説明

無線通信装置及び干渉回避方法

【課題】同一周波数帯域を使用する他の無線システムの信号を受信し復号することなく、他の無線システムと公平性を保ちつつ共存に必要な処理を選択できるようにする。
【解決手段】実施形態によれば、特定の無線通信方式による無線通信装置は、送信部、受信部、干渉判定部、干渉制御部を備える。送信部は、ある周波数チャネルを使用して、該特定の無線通信方式と干渉し得る周波数チャネルを使用し且つより広い通信範囲を持つ他の無線通信方式の所定のフレーム間隔に比較して短いフレーム間隔又は長いフレーム間隔により、フレームを送信する。受信部は、フレームを受信する。干渉判定部は、受信フレームにおける誤り特性と周波数チャネルのビジー状況の少なくとも一方を判定する。干渉制御部は、誤り特性とビジー状況の少なくとも一方に基づいて、周波数チャネルを変更するか、フレーム間隔の長さを変更するか、又は、いずれの変更もしないかを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、近距離無線通信を行う無線通信装置及び干渉回避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ミリ波帯を使用する高速伝送のための無線システム技術として、ワイヤレスHD(WirelessHD)規格の策定が完了しており、また、従来の無線ローカルエリアネットワーク(特に802.11a/b/g)について、そのような無線システム技術の規格化も進んでいる。
【0003】
ミリ波帯を使用する無線システムにとって、同一周波数帯域における他の無線システムとの共存が大きな課題になっている。
【0004】
一般に、同一周波数帯域における異なる無線システムの共存のためには、ある無線システムが、他の無線システム(例えば上記ワイヤレスHD規格に準拠するシステム又は上記規格化が進んでいる無線LAN形態のシステムなど)に与える干渉(以下、「与干渉」と呼ぶ。)及び/又は該他の無線システムから受ける干渉(以下、「被干渉」と呼ぶ。)を把握し、そして、把握した与干渉/被干渉の状況に基づいて、同一周波数帯域において他の無線システムと共存するための処理(例えば周波数チャネルを切り替える処理など)を実行することが必要である。
【0005】
上記他の無線システムとの間の与干渉/被干渉の把握及び共存するための処理について、従来、コグ二ティブ通信において検討が行われており、例えば、与干渉の推定方法及び使用チャネルの決定方法などが考えられている。この検討では、ある無線システムにおける各々の無線通信装置は、同一周波数帯域で共存する他の無線システムにおいて送受信される信号を受信し、そして、その受信信号に含まれる制御情報を使用して、使用すべき周波数チャネルを変更するか否かについて判断を行う。例えば、受信電力、アンテナゲイン、アンプ利得情報などから、その無線通信装置自身による送信が他の無線システムの無線通信装置に影響を与えるかについて、又は、他の無線システムのスケジューリング情報から、その無線通信装置自身が他の無線システムの無線通信装置に影響を与えることなく送受信できる期間が存在するかについて推定し、影響を与えるか又は期間が存在しないと推定されれば、周波数チャネルを変更すると判断し、そうでなければ、周波数チャネルを変更しないと判断する。
【0006】
しかし、この技術には、他の無線システムにおいて送受信される信号を受信したり、受信信号を復号して、制御情報の内容を把握することが必須であるという欠点がある。
【0007】
一方、従来の無線LANでは、CSMA/CA方式によるアクセス制御が行われる。このアクセス制御によれば、個々の無線通信装置が、無線チャネルを使用する前に無線チャネルの占有状態を測定及び検出し、送信前にランダムにバックオフを設定することによって、複数の無線通信装置の間で帯域を公平に使用することが可能となる。
【0008】
これに対して、接続の簡易化且つ効率化を重視した手法として、1対1接続を前提とし、接続確立までの制御信号送信時にはランダムバックオフを行い、接続確立後はバックオフ無しに一定期間(例えばIEEE802.11の無線LANにおけるSIFS、DIFS等)の間隔で送受信を行う技術が考えられている。
【0009】
しかし、例えば、送受信の高速化のために、接続確立後の一定時間は、他と比較して短いフレーム間隔にてフレーム送信を行うようにすると、他の無線システムとの間の与干渉/被干渉の関係によっては、他の無線システムの無線通信装置が送受信できない。すなわち、他の無線システムが、無線チャネルを使用する前に無線チャネルの占有状態を検出するような無線LAN形態の無線システムである場合に、フレーム間隔の短いフレームが連続送信されると、他の無線システムの無線通信装置は、それをビジーと検出し、その結果、それらのフレームの連続送信の期間、送受信ができない。このため、公平性が保たれないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−306665号公報
【特許文献2】特開2008−79045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、同一周波数帯域で共存する他の無線システムの送受信信号を受信し復号することなく、与干渉及び被干渉を推定し、その推定結果をもとに他の無線システムと公平性を保ちつつも共存するために必要な処理を選択することを可能とする技術が知られていなかった。
【0012】
本実施形態は、同一周波数帯域で共存する他の無線システムの送受信信号を受信し復号することなく、与干渉及び被干渉を推定し、その推定結果をもとに他の無線システムと公平性を保ちつつも共存するために必要な処理を選択することの可能な無線通信装置及び干渉回避方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態によれば、特定の無線通信方式を使用する無線通信装置は、送信部と、受信部と、干渉判定部と、干渉制御部とを備える。送信部は、複数の周波数チャネルから選択された周波数チャネルを使用して、前記特定の無線通信方式と干渉し得る周波数チャネルを使用し且つ前記特定の無線通信方式よりも広い通信範囲を有する他の無線通信方式で使用する所定のフレーム間隔に比較して短いフレーム間隔又は長いフレーム間隔により、フレームの送信を行う。受信部は、前記選択された周波数チャネルを使用して、フレームの受信を行う。干渉判定部は、受信される前記フレームにおける誤り特性と、使用されている前記周波数チャネルのビジー状況との少なくとも一方を判定する。干渉制御部は、前記誤り特性と前記ビジー状況との少なくとも一方に基づいて、前記周波数チャネルを変更するか、前記フレーム間隔の長さを変更するか、又は、いずれの変更もしないかを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1〜第17の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図。
【図2】無線システム間の与干渉及び被干渉の関係(ケースA)について説明するための図。
【図3】無線システム間の与干渉及び被干渉の関係(ケースB)について説明するための図。
【図4】無線システム間の与干渉及び被干渉の関係(ケースC)について説明するための図。
【図5】第1無線システムのフレーム送受信時に使用するフレーム間隔と干渉との関係について説明するための図。
【図6】第1の実施形態に係る第1無線システムにおける干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択について説明するための図。
【図7】第1の実施形態に係る第1無線システムにおける処理例を示すフローチャート。
【図8】第1の実施形態に係る第1無線システムにおける無線通信装置の構成例を示すブロック図。
【図9】第2の実施形態に係る第1無線システムにおける干渉推定及推定結果に基づく共存処理の選択について説明するための図。
【図10】第2の実施形態に係る第1無線システムにおける処理例を示すフローチャート。
【図11】第3の実施形態に係る第1無線システムにおける干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択について説明するための図。
【図12】第3の実施形態に係る第1無線システムにおける処理例を示すフローチャート。
【図13】第5の実施形態に係る第1無線システムにおける処理例を示すフローチャート。
【図14】第10の実施形態に係る第1無線システムにおける無線通信装置の構成例を示すブロック図。
【図15】第16の実施形態に係る第1無線システムにおける無線通信装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る無線通信装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0016】
以下では、本実施形態の無線通信システムを「第1無線システム」と呼ぶ。第1無線システムに含まれる各々の無線通信装置の構成例は後で説明する。
【0017】
本実施形態では、「第1無線システム」との間で干渉が発生し得る(1又は複数の)他の無線通信システムが存在し得ることを想定する。以下では、そのような他の無線通信システムを「第2無線システム」と呼ぶ。
【0018】
(第1の実施形態)
図1に、本実施形態の無線通信システムすなわち第1無線システムの例を示す。
【0019】
第1無線システムの具体例として、例えば通信範囲が高々数10cm程度であるような近距離無線通信を使用するものが想定される。第1無線システムでは、そのような短い通信範囲に入る無線通信装置のみが影響し合うため、1台の無線通信装置に接続する無線通信装置の数は、高々数台になると想定される。図1の例では、第1無線システムに3台の無線通信装置1〜3が含まれる状態を例示している。ただし、第1無線システムに含まれる無線通信装置の台数は3台に制限されない。
【0020】
第1の実施形態のように、通信範囲が広くても数10cm程度である無線通信システムでは、その通信範囲に入る数台の無線通信装置のみが影響し合う。それゆえ、従来の無線LANにおけるような干渉回避及び無線帯域の公平性を重視する手法、例えば、ある一つの無線通信装置がアクセスポイントとしてブロードキャスト信号(例えばビーコン信号)を送信し、各無線通信装置が送信する度にランダムバックオフ制御を行うような手法ではなく、むしろ接続の簡易化且つ効率化を重視した手法が期待される。その一つの手法として、信号送信を行う時には、例えば接続要求信号(Connect Request)のような接続を開始するための無線通信装置間の制御信号を、例えばランダムバックオフ制御を用いて送受信し、接続を確立する処理の終了後に最初に使用するフレーム間隔として、ある特定のフレーム種別のフレーム間隔で比較すると他の無線システム(例えばIEEE802.11など)よりも短いフレーム間隔に初期設定して、フレーム送信を行い、その後、フレーム間隔調整(IFS調整)を行う。なお、第2の実施形態も上記と同様であるが、第3の実施形態では、接続処理終了後に最初に使用するフレーム間隔として、ある特定のフレーム種別のフレーム間隔で比較すると他の無線システム(例えばIEEE802.11など)よりも長いフレーム間隔に初期設定して、フレーム送信を行い、その後、フレーム間隔調整(IFS調整)を行う。また、第4の実施形態では、接続処理終了後に最初に使用するフレーム間隔として、短いフレーム間隔に初期設定するか、長いフレーム間隔に初期設定するかについて、その都度、選択する。
【0021】
次に、図2〜図4を参照しながら、第1無線システムと第2無線システムとの間の与干渉及び被干渉について説明する。
【0022】
図2〜図4において、101,102はいずれも第1無線システムに含まれる無線端末装置を示し、103,104はそれぞれ無線端末装置101,102の通信範囲を示す。また、121,122はいずれも第2無線システムに含まれる無線端末装置を示し、123,124はそれぞれ無線端末装置121,122の通信範囲を示す。
【0023】
ここで、第2無線システムで使用する周波数帯域の全部又は一部と、第1無線システムで使用する周波数帯域の全部又は一部とがオーバーラップするものとする。本実施形態では、この周波数帯域として、例えば、ミリ波帯を想定している。
【0024】
また、第2無線システムで使用する通信方式における無線通信の通信範囲は、第1無線システムで使用する通信方式における無線通信の通信範囲(前述のように例えば半径数10cm)より広いものとする。これは、例えば、第2無線システムの無線通信装置における最大送信電力とアンテナ利得との和が、第1無線システムにおける無線通信装置におけるそれに比較して、より高いことを意味する。第2無線システムの通信範囲の具体例として、例えば、半径数mが想定される。第2無線システムの実例としては、例えば、ワイヤレスHD、IEEE802.11ad、WiGigなどがあるが、これらに制限されない。
【0025】
なお、本実施形態において、同一周波数帯域を使用する異なる無線システムの種類数は、図2〜図4で例示する2種類には制限されない。例えば、「第2無線システム」に該当する他の無線システムとして、1種類のみの他の無線システムのみ存在する場合も、2又は3以上の種類の他の無線システムが混在する場合もあり得るが、いずれの場合であっても「第1無線システム」中の各々の無線通信装置の構成及び動作は基本的に同じである。以下では説明を簡単にするために、図2〜図4に例示するように、「第2無線システム」に該当する他の無線システムが1種類のみ存在する場合を例にとって説明する。
【0026】
また、図2〜図4では、各無線システムそれぞれについて無線通信装置が2台ずつ存在する場合を例示するが、2台に制限されない。また、各無線システムごとに存在する無線通信装置の台数が異なっても良い。
【0027】
さて、図2〜図4は、第1無線システムの無線通信装置101,102と、第2無線システムの無線通信装置121,122とが混在する環境を示している。図2〜図4の間で相違する点は、無線システム間の相対的位置関係(異なる無線システムに属する無線通信装置間の相対的位置関係)であり、その相違が与干渉及び被干渉の状態の相違として表れる。
【0028】
図2に示されるケース(ケースAと呼ぶ)は、第1無線システムの無線端末装置101,102と、第2無線システムの無線端末装置121,122との距離が、干渉しない又はほぼ干渉しない程度に離れている場合に起こり得る。このケースAでは、第1無線システムから第2無線システムへの干渉は無い。また、第2無線システムから第1無線システムへの干渉については、干渉が無いか、又は、干渉が有るとしても、ビジー(Busy)と検出されるのは、ごく限られた場合(例えば、送信電力が大きく且つビームフォーミングをせずブロードキャストすると予想されるビーコン信号の受信時のみ)である。第2無線システムにおいてビームフォーミングを行っているとすれば、ビームが第1無線システムに重なっていないケースである。このとき、ビーコン信号のチャネル占有率は低いので、ビーコン信号が存在する間だけ第1無線システムが送受信できなかったとしても、影響は小さい。それゆえ、ケースAでは、第1無線システムと第2無線システムの両方とも、特別な制御をせずに、共存することができる。
【0029】
図3に示されるケース(ケースBと呼ぶ)は、第1無線システムから第2無線システムへの干渉は無いが、第2無線システムから第1無線システムへの干渉は有る、という状態である。第1無線システムと第2無線システムとの間で、最大送信電力及びアンテナ利得の和に大きな違いがある(かつ、第1無線システムの無線端末装置101,102と、第2無線システムの無線端末装置121,122とがケースAよりも近付いた)場合に、ケースBのような状況が起こり得ると考えられる。あるいは、第2無線システムがビームフォーミングを行う場合などに、ケースBのような状況が起こり得ると考えられる。
【0030】
図4に示されるケース(ケースCと呼ぶ)は、第1無線システムの無線端末装置101,102と、第2無線システムの無線端末装置121,122とが近接している場合に起こり得る。このケースCでは、第1無線システム及び第2無線システムが、互いの送受信信号を検出し、それが干渉となる状況である。すなわち、第1無線システムから第2無線システムへの干渉と、第2無線システムから第1無線システムへの干渉の両方が起こる。
【0031】
なお、ケースA〜Cの3つのケース以外にも、第1無線システムの無線端末装置101,102と、第2無線システムの無線端末装置121,122との距離が相当程度離れていて、互いに全く干渉し得ないケース(ケースDと呼ぶ)があるが、本実施形態では、ケースDはケースAに含まれるものとして扱うこととする。
【0032】
次に、図5を参照しながら、第1無線システムのフレーム間隔(IFS:Interframe Space)の長短と干渉との関係を、上記3つのケースのうち無線システム間の干渉のあるケースB(図3)及びケースC(図4)についてそれぞれ説明する。
【0033】
なお、図5において、Dataは、送受信されるデータを示し、Aは、Ack(Acknowledgement)を示し、BAは、Block Ackを示す。
【0034】
本実施形態では、IFSとして、「ある特定のフレーム種別のフレーム間隔」で比較すると、他の無線システム(例えばIEEE802.11等の無線システム)よりも短いIFS、又は、他の無線システムよりも長いIFS(他の無線システムと同程度のIFSを含んでも良い。)を、基本的に使用する。
【0035】
例えば、第1無線システムでは、送信する無線通信装置と受信する無線通信装置とが、接続確立後のフレーム送受信中に、上記短いIFS又は長いIFSを使用することを想定する。そのため、例えばIEEE802.11等の他の無線システムでフレーム送受信時においてフレーム送信前に使用するフレーム間隔AIFS(Arbitration Interframe Space)のうちの最少フレーム間隔と比較して、IFSを短いIFSに設定するか又は長いIFSに設定するかを変更するとする。
【0036】
第1無線システムにおいて短いIFSを使用することは、第1無線システムの無線通信装置の送受信が(最も)優先され得ることを意味する。一方、第1無線システムにおいて長いIFSを使用することは、第1無線システムの無線通信装置の送受信が(最も)劣後され得ることを意味する。
【0037】
短いIFSと長いIFSのいずれを使用するかについては、例えば、第1及び第2の実施形態で例示するようにあらかじめ短いIFSに設定する方法、第3及び第4の実施形態で例示するようにあらかじめ長いIFSに設定する方法、第3の実施形態で例示するように所定の基準によって動的に変更する方法などが考えられる。
【0038】
なお、他の無線システムが複数存在する場合には、例えば、短いIFSとして、いずれの他の無線システムよりも短いIFSを使用するようにしても良く、また、長いIFSとして、いずれの他の無線システムよりも長いIFSを使用するようにしても良い。
【0039】
さて、図5において、(a)と(b)は、第1無線システムが短いIFS(以下、short IFSとも表記する。)によりフレーム送信を行う場合を示し、(c)と(d)は、第1無線システムが長いIFS(以下、long IFSとも表記する。)によりフレーム送信を行う場合をそれぞれ示す。また、(a)と(c)は、ケースB(図3)の場合を示し、(b)との(d)は、ケースC(図4)の場合を示す。
【0040】
図5の(a)と(c)のケースBでは、第1無線システムの送信フレームは第2無線システムに対する干渉にならないので、第2無線システムは第1無線システムとは全く関係なく送受信を行う。それゆえ、第1無線システムがshort IFSとlong IFSのいずれを使用するかにかかわらず、第2無線システムの送受信が開始された場合には、その送受信の間、第1無線システムの送受信は、(一方的に)干渉を受け、受信フレームが受信誤りとなる。
【0041】
一方、図5の(b)と(d)のケースCでは、第1無線システムの送信フレームは第2無線システムに対する干渉になるので、第1無線システムが送受信を開始すると、第2無線システムは、そのフレームの送受信の間、チャネルがビジーであることを検出して、送受信を停止する。
【0042】
図5の(b)では、第1無線システムがshort IFS設定であることから、チャネルがクリアになった後、第1無線システムが第2無線システムよりも先に次のフレーム送信を開始する。したがって、第2無線システムは、実質的に、第1無線システムの連続するフレーム送受信が終了するまで、ビジーを検出し、送受信を開始することができない。
【0043】
これに対して、図5の(d)では、第1無線システムがlong IFS設定であることから、第1無線システムのフレーム送受信後に、第2無線システムが送受信を開始できる確率が高くなる。
【0044】
このように、同一周波数チャネルで公平性を保ちつつ共存する方法として、第1無線システムのフレーム間隔を制御することが考えられるが、図5の例のように、この方法が効果を奏するかどうかは、干渉との関係次第という問題がある。
【0045】
次に、これらの問題を考慮し、第1無線システムは、現状の第1無線システムと第2無線システムとの間の与干渉及び被干渉の関係が、他の無線システムとの間で相互に干渉しない(又はほぼ干渉しない)ケースA、片方向的に干渉するケースB、相互に干渉するケースCのいずれに該当するかについて、他の無線システム(ここでは第2無線システム)の信号を受信し復号することなく、判断し、ケースA,B,Cのいずれに該当するかと判定されるかに応じて、共存のための処理を選択する仕組みを示す。
【0046】
第1の実施形態では、第1無線システムは、short IFSを使用することを基本とし、short IFSによるフレーム送受信中のフレーム誤りの特性に基づいて、ケースBか、それ以外のケース(すなわち、ケースA又はC)かの判断を行い、さらに、第1無線システムのIFSをshort IFSからlong IFSに変更した後のフレーム送受信のし易さに基づいて、ケースAかケースCかの判断を行う。ここで、フレーム送受信のし易さとは、例えば、「ビジーとなる確率を示すビジー検出率」又は「チャネルがビジーと検出されている時間割合を示すビジー占有率」などのようなビジー状況を用いて判断する。
【0047】
図6に、第1の実施形態における干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択の一覧の例を示す。また、図7に、第1の実施形態における干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択の処理のフローチャートの一例を示す。
【0048】
図5を参照しながら説明したように、short IFSによるフレーム送受信を行う場合に、第1無線システムの送受信が第2無線システムに対する干渉になる状況(図5(b)参照)において、第2無線システムは、第1無線システムの送受信をもとにチャネルがビジーと判断して送信を行わず、そして、チャネルがクリアになった後も、第1無線システムが短いIFSにより次のフレーム送受信を開始するので、第2無線システムは送信を待機する。したがって、ケースA(互いに干渉となっていない又はほぼ干渉となっていないケース)の場合だけでなく、ケースC(第1無線システムの送受信が第2無線システムに対する干渉となるケース)の場合にも、第1無線システムのshort IFSによるフレーム送受信中のフレーム誤り発生頻度は低くなると考えられる。
【0049】
一方、ケースBでは、第2無線システムは、第1無線システムの送受信にかかわらずに独立に送受信を行うので、第1無線システムの送受信は、第1無線システムのフレーム間隔の長短にかかわりなく、第2無線システムの干渉による誤りが発生し得るものとなり、よって、フレーム送受信中のフレーム誤り発生頻度は高くなると考えられる。
【0050】
そこで、第1の実施形態に係る干渉推定及び共存処理では、まず、複数の周波数チャネルから選択された周波数チャネルを使用して、一定期間、short IFSによりフレーム送受信を行って、フレーム送受信の誤りの特性を計測する(ステップS11)。一定期間の計時については、例えば、ステップS11においてタイマーT1(図示せず)をセットし、そのタイマータイムアウトをもって、一定期間が経過したものとしても良い。このように、タイマーを用いて測定時間を管理することで、一定時間の平均値といった、より信頼性のある測定結果が得られる。
【0051】
そして、一定期間の終了後(図7の例では、タイマーT1のタイマータイムアウト後に)に、その一定期間内におけるフレーム送受信の誤りの特性を確認する。例えば、連続するN以上の送信フレームに誤りが発生した場合をバースト誤り(Burst error)と定義する(ここで、Nはあらかじめ定義された2以上の整数である)。そして、上記一定期間の間にバースト誤りが発生したか否かを判定し、その判定結果に基づいて、次の処理を分ける(ステップS12)。
【0052】
ここで、第1の実施形態で示す例においてバースト誤りが発生するのは、ケースBの場合である(図5(a)及び図6参照)。
【0053】
それゆえ、ステップS12でバースト誤りが発生していると判定された場合には、干渉回避及び共存のためには、使用周波数チャネルを変更することが望ましい(ステップS14)。
【0054】
これに対して、ステップS12でバースト誤りが発生していないと判定された場合には、ケースAであるかケースCであるかを判別するために、一定期間、IFS調整を行って、フレーム送受信を行う(ステップS13)。第1の実施形態では、初期に設定されたshort IFSから、long IFSに変更する。
【0055】
互いに干渉となっていない又はほぼ干渉となっていないケースAにおいては、IFSをlong IFSに変更しても、ビジー検出率又はビジー占有率などのビジー状況がIFS変更前と変わらないと考えられる。
【0056】
一方、無線システム間で相互に干渉となるケースCにおいては、第1無線システムのIFSを、long IFSに設定した場合、すなわち、少なくともある特定のフレーム種別でのIFSで比較して第2無線システムと同程度か又はそれより長くIFSを設定した場合、送信開始前のキャリアセンスにおけるビジー検出率又はビジー占有率が高くなると考えられる。
【0057】
そこで、IFSを、一定期間、long IFSに設定し、その一定期間内でのフレーム送受信のし易さつまりビジー検出率又はビジー占有率に基づいて、ケースAかケースCかを判断する。
【0058】
Long IFSによるフレーム送受信のビジー検出率又はビジー占有率を確認し(ステップS15)、ビジー検出率又はビジー占有率が、高い場合(例えば、あらかじめ定義された閾値以上である場合)には、ケースCであると考えられるので、long IFSの設定のままフレーム送受信を継続し、ビジー検出率又はビジー占有率が低くなるのを待つ(ステップS16,S17)。そして、ステップS17においてビジー検出率又はビジー占有率が低くなった場合(例えば、上記閾値未満である場合)には、効率的な送受信を行うことができるように、IFS調整し、すなわちlong IFSから初期のshort IFSに戻し、フレーム送受信を行う(ステップS18)。
【0059】
これに対して、ビジー検出率又はビジー占有率が、低い場合(例えば、上記閾値未満である場合)には、ケースAであると考えられるので、上記と同様、long IFSからshort IFSに戻し、フレーム送受信を行う(ステップS18)。
【0060】
なお、ステップS14で周波数チャネル切り替えを行った後は、例えば、図7の処理をあらためて実行しても良い。
【0061】
また、ステップS18においてもタイマーを起動し、タイマータイムアウト時に、再度、IFS調整の必要性を判断し、必要に応じてIFS調整を行うようにしても良い。この場合のタイマーは、上記タイマーT1と同じ長さにしても良い。あるいは、上記タイマーT1より長くしても良い。short IFSを選択された場合には、周りに干渉源が存在しない可能性がある程度高いため、後者のように、次に干渉推定を行うまでの時間を長くすることで、干渉推定及び共存判断に費やす消費電力を削減しつつ、共存可能な状態にすることができる。
【0062】
また、Long IFSによるフレーム送受信のビジー状況(ビジー検出率又はビジー占有率など)に加えて、short IFSによるフレーム送受信のビジー状況をも計測し、ステップS15において、short IFSによるフレーム送受信のビジー状況よりもLong IFSによるフレーム送受信のビジー状況が、高くなった場合(又は、高くなった程度が、あらかじめ定義された閾値以上である場合)には、ケースCと判定し、short IFSによるフレーム送受信のビジー状況よりもLong IFSによるフレーム送受信のビジー状況が、変わらない場合(又は、高くなった程度が、上記閾値未満である場合)には、ケースAと判定するようにしても良い。ステップS17についても同様である。また、この場合に、short IFSによるフレーム送受信のビジー状況は、例えば、ステップS11で計測しても良いし、ステップS12とステップS13との間で計測しても良い。
【0063】
また、図7からステップS18を省き、ステップS15又はS17から、ステップS18の代わりにステップS1に進むようにしても良い。
【0064】
次に、図8に、本実施形態に係る第1無線システムにおける無線通信装置100(図1中の無線通信装置1〜3)の構成例を示すためのブロック図を概略的に示す。
【0065】
図8に示されるように、無線通信装置100は、無線部20、変復調部30、MAC処理部40、及び上位層処理部50を含む。変復調部30は、変調部31及び復調部32を含む。MAC処理部は、送信部41、受信部42、干渉制御部43、及び干渉判定部44を含む。また、無線部20、変復調部30及びMAC処理部40は、全体で無線送受信部60を形成する。なお、図中、10はアンテナである。
【0066】
まず、無線通信装置100の信号送信時の動作の概略を説明する。
【0067】
送信部41は、上位層処理部50から出力されたフレームを、内部の送信バッファに一旦蓄積し、そして、蓄積された順番に、フレームに対して例えばMACヘッダの付加等の処理を行った後に、変調部31へフレームを出力する。
【0068】
変調部31は、送信部41から受け取ったフレームに対して、例えば符号化処理、変調処理及び物理ヘッダの追加等の物理層関連の処理を行った後に、無線部20へフレームを出力する。
【0069】
無線部20は、変調部31から受け取ったフレームに対して、D/A変換処理を行い、そして、無線通信の周波数帯への周波数変換を行った後に、アンテナ10を介してフレームを送信する。
【0070】
上記では、送信バッファは、送信部41の内部に存在するものとして説明したが、その代わりに、無線送受信部60内の送信部41以外の箇所に存在しても良いし、無線送受信部60以外の箇所(例えば上位層処理部50など)に存在しても良いし、それらの任意の組み合わせであっても良い。
【0071】
次に、無線通信装置100の信号受信時の動作の概略を説明する。
【0072】
アンテナ10を介して受信された信号は、無線部20に与えられる。
【0073】
無線部20は、受信信号に対して、ベースバンドへの周波数変換、そして、A/D変換処理を行った後に、復調部32に該デジタイズされた信号を出力する。
【0074】
復調部32は、デジタイズされた信号に対して、例えば復調処理及び物理ヘッダの解析等の処理を行い、MAC処理部40へ復調フレームを出力する。
【0075】
MAC処理部40の受信部42は、復調フレームに対して例えばMACヘッダの解析等の処理を行い、該受信フレームが当該無線通信装置100の通信相手から送信されたフレームである場合には、上位層処理部50へ該受信フレームを出力する。
【0076】
ここで、IFSフレーム間隔での送受信を行いつつ、干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択を行う本実施形態の無線システムの無線通信装置100においては、MAC処理部40の内部に、干渉判定部44及び干渉制御部43を含む。干渉判定部44は、干渉制御部43及び受信部42と接続される。また、干渉制御部43は、干渉判定部44、送信部41及びチャネル切替に関係する無線部20と接続し、また、必要な場合は変復調部30と接続しても良い。
【0077】
まず、干渉判定部44は、受信部42に対して、「誤り特性の取得」/「ビジー状況の確認」を、それぞれ適切なタイミングで指示する。そして、干渉判定部44は、受信部42から「受信誤り発生報告」を受け、ある一定期間における「受信誤りの特性」の計算を行い、一定期間後に、干渉制御部43に通知する。同様に、干渉判定部44は、受信部42から「ビジー検出報告」を受け、ある一定期間における「ビジー検出率又はビジー占有率」などのビジー状況の計算を行い、一定期間後に、干渉制御部43に通知する。
【0078】
干渉制御部43は、干渉判定部44による判定結果に基づいて、ケースAかケースBかケースCかの判定を行う。具体的には、第1の実施形態では、まず、誤り特性に基づいて、ケースBか、ケースA/Cかの判定を行い、次いで、ビジー状況に基づいて、ケースAか、ケースCかの判定を行う。なお、第2〜第4の実施形態で説明するように、他の判定手順によることも可能である。
【0079】
干渉制御部43は、チャネル切替を行う場合には、チャネル切替指示を無線部20に出す。IFS調整を行う場合には、IFS調整指示又は変更後のIFSの設定値を送信部41に通知する。
【0080】
干渉判定部44が、「誤り特性」/「ビジー状況」を、それぞれ、タイマーに基づく一定期間、測定するために、干渉判定部44の内部に、タイマーを管理する機能を設ける構成を採用しても良い。その代わりに、図8の無線通信装置100内のいずれかの箇所に、タイマーを管理する機能を有するタイマー部を設け、干渉判定部44が該タイマー部に接続される構成を採用しても良い。
【0081】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、同一周波数帯域で共存する他の無線システムでの送受信信号を受信し復号することなく、第1無線システムの個々の無線通信装置において、フレーム送受信中の誤りの特性、周波数チャネルのビジー状況とっいった指標を使用して、他の無線システムとの間の与干渉及び被干渉を推定し、その結果から、公平性を保ちつつ共存する処理(周波数チャネル変更、IFS調整など)を選択することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0083】
図1〜5を参照して行った説明は基本的に第2の実施形態についても妥当する。また、第2の実施形態に係る第1通信システムの無線通信装置の構成例は、図8の構成例と同様である。
【0084】
第1の実施形態では、まず、誤りの特性に基づいてケースBかそれ以外かを判定し、次に、IFS調整の下でケースAかケースCかの判定を行う例を示した。第2の実施形態は、第1無線システムが基本的にshort IFSを使用する点は、第1の実施形態と同一である。しかし、第2の実施形態では、short IFSにより、一定期間、送受信した後に、送受信中又は接続処理中のビジー検出率又はビジー占有率などのビジー状況と、フレーム送受信中のフレーム誤りの特性との2つの指標を使用して、ケースAかBかCかの判定を行う。
【0085】
図9に、第2の実施形態における干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択の一覧の例を示す。また、図10に、第2の実施形態における干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択の処理のフローチャートの一例を示す。
【0086】
第1の実施形態にて説明したとおり、第1無線システムにおいて、short IFSを用いたフレーム送受信時に、連続したフレーム送信は、ある特定のフレーム種別のフレーム間隔で比較すると、例えばIEEE802.11等の他の無線システムよりも短いIFSにより行うため、第1無線システムの送受信開始後の誤りの特性は、ケースAとケースCでは同様となる。
【0087】
しかし、接続処理中にも連続するフレーム送受信を行う場合にも、少なくとも最初のフレーム送信時にキャリアセンスを行うため、複数の無線システムが互いに干渉し合うようなケースCでは、キャリアセンス時にチャネルがビジーと検出される確率が、ケースAよりは高いと考えられる。そこで、第2の実施形態では、ケースAかケースCかの判定に、伝送開始時又は接続処理時のビジー検出率又はビジー占有率を使用する。
【0088】
さて、第2の実施形態に係る干渉推定及び共存処理では、第1の実施形態と同様、まず、複数の周波数チャネルから選択された周波数チャネルを使用して、一定期間、short IFSによりフレーム送受信を行って、フレーム送受信中のビジー検出率又はビジー占有率を測定する(ステップS21)。
【0089】
次に、ビジー検出率又はビジー占有率を確認し(ステップS22)、ビジー検出率又はビジー占有率が、低い場合(例えば、あらかじめ定義された閾値未満である場合)には、ケースA(すなわち、他の無線システムが第1無線システムに影響がある範囲に存在していない又は存在していても影響が軽微と推測されるケース)であると判定され、ステップS21に戻って、short IFSによるフレーム送受信を継続する。
【0090】
これに対して、ビジー検出率又はビジー占有率が、高い場合(例えば、上記閾値以上である場合)には、続いて、誤り率特性を確認する(ステップS23)。そして、バースト誤りが発生している場合には、ケースBの状況であると判定され、チャネル切替を指示する(ステップS25)。
【0091】
また、バースト誤りが発生していない場合には、ケースCの状況であると判定され、第1無線システムの送受信が第2無線システムのキャリアセンスでビジーと検出されていると判断して、公平性のためにLong IFSに変更して送受信を行う(ステップS24)。
【0092】
その後、long IFSによるフレーム送受信中のビジー検出率又はビジー占有率を確認し(ステップS26)、それが低くなった場合(例えば、上記閾値未満になった場合)には、再度、short IFSにより送受信を行う(ステップS27)。
【0093】
なお、ステップS25で周波数チャネル切り替えを行った後は、例えば、図10の処理をあらためて実行しても良い。
【0094】
また、図10では、ステップS24でlong IFSに変更した後は、ビジー検出率又はビジー占有率が低くなるまでLong IFSの使用を続ける例を示したが、例えば、タイマーを使用してタイマータイムアウト後にshort IFSに戻し、以降、ビジー検出率又はビジー占有率が低くなるまで、一定期間毎に、IFS調整を行うようにしても良い。
【0095】
また、図10からステップS27を省き、ステップS26から、ステップS27の代わりにステップS21に進むようにしても良い。
【0096】
なお、図9に示されるように、第2の実施形態では、誤りの特性とビジー状況との組み合わせから、ケースAかケースBかケースCかを判定できる。図10では、まず、ビジー状況で判定を行い、次いで、誤りの特性で判定を行ったが、その代わりに、ステップS22とS23の順序を逆にして、まず、誤りの特性で判定を行い、次いで、ビジー状況で判定を行う手順も可能であり、あるいは、ステップS22とS23を一体化して、誤りの特性とビジー状況に基づく判定を一括して行うことも可能である。
【0097】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、フレーム送受信中の誤りの特性及びチャネルのビジー状況(ビジー検出率又はビジー占有率など)という、第1無線システムの個々の無線通信装置の送受信処理により得られる2つのパラメータを使用して、他の無線システムとの関係を判断し、共存に必要な処理を選択することができる。
【0098】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、これまでの実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0099】
図1〜5を参照して行った説明は基本的に第2の実施形態についても妥当する。また、第3の実施形態に係る第1通信システムの無線通信装置の構成例は、図8の構成例と同様である。
【0100】
第1及び第2の実施形態では、第1無線システムについて、高速化及び高効率化のために、接続後は基本的にshort IFSを選択して送受信を行い、他の無線システムとの間の与干渉/被干渉が有り得る場合には、チャネルを変更し、又は、long IFSに変更する処理を示した。
【0101】
ところで、他の無線システムへの与干渉を最小限に抑えるために、接続後の初めの送受信をLong IFSに設定することとして、状況把握を行う方法が考えられる。
【0102】
第3の実施形態では、接続後にLong IFS設定によりフレーム送受信を開始する例について示す。
【0103】
図11に、第3の実施形態における干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択の一覧の例を示す。また、図12に、第3の実施形態における干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択の処理のフローチャートの一例を示す。
【0104】
フレーム送受信中の誤りの特性及びチャネルのビジー状況(ビジー検出率又はビジー占有率など)という2つのパラメータに基づいて、他の無線システムとの関係を判断する点は、第2の実施形態と同様である。
【0105】
第3の実施形態に係る干渉推定及び共存処理では、まず、複数の周波数チャネルから選択された周波数チャネルを使用して、一定期間、Long IFSによりフレーム送受信を行って、フレーム送受信中のビジー検出率又はビジー占有率を測定する(ステップS31)。
【0106】
次に、ビジー検出率又はビジー占有率を確認し(ステップS32)、ビジー検出率又はビジー占有率が、低い場合(例えば、あらかじめ定義された閾値未満である場合)には、ケースA(すなわち、他の無線システムが第1無線システムに影響がある範囲に存在していない又は存在していても影響が軽微と推測されるケース)であると判定され、高速化のためにIFS調整を行って、その後のフレーム送受信を、short IFSにより行う(ステップS33)。
【0107】
これに対して、ビジー検出率及びビジー占有率が高い場合(例えば、上記閾値以上である場合)には、続いて、フレーム誤り率特性を確認する(ステップS34)、そして、バースト誤りが発生している場合には、ケースBの状況であると判定され、チャネル切替を指示する(ステップS35)。
【0108】
また、バースト誤りが発生していない場合には、ケースCの状況であると判定され、long IFSのまま同一周波数チャネルで共存することとされる(すなわち、この場合には、何もしない)。
【0109】
その後、long IFSによるフレーム送受信中のビジー検出率又はビジー占有率を確認し(ステップS36)、それが低くなった場合(例えば、上記閾値未満になった場合)には、short IFSにより送受信を行い(ステップS37)、そうでなければ、ステップS31に戻る。
【0110】
なお、ステップS35で周波数チャネル切り替えを行った後は、例えば、図12の処理をあらためて実行しても良い。
【0111】
なお、図11に示されるように、第2の実施形態では、誤りの特性とビジー状況との組み合わせから、ケースAかケースBかケースCかを判定できる。図11では、まず、ビジー状況で判定を行い、次いで、誤りの特性で判定を行ったが、その代わりに、ステップS32とS34の順序を逆にして、まず、誤りの特性で判定を行い、次いで、ビジー状況で判定を行う手順も可能であり、あるいは、ステップS32とS34を一体化して、誤りの特性とビジー状況に基づく判定を一括して行うことも可能である。
【0112】
なお、図11の例では、ケースCの場合は、より他の無線システムへの与干渉を抑えるために、干渉があると判断される期間、つまりビジー検出率又はビジー占有率が高い期間にはLong IFSを使用するとした。一方、ビジー検出率及びビジー占有率が高い期間においても、タイマーを用いてlong IFSとshort IFSを繰り返し用いて、他の無線システムとの公平性を保ちつつも自無線システムのスループットもある程度得られる仕組みを用いてもよい。
【0113】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、フレーム送受信中の誤りの特性及びチャネルのビジー状況(ビジー検出率又はビジー占有率など)という、第1無線システムの個々の無線通信装置の送受信処理により得られる2つのパラメータを使用して、他の無線システムとの関係を判断し、さらに基本的なフレーム間隔としてLong IFSを使用することで、他の無線システムとの間の与干渉/被干渉が存在する場合に、より他の無線システムへの与干渉を抑えることができる。
【0114】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、これまでの実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0115】
第1〜第3の実施形態では、干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択方法について、基本的なIFS送信をshort IFSとする場合(第1及び第2の実施形態)及びlong IFSにする場合(第3の実施形態)について、それぞれの処理を説明した。
【0116】
第4の実施形態では、接続後の基本的なIFS送信を、short IFSとlong IFSのいずれかに、動的に設定するものである。第4の実施形態では、接続処理に接続要求信号/接続応答信号を利用するものとして、short IFSとlong IFSのいずれに設定するかの判断を、接続処理中の接続要求信号の送信比率に基づいて行うこととする。
【0117】
この場合、第1無線システムにおいては、ある無線通信装置が接続要求信号を送信し、接続要求信号を受信した無線通信装置が接続応答信号を送信することで、接続処理を行う。そのため、接続要求信号送信側が、接続要求信号の送信を試みるタイミングでチャネルがビジーであることを検出した場合には、チャネルがクリアになるのを待ち、更にバックオフを行った後に、信号を送信する。干渉が無い場合には、チャネルがクリアであるので、接続要求信号の送信を試みるタイミングで確実に接続要求信号の送信が可能となるため、一定時間でみると、一定数の送信要求信号が送信できる。一方、上記のように送信を試みるタイミングでチャネルがビジーであると、一定時間内に送信できる送信要求信号の数が減少すると考えられる。そこで、本来送信できる接続要求信号の数に対する実際に送信できた接続要求信号の数の比を、送信要求信号の送信比率とし、この送信比率をパラメータに使用して、接続後のIFS設定を決定する。
【0118】
図13に、本実施形態での処理フローチャートの一例を示す。
【0119】
上記のように接続処理を実行し(ステップS41)、送信比率に基づいて、接続後のIFS設定を判断する(ステップS42)。なお、送信比率は、例えば、干渉判定部44が判定し、short IFSとlong IFSのいずれを選択するかは、干渉制御部43が行っても良い。
【0120】
そして、送信比率が高い場合(例えば、あらかじめ定義された閾値以上である場合)には、同一周波数チャネルを他の無線システムが使用している可能性が低いとして、接続後は基本的にshort IFSを使用する(ステップS43)。この場合、例えば、第1の実施形態の図7の処理又は第2の実施形態の図10の処理を行っても良い。
【0121】
一方、送信比率が低い場合(例えば、上記閾値未満である場合)には、同一周波数チャネルを他の無線システムが使用している可能性が高いとして、接続後は基本的にlong IFSを使用する(ステップS44)。この場合、例えば、第3の実施形態の図12の処理を行っても良い。
【0122】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、他の無線システムが存在する可能性が高い場合は、接続後にLong IFS設定で送受信を開始することによって、他の無線システムへの与干渉を抑えつつ、他の無線システムが存在する可能性が低い場合には、short IFS設定で送信を開始することによって、高効率なフレーム送受信を行うことが可能となる。
【0123】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について、これまでの実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0124】
第1〜第4の実施形態において、干渉推定及び推定結果に基づく共存処理の選択方法について幾つかの異なる例を示した。ただし、片方向的に干渉するケースB、すなわち、第1無線システムからの信号は第2無線システムに影響せず、且つ、第2無線システムの信号は第1無線システムにとってチャネルビジーと検出される状況に対して、第1〜第4の実施形態のいずれにおいても、チャネル切替を指示するものである。
【0125】
ところで、ミリ波帯においては、一般に、周波数チャネル毎にアナログの受信特性等に差が生じ得るので、周波数チャネルを変更すると、得られる送信レート等が低下する可能性がある。よって、他の無線システムとの干渉が存在する場合であっても、必ずしも周波数チャネルを変更することが最良とは限らない。ただちにチャネル切替を行った結果、特性の悪いチャネルを使用することになることが避けられれば望ましい。また、できるだけ所望の周波数チャネル(デフォルトチャネルとする)を使用することは望ましい。
【0126】
そこで、第5の実施形態では、第1〜第4の実施形態の選択方法でチャネル切替と指定される場合において、ただちにチャネル切替を実行する代わりに、実際にチャネル切替をすべきか、それとも同一のデフォルトチャネルで共存を行うべきかについて判断する例を示す。
【0127】
無線通信装置は、周波数チャネル毎の特性から、デフォルトチャネルでのフレーム送信時の送信レート及び切替チャネルでの送信レートを、それぞれ推測することが可能である。それゆえ、送信レート情報及びフレーム送受信の可能な期間を示すチャネルクリア率(ここでは例として「チャネルクリア率=1−チャネルビジー検出率」とする)を使用して、例えば、「デフォルト周波数チャネルでの送信レート×チャネルクリア率」と「切替チャネルでの送信レート×切替チャネルでのチャネルクリア率」とを比較して、デフォルトチャネルにて共存するか、又は、チャネル切替を行うかを決定する。なお、例えば、判断の効率的に行うために、例えば、「切替チャネルでのチャネルクリア率」を特定の値とみなすこととしても良い。特定の値としては、例えば、1としても良い(切替チャネルでのチャネルクリア率=1は、チャネルがすべて空いていることを意味する)。
【0128】
チャネル変更をおこなったほうが良いかを、チャネルの空き割合とそのチャネルでの特性により得られる送信レートから決めることで、安易にチャネル変更して、特性の悪いチャネルを使うことをさけることができる。
【0129】
他の方法としては、「デフォルト周波数チャネルでの送信レート×チャネルクリア率」にて、アプリ等から要求されるスループットを満たすか否かに応じて、チャネル切替を行うかどうか決定してもよい。
【0130】
また、他の無線システムの干渉が存在し、同一チャネルにて他の無線システムと共存しつつ送受信を行うと判断した場合のフレーム送受信方法について、工夫をすることも可能である。ここでは、例えば、ケースCの場合、上記説明のケースBでもチャネル切替を行わないと判断した場合、又は、対応するチャネルがデフォルトチャネルの1チャネルのみの場合などが、上記場合に該当する。
【0131】
例えば、ケースBのように第2無線システムが第1無線システムと無関係に送受信を行う場合、送信するフレームをフラグメントと呼ばれる複数のフレームに分割して送信を行い、実際に送受信するフレーム長を短くすることで(1フレーム辺りのサイズを小さくすることで)、より1フレームのチャネル占有時間を短くし、これによって、干渉を避けつつ或いは干渉による特性劣化を極力抑えつつ送受信を行い、自無線通信装置の送受信時の誤りを減らすことが望ましい。このとき、フラグメントを行うか否かの判断に、フラグメント前のフレーム送信の誤り易さを使用しても良い。
【0132】
一方、ケースCのように、第2無線システムが第1無線システムの送受信をビジーとして検出する場合には、アグリゲーションなどにより送信するフレーム長を長くして、高効率に送受信を行った後に、IFSを調整し又は一定期間、送受信を行わないことなどによって、できるだけ早くチャネルを開放することが望ましい。
【0133】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、周波数チャネル毎の特性の差を考慮した上で、チャネル切替を行うかを最終的に決定することで、安易なチャネル切替により干渉が無くても要求スループットが得られない状況等が発生するのを抑えることが可能となる。例えば、チャネル変更が望ましいと基本的に判断した場合であっても、周波数チャネルにより特性差が大きいときは、周波数チャネルを切り替えず、同一周波数チャネルで共存することを選択することで、全体的にはより高いスループットが得られる。
【0134】
以下では、これまでに説明した実施形態に対するバリエーションについて説明する。以下の任意の一つの実施形態又は以下の実施形態を任意に組み合わせたものは、これまでに説明した任意の実施形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0135】
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成(例えば、図8の無線通信装置100参照)に加えて、バッファを備える構成について説明する。バッファは、送信部41及び受信部42それぞれと接続される。バッファは、上位層処理部50の内部に存在しても良いし、送信部41/受信部42と上位層処理部50との間に存在しても良いし、それらの組み合わせであっても良い。このように、バッファを無線通信装置に含める構成とすることによって、送受信データをバッファに保持することが可能となり、再送処理及び/又は外部出力処理を容易に行うことが可能となる。
【0136】
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、第6の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、外部インターフェースを備える構成について説明する。バスは第6の実施形態で示すバッファに接続され、プロセッサ部及び外部インターフェース部はそれぞれバスに接続される(すなわち、プロセッサ部及び外部インターフェース部はいずれもバスを介してバッファに接続される)。プロセッサ部では、ファームウエアが動作しても良い。また、これらのプロセッサ部、バス及び外部インターフェースは、上位層処理部50に存在しても良いし、上位層処理部50とは独立して存在しても良いし、それらの組み合わせであっても良い。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。
【0137】
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、第7の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を備える構成について説明する。動画像圧縮/伸長部は、第7の実施形態で示したバスに接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることによって、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
【0138】
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える構成について説明する。クロック生成部は、無線通信装置の無線送受信部(図8の無線送受信部60参照)に接続される。また、クロック生成部により生成されるクロックは、出力端子を介して外部に出力される。このように、無線通信装置の内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
【0139】
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部及び無線電力給電部を備える構成について説明する。電源部、電源制御部及び無線電力給電部は、無線通信装置の無線送受信部に接続される。例として、図14に、電源部、電源制御部及び無線電力給電部を図8の無線通信装置100に追加した場合の構成例を示す。図14に例示された無線通信装置1100において、電源部101、電源制御部102及び無線電力給電部103は、いずれも無線送受信部60に接続されている。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
【0140】
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、第10の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、NFC(Near Field Communications)送受信部を備える構成を示す。NFC送受信部は、無線通信装置の電源制御部及びMAC処理部に接続される。例えば、図14の無線通信装置1100の場合には、NFC送受信部が、図14の電源制御部102及び無線送受信部60内のMAC処理部40に接続される。NFC送受信部は、上位層処理部(50)の内部に存在しても良いし、上位層処理部(50)とは独立して存在しても良い。このように、NFC送受信部を無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となるとともに、NFC送受信部をトリガとして電源制御を行うことによって、待受け時の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0141】
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、第10又は第11の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを備える構成を示す。SIMカードは、MAC処理部(40)と接続される。SIMカードは、上位層処理部(50)の内部に存在しても良いし、上位層処理部(50)とは独立して存在しても良い。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
【0142】
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成に加えて、LED部を備える構成について説明する。LED部は、無線通信装置の無線送受信部(図8の無線送受信部60参照)に接続される。このように、LEDを無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0143】
(第14の実施形態)
第14の実施形態では、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を備える構成について説明する。バイブレータ部は、無線通信装置の無線送受信部(図8の無線送受信部60参照)に接続される。このように、バイブレータを無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0144】
(第15の実施形態)
第15の実施形態は、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成に加えて、アンテナ10が無線通信装置について説明する。アンテナ10を無線通信装置1に含める構成とすることによって、アンテナまで含めた一つの装置として無線通信装置を構成することが可能となり、実装面積を少なく抑えることが可能となる。また、例えば図8及び図14でも示しているが、アンテナ10を送信処理と受信処理で共用している。このように、一つのアンテナを送信処理及び受信処理で共用することによって、無線通信装置を小型化することが可能となる。
【0145】
(第16の実施形態)
第16の実施形態では、これまでの実施形態の第1無線システムの無線通信装置の構成に加えて、無線LAN部及び無線切替部を備える構成について説明する。例として、図15に、無線LAN部及び無線切替部を図8の無線通信装置100に追加した場合の構成例を示す。図14に例示された無線通信装置1200において、無線LAN部161は、上位層処理部50及び無線切替部162に接続され、無線切替部162は、無線送受信部60、上位層処理部50及び無線LAN部161に接続される。このように、無線LAN機能を無線通信装置に備える構成とすることによって、状況に応じて無線LANによる通信と無線送受信部500による通信とを切替えることが可能となる。特に前述したようにミリ波帯では複数チャネルの使用が可能であるが、例えば、第1無線システムにおいて、どのチャネルでも他の無線システムとの干渉が大きく、所望の送受信ができないような場合などには、無線LANによる通信に切り替えても良い。ここで、切り替える無線LANは、第1無線システムと異なる周波数帯域を使用する無線システム(例えば、IEEE 802.11a,b,g等)でも良いし、第1無線システムと同一の周波数帯域を使用する無線システム(例えば、802.11ad等)でも良い。また、無線LAN部にも独自の送受信アンテナがあっても良く、また、第1無線システムと同一の周波数帯域を使用する無線LANの場合にはアンテナを第1無線システムと共有しても良い。
【0146】
(第17の実施形態)
第17の実施形態では、第16の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、スイッチ(SW)を備える構成について説明する。スイッチは、無線送受信部、無線LAN部及び無線切替部にそれぞれ接続される。例えば、図15の無線通信装置1200の場合には、スイッチは、図15の無線送受信部60、無線LAN部161及び無線切替部162にそれぞれ接続される。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることによって、アンテナを共用しながら状況に応じて無線LANによる通信と無線送受信部による通信とを切替えることが可能となる。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0148】
1〜3,100,1100,1200…無線通信装置、10…アンテナ、20…無線部、30…変復調部、31…変調部、32…復調部、40…MAC処理部、41…送信部、42…受信部、43…干渉制御部、44…干渉判定部、50…上位層処理部、60…無線送受信部、101…電源部、102…電源制御部、103…無線電力給電部、161…無線LAN部、162…無線切替部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の無線通信方式を使用する無線通信装置において、
複数の周波数チャネルから選択された周波数チャネルを使用して、前記特定の無線通信方式と干渉し得る周波数チャネルを使用し且つ前記特定の無線通信方式よりも広い通信範囲を有する他の無線通信方式で使用する所定のフレーム間隔に比較して短いフレーム間隔又は長いフレーム間隔により、フレームの送信を行う送信部と、
前記選択された周波数チャネルを使用して、フレームの受信を行う受信部と、
受信される前記フレームにおける誤り特性と、使用されている前記周波数チャネルのビジー状況との少なくとも一方を判定する干渉判定部と、
前記誤り特性と前記ビジー状況との少なくとも一方に基づいて、前記周波数チャネルを変更するか、前記フレーム間隔の長さを変更するか、又は、いずれの変更もしないかを制御する干渉制御部とを含む無線通信装置。
【請求項2】
前記干渉判定部は、前記誤り特性を判定し、
前記干渉制御部は、前記誤り特性が基準に達している場合には、前記周波数チャネルを変更することを選択することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
使用するフレーム間隔として、前記短いフレーム間隔が初期設定され、
前記干渉制御部は、前記誤り特性が基準に達していない場合には、一旦、使用するフレーム間隔を前記長いフレーム間隔に変更することを選択することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記干渉判定部は、使用するフレーム間隔が前記長いフレーム間隔に変更されるのに先立って、使用されている前記周波数チャネルの前記短いフレーム間隔の下でのビジー状況を判定しておき、使用するフレーム間隔が前記長いフレーム間隔に変更された場合には、更に、使用されている前記周波数チャネルの前記長いフレーム間隔の下でのビジー状況を判定し、
前記干渉制御部は、前記短いフレーム間隔の下でのビジー状況と前記長いフレーム間隔の下でのビジー状況との間に変化がない場合には、使用するフレーム間隔を前記短いフレーム間隔に戻すことを選択することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
使用するフレーム間隔として、前記短いフレーム間隔が初期設定され、
前記干渉判定部は、前記短いフレーム間隔の下で、前記誤り特性及び前記ビジー状況を判定し、
前記干渉制御部は、前記誤り特性が基準に達している場合には、前記周波数チャネルを変更することを選択し、前記ビジー状況が基準に達していない場合には、使用するフレーム間隔を前記短いフレーム間隔に維持することを選択し、それ以外の場合には、使用するフレーム間隔を前記長いフレーム間隔に変更することを選択することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記干渉制御部は、最初に、前記ビジー状況を確認し、前記ビジー状況が基準に達していない場合には、使用するフレーム間隔を前記短いフレーム間隔に維持することを選択し、前記ビジー状況が基準に達している場合に、次いで、前記誤り特性を確認することを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
使用するフレーム間隔として、前記長いフレーム間隔が初期設定され、
前記干渉判定部は、前記長いフレーム間隔の下で、前記誤り特性及び前記ビジー状況を判定し、
前記干渉制御部は、前記誤り特性が基準に達している場合には、前記周波数チャネルを変更することを選択し、前記ビジー状況が基準に達していない場合には、使用するフレーム間隔を前記短いフレーム間隔に変更することを選択し、それ以外の場合には、使用するフレーム間隔を前記長いフレーム間隔に維持することを選択することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記干渉判定部は、最初に前記ビジー状況を判定し、前記ビジー状況が基準に達していない場合には、使用するフレーム間隔を前記短いフレーム間隔に変更することを選択し、前記ビジー状況が基準に達している場合に、次いで、前記誤り特性を確認することを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記誤り特性に対する前記基準は、前記フレームにおける受信誤りが、少なくともあらかじめ定められた数のフレームにわたって連続して発生することであることを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記干渉判定部は、タイマーを管理する機能を有するか又はタイマーを管理する機能と接続可能であり、前記誤り特性と前記ビジー状況との少なくとも一方について、タイマータイムアウトまでの一定期間内に測定を行うことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記フレーム間隔が前記短いフレーム間隔に変更された場合に、次に起動するタイマーのタイマー値をもとのタイマー値よりも長く設定することを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記干渉制御部は、前記周波数チャネルの変更を選択した場合に、前記周波数チャネルの変更を実行するのに先立って、周波数チャネル毎のチャネル特性を考慮して、前記周波数チャネルの変更を実行するか否かについて最終的な判定を行うことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記干渉制御部は、前記最終的な判定を、現在の周波数チャネルにおける送信レート及び現在の周波数チャネルが空いている時間割合と、変更先の周波数チャネルにおける送信レート及び変更先の周波数チャネルが空いている時間割合との間の関係に基づいて行うことを特徴とする請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記干渉制御部は、前記変更先の周波数チャネルが空いている時間割合を事前に把握しておくか、又は、前記変更先の周波数チャネルが空いている時間割合を特定の値とみなすことを特徴とする請求項13に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記干渉制御部は、前記周波数チャネルの変更を選択しなかった場合に、前記フレームの送受信に誤りが発生しているときは、前記送信部において送信データサイズを小さくするフラグメント処理を行ってフレーム送信することを選択することを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記干渉制御部は、接続処理終了後に最初に使用するフレーム間隔として、前記短いフレーム間隔を初期設定するか、前記長いフレーム間隔を初期設定するかの選択を、接続処理中に送信する接続要求信号の送信できる割合に基づいて行うことを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項17】
特定の無線通信方式を使用する無線通信装置の干渉回避方法において、
前記無線通信装置の送信部が、複数の周波数チャネルから選択された周波数チャネルを使用して、前記特定の無線通信方式と干渉し得る周波数チャネルを使用し且つ前記特定の無線通信方式よりも広い通信範囲を有する他の無線通信方式で使用する所定のフレーム間隔に比較して短いフレーム間隔又は長いフレーム間隔により、フレームの送信を行うステップと、
前記無線通信装置の受信部が、前記選択された周波数チャネルを使用して、フレームの受信を行うステップと、
前記無線通信装置の干渉判定部が、受信される前記フレームにおける誤り特性と、使用されている前記周波数チャネルのビジー状況との少なくとも一方を判定するステップと、
前記無線通信装置の干渉制御部が、前記誤り特性と前記ビジー状況との少なくとも一方に基づいて、前記周波数チャネルを変更するか、前記フレーム間隔の長さを変更するか、又は、いずれの変更もしないかを制御するステップとを含む干渉回避方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−46314(P2013−46314A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184123(P2011−184123)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】