無線通信端末
【課題】 必ずしも無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われる可能性がある無線通信システムにおける、無線通信端末におけるMIMO受信を最適化する。
【解決手段】 複数のアンテナを具備する基地局と通信する無線通信端末であって、アンテナを備え、前記基地局がMIMO伝送を行う際に、前記無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合に、ストリーム数と無線の伝播状況に応じて、MIMOの受信方式を変更する。
【解決手段】 複数のアンテナを具備する基地局と通信する無線通信端末であって、アンテナを備え、前記基地局がMIMO伝送を行う際に、前記無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合に、ストリーム数と無線の伝播状況に応じて、MIMOの受信方式を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)を用いてパケット通信を行う無線通信における、無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において周波数利用効率を向上させる技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)が注目されている。第3.9世代のセルラシステムとして仕様が策定されている3GPP(3rd Generation Partnership Project)のLTE(Long Term Evolution)、3GPP2(3rd Generation Partnership Project)のUMB(Ultra Mobile Broadband)も、MIMOを標準仕様として採用している。MIMOでは、送信機、受信機がそれぞれ複数のアンテナを有しており、受信側で適切に信号処理を行うことにより、複数の独立した空間チャネルを生成し、同一周波数帯域においても、複数の異なったデータのストリームを同時に伝送する事ができる。ここで、ストリームとは、送信機の各送信アンテナから送信される無線信号を指す。
【0003】
下り(Forward Link)のデータ通信を例にとると、図4の基地局100は、アンテナ150-1〜アンテナ150-NからN個のストリームを同時に送信する。これらのストリームは同一の周波数帯域で送信されるので、無線通信端末200に到達するまでに、お互いが干渉しあった信号となってしまう。無線通信端末200は、アンテナ250-1〜アンテナ250-MのM本のアンテナを用いて、この信号を受信し、MIMO受信処理を施す事で、元のN個のストリームを取り出す事ができる。無線通信端末200が行うMIMO受信処理としては、MMSE(Minimum Mean Square Error)やZF(Zero Forcing)などの、干渉しあった信号に対して行列演算を施し、干渉を起こす前の変調シンボルに分解する方式や、MLD(Maximum Likelihood Detection)などの、干渉しあった信号から送信されたビットの対数尤度比を直接計算する方式が有名である。
【0004】
次に、図5を用いて、MIMO伝送を行う際の、基地局と無線通信端末の間における、制御信号、とデータ信号の流れについて述べる。まず基地局100は、無線通信端末200に対して、自身が持つアンテナ数を通知する(図5:301)。次に、基地局100は、パイロットシンボルを送信する(図5:302)。パイロットシンボルを受信した無線通信端末200は、チャネル推定を行い、伝搬行列を生成する。ここで、伝搬行列とはi番目の送信アンテナからj番目の受信アンテナまでの伝搬係数をj行i列成分とした、M行N列の行列の事である。無線通信端末200は、伝搬行列のランク数を計算し、CQI(Channel Quality Indicator)と共にこれを基地局に通知する(図5:303)。この通知に用いるメッセージフォーマットとしては、図6Aの350のフォーマットや、図6Bの360のフォーマットがある。図6Aの350のフォーマットにおいては、フィールド351でCQIを通知し、フィールド352にてランク数を通知する。図6Bの360のフォーマットにおいては、フィールド361,362,363,364に含まれるCQIの中で、非零の値を持つ個数がランク数となる。ランク数の通知を受けた基地局100は、パケット情報を無線通信端末200に通知する(図5:304)。ここで、パケット情報とは、これから送信するデータの送り方を指定するものであり、図6Cの370で示すメッセージフォーマットを用いて通知する。フィールド371がパケットフォーマット(変調方式やパケットサイズを指定)、フィールド372がリソース位置(データパケットを送信するリソースを指定)、フィールド373がストリーム数を指定する。一般にMIMO伝送においては、「ランク数≧ストリーム数」である事が理想であり、基地局100はこれを考慮してストリーム数を決定する。
【0005】
次に基地局100は、自身が指定したパケット情報に従いデータパケットを無線通信端末200に送信する(図5:305)。無線通信端末200は、指定されたパケット情報に従いデータパケットを受信し復号を行う。その後、必要に応じて基地局100はデータパケットの再送を行う(図5:306)。次にまた新たなパケットを送信する必要があるならば、基地局100は、先ほどのデータパケット送信と全く同様に、パケット情報を無線通信端末200に通知する(図5:307)。以降も同様に、データパケットを無線通信端末200に送信し(図5:308)、必要に応じて再送を行う(図5:309)。
【0006】
以上説明した様に、MIMO伝送においては、基地局100は無線通信端末200からのランク数のフィードバックに基づき適切なストリーム数を決定し、そのストリーム数を無線通信端末200に通知したうえでデータ通信を行う。この結果、無線通信端末200の状況に適したMIMO伝送を行う事ができ、単一アンテナでの送受信であるSISO(Single Input Single Output)に比べ、周波数利用効率が改善する。すなわち、SISOと同量の周波数帯域を用いて、より高速なデータ通信が可能となる。
【0007】
【非特許文献1】3GPP2 C.S0084-001-0 V2.0(August/2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、MIMO伝送においては、MIMO信号の受信側が持つ受信アンテナ数や伝播行列を基に受信可能なストリーム数を計算し、それを送信側に通知する事で送信側がストリーム数を調整して送信する。この結果、最適なMIMO伝送が可能になる。しかし、必ずしも受信側からのランク数のフィードバックを受ける事ができず、受信側にとって最適なストリーム数とは異なるストリーム数でMIMO伝送を行わなければならない事態も生じると考えられる。この様な事態の一例としては一斉同報伝送であるMBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service)やBCMCS(Broadcast Multicast Service)が考えられる。図7に示すように、基地局100からのBCMCSトラフィックを受信する無線通信端末は、それぞれ様々なMIMOの受信状況を持つ。無線通信端末200-Aは受信アンテナを1本しか持たない。無線通信端末200-Bは受信アンテナを2本持つがランク数は1である。無線通信端末200-Cは受信アンテナを2本持ち、ランク数は2である。従って、基地局100が選択するMIMO伝送のストリーム数はいずれかの無線通信端末にとっては不都合な数値になる。例えば、基地局100がストリーム数2で送信してきた時、これは無線通信端末200-Cにとっては適しているが、無線通信端末200-A,200-Bには不適である。これを解決するには、無線通信端末MIMO受信処理として常にMLDを用いる事が考えられるが、MLDは負荷が高く、無線通信端末の性能を考慮するとこれは必ずしも望ましい解ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基地局から通知されたストリーム数と無線通信端末が計算した伝播行列に応じて、無線通信端末はMIMO受信処理の処理方式を適宜変更する。
【発明の効果】
【0010】
ストリーム数が、無線通信端末の持つアンテナ数或いは伝搬行列のランク数より大きい場合でも、複数ストリームをベストエフォートで受信可能になる。また、ストリーム数が、無線通信端末の持つアンテナ数或いは伝搬行列のランク数以下の場合は、MMSEやZFによる通常のMIMO受信が可能である。常にMLDを利用する事による負荷の増大も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施例はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)を前提として説明を行うが、本発明はOFDMに限定される事なく、MIMO受信を行う無線通信端末に適用可能である。
【実施例1】
【0012】
図3はMIMO伝送を行う基地局100の構成を示したブロック図であり、本基地局100の構成は従来の基地局の構成と同等である。基地局100は、制御信号処理部101とデータ信号処理部102を具備する。制御信号処理部101は、無線通信における制御信号を生成し、また無線通信端末200からの制御信号を受信し、それを解析し、それを無線通信の制御に反映させる。一方、データ信号処理部は、MAC(Media Access Control)レイヤなど上位レイヤから受信したデータを元に無線通信端末200に送信するデータを生成したり、無線通信端末200から受信したデータを上位レイヤに渡す事を担う。
【0013】
まず、基地局100の信号送信について説明する。制御信号処理部101、或いはデータ信号処理部102が生成した信号(この時点ではビット列)は、符号器110によって符号化される。ここで、符号化とは、データの誤り検出に用いるCRC(Cyclic Redundancy Code)符号化や、誤り訂正に用いる畳み込み符号化、ターボ符号化などの事を示す。次に、基地局100は、変調部111による変調を施し変調シンボルを生成する。次に、基地局100は、サブキャリアマッピング部112により、変調シンボルを適切なOFDMリソースにマッピングする。ここで、OFDMリソースへのマッピングとは、変調部111が出力した変調シンボルを適切なOFDMシンボルの適切なサブキャリアに割り当てる事である。尚、このマッピングのルールは、図5のパケット情報通知(304)により、基地局100と無線通信端末200の間で共有している。サブキャリアマッピング部112はN(ストリーム数)個のストリームを出力し、これらのストリームはOFDM変調部115-1〜115-Nによって、OFDM変調が施される。尚、ここでいうOFDM変調とは、入力信号に対してIFFT(Inversed Fast Fourie Transfer)処理を施し、CP(Cyclic Prefix)を付加し、ベースバンドのOFDM信号を生成する事である。この後、基地局100は、無線送受信回路140により、ベースバンドのOFDM信号に対して、デジタル-アナログ変換、搬送波の乗算、増幅処理を施して、RF(Radio Frequency)信号を生成する。生成されたRF信号は、最終的にアンテナ150-1〜アンテナ150-Nから送信される。
【0014】
次に、基地局100の受信処理について説明する。基地局100は無線通信端末200からの信号をアンテナ150-1〜アンテナ150-Nにて受信すると、無線送受信回路140により、このRF信号をベースバンド信号に変換する。次に、OFDM復調部125により受信した信号を各サブキャリアのシンボルに分離する。次に、逆サブキャリアマッピング部122により、OFDMリソース上の各変調シンボルは本来の順序に並び変えられる。また、チャネル推定部130は、OFDM復調部125の出力を基にチャネル推定を行い、伝搬係数を導出する。次に復調部121は、チャネル推定部130が出力した伝搬係数を用いて、変調シンボルの復調を行い送信されたビットの対数尤度比を計算する。この対数尤度比に対して、復号器120は復号処理を行う。具体的には、誤り訂正処理を施し、かつCRC検査を行い、受信の成否を決定する。受信に成功したならば、制御信号は制御信号処理部101に渡し、データ信号はデータ信号処理部102に渡す。また、CQI計算部131は、チャネル推定部130が出力した伝搬係数からCQIを計算し、計算結果を制御信号処理部101に渡す。制御信号処理部101は、このCQIを今後の無線伝送の制御に用いる。
【0015】
次に、図2を用いて無線通信端末200の信号送信処理を説明する。本実施例では無線通信端末200のアンテナ数は1本であるとする(すなわちM=1)。制御信号処理部201、或いはデータ信号処理部202が生成した信号(この時点ではビット列)は、符号器210によって符号化される。ここで、符号化とは、データの誤り検出に用いるCRC(Cyclic Redundancy Code)符号化や、誤り訂正に用いる畳み込み符号化、ターボ符号化などの事を示す。次に、無線通信端末200は、変調部211による変調を施し変調シンボルを生成する。次に、無線通信端末200は、サブキャリアマッピング部212により、変調シンボルを適切なOFDMリソースにマッピングする。ここで、OFDMリソースへのマッピングとは、変調部211が出力した変調シンボルを適切なOFDMシンボルの適切なサブキャリアに割り当てる事である。尚、このマッピングのルールは、図5のパケット情報通知(304)により、基地局100と無線通信端末200の間で共有している。サブキャリアマッピング部212の出力はOFDM変調部215によって、OFDM変調が施される。尚、ここでいうOFDM変調とは、入力信号に対してIFFT(Inversed Fast Fourie Transfer)処理を施し、CP(Cyclic Prefix)を付加し、ベースバンドのOFDM信号を生成する事である。この後、無線通信端末200は、無線送受信回路240により、ベースバンドのOFDM信号に対して、デジタル-アナログ変換、搬送波の乗算、増幅処理を施して、RF(Radio Frequency)信号を生成する。生成されたRF信号は、最終的にアンテナ250-1から送信される。
【0016】
次に、前記の通り基地局100から送信されたN個のストリームに対する、無線通信端末200の受信処理について図2を用いて説明する。本実施例では、基地局100から送信されたストリーム数は2個であるとする(すなわちN=2)。N=2,M=1の時、データパケットの送信に先立って、無線通信端末200は基地局100が送信したパイロットシンボルを受信し(図8:401)、ランク数(M=1なので、自動的にランク数は1になる)は1である旨を基地局100に通知している(図8:402)。この後、無線通信端末200は、基地局100からパケット情報を受信し(図8:403)、ストリーム数である2を取得している(図8:404)。その後のデータパケット受信処理(図8:405)を以下に述べる。
【0017】
無線通信端末200は基地局100からの信号をアンテナ250-1にて受信すると、無線送受信回路240により、このRF信号をベースバンド信号に変換する。次に、OFDM復調部225により受信した信号を各サブキャリアのシンボルに分離する。また、チャネル推定部230は、OFDM復調部225の出力を基にチャネル推定を行い、伝搬係数を導出する。さらにチャネル推定部230を基にCQI,ランク計算部231はCQI,ランクの計算を行い、結果を受信信号処理部201とMIMO受信方式決定部232に通知する。
【0018】
本実施例では、ランク数(=1)<ストリーム数(=2)であるので、図8のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232はベストエフォートのMIMO受信を行う事を決定する(図8:408)。本実施例では、MLDを用いてこれを実現するものとする。従って、MIMO受信方式決定部232はMIMO受信処理部224にMLDの利用を通知する。この結果、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1の出力結果に対して、チャネル推定部230の出力結果を利用してMLD処理を行い、ビット単位での対数尤度比を出力する。次に、逆サブキャリアマッピング部222により、OFDMリソース上の各対数尤度比は本来の順序に並び変えられる。本実施例では既にビット単位での対数尤度比が得られているので復調部221は、特に処理は行わず、入力をそのまま出力し復号器220に渡す。この対数尤度比に対して、復号器220は復号処理を行う(図8:409)。具体的には、誤り訂正処理を施し、かつCRC検査を行い、受信の成否を決定する。受信に成功したならば、制御信号は制御信号処理部201に渡し、データ信号はデータ信号処理部202に渡す。
【0019】
以上の通り、アンテナ1本の無線通信端末200は、MLDを用いて2本のストリームをベストエフォートで受信する事が可能である。
【実施例2】
【0020】
本実施例では、基地局100が送信するストリーム数と無線通信端末200のアンテナ数は実施例1と同一とし(すなわち、N=2,M=1)、ベストエフォートのMIMO受信として所望ストリーム以外のストリームを雑音とみなして処理するものとする(図8:408)。
【0021】
本実施例の実施例1との差分は、MIMO受信方式決定部232が上記のMIMO受信方式を利用する旨を、MIMO受信処理部224に通知する事、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1の出力を素通しする事、復調部221がチャネル推定部230の結果を利用して復調処理を行う事である。
【0022】
本実施例によると、例えば複数のストリームで、それぞれ別個のコンテンツの送信を行っている時に、この中から特定の1つのストリームのみ受信できればいいという無線通信端末は、そのストリームだけ受信する事が可能となる。ただし、MLDを用いる実施例1に比べパケット誤り率は劣化する。
【実施例3】
【0023】
本実施例では、実施例1の無線通信端末200の信号受信において、基地局100が送信するストリーム数が1個の時の動作を説明する(すなわち、N=M=1)。この時、ランク数(=1)≧ストリーム数(=1)であるので、図8のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232は通常のSISO受信を行う事を決定する(図8:407)。
【0024】
本実施例の実施例1との差分は、MIMO受信方式決定部232がSISO受信を行う旨を、MIMO受信処理部224に通知する事、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1の出力を素通しする事、復調部221がチャネル推定部230の結果を利用して復調処理を行う事である。
【0025】
本実施例によると、本発明の無線通信端末はSISO伝送が行われる時には通常のSISO受信処理によりパケット受信が行える。
【実施例4】
【0026】
本実施例では、無線通信端末200のアンテナ数が2本である時(すなわちM=2)の基地局100と無線通信端末200の動作を説明する。基地局100の動作に関しては、実施例1の時と同等である。
【0027】
無線通信端末200の信号送信処理を、図2を用いて説明する。制御信号処理部201、或いはデータ信号処理部202が生成した信号(この時点ではビット列)は、符号器210によって符号化される。ここで、符号化とは、データの誤り検出に用いるCRC(Cyclic Redundancy Code)符号化や、誤り訂正に用いる畳み込み符号化、ターボ符号化などの事を示す。次に、無線通信端末200は、変調部211による変調を施し変調シンボルを生成する。次に、無線通信端末200は、サブキャリアマッピング部212により、変調シンボルを適切なOFDMリソースにマッピングする。ここで、OFDMリソースへのマッピングとは、変調部211が出力した変調シンボルを適切なOFDMシンボルの適切なサブキャリアに割り当てる事である。尚、このマッピングのルールは、図5のパケット情報通知(304)により、基地局100と無線通信端末200の間で共有している。サブキャリアマッピング部212の出力はOFDM変調部215によって、OFDM変調が施される。尚、ここでいうOFDM変調とは、入力信号に対してIFFT(Inversed Fast Fourie Transfer)処理を施し、CP(Cyclic Prefix)を付加し、ベースバンドのOFDM信号を生成する事である。この後、無線通信端末200は、無線送受信回路240により、ベースバンドのOFDM信号に対して、デジタル-アナログ変換、搬送波の乗算、増幅処理を施して、RF(Radio Frequency)信号を生成する。生成されたRF信号は、最終的にアンテナ250-1〜アンテナ250-Nのいずれかから送信される。
【0028】
次に、前記の通り基地局100から送信されたN個のストリームに対する、無線通信端末200の受信処理について説明する。本実施例では、基地局100から送信されたストリーム数は4個であるとする(すなわちN=4)。N=4,M=2の時、データパケットの送信に先立って、無線通信端末200は基地局100が送信したパイロットシンボルを受信し(図9:401)、チャネル推定部230は伝播行列を計算する。これを基に、CQI,ランク計算部231はチャネルのランク数を計算し(図9:410)、ランク数(ランク数は2になったとする。)を基地局100に通知している(図9:411)。
【0029】
この後、無線通信端末200は、基地局100からパケット情報を受信し(図9:403)、ストリーム数である4を取得している(図9:404)。その後のデータパケット受信処理(図9:405)を以下に述べる。
【0030】
無線通信端末200は基地局100からの信号をアンテナ250-1〜アンテナ250-Mにて受信すると、無線送受信回路240により、このRF信号をベースバンド信号に変換する。次に、OFDM復調部225-1〜225-Mにより受信した信号を各サブキャリアのシンボルに分離する。また、チャネル推定部230は、OFDM復調部225の出力を基にチャネル推定を行い、伝搬係数を導出する。さらにチャネル推定部230を基にCQI,ランク計算部231はCQI,ランクの計算を行い、結果を受信信号処理部201とMIMO受信方式決定部232に通知する。
【0031】
本実施例では、ランク数(=2)<ストリーム数(=4)であるので、図9のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232はベストエフォートのMIMO受信を行う事を決定する(図9:413)。本実施例では、MLDを用いてこれを実現するものとする。従って、MIMO受信方式決定部232はMIMO受信処理部224にMLDの利用を通知する。この結果、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1〜225-Mの出力結果に対して、チャネル推定部230の出力結果を利用してMLD処理を行い、ビット単位での対数尤度比を出力する。次に、逆サブキャリアマッピング部222により、OFDMリソース上の各対数尤度比は本来の順序に並び変えられる。本実施例では既にビット単位での対数尤度比が得られているので復調部221は、特に処理は行わず、入力をそのまま出力し復号器220に渡す。この対数尤度比に対して、復号器220は復号処理を行う(図9:409)。具体的には、誤り訂正処理を施し、かつCRC検査を行い、受信の成否を決定する。受信に成功したならば、制御信号は制御信号処理部201に渡し、データ信号はデータ信号処理部202に渡す。
【0032】
以上の通り、アンテナ2本の無線通信端末200は、MLDを用いて4本のストリームをベストエフォートで受信する事が可能である。
【実施例5】
【0033】
本実施例では、基地局100が送信するストリーム数と無線通信端末200のアンテナ数は実施例4と同一とし(すなわち、N=4,M=2)、伝播行列のランクも2であるとする。ベストエフォートのMIMO受信として所望ストリーム以外のストリームを雑音とみなして処理するものとする(図9:413)。
【0034】
本実施例の実施例4との差分は、MIMO受信方式決定部232が上記のMIMO受信方式を利用する旨を、MIMO受信処理部224に通知する事が一つである。さらに、MIMO受信処理部224は、本来の2行4列の伝播行列から、所望するストリームに対する成分を取り出し、2行2列の伝播行列を生成し、これを基に、MMSE、MLDによる信号分離を行う。さらに、復調部221は逆サブキャリアマッピング部222の出力に対して復調処理を行う。
【0035】
本実施例によると、例えば複数のストリームで、それぞれ別個のコンテンツの送信を行っている時に、この中から特定の複数のストリームのみ受信できればいいという無線通信端末は、そのストリームだけ受信する事が可能となる。ただし、MLDを用いる実施例4に比べパケット誤り率は劣化する。
【実施例6】
【0036】
本実施例では、実施例4の無線通信端末200の信号受信において、基地局100が送信するストリーム数が2個であり(すなわち、N=M=2)、ランク数も2である時の動作を説明する。この時、ランク数(=2)≧ストリーム数(=2)であるので、図9のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232はMMSEによる通常のMIMO受信を行う事を決定する(図9:412)。
【0037】
本実施例の実施例4との差分は、MIMO受信方式決定部232がMIMO受信を行う旨を、MIMO受信処理部224に通知する事、MIMO受信処理部224は、チャネル推定部230の出力を利用して、OFDM復調部225-1〜225-Mの出力に対して、MMSE処理を行う事、復調部221が復調処理を行う事である。
【0038】
本実施例によると、本発明の無線通信端末は通常のMIMO伝送が行われる時には通常のMIMO受信処理によりパケット受信が行える。
【産業上の利用可能性】
【0039】
無線通信端末が所望するストリーム数とは異なるストリーム数で基地局がMIMO伝送を行うような環境で有用である。このような環境は一斉同報通信のような環境が一例として考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】無線通信端末受信部のブロック図。
【図2】無線通信端末送信部のブロック図。
【図3】基地局のブロック図。
【図4】MIMO伝送の模式図。
【図5】MIMO伝送によるデータ通信のシーケンス図。
【図6A】無線通信端末が基地局にCQIとランクを通知するのに用いるメッセージのフォーマットの一つ。
【図6B】無線通信端末が基地局にCQIとランクを通知するのに用いるメッセージのフォーマットの一つ。
【図6C】基地局が無線通信端末にストリーム数を通知するのに用いるメッセージのフォーマットの一つ。
【図7】様々な無線通信端末が混在する事を示した模式図。
【図8】アンテナ数が1の無線通信端末のパケット受信のフロー図。
【図9】アンテナ数が複数の無線通信端末のパケット受信のフロー図。
【符号の説明】
【0041】
100…基地局
150-1〜150-N…基地局のアンテナ
200…無線通信端末
224…MIMO受信処理部
232…MIMO受信方式決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)を用いてパケット通信を行う無線通信における、無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において周波数利用効率を向上させる技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)が注目されている。第3.9世代のセルラシステムとして仕様が策定されている3GPP(3rd Generation Partnership Project)のLTE(Long Term Evolution)、3GPP2(3rd Generation Partnership Project)のUMB(Ultra Mobile Broadband)も、MIMOを標準仕様として採用している。MIMOでは、送信機、受信機がそれぞれ複数のアンテナを有しており、受信側で適切に信号処理を行うことにより、複数の独立した空間チャネルを生成し、同一周波数帯域においても、複数の異なったデータのストリームを同時に伝送する事ができる。ここで、ストリームとは、送信機の各送信アンテナから送信される無線信号を指す。
【0003】
下り(Forward Link)のデータ通信を例にとると、図4の基地局100は、アンテナ150-1〜アンテナ150-NからN個のストリームを同時に送信する。これらのストリームは同一の周波数帯域で送信されるので、無線通信端末200に到達するまでに、お互いが干渉しあった信号となってしまう。無線通信端末200は、アンテナ250-1〜アンテナ250-MのM本のアンテナを用いて、この信号を受信し、MIMO受信処理を施す事で、元のN個のストリームを取り出す事ができる。無線通信端末200が行うMIMO受信処理としては、MMSE(Minimum Mean Square Error)やZF(Zero Forcing)などの、干渉しあった信号に対して行列演算を施し、干渉を起こす前の変調シンボルに分解する方式や、MLD(Maximum Likelihood Detection)などの、干渉しあった信号から送信されたビットの対数尤度比を直接計算する方式が有名である。
【0004】
次に、図5を用いて、MIMO伝送を行う際の、基地局と無線通信端末の間における、制御信号、とデータ信号の流れについて述べる。まず基地局100は、無線通信端末200に対して、自身が持つアンテナ数を通知する(図5:301)。次に、基地局100は、パイロットシンボルを送信する(図5:302)。パイロットシンボルを受信した無線通信端末200は、チャネル推定を行い、伝搬行列を生成する。ここで、伝搬行列とはi番目の送信アンテナからj番目の受信アンテナまでの伝搬係数をj行i列成分とした、M行N列の行列の事である。無線通信端末200は、伝搬行列のランク数を計算し、CQI(Channel Quality Indicator)と共にこれを基地局に通知する(図5:303)。この通知に用いるメッセージフォーマットとしては、図6Aの350のフォーマットや、図6Bの360のフォーマットがある。図6Aの350のフォーマットにおいては、フィールド351でCQIを通知し、フィールド352にてランク数を通知する。図6Bの360のフォーマットにおいては、フィールド361,362,363,364に含まれるCQIの中で、非零の値を持つ個数がランク数となる。ランク数の通知を受けた基地局100は、パケット情報を無線通信端末200に通知する(図5:304)。ここで、パケット情報とは、これから送信するデータの送り方を指定するものであり、図6Cの370で示すメッセージフォーマットを用いて通知する。フィールド371がパケットフォーマット(変調方式やパケットサイズを指定)、フィールド372がリソース位置(データパケットを送信するリソースを指定)、フィールド373がストリーム数を指定する。一般にMIMO伝送においては、「ランク数≧ストリーム数」である事が理想であり、基地局100はこれを考慮してストリーム数を決定する。
【0005】
次に基地局100は、自身が指定したパケット情報に従いデータパケットを無線通信端末200に送信する(図5:305)。無線通信端末200は、指定されたパケット情報に従いデータパケットを受信し復号を行う。その後、必要に応じて基地局100はデータパケットの再送を行う(図5:306)。次にまた新たなパケットを送信する必要があるならば、基地局100は、先ほどのデータパケット送信と全く同様に、パケット情報を無線通信端末200に通知する(図5:307)。以降も同様に、データパケットを無線通信端末200に送信し(図5:308)、必要に応じて再送を行う(図5:309)。
【0006】
以上説明した様に、MIMO伝送においては、基地局100は無線通信端末200からのランク数のフィードバックに基づき適切なストリーム数を決定し、そのストリーム数を無線通信端末200に通知したうえでデータ通信を行う。この結果、無線通信端末200の状況に適したMIMO伝送を行う事ができ、単一アンテナでの送受信であるSISO(Single Input Single Output)に比べ、周波数利用効率が改善する。すなわち、SISOと同量の周波数帯域を用いて、より高速なデータ通信が可能となる。
【0007】
【非特許文献1】3GPP2 C.S0084-001-0 V2.0(August/2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、MIMO伝送においては、MIMO信号の受信側が持つ受信アンテナ数や伝播行列を基に受信可能なストリーム数を計算し、それを送信側に通知する事で送信側がストリーム数を調整して送信する。この結果、最適なMIMO伝送が可能になる。しかし、必ずしも受信側からのランク数のフィードバックを受ける事ができず、受信側にとって最適なストリーム数とは異なるストリーム数でMIMO伝送を行わなければならない事態も生じると考えられる。この様な事態の一例としては一斉同報伝送であるMBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service)やBCMCS(Broadcast Multicast Service)が考えられる。図7に示すように、基地局100からのBCMCSトラフィックを受信する無線通信端末は、それぞれ様々なMIMOの受信状況を持つ。無線通信端末200-Aは受信アンテナを1本しか持たない。無線通信端末200-Bは受信アンテナを2本持つがランク数は1である。無線通信端末200-Cは受信アンテナを2本持ち、ランク数は2である。従って、基地局100が選択するMIMO伝送のストリーム数はいずれかの無線通信端末にとっては不都合な数値になる。例えば、基地局100がストリーム数2で送信してきた時、これは無線通信端末200-Cにとっては適しているが、無線通信端末200-A,200-Bには不適である。これを解決するには、無線通信端末MIMO受信処理として常にMLDを用いる事が考えられるが、MLDは負荷が高く、無線通信端末の性能を考慮するとこれは必ずしも望ましい解ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基地局から通知されたストリーム数と無線通信端末が計算した伝播行列に応じて、無線通信端末はMIMO受信処理の処理方式を適宜変更する。
【発明の効果】
【0010】
ストリーム数が、無線通信端末の持つアンテナ数或いは伝搬行列のランク数より大きい場合でも、複数ストリームをベストエフォートで受信可能になる。また、ストリーム数が、無線通信端末の持つアンテナ数或いは伝搬行列のランク数以下の場合は、MMSEやZFによる通常のMIMO受信が可能である。常にMLDを利用する事による負荷の増大も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施例はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)を前提として説明を行うが、本発明はOFDMに限定される事なく、MIMO受信を行う無線通信端末に適用可能である。
【実施例1】
【0012】
図3はMIMO伝送を行う基地局100の構成を示したブロック図であり、本基地局100の構成は従来の基地局の構成と同等である。基地局100は、制御信号処理部101とデータ信号処理部102を具備する。制御信号処理部101は、無線通信における制御信号を生成し、また無線通信端末200からの制御信号を受信し、それを解析し、それを無線通信の制御に反映させる。一方、データ信号処理部は、MAC(Media Access Control)レイヤなど上位レイヤから受信したデータを元に無線通信端末200に送信するデータを生成したり、無線通信端末200から受信したデータを上位レイヤに渡す事を担う。
【0013】
まず、基地局100の信号送信について説明する。制御信号処理部101、或いはデータ信号処理部102が生成した信号(この時点ではビット列)は、符号器110によって符号化される。ここで、符号化とは、データの誤り検出に用いるCRC(Cyclic Redundancy Code)符号化や、誤り訂正に用いる畳み込み符号化、ターボ符号化などの事を示す。次に、基地局100は、変調部111による変調を施し変調シンボルを生成する。次に、基地局100は、サブキャリアマッピング部112により、変調シンボルを適切なOFDMリソースにマッピングする。ここで、OFDMリソースへのマッピングとは、変調部111が出力した変調シンボルを適切なOFDMシンボルの適切なサブキャリアに割り当てる事である。尚、このマッピングのルールは、図5のパケット情報通知(304)により、基地局100と無線通信端末200の間で共有している。サブキャリアマッピング部112はN(ストリーム数)個のストリームを出力し、これらのストリームはOFDM変調部115-1〜115-Nによって、OFDM変調が施される。尚、ここでいうOFDM変調とは、入力信号に対してIFFT(Inversed Fast Fourie Transfer)処理を施し、CP(Cyclic Prefix)を付加し、ベースバンドのOFDM信号を生成する事である。この後、基地局100は、無線送受信回路140により、ベースバンドのOFDM信号に対して、デジタル-アナログ変換、搬送波の乗算、増幅処理を施して、RF(Radio Frequency)信号を生成する。生成されたRF信号は、最終的にアンテナ150-1〜アンテナ150-Nから送信される。
【0014】
次に、基地局100の受信処理について説明する。基地局100は無線通信端末200からの信号をアンテナ150-1〜アンテナ150-Nにて受信すると、無線送受信回路140により、このRF信号をベースバンド信号に変換する。次に、OFDM復調部125により受信した信号を各サブキャリアのシンボルに分離する。次に、逆サブキャリアマッピング部122により、OFDMリソース上の各変調シンボルは本来の順序に並び変えられる。また、チャネル推定部130は、OFDM復調部125の出力を基にチャネル推定を行い、伝搬係数を導出する。次に復調部121は、チャネル推定部130が出力した伝搬係数を用いて、変調シンボルの復調を行い送信されたビットの対数尤度比を計算する。この対数尤度比に対して、復号器120は復号処理を行う。具体的には、誤り訂正処理を施し、かつCRC検査を行い、受信の成否を決定する。受信に成功したならば、制御信号は制御信号処理部101に渡し、データ信号はデータ信号処理部102に渡す。また、CQI計算部131は、チャネル推定部130が出力した伝搬係数からCQIを計算し、計算結果を制御信号処理部101に渡す。制御信号処理部101は、このCQIを今後の無線伝送の制御に用いる。
【0015】
次に、図2を用いて無線通信端末200の信号送信処理を説明する。本実施例では無線通信端末200のアンテナ数は1本であるとする(すなわちM=1)。制御信号処理部201、或いはデータ信号処理部202が生成した信号(この時点ではビット列)は、符号器210によって符号化される。ここで、符号化とは、データの誤り検出に用いるCRC(Cyclic Redundancy Code)符号化や、誤り訂正に用いる畳み込み符号化、ターボ符号化などの事を示す。次に、無線通信端末200は、変調部211による変調を施し変調シンボルを生成する。次に、無線通信端末200は、サブキャリアマッピング部212により、変調シンボルを適切なOFDMリソースにマッピングする。ここで、OFDMリソースへのマッピングとは、変調部211が出力した変調シンボルを適切なOFDMシンボルの適切なサブキャリアに割り当てる事である。尚、このマッピングのルールは、図5のパケット情報通知(304)により、基地局100と無線通信端末200の間で共有している。サブキャリアマッピング部212の出力はOFDM変調部215によって、OFDM変調が施される。尚、ここでいうOFDM変調とは、入力信号に対してIFFT(Inversed Fast Fourie Transfer)処理を施し、CP(Cyclic Prefix)を付加し、ベースバンドのOFDM信号を生成する事である。この後、無線通信端末200は、無線送受信回路240により、ベースバンドのOFDM信号に対して、デジタル-アナログ変換、搬送波の乗算、増幅処理を施して、RF(Radio Frequency)信号を生成する。生成されたRF信号は、最終的にアンテナ250-1から送信される。
【0016】
次に、前記の通り基地局100から送信されたN個のストリームに対する、無線通信端末200の受信処理について図2を用いて説明する。本実施例では、基地局100から送信されたストリーム数は2個であるとする(すなわちN=2)。N=2,M=1の時、データパケットの送信に先立って、無線通信端末200は基地局100が送信したパイロットシンボルを受信し(図8:401)、ランク数(M=1なので、自動的にランク数は1になる)は1である旨を基地局100に通知している(図8:402)。この後、無線通信端末200は、基地局100からパケット情報を受信し(図8:403)、ストリーム数である2を取得している(図8:404)。その後のデータパケット受信処理(図8:405)を以下に述べる。
【0017】
無線通信端末200は基地局100からの信号をアンテナ250-1にて受信すると、無線送受信回路240により、このRF信号をベースバンド信号に変換する。次に、OFDM復調部225により受信した信号を各サブキャリアのシンボルに分離する。また、チャネル推定部230は、OFDM復調部225の出力を基にチャネル推定を行い、伝搬係数を導出する。さらにチャネル推定部230を基にCQI,ランク計算部231はCQI,ランクの計算を行い、結果を受信信号処理部201とMIMO受信方式決定部232に通知する。
【0018】
本実施例では、ランク数(=1)<ストリーム数(=2)であるので、図8のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232はベストエフォートのMIMO受信を行う事を決定する(図8:408)。本実施例では、MLDを用いてこれを実現するものとする。従って、MIMO受信方式決定部232はMIMO受信処理部224にMLDの利用を通知する。この結果、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1の出力結果に対して、チャネル推定部230の出力結果を利用してMLD処理を行い、ビット単位での対数尤度比を出力する。次に、逆サブキャリアマッピング部222により、OFDMリソース上の各対数尤度比は本来の順序に並び変えられる。本実施例では既にビット単位での対数尤度比が得られているので復調部221は、特に処理は行わず、入力をそのまま出力し復号器220に渡す。この対数尤度比に対して、復号器220は復号処理を行う(図8:409)。具体的には、誤り訂正処理を施し、かつCRC検査を行い、受信の成否を決定する。受信に成功したならば、制御信号は制御信号処理部201に渡し、データ信号はデータ信号処理部202に渡す。
【0019】
以上の通り、アンテナ1本の無線通信端末200は、MLDを用いて2本のストリームをベストエフォートで受信する事が可能である。
【実施例2】
【0020】
本実施例では、基地局100が送信するストリーム数と無線通信端末200のアンテナ数は実施例1と同一とし(すなわち、N=2,M=1)、ベストエフォートのMIMO受信として所望ストリーム以外のストリームを雑音とみなして処理するものとする(図8:408)。
【0021】
本実施例の実施例1との差分は、MIMO受信方式決定部232が上記のMIMO受信方式を利用する旨を、MIMO受信処理部224に通知する事、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1の出力を素通しする事、復調部221がチャネル推定部230の結果を利用して復調処理を行う事である。
【0022】
本実施例によると、例えば複数のストリームで、それぞれ別個のコンテンツの送信を行っている時に、この中から特定の1つのストリームのみ受信できればいいという無線通信端末は、そのストリームだけ受信する事が可能となる。ただし、MLDを用いる実施例1に比べパケット誤り率は劣化する。
【実施例3】
【0023】
本実施例では、実施例1の無線通信端末200の信号受信において、基地局100が送信するストリーム数が1個の時の動作を説明する(すなわち、N=M=1)。この時、ランク数(=1)≧ストリーム数(=1)であるので、図8のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232は通常のSISO受信を行う事を決定する(図8:407)。
【0024】
本実施例の実施例1との差分は、MIMO受信方式決定部232がSISO受信を行う旨を、MIMO受信処理部224に通知する事、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1の出力を素通しする事、復調部221がチャネル推定部230の結果を利用して復調処理を行う事である。
【0025】
本実施例によると、本発明の無線通信端末はSISO伝送が行われる時には通常のSISO受信処理によりパケット受信が行える。
【実施例4】
【0026】
本実施例では、無線通信端末200のアンテナ数が2本である時(すなわちM=2)の基地局100と無線通信端末200の動作を説明する。基地局100の動作に関しては、実施例1の時と同等である。
【0027】
無線通信端末200の信号送信処理を、図2を用いて説明する。制御信号処理部201、或いはデータ信号処理部202が生成した信号(この時点ではビット列)は、符号器210によって符号化される。ここで、符号化とは、データの誤り検出に用いるCRC(Cyclic Redundancy Code)符号化や、誤り訂正に用いる畳み込み符号化、ターボ符号化などの事を示す。次に、無線通信端末200は、変調部211による変調を施し変調シンボルを生成する。次に、無線通信端末200は、サブキャリアマッピング部212により、変調シンボルを適切なOFDMリソースにマッピングする。ここで、OFDMリソースへのマッピングとは、変調部211が出力した変調シンボルを適切なOFDMシンボルの適切なサブキャリアに割り当てる事である。尚、このマッピングのルールは、図5のパケット情報通知(304)により、基地局100と無線通信端末200の間で共有している。サブキャリアマッピング部212の出力はOFDM変調部215によって、OFDM変調が施される。尚、ここでいうOFDM変調とは、入力信号に対してIFFT(Inversed Fast Fourie Transfer)処理を施し、CP(Cyclic Prefix)を付加し、ベースバンドのOFDM信号を生成する事である。この後、無線通信端末200は、無線送受信回路240により、ベースバンドのOFDM信号に対して、デジタル-アナログ変換、搬送波の乗算、増幅処理を施して、RF(Radio Frequency)信号を生成する。生成されたRF信号は、最終的にアンテナ250-1〜アンテナ250-Nのいずれかから送信される。
【0028】
次に、前記の通り基地局100から送信されたN個のストリームに対する、無線通信端末200の受信処理について説明する。本実施例では、基地局100から送信されたストリーム数は4個であるとする(すなわちN=4)。N=4,M=2の時、データパケットの送信に先立って、無線通信端末200は基地局100が送信したパイロットシンボルを受信し(図9:401)、チャネル推定部230は伝播行列を計算する。これを基に、CQI,ランク計算部231はチャネルのランク数を計算し(図9:410)、ランク数(ランク数は2になったとする。)を基地局100に通知している(図9:411)。
【0029】
この後、無線通信端末200は、基地局100からパケット情報を受信し(図9:403)、ストリーム数である4を取得している(図9:404)。その後のデータパケット受信処理(図9:405)を以下に述べる。
【0030】
無線通信端末200は基地局100からの信号をアンテナ250-1〜アンテナ250-Mにて受信すると、無線送受信回路240により、このRF信号をベースバンド信号に変換する。次に、OFDM復調部225-1〜225-Mにより受信した信号を各サブキャリアのシンボルに分離する。また、チャネル推定部230は、OFDM復調部225の出力を基にチャネル推定を行い、伝搬係数を導出する。さらにチャネル推定部230を基にCQI,ランク計算部231はCQI,ランクの計算を行い、結果を受信信号処理部201とMIMO受信方式決定部232に通知する。
【0031】
本実施例では、ランク数(=2)<ストリーム数(=4)であるので、図9のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232はベストエフォートのMIMO受信を行う事を決定する(図9:413)。本実施例では、MLDを用いてこれを実現するものとする。従って、MIMO受信方式決定部232はMIMO受信処理部224にMLDの利用を通知する。この結果、MIMO受信処理部224は、OFDM復調部225-1〜225-Mの出力結果に対して、チャネル推定部230の出力結果を利用してMLD処理を行い、ビット単位での対数尤度比を出力する。次に、逆サブキャリアマッピング部222により、OFDMリソース上の各対数尤度比は本来の順序に並び変えられる。本実施例では既にビット単位での対数尤度比が得られているので復調部221は、特に処理は行わず、入力をそのまま出力し復号器220に渡す。この対数尤度比に対して、復号器220は復号処理を行う(図9:409)。具体的には、誤り訂正処理を施し、かつCRC検査を行い、受信の成否を決定する。受信に成功したならば、制御信号は制御信号処理部201に渡し、データ信号はデータ信号処理部202に渡す。
【0032】
以上の通り、アンテナ2本の無線通信端末200は、MLDを用いて4本のストリームをベストエフォートで受信する事が可能である。
【実施例5】
【0033】
本実施例では、基地局100が送信するストリーム数と無線通信端末200のアンテナ数は実施例4と同一とし(すなわち、N=4,M=2)、伝播行列のランクも2であるとする。ベストエフォートのMIMO受信として所望ストリーム以外のストリームを雑音とみなして処理するものとする(図9:413)。
【0034】
本実施例の実施例4との差分は、MIMO受信方式決定部232が上記のMIMO受信方式を利用する旨を、MIMO受信処理部224に通知する事が一つである。さらに、MIMO受信処理部224は、本来の2行4列の伝播行列から、所望するストリームに対する成分を取り出し、2行2列の伝播行列を生成し、これを基に、MMSE、MLDによる信号分離を行う。さらに、復調部221は逆サブキャリアマッピング部222の出力に対して復調処理を行う。
【0035】
本実施例によると、例えば複数のストリームで、それぞれ別個のコンテンツの送信を行っている時に、この中から特定の複数のストリームのみ受信できればいいという無線通信端末は、そのストリームだけ受信する事が可能となる。ただし、MLDを用いる実施例4に比べパケット誤り率は劣化する。
【実施例6】
【0036】
本実施例では、実施例4の無線通信端末200の信号受信において、基地局100が送信するストリーム数が2個であり(すなわち、N=M=2)、ランク数も2である時の動作を説明する。この時、ランク数(=2)≧ストリーム数(=2)であるので、図9のステップ406の判断に従い、MIMO受信方式決定部232はMMSEによる通常のMIMO受信を行う事を決定する(図9:412)。
【0037】
本実施例の実施例4との差分は、MIMO受信方式決定部232がMIMO受信を行う旨を、MIMO受信処理部224に通知する事、MIMO受信処理部224は、チャネル推定部230の出力を利用して、OFDM復調部225-1〜225-Mの出力に対して、MMSE処理を行う事、復調部221が復調処理を行う事である。
【0038】
本実施例によると、本発明の無線通信端末は通常のMIMO伝送が行われる時には通常のMIMO受信処理によりパケット受信が行える。
【産業上の利用可能性】
【0039】
無線通信端末が所望するストリーム数とは異なるストリーム数で基地局がMIMO伝送を行うような環境で有用である。このような環境は一斉同報通信のような環境が一例として考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】無線通信端末受信部のブロック図。
【図2】無線通信端末送信部のブロック図。
【図3】基地局のブロック図。
【図4】MIMO伝送の模式図。
【図5】MIMO伝送によるデータ通信のシーケンス図。
【図6A】無線通信端末が基地局にCQIとランクを通知するのに用いるメッセージのフォーマットの一つ。
【図6B】無線通信端末が基地局にCQIとランクを通知するのに用いるメッセージのフォーマットの一つ。
【図6C】基地局が無線通信端末にストリーム数を通知するのに用いるメッセージのフォーマットの一つ。
【図7】様々な無線通信端末が混在する事を示した模式図。
【図8】アンテナ数が1の無線通信端末のパケット受信のフロー図。
【図9】アンテナ数が複数の無線通信端末のパケット受信のフロー図。
【符号の説明】
【0041】
100…基地局
150-1〜150-N…基地局のアンテナ
200…無線通信端末
224…MIMO受信処理部
232…MIMO受信方式決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを具備する基地局と通信する無線通信端末であって、
前記基地局がMIMO伝送を行う際に、前記無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合に、ストリーム数と無線の伝播状況に応じて、MIMOの受信方式を変更することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信端末であって、
MIMOの受信方式として変調シンボルを分離する方式と、ビットの尤度を計算する方式の両方を使用可能であり、
前記ストリーム数と無線の伝播状況に応じてどちらの受信方式を使用するか決定することを特徴とする無線通信端末。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信端末であって、
前記無線通信端末の所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合は、前記所望する値と同数のストリーム数の信号以外の信号を雑音とみなしたうえで、前記所望する値と同数のストリーム数の信号を取り出すことを特徴とする無線通信端末。
【請求項4】
複数のアンテナを具備する基地局と通信する無線通信端末であって、
前記基地局がMIMO伝送を行う際に、前記無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合に、ストリーム数と無線の伝播行列のランクの大小比較の結果に応じて、MIMOの受信方式を変更することを特徴とする無線通信端末。
【請求項5】
請求項4記載の無線通信端末であって、
MIMOの受信方式として変調シンボルを分離する方式と、ビットの尤度を計算する方式の両方を使用可能であり、
前記ストリーム数と無線の伝播状況に応じてどちらの受信方式を使用するか決定することを特徴とする無線通信端末。
【請求項6】
請求項4記載の無線通信端末であって、
前記無線通信端末の伝播行列のランク数より大きいストリーム数でMIMO伝送が行われた場合は、前記所望する値と同数のストリーム数の信号以外の信号を雑音とみなしたうえで、前記所望する値と同数のストリーム数の信号を取り出すことを特徴とする無線通信端末。
【請求項1】
複数のアンテナを具備する基地局と通信する無線通信端末であって、
前記基地局がMIMO伝送を行う際に、前記無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合に、ストリーム数と無線の伝播状況に応じて、MIMOの受信方式を変更することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信端末であって、
MIMOの受信方式として変調シンボルを分離する方式と、ビットの尤度を計算する方式の両方を使用可能であり、
前記ストリーム数と無線の伝播状況に応じてどちらの受信方式を使用するか決定することを特徴とする無線通信端末。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信端末であって、
前記無線通信端末の所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合は、前記所望する値と同数のストリーム数の信号以外の信号を雑音とみなしたうえで、前記所望する値と同数のストリーム数の信号を取り出すことを特徴とする無線通信端末。
【請求項4】
複数のアンテナを具備する基地局と通信する無線通信端末であって、
前記基地局がMIMO伝送を行う際に、前記無線通信端末が所望する値とは異なるストリーム数でMIMO伝送が行われた場合に、ストリーム数と無線の伝播行列のランクの大小比較の結果に応じて、MIMOの受信方式を変更することを特徴とする無線通信端末。
【請求項5】
請求項4記載の無線通信端末であって、
MIMOの受信方式として変調シンボルを分離する方式と、ビットの尤度を計算する方式の両方を使用可能であり、
前記ストリーム数と無線の伝播状況に応じてどちらの受信方式を使用するか決定することを特徴とする無線通信端末。
【請求項6】
請求項4記載の無線通信端末であって、
前記無線通信端末の伝播行列のランク数より大きいストリーム数でMIMO伝送が行われた場合は、前記所望する値と同数のストリーム数の信号以外の信号を雑音とみなしたうえで、前記所望する値と同数のストリーム数の信号を取り出すことを特徴とする無線通信端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−50862(P2010−50862A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214803(P2008−214803)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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