説明

無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法

【課題】複数の変調方式を用いる通信システムにおいても通信速度の低下が少ない、複数変調方式共存の無線通信システム実現する無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供すること。
【解決手段】変調方式決定機能ブロック400は、第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調するQPSK復調器420と、第2のデータ列を生成する第2の変調方式による変調信号を復調するASK復調器410と、基準用のデータ列を生成する基準データ生成部430と、第1及び第2のデータ列と基準用のデータ列を比較するための相関器441,442と、データ列の比較による比較結果が所定値以上であれば第1の変調方式を、前記比較結果が所定値未満であれば第2の変調方式を特定する比較回路443とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法に関し、特に、通信に振幅変調信号と位相変調信号の両方を用いて通信を行う無線通信システムにおける変調方式の特定の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電話や無線LANと比べ、より高速、かつ携帯電話等のポータブル機器への搭載が可能な超低消費電力の無線方式としてUWB(Ultra Wide Band)が注目を浴びている。現在使われている無線システムでは数十MHz程度の周波数帯域を用いて通信を行うのに対し、UWB通信は数百MHz〜数GHzの帯域を用いて通信を行う無線システムであり、2002年に米FCCから、Part15で定められたPC(Personal Computer)等の不要輻射レベル以下であれば、3.1〜10.6GHzの周波数帯域を用いた短パルス通信をUWB通信として許容する骨子の法制化が発表されことにともない、検討が活発に行われている。
【0003】
UWB無線システムの実現方式としては、短パルス通信を含むシングルキャリア通信が、低消費電力化が可能な方式として有力視されている。シングルキャリア通信で用いられる変調方式としては、大きく振幅変調と位相変調がある。振幅変調は信号の強弱にデータを重畳するため、発振器に対する要求性能が低く、安価かつ低消費電力での実現が見込まれる。また、位相変調は信号の位相にデータを重畳するため、低位相雑音の発振器が必要であるなど、振幅変調と比べ、消費電力は大きくなる。しかしながら、位相変調は、振幅変調では必要な、0,1判定しきい値制御による性能劣化がなく、また、多値の位相変調を用いれば更に高速の伝送が実現できるといった高機能化に向くという利点がある。
【0004】
このため、同一の周波数帯を用い、振幅変調を行うUWB無線装置と位相変調を行うUWB無線装置が混在する利用環境となることが想定され、この両方の通信方式を特定し、使い分けるUWB無線装置の実現が望まれる。
【0005】
変調方式を特定する方法として、特許文献1に記載のデータ伝送方法がある。
【0006】
図11は、特許文献1に記載のデータ伝送方法の通信フレームの構成を示す図、図12は、図11のセンタ装置の構成を示すブロック図である。
【0007】
図11において、フレーム構成は、π/4シフトQPSKにより伝送するようにされ、且つフレーム同期パターン(SYNC)3及び制御部(CONT)4から成るようにされ、すべての端末装置が受信する共通部1と、通常はπ/4シフトQPSKで、高速伝送では16QAMで伝送するようにされ特定の端末装置のみが受信すべき通信情報部(INFO)2から構成されている。通信情報部2におけるπ/4シフトQPSKあるいは16QAMのどちらの場合でも、シンボルレートは共通部1と同じとすることが望ましい。
【0008】
図12において、センタ装置10は、送受信データの交換を行ったり、データや制御情報などを入出力するデータ処理部11と、データ処理部11からの情報を基に下りフレームをベースバンドで組み立てるフレーム生成部12と、第1の切り替えスイッチ13と、16QAM変調器14と、π/4シフトQPSK変調器15と、第2の切り替えスイッチ16と、送信アンテナ17と、受信アンテナ18と、16QAM復調器19と、π/4シフトQPSK復調器20と、第3の切り替えスイッチ21と、上りフレームのフレーム同期をとり、各種情報をフレームから取り出してデータ処理部11へ渡すフレーム分解部22とから構成されている。
【0009】
このデータ伝送方法では、同期を行うSYNCと通信調整を行うCONTに全ての無線装置で共通な変調方式を用い、受信側でこれを復調して適宜SWで所定の変調方式の復調器(図中ではQPSKと16QAM)に切り替える。
【特許文献1】特開平11−32096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の変調方式判定方法にあっては、送信フレームに共通の変調方式を用いたデータ列を用いているため、プリアンブル、通信調整部といった、いわゆる物理ヘッダが変調方式ごとに異なる性能を求められているにもかかわらず、全ての装置での受信を可能にするために、最も長いデータ長とする必要があり、さらに個別の変調方式に必要な物理ヘッダ部が別途必要となるため、実効的な通信速度が低下するといった問題がある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数の変調方式を用いる通信システムにおいても通信速度の低下が少ない、複数変調方式共存の無線通信システムを実現する無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信装置は、複数の変調方式を用いる無線通信において受信信号の変調方式を決定する無線通信装置であって、第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調する第1の復調手段と、基準用のデータ列を生成する基準データ生成手段と、前記第1のデータ列と前記基準用のデータ列を比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果が所定値以上であれば第1の変調方式を、前記比較結果が所定値未満であれば第2の変調方式を特定する判定手段とを備える構成を採る。
【0013】
本発明の無線通信システムは、複数の変調方式で通信可能なサーバ装置と、少なくとも1つの変調方式で通信を行うクライアント装置とから構成される無線通信システムであって、前記サーバ装置及び/又は前記クライアント装置は、上記無線通信装置から構成される構成を採る。
【0014】
本発明の無線通信方法は、複数の変調方式を用いる無線通信において受信信号の変調方式を決定する無線通信方法であって、受信信号を取得するステップと、第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調する第1の復調ステップと、第2のデータ列を生成する第2の変調方式による変調信号を復調する第2の復調ステップと、復調により得られた第1及び第2のデータ列を比較して、受信信号の変調方式を判定するステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の変調方式を用いる通信システムにおいても、通信速度の低下が少ない、複数変調方式共存の無線通信システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るUWB無線通信システムを構成する各無線装置の構成を示す図である。本実施の形態は、2つの変調方式を用いる無線通信としてASK(Amplitude Shift Keying)変調及びQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調装置に適用した例である。
【0018】
図1において、UWB無線通信システムは、各変調方式を用いた無線装置からなり、ASK変調方式で通信を行うASK変調装置100と、QPSK変調方式で通信を行うQPSK変調装置200と、ASK変調方式とQPSK変調方式のいずれの変調方式でも通信可能なASK/QPSK変調装置300とから構成される。
【0019】
ASK変調装置100は、搬送波信号源111、ASK変調部112及び送信アンテナ113からなる送信系110と、受信アンテナ121、エンベロープ検波部122及びMod/Demod部123からなる受信系120とを備えて構成される。Mod/Demod部123は、送信データ及び受信データを変復調する。
【0020】
QPSK変調装置200は、搬送波信号源211、π/2移相器212、ミキサ213,214及び送信アンテナ215からなるQPSK変調部210と、受信アンテナ221、π/2移相器222、ミキサ223,224及びMod/Demod部225からなるQPSK復調部220とを備えて構成される。
【0021】
ASK変調装置100及びQPSK変調装置200は、ASK又はQPSKといった単一の変調信号のみを送受信するように構成されている。
【0022】
上記各無線装置に対し、例えばコンテンツサーバとなるASK/QPSK変調装置300は、複数の変調方式で送信された信号を受信し、適宜変調方式を切り替えて返信することが必要であるため、ASK変調部とQPSK変調部の機能を共に有する構成となっている。異なる変調方式の機能を共に有するためには、例えば、ASK変調部とQPSK変調部とを個別に備える構成や、その機能ブロックの一部を共有する方法がある。変調方式を切り替えるためには、受信した信号の変調方式を特定する必要があり、この変調方式決定方法については図2より後述する。
【0023】
図2は、UWB無線システムの変調方式決定機能の構成を示すブロック図である。
【0024】
図2において、変調方式決定機能ブロック400は、ASK復調器410、QPSK復調器420、基準データ生成部430、及び比較器440を備え、比較器440は、相関器441,442及び比較回路443から構成される。
【0025】
変調方式決定機能ブロック400では、受信したデータはASK復調器410とQPSK復調器420に入力され、それぞれの変調信号であると仮定して復調が行われる。ASK復調器410とQPSK復調器420により復調されたデータは、比較器440に入力される。
【0026】
基準データ生成部430は、変調方式に係わらない、ある装置の基準用のデータ列を生成する。例えば、後述する図7に示すパケットのデータを基にデータ列を生成することも可能である。
【0027】
比較器440は、2つの復調データそれぞれについて、基準データ生成部430で生成された基準となるデータ列との相関を相関器441,442で取り、相関結果は比較回路443で比較される。この比較結果を基に、ASK復調とQPSK復調の結果のいずれの相関値が高い、つまりはどちらの復調結果が確からしいということで変調方式を決定することができる。
【0028】
このように、変調方式決定機能ブロック400は、第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調するQPSK復調器420と、第2のデータ列を生成する第2の変調方式による変調信号を復調するASK復調器410と、基準用のデータ列を生成する基準データ生成部430と、第1及び第2のデータ列と基準用のデータ列を比較するための相関器441,442と、データ列の比較による比較結果が所定値以上であれば第1の変調方式を、比較結果が所定値未満であれば第2の変調方式を特定する比較回路443とを備える。
【0029】
図3は、PSK/OOK(On Off Keying)復調ブロックの具体的構成を示す図である。
【0030】
図3において、PSK/OOK変調ブロックは、受信チャネルインターフェースである受信フロントエンド510、搬送波信号源511、π/2移相器512、ミキサ513,514、LPF515,516、PSK判定部(PSK decision unit)517、OOK判定部(OOK decision unit)518、電力検出部(PWR detector)519、及びPCU(Programmable Control Unit)520を備えて構成される。
【0031】
インパルス無線通信システムに用いられる変調方式の一つとしてOOKが知られている。OOKは振幅変調の一種で2値のデジタル信号符号「1」,「0」に対し、インパルス信号の有無(ON/OFF)を対応させる変調方式である。OOK変調信号を復調するには受信信号の有無を判定すればよく、一般的には受信信号の振幅値を所定の閾値と比較し、振幅値が閾値よりも大きい場合に符号「1」と判定し、振幅値が閾値より小さい場合に符号「0」と判定してデジタル信号符号を検出する手法を用いるため、適切な受信品質を得るためには閾値を適切な値に設定することが重要となる。
【0032】
受信された信号は、受信フロントエンド510に入力され、受信電力や搬送波周波数成分の除去が行われた後、この受信信号は直交復調を行うための復調部を構成するミキサ513,514と、受信電力を検出する電力検出部519に入力される。復調部では、搬送波信号源511、π/2移相器512とミキサ513,514を用いて直交復調を行い、LPF515,516でスプリアス成分除去とS/N帯域制限された後、PSK判定部517とOOK判定部518で変調方式の特定用の受信データ列の生成を行う。受信判定を行う判定部は、PCU520の中に搭載されている。また、電力検出部519では、受信した信号の電力を検出し、PCU518に判定用のデータとして入力する。
【0033】
図4は、上記OOK判定部518の詳細な構成を示す図である。
【0034】
図4において、OOK判定部518は、マッチドフィルタ601,602、自乗相関器603,604、加算器605、及び閾値判定部606を備えて構成される。
【0035】
LPF515,516からの復調信号は、マッチドフィルタ601,602に入力され、マッチドフィルタ601,602により相関検出を行うとともに、自乗相関器603,604により自乗相関を行った後に、加算器605により2つのデータ列の相関演算を行う。閾値判定部606では、相関演算を基に相関度の判定を行う。
【0036】
以下、上述のように構成されたUWB無線通信システムの動作を説明する。
【0037】
図5は、本実施の形態のUWB無線通信システムの利用の一形態を説明する図である。
【0038】
図5において、UWB無線通信システムは、大型ディスプレー701及び複数のコンテンツ出力端711〜713を備えるコンテンツサーバ710と、コンテンツサーバ710にアクセスし、コンテンツサーバ710に蓄積されたデータのダウンロードを行う無線端末装置などのダウンロード端末721,722とから構成される。
【0039】
例えば、電車や飛行機での移動を行う際、移動時間を有効に利用する方法の一つとしてポータブル機器でのコンテンツ視聴・観賞がある。コンテンツは大きく有料コンテンツと無料コンテンツに分けられる。有料コンテンツとしては映画、音楽、無料コンテンツとしては商品や店舗の紹介といった、これにともなう新たな購買につながる宣伝の類がある。図5では、第1のユーザAと第2のユーザBとが、コンテンツサーバ710からコンテンツデータのダウンロードを行う場合について示している。2人のユーザA,Bはそれぞれダウンロード端末721,722を持っており、コンテンツサーバ710と比較的近い位置にある第1のダウンロード端末721はダウンロードを実行中、やや遠い位置にある第2のダウンロード端末722はダウンロードを行うための調整段階である。
【0040】
また、図中のコンテンツ出力端711〜713は、ユーザA,Bに無線リンクの通信パスを意識させることで、例えばミリ波を用いた無線システムのように直進性が高い電波を用いる場合、ユーザA,Bがこれに端末を向けることを誘うようにしている。
【0041】
図6は、図5のUWB無線通信システムを上方から見たコンテンツサーバ710と各ユーザA,Bの位置関係を示す図である。
【0042】
コンテンツサーバ710とダウンロード端末721,722の関係は大きく4つに分けることができる。1つ目は、コンテンツサーバ710と高レート通信が可能な近い位置にある端末a(図5では、第1のダウンロード端末721)である。2つ目は、低レートの通信のみ可能なやや遠い位置にある端末で、ダウンロードを予定しており、通信タイミングや、周波数チャネルがコンテンツサーバ710と調整できる端末b(図5では、第2のダウンロード端末722)である。3つ目は、コンテンツサーバ710からプッシュされる情報を待ち受けていたり、ダウンロードのための調整がまだできていない端末cである。4つ目は、図中には無いが、低レート通信可能なエリアよりさらに外にいる端末dである。
【0043】
本実施の形態で対象とするのは、端末a,b,cであり、それぞれの端末a,b,cが利用できる変調方式は、OOK又はASK変調方式であったり、QPSK変調であったりと様々であり、端末によっては1つの変調方式のみに対応している。これらの端末a〜d(dは図示せず)に対応して通信を行うため、コンテンツサーバ710は、複数の変調方式に対応している。コンテンツサーバ710と端末a,b,c間で通信を行うためには変調方式を同一にすることが必要であり、多くは低レート通信のみが可能なエリアにてデータのやり取りをすることで、コンテンツサーバが端末の変調方式を特定する。
【0044】
図7は、本実施の形態のUWB無線通信システムの無線フレーム構成の一例を示す図である。
【0045】
図7において、無線フレーム800は、通信に使う各パケット810からなり、各パケット810は、プリアンブル811、変調セクション812を有するヘッダ813、及びペイロード814を備えて構成される。
【0046】
通信時には、パケット810は一定の周期で送信されており、各パケット810には同期引き込みを行うためのプリアンブル811、変調方式に関する情報が含まれる変調セクション812、変調セクション812を含む物理情報が含まれるヘッダ813、通信相手に伝達したい情報が含まれるペイロード814がある。ここで、変調セクション812は一つの変調方式のみに対応しているので、図6に示す端末a〜dでは、このパケット810を復調できるものとできないものとがある。
【0047】
なお、図7では、変調セクション812をヘッダ813の一部として記載しているが、プリアンブル811が特定の変調方式で変調された信号であるので、これで代用してもよい。
【0048】
また、変調セクション812をヘッダ813の一部として扱わず、特定のフレーム領域とし、プリアンブルとヘッダの間に入れたり、ヘッダの後ろに入れたりすることでも同様の効果が得られる。
【0049】
また、図中には変調セクションの変調方式について記載してないが、例えばASK変調であったりQPSK変調であったりしてもよい。また、パケットごとに変調方式を変更することで、一つの変調方式にしか対応できない無線装置が混在している場合に、全ての無線装置がパケットを受信してその内容を復調できるように送ってもよい。この場合、1パケットごとに変調方式を変えたり、複数のパケットごとに変えたりすることが可能である。
【0050】
図8は、UWB無線通信システムの変調方式決定を示すフローチャートであり、図中Sはフローの各ステップを示す。本フローは、具体的には図3のPSK/OOK変調ブロックのPCU520により実行される。また、図5及び図6の使用形態では、コンテンツサーバ710が端末a〜dの変調方式を特定するまでのステップに対応する。
【0051】
コンテンツサーバ710は、既に通信中の端末a,b,cに対し、図7のパケット810を送信すると同時に、特定の通信相手がいない時間帯では、複数の変調方式で通信希望の端末がいないかを探索するパケットを送出し、図8のフローのStart状態となる。この状態では、コンテンツサーバ710のPCU520(図3参照)はPSK判定部517とOOK判定部518の両方を動作させている(ステップS1)。コンテンツサーバ710からの探索パケットを受信した通信希望の端末は、コンテンツサーバ710に通信希望の旨のパケットを返信する。このパケットを受信したコンテンツサーバ710では、まず、ステップS2でPSK変調信号として判定を行う。次いで、ステップS3でPSKと復調結果が合うか否かを判別し、PSKとして復調した場合の相関結果がある一定のしきい値を超えていれば、ステップS4でコンテンツサーバ710はこの端末の通信方式をPSK変調と特定し、以後、通信を行う。しかし、ここでPSKと判定されなかった場合、ステップS5でPCU520はOOK変調と仮判定し、OOK変調したパケットを送信する。ステップS6では、再度戻ってきたパケットについてOOKと復調結果が合うか否かを判別し、OOKと復調結果が合えばOOKと判定できると判断し、ステップS7でPCU520はOOK変調と判定してOOK変調で通信を行って本フローを終了する。上記ステップS6でOOKとして特定できなければ、ステップS2に戻って再度PSKとしての判定からやり直す。
【0052】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、変調方式決定機能ブロック400は、第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調するQPSK復調器420と、第2のデータ列を生成する第2の変調方式による変調信号を復調するASK復調器410と、基準用のデータ列を生成する基準データ生成部430と、第1及び第2のデータ列と基準用のデータ列を比較するための相関器441,442と、データ列の比較による比較結果が所定値以上であれば第1の変調方式を、前記比較結果が所定値未満であれば第2の変調方式を特定する比較回路443とを備え、例えば、第1及び第2のデータ列の一部が予め定められた基準用のデータ列と予め定めた期間において同一であれば受信信号が位相変調であると判定する、又は、第1及び第2のデータ列の一部が予め定められた基準用のデータ列と予め定めた期間において異なれば受信信号が振幅変調であると判定するので、複数の変調方式を用いる通信システムにおいても通信速度の低下が少ない、複数変調方式共存の無線システムを実現することができる。
【0053】
また、本通信フレーム構成と判定方法を用いることで、一つの変調方式のみを搭載した、複数の変調方式の通信装置からなる無線システムにおいて、各変調方式に合った物理ヘッダ構成で通信を行うことが可能となり、無線システム全体としての通信速度を高めることが可能となる。
【0054】
また、複数の変調方式を用いる無線システムにおいて、それぞれを復調できる復調器で受信し結果を比較することで、より確からしい復調結果が得られた復調器の変調方式が通信に用いられると判断することで、複雑なプロトコルを用いることなく変調方式の決定が可能となる。
【0055】
2つの変調方法は位相変調と振幅変調であるので、復調結果の違いを大きくすることができる。特に、位相変調がPSK、振幅変調がOOKの場合、離散値の変調方式とすることで識別を容易にすることができる。
【0056】
また、図5に示すように、複数の変調方式を用いる無線システムが、複数の変調方式に対応可能なサーバ装置と、1つ又は複数の変調方式に対応可能なクライアント装置から構成されることにより、サーバ装置が適応して通信方式を変更することで無線システム内の通信を実現することができる。
【0057】
この場合、サーバ装置又はクライアント装置が、クライアント装置へのデータ伝送を一定周期のフレームで行い、フレームが同一無線システムの受信可能な装置全てが受信すべき共通部と一部の端末が受信すべき個別部からなる。すなわち、フレーム内に共通部(プリアンブルとヘッダ)と個別部(ペイロード)がある。ここで、サーバ装置は、フレーム内の共通部が少なくとも2つの異なる変調方式として、少なくとも2回以上のフレーム送信する。これにより、プリアンブルやヘッダを異なる変調方式としたフレームを2回以上に渡って送信することで、1つの変調方式にしか対応していない装置でも復調が可能となる。
【0058】
また、クライアント装置は、フレーム内の共通部は少なくとも1つの変調方式としてサーバ装置にフレームを送信する。プリアンブルやヘッダを固定の変調方式としたフレームを送信することで、1つの変調方式にしか対応できない装置であることを複数の変調方式に対応可能なサーバ装置に知らせることが可能になる。
【0059】
この場合、サーバ装置は、クライアント装置から送信されたフレームを受信し、変調方式の見極めをおこなってもよい。
【0060】
なお、以上の説明ではPSKとOOKの例で説明したが、PSKはBPSK、QPSK、8−PSK等のいずれの変調方式を用いてもよく、OOKもASKや多値ASKとしてもよい。
【0061】
また、以上の説明では判定を行うパケット数について記載していないが、複数のパケットの受信結果を用いて判定することが一般的に行われる。
【0062】
また、以上の説明では受信データと相関させるデータについて特に限定していないが、受信側で予め基準となる相関用データを生成または保持してこれとの相関を取るように構成してもよい。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態1では、受信データの復調結果の、いずれの変調方式が基準用のデータ列と一致するかのみで変調方式の特定を行った。実施の形態2では、さらに受信電力レベルを変調方式特定のパラメータとして用いる例である。
【0064】
図9は、本発明の実施の形態2に係るUWB無線通信システムの変調方式決定を示すフローチャートである。図8に示すフローと同一処理を行うステップには同一ステップ番号を付している。
【0065】
まず、ステップS11でコンテンツサーバ710のPCU520(図3参照)はPSK判定部517、OOK判定部518及び電力検出部519を動作させてステップS2に進む。OOK変調の判定までは、実施の形態1と同じである。ステップS6で再度戻ってきたパケットについてOOKと復調結果が合わなければ、ステップS12で、PCU520は電力検出部519により検出された受信電力が、所定電力より大きいか否かを判別する。受信電力が所定値より大きいときは、PSK変調の信号であれば復調できないことは無いと判断し、OOK変調と判定して本フローを終了する。受信電力が所定値以下であるときは、上記ステップS2に戻る。すなわち、受信電力が所定値以下である、つまり、受信電力が小さければ、いずれの変調方式の信号であっても復調誤りが大きくなるため、変調方式の特定ができない。そこで、再度、PSK変調の可能性判定から行うことになる。
【0066】
図10は、受信電力とPSK判定部517及びOOK判定部518の判定回路の出力との関係を表にして示す図である。図10の上段に示すように、電力強度が大きいときは相関の大きい変調方式が選択されるとともに、電力強度が大きくてもASKとPSKの相関が小さいときにはASK変調方式が選ばれる。図10の下段に示すように、電力強度が小さいときは相関の大きい変調方式が判定されるとともに、電力強度が小さく且つASKとPSKの相関が小さいときには、いずれの変調方式の信号であっても復調誤りが大きくなると判断して判定が継続される。
【0067】
したがって、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加えて、受信電力不足での変調方式特定誤りを防ぐことができる。
【0068】
また、図5に示すように、少なくとも異なる所定の時間の受信電力を検出する機能を有するサーバ装置及びクライアント装置に適用し、サーバ装置は、クライアント装置から送信されたフレームを受信し、検出した受信電力の違いを変調方式の見極めに用いることで、低レートパルス通信の検出用に電力検出を行うことができる。
【0069】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0070】
例えば、複数の変調方式で送受信可能な装置と、一つの変調方式のみで送受信可能な装置での変調方式特定についてのみ述べたが、複数の変調方式で通信可能な装置であっても、希望する変調方式がある場合、返信をこの希望する変調方式で行うことで、変調方式を指定するように実施してもよい。例えば、QPSKとASKの両方で送受信可能であるが、省電力のためにASKで送信したい場合、通信相手からの信号がQPSKであっても、ASKで返信を行う。この際に、QPSKの復調部を動作させてその内容を復調して、これに応じて、例えば返信タイミング等を調整してもよい。
【0071】
また、図4に示す閾値判定回路を用い、相関結果が一定の閾値を超えなければいずれの変調方式とも判定せず、つづく受信データを基に判定をやり直してもよい。
【0072】
また、以上の説明ではASK復調器とQPSK復調器の両方を用いた場合について説明したが、どちらか一方のみを用い、その相関結果が所定の値以上であるか否かで判定をしてもよい。例えば消費電力の低いASK復調器のみを動作させ、この相関結果が所定の値以上であればASK変調方式であると判定し、所定の値未満であればQPSKとする判定方法である。
【0073】
また、本実施の形態では無線通信装置、UWB無線通信システム及び無線通信方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、通信装置、無線システム、送受信装置、変調方法、復調方法等であってもよいことは勿論である。
【0074】
さらに、上記無線通信装置を構成する送信系、受信系の各回路部、例えば復調器の種類、その数及び接続方法など、さらには復調方式などは前述した実施の形態に限られない。
【0075】
以上説明した無線通信方法は、この無線通信方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法は、複数の変調方式を用いる通信システムにおいても通信速度の低下が少ない、複数変調方式共存の無線通信システム実現する変調方式判定方法に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムを構成する各無線装置の構成を示す図
【図2】本実施の形態1に係る無線通信システムの変調方式決定機能の構成を示すブロック図
【図3】本実施の形態1に係る無線通信システムのPSK/OOK復調ブロックの具体的構成を示す図
【図4】本実施の形態1に係る無線通信システムのOOK判定部の詳細な構成を示す図
【図5】本実施の形態1に係る無線通信システムの利用の一形態を説明する図
【図6】本実施の形態1に係る無線通信システムを上方から見たコンテンツサーバと各ユーザA,Bの位置関係を示す図
【図7】本実施の形態1に係る無線通信システムの無線フレーム構成の一例を示す図
【図8】本実施の形態1に係る無線通信システムの変調方式決定を示すフロー図
【図9】本発明の実施の形態2に係る無線通信システムの変調方式決定を示すフロー図
【図10】本実施の形態2に係る無線通信システムの受信電力とPSK判定部及びOOK判定部の判定回路の出力との関係を表にして示す図
【図11】従来のデータ伝送方法の通信フレームの構成を示す図
【図12】従来のセンタ装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0078】
100 ASK変調装置
200 QPSK変調装置
300 ASK/QPSK変調装置
400 変調方式決定機能ブロック
410 ASK復調器
420 QPSK復調器
430 基準データ生成部
440 比較器
441,442 相関器
443 比較回路
510 受信フロントエンド
511 搬送波信号源
512 π/2移相器
513,514 ミキサ
515,516 LPF
517 PSK判定部
518 OOK判定部
519 電力検出部
520 PCU
601,602 マッチドフィルタ
603,604 自乗相関器
605 加算器
606 閾値判定部
701 大型ディスプレー
710 コンテンツサーバ
711〜713 コンテンツ出力端
721,722 ダウンロード端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変調方式を用いる無線通信において受信信号の変調方式を決定する無線通信装置であって、
第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調する第1の復調手段と、
基準用のデータ列を生成する基準データ生成手段と、
前記第1のデータ列と前記基準用のデータ列を比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果が所定値以上であれば第1の変調方式を、前記比較結果が所定値未満であれば第2の変調方式を特定する判定手段と
を備える無線通信装置。
【請求項2】
第2のデータ列を生成する第2の変調方式による変調信号を復調する第2の復調手段を備え、
前記比較手段は、前記第2のデータ列と前記基準用のデータ列を比較する請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
受信電力を検出する受信電力検出手段を備え、
前記判定手段は、前記受信電力検出手段により検出された電力情報を方式決定のパラメータの一つとして用いて特定を行う請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記比較手段による比較結果が所定値以上であれば第1の変調方式を、前記比較結果が所定値未満であれば前記受信電力検出手段により検出された受信電力を参照し、前記受信電力が所定値以上であれば第2の変調方式を、前記受信電力が所定値未満であれば変調方式を特定せず、再度第1の変調方式であるか否かの判定を行う請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1の変調方式は、位相変調方式であり、前記第2の変調方式は、振幅変調方式である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記受信信号は、少なくともプリアンブル部、ヘッダ部、及びペイロード部を有し、変調方式を表すデータ列が、前記プリアンブルの後に配置される、又は、前記変調方式を表すデータ列が、前記ヘッダ部の最初に配置される請求項1記載の無線通信装置。
【請求項7】
複数の変調方式で通信可能なサーバ装置と、
少なくとも1つの変調方式で通信を行うクライアント装置とから構成される無線通信システムであって、
前記サーバ装置及び/又は前記クライアント装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の無線通信装置から構成される無線通信システム。
【請求項8】
複数の変調方式を用いる無線通信において受信信号の変調方式を決定する無線通信方法であって、
受信信号を取得するステップと、
第1のデータ列を生成する第1の変調方式による変調信号を復調する第1の復調ステップと、
第2のデータ列を生成する第2の変調方式による変調信号を復調する第2の復調ステップと、
復調により得られた第1及び第2のデータ列を比較して、受信信号の変調方式を判定するステップと
を有する無線通信方法。
【請求項9】
前記判定ステップでは、
前記第1のデータ列を予め定められた第1の基準用のデータ列と比較するステップと、
前記第2のデータ列を予め定められた第2の基準用のデータ列と比較するステップとを有する請求項8記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記判定ステップでは、
前記第1及び第2のデータ列の一部が予め定められた基準用のデータ列と予め定めた期間において同一であれば前記受信信号が位相変調であると判定する、又は、
前記第1及び第2のデータ列の一部が予め定められた基準用のデータ列と予め定めた期間において異なれば前記受信信号が振幅変調であると判定する請求項8記載の無線通信方法。
【請求項11】
前記判定ステップでは、
前記第1及び第2のデータ列の一部が予め定められた基準用のデータ列と予め定めた期間において同一であれば前記受信信号が振幅変調であると判定する、又は、
前記第1及び第2のデータ列の一部が予め定められた基準用のデータ列と予め定めた期間において異なれば前記受信信号が位相変調であると判定する請求項8記載の無線通信方法。
【請求項12】
前記第1の変調方式は、PSKを含む位相変調方式であり、前記第2の変調方式は、OOKを含む振幅変調方式である有する請求項8記載の無線通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−103857(P2008−103857A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283092(P2006−283092)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】