説明

無線ICカード及び無線ICカードの製造方法。

【課題】簡単な構成で、電波を用いて無線通信する機能と、光線を用いて無線通信する機能とを得ることができるようにする。
【解決手段】一面側にLSI7、及びこのLSI7に接続されるアンテナ2を備える基板8と、この基板8の一面側に圧接された第1のカード基材11a、及び他面側に圧接された第2のカード基材11bと、第1のカード基材11aから第2のカード基材11bに向かって形成され、内底部に穿孔14a、14bを有する収納凹部16と、この収納凹部16内に収納され、穿孔14a、14bに対向する光素子部4,5を有する送受信素子3とを具備し、アンテナ2を外部機器からの駆動電力を受けるコイルとして機能させ、駆動電力を用いて送受信素子3を動作させて外部機器との間で光通信を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線を用いた光無線通信と電波を用いた無線通信とを可能とする無線ICカード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ICカードとしては、ISO/IEC14443シリーズ規格に準拠するものが知られている。即ち、基板上にアンテナを形成するとともに、LSIを実装してアンテナに接続することにより、赤外線より波長の長い電磁波いわゆる電波を用いて無線通信するものが知られている。
【0003】
また、赤外線から可視光線までの間の波長の電磁波(光線)を用いて光無線通信するものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特願平9−39199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来における無線ICカードは、電波を用いて無線通信する機能、或いは光線を用いて無線通信する機能のみ、即ち、単一の機能しか有しないものであった。
【0005】
また、電波を用いる無線ICカードと、光線を用いる無線ICカードの製造ラインも、それぞれ個別に専用ラインを必要としていたため、コスト高になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、簡単な構成で、電波を用いて無線通信する機能と、光線を用いて無線通信する機能とを有し、また、個別に専用の製造ラインを必要とすることなく製造できるようにした無線ICカード及び無線ICカードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、一面側にLSI、及びこのLSIに接続されるアンテナを備える基板と、この基板の一面側に圧接された第1のカード基材、及び他面側に圧接された第2のカード基材と、前記第1のカード基材から前記第2のカード基材に向かって形成され、内底部に開口部を有する収納凹部と、この収納凹部内に収納されて前記LSIに接続され、前記開口部に対向する光素子部を有する送受信手段とを具備し、前記アンテナを外部機器からの駆動電力を受けるコイルとして機能させ、前記駆動電力を用いて前記送受信手段を動作させて前記外部機器との間で光通信を行なうことを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明は、基板の一面側にアンテナを形成するとともに、LSIを実装して前記アンテナに接続し、基板の一面側に第1のカード基材、他面側に第2のカード基材をそれぞれ圧着し、前記第1のカード基材から前記第2のカード基材に向かって収納凹部を形成し、前記収納凹部の内底部に開口部を形成し、前記収納凹部内に送受信手段を収納して前記LSIに接続し、その光素子部を前記開口部に対向させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電波による無線通信機能と、光線による光無線通信機能を簡単な構成で得ることができ、また、単一の製造ラインによって電波による無線通信機能と、光線による光無線通信機能とを有する無線ICカードの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である無線ICカード1を示す正面図、図2は図1中A−A線に沿って示す断面図、図3は無線ICカード1の背面図である。
【0011】
この無線ICカード1は、LSI7、アンテナ2、および送受信手段としての送受信素子3を備え、LSI7とアンテナ2とによって電波による無線通信を行うことが可能となっている。
【0012】
また、無線ICカード1は、後述するようにアンテナ2をコイルの役割として使用し、コイルの中の磁界を変化させることにより起電力を生じさせ、この起電力によりLSI7を介して送受信素子3を動作できるようになっている。即ち、送受信素子3は光無線通信が可能であり、赤外線から可視光線までの間の波長で通信可能となっている。
【0013】
送受信素子3には受光部4と発光部5が配設され、受光部4は外部機器としての端末機器等から発光される波長を捉え、発光部5は端末機器等へ向けて発光するものである。
【0014】
また、無線ICカード1は図5にも示すようにアンテナ基板8を有し、このアンテナ基板8はポリイミドあるいはPET等の材質によって薄いシート状に形成されている。このアンテナ基板8に上記したLSI7が実装されるとともに、アンテナ2が形成されている。アンテナ2はアンテナ基板8上に銅またはアルミニウムなどによるパターン配線によって少なくとも巻き数が1つ以上のコイル状に形成され、LSI7に接続されている。
【0015】
さらに、アンテナ基板8には、接続端子9a、9bが形成され、この接続端子9a、9bに後述する送受信素子3の接続端子6a、6bが接続されるようになっている。
【0016】
アンテナ基板8の下面及び上面には、図2に示すように第1のカード基材11aと、第2のカード基材11bとがそれぞれ熱圧着されている。カード基材11a、11bは一般的に塩ビ材、PET材などによって構成されている。
【0017】
図7は、送受信素子3を示す正面図で、図8はその側面図である。
【0018】
送受信素子3は、基部21と、この基部21の略中央部に設けられる凸状の光素子部22とを有して構成され、光素子部22に受光部4と発光部5が配設されている。また、基部21には接続端子6a、6bが配設されている。
【0019】
一方、第1のカード基材11aには、図2、及び図4に示すように第1の凹部12が形成され、この第1の凹部12の内底部には第2の凹部13が形成されている。第1の凹部12と第2の凹部13とにより収納凹部16が構成されている。
【0020】
また、第2の凹部13の内底部には開口部としての穿孔14a、14bが穿設されている。アンテナ基板8の接続端子9a、9bは第1の凹部12の内底部に露出されている。
【0021】
送受信素子3の基部21はその表面がカード基材11bの表面に略面一になる状態で第1の凹部12内に収納され、凸状の素子部22は第2の凹部13内に収納されている。素子部22の受光部4と発光部5は第2の凹部13の穿孔14a、14bに対向されている。
【0022】
図4は、収納凹部16内から送受信素子3を取り外した状態を示すもので、第1の凹部12の内底部には、接着剤10a,10bが塗布され、また、接続端子9a、9bには図9にも示すように導電性ペースト15が塗布されている。送受信素子3の基部21は第1の凹部12内に収納されることにより接着剤10a,10bによって接着され、基部21の接続端子6a、6bとアンテナ基板8の接続端子9a、9bとは導電性ペースト15を介して接着される。これにより、送受信素子3の光素子部22は図6に示すようにLSI7を介してアンテナ2に接続されて光通信が可能な状態になる。
【0023】
次に、上記した無線ICカード1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、図10(a)に示すようにアンテナ基板シート8Aを用意し、このアンテナ基板シート8A上にアンテナ2を形成するとともに、LSI7を実装してアンテナ2に接続し、さらに接続端子9a、9bを形成してこれをLSI7に接続する。この形成後、図10(b)に示すようにアンテナ基板シート8Aの上面及び下面にカード基材11a、11bをそれぞれ熱圧着し、これを金型により図10(c)及び図12に示すようにカード形状に抜く。この打ち抜き後、カード基材11aに図11(a)に示すように第1の凹部12を形成する。第1の凹部12は、送受信素子3の基部21の外形形状と略等しく、かつ深さはアンテナ基板8の接続端子9a、9bが露出するまで、エンドミルなどを用いて削り出す。この削り出し後、第1の凹部12の内底部に図11(b)に示すように第2の凹部13を形成する。第2の凹部13の幅寸法は送受信素子3の光素子部22の幅寸法と略等しく、かつ深さ寸法は凸部形状の素子部22の高さと同等になるようにアンテナ基板8及びカード基材11aを削り出すことにより形成される。この形成後、さらに、第2の凹部13の内底部に穿孔14a、14bを穿設する。この穿孔14a、14bは、光素子部22の受光部4と発光部5に対向する位置に穿設される。
【0025】
このように第1の凹部12、第2の凹部13、穿孔14a、14bを形成したあと、アンテナ基板8上の接続端子9a、9bに、図9に示すように、導電性ペースト15を塗布し、さらに第1の凹部12の内底面に、図4に示すように接着剤10a、10bを塗布する。この塗布後、図11(c)に示すように送受信素子3の基部21を第1の凹部12内に収納するとともに、光素子部22を第2の凹部13内に収納して熱圧着する。これにより送受信素子3の基部21が第1の凹部12内に接着固定されるとともに、基部21の接続端子6a、6bが導電性ペースト15を介してアンテナ基板8の接続端子9a、9bに接続されて光無線通信が可能な状態となり製造を終了する。
【0026】
このように製造される無線ICカード1は、カード外部から供給される電波を電力に変換してLSI7を動作させ、残りの電力でレスポンスを返すことにより非接触で電波によるデータ通信を行なうことができる。
【0027】
また、この無線ICカード1は、非接触で赤外線から可視光線までの間の波長で光線によるデータ通信を行なうことができる。即ち、この無線ICカード1は、アンテナ2をコイルの役割として使用し、カードリーダライタなどの外部機器からの電磁誘導によってコイルの中の磁界を変化させることにより起電力を生じさせ、この起電力によりLSI7を介して送受信素子3を動作させる。これにより、送受信素子3は外部機器から発光される波長を受光部4によって捉え、発光部5は外部機器へ向けて発光して光データ通信が行なわれることになる。
【0028】
上記したように、この実施の形態によれば、アンテナ2及びLSI7を電波によるデータ通信と光線による光データ通信とに兼用して使用することができ、電波データ通信機能と光データ通信機能を簡単構成で得ることができる。
【0029】
また、アンテナ2、LSI7、及び接続端子9a、9bをアンテナ基板シート8A上に形成し、アンテナ基板シート8Aの上下面にカード基材11a、11bを圧着してカード化したのち、カード基材11bに第1及び第2の凹部12,13を形成し、この第1及び第2の凹部12,13内に送受信素子3の基部21及び素子部22を収納して送受信素子3を取り付けるため、電波データ通信機能を有するカードの製造ラインに送受信素子3の取り付けラインを付加するだけで、光データ通信機能を有するカードの製造が可能なり、製造ラインを簡略化できる利点がある。
【0030】
また、送受信素子3の基部21はその表面がカード基材11bの表面に略面一になる状態で第1の凹部12内に収納されるため、カード基材の表面上において、突起物がない状態となり、カードを携帯している時や端末機器等によるカード搬送時において、破損が少なくなる利点がある。
【0031】
(第2の実施の形態)
図13〜図16は、本発明の第2の実施の形態である無線ICカードを示すものである。
【0032】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
上記した第1の実施の形態では、無線ICカードの第1の凹部12の内底部に第2の凹部13を形成し、この第2の凹部13の内底部に穿孔14a、14bを穿設したが、この第2の実施の形態では、無線ICカードの第1の凹部12の内底部に一個大きな開口部としての貫通部31を穿設している。
【0034】
そして、アンテナ基板8上の接続端子9a、9bに、図16に示すように、導電性のある接着剤として導電性ペースト15を塗布し、さらに接続端子9a、9b面以外の第1の凹部12の内底面に、図15に示すように接着剤10a、10bを塗布する。この塗布後、送受信素子3の基部21を第1の凹部12内に収納するとともに、凸部状の光素子部22を貫通部31内に挿入して熱圧着する。これにより送受信素子3の接続端子6a、6bが導電性ペースト15によりアンテナ基板8の接続端子9a、9bに接続されて光無線通信が可能な状態になる。
【0035】
この第2の実施の形態においても、上記した第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0036】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態である無線ICカードを示す正面図。
【図2】図1中A−A線に沿って示す断面図。
【図3】図1の無線ICカードを示す背面図。
【図4】図3の無線ICカードから送受信素子を取り外した状態を示す図。
【図5】図1の無線ICカードのアンテナ基板を示す図。
【図6】図1の無線ICカードの構成を示すブロック図。
【図7】図1の無線ICカードに設けられる送受信素子を示す正面図。
【図8】図7の送受信素子を示す側面図。
【図9】図2中のP部を拡大して示す図。
【図10】図1の無線ICカードの製造工程を示す図。
【図11】図1の無線ICカードの製造工程を示す図。
【図12】図10の製造工程で打ち抜かれたカードを示す図。
【図13】本発明の第2の実施の形態である無線ICカードを示す正面図。
【図14】図13中B−B線に沿って示す断面図。
【図15】図13の無線ICカードから送受信素子を外した状態を示す図。
【図16】図14中のQ部を拡大して示す図。
【符号の説明】
【0038】
2…アンテナ、3…送受信素子(送受信手段)、4…受光部、5…発光部、7…LSI、8…アンテナ基板(基板)、11a…第1のカード基材、11b…第2のカード基材、12…第1の凹部、13…第2の凹部、14a、14b…穿孔(開口部)、16…収納凹部、21…基部、22…光素子部、31…貫通部(開口部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側にLSI、及びこのLSIに接続されるアンテナを備える基板と、
この基板の一面側に圧接された第1のカード基材、及び他面側に圧接された第2のカード基材と、
前記第1のカード基材から前記第2のカード基材に向かって形成され、内底部に開口部を有する収納凹部と、
この収納凹部内に収納されて前記LSIに接続され、前記開口部に対向する光素子部を有する送受信手段とを具備し、
前記アンテナを外部機器からの駆動電力を受けるコイルとして機能させ、前記駆動電力を用いて前記送受信手段を動作させて前記外部機器との間で光通信を行なうことを特徴とする無線ICカード。
【請求項2】
前記光素子部は前記外部機器との間で光を送受信する発光部と受光部を有することを特徴とする請求項1記載の無線ICカード。
【請求項3】
前記収納凹部は第1の凹部とこの第1の凹部の内底部に設けられた第2の凹部とを有し、
前記開口部は前記第2の凹部の内底部に設けられ、
前記送受信手段は、前記光素子部を突設する基部を有し、前記基部を前記第1の凹部、前記光素子部を前記第2の凹部内に収納することを特徴とする請求項1記載の無線ICカード。
【請求項4】
前記送受信手段の基部は前記第1のカード基材の表面に対し略面一状態になるように前記第1の凹部内に収納されることを特徴とする請求項3記載の無線ICカード。
【請求項5】
基板の一面側にアンテナを形成するとともに、LSIを実装して前記アンテナに接続し、
基板の一面側に第1のカード基材、他面側に第2のカード基材をそれぞれ圧着し、
前記第1のカード基材から前記第2のカード基材に向かって収納凹部を形成し、
前記収納凹部の内底部に開口部を形成し、
前記収納凹部内に送受信手段を収納して前記LSIに接続させるとともに、その光素子部を前記開口部に対向させることを特徴とする無線ICカードの製造方法。
【請求項6】
前記収納凹部は前記第1のカード基材に第1の凹部を形成し、この第1の凹部の内底部に第2の凹部を形成することにより構成される特徴とする請求項5記載の無線ICカードの製造方法。
【請求項7】
前記開口部は前記第2の凹部の内底部に形成されることを特徴とする請求項6記載の無線ICカードの製造方法。
【請求項8】
前記送受信手段は、前記光素子部を基部上に突設し、前記基部を前記第1の凹部、前記素子部を前記第2の凹部内に収納することを特徴とする請求項6記載の無線ICカードの製造方法。
【請求項9】
前記送受信手段の基部は、前記第1のカード基材の表面に対し略面一状態になるように前記第1の凹部内に収納されることを特徴とする請求項8記載の無線ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−301251(P2008−301251A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145829(P2007−145829)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】