終了は、「無線インタフェース障害(radio interface failure)」として知られており、移動通信デバイスと基地局との間で許容範囲内の(不完全な)音声及びデータ通信が依然として可能である場合に、特定の状況において発生しうる。音声信号が依然として理解可能であっても、制御信号における誤りに対する過剰な感度は接続を終了させうる。この早過ぎる終了は、制御信号と音声/データ信号とが個別かつ不均一に特定の通信システムプロトコルで符号化されうることを理由として発生しうる。低ビットレートでの音声符号化の進歩は、改善した音声伝送と低い信号対干渉比における改善した理解性(comprehensibility)とを可能にしうる。このような劣悪な動作状況下では、制御信号は、基地局によって受信された際の信号の完全性の喪失の影響をより受けやすい可能性があり、その結果、呼の損失につながる。
通信リンクのロバスト性を向上させるために、制御信号のために使用される送信電力を増加させることによって、制御信号の信頼性のある受信を向上させうる。バッテリ電力を節約し、かつ、規定された電力制約の範囲内にとどまるために、音声/データ信号の送信電力は、同時に低減されうるか、少なくとも増加させないようにされうる。移動通信デバイスは、1つ以上の品質メトリックをモニタリングすることによって、制御信号の送信電力をいつ変更するのかを決定できる。
【0015】
以下では、図1乃至図10を参照して特定の実施形態について検討する。しかし、これらの図面に関して本明細書で提供される詳細な説明は、例示のみを目的としたものであって、与えられた実施形態に限定されるものと解釈されることはないことを、当業者は容易に理解しよう。
【0016】
図1は、記載されている実施形態に係る無線通信セル100及び無線通信セル102を示している。同図に示すように、無線通信セル100は、基地局106と通信可能な移動通信デバイス104を含みうる。デバイス112及び116等の、他の複数の移動通信デバイスも、移動通信デバイス104と同時に、無線通信セル100内で基地局106と通信可能である。移動通信デバイス116は、隣接する無線通信セル102内の基地局118とも通信可能である。周知のように、放射された電磁エネルギーは、発生源からの距離の二乗の逆数で減衰する。基地局106が、受信信号を適切に処理できるようにするために、基地局106からそれぞれ距離d1及びd2の位置にある移動通信デバイス104及び116は、基地局106により近い距離d3の位置にある移動通信デバイス112よりも高い出力電力レベルで、基地局106に送信しうる。ここで、距離d3は、距離d1またはd2よりも短い。例えば、移動通信デバイス104から発せられた無線信号108は、基地局106で受信される無線信号110に関連する電力レベルP2よりも非常に大きい電力レベルP1を有しうる。受信電力レベルP2は、移動通信デバイス104と基地局106との間の距離の二乗d12で除算された送信電力レベルP1に比例しうる。
【0017】
それぞれ基地局106から異なる距離に位置する、異なる多数の移動通信デバイスから信号を受信するために、基地局106内で同一のアナログ増幅回路が使用されうる。異なる移動通信デバイスから受信した信号ごとに基地局増幅回路のアナログ利得設定を変更するのではなく、基地局106は、無線通信セル100内で送信帯域幅を共有する異なる複数の移動通信デバイスからの信号を、同様の電力レベルで受信することが望ましい。基地局106によって管理される電力制御方法を用いて、無線通信セル100内の複数の移動通信デバイスから送信された信号を正規化することで、基地局106内のアナログ受信回路を、所望の範囲で動作させることが可能になりうる。このようにして、基地局106は、通常、無線セル100内の複数の移動通信デバイスによって出力される送信電力レベルを管理することが可能である。
【0018】
距離減衰を補償することに加えて、送信信号が基地局106で受信された際の背景雑音及び干渉に対処するために、移動通信デバイスにおいて送信信号電力も増加されうる。基地局106から距離d3(d3≪d1)に位置している移動通信デバイス112が、基地局106から距離d1に位置している移動通信デバイス104によって送信される電力レベルP1とほぼ同一でありうる電力レベルP3で送信する場合、基地局106において電力レベルP2≪P1を有する(距離d1によって減衰した信号108に対応する)受信信号110が、移動通信デバイス112が送信した電力レベルP4を有する信号120からの干渉によって、圧倒される可能性がある。
したがって、基地局から更に遠くに位置している別の装置からの非常に強い信号からの、基地局により近いデバイスからの信号の尤度を減少させるために、複数の移動通信デバイスの送信電力レベルを基地局からの個別の距離に少なくとも基づいて、適応的に制御する技術が開発されている。これらの適応的な送信電力制御技術は、例えば、特定の基地局により近い移動通信デバイス(例えば、図1において基地局106に関連した移動通信デバイス112)の送信電力レベルを、基地局から更に遠くに位置している移動通信デバイス(例えば、移動通信デバイス104)の送信電力レベルと比較して、減少させうる。無線通信セル内の複数のデバイスの送信電力レベルを調整することによって、近い移動通信デバイスと遠い移動通信デバイスとの両方から受信される信号が、ほぼ同一の電力レベルで基地局に到達しうる。基地局106は、受信信号110及び120が、同様の電力レベル(即ち、P2≒P4)を有するように、距離d1に位置する移動通信デバイス104からの信号108の送信電力レベルP1を増加させうるとともに、距離d3に位置する移動通信デバイス112からの信号114の送信電力レベルP3を減少させうる。無線通信セル内の各移動通信デバイスの送信電力レベルは、移動通信デバイスがセル内で移動して、基地局までの距離が変化するにつれて、適応的に変更されうる。無線通信セル100内の通信デバイス104、112及び116の送信電力レベルの適応制御は、基地局106によって管理されうる。
【0019】
共通の無線周波数帯域を共有する複数の通信デバイス間で干渉を最小にするために、連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)は、移動通信デバイスの総放射送信電力に制限を設定している。この送信電力の制限は、移動通信デバイスによって放射される無線周波数スペクトルを、隣接する複数の周波数から成る帯域にわたる特定の電力スペクトル密度マスクよりも低く制限するか、または、特定の期間に送信される平均電力レベルに制限することを要求する。同様に、(上述のGSM移動無線プロトコル等の)通信規格は、移動通信デバイスのユーザの体によって吸収される無線周波数エネルギーを最小にするために、移動通信デバイスに対して許容される比吸収率(SAR:specific absorption rate)を制限しうる。
【0020】
無線通信セル100は、移動通信デバイスが通信可能な、半径Rの実効動作範囲を有しうる。基地局106から距離d1にある、無線通信セル100内の移動通信デバイス104等の、無線通信セル100の実効動作範囲Rの限界の近くで動作している通信デバイスは、(放射された電力の損失を克服し、ロバストな通信リンクの完全性を維持するために)より高い電力レベルで送信することが要求されうる。移動通信デバイス104は、最大送信電力レベルで動作できるとしても、基地局106で受信される信号にそれでも誤りが生じるため、基地局106と移動通信デバイス104との間の通信リンクの品質は劣化しうる。このような誤り率の増加は、背景雑音及び干渉と比べて不十分な信号強度を有することによって生じる、低い信号対雑音比を受信信号が有する場合に、特に顕著となる可能性がある。誤り率の増加は、不明瞭な音声、再送を必要としうる破損したデータ等の、多くの問題を引き起こす可能性がある。SNRが低いと、基地局106と移動通信デバイス104との間の通信リンクを維持する制御信号を破損する可能性もある。
なお、無線セル100の中心付近で動作する(即ち、移動通信デバイス112等の基地局106に近い)移動通信デバイスは、バッテリ電力を節約し、かつ、同一の周波数帯域を共有するデバイスへの干渉を制限するために、送信電力レベルを低くしうる。しかし、基地局106に対して短い距離で動作している通信デバイスの送信電力についてのこのような低減は、それらの通信デバイスを、増加したレベルの干渉及び雑音の影響をより受けやすい状態にする可能性もある。基地局で受信された弱い低電力の信号は、上りリンク性能を劣化させる可能性があり、その結果、基地局は移動通信デバイスを「聞き取る(hear)」ことができないため、呼が損失し、知覚されるサービス品質が劣化する。
【0021】
例えば図1に、領域122において重なり合っている無線通信セル100及び102によって示されているように、隣接する無線通信セルの動作範囲の境界部分が重なり合う可能性がある。移動通信デバイス116は、無線セル100の基地局106から、及び無線セル102の基地局118から、遠い距離d2に位置付けられうる。無線通信セルの重なり合いは、移動通信デバイスが1つの無線通信セルから別の無線通信セルに移動する際にハンドオフを可能にする。例えば、移動通信デバイス116は、重複領域122において動作している場合、無線通信セル100の基地局106との通信から、無線通信セル102の基地局118との通信に、受け渡されうる。
しかし、移動通信デバイス116は、ハンドオフ等の間、(制御部分を含む)受信信号が、受け渡す基地局106か受け取る基地局118とのいずれかで受信される際に弱くなるにつれて、呼の損失の影響を受けやすくなりうる。基地局は、移動通信デバイス116の送信電力を増加させることは可能であるものの、標準規格の仕様本体で許容されている最大レベルまでのみである。最大送信電力レベルは、移動通信デバイス116から基地局106または118のいずれかまでの距離d2をトラバースする信号が被る減衰を克服するには不十分である可能性がある。このため、特に移動通信デバイスが最大電力レベルで動作する場合に、通信リンクのロバスト性を増加させる方法が、通信システム全体の性能を向上させるために望ましい。
【0022】
基地局は、移動通信デバイスから受信される通信信号をモニタリングすることで、当該デバイスに対する通信リンクについての品質メトリックを推定しうる。通信リンクの品質は、移動通信デバイスが通信セル内で移動し、それにより、基地局までの距離が変化して、異なる干渉レベルに直面するにつれて、大幅に変化しうる。通信信号は、無線通信プロトコルに従って、符号化されたユーザデータを運びうる音声/データ部分と、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクを管理するための制御信号を運びうる制御部分との組み合わせに、フォーマットされうる。図2は、移動通信デバイス202と基地局200との間で伝送される通信信号を示しており、ユーザデータ(圧縮された音声等)専用の部分204/208と、通信リンクの制御用に使用される他の部分206/210とを含んでいる。一般に、通信信号のかなり多くの部分は、ユーザデータ専用である一方で、制御情報は、低頻度ではあるものの通常は一定間隔で送信される。
【0023】
図3Aは、例示的なGSM通信プロトコル・フォーマットを示しており、120msのマルチフレーム300の期間を26個の個別のフレームに分割し、24個のフレーム304は、トラヒックチャネル(TCH)音声データ専用であり、「低速」付随制御チャネルまたは「高速」付随制御チャネル(SACCH/FACCH)バーストフレーム302は、制御用に使用される。マルチフレーム300内の個別のフレームのそれぞれは、ほぼ等しい「非上昇(non-boosted)」電力レベル308で送信される。図3AのSACCH/FACCHバースト302は、図2の制御信号206/210に相当する一方、TCH音声データ304は、データ信号204/208に相当する。SACCH/FACCH制御フレーム302は、基地局200と移動ハンドセット202との間の送信を管理するためのタイミング制御及び電力制御を含んでいてもよい。
移動通信デバイス202から送信される上りリンク通信信号の制御部分206は、通信リンク性能が、ネットワークによって要求されるサービス品質を提供するのに十分であるかどうかを突き止めるために、基地局200によって信号の完全性のためにモニタリングされうる。基地局200は、信号のSACCH/FACCH制御フレーム302のモニタリングに基づいて、通信リンク性能が低いと判定した場合、基地局200は、移動通信デバイス202との通信リンクを切断することを選択しうる。通信リンクの切断は、TCH音声データ304フレームがまだ使用可能であっても起こりうる。システムによっては、例えば、基地局は、SACCH/FACCH制御フレーム302で受信された、比較的少数の連続するメッセージが、劣悪な品質を有すると判定された場合に、通信リンクを中断しうる。TCH音声データフレーム304が、SACCH/FACCHバースト制御フレーム302とは独立して符号化されうるため、SACCH/FACCHバースト制御フレーム302における劣悪な品質は、TCH音声データフレーム304における劣悪な品質と、必ずしも対応しない。
【0024】
基地局によって受信された信号が、減衰によって弱まった際に、または、高いレベルの干渉によってマスキングされた際に、通信リンクを維持するためには、リンクの完全性のために基地局によってモニタリングされる送信信号の少なくとも一部分について、移動通信デバイスで放射される送信電力を増加させようとしうる。総放射送信電力には制限があるため、移動通信デバイスによって基地局へ送信される信号の全ての部分について送信電力を増加させることはできない。その代わりに、図3Bに示すように、マルチフレーム310内のSACCH/FACCHバースト制御フレーム312の電力を、「非上昇」電力レベル308よりも上方へ選択的に増加させることができ、それにより、送信信号のこれらの制御部分が、基地局で受信された際にマルチフレーム310についての信号の完全性をモニタリングするために使用できるようにする。なお、「非上昇」電力レベル308は、図3Aにおいて、TCH音声データ304によって使用されており、かつ、SACCH/FACCHバースト302用に使用されている電力レベルに相当しうる。
信号の音声データ部分よりも上方に、当該信号の制御部分の電力レベルを上昇させることによって、基地局で受信された際により高い電力の制御部分を提供でき、基地局は、当該信号のより高い強度を有する制御部分をより容易に「聞き取る」ことができ、通信リンクを維持することができる。このように、送信信号の一部分のみについての送信電力を増加させることによって、基地局と移動通信デバイスとの間の通信リンクのロバスト性を増加させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、マルチフレーム310にわたって平均化された総送信電力は、マルチフレーム310のSACCH/FACCH制御部分312の電力を上昇させているか否かによらず、ほぼ一定であることが要求されうる。具体的には、移動通信デバイスが、最大送信電力レベルで送信している場合、即ち、「非上昇」電力レベル308が、所与の通信プロトコルについて可能な最大値に設定されている場合、マルチフレーム310のいずれかの部分の増加は、電力規制限界を超える、移動通信デバイスからの送信につながりうる。
移動通信デバイスからの、マルチフレーム310全体にわたって平均化された総電力送信が、指定された送信電力限界の範囲内に必ずとどまるようにするために、SACCH/FACCH制御部分312の電力を増加させる際に、TCH音声データフレーム314及びアイドルフレーム316の両方を含む、他の全ての(即ち、SACCH/FACCH制御部分312を除く)信号の送信電力を低くしうる。通信信号のSACCH/FACCH制御部分312は、マルチフレーム310ごとの総送信時間のうちの、限られた一部分を占有しうるため、SACCH/FACCH制御部分312は、適度に電力が簡易に増加されうる一方で、マルチフレーム310内の残りの信号は、わずかにのみ低減される必要がある。例えば、図3Bに示すように、SACCH/FACCH制御部分312は、約1dB電力が増加し、これにより、通信リンクが維持される可能性が十分に向上する一方、TCH音声データ部分314は、より高い電力のSACCH/FACCH制御部分312を補償するために、約0.1dBのみ低くされる必要がある。TCH音声データ314を比較的少量だけ減少させることによって、許容可能な音声/データ復号性能を、移動通信デバイスと基地局との間で維持することが可能である。
【0026】
図4Aは、ユニバーサル移動通信システム(UMTS:Universal Mobile Telecommunications System)広帯域符号分割多元接続(WCDMA:Wideband Code Division Multiple Access)の例示的な通信プロトコル・フォーマットを示しており、当該フォーマットは、15個の連続するタイムスロットから成る10msのフレーム400を使用し、各タイムスロットは、データ及び制御情報の両方を含んでいる。タイムスロット402の期間では、上りリンク(UL)専用物理データチャネル(DPDCH)404とUL専用物理制御チャネル(DPCCH)406とは、各チャネルが直交拡散符号によって拡散された状態で、同時に送信可能である。UL DPCCH406は、以下の4つの部分、
(1)同期及びチャネル推定用の予め定められたパターンを含むパイロット情報を送信するために使用される部分、
(2)ビットレート及び符号化パラメータを含むトランスポート・フォーマット組合せインジケータ(TFCI)部分、
(3)閉ループ形式ダイバーシチのために使用されるフィードバック・インジケータ(FBI)部分、及び
(4)基地局に送信電力レベルの変更を要求するために使用される送信電力御部分、
を含んでいる。基地局は、上りリンクDPCCHのパイロット部分及びTFCI部分のうちの少なくとも1つをモニタリングすることによって、上りリンク通信信号の完全性を評価しうる。
基地局と移動デバイスとの間の通信リンクのロバスト性を増加させるために、パイロット部分及びTFCI部分のうちの少なくとも1つの電力レベルが増加されうる一方、データ部分の電力レベルの一部分は、電力レベルの変更なしで使用された際の適切な利得比を維持するために、同時に低減される。図4Bに示すように、UL DPCCH416内のパイロット部分は、非上昇電力レベル408よりも上方に増加されうるとともに、UL DPDCH414についての比例するセグメントは、非上昇電力レベル408よりも下方に低減されうる。UL DPCCHの一部分のみが増加した電力を有するため、UL DPDCHについての同様の一部分は、補償のために低減された電力を有する。図4Cは、UL DPCCH426のTFCI部分の電力レベルの増加と、非上昇電力レベル408に対する、UL DPDCH424の一部分の電力レベルの低減とを示している。
【0027】
移動通信デバイスから基地局への通信信号に含まれる制御部分の送信電力レベルの増加を選択することは、基地局からの介入なしで、移動通信デバイスでモニタリングされる1つ以上の条件によってトリガされうる。例えば、移動通信デバイスは、受信基地局から遠く離れた位置に移動通信デバイスがあることを示しうる、総平均送信電力レベルの最大値に、到達したかどうかを判定するために、総平均送信電力レベルをモニタリングしうる。いくつかの実施形態では、基地局は、移動通信デバイスの総平均送信電力を、下りリンク制御メッセージに当該デバイスの電力制御レベルを設定することによって制御しうる。基地局は、基地局が受信する信号の電力レベルの低下を観測することに基づいて、移動通信デバイスの総平均送信電力を増加させることを選択しうる。移動通信デバイスは、総平均送信電力レベルを増加させることを下りリンク制御メッセージ内で基地局によって要求された場合、基地局から遠く離れた位置にあることを推定できる。
【0028】
あるいは、移動通信デバイスは、当該移動通信デバイスからバーストを送信する際に基地局によって要求されるタイミング・アドバンス(TA)の量をモニタリングしうる。このタイミング・アドバンスは、上述の電力制御レベルと同様、基地局からの移動通信デバイスの距離に間接的に関連しうる。図5に示すように、基地局における送信通信バースト及び受信通信バーストは、タイムスロットの境界に位置合わせされうる。例えば、送信通信バースト502は、BSタイムスロット0の始点に位置合わせされており、受信通信バースト512は、BSタイムスロット3の始点に位置合わせされている。基地局は、同一の無線通信セル内の異なる移動通信デバイスから受信される通信バーストが、当該基地局で受信された際に当該基地局のタイムスロット境界に位置合わせされるよう、要求しうる。基地局における2つ隣接するタイムスロットが、2つの異なる移動通信デバイスによって使用される可能性があるとともに、それぞれの移動通信デバイスは、基地局から異なる距離に位置付けられている可能性がある。
移動通信デバイスと基地局との間の距離の変化に対処するために、移動通信デバイスは、基地局への通信バーストの送信を開始するタイミングを調整しうる。このタイミング調整は、送信通信バーストの「タイミング・アドバンス」として知られている。通信バーストが移動通信デバイスのタイムスロット境界の始点以前に「進められ(アドバンスされ)」うるためである。基地局は、当該基地局のタイムスロット境界に位置合わせされた送信通信バーストが基地局に到達するようにするために、通信バースト送信をどの程度「進める(アドバンスさせる)」のかを移動通信デバイスに指示しうる。
【0029】
図5は、BSタイムスロット0の期間に基地局から送信され、移動通信デバイス(MD)においてMDタイムスロット0の期間に通信バースト506として受信された、通信バースト502を示している。通信バースト502/506は、基地局から移動通信デバイスまでの距離を伝わる際に、τ単位の伝搬遅延504を被る。移動通信デバイスから基地局への、逆方向に送信される通信バーストは、順方向に送信される通信バーストが被るのと同様に、同一の伝搬遅延504τを被る。したがって、移動通信デバイスは、基地局と移動通信デバイスとの間の往復伝搬遅延に対処するために、通信バースト508を送信する際に、移動通信デバイスのタイムスロット境界に対して、2τ単位のタイミング・アドバンス(TA)510だけ進める。図5に示すように、送信通信バースト508は、MDタイムスロット3の始点から、TA510だけMDタイムスロット2内に「進められ」うるとともに、基地局における対応する受信通信バースト512は、BSタイムスロット3の先頭の境界に位置合わせされうる。
タイミング・アドバンスは伝搬遅延に対応し、タイミング・アドバンスが長い値であるほど、より長い伝搬遅延、または、移動通信デバイスと基地局との間のより大きな距離に対応しうる。このため、高い値のタイミング・アドバンス設定が、下りリンク制御メッセージにおいて基地局によって移動通信デバイスに要求された場合には、移動通信デバイスは、通信バーストがより長い距離を移動する可能性があること、またそれ故に、当該通信バーストは、基地局で受信された際に電力がより弱まっている可能性があることを推定しうる。
【0030】
基地局によって要求される電力制御レベルまたはタイミング・アドバンス設定は、基地局における弱い信号(及び、それ故に劣悪な受信SNR)をもたらしうる、移動通信デバイスと基地局との間の遠い距離についての指標を提供しうる。電力制御レベル及びタイミング・アドバンス設定は、モニタリングされうるとともに上りリンク通信バースト一部分の送信電力レベルを変更するタイミングを決定するために使用される、移動通信デバイスにおける品質メトリックを、間接的に提供しうる。
図6は、移動通信デバイスについての、品質メトリック614と送信(TX)電力レベル612とを関連付けるグラフ600を示している。高い品質値QHI608以上の範囲の品質メトリック614に対して、TX電力レベル612は、より低い(または、等価的には増加されていない)値TXLO604に設定されうる。低い品質値QLO606以下の範囲の品質メトリック614に対して、TX電力レベル612は、より高い(または、等価的には増加されている)値TXHI602に設定されうる。低い品質値QLO606と高い品質値QHI608との間の品質メトリック614に対して、TX電力レベル612は、TXHI602とTXLO604とのいずれかの、前回設定された送信電力レベルを維持しうる。グラフ600に示すヒステリシスは、測定された品質メトリックがQLO606とQHI608との間の領域内で推移する場合には、安定性を提供しうる。
初めに、移動通信デバイスは、基地局との通信リンクの確立後、低い送信電力レベル値TXLO604のTX電力レベル612を送信しうる。モニタリングした品質メトリック614が、低い品質値QLO606を下回ると、移動通信デバイスは、上りリンク通信バーストが、基地局において劣悪なSNRで受信されている可能性があると推測しうる。次に、移動通信デバイスは、基地局との通信リンクのロバスト性を向上させるために、制御部分等の、上りリンク通信バーストの一部分について、TX電力レベル612を、高い値TXHI602に増加させうる。移動通信デバイスは、品質メトリックが低い品質値QLO606を超えて増加したとしても、高い値TXHI602を使用し続けうるとともに、当該品質メトリックが、高い品質メトリックQHI608を超えるまで、送信電力レベル612を、低い値TXLO604に低減しえない。
劣悪な上りリンクSNRについての他の指標も、移動通信デバイスによって推定されうる。例えば、移動通信デバイスは、復号誤りについての、下りリンク受信信号の性能をモニタリングしうる。下りリンク信号が、移動通信デバイスにおいて劣悪な状態で受信された場合、上りリンク信号も、基地局において劣悪な状態で受信される可能性がある。これは、下りリンク信号と上りリンク信号の両方は、基地局と移動通信デバイスとの間で同様のパスをトラバースする可能性があるためである。下りリンク性能は、RxQUALまたはCRC誤り等の、移動通信デバイスにおいて測定または推定された性能パラメータを使用して、モニタリングされうる。
【0031】
バッテリ電力の低下等、特定の状況下では、上りリンク通信バーストの一部分に適用される送信電力レベル調整は、移動通信デバイスによる電力消費を減少させるように変更されうる。総平均送信電力を、電力の上昇なしと同程度のレベルに維持するために、上りリンク通信バーストの他の一部分を低下させたとしても、上りリンク通信バーストの一部分についての送信電力レベルが高いほど、移動通信デバイスによる電力消費が高くなる。このような電力消費の増加は、移動通信デバイス内のアナログ増幅器によって消費される電力量が、送信される電力量と「非線形に」関連しているために発生しうる。一実施形態では、バッテリ電力レベルが、移動通信デバイスにおいて予め定められた閾値を下回る場合には、上りリンク通信バーストに含まれる一部分についての送信電力レベルの選択的な増加は適用されえない。他の実施形態では、移動通信デバイスにおいてモニタリングされた電力蓄積メトリックに基づいて、図7に示すように、選択的な電力の上昇を段階的に徐々に停止させる。
【0032】
図7は、電力蓄積メトリック710を、移動通信デバイスからの上りリンク通信バーストの一部分に対して提供されうる高送信電力レベルTXHI612と関連付けるグラフ700を示している。電力蓄積レベルPHI708以上の電力蓄積メトリック710の値に対して、上りリンク通信バーストの一部分を上昇させる際に使用されうる、高送信電力レベルTXHI612は、最大で高送信値TXMAX702までとりうる。この場合、電力蓄積メトリック710は、移動通信デバイスが、制限なしで最大の送信上昇機能を使用可能な、蓄積された十分な予備電力を有していることを示しうる。電力蓄積レベルPLO706以下等の、低い電力蓄積メトリック710では、高送信電力レベルTXHI612が、最小の高送信値TXMIN704に制限されうる。この場合、電力蓄積メトリック710は、送信電力が節約されるように、移動通信デバイスが、蓄積された不十分な予備電力を有していることを示しうる。
いくつかの実施形態では、TXMIN704は、送信電力の上昇が生じないような値であってもよい。電力蓄積メトリック710が、電力蓄積レベルPLO706とPHI708との間に収まっている場合、高送信電力レベルTXHI612は、最小値TXMIN704と最大値TXMAX702との間に収まりうる。TXMAX702とTXMIN704との間に収まる、中間のTXHI電力レベル612は、通信リンクのロバスト性を向上させるための送信電力レベルの上昇と、移動通信デバイスのバッテリ電力消費の節約との、バランスを保ちうる。図7は、TXMIN704とTXMAX702との間で線形なカーブを示しているが、最小のTXMIN704と最大のTXMAX702とをつなぐ他のカーブ形状が使用されてもよい。
代表的な実施形態では、最小の高送信値TXMIN704は、品質メトリック614が高い値QHI608以上である場合に使用される、「通常の」非上昇送信レベルTXLO604であってもよい。図7の電力蓄積メトリックのグラフ700は、図6の品質メトリックのグラフ600を修正するものと考えられうる。
【0033】
図8は、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクのロバスト性を向上させるための、代表的な方法800を示している。
ステップ802で、移動通信デバイスと基地局との間の上りリンク通信バーストに含まれる第1の部分についての送信電力レベルが、第1の電力レベルに初期化されうる。この第1の電力レベルは、例えば、「通常の」非上昇電力レベルと考えることができ、上りリンク通信バーストの第1の部分は、制御信号のフレーム(例えば、図3Aに示した、マルチフレーム300内のSACCH/FACCHバースト302のフレーム)と考えることができる。
ステップ804で、移動通信デバイスは、上述した送信電力制御レベルまたはタイミング・アドバンス値等の品質メトリックを、定期的に(例えば、整数個のマルチフレーム300が受信または送信されるごとに)モニタリングしうる。
ステップ806で、品質メトリック値が、値の第1の範囲内に収まるか否かを判定するために検査されうる。値の第1の範囲は、例えば、図6に品質メトリック614について示したように、QHI608以上であってもよい。
ステップ806で、品質メトリック値が、値の第1の範囲内に収まっていると判定された場合、ステップ808で、移動通信デバイスと基地局との間の上りリンク通信バーストの第1の部分についての送信電力レベルが、第1の電力レベルに設定されうる。高い品質メトリックレベルは、送信電力レベルが「通常の」非上昇レベルにとどまることを示しうる。
ステップ806で、品質メトリック値が、値の第1の範囲内に収まっていないと判定された場合、ステップ810で、品質メトリック値が、値の第2の範囲内に収まっているか否かを判定するために再び検査されうる。値の第2の範囲は、例えば、図6に品質メトリック614について示したように、QLO606以下であってもよい。
ステップ810で、品質メトリック値が、値の第2の範囲内に収まっていると判定された場合、ステップ812で、移動通信デバイスと基地局との間の上りリンク通信バーストの第1の部分についての送信電力レベルが、第2の電力レベルに設定されうる。低い品質メトリックレベルは、送信された上りリンク通信バーストが、弱まった状態で基地局で受信されうるとともに、それ故に、雑音または干渉による破損の影響を受けやすいことを示しうる。上りリンク通信バーストの第1の部分の送信電力レベルは、雑音及び干渉のある環境において性能を向上させるために増加されうる。
ステップ814で、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクが接続されたままである場合、ステップ804における品質メトリックのモニタリング及び検査と、ステップ808及び812における送信電力レベルの設定とが、繰り返されうる。
【0034】
図9は、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクのロバスト性を向上させるための、第2の代表的な方法900を示している。
ステップ902で、移動通信デバイスから基地局への上りリンク通信バーストに含まれる、第1の部分及び第2の部分の両方についての送信電力レベルが、第1の電力レベルに設定されうる。ステップ904で、図8のステップ804と全く同様に、品質メトリック値がモニタリングされうる。
ステップ906で、品質メトリック値が、第1の範囲内に収まっているか否かを判定するために検査されうる。ステップ906で、品質メトリック値が第1の範囲内に収まっていると判定された場合、第1及び第2の部分の送信電力レベルが第1の電力レベルに設定されうる。ステップ906で、ステップ906で、品質メトリック値が第1の範囲内に収まっていないと判定された場合、ステップ910で、品質メトリック値が、値の第2の範囲内に収まっているか否かを判定するために検査されうる。
ステップ910で、品質メトリック値が、第2の範囲内に収まっていると判定された場合、ステップ912で、上りリンク通信バーストの第1の部分についての送信電力レベルが、第2の電力レベル(例えば、上昇させた電力レベル)に設定されうる一方で、第2の部分が、第3のレベル(例えば、減少させた電力レベル)に設定されうる。送信される上りリンク通信バーストの、第1の部分を上昇させるとともに、第2の部分を減少させることによって、総平均送信電力は、第1の部分及び第2の部分を「通常の」電力レベルに設定した場合のレベル以下にとどまりうる。
ステップ914で、通信リンクが接続されたままであるかが判定されうるとともに、そうであると判定された場合、モニタリング・ステップ、検査ステップ、及び設定ステップが、繰り返されうる。
【0035】
図10は、移動通信デバイスと基地局との間の通信リンクのロバスト性を向上させることが可能な、移動通信デバイスについての複数の処理ブロック1000を示している。無線デジタル・プロセッサ1006は、無線アナログ・プロセッサ1004によって増幅される前のデジタル通信バースト、及び、アンテナ1002を介した受信後のデジタル通信バーストを、それぞれ送信及び受信しうる。圧縮された音声等の無線データは、アプリケーション・プロセッサ1008から無線デジタル・プロセッサ1006に伝達されうる。無線デジタル・プロセッサ1006は、当該無線データを、上りリンク通信バーストとしての送信のために、フォーマットし、符号化し、変調する。無線アナログ・プロセッサ1004は、上りリンク通信バーストを、適切な送信電力レベルに増幅しうる。無線デジタル・プロセッサとアプリケーション・プロセッサとのいずれかは、モニタリングした品質メトリック及び電力蓄積レベルの少なくともいずれかに基づいて、上りリンク通信バーストに含まれる異なる複数の部分のために使用される送信電力レベルを設定しうる。上りリンク通信バーストに含まれる異なる複数の部分を、送信電力レベルが部分ごとに変化するように形成する処理は、無線アナログ・プロセッサ1004による増幅の前に、無線デジタル・プロセッサ1006によって出力された信号を変化させることによって、実現できる。
【0036】
記載されている実施形態の種々の態様は、ソフトウェア、ハードウェア、またはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実装できる。また、記載されている実施形態は、製造作業を制御するための、コンピュータ読取可能媒体上のコンピュータ読取可能コードとして、熱可塑性成形の(thermoplastic molded)部分を加工するために使用される製造ラインを制御するための、コンピュータ読取可能媒体上のコンピュータ読取可能コードとして、実施できる。コンピュータ読取可能媒体は、その後にコンピュータシステムによって読み取られうるデータを格納可能な任意のデータ記憶デバイスである。コンピュータ読取可能媒体の例には、リード・オンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、CD−ROM、DVD、磁気テープ、光学データ記憶デバイス、及び搬送波を含む。コンピュータ読取可能媒体は、更に、コンピュータ読取可能コードが分散的に格納され実行されるように、ネットワーク接続型のコンピュータシステムに対して分散されていてもよい。
【0037】
記載されている実施形態に含まれる、種々の態様、実施形態、実装、または特徴は、個別に使用されうるか、または、任意の組み合わせで使用されうる。説明の目的のための上述の記載では、本発明の完全な理解をもたらすために、具体的な用語を使用した。しかし、その具体的な細部は、本発明を実施するために必要とされないことは、当業者には理解されよう。このため、本発明の具体的な実施形態についての上述の記載は、例示と説明のために提示している。それらは、完全であることを意図したものではなく、または、本発明を開示した形態そのものに限定することを意図したものではない。上記の教示を考慮して、多数の変更及び変形が可能であることは、当業者には理解されよう。
【0038】
本発明の原理及びその実際の適用について最も良く説明するために、実施形態を選択及び説明しており、それにより、他の当業者が、本発明及び種々の実施形態を、予期される特定の使用に適するように種々の変更を加えて最も良く利用することが可能になる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法であって、
前記移動通信デバイスの送信電力レベルを、前記無線通信リンクに関連付けられた品質メトリック値に応じて適応させるステップと、
前記移動通信デバイスにおける前記品質メトリック値をモニタリングするステップと、
前記無線通信リンクの前記ロバスト性を向上させるために、前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを第1の送信電力レベル値に設定し、前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内である場合には、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを第2の送信電力レベル値に設定することによって、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて、前記移動通信デバイスから前記基地局への前記無線通信リンクで送信される前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップと
を含み、
前記第2の送信電力レベル値は、前記第1の送信電力レベル値よりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記無線通信リンクが接続されている間に、前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分が、前記基地局と前記移動通信デバイスとの間の前記無線通信リンクの接続を維持するために前記基地局によって使用される制御信号を含む、前記ステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移動通信デバイスの電力蓄積メトリック値をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた電力蓄積メトリック値に基づいて、前記第2の送信電力レベル値を設定するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記品質メトリック値は、前記基地局によって設定される電力制御レベル値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記品質メトリック値は、前記基地局によって設定されるタイミング・アドバンス値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記品質メトリック値は、前記移動通信デバイスによって測定された、受信された下りリンク送信の品質メトリック値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第1の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の電力レベル値に設定し、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第2の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを第3の電力レベル値に設定し、
前記第3の電力レベル値が前記第1の電力レベル値よりも小さい、前記ステップと、
前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記第1の部分が前記第2の電力レベル値に設定され、かつ、前記第2の部分が前記第3の電力レベル値に設定されている場合の、前記上りリンク通信信号の前記第1及び第2の部分にわたる総平均送信電力が、前記第1及び前記第2の部分が前記第1の電力レベル値に設定されている場合の総平均送信電力以下である、前記ステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
移動通信デバイスであって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記移動通信デバイスから基地局へ送信される上りリンク通信信号を含む無線リンクを介して、前記移動通信デバイスが前記基地局と無線通信を行っている間に、
品質メトリック値をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて、前記上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを適応させ、
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップでは、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内である場合には、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを第1の送信電力レベル値に設定し、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内である場合には、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを第2の送信電力レベル値に設定し、
前記第2の送信電力レベル値は、前記第1の送信電力レベル値よりも大きいことを特徴とする移動通信デバイス。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記無線リンクが接続されている間に、前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分が、前記基地局と前記移動通信デバイスとの間の前記無線リンクの接続を維持するために前記基地局によって使用される制御信号を含む、前記ステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを更に適応させ、
前記プロセッサは、更に、
前記移動通信デバイスの電力蓄積メトリック値をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた電力蓄積メトリック値に基づいて、前記第2の送信電力レベル値を設定するステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを更に適応させ、
前記品質メトリック値が、前記基地局によって設定される電力制御レベル値であるか、前記モニタリングされた品質メトリック値が、前記基地局によって設定されるタイミング・アドバンス値であるか、または、前記モニタリングされた品質メトリック値が、前記移動通信デバイスによって測定された、受信された下りリンク送信の品質メトリック値である
ことを特徴とする請求項8に記載の移動通信デバイス。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第1の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の電力レベル値に設定し、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第2の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを第3の電力レベル値に設定し、
前記第3の電力レベル値が前記第1の電力レベル値よりも小さい、前記ステップと、
前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記第1の部分が前記第2の電力レベル値に設定され、かつ、前記第2の部分が前記第3の電力レベル値に設定されている場合の、前記上りリンク通信信号の前記第1及び第2の部分にわたる総平均送信電力が、前記第1及び前記第2の部分が前記第1の電力レベル値に設定されている場合の総平均送信電力以下である、前記ステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを更に適応させる
ことを特徴とする請求項8または9に記載の移動通信デバイス。
【請求項11】
移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための、プロセッサによって実行されるコンピュータ・コードを格納したコンピュータ読取可能媒体であって、
前記移動通信デバイスにおける品質メトリック値をモニタリングするコンピュータプログラム・コードと、
前記移動通信デバイスから前記基地局への前記無線通信リンクで送信される上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に基づいて増加させるコンピュータプログラム・コードと
を備え、
前記品質メトリック値は、前記基地局において前記移動通信デバイスから受信される上りリンク通信信号の信号品質を間接的に示し、
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分は、前記基地局と前記移動通信デバイスとの間の前記無線通信リンクの接続を維持するために前記基地局によって使用される制御信号を含み、
前記品質メトリック値は、前記基地局によって設定される電力制御レベル値であるか、前記基地局によって設定されるタイミング・アドバンス値であるか、または、前記移動通信デバイスによって測定された、受信された下りリンク送信の品質メトリック値である
ことを特徴とするコンピュータ読取可能媒体。
【請求項12】
前記移動通信デバイスから前記基地局への前記無線通信リンクで送信される前記上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に基づいて減少させるコンピュータプログラム・コードを更に備えることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【請求項13】
前記上りリンク通信信号の前記第2の部分についての前記減少した送信電力レベルは、前記上りリンク通信信号の平均送信電力レベルがほぼ不変となるように、前記上りリンク通信信号の前記第2の送信電力についての前記増加した送信電力レベルとのバランスを保っていることを特徴とする請求項11または12に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【請求項1】
移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための方法であって、
前記移動通信デバイスの送信電力レベルを、前記無線通信リンクに関連付けられた品質メトリック値に応じて適応させるステップと、
前記移動通信デバイスにおける前記品質メトリック値をモニタリングするステップと、
前記無線通信リンクの前記ロバスト性を向上させるために、前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内である場合には、上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを第1の送信電力レベル値に設定し、前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内である場合には、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを第2の送信電力レベル値に設定することによって、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて、前記移動通信デバイスから前記基地局への前記無線通信リンクで送信される前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップと
を含み、
前記第2の送信電力レベル値は、前記第1の送信電力レベル値よりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記無線通信リンクが接続されている間に、前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分が、前記基地局と前記移動通信デバイスとの間の前記無線通信リンクの接続を維持するために前記基地局によって使用される制御信号を含む、前記ステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移動通信デバイスの電力蓄積メトリック値をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた電力蓄積メトリック値に基づいて、前記第2の送信電力レベル値を設定するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記品質メトリック値は、前記基地局によって設定される電力制御レベル値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記品質メトリック値は、前記基地局によって設定されるタイミング・アドバンス値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記品質メトリック値は、前記移動通信デバイスによって測定された、受信された下りリンク送信の品質メトリック値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第1の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の電力レベル値に設定し、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第2の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを第3の電力レベル値に設定し、
前記第3の電力レベル値が前記第1の電力レベル値よりも小さい、前記ステップと、
前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記第1の部分が前記第2の電力レベル値に設定され、かつ、前記第2の部分が前記第3の電力レベル値に設定されている場合の、前記上りリンク通信信号の前記第1及び第2の部分にわたる総平均送信電力が、前記第1及び前記第2の部分が前記第1の電力レベル値に設定されている場合の総平均送信電力以下である、前記ステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
移動通信デバイスであって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記移動通信デバイスから基地局へ送信される上りリンク通信信号を含む無線リンクを介して、前記移動通信デバイスが前記基地局と無線通信を行っている間に、
品質メトリック値をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて、前記上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを適応させ、
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを適応的に設定するステップでは、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第1の範囲内である場合には、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを第1の送信電力レベル値に設定し、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質メトリック値の第2の範囲内である場合には、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを第2の送信電力レベル値に設定し、
前記第2の送信電力レベル値は、前記第1の送信電力レベル値よりも大きいことを特徴とする移動通信デバイス。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記無線リンクが接続されている間に、前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記上りリンク通信信号の前記第1の部分が、前記基地局と前記移動通信デバイスとの間の前記無線リンクの接続を維持するために前記基地局によって使用される制御信号を含む、前記ステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを更に適応させ、
前記プロセッサは、更に、
前記移動通信デバイスの電力蓄積メトリック値をモニタリングするステップと、
前記モニタリングされた電力蓄積メトリック値に基づいて、前記第2の送信電力レベル値を設定するステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを更に適応させ、
前記品質メトリック値が、前記基地局によって設定される電力制御レベル値であるか、前記モニタリングされた品質メトリック値が、前記基地局によって設定されるタイミング・アドバンス値であるか、または、前記モニタリングされた品質メトリック値が、前記移動通信デバイスによって測定された、受信された下りリンク送信の品質メトリック値である
ことを特徴とする請求項8に記載の移動通信デバイス。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第1の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の電力レベル値に設定し、
前記モニタリングされた品質メトリック値が、品質値の前記第2の範囲にある場合には、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを第3の電力レベル値に設定し、
前記第3の電力レベル値が前記第1の電力レベル値よりも小さい、前記ステップと、
前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを前記第1の送信電力レベル値に初期化するステップと、
前記品質メトリック値を繰り返しモニタリングするとともに、前記上りリンク通信信号の前記第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に応じて適応的に設定するステップであって、前記第1の部分が前記第2の電力レベル値に設定され、かつ、前記第2の部分が前記第3の電力レベル値に設定されている場合の、前記上りリンク通信信号の前記第1及び第2の部分にわたる総平均送信電力が、前記第1及び前記第2の部分が前記第1の電力レベル値に設定されている場合の総平均送信電力以下である、前記ステップと
を実行することによって、前記移動通信デバイスの送信電力レベルを更に適応させる
ことを特徴とする請求項8または9に記載の移動通信デバイス。
【請求項11】
移動通信デバイスと基地局との間の無線通信リンクのロバスト性を向上させるための、プロセッサによって実行されるコンピュータ・コードを格納したコンピュータ読取可能媒体であって、
前記移動通信デバイスにおける品質メトリック値をモニタリングするコンピュータプログラム・コードと、
前記移動通信デバイスから前記基地局への前記無線通信リンクで送信される上りリンク通信信号の第1の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に基づいて増加させるコンピュータプログラム・コードと
を備え、
前記品質メトリック値は、前記基地局において前記移動通信デバイスから受信される上りリンク通信信号の信号品質を間接的に示し、
前記上りリンク通信信号の前記第1の部分は、前記基地局と前記移動通信デバイスとの間の前記無線通信リンクの接続を維持するために前記基地局によって使用される制御信号を含み、
前記品質メトリック値は、前記基地局によって設定される電力制御レベル値であるか、前記基地局によって設定されるタイミング・アドバンス値であるか、または、前記移動通信デバイスによって測定された、受信された下りリンク送信の品質メトリック値である
ことを特徴とするコンピュータ読取可能媒体。
【請求項12】
前記移動通信デバイスから前記基地局への前記無線通信リンクで送信される前記上りリンク通信信号の第2の部分の送信電力レベルを、前記モニタリングされた品質メトリック値に基づいて減少させるコンピュータプログラム・コードを更に備えることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【請求項13】
前記上りリンク通信信号の前記第2の部分についての前記減少した送信電力レベルは、前記上りリンク通信信号の平均送信電力レベルがほぼ不変となるように、前記上りリンク通信信号の前記第2の送信電力についての前記増加した送信電力レベルとのバランスを保っていることを特徴とする請求項11または12に記載のコンピュータ読取可能媒体。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−514013(P2013−514013A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543312(P2012−543312)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059930
【国際公開番号】WO2011/081853
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.WCDMA
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059930
【国際公開番号】WO2011/081853
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.WCDMA
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】
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