説明

無線通信装置、無線通信システム、および、無線通信方法

【課題】無線アドホックネットワークにおいて隠れ端末問題の影響にかかわらず最適な変調方式を選択できる無線通信装置を提供する。
【解決手段】相互にリンクを結んで直接的に通信する無線通信装置111に、隣接無線通信装置からこの隣接無線通信装置に関する情報を周期的に受信する無線通信部201、情報の送信元となる隣接無線通信装置と対応付けて保持する記憶部202、記憶部202の保持情報と無線通信部201によって受信された情報とに基づいて、隠れ端末関係にある無線通信装置を判定し、該隠れ端末による衝突の発生確率を推定し、推定された衝突発生確率に基づいてリンクの通信特性の指標を得る衝突率判定部203を備え、得られた指標に基づいて変調方式を選択する変調方式選択部204を備え、変調方式を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム、および、無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、無線通信においては、電波伝播距離や干渉によって、例えば信号のエラー率、ノイズの多寡、信号伝送速度等の通信の品質が変動する。
従って、無線通信(無線ネットワーク)では、複数の変調方式が用意され、状況に応じて適合するものが選択され得る。
即ち、BPSK(Binary Phase Shift Keying:2相位相変調)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4相位相変調)、16QAM(16-position Quadrature Amplitude Modulation:16振幅変調)、等々の変調方式が選択的に適用される。
【0003】
一般的に、伝送速度が遅い変調方式程、ノイズ耐性や最低受信感度が良好であり、反対に、伝送速度が速い変調方式程、ノイズ耐性や最低受信感度が劣るといった傾向を呈する。
このため無線通信のリンクを結ぶ場合、通信の品質を勘案して最適な変調方式が選択される。
即ち、通信の品質が維持され易い条件下では伝送速度が相対的に速い変調方式が適用され、反対に、障害物の影響等によって通信の品質を維持し難い条件下では伝送速度が相対的に遅い変調方式を適用して通信品質の維持が図られる。
上述のように、条件に応じて最適な変調方式を選択する適応変調を採用することによって通信品質の維持を図る技術は既に提案されている(非特許文献1)。
【0004】
この非特許文献1に開示の技術は、通信が成功したか失敗したかに関する統計をとり、成功または失敗の回数を一定の閾値と比較し、成功回数が相対的に少ない場合には変調方式を一段階速度の遅い変調方式に切換え、逆に、成功回数が相対的に多い場合には変調方式を一段階速度の速い変調方式に切換えることを試行し、最適な変調方式を選択するというものである。
【0005】
一方、電波法上の制限を受けずに利用可能な無線LAN等の無線通信においては、混信を避けるためにキャリアセンスという手法が採られている。
キャリアセンスとは、相互に通信を行うことを予定する無線通信装置間で、本来の通信の目的たるデータの送信に先立ってキャリアセンス(搬送波の放射の有無の検出)を行い、互いに自律的に送信の可否を判断することにより、無線通信の衝突発生を回避するようにして無線パケット通信等の無線通信における通信品質の維持を図る手法である。
【0006】
この手法は、IEEE802.11規格において、複数の無線通信装置がパケットの衝突が生じないようにキャリアセンスしながらデータを送信するCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)というアクセス制御方法として規定されている。
しかしながら無線通信(無線ネットワーク)では、電波伝播距離や障害物の存在によってキャリアセンスが機能せず、通信の品質が維持できない(或いは、通信不能)状態が生じてしまう場合がある。
即ち、CSMA/CAを適用する無線通信装置相互間で、本来の通信の目的とされるデータ(パケットデータ)の送受信に先立って行うキャリアセンスによって当該相互の無線通信装置以外の周囲の装置がデータの送信を行っていないことを確認し、この上でデータの送信を開始するが、電波伝播距離や障害物の存在によってキャリアセンスできない場合が生じ得る。
【0007】
本発明の無線通信システムを表す図1を援用してこの現象を説明すれば、例えば、図示の配置にある4基の無線通信装置111,112,113,114について、これら各無線通信装置による通信可能領域がそれぞれ破線図示の各サークル131,132,133,134の如くであると、無線通信装置111と無線通信装置112との間では相互に通信可能である一方、無線通信装置111と無線通信装置113との間では相互にキャリアセンスできない状況になり得る。
【0008】
このような場合には、当該相互の無線通信装置111は、無線通信装置113が無線通信装置112と通信中であっても無線チャンネルが空いているものと判断してしまい、データを送信してしまうため、通信の衝突が発生して通信の品質が著しく低下するといった問題が発生する。
ここでは、このような問題を隠れ端末問題(Hidden Terminal Problem)と称し、隠れ端末問題を起こす端末(無線通信装置)を隠れ端末という。
【0009】
隠れ端末問題が発生し易い条件下で、非特許文献1に開示のような適応変調を適用することを考えた場合、隠れ端末問題による通信の失敗か、それとも、一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因する信号劣化よる通信の失敗なのかは判別がつかない。
このため、非特許文献1に開示の適応変調による場合には、通信の失敗を一律に信号劣化よる通信の失敗として扱い、通信速度が遅い変調方式への切換を繰り返してしまうことになる。
【0010】
ところが、通信速度が遅い変調方式を適用すると、同量のデータの送信に要する時間が延長される結果、隠れ端末の影響が及ぶ条件下にあるときには、隠れ端末問題を被る機会が増加してしまうため、上述のような信号の衝突に起因する通信失敗の発生確率は増大傾向を呈することになり、悪循環を招来してしまう。
尚、隠れ端末問題に対処する技術は既に幾つか提案されている。例えば、通信局(無線通信装置)毎に通信の優先順位を設定し、優先順位が上位となる通信局のフレーム間隔と下位の通信局のフレーム間隔の差を、RTS(Request To Send:送信要求)パケットを送信開始してからCTS(Clear To Send:確認通知)パケットを受信完了するまでに要する時間以上となるように設定するという提案がある(例えば特許文献1)。
【0011】
特許文献1の開示によれば、優先順位が下位となる通信局は、自局にとって隠れ端末となる通信局から先にRTSパケットが送信された場合であっても、これに応答したCTSパケットを受信できNAV(Network Allocation Vector)を設定し送信待機することができるので、正しく衝突を回避することができるとされている。
また、複数の通信チャネルが用意されている通信環境下において、通信局(無線通信装置)がランダム・アクセスを行なう無線通信システムにおいて、パケットを送信する通信局は、パケット単位で通信チャネルを割り当てるようにし、これにより、各通信局が制御局と被制御局の関係を有しないでCSMA(Carrier Sense Multiple Access:搬送波感知多重アクセス)などのキャリア検出若しくはメディア状態の監視に基づくランダム・アクセス動作を自律分散的に行なうことにより隠れ端末問題を回避して無線ネットワークを好適に構築することができるようにするといった提案もある(例えば特許文献2)。
【0012】
【特許文献1】特開2006−41627号公報(要約、段落0037〜段落0040等)
【特許文献2】特開2006−42076号公報(要約、段落0047〜段落0053等)
【非特許文献1】“IEEE 802.11 Rate Adaptation: A Practical Approach,” INRIA Research Report No. 5208, May 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
既述の非特許文献1における適応変調を適用した場合の問題は、この文献自体の開示においては技術課題として扱われず、上述の悪循環を惹起する虞は依然未解決である。
また一方、特許文献1および特許文献2の技術においても、通信品質の劣化が隠れ端末問題によるものか、それとも、一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因するものかを識別しようとする視点が無く、従って、非特許文献1における
上述の未解決の課題が特許文献1および特許文献2の技術を適用することによって解決されることはない。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、適応変調を適用しつつも、隠れ端末問題に起因する通信品質の劣化が助長される虞のない無線通信装置、無線通信システム、および、無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するべく、本願では次に列記するような装置および方法を提案する。
即ち、本発明による一つの無線通信装置は、自装置と直接的に無線通信する通信リンクを結ぶ他装置との通信における該当する無線通信装置を各特定するアドレス情報と前記無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを前記他装置と授受する無線通信手段と、
前記ステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持する記憶手段と、
前記記憶手段に保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定する衝突率算定手段と、
前記衝突率算定手段によって算定された衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する変調方式選択手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0015】
上記のような無線通信装置によれば、記憶手段に保持された上述のステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率が衝突率算定手段によって算定される。
上記算定された衝突率に基づいて、変調方式選択手段が、自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する。
従って、通信品質の劣化が隠れ端末に起因する場合にも一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因する場合と区別すること無く一律に適応変調を適用して、通信品質の劣化を増長してしまうといった問題が有効に回避される。
【0016】
また、上述のような無線通信装置は、その一態様として、前記衝突率算定手段が、自装置に係る各隣接装置のアドレスをそれぞれ表す一のアドレス情報と該自装置の一の隣接装置に係る各隣接装置のアドレスをそれぞれ表す他のアドレス情報とを前記記憶装置に保持された前記ステート・アナウンスメント・データに基づいて比較し、該比較結果から該自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定する隠れ端末判定手段を有するように構成される。
このような構成をとることにより、前記隠れ端末判定手段によって、前記ステート・アナウンスメント・データから判読された前記一および他のアドレス情報に基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定することが可能になる。
【0017】
また、上述のような無線通信装置は、他の態様として、前記衝突率算定手段が、自装置に係る各隣接装置の通信における単位時間当たりの受信占有率の値と該隣接装置に係る全ての隣接装置に係る通信における単位時間当たりの送信占有率の合算値とに基づいて前記隠れ端末の関係にある他装置との通信における衝突率を算定する演算手段を有するように構成される。
【0018】
このような構成をとることにより、前記演算手段によって、前記自装置に係る各隣接装置の通信における単位時間当たりの受信占有率の値と該隣接装置に係る全ての隣接装置に係る通信における単位時間当たりの送信占有率の合算値とに基づいて前記隠れ端末の関係にある他装置との通信における衝突率を算定することが可能になる。
従って、該算定された衝突率を、自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する場合の選択基準の因子として適用することができ、適切な変調方式を選択がすることが可能になる。
【0019】
また、上述のような無線通信装置は、更に他の態様として、前記変調方式選択手段が、前記衝突率算定手段によって算定された衝突率のデータと該当する前記他装置毎の通信に係る成功の統計データおよび失敗の統計データの少なくとも一方とに基づいて前記通信リンクに適用する変調方式を選択するように構成される。
このような構成をとることにより、前記衝突率算定手段によって算定された衝突率のデータと該当する前記他装置毎の通信に係る成功の統計データおよび失敗の統計データの少なくとも一方とに基づいて、前記変調方式選択手段が前記通信リンクに適用する変調方式を選択するため、隠れ端末に起因して通信品質の劣化が生じている場合にも、一律に適用変調方式を適用してしまうことによる劣化の助長が回避される。
【0020】
一方、本発明の無線通信システムは、直接的に無線通信する通信リンクを結ぶ複数の無線通信装置を含んで構成され、前記複数の無線通信装置は、
自装置および自装置と前記通信リンクを結ぶ無線通信装置を各特定するアドレス情報と前記無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを該当する前記無線通信装置と授受する無線通信手段と、
前記ステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持する記憶手段と、
前記記憶手段に保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定する衝突率算定手段と、
前記衝突率算定手段によって算定された衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する変調方式選択手段と、
をそれぞれ備えていることを特徴とする。
【0021】
上述のような無線通信システムでは、無線通信装置の記憶手段に保持された上述のステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率が衝突率算定手段によって算定される。
上記算定された衝突率に基づいて、変調方式選択手段が、自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する。
従って、通信品質の劣化が隠れ端末に起因する場合にも一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因する場合と区別すること無く一律に適応変調を適用して、通信品質の劣化を増長してしまうといった問題が有効に回避される。
【0022】
また、本発明の無線通信システムは、通信失敗の発生原因が隠れ端末によるものか信号劣化によるものかを判別する判別手段と、該判別結果に応じて、最適な変調方式を選択する選択手段とを含んで構成される。
上記無線通信システムでは、前記判別手段が、通信失敗の発生原因が隠れ端末によるものか信号劣化によるものかを判別し、前記選択手段が、該判別結果に応じて、最適な変調方式を選択する。
このため、通信品質の劣化が隠れ端末に起因する場合にも一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因する場合と区別すること無く一律に適応変調を適用して、通信品質の劣化を増長してしまうといった問題が有効に回避される。
【0023】
また一方、本発明の無線通信方法は、直接的に無線通信する通信リンクを結ぶ複数の無線通信装置を含んで構成された無線通信システムの各個の無線通信装置間で自装置および自装置と前記通信リンクを結ぶ他装置を各特定するアドレス情報と前記無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを授受し、
該授受して取得したステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持し、
該保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定し、
該算定した衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択することを特徴とする
上記無線通信方法では、上述のステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定し、該算定した衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する。
【0024】
従って、通信品質の劣化が隠れ端末に起因する場合にも一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因する場合と区別すること無く一律に適応変調を適用して、通信品質の劣化を増長してしまうといった問題が有効に回避される。
また、本発明の無線通信方法は、通信失敗の発生原因が隠れ端末によるものか信号劣化によるものかを判別し、該判別結果に応じて、最適な変調方式を選択するようにしたことを特徴とする。
上記無線通信方法では、通信失敗の発生原因が隠れ端末によるものか信号劣化によるものかを判別し、該判別結果に応じて、最適な変調方式を選択する。
このため、通信品質の劣化が隠れ端末に起因する場合にも一般的な電波伝播距離や障害物の存在に起因する場合と区別すること無く一律に適応変調を適用して、通信品質の劣化を増長してしまうといった問題が有効に回避される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、適応変調を適用しつつも、隠れ端末問題に起因する通信品質の劣化が助長される虞のない無線通信装置、無線通信システム、および、無線通信方法が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳述することにより本発明を明らかにする。尚、以下に参照する図面においては、便宜上、説明の主題となる要部は適宜誇張し、要部以外については適宜簡略化し乃至省略されている。
(本発明の無線通信システム)
図1は、本発明の一つの実施の形態としての無線通信システムの構成を表す概念図である。
【0027】
この無線通信システムは、複数(ここでは説明の便宜上4基)の無線通信装置111、112、113、および、114を含んで構成され、各無線通信装置111〜114間は無線通信リンクで結ばれている。
即ち、無線通信装置111および112間は無線通信リンク121で結ばれ、以下同様に、無線通信装置112および113間は無線通信リンク122で、無線通信装置112および114間は無線通信リンク123で、無線通信装置114および111間は無線通信リンク124でそれぞれ結ばれている。
【0028】
上述の各無線通信リンクには、混信を避けるために通信のリソースが割り当てられるが、この無線通信システムでは、携帯電話における基地局のような制御局を設けず、各無線通信装置111、112、113、および、114は、制御局と被制御局といった関係をとらず、互いに自律的に送信の可否を判断する。
尚、各無線通信装置111、112、113、および、114は、それらの仕様を同じくする同型の無線通信装置であるを要さず、図2を参照して後述するような機能を充足する限りの種々の通信装置であり得る。
また、以降の説明において、各無線通信装置111、112、113、および、114に関し、直接的に通信を行う無線通信装置同士について、そのうちの一のものから他のものを見た関係を、適宜、隣接無線通信装置という。更に、一の無線通信装置が隣接無線通信装置との通信に適用する無線通信リンクを、適宜、隣接無線リンクという。
【0029】
(本発明の無線通信装置)
図2は、図1の無線通信システムを構成するに適合する、本発明の無線通信装置を表す機能ブロック図である。
図2においては、図1における各無線通信装置111、112、113、および、114が一般的に各充足するべき構成を機能ブロック図として表記しており、 既述のように、各個の具体的な無線通信装置111、112、113、および、114は、それらが同型同仕様の装置であることを要するものではない。
【0030】
図2では、これらの無線通信装置に代表的に200の参照符号を附して示す。
この無線通信装置200は各後述する関係を有する次の各部を備えている。即ち、無線通信部201、記憶部202、衝突率判定部203、および、変調方式選択部204を備えている。
無線通信部201は、自装置と直接的に無線通信する通信リンク(隣接無線リンク)を結ぶ他装置との通信における該当する無線通信装置(隣接無線通信装置)を各特定するアドレス情報と上述の無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを上述の他装置と授受する。
【0031】
尚、ステート・アナウンスメントについては、後に図面を参照して更に詳述するが、無線通信部201でのステート・アナウンスメントの授受に係る通信は、本実施の形態では、所定の周期で繰り返し実行される。
また、無線通信部201は、通信の状態を監視して、その状態を表す通信状態の履歴情報(例えば、通信が成功したか失敗したかを表す情報を含む通信の品質に関する統計的情報)を形成する。
【0032】
記憶部202は、無線通信部201を通して取得したステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持する。尚、無線通信部201で形成された上述の通信状態の履歴情報も、このステート・アナウンスメント・データの一部として保持する。
本実施の形態では、ステート・アナウンスメント・データは、図面を参照して後述するようなテーブル形式で保持される。
【0033】
衝突率判定部203は、記憶部202に保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を自己の隠れ端末判定部203aで判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を自己の演算部203bで算定する。
変調方式選択部204は、衝突率算定部203によって算定された衝突率に基づいて(この衝突率を選択基準の因子として)自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する。
【0034】
(ステート・アナウンスメント)
図3は、ステート・アナウンスメントについて説明するための概念図である。
この図3では、ステート・アナウンスメントとして図2の無線通信部201を通して授受されるパケットデータのフレームフォーマットの一部が表されている。
尚、実際のこの種の通信においては、フレームIDやパケット長等々の情報要素等の授受が伴うが、これらについては説明を簡潔にするために表記が省略されている。
図3に表記のフレームフォーマットには、当該ステート・アナウンスメントの送信元たる無線通信装置を表すアドレス情報(図3において「送信ノード情報」と表記のもの)が含まれる。
【0035】
この場合のアドレス情報によって表されているノードとは、例えば無線通信装置111(図1)がこれに該当する。
更に、本例のステート・アナウンスメントには、送信データ量を表す指標(本例では、通信期間における単位時間に対するデータ送信時間の占有率を用い、図3において「送信時間割合」と表記)、および、受信データ量を表す指標(本例では、通信期間における単位時間に対するデータ受信状態にある時間の占有率を用い、図3において「受信時間割合」と表記)が含まれる。
【0036】
茲に「受信時間割合」における占有率は、上述の隣接無線通信装置が自機(無線通信装置111)宛てに送信されてくるデータの受信に関する時間のみならず、他機宛の送信が行われている時間をも含む時間の占有率であるとする。
また、「送信ノード情報」によって表されるノード(例えば図1の無線通信装置111)に対する上述の隣接無線通信装置に各該当するノードを表すアドレス(図3において「隣接ノードアドレス#1」、「隣接ノードアドレス#2」…「隣接ノードアドレス#n」と表記のもの)がステート・アナウンスメントに含まれる。
【0037】
(ステート・アナウンスメント・データテーブル)
図4は、ステート・アナウンスメント・データによるテーブル(ステート・アナウンスメント・データテーブル)の例を表す図である。このテーブルが、既述のように記憶部202に保持される。
図4のステート・アナウンスメント・データテーブルは、n+1基の無線通信装置(自装置および上述の隣接無線通信装置)の情報を含む。
図4において「隣接無線通信装置アドレス」は自装置および自装置と直接的に通信を行う各無線通信装置(隣接無線通信装置)を表すアドレスである。因みにNODE_0が自装置であり、NODE_1が一つの隣接無線通信装置である。
NODE_0〜NODE_nと表記されたこれら各無線通信装置毎に、各行における「隣接無線通信装置アドレス」の表記(NODE_0〜NODE_n)より右の各欄にそれぞれ図示のようなデータが表記されるが、これら各データは次のように定義される。
【0038】
「単位時間当たりの送信率」は、通信時間における単位時間に対するデータ送信時間の占有率である。
「単位時間当たりの受信率」は、通信時間における単位時間に対するデータ受信状態にある時間の占有率であり、自装置宛てに送信されてくるデータの受信に関する時間のみならず、他機宛の送信が行われている時間をも含むデータ受信状態にある時間の占有率である。
「隣接ノードアドレス」は、左端の欄に表記された各無線通信装置から見た隣接無線通信装置を表すアドレスである。
【0039】
「推定衝突率」は、図2を参照して説明した衝突率判定部203によって算定された隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率である。
「送信成功数」は、所定の基準時点以降の通信における通信の成功回数の履歴(例えば塁算値のような統計的データ)である。
「送信失敗数」は、上記基準時点以降の通信における通信の失敗回数の履歴(例えば塁算値のような統計的データ)である。
「採用変調方式」は、図2を参照して説明した変調方式決定部204によって選択された変調方式である。
【0040】
上述のように「推定衝突率」は、衝突率判定部203によって隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率として算定され、この結果であるデータとして格納されるものである。
この衝突率判定部203は本発明の無線通信装置の要素としての衝突率算定手段を構成するものであり、衝突率判定部203における「推定衝突率」の算定は次のようにして実行される。
【0041】
即ち、衝突率判定部203は隠れ端末判定手段203aを有し、この隠れ端末判定手段203aが、自装置である無線通信装置に係る各隣接無線通信装置の「隣接ノードアドレス」と該一つの無線通信装置の隣接無線通信装置に係る各隣接無線通信装置の「隣接ノードアドレス」とを比較して、後者の隣接無線通信装置の「隣接ノードアドレス」としてのみ登録されている無線通信装置を隠れ端末の関係にあるものとして判定する。この判定については、例示によって後に詳述する。
【0042】
更に、衝突率判定部203は演算部203bを有し、この演算部203bが、図4に例示されたテーブルにおける「隣接無線通信装置アドレス」として表記された無線通信装置(隣接無線通信装置)ごとに、該当の無線通信装置の「単位時間当たりの受信率」と、NODE_0つまり自装置に関する「単位時間当たりの送信率」の値と他の既知の(隠れ端末以外の)無線通信装置の隣接無線通信装置に関する「単位時間当たりの送信率」の合算値との比較に基づいて、隠れ端末判定手段203aによって隠れ端末であると判定されたノードによって発生する衝突率を算定する。この算定については、例示によって後に詳述する。
【0043】
一方、上述のように「採用変調方式」は、変調方式決定部204によって選択される。
即ち、変調方式決定部204は本発明の無線通信装置の要素としての変調方式選択手段を構成するものであり、上述の衝突率算定手段によって算定された衝突率のデータと該当する装置毎の通信に係る成功の統計データおよび失敗の統計データの少なくとも一方とに基づいて通信リンクに適用する変調方式を選択する。
【0044】
より具体的には、「送信失敗数」を「送信成功数」と「送信失敗数」との合算値で除した送信エラー率に関する統計情報に基づいて、衝突率判定部203によって得られた「推定衝突率」が現在の送信エラー率より高ければ変調方式は変更せず、推定衝突率が現在の送信エラー率より低ければ、レートが低くエラーに強い変調方式を選択するようにして通信リンクに適用する変調方式を選択する。
尚、以上において、図3を参照して説明したステート・アナウンスメントは、隣接情報テーブルの1行目に含まれる、自無線通信装置アドレス、および単位時間当たりの送信率、および単位時間当たりの受信率、および二行目以下の隣接無線通信装置アドレス(NODE_1〜NODE_n)の情報をコピーする操作によって生成される。
【0045】
(動作シーケンス)
図5は、本発明の無線通信システムの動作を表すシーケンス図である。図5では、無線通信システムにおける各無線通信装置の配置は図1の状態にあるものと仮定している。
また、現在時点において、細線の矢線で模式的に示されているように、無線通信装置111は、無線通信装置112とデータ通信を行っており、更に、無線通信装置113および114が無線通信112無線通信装置112とデータ通信を行っているものとする。
この場合、太線の矢線で模式的に示されているように、無線通信装置111から無線通信装置112および114にステート・アナウンスメントが送信され、更に、無線通信装置113および114から無線通信装置112にステート・アナウンスメントが送信され、無線通信装置112は無線通信装置111および113にステート・アナウンスメントを送信する。
【0046】
上述のステート・アナウンスメントの授受については、後に図7を参照して更に詳述する。
図5の例では、無線通信装置111は、ステート・アナウンスメントの授受に次いで、衝突率の算定、および、変調方式の選択を実行する。
無線通信装置111の無線通信部201(図2)は、既述のように、通信状態の履歴情報を上述の記憶部201に所定のテーブル形式で保持している。
【0047】
(記憶部に保持されるテーブルの例)
図6は、図5の動作の過程で無線通信装置111において形成され無線通信装置111の記憶部202に保持されるテーブルの例を表す図である。
図6のテーブルにおける各データの項目は図5を参照して既述のものと同様である。
図示のとおり、そのデータ登録領域の1行目には、自装置である無線通信装置111を表すアドレス101aが左端の欄に登録され、これより右の順次の欄には該当する各データが登録される。
即ち、テーブルの1行目のデータには、無線通信装置111に係る、図4を参照して既述の、「単位時間当たりの送信率」TX_aと「単位時間当たりの受信率」RX_aの各データが登録される。
【0048】
また、テーブルの2行目および3行目には、無線通信装置112および113の「送信成功数」(SUCC_b;SUCC_c)および「送信失敗数」(FAIL_b;FAIL_c)ならびに「採用変調方式」(MOD_b;MOD_c)がそれぞれ登録される。
尚、隣接無線通信装置の発見方法としては、IEEE 802.11に規定された無線LANで一般的に用いられている報知情報や隣接ノード発見プロトコルを適用してもよく、また、既述のようなステート・アナウンスメントに依拠する方法を適用してもよい。
【0049】
図7は、図5において太線の矢線で図示されたステート・アナウンスメントの授受における各ステート・アナウンスメントの内容を表す概念図である。
図7(a)は、無線通信装置111から送信したステート・アナウンスメントを表している。
図7(b)は、無線通信装置111が無線通信装置112から受信したステート・アナウンスメントを表している。
図7(c)は、無線通信装置111が無線通信装置114から受信したステート・アナウンスメントを表している。
図5を参照して上述のように、無線通信装置112は、自装置の隣接無線通信装置に該当する無線通信装置113および114とステート・アナウンスメントの授受を行っている。
ここで、新規の道の無線通信装置からステート・アナウンスメントを受信した場合には、記憶部202に保持されたテーブルに新たなエントリを加えるように更新する。
【0050】
図8は、更新されたステート・アナウンスメント(テーブル)の例を表す概念図である。
図8のテーブルでは、例えば、無線通信装置112から受信した図7(b)のステート・アナウンスメントに基づいて、無線通信装置112に関する「単位時間当たりの送信率」および「単位時間当たりの受信率」としてTX_bおよびRX_bをそれぞれ加入す
る。
更に、無線通信装置112の「隣接ノードアドレス」として、無線通信装置111、113、および114を表すアドレス101a、101c、および、101dをそれぞれ加入する。
また、無線通信装置114から受信した図7(c)のステート・アナウンスメントも図8のテーブルに反映される。
無線通信装置111は、定期的に、または、所要に応じて、例えばステート・アナウンスメントの受信のタイミングで、衝突率判定部203(図2)において、各該当する隣接無線通信装置毎に衝突率を推定する。
【0051】
(衝突率の算定処理の例)
図9は、無線通信装置111が通信を行う場合の衝突率の推定に係る処理を表すフローチャートである。
図9のフローチャートにおける衝突率の算定は、無線通信装置111が無線通信装置112に送信する場合の衝突率に関するものである。
先ず、図8のテーブルにおけるステート・アナウンスメント・データのうち「隣接ノードアドレス」を参照して(ステップS901)、隠れ端末の存在を判定する(ステップS902)。
【0052】
ステップS902における隠れ端末の判定は、次のようにして実行する。即ち、無線通信装置112のエントリの隣接ノードアドレスが無線通信装置111、113、および、114であり、自無線通信装置である111のエントリにある隣接無線通信装置が112、および、114であることから、無線通信装置113が無線通信装置111にとって未知の無線通信装置、つまり隠れ端末であることを割り出す。
【0053】
ステップS902での処理結果は、無線通信装置111が無線通信装置112にデータを送るときに、無線通信装置113が無線通信装置112にデータを送ると衝突が発生することを意味する。
次いで、無線通信装置111および112に共通の隣接無線通信装置を判別する(ステップS903)。このステップS903では、図8のテーブルを参照することによって、隣接無線通信装置114が、無線通信装置111および112に共通の隣接無線通信装置であると判別される。
【0054】
更に、無線通信装置111にとって既知の無線通信装置112の各隣接無線通信装置、つまり無線通信装置111および114の「単位時間当たりの送信率」の合計を図8のテーブルによるステート・アナウンスメント・データから算定する(ステップS904)。
ステップS904の算定について次に説明を加える。
無線通信装置112の「単位時間当たりの受信率」RX_bは、無線通信装置112の隣接無線通信にそれぞれ該当する無線通信装置111、113、および、114の「単位時間当たりの送信率」TX_a、TX_c、および、TX_dの合計に等しい(RX_b=TX_a+TX_c+TX_d)。
【0055】
なぜなら「単位時間当たりの受信率」には、既述の各隣接無線通信装置が自無線通信装置112宛てに送ったデータを受信するのに用いた割合だけではなく、各隣接無線通信装置が自無線通信装置112以外の第三者である他無線通信装置宛にデータを送った時間分の比率をも含むからである。
以上から、ステップS904の算定では、無線通信装置111にとっての既知の無線通信装置112の各隣接無線通信装置の単位時間当たりの送信率の合計を図8のテーブルデータに基づいて計算する。この例では、無線通信装置114の「単位時間当たりの送信率」Tx_dと自無線通信装置111の「単位時間当たりの送信率」TX_aとの合計値となる。
【0056】
次いで、ステップS902で隠れ端末であると判定された無線通信装置113の「単位時間当たりの送信率」を算定する(ステップS905)。
このステップS905では、無線通信装置111にとって既知の無線通信装置112の各隣接無線通信装置の「単位時間当たりの送信率」の合計値(ステップS904で算出された値)を、無線通信装置112の「単位時間当たりの受信率」RX_bから引くことによって、上述の「単位時間当たりの送信率」が算定される。
【0057】
この場合、仮に、隠れ端末が複数存在すると、これらの隠れ端末による単位時間当たりの送信におけるトラフィック量が算定される。
この隠れ端末の「単位時間当たりの送信率」が、隠れ端末からの送信と衝突する確率、即ち、推定衝突率(RX_b−TX_a−TX_d)となる。
この例では、無線通信装置111が無線通信装置112に送信する場合の推定衝突率である。無線通信装置111が無線通信装置114に送信する場合の推定衝突率は、無線通信装置114の隣接無線通信装置には、自装置である無線通信装置111にとって未知のものはなく、従って隠れ端末は存在せず、推定衝突率は0となる。
以上、ステップS905までに判別され、ないし、算定された結果を、図8のテーブルに反映させる(ステップS906)。
図10は図9のフローチャートにおける処理結果を反映させたステート・アナウンスメント・データテーブルを表す図である。
【0058】
(変調方式の選択処理例)
図11は、無線通信装置の変調方式選択部204において実行される変調方式を選択する処理を表すフローチャートである。
次に、図10を適宜参照して図11のフローチャートに沿って、変調方式を選択する処理について説明する。
先ず、通信の統計値(通信に関するデータの履歴情報)、即ち図10のテーブルにおけるステート・アナウンスメント・データから、隠れ端末が存在し得る条件下での送信失敗率を算定する(ステップS1101)。
本例におけるステップS1101では、無線通信装置111から無線通信装置112に送信する場合、統計上の送信失敗率=送信失敗数/(送信成功数+送信失敗数)を算定する。
【0059】
次いで、送信失敗率と推定衝突率を比較する(ステップS1102)。
ステップS1102の比較結果に応じて変調方式を選択する(ステップS1103)。
ステップS1103における選択は、送信失敗率が推定衝突率より低い場合は、通信失敗が隠れ端末による衝突によるものと判断して変調方式を変更せず、逆に送信失敗率が推定衝突率より高い場合には、周囲の状況変化などによる通信品質の悪化と判断して変調方式を目下適用している方式よりレートが低く且つノイズ耐性が高いものに変更するようにして実行される。
【0060】
また、送信失敗率から推定衝突率を差し引くことで伝播によるエラー率を算出し、伝播によるエラー率をもとに非特許文献1に記載のような変調方式を決定することとしても良い.
既述のように、非特許文献1に開示の従来の技術では、通信の成功および失敗に関する統計をとり、この統計に基づいて、失敗が所定の閾値よりも多い場合にはレートが低く且つノイズ耐性が高いものに変更するようなアルゴリズムが適用される。
【0061】
この場合、通信の失敗が隠れ端末に起因するか否かを識別することがなく、一律に周囲の状況変化などによる失敗として扱うため、既述のように隠れ端末による信号の衝突に起因する通信失敗の発生確率は増大傾向を呈することになり、悪循環を招来してしまう。
これに対し、本発明によれば、通信の失敗が隠れ端末に起因する場合にも一律に送信速度(レート)の低い変調方式に漸次切換えるといったことをしないため、従来の技術におけるような悪循環を招来してしまう虞は一掃される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、一般的な通信ネットワークのほか、無線アドホックネットワークや無線メッシュネットワーク、マルチセルラーネットワーク等のマルチホップ通信にも適用可能であり、特に、隠れ端末問題を惹起する虞のある条件下で適用されて、データ伝送効率を確保するために有効である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一つの実施の形態としての無線通信システムの構成を表す概念図である。
【図2】図1の無線通信システムを構成するに適合する、本発明の無線通信装置を表す機能ブロック図である。
【図3】ステート・アナウンスメントについて説明するための概念図である。
【図4】ステート・アナウンスメント・データによるテーブル(ステート・アナウンスメント・データテーブル)の例を表す図である。
【図5】本発明の無線通信システムの動作を表すシーケンス図である。
【図6】図5の動作の過程で無線通信装置において形成され無線通信装置の記憶部に保持されるテーブルの例を表す図である。
【図7】図5において太線の矢線で図示されたステート・アナウンスメントの授受における各ステート・アナウンスメントの内容を表す概念図である。
【図8】更新されたステート・アナウンスメント(テーブル)の例を表す概念図である。
【図9】無線通信装置が通信を行う場合の衝突率の推定に係る処理を表すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおける処理結果を反映させたステート・アナウンスメント・データテーブルを表す図である。
【図11】無線通信装置の変調方式選択部において実行される変調方式を選択する処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
111,112,113,114…無線通信装置
121,122,123,124…無線通信リンク
131,132,133,134…通信可能な領域
200…無線通信装置
201…無線通信部
202…記憶部
203…衝突率判定部
204…変調方式選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置と直接的に無線通信する通信リンクを結ぶ他装置との通信における該当する無線通信装置を各特定するアドレス情報と前記無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを前記他装置と授受する無線通信手段と、
前記ステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持する記憶手段と、
前記記憶手段に保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定する衝突率算定手段と、
前記衝突率算定手段によって算定された衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する変調方式選択手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記衝突率算定手段は、自装置に係る各隣接装置のアドレスをそれぞれ表す一のアドレス情報と該自装置の一の隣接装置に係る各隣接装置のアドレスをそれぞれ表す他のアドレス情報とを前記記憶装置に保持された前記ステート・アナウンスメント・データに基づいて比較し、該比較結果から該自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定する隠れ端末判定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記衝突率算定手段は、自装置に係る各隣接装置の通信における単位時間当たりの受信占有率の値と該隣接装置に係る全ての隣接装置に係る通信における単位時間当たりの送信占有率の合算値とに基づいて前記隠れ端末の関係にある他装置との通信における衝突率を算定する演算手段を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記変調方式選択手段は、前記衝突率算定手段によって算定された衝突率のデータと該当する前記他装置毎の通信に係る成功の統計データおよび失敗の統計データの少なくとも一方とに基づいて前記通信リンクに適用する変調方式を選択することを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
直接的に無線通信する通信リンクを結ぶ複数の無線通信装置を含んで構成された無線通信システムであって、前記複数の無線通信装置は、
自装置および自装置と前記通信リンクを結ぶ無線通信装置を各特定するアドレス情報と前記無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを該当する前記無線通信装置と授受する無線通信手段と、
前記ステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持する記憶手段と、
前記記憶手段に保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定する衝突率算定手段と、
前記衝突率算定手段によって算定された衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択する変調方式選択手段と、
をそれぞれ備えていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
通信失敗の発生原因が隠れ端末によるものか信号劣化によるものかを判別する判別手段と、該判別結果に応じて、最適な変調方式を選択する選択手段とを含んで構成されたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
直接的に無線通信する通信リンクを結ぶ複数の無線通信装置を含んで構成された無線通信システムの各個の無線通信装置間で自装置および自装置と前記通信リンクを結ぶ他装置を各特定するアドレス情報と前記無線通信における単位時間当たりの送信および受信の占有率を表す通信状態情報とを含むステート・アナウンスメントを授受し、
該授受して取得したステート・アナウンスメントによって形成されるステート・アナウンスメント・データを保持し、
該保持されたステート・アナウンスメント・データに基づいて自装置に対して隠れ端末の関係にある他装置の存在の有無を判定し該判定結果に応じて当該隠れ端末と自装置との通信に係る衝突率を算定し、
該算定した衝突率に基づいて自装置と当該他装置との通信リンクに適用する変調方式を選択することを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
通信失敗の発生原因が隠れ端末によるものか信号劣化によるものかを判別し、該判別結果に応じて、最適な変調方式を選択するようにしたことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−177481(P2009−177481A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13820(P2008−13820)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】