説明

無線通信機

【課題】無線通信機の操作パネルに透明タッチパネル付きの液晶表示器を用い、無線通信機における特有の操作を直接的且つ直感的に行えるようにして操作性を向上させる。
【解決手段】運用可能な各バンドで設定されている周波数とその各周波数における受信信号強度情報(バーグラフ表示等)を表示させた基本画面で、周波数表示領域に対する静的押圧があった場合にはその周波数を運用周波数に設定し、左方向/右方向への摺動押圧があった場合にはその周波数以下/以上の所定帯域についての周波数スキャンを実行させる。また、受信信号強度表示領域に対する静的押圧があった場合には対応する受信周波数を中心とした上下の所定帯域に係るバンドスコープ表示を、左方向/右方向への摺動押圧があった場合には受信周波数以下/以上の所定帯域についてのバンドスコープ表示をそれぞれ実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操作部をタッチパネル付き液晶表示器で構成した無線通信機に係り、より具体的には、無線通信機特有の操作入力を直感的に分かり易い接触操作によることとして、操作性の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信機では、図17に示すように、操作パネル面のほぼ中央に設けた液晶表示部の周辺に各種の操作キーやダイヤルを配置させ、それらの操作によって無線通信機の運用条件や動作の設定を行うと共に、液晶表示部でその状態表示を行うようになっており、各操作キーの表面にはそれぞれの機能を示す文字が印刷又は刻印されている。
【0003】
また、図18に示すように、前記と同様に液晶表示部に状態表示を行うが、液晶表示部における各操作キーの近傍領域(表示部の周辺領域)にその機能を示すアイコンや文字(図では黒地白抜き文字)を表示させると共に、特定キーの操作によってアイコンや文字の内容を順次変更させるようにして、各操作キーをソフトウェア的に複数の機能に割り付けることを可能にしたものもある。
この方式によれば、機械的な操作キーの配置数を削減させることができる。
【0004】
一方、最近では、各種電子機器の操作パネルにタッチパネル付き液晶表示器を適用することが多くなり、液晶表示器に操作内容を示すアイコンを表示させると共に、そのアイコンへの直接的なタッチ操作をタッチパネルで検出する方式が採用されている。
また、下記特許文献1においては、タッチパネル付き液晶表示器の任意の領域に対する長押し操作をタッチパネルコントローラが検出した場合には、オーディオ再生モードとナビゲーションモードとの切り換えを行い、選択された各モードにおいてタッチパネルの任意の領域に対する所定のタッチ操作が行われると、そのタッチ操作の仕方に対応した動作制御が行われる車載システムが開示されている。
【0005】
具体的には、ナビゲーションモードを実行中に、タッチパネルへの長押し操作によってオーディオ再生モードへの機能の切り換えが行われ、そのオーディオ再生モードでは、タッチパネルに対する左から右へのなぞり/右から左へのなぞりをそれぞれ早送り/巻き戻しに、早送り/巻き戻し中に任意の場所へのタッチ操作を早送り/巻き戻しの停止に、タッチパネルの右側領域/左側領域へのタッチをそれぞれトラックのUP/DOWNに、タッチパネルに対する下から上へのなぞり/上から下へのなぞりをそれぞれボリュームのUP/DOWNに対応付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−1498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図17の固定式操作キーによる方式では、無線通信機を小型化すると、操作キーの配設領域を確保するために液晶表示部のサイズを小さくせざるを得ない。更に、各操作キーの表面に機能文字を印刷又は刻印する必要があるため、それだけ工数が多くなって製造コストアップの要因になっている。
【0008】
また、図18に示した各操作キーに対するソフトウェア的な機能割付け方式によれば、前記のように操作キーの配置数を削減できるものの、液晶表示部の周辺領域にアイコンや文字を表示させるために運用状態等の表示領域はそれだけ狭くなり、表示領域の観点からはそれほど有利になる訳ではない。
【0009】
一方、アマチュア無線で用いられる無線通信機の場合、運用周波数を確認できることが義務付けられているため、図17や図18に示したように、その周波数を液晶表示部に表示させることが一般的であり、更に最近では運用周波数の信号強度も併せて表示させることも行われている。
【0010】
したがって、運用周波数を常時表示させながら他の機能に係る情報を表示させる必要があるが、前記特許文献1に示されているように、タッチパネル付き液晶表示器を用いると、操作キーの殆どをタッチパネルに対するタッチ操作に置き換えることができるために、より大きなサイズの液晶表示器を利用でき、より明瞭な機能情報表示が可能になる。
【0011】
しかし、無線通信機の場合には、他の電子機器と比較しても、操作内容が多種多様であり、また専門的で複雑であることが多く、その全てを系統的に理解して操作を行うには相当の経験や熟練を要する。
前記特許文献1においては、タッチパネルの任意の領域に対するタッチ操作、又はせいぜい右側領域と左側領域とに分けたタッチ操作によって所定の機能を実行させるようにしているが、タッチ操作によって設定される機能が液晶表示部の表示内容と関連付けられている訳ではなく、予め取扱説明書等によりタッチ操作やタッチ領域と効果の関連付けを記憶しておく必要があることから、無線通信機にはあまり馴染まない方式である。
尚、従来からATM(automated teller machine)等で用いられているように、タッチ操作すべき領域に選択メニューの内容を文字やアイコンで表示させるようにすれば操作ガイダンスは充実するが、そのための表示領域が運用周波数の表示領域を狭くすることになる。
【0012】
そこで、本発明は、無線通信機の操作パネルにタッチパネル付き液晶表示器を利用し、設定されている周波数と受信信号強度の表示画面から関連した各種の機能設定操作を直感的に行い得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、複数の周波数帯域において運用可能であると共に、操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有しており、前記液晶表示器に前記各周波数帯域毎の周波数表示領域を設定して周波数を表示させる無線通信機であって、前記液晶表示器における前記各周波数表示領域に対応する前記透明タッチパネルの表面領域に対する静的押圧を検出する静的押圧検出手段と、前記静的押圧検出手段が静的押圧を検出した場合に、前記透明タッチパネルにおける静的押圧の検出領域に対応する前記液晶表示器の周波数表示領域に表示されている周波数を運用周波数として設定する周波数設定手段とを具備したことを特徴とする無線通信機に係る。
この発明では、液晶表示器における周波数表示領域を指やスタイラスペン等(以下、「指等」という)で静的押圧を行うと透明タッチパネルからその静的押圧に係る領域情報が得られ、それと液晶表示器の周波数の周波数表示領域との対応付けに基づいて静的押圧操作による運用周波数の選択指定と設定が行われる。
この発明によれば、無線通信機における周波数に関連した操作である運用周波数の設定を、運用可能な周波数帯域毎に設けられている周波数表示領域に対する指等での接触操作(静的押圧操作)によって行っており、当然に運用周波数の設定のための機械的な操作キーは不要になり、従来のキー操作と比較して直接的且つ直感的な操作性を実現できる。
【0014】
第1の発明において、前記液晶表示器における前記周波数設定手段が設定した運用周波数に係る周波数表示領域の近傍にアイコンを表示させるアイコン表示手段を設けておけば、複数の周波数の内のいずれの周波数で運用されているかを容易に知ることができる。
また、前記静的押圧検出手段による静的押圧の検出時間が所定時間以上であるか否かを判定する判定手段を設け、前記判定手段により静的押圧の検出時間が所定時間以上であると判定された場合には、前記液晶表示器に対する表示制御手段により、前記周波数設定手段が設定した運用周波数だけを拡大表示させるようにすれば、操作者は運用設定しようとする周波数の表示領域を所定時間以上押すだけで、その周波数を運用周波数として設定すると共に、他の周波数の表示をなくして運用周波数だけを顕著に見易くすることができる。
操作者から見れば、静的押圧時間の加減によって運用周波数を含んだ複数の周波数表示とするか、運用周波数だけの拡大表示とするかを選択できることにもなる。
【0015】
第2の発明は、操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有しており、前記液晶表示器に周波数表示領域を設定して周波数を表示させる無線通信機であって、前記液晶表示器における周波数表示領域に対応する前記透明タッチパネルの表面領域に対する左右方向への摺動押圧とその方向情報を検出する摺動押圧検出手段と、前記摺動押圧検出手段が右方向への摺動押圧を検出した場合には、その摺動押圧がなされた前記透明タッチパネルの表面領域に対応する前記液晶表示器の周波数表示領域に表示されている周波数以上の所定帯域についての周波数スキャンニングを、前記摺動押圧検出手段が左方向への摺動押圧を検出した場合には、その摺動押圧がなされた前記透明タッチパネルの表面領域に対応する前記液晶表示器の周波数表示領域に表示されている周波数以下の所定帯域についての周波数スキャンニングを、それぞれ実行させるスキャンニング手段とを具備したことを特徴とする無線通信機に係る。
この発明は、液晶表示器における周波数表示領域に対する摺動押圧操作を周波数スキャンニング動作の指示操作とし、且つ摺動押圧では静的押圧と異なり方向情報も含むことを利用し、左方向への摺動押圧を低周波帯域側への周波数スキャンニング、右方向への摺動押圧を高周波帯域側への周波数スキャンニングとしている。
この発明によれば、前記第1の発明の場合と同様に、無線通信機において周波数に密接に関連している操作を周波数表示領域に対する直接的な接触操作(摺動押圧操作)によって行い、また、周波数スペクトラム等のように周波数を横軸とするグラフでは一般的に左側が低周波帯域で、右側が高周波帯域になっていることから、表示領域の周波数に対していずれの帯域側についての周波数スキャンニングを実行させるかを感覚的に馴染み易い方向への摺動押圧によって選択でき、その操作と効果の関係も理解し易く、その記憶が容易である。
【0016】
第3の発明は、操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有しており、前記液晶表示器に表示領域を設定して周波数とその周波数に係る受信信号強度情報を表示させる無線通信機であって、前記液晶表示器における受信信号強度情報の表示領域に対応する前記透明タッチパネルの表面領域に対する静的押圧、又は左右方向への摺動押圧とその方向情報を検出する押圧検出手段と、前記押圧検出手段が静的押圧を検出した場合には、その押圧があった前記透明タッチパネルの表面領域に対応した受信信号強度情報に係る周波数を中心とする上下の所定帯域について、前記押圧検出手段が右方向への摺動押圧を検出した場合には、その押圧があった前記透明タッチパネルの表面領域に対応した受信信号強度情報に係る周波数以上の所定帯域について、前記押圧検出手段が左方向への摺動押圧を検出した場合には、その押圧があった前記透明タッチパネルの表面領域に対応した受信信号強度情報に係る周波数以下の所定帯域について、それぞれスペクトラム解析を行い、その解析結果を前記受信信号強度情報に替えて表示させるバンドスコープ手段とを具備したことを特徴とする無線通信機に係る。
この発明では、液晶表示器に周波数だけでなくその周波数に係る受信信号強度情報をも対応表示させるタイプの無線通信機において、受信信号強度情報の表示領域に対する静的押圧又は摺動押圧があった場合には、所謂バンドスコープ機能を実行させる。
この発明によれば、無線通信機において受信信号強度情報に密接に関連しているバンドスコープ機能(スペクトラム解析とその結果の表示)の実行操作を受信信号強度情報の表示領域に対する直接的な接触操作(静的押圧又は摺動押圧操作)によって行う。
そして、静的押圧があった場合と、右方向への摺動押圧があった場合と、左方向への摺動押圧があった場合とで、受信信号強度情報に係る周波数を基準にしてバンドスコープ機能を実行させる範囲を異ならしめているが、それぞれの範囲の設定の仕方は第2の発明の場合と同様に感覚的に馴染み易く、その操作と効果の対応付けも直感的に理解し易く、その記憶が容易である。
尚、この発明において、受信信号強度情報の表示態様は、一般的に行われている水平方向へのバーグラフ表示だけでなく、数値表示でなされている場合も含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有した無線通信機において、透明タッチパネルの機能を有効に利用して、運用周波数の設定やその拡大表示に係る操作、又は周波数スキャンニングやバンドスコープ機能の実行に係る操作のように無線通信機に特有の操作を、周波数や受信信号強度情報の表示領域に対する直接的な接触操作(静的押圧/左右方向への摺動押圧)により、感覚的に馴染み易く、操作と効果の対応付けが直感的に理解し易く、且つ記憶も容易な方式で実行させることを可能にする。
また、それにより、液晶表示器の表示領域を広く使いながら、操作性に優れた無線通信機が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るトランシーバのブロック回路図である。
【図2】トランシーバの特徴的動作を示すフローチャートである。
【図3】トランシーバの特徴的動作を示すフローチャートである。
【図4】トランシーバの基本画面への復帰動作を示すフローチャートである。
【図5】トランシーバの基本画面(メインバンドとサブバンドの周波数及び信号強度)を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図6】周波数表示領域に対する指による静的押圧状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図7】運用周波数とその信号強度だけの拡大表示状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図8】周波数表示領域に対する指による摺動押圧状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図9】周波数スキャンニング状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図10】図7の拡大表示状態で周波数表示領域に対する摺動押圧があった場合における周波数スキャンニング状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図11】信号強度表示領域に対する指による静的押圧状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図12】図11の静的押圧操作に基づいたバンドスコープ表示状態を示す図である。
【図13】運用可能な2つのバンドの双方の信号強度表示領域に対する静的押圧操作がなされた場合におけるバンドスコープ表示状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図14】図7の拡大表示状態で信号強度表示領域に対する静的押圧操作がなされた場合におけるバンドスコープ表示状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図15】信号強度表示領域に対する指による摺動押圧状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図16】図15の摺動押圧操作に基づいたバンドスコープ表示状態を示す図(トランシーバの正面図)である。
【図17】従来技術における無線通信機の操作パネル部分を示す正面写真図である。
【図18】従来技術における無線通信機の操作パネル部分を示す正面写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の無線通信機の実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
先ず、図1は144/430MHz帯FMデュアルバンド・モービルトランシーバのブロック回路図であり、1はアンテナ、2はマイロホン、3はマイク入力信号の増幅回路、4は送信部、5は受信部、6はスピーカ出力信号の増幅回路、7はスピーカ、8はマイクロコンピュータ回路(以下、「マイコン回路」という)、9は操作部、10は操作信号の入力インターフェイス、11は透明タッチパネル付き液晶表示器(11aは液晶表示器、11bは透明タッチパネル)、12は液晶表示器11aのドライバ、13は透明タッチパネル11bの出力信号の入力インターフェイスであり、それらは信号線とデータバスで図示するように接続されている。
そして、システム全体はマイコン回路8がその内蔵ROMに格納させてある制御プログラムに基づいて制御され、また、マイコン回路8は透明タッチパネル11bから得られる信号に基づいて液晶表示器11aに対する各種画面の表示制御を実行する。
【0020】
ここでは、本発明に関連して透明タッチパネル付き液晶表示器11に対する接触操作に基づいてトランシーバが実行する動作を図2から図4のフローチャートに基づいて説明し、各操作段階における操作パネル面の液晶表示器11での表示内容については図5から図16を参照させることとする。
この実施形態のトランシーバでは、図5に示すように、操作パネル面が透明タッチパネル付き液晶表示器11と操作部9とからなるが、操作部9には電源スイッチ21と画面切り換え用のFWD/BCKキー22と2つダイヤルツマミ23,24と2つのボリュームノブ25,26だけが配設されており、従来の無線通信機に見られた他の機能キーについては全て省かれており、FWD/BCKキー22で画面を切り換えながらタッチパネル付き液晶表示器11に対する接触操作を行うことで同等の操作が行えるようになっている。
尚、FWD/BCKキー22については、これもタッチパネル付き液晶表示器11に対する接触操作によってその機能を代替させることも可能であり、その場合には同キー22も省くことができる。
【0021】
図5に示される表示画面はこのトランシーバにおける基本画面に相当し、2つのバンド(144MHz帯及び430MHz帯)について、その時点で受信周波数として調整設定されている各周波数とそれら周波数における受信信号強度を示すバーグラフ(水平方向へのブロック増減式)が表示されている(S1)。
そして、液晶表示器11aでは各受信周波数や各バーグラフが所定の表示領域に表示されるようになっており、図5においては、31と32がそれぞれ430MHz帯と144MHz帯の周波数表示領域に相当し、33と34がそれぞれの帯域の前記周波数表示領域に示されている周波数に係る受信信号強度表示領域に相当している。
【0022】
今、操作者が何れかのバンドの周波数表示領域を指で押した場合、マイコン回路8は透明タッチパネル11bの出力信号からいずれのバンドの周波数表示領域に係る静的押圧であるかを確認し、その押圧側のバンドの周波数情報を送信部4と受信部5へ転送して運用周波数として設定する(S2,S3)。
例えば、図6に示すように、430MHz帯側の周波数表示領域31に対して指40による静的押圧があると、直ちに439.700MHzが運用周波数として設定されて、同周波数での送受信が可能になる。
また、この実施形態では、運用周波数が設定されると、マイコン回路8はLCDドライバ12によりその運用周波数のバンド側における周波数表示領域の近傍に三角形のアイコン41が表示させて(S3及び図6)、現状での運用周波数がいずれのバンド側の周波数であるかを明示させる。
【0023】
更に、指40による周波数表示領域に対する静的押圧時間が一定時間Tsec(例えば3sec)以上になると、非運用側のバンドにおける周波数とバーグラフの表示を消去して、運用側のバンドの周波数とその受信信号強度だけを拡大表示させる(S4,S5)。
具体的には、図6で静的押圧状態がTsec以上継続すれば、液晶表示器11aの画面が図7のように変化し、操作者は大きく表示された運用周波数(31)と受信信号強度情報(33)を確認しながら交信することができる。
【0024】
次に、前記の静的押圧操作とは異なり、操作者が何れかのバンドの周波数表示領域31,32に対して指で摺動押圧を行った場合には、マイコン回路8はその摺動押圧を透明タッチパネル11bの出力信号から検出・確認し、右方向への摺動押圧であった場合には(S6)、その摺動押圧の対象となった周波数表示領域31又は32に表示されている周波数以上の帯域についての周波数スキャンニング動作を実行し(S7)、逆に、左方向への摺動押圧であった場合には(S8)、その摺動押圧の対象となった周波数表示領域31又は32に表示されている周波数以下の帯域についての周波数スキャンニング動作を実行する(S9)。
【0025】
例えば、図8に示すように、144MHz帯側の周波数表示領域32に対して指40による右方向への摺動押圧操作があった場合には、その時点で表示されている周波数である144.640MHz以上の帯域について、図9に示すように順次切り換えてゆく受信周波数範囲の数値を異なる色彩で表示させると共に、変化させてゆく各周波数での受信信号強度をバーグラフ表示領域で示しながら周波数スキャンニングを実行する。
尚、周波数スキャンニングの方法としては、定められた周波数範囲を定められた速度でスキャンニングする方法や、目的の周波数でスキャンニングを停止し、その周波数に所定時間とどまり、所定時間経過したときからスキャンニングを再開させる方法等があるが、いずれの方法であってもよい。
また、この周波数スキャンニングの操作は、図7に示した運用側バンドの周波数と受信信号強度の拡大表示画面において行われてもよく、その場合には、図9に示すような運用側バンドだけが拡大された周波数スキャンニング中の画面を表示させながら実行される。
【0026】
更に、この実施形態のトランシーバでは、前記のように各バンドの周波数表示領域31,32に対する接触操作だけでなく、受信信号強度表示領域33,34に対する静的押圧や左右方向への摺動押圧によってバンドスコープ機能を実行させることができる。
先ず、操作者が各バンドの受信信号強度表示領域33又は34に対して指で静的押圧を行った場合には、マイコン回路8はその静的押圧を透明タッチパネル11bの出力信号から検出・確認し(図3:S10)、その押圧があった受信信号強度表示領域33又は34のバンド側で設定されている受信周波数を中心とする上下の所定帯域についてスペクトラム解析を行い、その結果に基づいて横軸を周波数、縦軸を電力にとったバンドスコープ表示を行う(図3:S11)。
【0027】
例えば、図11に示すように、430MHz帯側の受信信号強度表示領域33に対して指40による静的押圧があると、図12に示すように、その受信信号強度表示に替えてその時点での設定周波数である439.700MHzを中心としたバンドスコープ表示51がなされることになる。
これは、144MHz帯側の受信信号強度表示領域34に対して指による静的押圧があった場合も同様であり、図13に示すように、双方のバンドについてそれぞれバンドスコープ表示51,52を行わせることもできる。
また、このバンドスコープ表示のための操作は、図7に示した運用側バンドの周波数と受信信号強度の拡大表示画面において行われてもよく、その場合には、図14に示すように、運用側バンドだけの拡大表示となり、バンドスコープ表示(51)も拡大・詳細化されて見易いものになる。
【0028】
次に、操作者が各バンドの受信信号強度表示領域33又は34に対して摺動押圧を行った場合には、マイコン回路8は透明タッチパネル11bの出力信号からその摺動押圧と左右いずれの方向への摺動であるかを検出・確認し(図3:S12,S14)、右方向への摺動押圧であった場合には、その押圧があった受信信号強度表示領域33又は34のバンド側で設定されている受信周波数以上の所定帯域についてのスペクトラム解析に基づいたバンドスコープ表示を行い(図3:S13)、逆に、左方向への摺動押圧であった場合には、その押圧があった受信信号強度表示領域33又は34のバンド側で設定されている受信周波数以下の所定帯域についてのスペクトラム解析に基づいたバンドスコープ表示を行う(図3:S15)。
【0029】
例えば、図15は、430MHz帯側の受信信号強度表示領域33を右方向へ、144MHz帯側の受信信号強度表示領域34を左方向へ、それぞれ指40で摺動押圧している状態を示すが、その結果、図16に示すように、430MHz帯側については431.650MHz以上の所定帯域のスペクトラム解析がなされて、同バンド側の受信信号強度表示に替えて431.650MHzを最左端としたバンドスコープ表示53がなされ、また、144MHz帯側については144.640MHz以下の所定帯域のスペクトラム解析がなされて、同バンド側の受信信号強度表示に替えて144.640MHzを最右端としたバンドスコープ表示54がなされる。
【0030】
以上のように、この実施形態のトランシーバにおいては、透明タッチパネル付き液晶表示部11に対する操作によって運用周波数の設定、スキャン動作の開始指示、及びバンドスコープ表示動作の開始指示を行うことができるが、スキャン動作及びバンドスコープ表示の対象範囲となる所定帯域幅に関しては、FWD/BCKキー22で別画面を表示させて設定することができる。
また、図4のステップS21,S22に示すように、図2及び図3で示す各操作によって得られている表示画面[即ち、ステップS3(図6)、ステップS5(図7)、ステップS7,S9(図9,図10)、ステップ11(図12、図13、図14)、及びステップS13,S14(図16)]において、数字やバーグラフやバンドスコープの表示領域以外の部分を押圧すると、それを透明タッチパネル11bの出力信号から検出したマイコン回路8は直ちに元の基本画面(ステップS1;図5)に戻すようになっている(図4:S21,S22)。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を用いる無線通信機に適用することができ、その操作性を向上させる。
【符号の説明】
【0032】
1…アンテナ、2…マイクロホン、3…マイク入力信号の増幅回路、4…送信部、5…受信部、6…スピーカ出力信号の増幅回路、7…スピーカ、8…マイコン回路、9…操作部、10…操作信号の入力インターフェイス、11…透明タッチパネル付き液晶表示器、11a…液晶表示器、11b…透明タッチパネル、12…液晶表示器のドライバ、13…透明タッチパネルの出力信号の入力インターフェイス、21…電源スイッチ、22…FWD/BCKキー、23,24…ダイヤルツマミ、25,26…ボリュームノブ、31…430MHz帯の周波数表示領域、32…144MHz帯の周波数表示領域、33…430MHz帯の設定周波数での受信信号強度表示領域、34…144MHz帯の設定周波数での受信信号強度表示領域、40…指、41…アイコン、51,52,53,54…バンドスコープ表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯域において運用可能であると共に、操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有しており、前記液晶表示器に前記各周波数帯域毎の周波数表示領域を設定して周波数を表示させる無線通信機であって、
前記液晶表示器における前記各周波数表示領域に対応する前記透明タッチパネルの表面領域に対する静的押圧を検出する静的押圧検出手段と、
前記静的押圧検出手段が静的押圧を検出した場合に、前記透明タッチパネルにおける静的押圧の検出領域に対応する前記液晶表示器の周波数表示領域に表示されている周波数を運用周波数として設定する周波数設定手段と
を具備したことを特徴とする無線通信機。
【請求項2】
前記液晶表示器における前記周波数設定手段が設定した運用周波数に係る周波数表示領域の近傍にアイコンを表示させるアイコン表示手段を備えた請求項1に記載の無線通信機。
【請求項3】
前記静的押圧検出手段による静的押圧の検出時間が所定時間以上であるか否かを判定する判定手段を設け、
前記判定手段により静的押圧の検出時間が所定時間以上であると判定された場合には、前記液晶表示器に対する表示制御手段により、前記周波数設定手段が設定した運用周波数だけを拡大表示させるようにした請求項1に記載の無線通信機。
【請求項4】
操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有しており、前記液晶表示器に周波数表示領域を設定して周波数を表示させる無線通信機であって、
前記液晶表示器における周波数表示領域に対応する前記透明タッチパネルの表面領域に対する左右方向への摺動押圧とその方向情報を検出する摺動押圧検出手段と、
前記摺動押圧検出手段が右方向への摺動押圧を検出した場合には、その摺動押圧がなされた前記透明タッチパネルの表面領域に対応する前記液晶表示器の周波数表示領域に表示されている周波数以上の所定帯域についての周波数スキャンニングを、前記摺動押圧検出手段が左方向への摺動押圧を検出した場合には、その摺動押圧がなされた前記透明タッチパネルの表面領域に対応する前記液晶表示器の周波数表示領域に表示されている周波数以下の所定帯域についての周波数スキャンニングを、それぞれ実行させるスキャンニング手段と
を具備したことを特徴とする無線通信機。
【請求項5】
操作パネルに透明タッチパネル付き液晶表示器を有しており、前記液晶表示器に表示領域を設定して周波数とその周波数に係る受信信号強度情報を表示させる無線通信機であって、
前記液晶表示器における受信信号強度情報の表示領域に対応する前記透明タッチパネルの表面領域に対する静的押圧、又は左右方向への摺動押圧とその方向情報を検出する押圧検出手段と、
前記押圧検出手段が静的押圧を検出した場合には、その押圧があった前記透明タッチパネルの表面領域に対応した受信信号強度情報に係る周波数を中心とする上下の所定帯域について、前記押圧検出手段が右方向への摺動押圧を検出した場合には、その押圧があった前記透明タッチパネルの表面領域に対応した受信信号強度情報に係る周波数以上の所定帯域について、前記押圧検出手段が左方向への摺動押圧を検出した場合には、その押圧があった前記透明タッチパネルの表面領域に対応した受信信号強度情報に係る周波数以下の所定帯域について、それぞれスペクトラム解析を行い、その解析結果を前記受信信号強度情報に替えて表示させるバンドスコープ手段と
を具備したことを特徴とする無線通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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