説明

無線通信方法及びシステム

【課題】他の通信システムからの通信干渉が生じた場合に、より短時間で効率的にチャネル切り替えを行う無線通信方法を提供する。
【解決手段】無線端末2間において互いに異なる期間となるように無線端末2毎に設定された検出報告期間を、無線基地局3から各無線端末2に通知する期間通知ステップと、各無線端末2がそれぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出ステップと、各無線端末2により、干渉検出ステップにおける通信干渉の検出結果を検出報告として、これを通知された各検出報告期間において無線基地局3に通知する検出報告ステップと、無線基地局3により、期間通知ステップで各無線端末2に通知した各検出報告期間において各無線端末2からの検出報告を待ち受け、検出報告ステップから受信した検出報告に基づいて、各無線端末2との間で通信すべき共通チャネルを切り替え制御するチャネル制御ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う際において、他の通信システムからの通信干渉を防止する上で好適な無線通信方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)は、有線LANと比較して、ケーブルのためのスペースが削減されることや、ノート型パーソナルコンピュータ(ノートPC)等を始めとした携帯端末が、その携帯性を損なうことなくLANに接続できる等の利点がある。また無線LANそのものも高速化され、また安価になってきたため、無線LANに対する実用化が一段と加速している。このような背景から、無線LANの標準化がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineering)で進められている。
【0003】
特に無線LANに代表される無線パケット通信システムにおいて、複数の端末間における無線リソースの競合が問題視されている。この無線リソースの競合を回避するためには、媒体アクセス制御(MAC:Medium Access Control)が必要となる。この無線LANにおけるMACプロトコルとしては、端末がパケットを送信する前に他端末の搬送波を検出する、いわゆるキャリアセンスを実行し、キャリアを捕捉できない場合に自身のパケットを送信するCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式が提案されている。また、このCSMA方式に対して、更にパケットの干渉回避の仕組みを付加したCSMA/CA方式(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式も提案されている。
【0004】
しかしながら、このCSMA/CA方式では、通信干渉が生じた場合に、無線端末から無線基地局に向けてその旨の報告をする必要があるが、かかる報告が完了するまでに長時間を要するという問題点があった。特にこの報告時間の遅れに関する問題は、無線端末が増加するにつれてより顕著になる。このため、従来のCSMA/CA方式では、通信を開始して、通信相手の無線ノードからACK(Acknowledge)信号の返信を受け取った場合には、通信が成功したものとみなし、ACK信号を受け取らなかった場合には、他の無線ノードとの通信衝突が発生したものとみなして、バックオフ時間を設けてパケットデータを再送信することとしている。
【0005】
従来におけるこのCSMA/CA方式におけるパケットの衝突を最小限に抑える技術としては、例えば、特許文献1、2において開示の技術が提案されている。しかしながら、これらの技術は、TVWS(Television White Space)等の通信システムとの間の通信干渉を防止するための技術ではなく、特にTVWSとの干渉時に、チャネルの切り替えを行う上で遅れを低減することを目的としたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−242204号公報
【特許文献2】特開2006−197177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う際において、TVWSを初めとした他の通信システムからの通信干渉が生じた場合に、より短時間で効率的にチャネル切り替えを行うことにより、かかる通信干渉を防止することが可能な無線通信方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線通信方法は、上述した課題を解決するために、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信方法において、上記無線端末間において互いに異なる期間となるように上記無線端末毎に設定された検出報告期間を、上記無線基地局から上記各無線端末に通知する期間通知ステップと、上記各無線端末がそれぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出ステップと、上記各無線端末により、上記干渉検出ステップにおける通信干渉の検出結果を検出報告として、これを上記通知された各検出報告期間において上記無線基地局に通知する検出報告ステップと、上記無線基地局により、上記期間通知ステップで上記各無線端末に通知した各検出報告期間において上記各無線端末からの検出報告を待ち受け、上記検出報告ステップから受信した検出報告に基づいて、上記各無線端末との間で通信すべき共通チャネルを切り替え制御するチャネル制御ステップとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る無線通信システムは、上述した課題を解決するために、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信システムにおいて、上記無線端末間において互いに異なる期間となるように上記無線端末毎に設定された検出報告期間を、上記各無線端末に通知する期間通知手段を備える無線基地局と、それぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出手段と、上記干渉検出手段による通信干渉の検出結果を検出報告として、これを上記通知された各検出報告期間において上記無線基地局に通知する検出報告手段とを備える複数の無線端末とを備え、上記無線基地局は、上記期間通知手段により上記各無線端末に通知した各検出報告期間において上記各無線端末の上記検出報告手段からの検出報告を待ち受け、上記検出報告手段から受信した検出報告に基づいて、上記各無線端末との間で通信すべき共通チャネルを切り替え制御することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無線通信方法は、上述した課題を解決するために、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信方法において、上記各無線端末がそれぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出ステップと、無線通信を開始する一の無線端末から送信要求フレームを上記無線基地局へ送信する送信要求ステップと、上記送信要求ステップにおいて上記一の無線端末から上記送信要求を受信した上記無線基地局から、全ての上記無線端末に対して許可通知フレームを送信する許可通知ステップと、上記一の無線端末が上記許可通知フレームを受信した場合には、実データを含むフレームを上記無線基地局に送信し、他の無線端末が上記許可通知フレームを受信した場合には、上記干渉検出ステップにおける通信干渉の検出結果を検出報告としてフレーム化して上記無線基地局に通知する検出報告ステップと、上記無線基地局が上記一の無線端末から上記実データを含むフレームの受信を通じて通信シーケンスが正常に動作していることを判別した場合には、上記無線基地局は上記一の無線端末が上記干渉検出ステップにおいて通信干渉が無いことを判定して認証通知を当該一の無線端末へ送信し、上記通信シーケンスが正常に動作していないことを判別した場合には、上記一の無線端末が上記干渉検出ステップにおいて通信干渉が有ることを判定する第1の判定ステップと、上記無線基地局が、上記他の無線端末から受信した上記検出報告に基づいて上記他の無線端末の通信干渉の有無を判定する第2の判定ステップと、上記第1の判定ステップ又は上記第2の判定ステップにおいて、通信干渉が有ることを判定した場合には、共通チャネルの切り替えを実行するチャネル制御ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る無線通信システムは、上述した課題を解決するために、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信システムにおいて、他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出手段と、無線通信を開始する場合には、送信要求フレームを上記無線基地局へ送信する送信要求手段とを備える複数の無線端末と、一の上記無線端末から上記送信要求を受信した場合には全ての上記無線端末に対して許可通知フレームを送信する許可通知手段を備える無線基地局とを備え、上記一の無線端末は、上記無線基地局から上記許可通知フレームを受信した場合には、実データを含むフレームを上記無線基地局に送信し、他の無線端末は、上記無線基地局から上記許可通知フレームを受信した場合には、上記干渉検出手段による通信干渉の検出結果を検出報告としてフレーム化して上記無線基地局に通知し、上記無線基地局は、上記一の無線端末から上記実データを含むフレームの受信を通じて通信シーケンスが正常に動作していることを判別した場合には、上記一の無線端末が通信干渉が無いことを判定して認証通知を当該一の無線端末へ送信し、上記通信シーケンスが正常に動作していないことを判別した場合には、上記一の無線端末が通信干渉が有ることを判定する第1の判定手段と、上記他の無線端末から受信した上記検出報告に基づいて上記他の無線端末の通信干渉の有無を判定する第2の判定手段を更に備え、上記第1の判定手段又は上記第2の判定手段において、通信干渉が有ることを判定した場合には、共通チャネルの切り替えを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成からなる本発明によれば、複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う際において、TVWSを初めとした他の通信システムからの通信干渉が生じた場合に、より短時間で効率的にチャネル切り替えを行うことにより、かかる通信干渉を防止することが可能なとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明を適用した無線通信システムの第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図3】(a)は、無線基地局から各無線端末に対してビーコンを送信する例を、(b)は、各無線端末が他の通信システムの電波の検出を行う例を示す図である。
【図4】本発明を適用した無線通信システムの第1の動作例の各状態について説明するための図である。
【図5】本発明を適用した無線通信システムの第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図6】本発明を適用した無線通信システムの第2の動作例の各状態について説明するための図である。
【図7】本発明を適用した無線通信システムの第2の動作例の各状態について説明するための他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態として、例えばCSMA/CA方式に基づいて無線通信を行う無線通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0015】
本発明を適用した無線通信システム1は、例えば図1に示すように、複数の無線端末2と、ネットワーク全体を制御する無線基地局3とを備えている。無線通信システム1は、IEEE802.11諸規格に基づくWLAN(Wireless Local Area Network)として具体化されるものであるが、これに限定されることなく、他のいかなるIEEEの通信規格に基づくものであってもよい。なお、無線通信システム1は、図1に示すようなスター型に限定されるものではなく、ツリー型やメッシュ型等いかなるネットワーク形態を適用してもよい。また、この無線通信システム1では、複数の無線端末2と、無線基地局3との間で、TVWS(Television White Space)において無線通信が行われるものであってもよい。
【0016】
無線端末2は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末等で構成される。この無線端末2は、少なくともWLANにおいて無線基地局3との間で無線パケット通信を行うことができ、更には無線基地局3を介して他の無線端末2との間で無線通信を行うことができる。以下では、無線端末2から無線基地局3へパケットデータを無線により送信する場合を例にとり説明をする。無線端末2は、TVWS等を始めとした他の通信システムとの通信干渉を検出し、その検出結果を無線基地局3へ通知する。
【0017】
無線基地局3も同様に上述した無線端末2と構成を同一とするものであってもよい。この無線基地局3は、コーディネータとしての役割を担う。そして、この無線基地局3は、無線端末2へビーコンを送信し、また無線端末2をそれぞれWLANに接続させるために、これらを互いに同期化させる役割を担う。また、この無線基地局3は、無線端末2との間で行われる通信を制御する、いわゆる中央制御部としての役割を担う。また、この無線基地局3は、各無線端末2からの検出報告を待ち受け、受信した検出報告に基づいて、各無線端末2との間で通信すべき共通チャネルを切り替え制御する。ちなみに、無線基地局3と、各無線端末2との間では、一つの共通チャネルを通じて無線通信を行うことを前提としている。また無線基地局3は、各無線端末2との間における無線通信を行う場合に、必要に応じて他の共通チャネルに切り替えることを実行する。
【0018】
次に本発明を適用した無線通信システム1の第1の動作例について説明をする。
【0019】
先ず図2のタイムチャートは、一の無線基地局3と、複数の無線端末2−1、2−2、2−nとの間で無線通信を行う無線通信システム1のケースである。この無線通信システム1では、当初は、共通チャネルとしてチャネルCH1の下で無線通信を行うことを前提としている。
【0020】
先ず図3(a)に示すように、無線基地局3から全無線端末2−1、2−2、・・・、2−nに対して、一のビーコンを送信する。このビーコンには、無線端末2間において互いに同期化させるための情報が含まれている。また、このビーコンには、検出報告期間(以下、SRPという。)に関する情報も含まれている。このSRPは、各無線端末2−1、2−2、・・・、2−n間において互いに異なる期間となるように無線端末2−1、2−2、・・・、2−n毎に設定されている。図2の例では、SRPは、無線端末2−1に対する待ち受け期間としてのSRP−1、無線端末2−2に対する待ち受け期間としてのSRP−2、無線端末2−nに対する待ち受け期間としてのSRP−nが互いに重ならないようにして順に設定されている。即ち、無線基地局3側において、これらSRPを予め設定しておき、これを一のビーコンに含めて全無線端末2−1、2−2、・・・、2−nへ送信する。各無線端末2−1、2−2、・・・、2−nは、無線基地局3からビーコンを受信することにより、それぞれに対して与えられているSRPを知ることが可能となる。即ち、このビーコンを受信した無線端末2−1は、無線基地局3側の待ち受け期間が、SRP−1であることを、また無線端末2−2は、無線基地局3側の待ち受け期間が、SRP−2であることを、無線端末2−nは、無線基地局3側の待ち受け期間が、SRP−nであることを、知ることが可能となる。ちなみに、この無線基地局3から無線端末2へのビーコンの送信は、定期的に行われる。
【0021】
次に、無線基地局3、並びに各無線端末2−1、2−2、・・・、2−nは、検出期間に移行する。検出期間では、図3(b)に示すように、各無線端末2−1、2−2、・・・、2−nは、それぞれのアンテナ等を介してTVWSを始めとした他の通信システムの電波の検出を行う。そして、この検出期間内において、他の通信システムの電波を検出し、その当該電波が、無線通信システム1の共通チャネルであるチャネルCH1である場合には、通信干渉が生じることになる。これに対して、この検出期間内において、他の通信システムの電波を検出し、その当該電波が、無線通信システム1の共通チャネルであるチャネルCH1以外であった場合、又は他の通信システムから電波が検出されなかった場合には、通信干渉が生じることはない。以下の例では、図3(b)に示すように、通信端末2−2においてTVWSの信号が検出された結果、通信干渉が生じ、無線端末2−1、2−nにおいてTVWSの信号が検出されなかった場合を例にとり説明をする。
【0022】
次に、図4(a)に示すように、各無線端末2−1、2−2、・・・、2−nから検出報告が行われる。この検出報告は、無線基地局3から通知されたそれぞれの待ち受け期間において行う。上述したビーコンを受信した各無線端末2−1、2−2、・・・、2−nは、検出報告を送信すべきSRPが分かっている状態であるため、それぞれ割り当てられたSRPに合わせて検出報告を送信することになる。
【0023】
図2の例では、先ず無線端末2−1が、自らに割り当てられたSRP−1に検出報告を送信する。次に無線端末2−2が、自らに割り当てられたSRP−2に検出報告を送信する。さらに無線端末2−nが、自らに割り当てられたSRP−nに検出報告を送信する。
【0024】
無線端末2−1、無線端末2−nは、他の通信システムとの間で通信干渉が検出されなかった場合であることから、通知された各SRP−1、SRP−nにおいてその旨の検出報告を無線基地局3に通知することになる。また無線端末2−2は、他の通信システムの電波を検出したため、通信干渉が生じている。このため、図4(a)に示すように、他の通信システムの信号検出があった旨を、或いは他の通信システムの信号が検出されたことによる通信干渉が生じている旨を検出報告として無線基地局3へ送信することになる。なお、この無線端末2は、他の通信システムとの間で通信干渉が有るか否かを識別し、その識別した結果を検出報告として無線基地局3へ送信することになる。その結果、無線基地局3は、互いに待ち受け期間SRP−1、SRP−2、SRP−nを互いに重複しないように設定しているため、全ての無線端末2−1、2−2、・・・、2−nからそれぞれの検出報告を受信することが可能となる。そして、無線基地局3は、各検出報告を読み取ることにより、上記無線端末2において通信干渉が生じているか否かを識別することが可能となる。上述した図4(a)の例では、無線端末2−1、2−nからの検出報告から、これらのデバイスにおいて通信干渉が生じていない旨を判定することができ、無線端末2−2からの検出報告から、かかるデバイスにおいて通信干渉が生じている旨を判定することができる。
【0025】
また図4(b)に示すように、無線端末2−2が、他の通信システムの電波を検出したため、通信干渉が生じている場合、検出報告を無線基地局3へ送信することができない場合もあり、また検出報告を送信してもエラーになってしまい、結局のところ無線基地局3がこれを受信することができない場合もある。また、通信干渉が生じていることを無線端末2−2が識別した場合には、あえて検出報告を無線基地局3へ送信しないようにしてもよい。何れのケースにおいても、通信干渉を検出した無線端末2−2から無線基地局3へ検出報告が送られないことに関しては共通する。上述した図4(b)の例では、無線基地局3は、検出報告が通知された無線端末2−1、2−nについて、通信干渉が生じていない旨を判定することができ、検出報告が通知されない無線端末2−2について通信干渉が生じている旨を判定することができる。
【0026】
次に無線基地局3は、上述した判定の結果、少なくとも一の無線端末2において通信干渉が生じている旨を判別した場合には、各無線端末2との間で通信すべき共通チャネルの切り替えを実行する。上述した例において、当初は共通チャネルがチャネルCH1であることから、これを他のチャネルCH2に切り替えることを実行していくことになる。
【0027】
これに対して、上述した判定の結果、全ての無線端末2において通信干渉が生じていない旨を判別した場合には、各無線端末2との間で通信すべき共通チャネルの切り替えを行うことなくそのまま通信を開始する。上述した例において、当初は共通チャネルがチャネルCH1であることから、当該チャネルCH1に基づいて無線通信を開始することになる。
【0028】
なお、チャネルの切り替えを実行する場合には、無線基地局3は、その旨の情報を含めたビーコンを各無線端末2へ送信し、各無線端末2は、かかるビーコンを取得することにより、チャネルの切り替えを実行していくことになる。
【0029】
このように、本発明における第1の動作例によれば、少なくとも一の無線端末2において通信干渉が生じた場合、これを無線基地局3へと通知し、無線基地局3は、無線通信システム1を構成する全ての無線端末2に対してチャネルの切り替えを実行する。その結果、本発明によれば、少なくとも一の無線端末2において通信干渉を検出した場合に、全ての無線端末2のチャネルをより短時間で効率的に切り替えることが可能となり、かかる通信干渉をシステム全体で防止することが可能となる。
【0030】
次に本発明を適用した無線通信システム1の第2の動作例について説明をする。
【0031】
先ず図5のタイムチャートは、一の無線基地局3と、2個の無線端末2−1、2−2との間で無線通信を行う無線通信システム1のケースである。この第2の動作例において、無線端末2は、2個に限定されるものではなく、3個以上であってもよいが、以下では2個の場合の場合を例にとり説明をする。
【0032】
この無線通信システム1では、当初は、共通チャネルとしてチャネルCH1の下で無線通信を行うことを前提としている。
【0033】
先ず図6(a)に示すように、無線基地局3から各無線端末2−1、2−2に対して、ビーコンを送信する。このビーコンには、無線端末2間において互いに同期化させるための情報が含まれている。
【0034】
次に、無線基地局3、並びに各無線端末2−1、2−2は、検出期間に移行する。検出期間では、図6(b)に示すように、各無線端末2−1、2−2は、それぞれのアンテナ等を介してTVWSを始めとした他の通信システムの電波の検出を行う。そして、この検出期間内において、他の通信システムの電波を検出し、その当該電波が、無線通信システム1の共通チャネルであるチャネルCH1である場合には、通信干渉が生じることになる。これに対して、この検出期間内において、他の通信システムの電波を検出し、その当該電波が、無線通信システム1の共通チャネルであるチャネルCH1以外であった場合、又は他の通信システムから電波が検出されなかった場合には、通信干渉が生じることはない。以下の例では、各無線端末2−1、2−2において何ら通信干渉が検出されなかった場合、図6(b)に示すように、通信端末2−1のみにおいてTVWSの信号が検出された結果、通信干渉が生じる場合、図6(b)に示すように、通信端末2−2のみにおいてTVWSの信号が検出された結果、通信干渉が生じる場合、の3ケースについて説明をする。
【0035】
次に、図7(a)に示すように、無線通信を開始する一の無線端末2−1から送信要求フレーム(RTS)を無線基地局3へ送信する。このRTSの送信は、通信の開始を望む一の無線端末2から無線基地局3に対してその旨を通知するために送られるものであるが、かかるRTSが何れかの無線端末2から送信されない場合には、以降の処理フローはスタートしない。これに対して、RTSが何れかの無線端末2から送信された場合に初めてこれ以後の処理フローがスタートすることになる。
【0036】
無線基地局3は、かかるRTSを受信し、無線端末2−1が通信開始を要求していることを識別することができる。また、無線基地局3は、かかるRTSを受信してSIFS(short interframe space)の待ち時間経過後、図5、図7(b)に示すように、全ての無線端末2に対して許可通知フレーム(CTS)を送信する。このCTSを受信した無線端末2−1は、自らの通信開始が許可されたことを知ることができ、またこのCTSを受信した無線端末2−2は、無線基地局3より検出報告の送信要求があったことを知ることができる。
【0037】
ここで、RTSを送信した無線端末2−1は、CTSを受信した場合、SIFS経過後、送信したい実データを含むフレームを無線基地局3へと送信する。無線基地局3は、この無線端末2−1から実データを含むフレームを受信することができる。また無線基地局3は、無線端末2−1において通信干渉が検出されなかった場合には、この無線端末2−1から実データを含むフレームの受信を通じて通信シーケンスが正常に動作することになる。かかる場合には、無線基地局3は、この通信シーケンスの正常な動作を確認することにより、無線端末2−1において通信干渉が検出されていない旨を判定することが可能となる。なお、通信シーケンスが正常に動作した場合には、無線端末2−1側において通信干渉が無いことを判定して、SIFS経過後に認証通知(ACK)を当該無線端末2−1へ送信する。
【0038】
これに対して、無線基地局3は、無線端末2−1において通信干渉が検出された場合には、この無線端末2−1から実データを含むフレームの正常な受信を実現できず、ひいては通信シーケンスが正常に動作しないこととなる。かかる場合には、無線基地局3は、この通信シーケンスの正常に動作していない旨を確認することにより、無線端末2−1において通信干渉が検出されたことを判定することが可能となる。
【0039】
また、RTSを送信していない他の無線端末2−2がCTSを受信した場合、無線基地局3が上述したACKを送信した後、SIFS経過後に、当該無線端末2−2から無線基地局3へ検出報告を送信する。この検出報告は、通信干渉の検出結果をフレーム化したものである。無線基地局3は、かかる無線端末2−2から受信した検出報告に基づいて、無線端末2−2の通信干渉の有無を判定することになる。即ち、この無線端末2−2における検出報告において通信干渉が有る旨が記述されていた場合には、この無線基地局3は、無線端末2−2において通信干渉が有ることを判定する。また、無線端末2−2における検出報告において通信干渉が無い旨が記述されていた場合には、この無線基地局3は、無線端末2−2において通信干渉が無いことを判定する。
【0040】
無線基地局3は、無線端末2−1から通信シーケンスの正常動作状況の確認を通じて通信干渉の有無を判定する第1の判定ステップと、無線端末2−2からの検出報告の内容に基づいて通信干渉の有無を判定する第2の判定ステップとにより、通信干渉を判定していくことになる。
【0041】
そして、第1の判定ステップ又は第2の判定ステップにおいて通信干渉が検出された場合には、少なくとも一の無線端末2において通信干渉が生じているため、無線基地局3は、各無線端末2との間で通信すべき共通チャネルの切り替えを実行する。上述した例において、当初は共通チャネルがチャネルCH1であることから、これを他のチャネルCH2に切り替えることを実行していくことになる。
【0042】
これに対して、第1の判定ステップ又は第2の判定ステップにおいて通信干渉が検出されなかった場合には、全ての無線端末2において通信干渉が生じていないため、各無線端末2との間で通信すべき共通チャネルの切り替えを行うことなくそのまま通信を開始する。上述した例において、当初は共通チャネルがチャネルCH1であることから、当該チャネルCH1に基づいて無線通信を開始することになる。
【0043】
なお、チャネルの切り替えを実行する場合には、無線基地局3は、その旨の情報を含めたビーコンを各無線端末2へ送信し、各無線端末2は、かかるビーコンを取得することにより、チャネルの切り替えを実行していくことになる。
【0044】
このように、第2の動作例においても同様に通信干渉を検出し、無線通信システム1を構成する全ての無線端末2に対してチャネルの切り替えを実行する。その結果、本発明によれば、少なくとも一の無線端末2において通信干渉を検出した場合に、全ての無線端末2のチャネルをより短時間で効率的に切り替えることが可能となり、かかる通信干渉をシステム全体で防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 無線通信システム
2 無線端末
3 無線基地局







【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信方法において、
上記無線端末間において互いに異なる期間となるように上記無線端末毎に設定された検出報告期間を、上記無線基地局から上記各無線端末に通知する期間通知ステップと、
上記各無線端末がそれぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出ステップと、
上記各無線端末により、上記干渉検出ステップにおける通信干渉の検出結果を検出報告として、これを上記通知された各検出報告期間において上記無線基地局に通知する検出報告ステップと、
上記無線基地局により、上記期間通知ステップで上記各無線端末に通知した各検出報告期間において上記各無線端末からの検出報告を待ち受け、上記検出報告ステップから受信した検出報告に基づいて、上記各無線端末との間で通信すべき共通チャネルを切り替え制御するチャネル制御ステップとを有すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
上記検出報告ステップでは、上記各無線端末により、上記干渉検出ステップにおいて通信干渉が検出されない場合には、上記通知された各検出報告期間においてその旨の検出報告を上記無線基地局に通知し、上記干渉検出ステップにおいて通信干渉が検出された場合には、上記通知された各検出報告期間において検出報告を上記無線基地局に通知せず、
上記チャネル制御ステップでは、少なくとも1の検出報告期間において、上記無線端末からの検出報告が無かった場合には、上記各無線端末との間で通信すべき共通チャネルの切り替えを実行すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項3】
複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信システムにおいて、
上記無線端末間において互いに異なる期間となるように上記無線端末毎に設定された検出報告期間を、上記各無線端末に通知する期間通知手段を備える無線基地局と、
それぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出手段と、上記干渉検出手段による通信干渉の検出結果を検出報告として、これを上記通知された各検出報告期間において上記無線基地局に通知する検出報告手段とを備える複数の無線端末とを備え、
上記無線基地局は、上記期間通知手段により上記各無線端末に通知した各検出報告期間において上記各無線端末の上記検出報告手段からの検出報告を待ち受け、上記検出報告手段から受信した検出報告に基づいて、上記各無線端末との間で通信すべき共通チャネルを切り替え制御すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
上記検出報告手段は、上記干渉検出手段により通信干渉が検出されなかった場合には、上記通知された各検出報告期間においてその旨の検出報告を上記無線基地局に通知し、上記干渉検出手段により通信干渉が検出された場合には、上記通知された各検出報告期間において検出報告を上記無線基地局に通知せず、
上記無線基地局は、少なくとも1の検出報告期間において、上記無線端末の上記検出報告手段からの検出報告が無かった場合には、上記各無線端末との間で通信すべき共通チャネルの切り替えを実行すること
を特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信方法において、
上記各無線端末がそれぞれ他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出ステップと、
無線通信を開始する一の無線端末から送信要求フレームを上記無線基地局へ送信する送信要求ステップと、
上記送信要求ステップにおいて上記一の無線端末から上記送信要求を受信した上記無線基地局から、全ての上記無線端末に対して許可通知フレームを送信する許可通知ステップと、
上記一の無線端末が上記許可通知フレームを受信した場合には、実データを含むフレームを上記無線基地局に送信し、他の無線端末が上記許可通知フレームを受信した場合には、上記干渉検出ステップにおける通信干渉の検出結果を検出報告としてフレーム化して上記無線基地局に通知する検出報告ステップと、
上記無線基地局が上記一の無線端末から上記実データを含むフレームの受信を通じて通信シーケンスが正常に動作していることを判別した場合には、上記無線基地局は上記一の無線端末が上記干渉検出ステップにおいて通信干渉が無いことを判定して認証通知を当該一の無線端末へ送信し、上記通信シーケンスが正常に動作していないことを判別した場合には、上記一の無線端末が上記干渉検出ステップにおいて通信干渉が有ることを判定する第1の判定ステップと、
上記無線基地局が、上記他の無線端末から受信した上記検出報告に基づいて上記他の無線端末の通信干渉の有無を判定する第2の判定ステップと、
上記第1の判定ステップ又は上記第2の判定ステップにおいて、通信干渉が有ることを判定した場合には、共通チャネルの切り替えを実行するチャネル制御ステップとを有すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
上記送信要求ステップ、上記許可通知ステップ、上記検出報告ステップ、上記第1の判定ステップ、上記第2の判定ステップは、連続した処理シーケンスに基づいて実行されること
を特徴とする請求項5記載の無線通信方法。
【請求項7】
複数の無線端末と、無線基地局との間で共通チャネルにより無線通信を行う無線通信システムにおいて、
他の通信システムとの通信干渉を検出する干渉検出手段と、無線通信を開始する場合には、送信要求フレームを上記無線基地局へ送信する送信要求手段とを備える複数の無線端末と、
一の上記無線端末から上記送信要求を受信した場合には全ての上記無線端末に対して許可通知フレームを送信する許可通知手段を備える無線基地局とを備え、
上記一の無線端末は、上記無線基地局から上記許可通知フレームを受信した場合には、実データを含むフレームを上記無線基地局に送信し、
他の無線端末は、上記無線基地局から上記許可通知フレームを受信した場合には、上記干渉検出手段による通信干渉の検出結果を検出報告としてフレーム化して上記無線基地局に通知し、
上記無線基地局は、上記一の無線端末から上記実データを含むフレームの受信を通じて通信シーケンスが正常に動作していることを判別した場合には、上記一の無線端末が通信干渉が無いことを判定して認証通知を当該一の無線端末へ送信し、上記通信シーケンスが正常に動作していないことを判別した場合には、上記一の無線端末が通信干渉が有ることを判定する第1の判定手段と、上記他の無線端末から受信した上記検出報告に基づいて上記他の無線端末の通信干渉の有無を判定する第2の判定手段を更に備え、上記第1の判定手段又は上記第2の判定手段において、通信干渉が有ることを判定した場合には、共通チャネルの切り替えを実行すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
上記送信要求ステップ、上記許可通知ステップ、上記検出報告ステップ、上記第1の判定ステップ、上記第2の判定ステップは、連続した処理シーケンスに基づいて実行すること
を特徴とする請求項7記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−244067(P2011−244067A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112074(P2010−112074)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】