説明

無線通信装置及び電子機器

【課題】意図した機器とのペアリングの成功率等を向上させることができる無線通信装置及び電子機器等の提供。
【解決手段】無線通信装置は、送信パワーが可変に設定される送信回路と、受信回路とを有する無線通信部と、無線通信部の制御処理を行う処理部を含む。処理部は、通常データ通信時には、送信回路の送信パワーを、第1の送信パワーに設定して、データの通信処理を行い、ペアリング処理時には、送信回路の送信パワーを、第1の送信パワーよりも小さい第2の送信パワーに設定して、ペアリング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Bluetooth(登録商標)などに代表される近距離無線方式を実現する無線通信装置が脚光を浴びている。このような無線通信装置の従来技術としては例えば特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
このような近距離の無線通信装置を内蔵する電子機器では、機器を最初に使用する際に、接続相手を特定して通信接続を確立するためのペアリングが行われる。
【0004】
ところが、従来のペアリングでは、ペアリング対象機器を検索する際に、無線通信装置の送信回路の送信パワーを最大にして、広範囲に亘って搬送波を伝達させていた。この結果、その範囲に存在する複数の機器が搬送波を受け取り、その搬送波を受け取った全ての機器が応答を行うことになる。そして、これらの複数の機器からの応答を検知した場合に、ユーザーが意図した機器ではない機器との間でペアリングが行われてしまったり、混信によるペアリング通信の失敗などの事態が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−155386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、意図した機器とのペアリングの成功率等を向上させることができる無線通信装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、送信パワーが可変に設定される送信回路と、受信回路とを有する無線通信部と、前記無線通信部の制御処理を行う処理部と、を含み、前記処理部は、通常データ通信時には、前記送信回路の送信パワーを、第1の送信パワーに設定して、データの通信処理を行い、ペアリング処理時には、前記送信回路の送信パワーを、前記第1の送信パワーよりも小さい第2の送信パワーに設定して、前記ペアリング処理を行う無線通信装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、通常データ通信時には、送信回路が第1の送信パワーに設定されて、データの通信処理が行われる。一方、ペアリング処理時には、通常データ通信時の第1の送信パワーよりも小さい第2の送信パワーに、送信回路の送信パワーが設定されて、ペアリング処理が実行される。このようにすれば、ペアリング処理時において、送信信号の搬送が及ぶ範囲を限定することが可能になり、意図しない機器が応答してペアリングが行われてしまったり、複数の機器が応答することで混信が生じるなどの事態を抑止できる。これにより、意図した機器とのペアリングの成功率等を向上させることが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記ペアリング処理の最初に行われるペアリング対象機器の検索用パケットの通信時に、前記送信回路の送信パワーを、前記第2の送信パワーに設定し、前記検索用パケットの通信後に、前記送信回路の送信パワーを、前記第2の送信パワーよりも大きい第3の送信パワーに設定して、ペアリング処理用のパケットの通信処理を行ってもよい。
【0010】
このようにすれば、検索用パケットの通信時には、小さい第2の送信パワーに設定されることで、当該検索用パケットが伝達される範囲を限定でき、意図した機器が応答してペアリングが行われてしまう事態などを抑止できる。一方、検索用パケットの通信後に通信されるペアリング処理用のパケットについては、大きな第3の送信パワーに設定されて通信されるため、ペアリング処理時の高品質な通信品質を維持できようになる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記通常データ通信用のパケットに対しては、パケットの宛先判定用アドレスとして、ペアリングされた特定の機器を宛先として指定するユニークアドレスを設定し、前記検索用パケットに対しては、前記宛先判定用アドレスとして、特定の機器を宛先として指定しないグローバルアドレスを設定してもよい。
【0012】
このようにすれば、通常データ通信時には、物理的な混信が発生する状況であっても、宛先判定用アドレスとしてユニークアドレスを設定することで、混信を排除できるようになる。また、検索用パケットの宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスを設定することで、特定の機器に限定せずに、検索用パケットを伝達することが可能になる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記検索用パケットの通信後に、前記送信回路の送信パワーを前記第3の送信パワーに設定して、前記宛先判定用アドレスとして前記グローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行い、前記通信設定用パケットにより前記ユニークアドレスの設定処理を行ってもよい。
【0014】
このようにすれば、検索用パケットの通信時に使用される第2の送信パワーよりも大きな第3の送信パワーに送信回路の送信パワーが設定されて、通信設定用パケットの通信が行われるようになる。従って、通信設定用パケットの通信時における雑音耐性等を向上させることが可能になり、ユニークアドレスの設定処理等における通信品質を向上できる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記検索用パケットを受信したペアリング対象機器が応答パケットを送信した場合に、前記応答パケットに設定された機器IDに基づいて、前記ユニークアドレスの設定処理を行ってもよい。
【0016】
このようにすれば、検索用パケットに応答したペアリング対象機器からの機器IDに基づいて、ユニークアドレスを設定できるようになるため、当該ペアリング対象機器との適正なペアリング処理を実現できる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記機器IDに応じて応答時間が異なる前記応答パケットをペアリング対象機器から受信して、前記ユニークアドレスの設定処理を行ってもよい。
【0018】
このようにすれば、検索用パケットの応答パケット等についての混信の発生等を低減できるようになる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記宛先判定用アドレスを保持するアドレス保持レジスターを有し、前記処理部は、前記ユニークアドレスの設定処理として、前記ユニークアドレスがペイロードに設定された前記通信設定用パケットを、ペアリング対象機器に送信する処理を行うと共に、前記アドレス保持レジスターに対して前記ユニークアドレスを書き込む処理を行ってもよい。
【0020】
このようにすれば、ユニークアドレスが設定された通信設定用パケットを送信することで、宛先判定用アドレスとなるユニークアドレスを、ペアリング対象機器に伝えることが可能になる。また、ユニークアドレスをアドレス保持レジスターに保持しておくことで、自身が送信するパケットの宛先判定用アドレスに、ユニークアドレスを設定して、ペアリング対象機器に送信できるようになる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記処理部は、使用する通信周波数を前記通信設定用パケットのペイロードに設定して、ペアリング対象機器に送信する処理を行ってもよい。
【0022】
このようにすれば、受信状況が良くない場合に、通信周波数を変更して、混信の発生等を抑止できるようになる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記ペアリング処理の終了時に、前記アドレス保持レジスターに対して前記グローバルアドレスを書き込む処理を行ってもよい。
【0024】
このようにすれば、ペアリング処理の後に行われる処理では、ユニークアドレスの設定ではなく、グローバルアドレスの設定により当該処理のセッションが開始されるようになる。従って、ペアリングにより対応づけられる機器が固定化されてしまうなどの事態を抑止できる。
【0025】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記通常データ通信の開始時には、前記宛先判定用アドレスとして前記グローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行ってもよい。
【0026】
このようにすれば、通常データ通信のセッションでは、ユニークアドレスの設定ではなく、グローバルアドレスの設定により当該セッションが開始されるようになる。従って、ペアリングにより対応づけられる機器が固定化されてしまうなどの事態を抑止できる。
【0027】
また本発明の一態様では、前記処理部は、前記送信回路の送信パワーを前記第2の送信パワーに設定して、シングルパケットの前記検索用パケットの通信処理を行い、前記シングルパケットの前記検索用パケットの通信後に、前記送信回路の送信パワーを前記第2の送信パワーから前記第3の送信パワーに切り替えてもよい。
【0028】
このように検索用パケットがシングルパケットであれば、送信パワーが小さくても、機器検索が失敗する確率を低減できる。また、シングルパケットの検索用パケットの送信後は、大きな第3の送信パワーに設定することで、ペアリング処理における安定したパケット送信を実現できるようになる。
【0029】
また本発明の一態様では、前記無線通信部は、パケットの受信に成功した場合には、自動的にアクノリッジパケットを返信して、パケットの受信に成功したことを前記処理部に通知し、パケットの受信に所与の回数だけ失敗した場合に、パケットの受信に失敗したことを前記処理部に通知してもよい。
【0030】
このようにすれば、パケット処理についての処理部の処理の占有時間を減らすことが可能になり、処理部の処理負荷の軽減等を図れる。
【0031】
また本発明の一態様では、各機器の機器IDに基づいて、使用する通信周波数が設定され、前記機器IDに基づきグループ分けされる第1〜第Nの機器グループの各機器グループに対して、第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数が割り当てられる場合に、前記処理部は、前記第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数で、前記検索用パケットの通信処理を行ってもよい。
【0032】
このようにすれば、小さい第2の送信パワーで検索用パケットを送信した場合にも、混信等が生じる事態を最小限に抑えることが可能になる。
【0033】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の無線通信装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の無線通信装置の構成例。
【図2】本実施形態の無線通信装置の詳細な構成例。
【図3】本実施形態の無線通信装置を利用した計測システムのシステム構成例。
【図4】計測システムにより生成される表示画像の例。
【図5】本実施形態の処理を説明するフローチャート。
【図6】図6(A)〜図6(D)は本実施形態で使用されるパケットのフォーマット例。
【図7】ペアリング時における本実施形態の詳細な処理例を説明する通信シーケンス図。
【図8】ペアリング時における本実施形態の詳細な処理例を説明する通信シーケンス図。
【図9】通常データ通信時における本実施形態の詳細な処理例を説明する通信シーケンス図。
【図10】機器IDに基づいて応答パケットの応答時間を設定する手法の説明図。
【図11】図11(A)、図11(B)はACKの自動返信処理の説明図。
【図12】図12(A)、図12(B)は無線通信周波数の変更手法の説明図。
【図13】図13(A)、図13(B)は本実施形態の無線通信装置を含む電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0036】
1.構成
図1に本実施形態の無線通信装置の構成例を示す。この無線通信装置は、送信回路30及び受信回路40を有する無線通信部10と、無線通信部の制御処理を行う処理部60を含む。また、種々の情報を記憶する記憶部80を含むことができる。
【0037】
具体的には無線通信部10は、物理層回路20とリンク層回路50を含む。物理層回路20は、無線通信装置の物理層の処理を行う回路であり、機器同士の物理的な接続に関する処理を行う。この物理層回路20は、パワーアンプなどを有する送信回路30と、低ノイズアンプなどを有する受信回路40を含み、アンテナANTを介した他の機器との無線による情報の送受信を実現する。なお、アンテナANTは、無線通信装置を実現するIC(集積回路装置)に内蔵されるインダクター素子により実現してもよいし、ICの外付け部品により実現しもてよい。
【0038】
リンク層回路50は、無線通信装置のリンク層の処理を行う回路であり、機器同士の論理的な接続に関する処理を行う。具体的にはリンク層回路50は、パケットの生成処理、パケットの解析処理、パケットのバッファリング処理、エラーチェック処理などを行う。
【0039】
処理部60は、無線通信装置の全体の制御処理や、リンク層の上位の層(例えばネットワーク層、トランスポート層、セッション層等)の処理を行う。この処理部60の機能は、CPU等の各種プロセッサやASICなどのハードウェア回路や、このハードウェア回路上で動作するプログラムなどにより実現できる。
【0040】
記憶部80は、パケットのペイロードにより転送される各種データや、通信制御等のための各種の制御情報を記憶する。例えば記憶部80はレジスター部82を有し、このレジスター部82のレジスターに、通信制御等のための各種の制御情報が記憶される。この記憶部80の機能は、SRAM、DRAM等の揮発性のメモリーや、EEPROM等の不揮発性のメモリーなどにより実現できる。
【0041】
図2に本実施形態の無線通信装置の詳細な構成例を示す。なお、本実施形態の無線通信装置の構成は、前述の図1の構成や図2の構成には限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0042】
図2では、物理層回路20として、送信回路30、受信回路40、シンセサイザー部22が設けられている。またリンク層回路50として、リンクコントローラー52、送信バッファー54、受信バッファー56等が設けられている。
【0043】
送信回路30は、パワーアンプPA、送信信号生成部32、フィルター部34、変調部36を含む。変調部36は、送信バッファー54から送信データを受け、GFSK(Gaussian Frequency Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)などの変調処理を行う。変調後の送信データは、送信回路用のフィルター部34を介して、送信信号生成部32に入力される。送信信号生成部32は、シンセサイザー部22から搬送波の信号(例えば2.4GHz等)を受け、変調後の送信データに基づく送信信号をパワーアンプPAに出力する。そしてパワーアンプPAは、送信信号(差動の送信信号)を増幅して、アンテナANTに対して出力する。
【0044】
受信回路40は、低ノイズアンプLNA、ミキサー部42、フィルター部44、復調部46を含む。低ノイズアンプLNAは、アンテナANTから入力されるRFの受信信号(差動の受信信号)を低ノイズで増幅する。ミキサー部42は、増幅後の受信信号と、シンセサイザー部22(クロック生成回路、PLL回路、局所周波数生成回路)からの信号(ローカル信号、局所周波数信号)のミキシング(混合)処理を行って、ダウンコンバージョンを実行する。受信回路用のフィルター部44は、ダウンコンバージョン後の受信信号のフィルター処理を行う。具体的には、フィルター部44は、複素フィルターなどで実現されるバンドパスのフィルター処理を行い、イメージ除去を行いながらベースバンド信号を抽出する。復調部46は、フィルター部44からの信号に基づいて復調処理を行う。例えば送信側においてGFSKやFSKで変調された信号の復調処理を行い、復調後の受信データを受信バッファー56に出力する。
【0045】
リンクコントローラー52は、リンク層の処理を行う。具体的には、送信パケットの生成処理や、受信パケットの解析処理や、エラーチェック処理や、後述するACK(アクノリッジ)の自動返信処理などを行う。送信バッファー54は、送信回路30により送信されるデータ(送信パケット)のバッファリングを行う。受信バッファー56は、受信回路40により受信されたデータ(受信パケット)のバッファリングを行う。インターフェース部58は、無線通信部10と処理部60とのインターフェース処理を行う。このインターフェース処理は、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)などにより実現できる。例えば処理部60は、インターフェース部58を介したレジスター設定により、無線通信部10の通信処理等の制御を行う。
【0046】
2.計測システム
図3に本実施形態の無線通信装置を利用した計測システムのシステム構成例を示す。この計測システムは、腕時計タイプの計測機器100(センサー装置)、クレードル110、PC200(パーソナルコンピューター)、サーバーシステム400を含む。
【0047】
計測機器100は、ユーザーの脈拍等をセンシングし、センシングされた脈拍等や、ユーザーの体重、身長、年齢等に基づいて、例えば消費カロリー、歩数などを計測し、得られた計測データ(運動データ)を、EEPROM(例えばフラッシュメモリー)などの不揮発性の記憶部に保存する。
【0048】
ユーザーが計測機器100のボタンを操作し、計測データの送信を指示すると、不揮発性の記憶部に保存された計測データが無線通信によりクレードル110に送信される。クレードル110は、例えばUSB等の有線通信によりPC200と接続されており、計測機器100からの計測データは有線通信を介してPC200に送信される。
【0049】
PC200には、計測機器100と連携するためのソフトウェアーが予めインストールされており、計測機器100からの計測データは、当該ソフトウェアーによりネットワーク300を介して外部のサーバーシステム400に送信される。
【0050】
ネットワーク300は、例えばインターネットや無線LAN等を利用した通信路であり、直接接続のための専用線やインサーネット(登録商標)等によるLANの他、電話通信網やケーブル網や無線LAN等の通信網を含むことができる。
【0051】
サーバーシステム400は、ネットワーク300を介して、ユーザーに対して運動プログラムサービスを提供する。即ち、サーバーシステム400は、PC200からネットワーク300を介して受信した計測データ(運動データ)のデータ処理を行い、例えば消費カロリーの時系列情報などの表示用データを生成し、その表示用データをネットワーク300を介してPC200に送信する。例えば、表示用データはHTML形式で提供され、PC200は、その表示用データをウェブブラウザー等により、LCD等の表示部に表示する。
【0052】
図4に、本実施形態の計測システムによりPC200の表示部に表示される表示画像の例を示す。図4のA1は、ウェブブラウザーの表示領域を表している。A2に示すユーザー設定情報の表示領域には、ユーザーの現在の体重や目標体重などが表示される。A3に示すメニュー表示領域には、ユーザーが運動プログラムサービスを操作するためのメニューが表示される。A4に示す運動データの表示領域には、ユーザーの運動による消費カロリーが時系列に表示される。
【0053】
3.本実施形態の手法
3.1 ペアリング時の送信パワーの制御
図3の計測システムでは、計測機器100、クレードル110の各々に対して、本実施形態の無線通信装置が設けられ、これらの無線通信装置の間で、運動データ等の計測データが無線通信される。そして、このような計測データの無線通信を行う場合に、ユーザーが計測機器100を初めて使用する際に、機器間(計測機器とクレードルとの間)で、接続相手を特定して通信接続を確立するためのペアリングが行われる。このペアリングは、接続相手となる機器をお互い登録し、登録された機器との接続を許可する操作である。ペアリングが終了して、接続相手となる機器がお互いに登録されると、2回目以降は、これらの機器は自動的にお互いに認識されて通信接続が確立されるようになる。
【0054】
ところが、このペアリングの際に、図1、図2の送信回路30(パワーアンプ)が、送信パワーを最大にして送信信号を出力すると、送信信号である搬送波が広範囲に亘って伝達してしまう。従って、ユーザーが通信接続を意図する図3の計測機器100のみならず、通信接続を意図しない他の計測機器102に対しても搬送波が伝達してしまう。このため、ユーザーが所望する計測機器100のみならず、他の計測機器102も搬送波に対して応答してしまう。この結果、ユーザーが意図しない計測機器102との間でペアリングが行われてしまったり、混信によるペアリング通信の失敗などの事態が生じてしまう。例えば計測機器100、102の両方が同じタイミングで応答してしまうと、混信が生じ、ペアリングによる通信が失敗する事態を招く。
【0055】
このような課題を解決するために本実施形態では、ペアリング対象機器を検索する際に、微弱な送信パワー(送信強度)の搬送波を使用することで、搬送波の伝達範囲を限定化する。そして、搬送波に応答する機器の絶対数を制限することによって、ユーザーが意図する機器とのペアリングを行いやすくして、意図した機器との高いペアリング成功率を実現する。そして、ペアリング対象機器の検索後に送信されるパケットについては、通常の送信パワーの搬送波を使用することで、ペアリング手順自体の通信品質については低下しないようにする。
【0056】
具体的には図1、図2の送信回路30は、送信パワーが可変に設定できるようになっている。例えば送信回路30が出力する送信信号の電圧振幅等が可変に制御される。この送信パワーの制御は、例えば送信回路30のパワーアンプPAを制御することで実現できる。一例としては、パワーアンプPAに、増幅用トランジスタにより構成される増幅部と、増幅部に直列に接続されるLC負荷回路を設ける。そして、このLC負荷回路を構成するインダクター素子のインダクタンス値及びキャパシターの容量値の少なくとも一方を制御することで、送信信号の電圧振幅を制御して、送信パワーを制御する。
【0057】
そして本実施形態では処理部60は、通常データ通信時には、送信回路30(パワーアンプ)の送信パワーを、第1の送信パワーに設定して、データの通信処理を行う。一方、ペアリング処理時には、後述する図5のS2,図7のS22に示すように、送信回路30の送信パワーを、第1の送信パワーよりも小さい第2の送信パワーに設定して、ペアリング処理を行う。
【0058】
例えばデフォルトの送信パワーである第1の送信パワーを0dBとした場合に、第2の送信パワーを例えば−18dB程度にする。これにより、デフォルトの第1の送信パワーでは、搬送波の伝達範囲が例えば10m程度であったものが、ペアリング時の第2の送信パワーでは、搬送波の伝達範囲が例えば1m程度に限定される。従って、図3において、クレードル110から離れた位置にある計測機器102との間でのペアリングは行われず、クレードル110に近い位置にある計測機器100(或いは、クレードル110に取り付けられた計測機器)との間だけで、ペアリングが行われるようになる。この結果、ユーザーが意図しない計測機器102との間でペアリングが行われてしまったり、混信によるペアリング通信の失敗が生じてしまうなどの事態を防止できるようになり、意図した機器との高いペアリング成功率を実現できる。
【0059】
なお、第1の送信パワーに設定される通常データ通信とは、図3における計測データ等の通常データ(アプリケーションデータ)の無線通信である。また、送信パワーは、ペアリング処理の全ての期間において第2の送信パワーに設定されている必要はなく、少なくともペアリング処理の最初の期間において第2の送信パワーに設定されていればよい。また、送信パワーの設定は、処理部60が、図2のインターフェース部58を介して、無線通信部10の送信パワー制御用のレジスターに送信パワーの設定値を書き込むことで実現できる。このような送信パワーの設定値が書き込まれると、その設定値に基づいてパワーアンプPAのLC負荷回路のインダクタンス値や容量値等が設定されて、送信信号の電圧振幅が制御されることで、送信パワーが制御されるようになる。
【0060】
更に具体的には、処理部60は、後述する図5のS2、図7のS22に示すように、ペアリング処理の最初に行われるペアリング対象機器の検索用パケット(サーチコマンドが設定されたパケット)の通信時に、送信回路30の送信パワーを、第1の送信パワーよりも小さい第2の送信パワーに設定する。ここで検索用パケットは、自身の機器の周囲に、ペアリング候補となる機器が存在するか否かを検索するためのパケットである。
【0061】
そして処理部60は、後述する図5のS5、図7のS23に示すように、検索用パケットの通信後に、送信回路の送信パワーを、第2の送信パワーよりも大きい第3の送信パワー(PW1)に設定して、ペアリング処理用のパケットの通信処理を行い、例えばペアリング対象機器とのセッション確立処理等を行う。即ち、ペアリング処理での最初のパケットの送信時には、第2の送信パワーに設定し、その後のペアリング処理用のパケットの送信時には、第2の送信パワーよりも大きい第3の送信パワーに設定する。
【0062】
ここで、ペアリング処理用のパケットは、検索用パケットによりペアリングの候補となる機器が検索された後、各機器との間で必要な情報を交換したり、接続相手となる機器をお互い登録して当該機器との接続を確立ために使用されるパケットである。
【0063】
また、ペアリング処理用のパケットの通信時に使用される第3の送信パワーは、通常データ通信時に使用される第1の送信パワーと同じ送信パワーであってもよいし、第1の送信パワーと第2の送信パワーの間の送信パワーであってもよい。
【0064】
このように検索用パケットの通信時に、微弱な第2の送信パワーに設定することで、検索用パケットの搬送波が及ぶ範囲を限定し、当該検索用パケットに応答してパケットを返信する機器の絶対数を制限することができる。これにより、ユーザーが意図する機器とのペアリングが容易になり、意図した機器との高いペアリング成功率を実現できる。
【0065】
そして、検索用パケットの後に通信されるペアリング処理用のパケット(通信設定用パケット等)については、第2の送信パワーよりも大きい第3の送信パワーで送信する。こうすることで、ペアリング処理の通信品質については低下しないようになり、安定したペアリング処理を実現できるようになる。
【0066】
また処理部60は、後述する図6(B)に示すように、通常データ通信用のパケットに対しては、パケットの宛先判定用アドレスとして、ペアリングされた特定の機器を宛先として指定するユニークアドレスを設定する。即ち、計測データ等のアプリケーションデータがペイロードに設定された通常データ通信用のパケットを通信する際には、当該パケットの宛先判定用アドレスとして、ユニークアドレスを設定する。なお、通常データ通信の開始時においては、パケットの宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスを設定することが望ましい。
【0067】
一方、処理部60は、後述する図6(C)に示すように、検索用パケットに対しては、宛先判定用アドレスとして、特定の機器を宛先として指定しないグローバルアドレスを設定する。即ち、ペアリング処理の最初に通信される検索用パケットに対しては、宛先判定用アドレスとして、ユニークアドレスではなくグローバルアドレスを設定する。
【0068】
ここで、グローバルアドレスは、特定の機器を指定せずに、ブロードキャストでパケットを送信するためのアドレスであり、例えば全ての機器に共通に使用されるアドレスである。一方、ユニークアドレスは、検索用パケットに対する応答として取得した機器ID(identification)などに基づいて設定されるアドレスであり、ペアリングされた機器を一意に指定するアドレスである。また、宛先判定用アドレスは、例えばパケットのペイロード以外のフィールドに設定され、当該パケットを受信した機器が、当該パケットの宛先が自身宛のものなのか否かを判定するためのアドレス(識別情報)である。この宛先判定用アドレスは、例えば処理部60が、インターフェース部58を介して無線通信部10のレジスターに対して設定する。すると、無線通信部10のリンクコントローラー52が、パケットの生成時(組立時)に、処理部60によりレジスターに設定された宛先判定用アドレスを、パケットのアドレスフィールドに設定し、当該パケットの送信処理を行う。
【0069】
以上のように通常データ通信用のパケットに対してユニークアドレスを設定することで、ペアリングにより対応づけられた機器同士で、通常データを適正に送受信できるようになる。また、検索用パケットに対してグローバルアドレスを設定することで、当該機器の周囲の機器に対して、宛先を特定せずに検索用パケットを送信して、ペアリング処理を正常に開始することが可能になる。
【0070】
この場合に、処理部60は、後述する図7のS23に示すように、検索用パケットの通信後に、送信回路30の送信パワーを第3の送信パワー(PW1)に設定して、宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行う。そして、この通信設定用パケットによりユニークアドレスの設定処理を行う。
【0071】
このようにすれば、検索用パケットにより検索されて応答して来た機器に対して、宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスが設定された通信設定用パケットを送信して、その機器との間の通信で使用されるユニークアドレスを設定できるようになる。そして、この通信設定用パケットについては、微弱な第2の送信パワーではなく、第2の送信パワーよりも大きな第3の送信パケットで送信されるため、相手の機器との間との確実な通信設定処理を実現できるようになる。
【0072】
また処理部60は、検索用パケットを受信したペアリング対象機器が応答パケットを送信した場合に、後述する図7のS24等に示すように、その応答パケットに設定された機器IDに基づいて、ユニークアドレスの設定処理を行う。即ち、検索用パケットを送信し、その検索用パケットを受信したペアリング対象機器が、機器IDを含む応答パケットを送信して来ると、処理部60は、その機器IDに基づいてユニークアドレスを設定する。例えば、4バイトの機器ID+0xE7の合計5バイトのユニークアドレスを設定する。具体的には処理部60は、機器IDを含む応答パケットを受信すると、機器IDに基づいてユニークアドレスを算出する。そして、上述のように宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレス(例えば0xE7E7E7E7E7)が設定された通信設定用パケットをペアリング対象機器に送信することで、ペアリング対象機器との間でのユニークアドレスの設定処理を実現する。
【0073】
この場合に処理部60は、後述する図10に示すように、機器IDに応じて応答時間が異なる応答パケットをペアリング対象機器から受信して、ユニークアドレスの設定処理を行ってもよい。即ち、検索用パケットを受信したペアリング対象機器は、機器IDに基づいて応答時間(ウェイト時間)を算出し、算出された応答時間の経過後に、機器IDを含む応答パケットを送信する。すると、処理部60は、このように機器IDに応じて応答時間が異なる応答パケットを受信して、上述のような通信設定用パケットの通信処理を行い、ユニークアドレスの設定処理等を行う。
【0074】
また図1、図2に示すように、例えば記憶部80には、宛先判定用アドレスを保持するアドレス保持レジスター84が設けられる。そして処理部60は、ユニークアドレスの設定処理として、ユニークアドレスがペイロードに設定された通信設定用パケットを、ペアリング対象機器に送信する処理を行うと共に、後述する図7のS24に示すように、アドレス保持レジスター84に対してユニークアドレスを書き込む処理を行う。即ち、ペアリング対象機器から機器IDを含む応答パケットを受信すると、上述のように機器IDに基づいてユニークアドレスを算出し、算出されたユニークアドレスをアドレス保持レジスター84に書き込んで情報を保持する。また、後述する図6(D)に示すように、算出されたユニークアドレスがペイロードに設定された通信設定用パケットを、ペアリング対象機器に送信する処理を行って、ペアリング対象機器との間でのユニークアドレスの設定処理を実現する。
【0075】
この場合に処理部60は、後述する図6(D)に示すように、使用する通信周波数を通信設定用パケットのペイロードに設定して、ペアリング対象機器に送信する処理を行ってもよい。即ち、ユニークアドレスのみならず、使用する通信周波数を通信設定用パケットのペイロードに設定して、ペアリング対象機器に送信する。このようにすることで、ペアリング対象機器との間で使用する通信周波数を可変に設定できるようになり、混信の発生を抑制できるようになる。
【0076】
また処理部60は、後述する図8のS27に示すように、ペアリング処理の終了時(セッション終了時)に、アドレス保持レジスター84に対してグローバルアドレスを書き込む処理を行う。即ち、ユニークアドレスの通信設定を解除して、グローバルアドレスを設定して、セッションを終了するようにする。
【0077】
また処理部60は、後述する図9のS41等に示すように、通常データ通信の開始時(セッション開始時)には、宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行う。即ち、通常データ通信の開始時には、ユニークアドレスではなくグローバルアドレスで通信設定用パケットの通信処理を行うようにする。
【0078】
このようにすれば、ペアリング処理の後の通常データ通信のセッションでは、ユニークアドレスの設定ではなく、グローバルアドレスの設定により当該セッションが開始されるようになる。従って、ペアリングにより対応づけられる機器が固定化されてしまう事態を抑止できるようになる。例えば図3において、自宅においては、自宅PCと計測機器100をペアリングにより対応づけ、会社においては、会社PCと計測機器100をペアリングにより対応づけることが可能になる。
【0079】
また処理部60は、送信回路30の送信パワーを第2の送信パワーに設定して、シングルパケットの検索用パケットの通信処理を行う。即ち、微弱の第2の送信パワーでは、1つの検索用パケットだけを送信するようにする。そしてシングルパケットの検索用パケットの通信後に、送信回路30の送信パワーを第2の送信パワーから第3の送信パワーに切り替える。即ち、1つめのシングルパケットの検索用パケットだけを微弱な第2の送信パワーで送信し、その後のパケットについては、第2の送信パワーよりも大きな第3の送信パワーで送信するようにする。
【0080】
このように検索用パケットをシングルパケットとすれば、送信パワーが微弱であっても、機器検索が失敗する可能性を低減できる。また、シングルパケットの検索用パケットの送信後は、大きな第3の送信パワーに設定することで、ペアリング処理における安定したパケット送信を実現できるようになる。
【0081】
この場合に無線通信部10は、後述する図11(A)、図11(B)で説明するように、アクノリッジ(ACK)の自動返信を行う。具体的には無線通信部10は、パケットの受信に成功した場合には、自動的にアクノリッジパケットを相手機器に返信して、パケットの受信に成功したことを処理部60に通知する。例えば、受信成功を通知するレジスターに対して受信成功のステータスを書き込むことで、処理部60に受信成功を通知する。そして無線通信部10は、パケットの受信に所与の回数だけ失敗した場合に、パケットの受信に失敗したことを処理部60に通知する。
【0082】
即ち、パケットの受信に失敗した場合には、直ぐには処理部60に通知せず、例えばアクノリッジを自動返信せずに、相手機器からのパケットの再送を待つ。そして、処理部60により設定された所与の回数だけ受信に失敗した時に初めて、パケットの受信の失敗を処理部60に通知するようにする。このようにすることで、処理部60は、所与の回数だけパケットの受信に不成功で、受信の失敗が通知されるまで、他の処理を行うことが可能なる。従って、パケット処理に対する処理部60の処理の占有時間を減らすことが可能になり、処理部60の処理負荷の軽減等を図れる。
【0083】
そして、検索用パケットの送信時に微弱な第2の送信パワーに設定すると、無線の電波強度が低くなるため、アクノリッジの自動返信処理が機能して、所与の回数だけパケットの再送処理が行われやすくなる。しかしながら、検索用パケットをシングルパケットにすれば、このようなアクノリッジの自動返信処理による再送処理が行われても、検索用パケットの通信の成功に長い時間を要してしまう事態を抑止できるようになる。
【0084】
また、本実施形態では、後述する図12(A)、図12(B)で説明するように、各機器の機器IDに基づいて、使用する通信周波数を設定し、当該機器IDに基づきグループ分けされる第1〜第Nの機器グループの各機器グループに対して、第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数が割り当てる。
【0085】
この場合に処理部60は、これらの第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数で、検索用パケットの通信処理を行う。このようにすることで、微弱な第2の送信パワーで検索用パケットを送信した場合にも、混信等が生じる事態を最小限に抑えることが可能になる。
【0086】
3.2 処理例、パケットフォーマット例
次に本実施形態の処理例及びパケットのフォーマットの例について説明する。図5は、本実施形態の処理例を説明するフローチャートである。
【0087】
ここで、DEVXは例えば図3のクレードル110(クレードルに内蔵される無線通信装置)であり、DEVYは、例えば計測機器100(計測機器に内蔵される無線通信装置)である。
【0088】
また、以下では、検索用パケットの通信後に設定される第3の送信パワーは、通常データ通信時の第1の送信パワーと同じ送信パワーであるとして説明を行う。但し、第3の送信パワーは、検索用パケットの通信時の第2の送信パワーよりも大きく、通常データ通信時の第1の送信パワーよりも小さな送信パワーであってもよい。
【0089】
まず、機器DEVX(クレードル)は、例えば電源の投入後、ペアリングを行う場合には、送信パワーをPW2(弱)に設定する(S1、S2)。そして、検索用パケットを送信する(S3)。この検索用パケットは、パケットのペイロードに検索コマンド(サーチコマンド、ルックアップコマンド)が設定されたパケットである。
【0090】
機器DEVY(計測機器)は、この検索用パケットを受信すると、機器IDを応答パケットで送信する(S11、S12)。具体的には、機器IDがペイロードに設定された応答パケットを送信する。
【0091】
即ち、図3のようにクレードル110の近くに計測機器100が存在する場合には、弱い送信パワーPW2であっても、計測機器100は検索用パケットを受信することができ、その応答パケットのペイロードに自身の機器IDを設定して、クレードル110に返信する。一方、クレードル110から遠い位置にある機器102は、送信パワーPW2が弱いため、検索用パケットを受信することはできず、機器IDを返信することもできなくなる。
【0092】
機器DEVX(クレードル)は、機器DEVY(計測機器)から機器IDを含む応答パケットを受信すると、送信パワーをPW1(強)に設定する(S4、S5)。そして、機器DEVX、DEVYは、ペアリング処理用のパケットの通信処理を行って、ペアリングのセッション確立処理を行う(S6、S13)。具体的には、S4で受信した機器IDに基づいて、ユニークアドレスを設定する処理や、ペアリング操作を行うための画像を機器の表示部に表示するための処理などを行う。そして、ペアリングが終了し、ペアリング相手がお互いに登録されると、その後は、機器同士が近づくことで自動的に通信接続が行われて、計測データ等の通常データの通信が可能になる。
【0093】
図6(A)は、機器間で無線通信されるパケットのフォーマット例である。図6(A)のパケットは、プリアンブル、アドレス、パケット制御情報、ペイロード、CRCのフィールドを有する。
【0094】
プリアンブルは受信機の復調部が、入力されるビット列と同期をとるためのビット列である。
【0095】
アドレス(識別情報)は、受信機用のアドレスであり、パケットの宛先判定用のアドレスである。このアドレスは、パケットの混信を防ぐためのパケット検出及び当該受信機が受信すべきパケットであるかの判定に使用される。この宛先判定用のアドレスは、図2のインターフェース部58に設けられたレジスターに対して処理部60が設定することで、パケットのアドレスフィールドに設定されるようになる。
【0096】
パケット制御情報のフィールドは、パケットの制御に使用されるものであり、ペイロード長、PID(Packet Identify)などのフィールドにより構成できる。
【0097】
ペイロードのフィールドには、機器間で通信されるデータ本体(アプリケーションデータ)や、処理部60等の上位層が使用する各種の制御情報が設定される。CRCのフィールドは、パケットの誤り検出用のフィールドである。
【0098】
図6(A)のパケットにおいて、プリアンブル、アドレス、パケット制御情報、CRCのフィールドは、主に無線通信部10(リンクコントローラー)により使用される。一方、ペイロードのフィールドは、処理部60等の上位層により使用される。
【0099】
そして本実施形態では図6(B)に示すように、通常データ通信用のパケット(アプリケーションデータを転送するためのパケット)に対しては、パケットの宛先判定用アドレスとして、特定の機器を宛先として指定するユニークアドレスが設定される。これにより、ペアリングにより紐付けされた機器間において、データを適正に送受信できるようになる。そして、この通常データ通信用のパケットは、前述のように、デフォルトの強い送信パワーPW1で送信されることになる。
【0100】
一方、図6(C)に示すように、図5のS3で送信される検索用パケットに対しては、宛先判定用アドレスとして、特定の機器を宛先として指定しないグローバルアドレス(ブロードキャストのアドレス)が設定される。これにより、ペアリングにより紐付けられた特定の機器に限定されることなく、送信元の機器の周囲の機器に対して、検索用パケットの検索コマンドを伝達できるようになる。そして、この検索用のパケットは、前述のように、弱い送信パワーPW2で送信される。従って、検索コマンドの伝達先が、送信元機器の直ぐ近くの機器に限定されるようになり、意図しない機器に検索コマンドが伝達されてしまう事態を抑制できる。
【0101】
本実施形態では、図6(C)の検索用パケットの送信後に、図6(D)に示すように、宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行う。この通信設定用パケットのペイロードには、ユニークアドレスや通信周波数が設定されている。従って、図6(D)の通信設定用パケットによりユニークアドレスの設定処理を行うことができる。これにより、図6(B)に示すように、通常データ通信時に、ペアリングで紐付けられた機器同士でユニークアドレスを設定して、データを適正に送受信できるようになる。
【0102】
また図6(D)の通信設定用パケットは、図6(C)の検索用パケットとは異なり、PW2よりも大きな送信パワーPW1(第3の送信パワー)で送信される。このようにすれば、図6(C)の検索用パケットで、ペアリング候補の機器が検索された後に、送信パワーをPW2からPW1というように強くして、図6(D)の通常設定用パケットを送信できるようになる。そして、このように通信設定用パケットの送信時に送信パワーを強めることで、ペアリングでの各種のセッション確立処理を、安定して実現することが可能になる。
【0103】
3.3 詳細な処理例
次に本実施形態の詳細な処理例について説明する。図7、図8は、ペアリング時における本実施形態の詳細な処理例を説明する通信シーケンス図である。
【0104】
電源投入後等に、機器DEVX、DEVYは、まず、グローバルアドレスをレジスター(図2のアドレス保持レジスター84)に設定する(S21、S31)。
【0105】
次に、機器DEVX(例えばクレードル)は、送信パワーを微弱なPW2に設定する(S22)。そして、図6(C)に示すように宛先判定用アドレスに固定値のグローバルアドレスが設定された機器の検索用パケットPKX1を送信する。この検索用パケットPKX1のペイロードには、機器の検索コマンドが設定されている。
【0106】
すると、機器DEVXの直ぐ近くに存在する機器DEVYが、この検索用パケットPKX1を受信して、機器IDを含む応答パケットPKY1を返信する。この場合の応答パケットPKY1も、宛先判定用アドレスに対してグローバルアドレスが設定されている。
【0107】
図3を例に取れば、機器DEVXはクレードル110であり、機器DEVYは計測機器100である。クレードル110が、検索用パケットPKX1を送信すると、クレードル110の直ぐ近くに位置する計測機器100が応答パケットPKY1を返信する。具体的には、計測機器100の機器IDがペイロードに設定された応答パケットPKY1を返信する。
【0108】
この時、送信パワーは微弱なPW2に設定されているため、クレードル110から遠くに位置する計測機器102が、応答パケットPKY1を返信することはない。従って、ペアリング時に意図しない機器が反応したり、混信が生じるのを防止できる。なお、機器DEVYは、送信パワーを微弱なPW2に設定して、応答パケットPKY1を返信してもよい。また、ここでは機器DEVXがクレードル110であり、機器DEVYが計測機器100である場合を例にとっているが、機器DEVXが計測機器100であり、機器DEVYがクレードル110であってもよい。
【0109】
次に、機器DEVXは、送信パワーをPW2からPW1に切り替えて、送信パワーを強くする(S23)。これにより、搬送波が及ぶ範囲を広くなる。そして、ユニークアドレスの仮設定用のパケットPKX2を送信する。
【0110】
このように本実施形態では、ペアリング処理の最初に行われるペアリング対象機器の検索用パケットPKX1の通信時には、送信回路30の送信パワーを微弱なPW2に設定する。そして検索用パケットPKX1の通信後に、大きな送信パワーPW1に設定して、ペアリング処理用のパケット(PKX2、PKX3、PKX4等)を送信し、ペアリング対象機器とのセッション確立処理等を行う。
【0111】
ここで、ユニークアドレスの仮設定用のパケットPKX2は、図6(D)の通信設定用パケットであり、その宛先判定用アドレスに対してはグローバルアドレスが設定されている。また、パケットPKX2のペイロードにはユニークアドレスが設定されている。即ち、機器DEVYから受信したパケットPKY1に含まれる機器IDに基づいてユニークアドレスが算出され、パケットPKX2のペイロードに設定される。このパケットPKX2を受信した機器DEVYは、応答パケットPKY2を返信する。この応答パケットPKY2の宛先判定用アドレスには、グローバルアドレスが設定されている。
【0112】
このように本実施形態では、機器DEVX(処理部)は、検索用パケットPKX1を受信した機器DEVYが応答パケットPKY1を送信した場合に、応答パケットPKY1に設定された機器IDに基づいて、ユニークアドレスの設定処理を行う。
【0113】
次に、機器DEVXは、機器IDに基づき算出されたユニークアドレスを、レジスター(アドレス保持レジスター84)に設定する(S24)。機器DEVYも、パケットPKX2のペイロードに設定されたユニークアドレスを、自身のレジスターに設定する(S32)。これにより、ペアリングによる紐付けが行われ、お互いにユニークアドレスを用いて情報を交換できるようになる。
【0114】
次に、機器DEVXは、ユニークアドレスの確定設定用のパケットPKX3を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY3を返信する。これらのパケットPKX3、PKY3の宛先判定用アドレスには、S24、S32でレジスターに書き込まれユニークアドレスが設定されている。
【0115】
このように本実施形態では、機器DEVX(処理部)は、ユニークアドレスの設定処理として、ユニークアドレスがペイロードに設定された通信設定用のパケットPKX2を、ペアリング対象の機器DEVYに送信すると共に、レジスター(アドレス保持レジスター)に対してユニークアドレスを書き込む処理(S24)を行う。なお、機器DEVXが、使用する通信周波数を通信設定用のパケットのペイロードに設定して、ペアリング対象の機器DEVYに送信することで、通信周波数を変更することも可能になる。
【0116】
次に、機器DEVXは、ペアリング候補設定用のパケットPKX4を送信する。すると、このパケットPKX4を受信した機器DEVYは、その表示部に対して機器IDの末尾4桁を表示する。図3を例にとれば、計測機器100の液晶表示部に対して機器IDの末尾4桁を表示する。そして機器DEVYは応答パケットPKY4を返信する。これらのパケットPKX4、PKY4には、宛先判定用アドレスに対してユニークアドレスが設定されている。
【0117】
次に、図8に示すように、機器DEVXは、グローバルアドレスの仮設定用のパケットPKX5を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY5を返信する。これらのパケットPKX5、PKY5の宛先判定用アドレスにはユニークアドレスが設定されている。そして、機器DEVX、DEVYは、デフォルトのアドレスであるグローバルアドレスをレジスターに設定する(S25、S33)。
【0118】
次に、機器DEVXは、グローバルアドレスの確定設定用のパケットPKX6を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY6を返信する。これらのパケットPKX6、PKY6の宛先判定用アドレスにはグローバルアドレスが設定されている。
【0119】
このように本実施形態では、1つの処理が終了する毎に、ユニークアドレスからグローバルアドレスの設定に戻すようにしている。こうすることで、処理が終了する毎にユニークアドレスによる紐付けを解除して、グローバルアドレスによるパケットの送信及び応答により、次の処理を開始できるようになる。
【0120】
次に、例えばペアリング候補機器となる複数の機器の中から、ユーザーが、自身が意図する機器を選択したとする。例えば図3において、計測機器100、102の両方がクレードル110の直ぐ近くに位置していたとする。即ち、送信パワーが微弱なPW2となる範囲に、計測機器100、102の両方が位置していたとする。すると、これらの計測機器100、102の両方が、ペアリング候補として検索される。このため、ユーザーが、これらの計測機器100、102の中から、自身が意図する計測機器100を選択することになる。
【0121】
このような場合に、機器DEVXは、ユニークアドレスの仮設定用のパケットPKX7を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY7を返信する。これらのパケットPKX7、PKY7の宛先判定用アドレスにはグローバルアドレスが設定されている。そして、機器DEVX、DEVYは、仮設定されたユニークアドレスをレジスターに設定する(S26、S34)。
【0122】
次に、機器DEVXは、ユニークアドレスの確定設定用のパケットPKX8を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY8を返信する。これらのパケットPKX8、PKY8の宛先判定用アドレスにはユニークアドレスが設定されている。
【0123】
次に、機器DEVXは、ペアリング完了表示要求のコマンドがペイロードに設定されたパケットPKX9を送信する。すると、このパケットPKX9を受信した機器DEVYは、その表示部に対してペアリングが完了したことを知らせる表示を行う。
【0124】
例えば図3において、計測機器100、102の機器IDの末尾4桁が、各々、「0050」、「0080」であり、これらの計測機器100、102が、クレードル110の傍に位置し、検索用パケットPKX1が送信されたとする。
【0125】
この場合には、図7のペアリング候補設定用パケットPKX4が、クレードル110から計測機器100、102に送信されることで、これらの計測機器100、102の表示部には、各々、「0050」、「0080」が表示されるようになる。また、PC200の表示部にも、ペアリング候補機器として「0050」、「0080」の計測機器が存在することを示す検索結果画面が表示される。
【0126】
そして、ユーザーは、PC200の表示部に表示された検索結果画面において、自身がペアリングを所望する計測機器100の機器IDである「0050」を選択する。すると、ペアリング対象機器が、計測機器100に確定し、図8のペアリング完了表示要求のパケットPKX9が送信されることで、計測機器100の表示部に、ペアリングが完了したことを示す画面が表示されるようになる。
【0127】
次に、機器DEVXは、グローバルアドレスの仮設定用のパケットPKX10を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY10を返信する。これらのパケットPKX10、PKY10の宛先判定用アドレスにはユニークアドレスが設定されている。そして、機器DEVX、DEVYは、グローバルアドレスをレジスターに設定する(S27、S35)。
【0128】
次に、機器DEVXは、グローバルアドレスの確定設定用のパケットPKX11を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY11を返信する。これらのパケットPKX11、PKY11の宛先判定用アドレスにはグローバルアドレスが設定されている。
【0129】
このように本実施形態では、機器DEVX(処理部)は、ペアリング処理の終了時に、レジスター(アドレス保持レジスター)に対してグローバルアドレスを設定する処理を行う。即ち、ペアリング処理の終了時に、ユニークアドレスからグローバルアドレスの設定に戻すようにしている。こうすることで、ペアリング処理が終了すると、ユニークアドレスによる紐付けが解除され、グローバルアドレスによるパケットの送信及び応答により、次の通常データ通信処理等を開始できるようになる。
【0130】
図9は、通常データ通信時における本実施形態の詳細な処理例を説明する通信シーケンス図である。
【0131】
まず、機器DEVX、DEVYは、グローバルアドレスをレジスターに設定する(S41、S51)。そして、機器DEVXは、ユニークアドレスの仮設定用のパケットPKX1を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY1を返信する。これらのパケットPKX1、PKY1の宛先判定用アドレスにはグローバルアドレスが設定されている。そして、機器DEVX、DEVYは、仮設定されたユニークアドレスをレジスターに設定する(S42、S52)。
【0132】
このように本実施形態では、通常データ通信の開始時には、宛先判定用アドレスとしてグローバルアドレスが設定された通信設定用パケットPKX1、PKY1の通信処理を行っている。
【0133】
次に、機器DEVXは、ユニークアドレスの確定設定用のパケットPKX2を送信し、機器DEVYは、応答パケットPKY2を返信する。これらのパケットPKX2、PKY2の宛先判定用アドレスにはユニークアドレスが設定されている。
【0134】
次に、受信率の測定処理が行われ(S43)、その受信率の測定結果に基づいて、通信周波数の変更処理が行われる(S44)。例えば、機器IDグループの受信率が所定パーセント未満(例えば80パーセント未満)である場合には、後述の図12(A)、図12(B)で説明するように、その機器IDグループが属する他の空きチャンネルの周波数に、通信周波数を変更する。このようにすることで、混信状況の場合にも、所定データサイズの計測データのダウンロードに要する通信時間を、所定時間内に収めることが可能になる。
【0135】
次に、通常データ通信処理を行う(S45)。図3を例にとれば、通常データである運動データ等の計測データの通信処理を行う。そして、通常データ通信処理が終了すると、機器DEVX、DEVYは、グローバルアドレス、デフォルト周波数をレジスターに設定する(S46、S56)。そして機器DEVXは、グローバルアドレス、デフォルト周波数の確定設定用のパケットPKXnを送信し、機器DEVYは、応答パケットPKYnを返信する。これらのパケットPKXn、PKYnの宛先判定用アドレスにはグローバルアドレスが設定されている。
【0136】
さて、本実施形態では、図7に示すように検索用パケットPKX1の送信時に、送信パワーを微弱なPW2に設定して、搬送波の及ぶ範囲を制限することで、意図しない機器がペアリング候補として検索されてしまう事態を防止する手法を採用している。
【0137】
しかしながら、このような手法を採用した場合にも、例えば図3のクレードル110の周辺に、複数の計測機器が存在する場合があり、このような場合には、検索用パケットやその応答パケットの通信処理において混信が生じるおそれがある。特に、検索用パケットは微弱な送信パワーPW2で送信されるため、雑音耐性が低く、混信が生じやすい。
【0138】
そこで本実施形態では、図10に示すように、検索用パケットに対する応答パケットの応答時間(送信ウェイト時間)を、機器IDに基づいて異ならせる手法を採用している。
【0139】
例えば図10において、機器DEVXが検索用パケットPKX1を送信し、機器DEVXの傍に位置する機器DEVYが検索用パケットPKX1を受信したとする。すると、機器DEVYは、自身の機器IDに基づいて応答時間を算出する(S61)。即ち、機器IDの値に応じて異なる時間になるように、応答時間を算出する。そして機器DEVYは、算出された応答時間が経過したか否かを判断し(S62)、経過したと判断した場合に、検索用パケットPKX1に対する応答パケットPKY1を送信する。この応答パケットPKY1のペイロードには、前述したようにユニークアドレスを設定するための機器IDが設定されている。即ち、機器DEVXは、機器IDに応じて応答時間が異なる応答パケットPKY1を、ペアリング対象となる機器DEVYから受信して、ユニークアドレスの設定処理を行う。
【0140】
このようにすれば、機器の傍に複数の他の機器が存在する場合にも、これらの他の機器からは、その機器IDに応じて異なる応答時間で、検索用パケットに対する応答パケットが返信されて来るようになる。従って、応答パケット等の通信処理における混信を低減できるようになる。
【0141】
3.4 ACKの自動返信
次に、無線通信部10が行うACKの自動返信処理の詳細について説明する。
【0142】
図11(A)に示すように、無線通信部10は、相手機器の無線通信部11からのパケットを受信すると、パケットのCRC等をチェックして、パケットの受信に成功したか否かを判断する。そして、受信に成功したと判断すると、相手機器の無線通信部11に対して自動的にACK(アクノリッジパケット)を返信して、パケットの受信に成功したことを処理部60に通知する。例えば図2のインターフェース部58に設けられたレジスター等を用いて、パケットの受信の成功を処理部60に通知する。このようにすれば、ACKの返信に処理部60は関与しなくて済むようになるため、処理部60の処理負荷の軽減等を図れる。
【0143】
一方、図11(B)に示すように、無線通信部10は、相手機器の無線通信部11からのパケットの受信に失敗したと判断した場合に、パケットの受信に失敗したことを、直ぐには処理部60には通知しない。そして、無線通信部10が、パケットの受信失敗時にACKを返信しないことで、タイムアウトになると、相手機器の無線通信部11は、同じパケットPKTをリトライで再送して来る。すると、無線通信部10は、再送されて来たパケットPKTの受信に成功したか否かを判断する。
【0144】
そして、無線通信部10は、パケットの受信に所与の回数だけ失敗した場合に、パケットの受信に失敗したことを処理部60に通知する。この所与の回数は、例えば処理部60が、図2のインターフェース部58に設けられたレジスタに対して予め書き込んでおくことで、設定される。
【0145】
このように無線通信部10は、パケットの受信に失敗した場合にも、直ぐには受信の失敗を処理部60に通知せずに、所与の回数だけ失敗した場合に初めて、受信の失敗を処理部60に通知する。このようにすれば、処理部60は、受信の失敗が通知されるまでの間、他の処理を行うことが可能になり、処理部60の処理負荷の軽減等を図れるようになる。
【0146】
そして本実施形態では、前述の図7のS22に示すように、ペアリング処理の開始時に送信パワーを微弱なPW2に設定して、検索用パケットPKX1を送信する。この場合に、送信パワーが微弱になることで、雑音耐性が低くなる。このため、機器の傍に複数の他の機器が存在する場合には、混信が生じ易い状況になる。従って、図11(B)に示すように、パケットの通信に失敗して、パケットの再送処理が繰り返し行われる事態が生じやすい。
【0147】
しかしながら、本実施形態では、検索用パケットPKX1はシングルパケットであるため、図11(B)のようなパケットの再送処理が繰り返されても、それほどの通信の時間的なロスは生じないようになる。
【0148】
そして、このようにして送信パワーを微弱なPW2にして検索用パケットPKX1の送信が行われた後は、図7のS23に示すように送信パワーがPW2からPW1に切り替わり、ペアリング処理用のパケットの送信処理が行われる。このように、高い送信パワーPW1に切り替えることで、雑音耐性が高くなり、図11(B)に示すような再送処理が行われる確率も低くなる。そして、大多数のペアリング処理用のパケットは、このような大きな送信パワーPW1で送信されるため、シングルパケットの検索用パケットPKX1の通信において、再送処理による通信の時間的なロスが生じたとしても、ペアリング処理の全体としての再送処理による通信の時間的なロスについては、最小限に抑えることが可能になる。
【0149】
更に、本実施形態では、パケットに宛先判定用アドレスのフィールドを設け、この宛先判定用アドレスに対して、機器IDに基づき生成されたユニークアドレスを設定している。従って、物理的には混信状況になっていても、宛先判定用アドレスにユニークアドレスを設定することで、この混信状況をソフトウェアー的に排除できるようになる。従って、再送処理による通信の時間的なロスを更に低減することが可能になる。
【0150】
3.5 機器IDに基づく通信周波数の設定
本実施形態では、2.4GHz付近の周波数帯域の通信周波数を用いて無線通信を行っている。しかしながら、近くの場所に位置する複数の機器が、同じ通信周波数で無線通信を行うと、混信が生じ易くなってしまう。
【0151】
そこで本実施形態では、各機器の機器IDに基づいて、各機器が使用する通信周波数を設定する手法を採用している。具体的には、各機器の機器IDに基づいて、使用する通信周波数を設定し、機器IDに基づきグループ分けされる第1〜第Nの機器グループの各機器グループに対して、第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数を割り当てる。そして、第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数で、検索用パケット等のパケットの通信処理を行うようにしている。
【0152】
例えば図12(A)は、機器IDに基づいて、第1〜第8の機器グループ(広義には第1〜第Nの機器グループ)へのグループ分けが行われている。第1〜第8の機器グループは、図12(A)のチャンネル番号1〜8に対応する。
【0153】
そして、これらの第1〜第8の機器グループに対して、第1〜第8の通信周波数(広義には第1〜第Nの通信周波数)が割り当てられる。図12(A)を例に取れば、第1の機器グループ(チャンネル番号=1)に対しては、第1の周波数=2402MHzが割り当てられ、第2の機器グループ(チャンネル番号=2)に対しては、第2の周波数=2404MHzが割り当てられる。第3〜第8の機器グループも同様である。
【0154】
この場合に、各機器が、第1〜第8のいずれの機器グループに属するかは、機器IDに基づいて決定する。具体的には、機器IDを8で除算した時の余りに基づいて、第1〜第8のいずれの機器グループに属するかを決定している。例えば、図12(A)において、「A mod B」と表記されるmod関数は、AをBで除算した時の余りを示す関数である。従って、機器IDを8で除算した時の余りが「0」になる機器は、第1の機器グループに属し、その通信周波数は2402MHzに設定される。また、機器IDを8で除算した時の余りが「1」になる機器は、第2の機器グループに属し、その通信周波数は2404MHzに設定される。他の第3〜第8の機器グループについても同様である。
【0155】
このように、機器IDに基づいて機器をグループ分けして、通信周波数を設定すれば、近くの場所に複数の機器が存在する場合にも、通信周波数がグループ分けされることで、混信の発生を効果的に抑制できるようになる。
【0156】
更に本実施形態では、図9のS43、S44等で説明したように、受信率の測定結果に基づいて、各機器グループに割り当てられる通信周波数を変更することで、混信の発生の更なる低減を実現している。
【0157】
例えば図12(B)において、デフォルト時には、第1〜第8の機器グループに対して、2402、2404・・・・2416MHzの通信周波数が割り当てられている。そして、この時の受信率が測定され、受信率が所定パーセント未満(例えば80パーセント未満)である場合には、通信周波数を変更するスキャン処理が行われる。例えば第1の機器グループの通信周波数は、2402MHzから、2422や2442や2462MHzに変更される。第2の機器グループの通信周波数は、2404MHzから、2424や2444や2464MHzに変更される。他の第3〜第8の機器グループについても同様である。
【0158】
このような通信周波数の変更処理を行うことで、通信の混信状況に応じた最適な通信周波数で各機器が無線通信を行うことが可能になり、無線の通信品質の向上等を図れるようになる。
【0159】
4.電子機器
図13(A)、図13(B)に、本実施形態の無線通信装置500、510を含む電子機器の基本的な構成例を示す。なお本実施形態の電子機器は図13(A)、図13(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0160】
図13(A)の電子機器は、無線通信装置500、電源部502、検出装置504、センサー506を含む。この構成の電子機器により、例えば図3の計測機器100などの機器を実現できる。
【0161】
無線通信装置500は、アンテナANTからの信号の受信処理や、アンテナANTへの信号の送信処理を行う。検出装置504は、センサー部506(物理量トランスデューサ)からのセンサー信号に基づいて種々の検出処理(物理量の検出処理)を行う。例えばセンサー信号から所望信号を検出する処理を行って、A/D変換後のデジタルデータを出力する。センサー部506は、例えば脈拍センサー、煙センサー、光センサー、人感センサー、圧力センサー、生体センサー、或いはジャイロセンサーなどにより実現される。電源部502は、無線通信装置500、検出装置504等に電源を供給するものであり、例えば乾電池(コイン電池等)やバッテリーなどを用いて電源を供給する。
【0162】
図13(B)の電子機器は、無線通信装置510、電源部512、インターフェース部514を含む。この構成の電子機器により、例えば図3のクレードル110などの機器を実現できる。
【0163】
無線通信装置510は、アンテナANTからの信号の受信処理や、アンテナANTへの信号の送信処理を行う。電源部512は、無線通信装置510等に電源を供給するものであり、例えばAC電源やインターフェース部514を介してホスト516から給電される電源(例えばUSBのVBUS給電)などを用いて、無線通信装置510等に電源を供給する。インターフェース部514は、電子機器と外部のホスト516との間のインターフェース処理を行うものであり、例えばUSB等により実現される。
【0164】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また無線通信装置、電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0165】
ANT アンテナ、PA パワーアンプ、LN 低ノイズアンプ、
10 無線通信部、20 物理層回路、22 シンセサイザー部、
30 送信回路、32 送信信号生成部、34 フィルター部、36 変調部、
40 受信回路、42 ミキサー部、44 フィルター部、46 復調部、
50 リンク層回路、52 リンクコントローラー、54 送信バッファー、
56 受信バッファー、58 インターフェース部、
60 処理部、80 記憶部、82 レジスター部、84 アドレス保持レジスター、
100、102 計測機器、110 クレードル、200 PC、
300 ネットワーク、400 サーバーシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信パワーが可変に設定される送信回路と、受信回路とを有する無線通信部と、
前記無線通信部の制御処理を行う処理部と、
を含み、
前記処理部は、
通常データ通信時には、前記送信回路の送信パワーを、第1の送信パワーに設定して、データの通信処理を行い、
ペアリング処理時には、前記送信回路の送信パワーを、前記第1の送信パワーよりも小さい第2の送信パワーに設定して、前記ペアリング処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記処理部は、
前記ペアリング処理の最初に行われるペアリング対象機器の検索用パケットの通信時に、前記送信回路の送信パワーを前記第2の送信パワーに設定し、
前記検索用パケットの通信後に、前記送信回路の送信パワーを、前記第2の送信パワーよりも大きい第3の送信パワーに設定して、ペアリング処理用のパケットの通信処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記処理部は、
前記通常データ通信用のパケットに対しては、パケットの宛先判定用アドレスとして、ペアリングされた特定の機器を宛先として指定するユニークアドレスを設定し、
前記検索用パケットに対しては、前記宛先判定用アドレスとして、特定の機器を宛先として指定しないグローバルアドレスを設定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記処理部は、
前記検索用パケットの通信後に、前記送信回路の送信パワーを前記第3の送信パワーに設定して、前記宛先判定用アドレスとして前記グローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行い、前記通信設定用パケットにより前記ユニークアドレスの設定処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記処理部は、
前記検索用パケットを受信したペアリング対象機器が応答パケットを送信した場合に、前記応答パケットに設定された機器IDに基づいて、前記ユニークアドレスの設定処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記処理部は、
前記機器IDに応じて応答時間が異なる前記応答パケットをペアリング対象機器から受信して、前記ユニークアドレスの設定処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかにおいて、
前記宛先判定用アドレスを保持するアドレス保持レジスターを有し、
前記処理部は、
前記ユニークアドレスの設定処理として、前記ユニークアドレスがペイロードに設定された前記通信設定用パケットを、ペアリング対象機器に送信する処理を行うと共に、前記アドレス保持レジスターに対して前記ユニークアドレスを書き込む処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記処理部は、
使用する通信周波数を前記通信設定用パケットのペイロードに設定して、ペアリング対象機器に送信する処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記処理部は、
前記ペアリング処理の終了時に、前記アドレス保持レジスターに対して前記グローバルアドレスを書き込む処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれかにおいて、
前記処理部は、
前記通常データ通信の開始時には、前記宛先判定用アドレスとして前記グローバルアドレスが設定された通信設定用パケットの通信処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項11】
請求項2乃至10のいずれかにおいて、
前記処理部は、
前記送信回路の送信パワーを前記第2の送信パワーに設定して、シングルパケットの前記検索用パケットの通信処理を行い、前記シングルパケットの前記検索用パケットの通信後に、前記送信回路の送信パワーを前記第2の送信パワーから前記第3の送信パワーに切り替えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記無線通信部は、
パケットの受信に成功した場合には、自動的にアクノリッジパケットを返信して、パケットの受信に成功したことを前記処理部に通知し、パケットの受信に所与の回数だけ失敗した場合に、パケットの受信に失敗したことを前記処理部に通知することを特徴とする無線通信装置。
【請求項13】
請求項2乃至12のいずれかにおいて、
各機器の機器IDに基づいて、使用する通信周波数が設定され、前記機器IDに基づきグループ分けされる第1〜第Nの機器グループの各機器グループに対して、第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数が割り当てられる場合に、
前記処理部は、
前記第1〜第Nの通信周波数の各通信周波数で、前記検索用パケットの通信処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の無線通信装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−90053(P2013−90053A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227060(P2011−227060)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】