説明

無線通信装置およびアンテナ

【課題】送受信機の通信部に正しいアンテナが接続されているか否かを検出する。
【解決手段】
電波を送受信する枠型空中線11と、前記枠型空中線11に巻きつけられた配線と、前記配線12から駆動電圧が供給され、前記配線12に前記枠型空中線11の固有番号に相当する電流を出力するアンテナ識別部13と、前記枠型空中線11と接続されて前記枠型空中線11を介した無線通信をするための通信部であって、前記枠型空中線11に発生した前記固有番号に相当する電圧を受ける第1の通信部31と、前記第1の通信部31の固有番号とアンテナの固有番号を対応付けて記憶する記憶部34と、前記記憶部34からアンテナの固有番号を抽出し、前記電圧が該抽出した固有番号に対応したものか否か判定する判定部35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置およびアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
リーダライタが枠型空中線(ループアンテナ)から電波を送信し、RFID(Radio Frequency IDentification)タグがその信号を受信し、RFIDタグ内の情報を再び電波でリーダライタに送り返すことにより、リーダライタがRFIDタグを識別するRFIDシステムが実用化されている。
【0003】
通常、リーダライタは、アンテナとアンテナの出力を調整する送受信機とから構成されている。 何らかの規制もしくはシステム設置上の通信範囲等の配慮などから、異なった特性のアンテナを使い分けたいことがある。その場合、多数のアンテナとそれぞれのアンテナを接続する送受信機が存在するときには、アンテナの接続の誤りにより、不正なアンテナ出力で通信してしまうことがありえた。
【0004】
従来、リーダライタに備えられた複数のアンテナを切り替えて使用するために、送受信機は、アンテナの切り替え信号を通常の通信同様に前記アンテナから送信し、当該アンテナに備えつけられたアンテナ制御回路側で前記信号を受信し、当該受信信号を解釈して、アンテナを切り替える装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、リーダライタのアンテナから出力される電波の出力範囲を正確に把握するために、RFIDタグ情報とアンテナIDとを紐付けして管理することで、アンテナから出力される電波の出力範囲を把握する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−200155号公報
【特許文献2】特開2006−318031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1も特許文献2も、アンテナの接続に誤りがあるか検出する方法が示されておらず、送受信機の通信部に正しいアンテナが接続されているか否かを検出する方法がないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、送受信機の通信部に正しいアンテナが接続されているか否かを検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様である無線通信装置は、電波を送受信するアンテナ用導体と、前記枠型空中線に巻きつけられた配線と、前記配線から駆動電圧が供給され、前記配線に前記アンテナ用導体の固有番号に相当する電流を出力するアンテナ識別部と、前記アンテナ用導体と接続されて前記アンテナ用導体を介した無線通信をするための通信部であって、前記アンテナ用導体に発生した前記固有番号に相当する電圧を受ける通信部と、前記通信部の固有番号とアンテナの固有番号を対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部からアンテナの固有番号を抽出し、前記電圧が該抽出した固有番号に対応したものか否か判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
上記無線通信装置によれば、アンテナが正しい通信部に接続されているか否か判定することができるので、アンテナ接続の誤りによる不正な出力での通信を防止することができる。
【0010】
上記無線通信装置のアンテナが前記通信部に接続されたときに、前記通信部がアンテナに該アンテナの固有IDを送信要求する電流を出力するよう制御する通信制御部を更に備えるものであってもよい。
これによれば、アンテナが送受信機に接続される毎に、自動的にアンテナが正しい通信部に接続されているか否か判定することができるので、アンテナ接続の誤りによる不正なアンテナ出力での通信を防止することができる。
【0011】
上記無線通信装置の前記判定部の判定結果に基づいて報知する報知部を更に備えるものであってもよい。
これによれば、当該抽出した固有IDと前記通信部が受信した固有IDとが同一で無い場合、正しいアンテナの配置をアンテナの設置者に知らせることができるので、アンテナの設置者は正しいアンテナの配置に直すことができる。
【0012】
本発明の一態様であるアンテナは、電波を送受信するアンテナ用導体と、前記枠型空中線に巻きつけられた配線と、前記配線から駆動電圧が供給され、前記配線に前記アンテナ用導体の固有番号に相当する電流を出力するアンテナ識別部と、を備えることを特徴とする。
上記アンテナによれば、ループアンテナと離れないようにすることができ、ループアンテナと配線の一体性が担保される。また、巻きつけることによって、お互いに安定した誘導起電力を発生させることができる。さらに、配線は少ない巻き数で、ループアンテナに誘導起電力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による無線通信装置1のブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による通信部番号とアンテナの固有IDの対応テーブルである。
【図3】送受信機30の第1の通信部31に正しいアンテナが本当に接続されているか否かを検出する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による無線通信装置1のブロック構成図である。本実施例では、無線通信装置に枠型空中線が2つある場合について説明する。無線通信装置1は、第1のアンテナ10と、第2のアンテナ20と、送受信機30とから構成されている。
【0015】
第1のアンテナ10は、枠型空中線(ループアンテナ)11と、配線12と、アンテナ識別部13とから構成されている。
【0016】
枠型空中線(ループアンテナ)11は、第1の通信部31から入力された電流により、他のRFID装置(不図示)に電波を送信する。また、枠型空中線(ループアンテナ)11は他のRFID装置から入力された電波を受信する。
枠型空中線(ループアンテナ)11は、第1の通信部31から入力された電流により、配線12と第1の枠型空中線11との相互インダクタンスを介して、配線12に誘導電圧を発生させる。
また、第1の枠型空中線(ループアンテナ)11は、配線12と第1の枠型空中線11との相互インダクタンスを介して自らに生じた誘導電圧を、第1の通信部31に出力する。
【0017】
配線12は、枠型空中線(ループアンテナ)11に巻きつけられている。これによって、ループアンテナ11と離れないようにすることができ、ループアンテナ11と配線12の一体性が担保される。また、巻きつけることによって、お互いに安定した誘導起電力を発生させることができる。さらに、配線12は少ない巻き数で、ループアンテナ11に誘導起電力を発生させることができる。
配線12は、アンテナ識別部13に、自らに生じた誘導電圧を出力する。
また、配線12は、アンテナ識別部13から入力された電流により、第1の枠型空中線(ループアンテナ)11に誘導電圧を発生させる。
【0018】
アンテナ識別部13は、アンテナ識別のために付与された固有のID(以下、アンテナの固有IDと称す)を保持する。
また、アンテナ識別部13は、配線12に生じた誘導電圧を受け、駆動電圧として利用する。
アンテナ識別部13は、入力された電流を復調し、復号化して、復号信号を生成する。アンテナ識別部13は、当該復号信号が自身の固有IDと同一であるか判定する。自身が持つ固有ID(ユニークID)と同一であるならば、アンテナ識別部13は、自身の固有IDを符号化し、変調して、変調電流を生成する。アンテナ識別部13は、当該変調電流を配線12に出力する。
【0019】
同様にして、第2のアンテナ20は、枠型空中線(ループアンテナ)21と、配線22と、アンテナ識別部23とから構成されている。
枠型空中線(ループアンテナ)21は、第2の通信部32から入力された電流により、他のRFID装置(不図示)に電波を送信する。また、枠型空中線(ループアンテナ)11は他のRFID装置から入力された電波を受信する。
枠型空中線(ループアンテナ)21は、第2の通信部32から入力された電流により、ループアンテナと21と配線22との相互インダクタンスを介して、配線22に誘導電圧を発生させる。
【0020】
配線22は、枠型空中線(ループアンテナ)21に巻きつけられている。これによって、ループアンテナ21と離れないようにすることができる。
配線22は、アンテナ識別部23に自らに生じた誘導電圧を出力する。
また、配線22は、アンテナ識別部23から入力された電流により、枠型空中線(ループアンテナ)21に誘導起電力を発生させる。
【0021】
アンテナ識別部23は、アンテナの固有IDを保持する。
また、アンテナ識別部23は、配線22に生じた誘導電圧を受け、駆動電圧として利用する。
また、アンテナ識別部23は、入力された電流を復調し、復号化して、復号信号を生成する。その後、アンテナ識別部23は、当該復号信号が自身の固有IDと同一であるか判定する。その後、自身が持つ固有ID(ユニークID)と同一であるならば、アンテナ識別部13は、自身の固有IDを符号化し、変調して、変調電流を生成する。その後、アンテナ識別部23は、当該変調電流を配線22に出力する。
【0022】
送受信機30は、第1の通信部31と、第2の通信部32と、変換部33と、記憶部34と、判定部35と、通信制御部36とから構成されている。
【0023】
第1の通信部31は、枠型空中線11からアンテナ識別部13の固有IDに相当する誘導電圧を受け、当該電圧を変換部33に出力する。
また、第1の通信部31は、枠型空中線11が第1の通信部31に接続されると、接続を通知する信号を通信制御部36に出力する。
【0024】
第2の通信部32は、枠型空中線21からアンテナ識別部23の固有IDに相当する誘導電圧を受け、当該電圧を変換部33に出力する。
また、第2の通信部32は、枠型空中線21が第2の通信部32に接続されると、接続を通知する信号を通信制御部36に出力する。
【0025】
変換部33は、第1の通信部31または第2の通信部32から入力された電圧をビット列に変換し、当該ビット列を判定部35に出力する。
【0026】
記憶部34は、図2に示す通信部番号41とアンテナの固有ID42の対応テーブル40を保持している。記憶部34は、対応テーブル40を用いて、通信部番号41とアンテナの固有ID42を一対一で紐付けることとする。
また、記憶部34は、判定部35から入力された問い合わせ信号に基づいて、現在使用している通信部に対応するアンテナ識別部の固有IDを抽出し、判定部35に出力する。
【0027】
判定部35は、変換部33からアンテナ10の固有IDを表すビット列を受信する。
また、判定部35は、変換部33からアンテナ20の固有IDを表すビット列を受信する。
また、判定部35は、記憶部33へ問い合わせ信号を出力し、記憶部33から現在使用している通信部(例えば、第1の通信部31)に対応するアンテナの固有IDを受信する。
【0028】
また、判定部35は、前記受信したビット列と、前記抽出した固有IDを比較し、同一であれば、対応関係が正常であることを示す信号(以下、対応正常信号と称す)を通信制御部36に出力する。
また、判定部35は、前記受信したビット列と、前記抽出した固有IDが異なる値であれば、対応関係が異常であることを示す信号(以下、対応異常信号と称す)を通信制御部36に出力する。
【0029】
通信制御部36は、第1の通信部31から第1のアンテナ10が第1の通信部31に接続された信号を受信すると、該アンテナの固有IDを要求するために、第1の通信部31から電流を出力するよう制御する。
同様にして、通信制御部36は、第2の通信部32から第2のアンテナ10が第2の通信部32に接続された信号を受信すると、該アンテナの固有IDを要求するために、第2の通信部32から電流を出力するよう制御する。
【0030】
また、通信制御部36は、判定部35から対応正常信号が入力されると、通常どおり、他のRFIDタグ(不図示)との通信を開始するために、第1の通信部31または第2の通信部32から電流を出力するよう制御する。
通信制御部36は、判定部35から対応異常信号が入力されると、他のRFIDタグ(不図示)との通信を開始しないようにするため、第1の通信部31または第2の通信部32から電流を出力しないよう制御する。
【0031】
本実施例では、送受信機30の枠型空中線が2つある場合を示したが、送受信機30の枠型空中線がN本(Nは正の整数)あってもよい。その場合、それぞれの枠型空中線に、アンテナ識別部が接続された配線を巻きつけ、それぞれの枠型空中線に対応する通信部を設ければよい。
【0032】
なお、通信の開始を許可しない場合、送受信機30はスピーカ(第1の報知部、不図示)から、アラームを発するようにしてもよい。これによって、ループアンテナの設置者は、ループアンテナが間違った通信部に取り付けられたことが分かる。
さらに、アラームのパターンを用いて、どの通信部に取り付けたループアンテナが間違っているか、またはループアンテナのどれとどれを交換すればいいのかといった情報を報知してもよい。
【0033】
また、通信の開始を許可しない場合、送受信機30は、間違ったループアンテナが設置されている通信部番号、どこの通信部にどのループアンテナを繋ぎなおせばよいかという情報または正しいループアンテナの配置等をモニター(第2の報知部、不図示)に表示して、通知するようにしてもよい。上記2つの報知処理によって、ループアンテナの設置者は、どの通信部に取り付けたループアンテナを交換すればいいのかが分かり、正しいループアンテナの配置に直すことができる。
【0034】
続いて、図3のフローチャートを用いて、送受信機30の第1の通信部31に正しいアンテナが本当に接続されているか否かを検出する処理の流れを説明する。
まず、第1のアンテナ10が送受信機30の第1の通信部31に取り付けられると、第1の通信部は接続通知信号を通信制御部36に出力する(ステップ S301)。次に、送受信機30の通信制御部36は、第1の通信部31から該アンテナの固有IDを送信要求する電流(信号)を出力するよう制御する(ステップ S303)。
【0035】
次に、枠型空中線11に所定の電流が流れると、相互インダクタンスを介して、当該電流に応じた誘導電圧が配線12に生じ、配線12は、当該誘導電圧をアンテナ識別部13に出力する(ステップ S305)。前記誘導起電力が入力されたアンテナ識別部13は、配線12に固有のIDに相当する電流(変換電流)を出力する(ステップ S307)。
【0036】
次に、変換電流が入力された配線12は、今度は、相互インダクタンスを介して、枠型空中線11に当該変換電流に応じた電圧(変換電圧)を生じさせる。枠型空中線11は、当該変換電圧を第1の通信部31に出力する。
次に、第1の通信部31は、印加された前記変換電圧を変換部33に出力する。変換部33は、当該変換電圧をビット列に変換し、当該ビット列を判定部35に出力する(ステップ S309)。
【0037】
次に、判定部35が、記憶部33へ問い合わせ信号を出力して、記憶部33から第1の通信部に対応する固有IDを抽出する(ステップ S311)。
前記入力されたビット列と、前記抽出した固有IDが同一ならば(ステップ S313 YES)、判定部35は、対応正常信号を通信制御部36に出力する。当該対応正常信号が入力された通信制御部36は、通常の通信を開始するために第1の通信部31を制御する(ステップ S315)。
【0038】
前記入力されたビット列と、前記抽出した固有IDが異なるならば(ステップ S313 NO)、判定部35は、対応異常信号を通信制御部36に出力する。当該対応異常信号が入力された通信制御部36は、通常の通信を開始しないように第1の通信部31を制御する(ステップ S317)。以上で、本フローチャートは終了する。
【0039】
以上により、無線通信装置の特定のチャネルに所定のアンテナが接続されているか否かを検出することができる。
【0040】
なお、アンテナが正しい通信部に接続されているか否かのチェックは電源起動時に、毎回行ってもよい。
なお、通信判断の可否とは逆に、接続したアンテナの固有IDを確認して、当該固有IDに適切な通信パラメータ(例えば、出力パワー等)を各通信部にセットしてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 無線通信装置
10 第1のアンテナ
11 枠型空中線
12 配線
13 アンテナ識別部
20 第2のアンテナ
21 枠型空中線
22 配線
23 アンテナ識別部
30 送受信機
31 第1の通信部
32 第2の通信部
33 変換部
34 記憶部
35 判定部
36 通信制御部
41 通信部番号
42 アンテナの固有ID

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信するアンテナ用導体と、
前記枠型空中線に巻きつけられた配線と、
前記配線から駆動電圧が供給され、前記配線に前記アンテナ用導体の固有番号に相当する電流を出力するアンテナ識別部と、
前記アンテナ用導体と接続されて前記アンテナ用導体を介した無線通信をするための通信部であって、前記アンテナ用導体に発生した前記固有番号に相当する電圧を受ける通信部と、
前記通信部の固有番号とアンテナの固有番号を対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部からアンテナの固有番号を抽出し、前記電圧が該抽出した固有番号に対応したものか否か判定する判定部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
アンテナが前記通信部に接続されたときに、前記通信部がアンテナに該アンテナの固有IDを送信要求する電流を出力するよう制御する通信制御部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記判定部の判定結果に基づいて報知する報知部を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
電波を送受信するアンテナ用導体と、
前記枠型空中線に巻きつけられた配線と、
前記配線から駆動電圧が供給され、前記配線に前記アンテナ用導体の固有番号に相当する電流を出力するアンテナ識別部と、
を備えることを特徴とするアンテナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−164745(P2011−164745A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24072(P2010−24072)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】