無線通信装置及び受信ウェイトの更新方法
【課題】少ない数の既知信号を用いて精度の高い受信ウェイトを得ることが可能な技術を提供する。
【解決手段】受信ウェイト処理部51で行われる各アレイ処理では、受信ウェイトが、複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号が使用されて複数回更新される。複数回のアレイ処理では、複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつそれらのうちの少なくとも一つが複数回使用され、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なる。各アレイ処理では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、複数の既知信号が使用される方向が逆方向である。
【解決手段】受信ウェイト処理部51で行われる各アレイ処理では、受信ウェイトが、複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号が使用されて複数回更新される。複数回のアレイ処理では、複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつそれらのうちの少なくとも一つが複数回使用され、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なる。各アレイ処理では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、複数の既知信号が使用される方向が逆方向である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いた無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、無線通信装置が備える複数のアンテナでの受信指向性を制御する技術が開示されている。特許文献1の技術では、複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトを、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムやRLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズムなどの逐次推定アルゴリズムを用いて算出している。逐次推定アルゴリズムを用いて受信ウェイトを算出する際には、複数のアンテナでの受信信号に含まれる既知信号についての参照信号に対する誤差が小さくなるように受信ウェイトが逐次更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−211304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知信号については、データ信号と異なり、当該既知信号を用いてユーザデータや制御データなどのデータ(トラフィック)を伝送することができない。したがって、伝送スループットを向上するためには、受信ウェイトを更新する際に使用される既知信号の数は少ない方が好ましい。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、少ない数の既知信号を用いて精度の高い受信ウェイトを得ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、複数のアンテナと、前記複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトを更新し、更新終了後の受信ウェイトを前記複数のアンテナでの受信信号に設定する受信ウェイト処理部とを備え、前記受信ウェイト処理部は、受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理を行い、前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って使用される方向が逆方向である。
【0007】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記受信ウェイト処理部は、前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ周波数帯域で受信された複数のデータ信号に共通に設定し、前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ時間帯で受信された複数のデータ信号に共通に設定する。
【0008】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記受信ウェイト処理部は、前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号のうち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ周波数帯域で受信されるデータ信号に設定し、前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号うち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ時間帯で受信されるデータ信号に設定する。
【0009】
また、本発明に係る受信ウェイトの更新方法は、無線通信装置が備える複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトの更新方法であって、受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理が行われ、前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用される方向が逆方向である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少ない数の既知信号を用いて精度の高い受信ウェイトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る制御部の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る受信ウェイト処理部の構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図5】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理と比較される受信ウェイト更新処理を示す図ある。
【図6】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図7】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図8】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図9】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図10】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の変形例の一例を示す図である。
【図11】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の変形例と比較される受信ウェイト更新処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施の形態に係る無線通信装置100の構成を示す図である。本実施の形態に係る無線通信装置100は、例えば、互いに直交する複数のサブキャリアが重畳されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を使用して通信相手装置と通信を行う。また、無線通信装置100は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御する。
【0013】
図1に示されるように、無線通信装置100は、無線通信部1と、複数のD/A変換部2と、複数のA/D変換部3と、制御部4とを備えている。
【0014】
制御部4は、CPU、DSP及びメモリなどで構成されている。制御部4での各種機能は、CPU及びDSPがメモリ内のプログラムを実行することによって実現される。制御部4は、送信用のベースバンドのOFDM信号を生成して複数のD/A変換部2に出力する。また制御部4は、複数のA/D変換部3から出力されるOFDM信号に含まれる、ユーザデータや制御データなどを取得する。
【0015】
無線通信部1は、複数のアンテナ10aから成るアレイアンテナ10と、複数の送信部11と、複数の受信部12とを備えている。各アンテナ10aは、通信相手装置から送信されるOFDM信号を受信する。複数のアンテナ10aで受信されたOFDM信号は、複数の受信部12にそれぞれ入力される。また、複数の送信部11が出力するOFDM信号は複数のアンテナ10aにそれぞれ入力される。これにより、各アンテナ10aからOFDM信号が無線送信される。
【0016】
各D/A変換部2は、制御部4から入力される、デジタル形式のOFDM信号をアナログ形式のOFDM信号に変換して出力する。複数の送信部11には、複数のD/A変換部2から出力されるOFDM信号がそれぞれ入力される。各送信部11は、入力されたベースバンドのOFDM信号に対してアップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域のOFDM信号を生成して出力する。
【0017】
各受信部12は、入力される搬送帯域のOFDM信号に対して増幅処理及びダウンコンバート等を行って、ベースバンドのOFDM信号を生成して出力する。複数のA/D変換部3には、複数の受信部12から出力されるアナログ形式のOFDM信号がそれぞれ入力される。各A/D変換部3は、入力されるアナログ形式のOFDM信号をデジタル形式のOFDM信号に変換して出力する。
【0018】
図2は制御部4の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、制御部4は、複数のIDFT部40と、送信ウェイト処理部41と、送信信号生成部42とを備えている。さらに制御部4は、複数のDFT部50と、受信ウェイト処理部51と、受信データ取得部52とを備えている。
【0019】
複数のDFT部50には、複数のA/D変換部3から出力されるOFDM信号がそれぞれ入力される。各DFT部50は、入力されるOFDM信号に対して離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行う。これにより、各DFT部50では、入力されたOFDM信号を構成する複数のサブキャリアをそれぞれ変調する複数の複素シンボルが得られる。以後、DFT部50で得られる複素シンボルを「受信シンボル」と呼ぶ。また、DFT部50で得られる複数の複素シンボルを「受信シンボル列」と呼ぶ。各DFT部50では、受信シンボルとして、既知信号である既知の複素シンボル(以後、「既知シンボル」と呼ぶ)と、データ信号である、データを示す複素シンボル(以後、「データシンボル」と呼ぶ)とが取得される。各DFT部50で得られた受信シンボル列は、受信ウェイト処理部51に入力される。
【0020】
受信ウェイト処理部51は、各DFT部50から出力される受信シンボル列に含まれる複数のデータシンボルに設定する受信ウェイトを、例えばMMSE(最小二乗誤差法)を用いて算出する。受信ウェイトは、各DFT部50から出力される受信シンボル列に含まれる既知シンボルに基づいて算出される。
【0021】
受信ウェイト処理部51は、複数のDFT部50からそれぞれ入力された複数の受信シンボル列のそれぞれについて、当該受信シンボル列に含まれる複数のデータシンボルのそれぞれに対して、対応する受信ウェイトを乗算(複素乗算)する。そして、受信ウェイト処理部51は、複数の受信シンボル列に含まれる、同一のサブキャリアについての受信ウェイト乗算後の複数のデータシンボルを加算する。これにより、アレイアンテナ10の受信指向性に関するビームが、通信相手装置からの一つのサブキャリア(希望波)に向けられるようになるとともに、アレイアンテナ10の受信指向性に関するヌルが干渉波に向けられるようになる。これにより、当該一つのサブキャリアについての希望データシンボルが取得される。つまり、複数の受信シンボル列に含まれる、同一のサブキャリアについての受信ウェイト乗算後の複数のデータシンボルを足し合わせて得られる新たなデータシンボルでは、干渉成分が除去されており、当該新たなデータシンボルが希望データシンボルとして取得される。受信ウェイト処理部51は、OFDM信号に含まれる、データシンボルで変調された複数のサブキャリアのそれぞれについて希望データシンボルを取得して出力する。
【0022】
受信データ取得部52は、受信ウェイト処理部51から出力される希望データシンボルをビットデータに変換する。これにより、受信データ取得部52では、通信相手装置から送信されるOFDM信号に含まれるユーザデータや制御データが取得される。
【0023】
送信信号生成部42は、通信相手装置に送信する送信データを生成する。そして、送信信号生成部42は、生成した送信データを、OFDM信号を構成する複数のサブキャリアにそれぞれ対応する複数の複素シンボルに変換し、当該複数の送信シンボルを送信ウェイト処理部41に入力する。以後、送信信号生成部42で生成される複素シンボルを「送信シンボル」と呼ぶ。また、送信信号生成部42で生成される複数の複素シンボルを「送信シンボル列」と呼ぶ。
【0024】
送信ウェイト処理部41は、入力された送信シンボル列を、アンテナ10aの数だけ準備する。この複数の送信シンボル列は、複数のアンテナ10aからそれぞれ送信される。そして、送信ウェイト処理部41は、各送信シンボル列に設定する送信ウェイト、言い換えれば、各アンテナ10aからの送信信号に設定する送信ウェイトを算出する。送信ウェイトは、受信ウェイト処理部51で算出された受信ウェイトに基づいて算出することができる。
【0025】
送信ウェイト処理部41は、生成した複数の送信シンボル列のそれぞれについて、当該送信シンボル列を構成する複数の送信シンボルのそれぞれに対して、対応する送信ウェイトを乗算する。その後、送信ウェイト処理部41は、送信ウェイト乗算後の複数の送信シンボル列を、複数のIDFT部40にそれぞれ入力する。
【0026】
各IDFT部40は、入力される送信シンボル列に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse DFT)を行う。これにより、IDFT部40では、送信シンボル列を構成する複数の送信シンボルで変調された複数のサブキャリアが重畳されたベースバンドのOFDM信号が得られる。
【0027】
図3は受信ウェイト処理部51の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、受信ウェイト処理部51は、複数の複素乗算部510と、加算部511と、ウェイト算出部512とを備えている。ウェイト算出部512は、複数の受信ウェイトRWを更新するウェイト更新部512aと、誤差信号生成部512bとを備えている。
【0028】
複数の複素乗算部510には、複数のDFT部50で取得された、同一のサブキャリアについての受信シンボルRSがそれぞれ入力される。また、複数の複素乗算部510には、ウェイト算出部512から出力される複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力される。各複素乗算部510は、入力された受信シンボルRSに対して、入力された受信ウェイトRWを複素乗算し、受信ウェイトRWが乗算された受信シンボルRSを出力する。加算部511は、複数の複素乗算部510から出力される、受信ウェイトRWが乗算された受信シンボルRSを足し合わせて、それによって得られた新たな受信シンボルを復調シンボルDSとして出力する。
【0029】
誤差信号生成部512bは、加算部511で得られた既知の復調シンボルDSについての参照信号REFに対する誤差を示す誤差信号ESを生成して出力する。既知の復調シンボルDSとは、複数の複素乗算部510から出力される、受信ウェイトRWが乗算された既知シンボルを足し合わせて得られる新たな既知シンボルである。また参照信号REFは、既知の復調シンボルDSについての理想的な信号である。
【0030】
ウェイト更新部512aは、逐次推定アルゴリズムを用いて、誤差信号ESが小さくなるように複数の受信ウェイトRWを更新する。本実施の形態に係るウェイト更新部512aは、例えばRLSアルゴリズムを使用して、誤差信号ES等に基づいて複数の受信ウェイトRWを更新する。
【0031】
ウェイト更新部512aが誤差信号ES等に基づいて複数の受信ウェイトRWを一度更新すると、複数の複素乗算部510には、更新された複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力されるとともに、新たな複数の既知シンボルがそれぞれ入力される。そうすると、加算部511からは新たな既知の復調シンボルDSが出力され、その結果、誤差信号生成部512bからは新たな誤差信号が出力される。ウェイト更新部512aが、この新たな誤差信号ES等に基づいて複数の受信ウェイトRWを一度更新すると、複数の複素乗算部510には、更新後の複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力されるとともに、新たな複数の既知シンボルがそれぞれ入力される。以後、受信ウェイト処理部51は同様に動作する。
【0032】
このように、受信ウェイト処理部51では、一つの既知の復調シンボルDSに基づいて、複数の受信ウェイトRWが1回更新される。一つの既知の復調シンボルDSは、複数のアンテナ10aで受信される、通信相手装置がある一つのサブキャリアを用いて送信する既知シンボルが足し合わされたものであることから、受信ウェイト処理部51では、ある一つのサブキャリアが用いられて通信相手装置から送信される既知シンボルに基づいて、複数の受信ウェイトRWが1回更新されると言える。つまり、受信ウェイト処理部51では、通信相手装置がある周波数帯域を用いて送信する一つの既知シンボルに基づいて、複数の受信ウェイトRWが1回更新される。
【0033】
ウェイト更新部512aは、複数の受信ウェイトRWを所定回数更新すると、複数の受信ウェイトRWの更新を終了する。これにより、データシンボルに乗算される受信ウェイトRWが得られる。
【0034】
なお、RLSアルゴリズムを用いて複数の受信ウェイトRWを更新する際には、アレイアンテナ10を構成する複数のアンテナ10aの数をXとすると、一般的には、複数の受信ウェイトRWを(2×X)回更新すれば、誤差信号ESが十分に小さくなって、複数の受信ウェイトRWの精度が十分となる。
【0035】
更新終了後の複数の受信ウェイトRWが複数の複素乗算部510にそれぞれ入力される際には、当該複数の複素乗算部510には、複数のDFT部50で取得された、同一のサブキャリアについてのデータシンボルがそれぞれ入力される。このとき、加算部511から出力される復調シンボルDSは、干渉成分が除去されたデータシンボルである希望データシンボルとなる。
【0036】
このようにして、受信ウェイト処理部51では、アレイアンテナ10が受信するOFDM信号に含まれる、データシンボルで変調された複数のサブキャリアのそれぞれについて希望データシンボルが取得される。
【0037】
<受信ウェイト更新処理の詳細>
次に、本実施の形態に係る受信ウェイト処理部51での受信ウェイト更新処理についてさらに詳細に説明する。
【0038】
本実施の形態では、受信ウェイト処理部51は、受信ウェイト更新処理において、受信ウェイトRWを複数回更新するアレイ処理をN回(N≧2)行うようになっている。そして、このN回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトRWが、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、周波数方向に並ぶM個(M≧2)の既知シンボルのうちの少なくとも二つの既知シンボルがそれぞれ使用されて少なくとも2回更新される。以後、このM個の既知シンボルのそれぞれを「受信既知シンボル」と呼ぶ。したがって、N回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトRWが、M個の受信既知シンボルのうちの複数の既知シンボルがそれぞれ使用されて複数回更新される。
【0039】
さらに、N回のアレイ処理においては、M個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつM個の受信既知シンボルのうちの少なくとも一つが複数回使用される。
【0040】
さらに、N回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。
【0041】
さらに、N回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。
【0042】
そして、N回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向が逆方向となっている。
【0043】
このように、本実施の形態に係る受信ウェイト更新処理では、N回のアレイ処理において、受信ウェイトRWの更新に使用されるM個の受信既知シンボルのうちの少なくとも一つが複数回使用されるため、少ない数の既知シンボルを用いて多くの回数受信ウェイトRWを更新することが可能となる。受信ウェイトRWの更新回数が増えると、受信ウェイトRWの精度が向上することから、少ない数の既知シンボルを用いて精度の高い受信ウェイトRWを得ることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態に係る受信ウェイト更新処理では、N回のアレイ処理において、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっており、さらに、N回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用され、さらに、N回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理では、受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向が逆方向となっている。このため、N回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される二つの既知シンボルを常に違うものとすることができるとともに、当該二つの既知シンボルについての伝搬路特性の差を抑えることができる。連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される二つの既知シンボルが同じである場合や、当該二つの既知シンボルについての伝搬路特性の差が大きい場合には、受信ウェイトRWを更新したとしても受信ウェイトRWの精度が向上しにくいことから、本実施の形態のようにして受信ウェイトRWを更新することによって、誤差信号ESを十分に小さくすることができ、受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0045】
以下に、図を参照しながら、本実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の具体例について説明する。以下の説明では、それらの周波数帯域が周波数方向で連続する12個のサブキャリアを用いて通信相手装置から送信される送信信号、言い換えれば、12個のサブキャリア分の周波数帯域の送信信号を無線通信装置100が受信する場合に、その受信信号(サブキャリア12個分の周波数帯域の受信信号)に含まれるデータシンボルに設定する受信ウェイトRWを求める際の受信ウェイト更新処理の具体例について説明する。説明の便宜上、当該12個のサブキャリアのそれぞれを「対象サブキャリア」と呼ぶ。また、当該12個のサブキャリアを用いてそれぞれ送信される12個の既知シンボルに対して、周波数帯域が低いものから順に“1”から“12”までのシンボル番号をそれぞれ付与する。シンボル番号1〜12の既知シンボルは同じ時間帯で受信される。
【0046】
図4は、受信ウェイト処理部51での受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。図4では、シンボル番号1〜12の既知シンボルのそれぞれが、対応するシンボル番号の横に四角で示されている。そして、当該四角の中に示される回数は、受信ウェイト更新処理での何回目の受信ウェイトRWの更新に当該四角で示される既知シンボルが使用されるかを示している。後述の図においても同様である。
【0047】
図4に示される受信ウェイト更新処理では、N=2となっており、2回のアレイ処理が行われる。そして、図4の例では、M=12となっており、周波数方向に並ぶシンボル番号1〜12の12個の既知シンボルが2回のアレイ処理で使用される。1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜12の12個の既知シンボルがそれぞれ使用されて12回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、シンボル番号2〜12の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。よって、図4の例では、受信ウェイトRWは12個の受信既知シンボルを用いて合計23回更新される。
【0048】
さらに、図4の例では、2回のアレイ処理においては、12個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ12個の受信既知シンボルのうち、シンボル番号2〜12の既知シンボルが2回使用される。
【0049】
さらに、図4の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルは互いに異なっている。例えば、1回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号12の既知シンボルであって、2回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号11の既知シンボルである。また、12回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号1の既知シンボルであって、13回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号2の既知シンボルである。
【0050】
さらに、図4の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で仕様される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用される。
【0051】
そして、図4の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは周波数帯域が小さいものから順番に使用されることから、図4に示されるように、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。
【0052】
以上のように、図4に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは12個の受信既知シンボル(シンボル番号1〜12の既知シンボル)を用いて23回更新される。よって、図5に示されるように、シンボル番号1〜12の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを12回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて多くの回数受信ウェイトRWを更新することができる。その結果、受信ウェイトRWの精度が向上する。
【0053】
さらに、図4の例では、連続する前後の受信ウェイトRWの更新では、周波数帯域が隣接する二つの既知シンボルが使用されるため、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される二つの既知シンボルについての伝搬路特性の差を抑えることができる。よって、受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0054】
図4のように受信ウェイトRWが更新される場合には、2回のアレイ処理が行われた受信ウェイトRW、つまり、23回更新された受信ウェイトRWを、12個の対象サブキャリアを用いてそれぞれ送信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。言い換えれば、2回のアレイ処理が行われた受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。ある対象サブキャリアで送信されるデータシンボル(当該対象サブキャリアを変調するデータシンボル)に対して受信ウェイトRWが設定される際には、複数のアンテナ10aでそれぞれ受信される、当該対象サブキャリアについての複数のデータシンボル(複数のDFT処理部50からそれぞれ出力される、当該対象サブキャリアについての複数のデータシンボル)に対して、2回のアレイ処理が行われた複数の受信ウェイトRWがそれぞれ設定される。そして、複数の受信ウェイトRWがそれぞれ設定された当該複数のデータシンボルを足し合わすことによって得られる新たなデータシンボルが受信データ取得部52によってビットデータに変換されてデータが取得される。
【0055】
なお、図4の例において、受信ウェイトRWを12回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、言い換えれば、受信ウェイトRWを12回程度更新することによって、受信ウェイト処理部51の誤差信号生成部512bが出力する誤差信号ESがある程度小さくなる場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボル(当該既知シンボルと同じサブキャリアで送信されるデータシンボル)に対して設定しても良い。
【0056】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号2の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり13回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号2の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0057】
また、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号12の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり23回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号12の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0058】
なお、シンボル番号1の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、1回目のアレイ処理においてシンボル番号1の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり12回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、13回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0059】
このように、ある程度更新された受信ウェイトRWに対して、ある既知シンボルを使用して1回更新することによって得られる更新後の受信ウェイトRWを、当該既知シンボルの周波数帯域で受信されるデータシンボルに設定することによって、当該データシンボルをより適切に受信することができる。よって、無線通信装置100の受信性能がさらに向上する。
【0060】
また、受信ウェイトRWを図4のように23回も更新しなくても受信ウェイトRWの精度が十分な場合には、受信ウェイトRWの精度が十分となるであろう最小の回数だけ受信ウェイトRWを更新すれば良い。図6は、受信ウェイトRWを17回更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合の受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【0061】
図6の例では、図4の例と同様に、N=2、M=12となっている。図6の例では、1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜6の6個の既知シンボルがそれぞれ使用されて6回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号2〜12の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。よって、図6の例では、受信ウェイトRWは合計17回更新される。
【0062】
さらに、図6の例では、2回のアレイ処理においては、12個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ12個の受信既知シンボルのうち、シンボル番号2〜6の6個の既知シンボルが2回使用される。
【0063】
さらに、図6の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。
【0064】
さらに、図6の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用される。
【0065】
そして、図6の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。
【0066】
以上のように、図6に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは12個の受信既知シンボルを用いて17回更新される。よって、上述の図5に示されるように、シンボル番号1〜12の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを12回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0067】
図6のように受信ウェイトRWが更新される場合には、2回のアレイ処理が行われた受信ウェイトRW、つまり、17回更新された受信ウェイトRWを、受信ウェイト更新処理で使用されたシンボル番号1〜12の12個の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0068】
なお、図6の例において、受信ウェイトRWを6回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号5の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり10回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号5の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。シンボル番号1の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、6回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、7回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0069】
図6の例では、1回目のアレイ処理において、シンボル番号1〜6の6個の既知シンボルを使用したが、その代わりに、図7に示されるように、例えば、シンボル番号1,3,5,7,9,11の6個の既知シンボルを使用しても良い。1回目のアレイ処理において、受信ウェイトRWを、図6の例のように周波数帯域が連続する複数の既知シンボルを使用して複数回更新する場合には、図7の例のように周波数帯域が連続していない複数の既知シンボルを使用して複数回更新する場合と比較して、受信ウェイトRWの精度を高めることが可能となる。受信ウェイトRWについては、その精度がある程度高まると、更新回数を増加させたとしてもそれほど精度が高くならないことから、図6の例のように、1回目のアレイ処理において、受信ウェイトRWを、周波数帯域が連続する複数の既知シンボルを使用して複数回更新して、その精度を高めることによって、より少ない回数で受信ウェイトRWの精度を所望値まで高めることができる。
【0070】
図4,6,7に示される受信ウェイト更新処理では、12個の対象サブキャリアでそれぞれ送信される12個の既知シンボルをすべて使用していたが、当該12個の既知シンボルをすべてを使用しなくても良い。図8は、当該12個の既知シンボルのうち、シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルだけが使用される場合の受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【0071】
図8の例では、N=2、M=9となっており、受信ウェイト更新処理では、周波数方向に並ぶシンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルが使用されて2回のアレイ処理が行われる。
【0072】
図8の例では、1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜6の6個の既知シンボルがそれぞれ使用されて6回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号3,5,7,9,11の5個の既知シンボルがそれぞれ使用されて5回更新される。よって、図8の例では、受信ウェイトRWは合計11回更新される。
【0073】
さらに、図8の例では、2回のアレイ処理においては、9個の受信既知シンボル(シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボル)のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ9個の受信既知シンボルのうち、シンボル番号3,5の2個の既知シンボルが2回使用される。
【0074】
さらに、図8の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。例えば、6回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号1の既知シンボルであって、7回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号3の既知シンボルである。また、9回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号7の既知シンボルであって、10回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号9の既知シンボルである。
【0075】
さらに、図8の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新で使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号3,5,7,9,11の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用される。
【0076】
そして、図8の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号3,5,7,9,11の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。
【0077】
以上のように、図8に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは、シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルを用いて11回更新される。よって、シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを9回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0078】
図8のように受信ウェイトRWが更新される場合には、受信ウェイトRWが11回程度更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合には、11回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0079】
一方で、受信ウェイトRWを6回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号3,5,7,9,11の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0080】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号3の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり7回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号3の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0081】
シンボル番号1の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、1回目のアレイ処理においてシンボル番号1の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり6回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号3の既知シンボルが使用された更新された受信ウェイトRW、つまり7回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0082】
シンボル番号2の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、6回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、7回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0083】
シンボル番号L(L=4,6,8,10)の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、最後のアレイ処理においてシンボル番号(L−1)を用いて更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号(L+1)を用いて更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0084】
そして、シンボル番号12の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、例えば、11回更新された受信ウェイトRWを設定する。
【0085】
<各種変形例>
<第1変形例>
上記の図4,6,7,8に示される受信ウェイト更新処理では、2回のアレイ処理が行われているが、3回以上のアレイ処理を行っても良い。図9は、N=3、つまり3回のアレイ処理が行われる受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【0086】
図9の例では、N=3、M=12となっており、図4に示される例において、3回目のアレイ処理が行われている。図8の例での3回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜11の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。したがって、図9の例では、受信ウェイトRWは合計34回更新される。
【0087】
図9の例では、3回のアレイ処理においては、12個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、シンボル番号2〜11の既知シンボルが3回使用され、シンボル番号1,12の既知シンボルが2回使用される。
【0088】
さらに、図9の例では、3回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。例えば、23回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号12の既知シンボルであって、24回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号11の既知シンボルである。
【0089】
さらに、図9の例では、3回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新で使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用され、3回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜11の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用される。
【0090】
そして、図9の例では、3回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理では、受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向が逆方向となっている。つまり、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。そして、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2と、3回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜11の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR3とは逆方向になっている。
【0091】
以上のように、図9に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは、シンボル番号1〜12の12個の既知シンボルを用いて34回更新される。よって、上述の図5の例と比較して、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0092】
図9のように受信ウェイトRWが更新される場合には、受信ウェイトRWが34回程度更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合には、34回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0093】
一方で、受信ウェイトRWを23回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(3回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号1〜11の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0094】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号8の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり27回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号8の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0095】
シンボル番号12の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては2回目のアレイ処理においてシンボル番号12の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり23回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号11の既知シンボルが使用された更新された受信ウェイトRW、つまり24回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0096】
<第2変形例>
上記の例では、受信ウェイトRWの更新に、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、周波数方向に並ぶM個の既知シンボルを使用していたが、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、時間方向に並ぶM個の既知シンボルを使用しても良い。図10は、この場合の受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。以下の説明では、今までの説明とは異なり、シンボル番号1〜12の既知シンボルは時間方向に沿って並んでいるものとする。
【0097】
図10の例では、N=2となっており、2回のアレイ処理が行われる。そして、図10の例では、M=12となっており、受信ウェイト更新処理では、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、時間方向に並ぶシンボル番号1〜12の12個の既知シンボルが使用される。シンボル番号1〜12の既知シンボルは同じ周波数帯域で受信される。
【0098】
1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜12の既知シンボルがそれぞれ使用されて12回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、シンボル番号2〜12の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。よって、図10の例では、受信ウェイトRWは12個の既知シンボルを用いて合計23回更新される。
【0099】
さらに、図10の例では、2回のアレイ処理においては、12個の既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ12個の既知シンボルのうち、シンボル番号2〜12の既知シンボルが2回使用される。
【0100】
さらに、図10の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。
【0101】
さらに、図10の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは時間方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは、送信時間帯(受信時間帯)が先のものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、送信時間帯(受信時間帯)が後のものから順番に使用される。
【0102】
そして、図10の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルが時間方向に沿って使用される方向DR11と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが時間方向に沿って使用される方向DR12とは逆方向になっている。
【0103】
以上のように、図10に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは12個の既知シンボルを用いて23回更新される。よって、図11に示されるように、時間方向に並ぶシンボル番号1〜12の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを12回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0104】
図10のように受信ウェイトRWが更新される場合には、受信ウェイトRWが23回程度更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合には、23回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ時間帯で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0105】
一方で、受信ウェイトRWを12回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ時間帯で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0106】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号4の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり15回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号4の既知シンボルと同じ時間帯で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。シンボル番号1の既知シンボルと同じ時間帯で受信されるデータシンボルに対しては1回目のアレイ処理においてシンボル番号1の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり12回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号2の既知シンボルが使用された更新された受信ウェイトRW、つまり13回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0107】
なお、受信ウェイトRWの更新に、時間方向に並ぶM個の既知シンボルを使用する場合であっても、図6,7のように、1回目のアレイ処理においてシンボル番号1〜12の既知シンボルのすべてを使用しなくても良い。また図8のように、複数のアレイ処理全体においてシンボル番号1〜12の既知シンボルのすべてを使用しなくても良い。また、図9のように、アレイ処理を3回以上行っても良い。
【符号の説明】
【0108】
10a アンテナ
51 受信ウェイト処理部
100 無線通信装置
RW 受信ウェイト
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いた無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、無線通信装置が備える複数のアンテナでの受信指向性を制御する技術が開示されている。特許文献1の技術では、複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトを、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムやRLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズムなどの逐次推定アルゴリズムを用いて算出している。逐次推定アルゴリズムを用いて受信ウェイトを算出する際には、複数のアンテナでの受信信号に含まれる既知信号についての参照信号に対する誤差が小さくなるように受信ウェイトが逐次更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−211304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知信号については、データ信号と異なり、当該既知信号を用いてユーザデータや制御データなどのデータ(トラフィック)を伝送することができない。したがって、伝送スループットを向上するためには、受信ウェイトを更新する際に使用される既知信号の数は少ない方が好ましい。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、少ない数の既知信号を用いて精度の高い受信ウェイトを得ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、複数のアンテナと、前記複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトを更新し、更新終了後の受信ウェイトを前記複数のアンテナでの受信信号に設定する受信ウェイト処理部とを備え、前記受信ウェイト処理部は、受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理を行い、前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って使用される方向が逆方向である。
【0007】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記受信ウェイト処理部は、前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ周波数帯域で受信された複数のデータ信号に共通に設定し、前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ時間帯で受信された複数のデータ信号に共通に設定する。
【0008】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記受信ウェイト処理部は、前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号のうち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ周波数帯域で受信されるデータ信号に設定し、前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号うち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ時間帯で受信されるデータ信号に設定する。
【0009】
また、本発明に係る受信ウェイトの更新方法は、無線通信装置が備える複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトの更新方法であって、受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理が行われ、前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用される方向が逆方向である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少ない数の既知信号を用いて精度の高い受信ウェイトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る制御部の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る受信ウェイト処理部の構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図5】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理と比較される受信ウェイト更新処理を示す図ある。
【図6】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図7】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図8】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図9】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【図10】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の変形例の一例を示す図である。
【図11】実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の変形例と比較される受信ウェイト更新処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施の形態に係る無線通信装置100の構成を示す図である。本実施の形態に係る無線通信装置100は、例えば、互いに直交する複数のサブキャリアが重畳されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を使用して通信相手装置と通信を行う。また、無線通信装置100は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御する。
【0013】
図1に示されるように、無線通信装置100は、無線通信部1と、複数のD/A変換部2と、複数のA/D変換部3と、制御部4とを備えている。
【0014】
制御部4は、CPU、DSP及びメモリなどで構成されている。制御部4での各種機能は、CPU及びDSPがメモリ内のプログラムを実行することによって実現される。制御部4は、送信用のベースバンドのOFDM信号を生成して複数のD/A変換部2に出力する。また制御部4は、複数のA/D変換部3から出力されるOFDM信号に含まれる、ユーザデータや制御データなどを取得する。
【0015】
無線通信部1は、複数のアンテナ10aから成るアレイアンテナ10と、複数の送信部11と、複数の受信部12とを備えている。各アンテナ10aは、通信相手装置から送信されるOFDM信号を受信する。複数のアンテナ10aで受信されたOFDM信号は、複数の受信部12にそれぞれ入力される。また、複数の送信部11が出力するOFDM信号は複数のアンテナ10aにそれぞれ入力される。これにより、各アンテナ10aからOFDM信号が無線送信される。
【0016】
各D/A変換部2は、制御部4から入力される、デジタル形式のOFDM信号をアナログ形式のOFDM信号に変換して出力する。複数の送信部11には、複数のD/A変換部2から出力されるOFDM信号がそれぞれ入力される。各送信部11は、入力されたベースバンドのOFDM信号に対してアップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域のOFDM信号を生成して出力する。
【0017】
各受信部12は、入力される搬送帯域のOFDM信号に対して増幅処理及びダウンコンバート等を行って、ベースバンドのOFDM信号を生成して出力する。複数のA/D変換部3には、複数の受信部12から出力されるアナログ形式のOFDM信号がそれぞれ入力される。各A/D変換部3は、入力されるアナログ形式のOFDM信号をデジタル形式のOFDM信号に変換して出力する。
【0018】
図2は制御部4の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、制御部4は、複数のIDFT部40と、送信ウェイト処理部41と、送信信号生成部42とを備えている。さらに制御部4は、複数のDFT部50と、受信ウェイト処理部51と、受信データ取得部52とを備えている。
【0019】
複数のDFT部50には、複数のA/D変換部3から出力されるOFDM信号がそれぞれ入力される。各DFT部50は、入力されるOFDM信号に対して離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行う。これにより、各DFT部50では、入力されたOFDM信号を構成する複数のサブキャリアをそれぞれ変調する複数の複素シンボルが得られる。以後、DFT部50で得られる複素シンボルを「受信シンボル」と呼ぶ。また、DFT部50で得られる複数の複素シンボルを「受信シンボル列」と呼ぶ。各DFT部50では、受信シンボルとして、既知信号である既知の複素シンボル(以後、「既知シンボル」と呼ぶ)と、データ信号である、データを示す複素シンボル(以後、「データシンボル」と呼ぶ)とが取得される。各DFT部50で得られた受信シンボル列は、受信ウェイト処理部51に入力される。
【0020】
受信ウェイト処理部51は、各DFT部50から出力される受信シンボル列に含まれる複数のデータシンボルに設定する受信ウェイトを、例えばMMSE(最小二乗誤差法)を用いて算出する。受信ウェイトは、各DFT部50から出力される受信シンボル列に含まれる既知シンボルに基づいて算出される。
【0021】
受信ウェイト処理部51は、複数のDFT部50からそれぞれ入力された複数の受信シンボル列のそれぞれについて、当該受信シンボル列に含まれる複数のデータシンボルのそれぞれに対して、対応する受信ウェイトを乗算(複素乗算)する。そして、受信ウェイト処理部51は、複数の受信シンボル列に含まれる、同一のサブキャリアについての受信ウェイト乗算後の複数のデータシンボルを加算する。これにより、アレイアンテナ10の受信指向性に関するビームが、通信相手装置からの一つのサブキャリア(希望波)に向けられるようになるとともに、アレイアンテナ10の受信指向性に関するヌルが干渉波に向けられるようになる。これにより、当該一つのサブキャリアについての希望データシンボルが取得される。つまり、複数の受信シンボル列に含まれる、同一のサブキャリアについての受信ウェイト乗算後の複数のデータシンボルを足し合わせて得られる新たなデータシンボルでは、干渉成分が除去されており、当該新たなデータシンボルが希望データシンボルとして取得される。受信ウェイト処理部51は、OFDM信号に含まれる、データシンボルで変調された複数のサブキャリアのそれぞれについて希望データシンボルを取得して出力する。
【0022】
受信データ取得部52は、受信ウェイト処理部51から出力される希望データシンボルをビットデータに変換する。これにより、受信データ取得部52では、通信相手装置から送信されるOFDM信号に含まれるユーザデータや制御データが取得される。
【0023】
送信信号生成部42は、通信相手装置に送信する送信データを生成する。そして、送信信号生成部42は、生成した送信データを、OFDM信号を構成する複数のサブキャリアにそれぞれ対応する複数の複素シンボルに変換し、当該複数の送信シンボルを送信ウェイト処理部41に入力する。以後、送信信号生成部42で生成される複素シンボルを「送信シンボル」と呼ぶ。また、送信信号生成部42で生成される複数の複素シンボルを「送信シンボル列」と呼ぶ。
【0024】
送信ウェイト処理部41は、入力された送信シンボル列を、アンテナ10aの数だけ準備する。この複数の送信シンボル列は、複数のアンテナ10aからそれぞれ送信される。そして、送信ウェイト処理部41は、各送信シンボル列に設定する送信ウェイト、言い換えれば、各アンテナ10aからの送信信号に設定する送信ウェイトを算出する。送信ウェイトは、受信ウェイト処理部51で算出された受信ウェイトに基づいて算出することができる。
【0025】
送信ウェイト処理部41は、生成した複数の送信シンボル列のそれぞれについて、当該送信シンボル列を構成する複数の送信シンボルのそれぞれに対して、対応する送信ウェイトを乗算する。その後、送信ウェイト処理部41は、送信ウェイト乗算後の複数の送信シンボル列を、複数のIDFT部40にそれぞれ入力する。
【0026】
各IDFT部40は、入力される送信シンボル列に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse DFT)を行う。これにより、IDFT部40では、送信シンボル列を構成する複数の送信シンボルで変調された複数のサブキャリアが重畳されたベースバンドのOFDM信号が得られる。
【0027】
図3は受信ウェイト処理部51の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、受信ウェイト処理部51は、複数の複素乗算部510と、加算部511と、ウェイト算出部512とを備えている。ウェイト算出部512は、複数の受信ウェイトRWを更新するウェイト更新部512aと、誤差信号生成部512bとを備えている。
【0028】
複数の複素乗算部510には、複数のDFT部50で取得された、同一のサブキャリアについての受信シンボルRSがそれぞれ入力される。また、複数の複素乗算部510には、ウェイト算出部512から出力される複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力される。各複素乗算部510は、入力された受信シンボルRSに対して、入力された受信ウェイトRWを複素乗算し、受信ウェイトRWが乗算された受信シンボルRSを出力する。加算部511は、複数の複素乗算部510から出力される、受信ウェイトRWが乗算された受信シンボルRSを足し合わせて、それによって得られた新たな受信シンボルを復調シンボルDSとして出力する。
【0029】
誤差信号生成部512bは、加算部511で得られた既知の復調シンボルDSについての参照信号REFに対する誤差を示す誤差信号ESを生成して出力する。既知の復調シンボルDSとは、複数の複素乗算部510から出力される、受信ウェイトRWが乗算された既知シンボルを足し合わせて得られる新たな既知シンボルである。また参照信号REFは、既知の復調シンボルDSについての理想的な信号である。
【0030】
ウェイト更新部512aは、逐次推定アルゴリズムを用いて、誤差信号ESが小さくなるように複数の受信ウェイトRWを更新する。本実施の形態に係るウェイト更新部512aは、例えばRLSアルゴリズムを使用して、誤差信号ES等に基づいて複数の受信ウェイトRWを更新する。
【0031】
ウェイト更新部512aが誤差信号ES等に基づいて複数の受信ウェイトRWを一度更新すると、複数の複素乗算部510には、更新された複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力されるとともに、新たな複数の既知シンボルがそれぞれ入力される。そうすると、加算部511からは新たな既知の復調シンボルDSが出力され、その結果、誤差信号生成部512bからは新たな誤差信号が出力される。ウェイト更新部512aが、この新たな誤差信号ES等に基づいて複数の受信ウェイトRWを一度更新すると、複数の複素乗算部510には、更新後の複数の受信ウェイトRWがそれぞれ入力されるとともに、新たな複数の既知シンボルがそれぞれ入力される。以後、受信ウェイト処理部51は同様に動作する。
【0032】
このように、受信ウェイト処理部51では、一つの既知の復調シンボルDSに基づいて、複数の受信ウェイトRWが1回更新される。一つの既知の復調シンボルDSは、複数のアンテナ10aで受信される、通信相手装置がある一つのサブキャリアを用いて送信する既知シンボルが足し合わされたものであることから、受信ウェイト処理部51では、ある一つのサブキャリアが用いられて通信相手装置から送信される既知シンボルに基づいて、複数の受信ウェイトRWが1回更新されると言える。つまり、受信ウェイト処理部51では、通信相手装置がある周波数帯域を用いて送信する一つの既知シンボルに基づいて、複数の受信ウェイトRWが1回更新される。
【0033】
ウェイト更新部512aは、複数の受信ウェイトRWを所定回数更新すると、複数の受信ウェイトRWの更新を終了する。これにより、データシンボルに乗算される受信ウェイトRWが得られる。
【0034】
なお、RLSアルゴリズムを用いて複数の受信ウェイトRWを更新する際には、アレイアンテナ10を構成する複数のアンテナ10aの数をXとすると、一般的には、複数の受信ウェイトRWを(2×X)回更新すれば、誤差信号ESが十分に小さくなって、複数の受信ウェイトRWの精度が十分となる。
【0035】
更新終了後の複数の受信ウェイトRWが複数の複素乗算部510にそれぞれ入力される際には、当該複数の複素乗算部510には、複数のDFT部50で取得された、同一のサブキャリアについてのデータシンボルがそれぞれ入力される。このとき、加算部511から出力される復調シンボルDSは、干渉成分が除去されたデータシンボルである希望データシンボルとなる。
【0036】
このようにして、受信ウェイト処理部51では、アレイアンテナ10が受信するOFDM信号に含まれる、データシンボルで変調された複数のサブキャリアのそれぞれについて希望データシンボルが取得される。
【0037】
<受信ウェイト更新処理の詳細>
次に、本実施の形態に係る受信ウェイト処理部51での受信ウェイト更新処理についてさらに詳細に説明する。
【0038】
本実施の形態では、受信ウェイト処理部51は、受信ウェイト更新処理において、受信ウェイトRWを複数回更新するアレイ処理をN回(N≧2)行うようになっている。そして、このN回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトRWが、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、周波数方向に並ぶM個(M≧2)の既知シンボルのうちの少なくとも二つの既知シンボルがそれぞれ使用されて少なくとも2回更新される。以後、このM個の既知シンボルのそれぞれを「受信既知シンボル」と呼ぶ。したがって、N回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトRWが、M個の受信既知シンボルのうちの複数の既知シンボルがそれぞれ使用されて複数回更新される。
【0039】
さらに、N回のアレイ処理においては、M個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつM個の受信既知シンボルのうちの少なくとも一つが複数回使用される。
【0040】
さらに、N回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。
【0041】
さらに、N回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。
【0042】
そして、N回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向が逆方向となっている。
【0043】
このように、本実施の形態に係る受信ウェイト更新処理では、N回のアレイ処理において、受信ウェイトRWの更新に使用されるM個の受信既知シンボルのうちの少なくとも一つが複数回使用されるため、少ない数の既知シンボルを用いて多くの回数受信ウェイトRWを更新することが可能となる。受信ウェイトRWの更新回数が増えると、受信ウェイトRWの精度が向上することから、少ない数の既知シンボルを用いて精度の高い受信ウェイトRWを得ることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態に係る受信ウェイト更新処理では、N回のアレイ処理において、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっており、さらに、N回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用され、さらに、N回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理では、受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向が逆方向となっている。このため、N回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される二つの既知シンボルを常に違うものとすることができるとともに、当該二つの既知シンボルについての伝搬路特性の差を抑えることができる。連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される二つの既知シンボルが同じである場合や、当該二つの既知シンボルについての伝搬路特性の差が大きい場合には、受信ウェイトRWを更新したとしても受信ウェイトRWの精度が向上しにくいことから、本実施の形態のようにして受信ウェイトRWを更新することによって、誤差信号ESを十分に小さくすることができ、受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0045】
以下に、図を参照しながら、本実施の形態に係る受信ウェイト更新処理の具体例について説明する。以下の説明では、それらの周波数帯域が周波数方向で連続する12個のサブキャリアを用いて通信相手装置から送信される送信信号、言い換えれば、12個のサブキャリア分の周波数帯域の送信信号を無線通信装置100が受信する場合に、その受信信号(サブキャリア12個分の周波数帯域の受信信号)に含まれるデータシンボルに設定する受信ウェイトRWを求める際の受信ウェイト更新処理の具体例について説明する。説明の便宜上、当該12個のサブキャリアのそれぞれを「対象サブキャリア」と呼ぶ。また、当該12個のサブキャリアを用いてそれぞれ送信される12個の既知シンボルに対して、周波数帯域が低いものから順に“1”から“12”までのシンボル番号をそれぞれ付与する。シンボル番号1〜12の既知シンボルは同じ時間帯で受信される。
【0046】
図4は、受信ウェイト処理部51での受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。図4では、シンボル番号1〜12の既知シンボルのそれぞれが、対応するシンボル番号の横に四角で示されている。そして、当該四角の中に示される回数は、受信ウェイト更新処理での何回目の受信ウェイトRWの更新に当該四角で示される既知シンボルが使用されるかを示している。後述の図においても同様である。
【0047】
図4に示される受信ウェイト更新処理では、N=2となっており、2回のアレイ処理が行われる。そして、図4の例では、M=12となっており、周波数方向に並ぶシンボル番号1〜12の12個の既知シンボルが2回のアレイ処理で使用される。1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜12の12個の既知シンボルがそれぞれ使用されて12回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、シンボル番号2〜12の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。よって、図4の例では、受信ウェイトRWは12個の受信既知シンボルを用いて合計23回更新される。
【0048】
さらに、図4の例では、2回のアレイ処理においては、12個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ12個の受信既知シンボルのうち、シンボル番号2〜12の既知シンボルが2回使用される。
【0049】
さらに、図4の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルは互いに異なっている。例えば、1回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号12の既知シンボルであって、2回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号11の既知シンボルである。また、12回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号1の既知シンボルであって、13回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号2の既知シンボルである。
【0050】
さらに、図4の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で仕様される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用される。
【0051】
そして、図4の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは周波数帯域が小さいものから順番に使用されることから、図4に示されるように、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。
【0052】
以上のように、図4に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは12個の受信既知シンボル(シンボル番号1〜12の既知シンボル)を用いて23回更新される。よって、図5に示されるように、シンボル番号1〜12の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを12回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて多くの回数受信ウェイトRWを更新することができる。その結果、受信ウェイトRWの精度が向上する。
【0053】
さらに、図4の例では、連続する前後の受信ウェイトRWの更新では、周波数帯域が隣接する二つの既知シンボルが使用されるため、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される二つの既知シンボルについての伝搬路特性の差を抑えることができる。よって、受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0054】
図4のように受信ウェイトRWが更新される場合には、2回のアレイ処理が行われた受信ウェイトRW、つまり、23回更新された受信ウェイトRWを、12個の対象サブキャリアを用いてそれぞれ送信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。言い換えれば、2回のアレイ処理が行われた受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。ある対象サブキャリアで送信されるデータシンボル(当該対象サブキャリアを変調するデータシンボル)に対して受信ウェイトRWが設定される際には、複数のアンテナ10aでそれぞれ受信される、当該対象サブキャリアについての複数のデータシンボル(複数のDFT処理部50からそれぞれ出力される、当該対象サブキャリアについての複数のデータシンボル)に対して、2回のアレイ処理が行われた複数の受信ウェイトRWがそれぞれ設定される。そして、複数の受信ウェイトRWがそれぞれ設定された当該複数のデータシンボルを足し合わすことによって得られる新たなデータシンボルが受信データ取得部52によってビットデータに変換されてデータが取得される。
【0055】
なお、図4の例において、受信ウェイトRWを12回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、言い換えれば、受信ウェイトRWを12回程度更新することによって、受信ウェイト処理部51の誤差信号生成部512bが出力する誤差信号ESがある程度小さくなる場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボル(当該既知シンボルと同じサブキャリアで送信されるデータシンボル)に対して設定しても良い。
【0056】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号2の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり13回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号2の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0057】
また、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号12の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり23回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号12の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0058】
なお、シンボル番号1の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、1回目のアレイ処理においてシンボル番号1の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり12回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、13回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0059】
このように、ある程度更新された受信ウェイトRWに対して、ある既知シンボルを使用して1回更新することによって得られる更新後の受信ウェイトRWを、当該既知シンボルの周波数帯域で受信されるデータシンボルに設定することによって、当該データシンボルをより適切に受信することができる。よって、無線通信装置100の受信性能がさらに向上する。
【0060】
また、受信ウェイトRWを図4のように23回も更新しなくても受信ウェイトRWの精度が十分な場合には、受信ウェイトRWの精度が十分となるであろう最小の回数だけ受信ウェイトRWを更新すれば良い。図6は、受信ウェイトRWを17回更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合の受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【0061】
図6の例では、図4の例と同様に、N=2、M=12となっている。図6の例では、1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜6の6個の既知シンボルがそれぞれ使用されて6回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号2〜12の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。よって、図6の例では、受信ウェイトRWは合計17回更新される。
【0062】
さらに、図6の例では、2回のアレイ処理においては、12個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ12個の受信既知シンボルのうち、シンボル番号2〜6の6個の既知シンボルが2回使用される。
【0063】
さらに、図6の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。
【0064】
さらに、図6の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用される。
【0065】
そして、図6の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。
【0066】
以上のように、図6に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは12個の受信既知シンボルを用いて17回更新される。よって、上述の図5に示されるように、シンボル番号1〜12の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを12回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0067】
図6のように受信ウェイトRWが更新される場合には、2回のアレイ処理が行われた受信ウェイトRW、つまり、17回更新された受信ウェイトRWを、受信ウェイト更新処理で使用されたシンボル番号1〜12の12個の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0068】
なお、図6の例において、受信ウェイトRWを6回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号5の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり10回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号5の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。シンボル番号1の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、6回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、7回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0069】
図6の例では、1回目のアレイ処理において、シンボル番号1〜6の6個の既知シンボルを使用したが、その代わりに、図7に示されるように、例えば、シンボル番号1,3,5,7,9,11の6個の既知シンボルを使用しても良い。1回目のアレイ処理において、受信ウェイトRWを、図6の例のように周波数帯域が連続する複数の既知シンボルを使用して複数回更新する場合には、図7の例のように周波数帯域が連続していない複数の既知シンボルを使用して複数回更新する場合と比較して、受信ウェイトRWの精度を高めることが可能となる。受信ウェイトRWについては、その精度がある程度高まると、更新回数を増加させたとしてもそれほど精度が高くならないことから、図6の例のように、1回目のアレイ処理において、受信ウェイトRWを、周波数帯域が連続する複数の既知シンボルを使用して複数回更新して、その精度を高めることによって、より少ない回数で受信ウェイトRWの精度を所望値まで高めることができる。
【0070】
図4,6,7に示される受信ウェイト更新処理では、12個の対象サブキャリアでそれぞれ送信される12個の既知シンボルをすべて使用していたが、当該12個の既知シンボルをすべてを使用しなくても良い。図8は、当該12個の既知シンボルのうち、シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルだけが使用される場合の受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【0071】
図8の例では、N=2、M=9となっており、受信ウェイト更新処理では、周波数方向に並ぶシンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルが使用されて2回のアレイ処理が行われる。
【0072】
図8の例では、1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜6の6個の既知シンボルがそれぞれ使用されて6回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号3,5,7,9,11の5個の既知シンボルがそれぞれ使用されて5回更新される。よって、図8の例では、受信ウェイトRWは合計11回更新される。
【0073】
さらに、図8の例では、2回のアレイ処理においては、9個の受信既知シンボル(シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボル)のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ9個の受信既知シンボルのうち、シンボル番号3,5の2個の既知シンボルが2回使用される。
【0074】
さらに、図8の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。例えば、6回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号1の既知シンボルであって、7回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号3の既知シンボルである。また、9回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号7の既知シンボルであって、10回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号9の既知シンボルである。
【0075】
さらに、図8の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新で使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号3,5,7,9,11の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用される。
【0076】
そして、図8の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜6の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号3,5,7,9,11の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。
【0077】
以上のように、図8に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは、シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルを用いて11回更新される。よって、シンボル番号1〜7,9,11の9個の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを9回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0078】
図8のように受信ウェイトRWが更新される場合には、受信ウェイトRWが11回程度更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合には、11回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0079】
一方で、受信ウェイトRWを6回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号3,5,7,9,11の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0080】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号3の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり7回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号3の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0081】
シンボル番号1の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、1回目のアレイ処理においてシンボル番号1の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり6回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号3の既知シンボルが使用された更新された受信ウェイトRW、つまり7回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0082】
シンボル番号2の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、6回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、7回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0083】
シンボル番号L(L=4,6,8,10)の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、最後のアレイ処理においてシンボル番号(L−1)を用いて更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号(L+1)を用いて更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0084】
そして、シンボル番号12の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては、例えば、11回更新された受信ウェイトRWを設定する。
【0085】
<各種変形例>
<第1変形例>
上記の図4,6,7,8に示される受信ウェイト更新処理では、2回のアレイ処理が行われているが、3回以上のアレイ処理を行っても良い。図9は、N=3、つまり3回のアレイ処理が行われる受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。
【0086】
図9の例では、N=3、M=12となっており、図4に示される例において、3回目のアレイ処理が行われている。図8の例での3回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜11の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。したがって、図9の例では、受信ウェイトRWは合計34回更新される。
【0087】
図9の例では、3回のアレイ処理においては、12個の受信既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、シンボル番号2〜11の既知シンボルが3回使用され、シンボル番号1,12の既知シンボルが2回使用される。
【0088】
さらに、図9の例では、3回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。例えば、23回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号12の既知シンボルであって、24回目の受信ウェイトRWの更新に使用される既知シンボルはシンボル番号11の既知シンボルである。
【0089】
さらに、図9の例では、3回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新で使用される複数の既知シンボルは周波数方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、周波数帯域が小さいものから順番に使用され、3回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜11の既知シンボルは、周波数帯域が大きいものから順番に使用される。
【0090】
そして、図9の例では、3回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理では、受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向が逆方向となっている。つまり、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR1と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2とは逆方向になっている。そして、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR2と、3回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜11の既知シンボルが周波数方向に沿って使用される方向DR3とは逆方向になっている。
【0091】
以上のように、図9に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは、シンボル番号1〜12の12個の既知シンボルを用いて34回更新される。よって、上述の図5の例と比較して、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0092】
図9のように受信ウェイトRWが更新される場合には、受信ウェイトRWが34回程度更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合には、34回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ周波数帯域で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0093】
一方で、受信ウェイトRWを23回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(3回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号1〜11の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0094】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号8の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり27回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号8の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0095】
シンボル番号12の既知シンボルと同じ周波数帯域で受信されるデータシンボルに対しては2回目のアレイ処理においてシンボル番号12の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり23回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号11の既知シンボルが使用された更新された受信ウェイトRW、つまり24回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0096】
<第2変形例>
上記の例では、受信ウェイトRWの更新に、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、周波数方向に並ぶM個の既知シンボルを使用していたが、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、時間方向に並ぶM個の既知シンボルを使用しても良い。図10は、この場合の受信ウェイト更新処理の一例を示す図である。以下の説明では、今までの説明とは異なり、シンボル番号1〜12の既知シンボルは時間方向に沿って並んでいるものとする。
【0097】
図10の例では、N=2となっており、2回のアレイ処理が行われる。そして、図10の例では、M=12となっており、受信ウェイト更新処理では、アレイアンテナ10での受信信号に含まれる、時間方向に並ぶシンボル番号1〜12の12個の既知シンボルが使用される。シンボル番号1〜12の既知シンボルは同じ周波数帯域で受信される。
【0098】
1回目のアレイ処理では、受信ウェイトRWが、シンボル番号1〜12の既知シンボルがそれぞれ使用されて12回更新される。そして、2回目のアレイ処理では、シンボル番号2〜12の11個の既知シンボルがそれぞれ使用されて11回更新される。よって、図10の例では、受信ウェイトRWは12個の既知シンボルを用いて合計23回更新される。
【0099】
さらに、図10の例では、2回のアレイ処理においては、12個の既知シンボルのそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ12個の既知シンボルのうち、シンボル番号2〜12の既知シンボルが2回使用される。
【0100】
さらに、図10の例では、2回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトRWの更新で使用される既知シンボルは互いに異なっている。
【0101】
さらに、図10の例では、2回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトRWの更新に使用される複数の既知シンボルは時間方向に沿って順番に使用される。具体的には、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルは、送信時間帯(受信時間帯)が先のものから順番に使用され、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルは、送信時間帯(受信時間帯)が後のものから順番に使用される。
【0102】
そして、図10の例では、1回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号1〜12の既知シンボルが時間方向に沿って使用される方向DR11と、2回目のアレイ処理において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルが時間方向に沿って使用される方向DR12とは逆方向になっている。
【0103】
以上のように、図10に示される受信ウェイト更新処理では、受信ウェイトRWは12個の既知シンボルを用いて23回更新される。よって、図11に示されるように、時間方向に並ぶシンボル番号1〜12の既知シンボルをそれぞれ1回だけ使用して受信ウェイトRWを12回更新する場合よりも、少ない数の既知シンボルを用いて受信ウェイトRWの精度を向上することができる。
【0104】
図10のように受信ウェイトRWが更新される場合には、受信ウェイトRWが23回程度更新すると受信ウェイトRWの精度が十分となる場合には、23回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号1〜12の既知シンボルとそれぞれ同じ時間帯で受信される12個のデータシンボルに対して共通に設定する。
【0105】
一方で、受信ウェイトRWを12回程度更新することによって、受信ウェイトRWの精度がある程度確保される場合には、最後のアレイ処理(2回目のアレイ処理)において使用されるシンボル番号2〜12の既知シンボルのそれぞれについて、当該既知シンボルが最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRWを、当該既知シンボルと同じ時間帯で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。
【0106】
例えば、最後のアレイ処理において使用されるシンボル番号4の既知シンボルが、当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり15回更新された受信ウェイトRWを、シンボル番号4の既知シンボルと同じ時間帯で受信されるデータシンボルに対して設定しても良い。シンボル番号1の既知シンボルと同じ時間帯で受信されるデータシンボルに対しては1回目のアレイ処理においてシンボル番号1の既知シンボルが使用されて更新された受信ウェイトRW、つまり12回更新された受信ウェイトRWを設定しても良いし、最後のアレイ処理においてシンボル番号2の既知シンボルが使用された更新された受信ウェイトRW、つまり13回更新された受信ウェイトRWを設定しても良い。
【0107】
なお、受信ウェイトRWの更新に、時間方向に並ぶM個の既知シンボルを使用する場合であっても、図6,7のように、1回目のアレイ処理においてシンボル番号1〜12の既知シンボルのすべてを使用しなくても良い。また図8のように、複数のアレイ処理全体においてシンボル番号1〜12の既知シンボルのすべてを使用しなくても良い。また、図9のように、アレイ処理を3回以上行っても良い。
【符号の説明】
【0108】
10a アンテナ
51 受信ウェイト処理部
100 無線通信装置
RW 受信ウェイト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトを更新し、更新終了後の受信ウェイトを前記複数のアンテナでの受信信号に設定する受信ウェイト処理部と
を備え、
前記受信ウェイト処理部は、受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理を行い、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、
前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、
前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、
前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って使用される方向が逆方向である、無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記受信ウェイト処理部は、
前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ周波数帯域で受信された複数のデータ信号に共通に設定し、
前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ時間帯で受信された複数のデータ信号に共通に設定する、無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記受信ウェイト処理部は、
前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号のうち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ周波数帯域で受信されるデータ信号に設定し、
前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号うち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ時間帯で受信されるデータ信号に設定する、無線通信装置。
【請求項4】
無線通信装置が備える複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトの更新方法であって、
受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理が行われ、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、
前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、
前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、
前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用される方向が逆方向である、受信ウェイトの更新方法。
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトを更新し、更新終了後の受信ウェイトを前記複数のアンテナでの受信信号に設定する受信ウェイト処理部と
を備え、
前記受信ウェイト処理部は、受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理を行い、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、
前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、
前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、
前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って使用される方向が逆方向である、無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記受信ウェイト処理部は、
前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ周波数帯域で受信された複数のデータ信号に共通に設定し、
前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、前記複数回のアレイ処理が行われた受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該複数の受信既知信号とそれぞれ同じ時間帯で受信された複数のデータ信号に共通に設定する、無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記受信ウェイト処理部は、
前記複数の受信既知信号が周波数方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号のうち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ周波数帯域で受信されるデータ信号に設定し、
前記複数の受信既知信号が時間方向に並ぶ場合には、当該複数の受信既知信号うち、前記複数回のアレイ処理の最後のアレイ処理において使用される複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号が当該最後のアレイ処理において使用されて更新された受信ウェイトを、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、当該既知信号と同じ時間帯で受信されるデータ信号に設定する、無線通信装置。
【請求項4】
無線通信装置が備える複数のアンテナでの受信指向性を制御するための受信ウェイトの更新方法であって、
受信ウェイトに対して複数回のアレイ処理が行われ、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれでは、受信ウェイトが、前記複数のアンテナでの受信信号に含まれる、周波数方向あるいは時間方向に並ぶ複数の受信既知信号のうちの複数の既知信号がそれぞれ使用されて複数回更新され、
前記複数回のアレイ処理においては、前記複数の受信既知信号のそれぞれが少なくとも1回使用され、かつ前記複数の受信既知信号のうちの少なくとも一つが複数回使用され、
前記複数回のアレイ処理においては、連続する前後の受信ウェイトの更新で使用される既知信号は互いに異なっており、
前記複数回のアレイ処理のそれぞれにおいては、当該アレイ処理で受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号は周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用され、
前記複数回のアレイ処理において連続する前後のアレイ処理の間では、受信ウェイトの更新に使用される複数の既知信号が周波数方向あるいは時間方向に沿って順番に使用される方向が逆方向である、受信ウェイトの更新方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−48355(P2013−48355A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185987(P2011−185987)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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