説明

無線通信装置、プログラム、および位置推定方法

【課題】システムを大掛かりにせず、高精度に無線タグの位置を求める。
【解決手段】リーダ100は、無線通信手段と、検出手段と、推定手段とを備える。無線通信手段は、物品タグB09、B24及び複数の位置タグP1−P15に問合せ信号を送信し、これら物品タグB09、B24及び位置タグP1−P15からの応答信号を受信する。検出手段は、無線通信手段が受信した応答信号の受信信号強度を検出する。推定手段は、検出手段が検出した物品タグB09、B24からの応答信号の受信信号強度、及び、位置タグP1−P15からの応答信号の受信信号強度に基づいて、各位置タグP1−P15の位置に対する物品タグB09、B24の位置を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線タグと無線通信してその無線タグの位置を推定する無線通信装置、プログラム、および位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の対象物に予め備え付けられた無線タグ(RFIDタグ、ICタグ、トランスポンダ等とも称される)等の送信機から無線送信される信号を予め所定の場所に配置された複数の受信機(通信機器)にてそれぞれ受信し、この受信状況から上記送信機の位置を検出する位置情報システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−311275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の位置情報システムにおいては、複数の受信機を配備する必要があるため、システムが大掛かりになってしまう。
【0005】
また、特に屋内に所在する送信機から送信される電波は、壁面、天井面および床面によって反射されるほか、屋内に配置された構造物等によっても反射されるため、マルチパスが生じ易いとの問題もある。すなわちこのマルチパスにより、受信機には送信機からの直接波のほか、複数(無数)の反射波が到来することになるので正確な位置検出が困難となる。
【0006】
因みに、位置情報システムに用いられる電波は、専らUHF帯以上の周波数が用いられる。この場合、送信機がわずかに移動しただけでも、受信機はマルチパスによる影響を顕著に受ける。その結果、受信信号強度が大きく変化し、特に受信信号強度が極端に低下するヌルポイントが生じることもある。このヌルポイントは、電波到達の可逆性から受信機と送信機の位置を入れ替えても同様に生じる。したがって、従来の位置情報システムにあっては、ヌルポイントの影響により正確に送信機の位置が検出できない虞があった。
【0007】
このような事情から、システムを大掛かりにせず、高精度に送信機の位置を求めるための手段を講じる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態における無線通信装置は、無線通信手段と、検出手段と、推定手段とを備えている。
無線通信手段は、第1無線タグ及び複数の第2無線タグに問合せ信号を送信し、これら第1無線タグ及び第2無線タグからの応答信号を受信する。検出手段は、無線通信手段が受信した応答信号の受信信号強度を検出する。推定手段は、検出手段が検出した第1無線タグからの応答信号の受信信号強度、及び、第2無線タグからの応答信号の受信信号強度に基づいて、各第2無線タグの位置に対する第1無線タグの位置を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態における無線タグ位置推定システムの全体構成図。
【図2】同実施形態における位置タグとその取り付け位置との関係を示す図。
【図3】同実施形態における物品タグとその貼付対象の物品との関係を示す図。
【図4】同実施形態における無線タグの読み取りに関わるリーダの回路構成を示すブロック図。
【図5】同実施形態における位置タグと位置推定対象の物品タグの位置関係を示す図。
【図6】同実施形態においてリーダの制御部が実行する処理のフローチャート。
【図7】同実施形態において差分データが記憶されるテーブルのデータ構造図。
【図8】同実施形態において差分データが記憶されるテーブルのデータ構造図。
【図9】同実施形態において推定結果が記憶されるテーブルのデータ構造図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
[システム構成]
本実施形態では、本棚の予め決められた位置に取り付けられた無線タグである位置タグと、本に貼付された無線タグである物品タグとを無線タグリーダで読み取ることにより、本に貼付された物品タグの位置を推定する無線タグ位置推定システムを例示する。
【0012】
図1は、無線タグ位置推定システムの全体構成図である。
このシステムは、位置を示す位置タグPと、物品である各本に取り付けられた物品タグBと、これら位置タグPおよび物品タグBの情報を読み取るリーダ100とで構成されている。なお、物品タグBは、本実施形態における第1無線タグとして機能し、位置タグPは、本実施形態における第2無線タグとして機能する。
【0013】
[位置タグおよび物品タグ]
位置タグPは、タグIDが記憶されたICとアンテナとを有するパッシブ型の無線タグであり、棚、部屋、倉庫等における特定の位置に取り付けられる。本実施形態においては、図示したように複数段に区分けされた本棚200の各段に等間隔で位置X01、X02、X03・・・X15が定義されているものとする。そして、各位置X01〜X15に配置された位置タグPを、それぞれ位置タグP01、P02、P03・・・P15と称す。各位置タグP01〜P15のタグID「ID_P01」〜「ID_P15」と、その取り付け位置X01〜X15とは、予め図2のように紐付けされてリーダ100の制御部12のメモリ12a(図4参照)に記憶されている。
【0014】
物品タグBは、位置タグPと同じくタグIDが記憶されたICとアンテナとを有するパッシブ型の無線タグであり、図書、書類、商品といった物品に貼付される。本実施形態においては、図1に示した本棚200の上段に物品である本Y01、Y02、Y03・・・Y19が並べられており、本棚200の下段に同じく物品である本Y20、Y21、Y22・・・Y39が並べられているものとする。そして、各本Y01〜Y39に貼付された物品タグBを、それぞれ物品タグB01、B02、B03・・・B39と称す。各物品タグB01〜B39のタグID「ID_B01」〜「ID_B39」と、貼付対象の物品である本Y01〜Y39とは、予め図3のように紐付けされて上記メモリ12a(図4参照)に記憶されている。
【0015】
[リーダ]
次に、本実施形態における無線通信装置として機能するリーダ100について説明する。
リーダ100は、ユーザが手持で操作するハンディタイプの無線タグリーダであり、LCD等の表示部、各種操作釦で構成された操作部、無線タグの読み取りに関わる処理を行う無線通信部等を備えている。
【0016】
図4は、無線タグの読み取りに関わるリーダ100の回路構成を示すブロック図である。図示した回路は、符号化部1、変調部2、搬送波生成部3、電力増幅部4、送受信共用器5、アンテナ6、低雑音増幅部7、復調部8、自動利得制御部9、RSSI(Received Signal Strength Indication)検出部10、復号部11、および制御部12で構成されている。このうち符号化部1、変調部2、および電力増幅部4は送信系回路を構成し、低雑音増幅部7、復調部8、自動利得制御部9、RSSI検出部10、および復号部11は受信系回路を構成する。
【0017】
先ず、上記送信系回路等の無線タグへの信号送信に関わる各部について説明する。
符号化部1は、無線タグに向けて送信する応答要求コマンド(問合せ信号)等のベースバンド信号を生成する。変調部2は、符号化部1で生成されたベースバンド信号をASK(Amplitude shift keying)方式等で直交変調する直交変調部である。搬送波生成部3は、変調部2で変調するための所定周波数(860MHz〜960MHzのUHF帯の周波数)、例えば953MHzの局部発振信号(搬送波)を発生する。搬送波生成部3は、局部発振回路(Local Oscillator)等で構成される。電力増幅部4は、変調部2が局部発振信号とベースバンド信号とを用いてASK方式で変調した送信信号を増幅する可変のPA(Power Amplifier)である。送受信共用器5は、電力増幅部4で増幅された送信信号をアンテナ6側にだけ伝送し、アンテナ6の受信信号を受信系回路にのみ伝送する。アンテナ6は、無線タグとUHF帯の周波数で無線通信する。
【0018】
このような構成においては、送信系回路からの送信信号はアンテナ6側へは出力されるが、同送信信号が送受信共用器5から受信系回路に回り込むことはなく、逆にアンテナ6で受信した受信信号が送受信共用器5から送信系回路に回り込むことはない。
【0019】
以上、無線タグへの信号送信に関わる各部について説明したが、次に、無線タグからの信号受信に関わる各部について説明する。
低雑音増幅部7は、アンテナ6が無線タグからの応答である反射波(応答信号)を受信した際に出力する受信信号を低雑音で増幅する。復調部8は、低雑音増幅部7で低雑音増幅された出力を互いに90度位相のずれた搬送波により直交復調する。具体的には復調部8では、搬送波生成部3の局部発振信号が受信信号と同位相に、また同時に90度(π/2)だけ位相がずらされて入力され、アンテナ6からの受信信号とミキシングされて直交復調される。従って、復調部8からは、受信信号と同位相のI(In-phase)信号と、これより90度位相が遅れたQ(Quad - phase)信号の2信号が出力される。自動利得制御部9は、復調部8から出力されるI信号とQ信号をそれぞれ増幅するVGA(Variable Gain Amplifier)等で構成されている。RSSI検出部10は、受信信号のRSSI(受信信号強度)を検出する。RSSI検出部10で検出されたRSSIを基に自動利得制御部9を構成するVGAを制御して、I信号とQ信号のゲインを調整することができる。復号部11は、自動利得制御部9でゲイン調整されたI信号とQ信号をそれぞれデジタル信号に変換し、この変換後のデジタル信号をデコードして通信対象である無線タグからの応答データを生成する。
【0020】
なお、制御部12は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ12a等で構成され、問合せ信号の送信等の無線タグへのコマンド送信の制御、電力増幅部4の増幅率の制御、RSSI検出部10で検出したRSSIに基づく自動利得制御部9の利得制御、復号部11で生成した無線タグの応答データの処理といった無線タグの読み取りに関する制御のほか、上記表示部の表示制御、上記操作部からの操作信号の取り込み、この取り込んだ信号に応じた処理の実行、および、無線タグの位置推定等の処理を行う。
【0021】
[無線タグの位置推定]
続いて、無線タグの位置推定方法について説明する。
ここでは、図1に示したように位置タグP01〜P15が配置され、本Y01〜Y39が並べられた本棚200から本Y09および本Y24を探し出すべく、各本Y09,Y24に付された物品タグB09,B24の位置を推定する場合を例示する。
【0022】
この例における各位置タグP01〜P15と物品タグB09,B24の位置関係を図5に示している。位置推定に際して、ユーザはリーダ100を手に持ち、本棚200がアンテナ6の交信領域に入るように立ち位置等を調整してリーダ100を上下左右に振り、N(自然数,N>1)回の無線タグ読み取りを実行させる。
【0023】
このとき、リーダ100の制御部12が実行する具体的な処理を、図6のフローチャートに沿って説明する。ここで説明する処理は、制御部12がメモリ12aに記憶された制御プログラムを実行することで実現される。
【0024】
制御部12は、上記操作部を介して位置推定の対象となる本Y09,Y24が指定されると、これらに紐付けられたタグIDを図3に示した情報から読み出し、位置推定の対象として設定して処理を開始する。
【0025】
処理開始当初において、制御部12は、スキャンを開始し、アンテナ6から搬送波を送信させる(ステップS1)。この搬送波を受けて交信領域内の無線タグが起動する。なお、この処理においては、図示せぬ音声発生装置から音声を発生することなどによって、ユーザにスキャン開始を報知してもよい。
【0026】
しかる後、制御部12は、位置推定の対象である物品タグB09,B24をN回読み取り終えたか否かを判定する(ステップS2)。処理開始当初においては読み取り回数がN回に達していないので(ステップS2のNo)、制御部12は、1回目の無線タグの読み取りを行う(ステップS3)。具体的には、前述した手順で交信領域内に問合せ信号を送信し、これに対する各無線タグからの応答信号を受信し、受信した信号から応答データを生成する。なお、図示しない加速度センサをリーダ100に設け、ユーザがリーダ100を上下左右に振り始めたことを同センサで検知したことに応じてステップS3の処理が実行されるようにしてもよい。
【0027】
次に、制御部12は、受信した各応答データに含まれるタグIDと、その応答データの生成元となる応答信号の受信時にRSSI検出部10で検出されたRSSIとを紐付けてメモリ12aに記憶する(ステップS4)。
【0028】
そして、制御部12は、前処理にてメモリ12aに記憶した各タグIDおよびRSSIを参照し、各位置タグPのタグIDに紐付けられたRSSIと、位置推定の対象である物品タグB09,B24のタグIDに紐付けられたRSSIとの差分を算出し、その絶対値をメモリ12aに記憶する(ステップS5)。
【0029】
この差分の絶対値(以下、差分データと称す)は、例えば図7,図8に示したようなテーブル301,302に記憶される。図示したテーブル301は、物品タグB09に対応するものであり、位置タグP01〜P15のタグIDに紐付けられたRSSIと物品タグB09のタグIDに紐付けられたRSSIとの差分データを記述するための15個のエリアをN回の読み取り回それぞれに対して設け、さらに最下段に各回のエリアに記憶された差分データの平均値(Average)を記述するための15個のエリアを設けて構成されている。一方、図示したテーブル302は、物品タグB24に対応するものであり、位置タグP01〜P15のタグIDに紐付けられたRSSIと物品タグB24のタグIDに紐付けられたRSSIとの差分データを記述するための15個のエリアをN回の読み取り回それぞれに対して設け、さらに最下段に各回のエリアに記憶された差分データの平均値(Average)を記述するための15個のエリアを設けて構成されている。
【0030】
このような構成のテーブル301,302は、例えば当該位置推定に関わる処理が開始された際にメモリ12aに生成される。この例では2つのテーブルを生成しているが、位置推定の対象となる物品が1つのみ指定されているならば1つ生成し、3つ以上指定されているならば3つ以上、すなわち指定された位置推定の対象となる物品と同数設ければよい。なお、図示した各テーブル301,302には既に各エリアに差分データが記述された状態を示しているが、生成当初においてはこれらのデータは記述されていない。ステップS5の処理においては、各テーブル301,302の「回数」が小さいエリアから順に差分データが記述される。ただし、対応する物品タグBからの応答が得られていない場合には、その物品タグBに対するステップS5の処理は行われない。対応する物品タグBからの応答が得られているが、一部の位置タグPからの応答が得られていない場合には、その位置タグPのRSSIを「0」として扱えばよい。
【0031】
制御部12は、ステップS3〜S5の処理を繰り返し実行する。この間にも、ユーザはリーダ100を上下左右に振り、その位置を逐次変更する。
【0032】
やがて、各テーブル301,302のN回目のエリアに差分データが記述され終えると、制御部12は、位置推定の対象である物品タグB09,B24をN回読み取り終えたと判定する(ステップS2のYes)。このとき、制御部12は、アンテナ6からの搬送波の送信を停止し、スキャンを終了する(ステップS6)。なお、ステップS6の処理においては、制御部12が自動的にスキャンを終了するようにしてもよいし、N回の読み取り完了を図示せぬ音声発生装置から音声を発生することなどによって報知し、ユーザが手動でスキャンを終了させるようにしてもよい。
【0033】
スキャン終了の後、制御部12は、物品タグB09,B24毎にN回分の差分データの平均値を算出し、メモリ12aに記憶する(ステップS7)。すなわち、各テーブル301,302に記述された差分データを差分算出のペアとなった位置タグP毎に加算し、加算後の値をNで除した15個のデータを平均値としてそれぞれの位置タグPの「Average」のエリアに記述する。
【0034】
通常、電波の電力が一定であれば、同一構造の無線タグからの応答信号のRSSIは、リーダ100との距離に依存して変化する。したがって、ヌルポイントの影響等を受けない場合には、位置推定の対象である物品タグBの近くに所在する位置タグPに対応する差分データほど、その値が小さくなる。また、ヌルポイントの影響を受けた場合であっても、N回分の差分データの平均値を比較した場合には、位置推定の対象である物品タグBの近くに所在する位置タグPに対応する平均値ほど、その値が小さくなる傾向が現れる。
【0035】
これに鑑み、制御部12は、ステップS7の処理にて算出した各平均値のうち最小の平均値に対応する位置タグPの近くに位置推定の対象となる物品タグBが所在するとみなして、指定された各物品の位置を推定し、メモリ12aに記憶する(ステップS8)。すなわち、テーブル301に記述された各平均値のうち最小の平均値に対応する位置タグPの位置を物品タグB09の位置として推定し、テーブル302に記述された各平均値のうち最小の平均値に対応する位置タグPの位置を物品タグB24の位置として推定する。推定した位置は、例えば図9に示したテーブル401の形式でメモリ12aに記憶される。このテーブル401は、図3に示した情報に含まれる物品タグBのタグID毎に位置推定の結果を記述するためのエリアを設けて構成されたものである。例えば物品タグB09が位置タグP08付近にあると推定され、物品タグB24が位置タグP12の近くにあると推定された場合には、このテーブル401の「ID_B09」のエリアに「ID_P08」が記述され、「ID_B24」のエリアに「ID_P12」が記述される。位置推定の対象でない物品タグBに対応するエリアには、情報が記述されない。
ステップS8の処理を以って、一連の位置推定に関わる処理が終了する。
【0036】
このように位置推定を行った後、制御部12は、テーブル401に従って位置推定の結果を報知する。すなわち、図9のテーブル401のような推定結果が得られた場合には、「ID_B09」で示される本Y09が「ID_P08」で示される位置タグP08が配置された位置X08の近くに所在し、「ID_B24」で示される本Y24が「ID_P12」で示される位置タグP12が配置された位置X12の近くに所在する旨を、上記表示部への表示や上記音声発生装置からの音声出力等によって報知する。
【0037】
なお、上記位置推定においては、回数Nの値が大きいほど位置推定の精度が高まるが、回数Nが多いと読み取りや演算に時間が掛かってしまう。そこで、回数Nの具体的な値に関しては、一連の位置推定の許容時間と必要な位置推定精度とを考慮して、経験的、実験的、あるいは理論的に定めればよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態におけるリーダ100は、複数の位置タグPからの応答信号のRSSI、および、物品タグBからの応答信号のRSSIに基づいて、位置タグPの位置に対する物品タグBの位置を推定する。このような構成であれば、受信機として複数の無線タグリーダを用いることなく、簡易な構成で物品タグの位置を推定することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態におけるリーダ100は、各位置タグPおよび物品タグBへの問合せ信号の送信および応答信号の受信を複数回行い、各回において検出される各位置タグPからの応答信号のRSSIと、物品タグBからの応答信号のRSSIとの差分を算出し、これら各回の差分の平均値を算出し、この平均値に基づいて位置タグPの位置に対する物品タグBの位置を推定する。このような構成において、ユーザがリーダ100を上下左右に振りながら位置タグPおよび物品タグBの読み取りを行えば、床面反射などのマルチパスの影響によるRSSIの検出誤差を平均化することができる。したがって、位置推定の精度が1回の読み取りのみ行う場合に比して向上する。
【0040】
[変形例]
上記実施形態にて開示した構成は、種々変形実施可能である。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0041】
(1)上記実施形態においては、ステップS5の処理において、物品タグBからの応答信号のRSSIと位置タグPからの応答信号のRSSIとの差分の絶対値を算出し、記憶するとした。しかしながら、ステップS5の処理において各RSSIの差分を2乗した値を算出して記憶するようにしてもよい。この場合であっても、他の処理を変更することなく、物品タグBの位置を推定することができる。
【0042】
(2)上記実施形態では、制御部12のメモリ12aに位置推定処理用のプログラムが予め記憶されているものとして説明した。しかしながら、これに限らず位置推定用のプログラムをネットワークからリーダ100にダウンロードしてもよいし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものをリーダ100にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等を利用でき、かつリーダ100が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であってもよい。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能はリーダ100内部のOS(Operating System)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
P…位置タグ、B…物品タグ、X…位置、Y…本、6…アンテナ、10…RSSI検出部、11…復号部、12…制御部、12a…メモリ、100…リーダ、301,302,401…テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線タグ及び複数の第2無線タグに問合せ信号を送信し、これら第1無線タグ及び第2無線タグからの応答信号を受信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が受信した応答信号の受信信号強度を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記第1無線タグからの応答信号の受信信号強度、及び、前記第2無線タグからの応答信号の受信信号強度に基づいて、前記各第2無線タグの位置に対する前記第1無線タグの位置を推定する推定手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記第1無線タグからの応答信号の受信信号強度と、前記第2無線タグからの応答信号の受信信号強度との差分に基づいて、前記各第2無線タグの位置に対する前記第1無線タグの位置を推定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信手段は、前記第1無線タグ及び前記各第2無線タグへの問合せ信号の送信及び応答信号の受信を複数回行い、
前記推定手段は、前記各回において前記検出手段が検出した前記第1無線タグからの応答信号の受信信号強度と、前記第2無線タグからの応答信号の受信信号強度との差分を算出し、これら各回の差分の平均値を算出し、この平均値に基づいて前記各第2無線タグの位置に対する前記第1無線タグの位置を推定することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
コンピュータに、
無線タグと無線通信する無線通信手段に、第1無線タグ及び複数の第2無線タグに問合せ信号を送信させ、これら第1無線タグ及び第2無線タグからの応答信号を受信させる機能と、
前記無線通信手段が受信した応答信号の受信信号強度を検出する検出手段によって検出される前記第1無線タグからの応答信号の受信信号強度、及び、前記検出手段によって検出される前記第2無線タグからの応答信号の受信信号強度に基づいて、前記各第2無線タグの位置に対する前記第1無線タグの位置を推定する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項5】
無線タグと無線通信する無線通信手段により、第1無線タグ及び複数の第2無線タグに問合せ信号を送信し、これら第1無線タグ及び第2無線タグからの応答信号を受信するステップと、
前記無線通信手段が受信した応答信号の受信信号強度を検出する検出手段により、前記無線通信手段が受信した応答信号の受信信号強度を検出するステップと、
推定手段により、前記検出手段が検出した前記第1無線タグからの応答信号の受信信号強度、及び、前記第2無線タグからの応答信号の受信信号強度に基づいて、前記各第2無線タグの位置に対する前記第1無線タグの位置を推定するステップと、
を備えていることを特徴とする位置推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−118747(P2012−118747A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267618(P2010−267618)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】