説明

無線通信装置およびAICH/EAICH検出方法

【課題】AICH、EAICHのシグネチャ番号が衝突しても誤判定を避けることができるAICH/EAICH検出方法を提供する。
【解決手段】複数のシグネチャパターンを予め格納する保存部(202)と、それらから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算部(203)と、相関結果からパワーを計算するパワー計算部(204)と、相関結果とパワー計算結果とを用いてAICHおよびEAICHのシンボルを判定する判定部205)とを有し、制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと受信シンボルとの第1相関結果のパワーと位相とに基づいてAICHおよびEAICHのシンボルを判定し、第1相関結果の位相が第3象限に位置する場合には第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと受信シンボルとの第2相関結果を計算し、第2相関結果のパワーと位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置に係り、特にシンボル相関を用いてAICH/EAICHを検出する方法およびそれを用いた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代の移動通信システムであるW−CDMA(広帯域符号分割多元接続)において、CELL_FACH状態にある移動局(UE:user equipment)は、主基地局を特定しておらず、通信するごとに最適な基地局を選択する。また、CELL_FACH状態にある移動局には個別チャネルが割り当てられていないので、上下方向のデータ送受信は共通チャネル(common channel)を用いて行われる。上り共通チャネルであるRACH(Random Access Channel)の動作は、第3世代移動通信システムの標準化プロジェクト3GPP(3rd Generation Partnership Project)の仕様書に規定されている(非特許文献1参照)。以下、図1および図2を参照して、上り共通チャネルRACHの動作を簡単に説明する。
【0003】
図1は一般的な移動通信システムの構成を示すブロック図である。ここでは、基地局10のセル内に複数の移動局20が位置しており、これら移動局はCELL_FACH状態にあるものとする。基地局10は上位のネットワーク装置30に接続されているものとする。
【0004】
図2はRACHシーケンス図である。RACHには、プリアンブル・シグネチャCsig,sとプリアンブル・スクランブリング符号Sr-pre,nという拡散符号が用いられる。プリアンブル・スクランブリング符号Sr-pre,nは基地局が通知するセル識別用符号である。プリアンブル・シグネチャCsig,sは各移動局が所定のプリアンブル・シグネチャ(Csig,1, Csig,2, …, Csig,m)からランダムに選択したものである。
【0005】
図2に示すように、まず、移動局20は、基地局10が通知したプリアンブル・スクランブリング符号Sr-pre,nと、自局がランダムに選択したプリアンブル・シグネチャCsig,sとを用いてプリアンブル部の符号データを生成し、基地局10のパイロットチャネルの受信電力量から算出した初期送信電力値で基地局に送信する。
【0006】
基地局10は、受信したプリアンブルに対して、AICH(Acquisition Indicator Channel)を用いて応答通知を移動局20に送信する。この応答通知は、プリアンブル・シグネチャCsig,sに対応するAI(Acquisition Indicator)とE−DCH(Enhanced Uplink Dedicated Channel)リソース構成を示すEAI(Enhanced Acquisition Indicators)とを含むことができる。AIの意味は、移動局がPRACHに対応したプリアンブル・シグネチャを送信したか、E−DCHに対応するプリアンブル・シグネチャを送信したかに依存して変わるさらに、。移動局がE−DCHに対応するプリアンブル・シグネチャを送信した場合、AIの意味はEAIが構成されているか否かに依存して変わる。この点については後述する。
【0007】
WCDMA無線通信システムでは、シグネチャ番号に対するシグネチャパターン間の直交性を利用し、AICH検出対象のシンボルデータIa、Qaとシグネチャ番号に対するシグネチャパターンとの間で相関を取る方法がある(たとえば特許文献1参照)。
【0008】
一例を示すと、図3(A)および図3(B)に示すように、伝送路推定により得られた受信シンボルIa、Qaを入力し(ステップ11)、シグネチャ番号S1のAICHシグネチャパターンとの間で相関計算を行う(ステップ12)。その相関結果Ib、Qbの正負を判定する(ステップ13および14)。図3(B)に示すように、(Ib、Qb)が第3象限にあれば(ステップ13のYES)、AICH=Negative acknowledgement(ステップ15)、第1象限にあれば(ステップ13のNO、ステップ14のYES)、AICH=Positive acknowledgement(ステップ16)、それ以外は(ステップ13のNO、ステップ14のNO)、未検出と判定される(ステップ17)。以下、Negative acknowledgementを「Neg」と、Positive acknowledgementを「Pos」と略記する。
【0009】
EAICHの検出も、シグネチャ番号S1に対するAICHシグネチャパターンあるいはシグネチャ番号S1に対するEAICHのシグネチャパターンとの間で相関を取る事で検出できる。ただし、AICHのシグネチャパターンを使用した場合に、相関結果が第2象限にあればEAICH=Neg、第4象限にあればEAICH=Pos、EAICHのシグネチャパターンを使用した場合に、相関結果が第1象限にあればEAICH=Pos、第3象限にあればEAICH=Neg、それ以外は未検出と判定される。このことは非特許文献1の5.3.3.7の記載からもわかる。すなわち、非特許文献1の当該記載によれば、1つのセルに複数のPRACHプリアンブル・スクランブリング符号が定義されている場合は、各符号に対して次の規則が独立に使用される:
・移動局がPRACHプリアンブルシグネチャを送信した場合、その応答通知としてAI=+1であればPos;AI=−1であればNegである;
・移動局がE−DCHシグネチャを送信した場合、AI=+1であればPosであると共にデフォルトのE−DCHリソース構成が移動局に割り当てられる;AI=−1でEAIが非構成であればNegであり、AI=−1でEAIが構成されていれば、移動局はEAIシグネチャのいずれが存在するかを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−229787号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP TS25.211 V9.2.0 (2010-09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、AICH、EAICHのシグネチャ番号が衝突し、多重化されて送られてきた場合は、AICH検出において誤判定が生じる場合がある。同様にEAICH検出も誤判定する可能性がある。例えば、図3(C)に示すような相関結果が得られとする。この相関結果はAICHあるいはEAICHの伝送路推定が不完全なために理想位置から位相がすれているのか、AICH、EAICHが同じシグネチャ番号で多重されたために点線矢印41で表すAICHと一点鎖線矢印42で表すEAICHとの合成シンボルなのかを判別することができない。図3(C)に示す相関結果がAICHの相関結果とすれば、上述の検出方法に従い未検出の判定結果となるが、AICHとEAICHの合成シンボルであるなら、AICH=Neg、EAICH=Posと判定されなければならない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、AICH、EAICHをそれぞれのシグネチャ番号が衝突してもAICH、EAICH検出の誤判定を避けることができる無線通信装置およびAICH/EAICH検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による無線通信装置は、移動通信システムにおける無線通信装置であって、複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)のシンボルを判定する判定手段と、を有し、前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明によるAICH/EAICH検出方法は、無線通信装置におけるAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)の検出方法であって、前記無線通信装置が、複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICHおよびEAICHのシンボルを判定する判定手段と、を有し、前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、AICH、EAICHをそれぞれのシグネチャ番号が衝突してもAICH、EAICH検出の誤判定を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は一般的な移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2はRACHシーケンス図である。
【図3】図3(A)は既存のAICH検出手順の一例を示すフローチャート、図3(B)はAICH検出方法を説明するIQ座標図、図3(C)は信号点がAICHとEAICHの合成の結果かどうかを判定できないことを説明するためのIQ座標図である。
【図4】図4は本発明の一実施例による無線通信装置の概略的構成を示すブロック図である。
【図5】図5は本実施例におけるAICH/EAICH検出部のより詳細な機能的構成を示すブロック図である。
【図6】図6は本実施例によるAICH/EAICH検出方法の第1判定手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は本実施例によるAICH/EAICH検出方法の第2判定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、自端末が送信したシグネチャ番号に対応するシグネチャパターンとの相関を取り、相関結果のパワーおよび位相から第1の判定を行い、第1の判定結果から自端末のシグネチャ番号以外のシグネチャ番号に対するシグネチャパターンとの相関を取り、相関結果のパワー判定および位相から第2の判定を行い、第1の判定結果および第2の判定結果から最終的なAICH/EAICH検出結果を得る。このように選択したシグネチャ番号とそれとは異なるシグネチャ番号とをそれぞれ用いて2段階の判定を行うことにより、シグネチャ番号が衝突してもAICH、EAICH検出の誤判定を避けることができ、AICH、EAICHをそれぞれ正しく検出することができる。以下、本発明の実施形態および実施例について詳細に説明する。
【0019】
1.無線通信装置
図4を参照すると、本発明の一実施例による無線通信装置では、まず受信部101が無線信号を復調してベースバンド信号を逆拡散部102へ出力する。逆拡散部102は受信データを逆拡散処理し逆拡散データを伝送路推定部103へ出力する。伝送路推定部103は伝送路推定により位相や振幅の変動を推定して逆拡散データを補償し、受信シンボルデータIa[k],Qa[k](k=1〜16)としてシンボル相関計算部104へ出力する。シンボル相関計算部104は、後述するようにAICHシグネチャパターン105を用いて受信シンボルデータとの相関を計算し、その相関結果を検出部107が判定する。シンボル相関計算部104は、検出部107の判定結果に応じて、更にEAICHシグネチャパターン106を用いて受信シンボルデータとの相関を計算し、その相関結果を検出部107が判定する。詳しい動作は後述する。こうして検出部107は、シンボル相関計算部104からの相関結果からAICH、EAICH検出を行う。シンボル相関計算部104、AICHシグネチャパターン105、EAICHシグネチャパターン106および検出部107が次に述べるAICH/EAICH検出部を構成する。
【0020】
図5にAICH/EAICH検出部のより詳細な機能構成を示す。AICH/EAICH検出部は、制御部201、シグネチャパターン保存部202、シンボル相関計算部203、パワー計算部204および判定部205の各機能から構成される。シグネチャパターン保存部202は、後述するAICHシグネチャパターンb(S1)およびEAICHシグネチャパターンc(S1)を保存しており、制御部201の制御に従って選択されたシグネチャパターンがシンボル相関計算部203へ出力される。シンボル相関計算部203は、制御部201の制御に従って、伝送路推定部出力シンボルIa[k],Qa[k]を入力し、選択されたシグネチャパターンとの相関をとり、相関結果Ib,Qbをパワー計算部204および判定部205へそれぞれ出力する。判定部205は、パワー計算部204から入力するパワー計算結果とシンボル相関計算部203から入力する相関結果Ib,Qbとを用いてAICH/EAICHを検出する。
【0021】
なお、制御部201、シンボル相関計算部203、パワー計算部204および判定部205の機能は、図示しないメモリに格納されたプログラムをプログラム制御プロセッサ上で実行することにより実現することもできる。以下、図6および図7を参照しながらAICH/EAICH検出動作について詳述する。
【0022】
2.AICH/EAICH検出動作
図6において、まず制御部201は、自端末から送ったシグネチャ番号S1のシグネチャパターンb(S1)をシグネチャパターン保存部202から読み出しシンボル相関計算部203へ転送すると共に、AICH、EAICH検出対象となる受信シンボルデータIa[k],Qa[k]をシンボル相関計算部203へ送る(ステップ301)。
【0023】
シンボル相関計算部203は、受信シンボルデータIa[k],Qa[k]とシグネチャパターンb(S1)との相関を次式により計算し、相関結果Ib,Qbを生成する(ステップ302)。
【0024】
Ib=Σb(S1)[2k]・Ia[k]
Qb=Σb(S1)[2k+1]・Ia[k]
異なるシグネチャ番号のシグネチャパターン間は直交しているため、シグネチャ番号の異なるシグネチャパターンとの相関計算結果Ib,Qbは理想的にはゼロとなり、シグネチャ番号が一致した場合は相関が取れる。
【0025】
続いて、パワー計算部204が相関計算結果Ib,QbのパワーPbを計算し判定部205へ出力する(ステップ303)。判定部205はパワー計算結果Pbとパワー判定しきい値P1とを比較し(ステップ304)、Pb<P1ならば(ステップ304のYES)、自端末から送ったシグネチャ番号S1で基地局からのAICH送信はなかったと判断し、AICH未検出を上位システムに返す(ステップ312)。Pb≧P1ならば(ステップ304のNO)、判定部205はパワー計算結果Pbとパワー判定しきい値P2とを比較する(ステップ305)。ここで、P2はAICHシンボルパワーより大きく、(AICH+EAICH)シンボルパワーより小さい値である。パワー判定しきい値P2を基準として、AICH+EAICHが同じシグネチャ番号S1で送信されてきたか否かを判断することができる。
【0026】
Pb>P2ならば(ステップ305のYES)、判定部205はAICH+EAICHが同じシグネチャ番号S1で送信されてきたと判断し、さらに相関計算結果IbとQbの大きさを比較する(ステップ306)。Qb<Ibならば(ステップ306のYES)、AICH=Neg、EAICH=Negと判断し上位システムに返す(ステップ307)。Qb≧Ibならば(ステップ306のNO)、AICH=Neg、EAICH=Posと判断し上位システムに返す(ステップ308)。
【0027】
Pb≦P2ならば(ステップ305のNO)、判定部205はシグネチャ番号S1でAICHが送信されていると判断し、相関計算結果Ib,QbのIQ座標系での位置を判定する。まずIb>0かつQb>0であれば(ステップ309のYES)、IQ座標系の第1象限にあるのでAICH=Posと判定し上位システムに返す(ステップ310)。Ib<0かつQb<0であれば(ステップ309のNO、ステップ311のYES)、IQ座標系の第3象限にあるのでAICH=Negと判定されるが、この場合には他のシグネチャ番号S2(≠S1)でEAICHが送られて来ている可能性があるので、引き続きEAICHの検出に移る(図7へ)。なお、それ以外の場合には(ステップ311のNO)、自端末から送ったシグネチャ番号S1で基地局からのAICH送信はなかったと判断し、AICH未検出を上位システムに返す(ステップ312)。
【0028】
図7において、相関計算結果Ib,QbがIQ座標系の第3象限にある場合、制御部201は、シグネチャパターン保存部202をサーチして、未だ検出のために読み出されていない他のシグネチャ番号S2(≠S1)があるかどうかをチェックする(ステップ313)。他のシグネチャ番号S2が存在すれば(ステップ313のYES)、制御部201は、シグネチャパターンb(S2)をシグネチャパターン保存部202から読み出しシンボル相関計算部203へ転送すると共に、AICH、EAICH検出対象となる受信シンボルデータIa[k],Qa[k]をシンボル相関計算部203へ送る(ステップ314)。すなわち、シグネチャ番号S2に対するEAICHのシグネチャパターンb(S2)で同じ検証対象シンボルIa[k],Qa[k]に対し相関計算を行う。
【0029】
シンボル相関計算部203は、受信シンボルデータIa[k],Qa[k]とシグネチャパターンb(S2)との相関を次式により計算し、相関結果Ic,Qcを生成する(ステップ314)。
【0030】
Ic=Σb(S2)[2k]・Ia[k]
Qc=Σb(S2)[2k+1]・Ia[k]
異なるシグネチャ番号のシグネチャパターン間は直交しているため、シグネチャ番号の異なるシグネチャパターンとの相関計算結果Ic,Qcは理想的にはゼロとなり、シグネチャ番号が一致した場合は相関が取れる。
【0031】
続いて、パワー計算部204が相関計算結果Ic,QcのパワーPcを計算し判定部205へ出力する(ステップ315)。判定部205はパワー計算結果Pcとパワー判定しきい値P1とを比較し(ステップ315)、Pc<P1ならば(ステップ316のYES)、自端末から送ったシグネチャ番号S2で基地局からのAICHもEAICHも送信されていないと判断し、ステップ313に戻って次のシグネチャ番号S2に進む。
【0032】
Pc≧P1ならば(ステップ316のNO)、判定部205はパワー計算結果Pbとパワー判定しきい値P2とを比較する(ステップ317)。
【0033】
Pc>P2ならば(ステップ317のYES)、判定部205はAICH+EAICHが同じシグネチャ番号S2で送信されてきたと判断し、さらに相関計算結果−IcとQcとの大きさを比較する(ステップ318)。Qc<−Icならば(ステップ318のYES)、EAICH=Posと判断し、上述したようにAICH=Negであるから、これらを上位システムに返す(ステップ319)。Qc≧−Icならば(ステップ318のNO)、EAICH=Negと判断し、同じくAICH=Negであるから、これらを上位システムに返す(ステップ320)。この時のAICHはシグネチャ番号が違う事から自端末へのAICHではないので、AICHとしての判定は行わない。
【0034】
P2≧Pc≧P1であれば(ステップ317のNO)、判定部205は相関計算結果Ic,QcのIQ座標系での位相を判定する。まずIc>0かつQc>0であれば(ステップ321のYES)、IQ座標系の第1象限にあるので上述したステップ319へ、Ic<0かつQc<0であれば(ステップ321のNO、ステップ322のYES)、IQ座標系の第3象限にあるので上述したステップ320へそれぞれ進む。
【0035】
それ以外の場合、すなわちIc,Qcが第2あるいは第4象限である場合には(ステップ311のNO)、シグネチャパターンS2で送信されてきたのはAICHであり、このシグネチャ番号のEAICHはないと判断し、ステップ313に戻って次のシグネチャ番号S2に進む。以上の動作をEAICHの検出結果が得られるまで、全てのシグネチャ番号S2に対して繰り返す。
【0036】
EAICHの検出結果が得られる前にシグネチャ番号S2をすべて検出した場合には(ステップ313のNO)、AICH=Negとし、EAICHを未検出として上位システムに返す(ステップ323)。
【0037】
3.効果
以上述べた本発明の実施例によれば、AICH、EAICHが同じシグネチャ番号で送信されてきてもAICH、EAICHを正しく判定することができる。
【0038】
4.他の実施例
上記実施例ではEAICH検出においてはEAICHのシグネチャパターンを利用したが、AICHのシグネチャパターンでも構わない。判定条件が変更になるだけである。この場合、両方のシグネチャパターンを例えばシグネチャパターン保存部202に保持する必要がないという利点がある。
【0039】
5.付記
上述した実施形態の一部あるいは全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
(付記1)
(付記1)
移動通信システムにおける無線通信装置であって、
複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、
前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、
前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、
前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)のシンボルを判定する判定手段と、
を有し、
前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、
前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【0041】
(付記2)
前記判定手段は、
前記パワー計算結果が所定のしきい値より大きいか否かに依存してAICHおよびEAICHが同一の第1シグネチャパターンで送信されているか否かを判定し、
同一の第1シグネチャパターンで送信されていると判定された場合にはAICHのシンボルを負応答(Negative Acknowledgement)と判定すると共に前記相関結果のQ成分とI成分との比較結果に応じてEAICHのシンボルを判定する、ことを特徴とする付記1に記載の無線通信装置。
【0042】
(付記3)
前記判定手段は、同一の第1シグネチャパターンで送信されていない場合、前記相関結果の位相がIQ座標平面上の第1象限に位置すればAICHのシンボルを正応答(Positive Acknowledgement)と判定することを特徴とする付記2に記載の無線通信装置。
【0043】
(付記4)
前記判定手段は、EAICHのシンボルを判定するまで、前記複数のシグネチャパターンから前記第2シグネチャパターンを順次選択することを特徴とする付記1−3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【0044】
(付記5)
前記判定手段は、前記第2相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第1象限に位置する場合にはEAICHのシンボルを正応答と判定し、第3象限に位置する場合には負応答と判定することを特徴とする付記4に記載の無線通信装置。
【0045】
(付記6)
無線通信装置におけるAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)の検出方法であって、
前記無線通信装置が、複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICHおよびEAICHのシンボルを判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、
前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、
前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、
前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、
ことを特徴とするAICH/EAICH検出方法。
【0046】
(付記7)
前記判定手段は、
前記パワー計算結果が所定のしきい値より大きいか否かに依存してAICHおよびEAICHが同一の第1シグネチャパターンで送信されているか否かを判定し、
同一の第1シグネチャパターンで送信されていると判定された場合にはAICHのシンボルを負応答(Negative Acknowledgement)と判定すると共に前記相関結果のQ成分とI成分との比較結果に応じてEAICHのシンボルを判定する、ことを特徴とする付記6に記載のAICH/EAICH検出方法。
【0047】
(付記8)
前記判定手段は、同一の第1シグネチャパターンで送信されていない場合、前記相関結果の位相がIQ座標平面上の第1象限に位置すればAICHのシンボルを正応答(Positive Acknowledgement)と判定することを特徴とする付記7に記載のAICH/EAICH検出方法。
【0048】
(付記9)
前記判定手段は、EAICHのシンボルを判定するまで、前記複数のシグネチャパターンから前記第2シグネチャパターンを順次選択することを特徴とする付記6−8のいずれか1項に記載のAICH/EAICH検出方法。
【0049】
(付記10)
前記判定手段は、前記第2相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第1象限に位置する場合にはEAICHのシンボルを正応答と判定し、第3象限に位置する場合には負応答と判定することを特徴とする付記9に記載のAICH/EAICH検出方法。
【0050】
(付記11)
付記1−5のいずれか1項に記載された無線通信装置を備えた移動端末とAICHおよびEAICHを送信する基地局とを有する移動通信システム。
【0051】
(付記12)
無線通信装置におけるプログラム制御プロセッサにAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)の検出機能を実現するプログラムであって、
前記無線通信装置が、複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICHおよびEAICHのシンボルを判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、
前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、
前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、
前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、
ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とするプログラム。
【0052】
(付記13)
前記判定手段は、
前記パワー計算結果が所定のしきい値より大きいか否かに依存してAICHおよびEAICHが同一の第1シグネチャパターンで送信されているか否かを判定し、
同一の第1シグネチャパターンで送信されていると判定された場合にはAICHのシンボルを負応答(Negative Acknowledgement)と判定すると共に前記相関結果のQ成分とI成分との比較結果に応じてEAICHのシンボルを判定する、
ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とする付記12に記載のプログラム。
【0053】
(付記14)
前記判定手段は、同一の第1シグネチャパターンで送信されていない場合、前記相関結果の位相がIQ座標平面上の第1象限に位置すればAICHのシンボルを正応答(Positive Acknowledgement)と判定する、ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とする付記13に記載のプログラム。
【0054】
(付記15)
前記判定手段は、EAICHのシンボルを判定するまで、前記複数のシグネチャパターンから前記第2シグネチャパターンを順次選択する、ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とする付記12−14のいずれか1項に記載のプログラム。
【0055】
(付記16)
前記判定手段は、前記第2相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第1象限に位置する場合にはEAICHのシンボルを正応答と判定し、第3象限に位置する場合には負応答と判定する、ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とする付記15に記載のプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明はWCDMA無線通信システムにおける無線通信装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
101 受信部
102 逆拡散部
103 伝送路推定部
104 シンボル相関計算部
105 AICHシグネチャパターン
106 EAICHシグネチャパターン
107 検出部
201 制御部
202 シグネチャパターン保存部
203 シンボル相関計算部
204 パワー計算部
205 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムにおける無線通信装置であって、
複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、
前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、
前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、
前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)のシンボルを判定する判定手段と、
を有し、
前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、
前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記パワー計算結果が所定のしきい値より大きいか否かに依存してAICHおよびEAICHが同一の第1シグネチャパターンで送信されているか否かを判定し、
同一の第1シグネチャパターンで送信されていると判定された場合にはAICHのシンボルを負応答(Negative Acknowledgement)と判定すると共に前記相関結果のQ成分とI成分との比較結果に応じてEAICHのシンボルを判定する、ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記判定手段は、同一の第1シグネチャパターンで送信されていない場合、前記相関結果の位相がIQ座標平面上の第1象限に位置すればAICHのシンボルを正応答(Positive Acknowledgement)と判定することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記判定手段は、EAICHのシンボルを判定するまで、前記複数のシグネチャパターンから前記第2シグネチャパターンを順次選択することを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第2相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第1象限に位置する場合にはEAICHのシンボルを正応答と判定し、第3象限に位置する場合には負応答と判定することを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線通信装置におけるAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)の検出方法であって、
前記無線通信装置が、複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICHおよびEAICHのシンボルを判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、
前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、
前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、
前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、
ことを特徴とするAICH/EAICH検出方法。
【請求項7】
請求項1−5のいずれか1項に記載された無線通信装置を備えた移動端末とAICHおよびEAICHを送信する基地局とを有する移動通信システム。
【請求項8】
無線通信装置におけるプログラム制御プロセッサにAICH(Acquisition Indicator Channel)およびEAICH(Enhanced Acquisition Indicator Channel)の検出機能を実現するプログラムであって、
前記無線通信装置が、複数のシグネチャパターンを予め格納する格納手段と、前記複数のシグネチャパターンから選択されたシグネチャパターンと受信シンボルとの相関を計算する相関計算手段と、前記相関結果からパワーを計算するパワー計算手段と、前記相関結果と前記パワー計算結果とを用いてAICHおよびEAICHのシンボルを判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段が、前記複数のシグネチャパターンのうち制御信号の送信に用いた第1シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第1相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいて、AICHおよびEAICHのシンボルを判定し、
前記第1相関結果の位相が前記IQ座標平面上の第3象限に位置する場合には、
前記相関計算手段が前記第1シグネチャパターン以外の第2シグネチャパターンと前記受信シンボルとの第2相関結果を計算し、
前記判定手段が前記パワー計算手段により計算された前記第2相関結果のパワーとIQ座標平面上の位相とに基づいてEAICHのシンボルを判定する、
ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186686(P2012−186686A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48850(P2011−48850)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】