説明

無線ICタグ、該無線ICタグを用いた管理システム

【課題】アンテナを小型化でき通信範囲の広い無線ICタグであって、LF帯からUHF帯に及ぶ幅広い帯域の特性に応じた通信機能を有するとともに大容量メモリを備えた無線ICタグを提供する。
【解決手段】書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップとを連結させて基板上に実装し、UHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、UHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行い、前記データを前記強誘電体メモリに記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグと該RFIDタグと呼ばれる無線ICタグと該ICタグを用いた管理システムに関するものであり、特に、大容量データの蓄積が可能であって、広い通信エリアをもつ無線ICタグと該無線ICタグを用いた製品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICタグ用のメモリ素子として強誘電体を利用したFeRAMを用いた不揮発性記憶装置が開発されている。この不揮発性記憶装置は、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と、無線通信するためのアンテナ部と、これらを制御する制御部とからなる(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に示された不揮発性記憶装置は、従来ICタグに用いられていたEEPROM等と比較し、書換回数、書き込み電圧の低さ、電源が不要であること、使用寿命の長さ、セルサイズが小型である等、様々な面で利点がある。そして現在、一個のICタグは、約8Kbyteの記憶容量を有し、それ自身が記憶装置として機能するとともに、演算装置としてのCPUとして機能するようになっている。
【0004】
RFIDタグとも呼ばれるこの電磁誘導方式によるパッシヴ型の無線ICタグは、コイルアンテナに印加する135kHzのLF帯、13.56MHzのHF帯により、アンテナ周囲に発生する磁界を伝送媒体とし、アンテナに誘起される誘導起電力により外部と通信を行うものである。
【0005】
しかしながら、上述のLF帯やHF帯を用いた通信は、安定した通信が可能ではあるが、通信範囲が広いとはいえず、また、移動通信に適したものとはいえなかった。特に、コンクリートを用いて施工される建築物や、建築現場のように大型の施設において無線ICタグを用いた品質管理を行う場合には、できるだけ広い通信範囲を有する通信を行いたい等のように、管理する対象物やシステムに適した周波数帯での通信を行いという要請がある。また、大容量データの読み取り、書きこみが可能な大容量メモリを有する無線ICタグを使用したいという要請がある。
【0006】
そして、FeRAMを用いた不揮発性記憶装置に特殊な加工を加えずとも、一つの無線ICタグでLF帯とUHF帯のようなという特性の異なる二つ以上の帯域の通信を行いたいという要請がある。
【特許文献1】特開2007−241576号公報
【特許文献2】特開2008−063900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決すべく、アンテナを小型化でき通信範囲の広い無線ICタグであって、LF帯からUHF帯に及ぶ使用したい各周波数帯域の特性に応じた通信機能を有するとともに大容量メモリを備えた無線ICタグを提供することを目的とし、該無線ICタグを用いた製品等の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明は、書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装し、UHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、UHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行い、前記データを前記強誘電体メモリに記憶させることを特徴とする。
【0009】
また、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信アンテナチップとを制御部を介して基板上に実装し、これらを絶縁材料で覆ってなることを特徴とする。
【0010】
また、無線ICタグの周部は、抗アルカリ性の熱可塑性樹脂材で被覆してなることを特徴とする。
【0011】
また、無線ICタグの周部は、ポリアミド樹脂材をガラス繊維、無機質フィラーにより強化した熱可塑性樹脂材で被覆してなることを特徴とする。
【0012】
また、無線ICタグは、セメント製品に混練される骨材と略同一形状かつ略同一重量に形成したことを特徴とする。
【0013】
また、無線ICタグを被覆する被覆体には、凹部を形成し前記凹部にセメントが入りこみセメントとの結合を強固にしたことを特徴とする。
【0014】
無線ICタグは、充電装置から非接触で充電される電池と電気的に接続されてなることを特徴とする。
【0015】
電池は、充電装置からの所定の周波数帯の電波により非接触で充電される電池であることを特徴とする。
【0016】
電池は、基板上に実装されてなることを特徴とする。
【0017】
電池に充電する充電装置は、書き込み・読み取り装置に備えられてなることを特徴とする。
【0018】
無線ICタグは、振動、熱または電波により自己発電する発電機構と電気的に接続されてなることを特徴とする。
【0019】
発電機構は、基板上に実装されてなることを特徴とする。
【0020】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする。
【0021】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装するとともに充電装置から非接触で充電される電池を電気的に接続した無線ICタグに対し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする。
【0022】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップと基板上に実装するとともに、振動、熱または電波により自己発電する発電機構を電気的に接続した無線ICタグに対し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする。
【0023】
無線ICタグをセメント、骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程で混入し、前記無線ICタグに前記セメント製品の測定行程に配置された自動測定装置により該セメント製品の製品特性値を測定するとともに自動測定装置と連結したICタグ書き込み装置が前記自動測定装置により測定した製品特性値及び製造年月日等の製造情報を書き込み、前記セメント製品が現場で打設されて構造物となった後、この構造物中の前記無線ICタグに対して、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に連結して基板上に実装し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させることにより、強誘電体メモリと既存のUHF帯通信用アンテナチップを電気的に接続するだけで、UHF帯を超えるVHF帯、HF帯、MF帯、LF帯等の周波数帯域通信と、UHF帯の通信を行うことのできるハイブリット型の無線ICタグを提供することが可能であり、このハイブリット型の無線ICタグを用いて通信を行うことで、無線ICタグの通信周波数を設定しなおさずとも、安定的な通信が必要とされるときに用いる例えばLF帯等長周波数帯通信と、広い通信範囲が必要とされるときに用いるUHF帯通信の双方を行うことができるとともに、書き込み・読み取り装置により書き込まれたデータは、大容量の強誘電体メモリに記憶させることができる。
【0025】
また、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを制御部を介して基板上に実装し、これらを絶縁材料で覆ってなることにより、強誘電体メモリに搭載された制御部の制御により、例えばLF帯の新信頼性の高い安定した通信と、広い通信エリアを有するUHF帯の通信を切り替えてまたは併用して行うことのできるハイブリット型の無線ICタグを提供することが可能であり、このハイブリット型の無線ICタグを用いて通信を行うことで、書き込み・読み取り装置により書き込まれた容量の大きなデータも、大容量の強誘電体メモリに記憶させることができる。
【0026】
また、無線ICタグの周部は、抗アルカリ性の熱可塑性樹脂材で被覆してなることにより、無線ICタグを生コンクリート等のセメント製品中に投入しても無線ICタグが強アルカリ性のセメント製品中で溶解等により破損することなく、セメント製品やコンクリート構造物等の製品管理に適した無線ICタグを提供することができる。
【0027】
また、無線ICタグの周部は、ポリアミド樹脂材をガラス繊維、無機質フィラーにより強化した熱可塑性樹脂材で被覆してなることにより、上記無線ICタグをセメント製品を打設したときに無線ICタグが圧力により破損することなく、セメント製品やコンクリート構造物等の製品管理に適した無線ICタグを提供することができる。
【0028】
また、セメント製品に混練される骨材と略同一形状かつ略同一重量に形成したことにより、無線ICタグをセメント製品中に投入したときに、セメント製品中で均等に分散させることができる。
【0029】
また無線ICタグを被覆する被覆体には、凹部を形成し前記凹部にセメントが入りこみセメントとの結合を強固にしたことにより、無線ICタグをセメント製品中に投入したときに、セメント製品との親和性を高めることができ、コンクリート構造物に打設したときに、無線ICタグの埋設部分からコンクリート構造物が破損するおそれがない。
【0030】
無線ICタグは、充電装置から非接触で充電される電池と電気的に接続されてなることにより、コンクリート構造物に無線ICタグを埋設、取り付けする場合のように無線ICタグに対して有線により電気供給し難い場所に無線ICタグが位置する場合であっても、外部から無線により充電をすることができる。よって、無線充電式の無線ICタグを提供することができる。
【0031】
電池は、充電装置からの所定の周波数帯の電波により非接触で充電される電池であることにより、無線通信装置やその他発信機器からの電波で充電することができ、例えば電磁誘導を利用した充電等に比べて発熱等のおそれがなく安全に非接触の充電をすることができる。
【0032】
電池は、基板上に実装されてなることにより、モジュール化された充電のできる小型の無線ICタグを提供することができる。
【0033】
電池に充電する充電装置は、データ書き込み・読み取り装置に備えられてなることにより、無線ICタグへのデータ書き込みまたはデータ読み取りを利用して無線ICタグに対して充電することができる。
【0034】
無線ICタグは、振動、熱または電波により自己発電する発電機構と電気的に接続されてなることより、コンクリート構造物や橋梁に無線ICタグを埋設、取り付けする場合のように無線ICタグに対して有線により電気供給し難い場所に無線ICタグが位置する場合であっても、無線ICタグは、振動、熱、電波等の外部エネルギーにより自己発電し、必要に応じて発電した電力を蓄電することができる。よって、自己発電式の無線ICタグを提供することができる。
【0035】
発電機構は、基板上に実装されてなることにより、モジュール化された発電のできる小型の無線ICタグを提供することができる。
【0036】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることにより、たとえば工場の出荷管理、キャビネットに収納された書籍や書類の管理、人や車両の通行管理等、書き込み・読み取り装置からの通信距離が変化する管理システムにおいても、迅速かつ確実に大容量データの書き込みと読み込みを行うことができ、迅速な管理と長期的な管理に適した管理システムを提供することができる。
【0037】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装するとともに充電装置から非接触で充電される電池を電気的に接続した無線ICタグに対し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることにより上記効果に加え、外部から無線による充電をすることができるので、コンクリート構造物に無線ICタグを埋設する場合のように無線ICタグまたは無線ICタグと接続されてなる装置に対して有線による電気供給がし難い場所に無線ICタグが位置する場合であっても必要な電力を提供することができる当該システムを利用することができる。
【0038】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップと基板上に実装するとともに、振動、熱または電波により自己発電する発電機構を電気的に接続した無線ICタグに対し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とすることにより、上記効果に加え、自己発電により充電をすることができるので、コンクリート構造物に無線ICタグを埋設する場合のように無線ICタグまたは無線ICタグと接続されてなる装置に対して外部から電気供給がし難い場所に無線ICタグが位置する場合であっても必要な電力を発電できる当該システムを利用することができる。
【0039】
無線ICタグをセメント、骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程で混入し、前記無線ICタグに前記セメント製品の測定行程に配置された自動測定装置により該セメント製品の製品特性値を測定するとともに自動測定装置と連結したICタグ書き込み装置が前記自動測定装置により測定した製品特性値及び製造年月日等の製造情報を書き込み、前記セメント製品が現場で打設されて構造物となった後、この構造物中の前記無線ICタグに対して、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることにより、セメント製品の出所、混練の割合や、打設後の構造物に関するデータに関し、迅速かつ確実に大容量データの書き込みと読み込みを行うことができ、迅速な管理と長期的な管理に適したコンクリート品質管理システムを提供することができ、ひいてはコンクリート構造物の安全等に資する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、本発明のハイブリット型の無線ICタグの斜視図、図2は、本発明の無線ICタグの断面図、図3乃至図5は、本発明の無線ICタグに対し被覆体を被覆した状態の無線ICタグの平面図、長手方向断面図、短手方向断面図、図6および図7は本発明の無線ICタグを用いた管理システムの例を示す模式図、図8は、本発明のハイブリット型の無線ICタグの第二の実施の形態の斜視図、図9は、図8に示す無線ICタグの充電の例を示す模式図、図10は、本発明のハイブリット型の無線ICタグの第三の実施の形態の斜視図である。
【0041】
本発明の実施の形態の構成図を示す本発明の無線ICタグ1は、RFIDタグとも呼ばれるデータの書き込みおよび読み取りができる記憶装置であって、ICタグ用のメモリ素子として強誘電体を利用した強誘電体メモリと呼ばれるFeRAMと、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップ4が電気的に接続されて一つの基板2上に実装されたハイブリッド型の無線ICタグである。
【0042】
無線ICタグ1は、ICタグ用のメモリ素子として強誘電体を利用したFeRAMを搭載したFeRAMチップ3と、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップ4が実装されていて、FeRAMチップ3とUHF帯通信アンテナチップ4は配線21により回路構築され、相互にデータ交換可能になっている。
【0043】
FeRAMチップ3を構成するFeRAMのタイプは、どのようなものであってもよく、キャパシター型、トランジスタ型いずれのタイプであってもよい。尚、製品等の管理システムに用いやすいのは、電源を搭載せず外部からのデータアクセス用の電波を整流して電源とするパッシヴ型のFeRAMである。このFeRAMチップ3には、強誘電体を利用した不揮発性メモリであるFeRAMと、駆動用に電池を内蔵する代わりに外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と、無線交信するためのフィルム状のアンテナ部と、FeRAMチップ3およびUHF帯通信アンテナチップ4を制御する制御部が搭載されている。
【0044】
このFeRAMは、従来の無線ICタグに用いられていたEEPROMと比較すると、その書き換え回数が、EEPROMが10の5乗回程度であるのに対し、FeRAMは10の13乗回以上と優れた性能を備えている。また、書き込み電圧は従来のEEPROMが12Vであるのに対して、FeRAMはDC1.1V〜3Vと極めて低い電圧で書き込みを行うことができ、無線ICタグ内部に電池を内蔵することなく、外部からの電波に共振して発電する電源部を備えたパッシブタイプでも十分足りるとともに、従来のICタグに用いられていたEEPROMと比較して5000倍もの書き込み速度を有している。データの保存期間が10年以上と長い。さらに、書き換えのアクセスにあっても、従来のEEPROMやフラッシュメモリーではほとんどがブロック単位の書き込みであったのに対し、FeRAMはワード単位でランダムに書き込みを行えるという利点がある。
【0045】
制御部は、一旦書き込まれた情報が改ざんされることがないように、追記はできるものの、上書きをできない設定とすることも可能で、データの書き込み・読み取りは暗号化したプロトコルを用いて行うことがよい。よって、約8KBのメモリ容量中に、各種データを、その都度、書き込み・読み取り装置としてのリーダーライター6と間の無線通信により、書き込み・読み取りができる。
【0046】
FeRAMチップ3が無線交信可能な電波の帯域は、自由に設定することができ小型無線通信に適したLF帯からUHF帯まで用いることができるが、アンテナ部は地表波による安定した通信が可能で、指向性が弱く、水や埃、金属の影響を比較的受けにくく、信頼性の高いデータ通信のできるLF帯の通信に設定することが適している。尚、VHF帯、HF帯、MF帯の周波数帯通信用に設定してもよい。
【0047】
一方で、移動体の管理や、広いエリアでの管理を行う場合のために、リーダーライター6を用いたデータの読み取り、書き込みの通信距離が数メートルと広い通信エリアを有するUHF帯の通信に設定されたUHF帯通信アンテナチップ4を搭載する。このUHF帯通信アンテナチップ4は、UHF帯通信アンテナのみの機能を備えているものであれば足りるが、既存のメモリ容量の少ないUHFメモリチップを搭載し、このUHFメモリチップをUHF帯通信アンテナとして用いることで、ハイブリット型の無線ICタグ1を安価に提供することができる。
【0048】
FeRAMチップ3とUHF帯通信アンテナチップ4の制御は、FeRAMチップ3に搭載された制御部が行う。読み取り・書き込み装置としてのリーダーライター6の通信周波数帯に応じて、FeRAMチップ3のアンテナ部または、UHF帯通信アンテナチップ4で通信を行うとともに、伝達されたデータを制御部が制御し、FeRAMチップ3の大容量メモリに記録する。
【0049】
例えば、リーダーライター6からLF帯の周波数の電波が出力されたときには、FeRAMチップ3のアンテナ部がこの電波を受信し、制御部は、送られたデータをFeRAMチップ3のメモリ部に記憶するように制御する。一方、リーダーライター6からUHF帯の周波数の電波が出力されたときには、UHF帯通信アンテナチップ4がこの電波を受信し、UHF帯通信アンテナチップ4が電波を受信すると、送られたデータをFeRAMチップ3のメモリ部に記憶するように制御し、データは、UHF帯通信アンテナチップ4を介してFeRAMチップ3のメモリ部に記憶される。尚、制御部をFeRAMチップ3と別個に設け、FeRAMチップ3とUHF帯通信アンテナチップ4をこの制御部を介して回路構築するようにしてもよい。
【0050】
尚、無線ICタグ1のFeRAMチップ3には、リーダーライター6で読み取り可能な管理フラグを、あらかじめ、または、書き込み時に記憶させ、リーダーライター6で情報の書き込み・読み取りを行う際にこの管理フラグを読み取ることにより、所定の管理システムを構成する無線ICタグ1であることが識別可能になっている。尚、必要に応じて、無線ICタグ1には、アンチコリジョン機能を搭載し、複数の無線ICタグ1が近傍に位置していても混信して通信できないという事態がないようにできる。
【0051】
図2に示すごとく、無線ICタグ1は、管理対象物への貼付、埋設、携帯時に破損することがないように、各チップを実装した基板2は絶縁材料からなる絶縁体5で覆われている。絶縁体5を形成する絶縁材料は、プラスチック樹脂等が好適であり、この絶縁体5は基板2の上方を覆ってもよいし、基板2全体をコーティングするように樹脂成形してもよい。
【0052】
次に本発明の第二の実施の形態として、充電装置から非接触で充電される電池が電気的に接続された状態の無線ICタグ15について説明する。図8に示す如くこの無線ICタグ15は、第一の実施の形態の無線ICタグ1に、無線通信にて充電が可能な電池を配設したものであり充電機構を備えてなる無線ICタグである。そして、例えば、図9に示す如く充電装置を搭載したまたは充電装置を兼ねたリーダーライター6からの通信により充電される。他の構成については第一の実施の形態の無線ICタグ1と同様である。
【0053】
無線ICタグ15は、ICタグ用のメモリ素子として強誘電体を利用したFeRAMを搭載したFeRAMチップ3と、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップ4と無線通信にて充電が可能な電池16が実装されている。特定の周波数帯域の電波を受信する無線通信機構を備えた二次電池である電池16は基板2上に配設されFeRAMチップ3や必要に応じて各種装置と電気的に接続されている。図9に示すように、リーダーライター6に備えられた充電装置の無線通信機構と無線ICタグ側に設けられた電池との間で近距離無線技術を用いて通信し無線ICタグ側の二次電池に充電される。この蓄積された電力を無線ICタグ15や前記無線ICタグ15に接続された装置を駆動させる電源として用いるようになっている。
【0054】
例えばコンクリート構造物等に埋設された無線ICタグ15と充電装置を備えたリーダーライター6が無線通信をするときに電池16に充電されるようになっている。
【0055】
尚、充電の方式は、上述の近距離無線技術の他、充電装置と電池とにコイルを配設し、充電装置側のコイルに電流を流すとこれと対になる電池側のコイルに電流が流れこれを蓄電する電磁誘導を利用した方式によるものであってもよい。また、充電装置はリーダーライター6に搭載することなく、別途充電装置を用意してもよい。また、電池16は基板2上に配設しなくてもよく、無線ICタグと電気的に接続するようにしてもよい。
【0056】
次に本発明の第三の実施の形態として、発電機構が電気的に接続された状態の無線ICタグ17について説明する。図10に示す如くこの無線ICタグ17は、第一の実施の形態の無線ICタグ1に自己発電する発電機構を配設したものであり、発電機構を備えてなる無線ICタグである。他の構成については第一の実施の形態の無線ICタグ1と同様である。
【0057】
無線ICタグは、ICタグ用のメモリ素子として強誘電体を利用したFeRAMを搭載したFeRAMチップ3と、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップ4と発電機構18が実装されている。発電機構18は基板上に配設されFeRAMチップ3や必要に応じて各種装置と電気的に接続される。この発電機構18は、振動により発電する振動発電素子であり、人間の動作や、装置の駆動による振動、建物や橋梁の車両通過等による振動により比較的微弱な電気を発電する。そしてこの発電機構により発電された電力をそのまま用いてもよいし発電機構に配設された二次電池に蓄電してもよい。この発電機構18は無線ICタグや前記無線ICタグに接続された装置を駆動させる電源として用いるようになっている。
【0058】
例えば、無線ICタグ17を携帯した人間が動作したときや、コンクリート構造物や。橋梁、または製品等に埋設、貼付などの手法で取り付けられた無線ICタグ17が車両等の通過や運搬中の揺れによって振動したときに発電機構18はこの振動をエネルギーとして発電するようになっている。
【0059】
尚、発電機構18は、上述の発電機構は振動発電素子に限られるものではなく熱電素子として、外部からの熱により発電する機構であってもよいし、RF波等外部からの電波により発電する無線通信による発電機構であってもよく、一般にハーベスタ技術と呼ばれる種々の外部エネルギーを用いる機構とすることができる。尚、発電機構18は基板2上に配設しなくてもよく、無線ICタグ17と電気的に接続するようにしてもよい。
【0060】
以下、無線ICタグの第四の実施の形態として、後述するセメント製品およびコンクリート構造物を管理するためのコンクリート品質管理システムに用いるために無線ICタグ1を被覆体9で覆った無線ICタグ8について説明する。この無線ICタグ8は、管理システムでも、特に管理対象物をセメント製品とコンクリート構造物とし、セメント工場での水、骨材、セメントを混練するセメント製品製造工程においてセメント製品に対して投入し、セメント製品の管理、打設後のコンクリート構造物の管理を行うことを目的としたシステムのためのものである。したがって、無線ICタグには、セメントとの親和性、投入後の分散性、投入時および打設後のデータの読み取りと書き込みに適した強度と形状であることが求められる。
【0061】
無線ICタグ8は、無線ICタグ1を被覆体9で被覆している。被覆体9の表面には、凹部91が加工されている。この凹部91は被覆体9表面に設けられた複数の細かな凹部がディンプル加工形成されていて、この凹部にセメント製品が潜り込み、無線ICタグ1とセメント製品との密着性、親和性が得られる。また、凹部91を形成することにより無線ICタグ1の強度を高めることもできる。本実施の形態においては、射出成型時にディンプル加工を施すべく、無線ICタグの両面に各25個所、計50個所のディンプル加工を施しているが、全面に施してもよいし、一部に施してもよい。また、本実施の形態の凹部の深さは、0.2〜0.5mm程度であるがこれに限られるものではない。凹部91はディンプル加工に限られるものではなく、被覆体9の表面に凹穴を形成したり、被覆体9を湾曲させたり、被覆体9を凹レンズ状に形成して凹部を設けてもよい。
【0062】
尚、無線ICタグ1の比重は、骨材の比重に近い1.3〜1.9の範囲であることが望ましく、本実施の形態においては、比重1.5に形成されている。無線ICタグ8のコンクリート中での分散試験によれば1.3以下の比重で形成すると無線ICタグ8はセメント製品中で浮いてしまいセメント製品表面に露出するおそれがある、1.9以上の比重で形成すると無線ICタグ1はセメント製品中に分散することなく沈んだり偏在したりしてしまう。比重1.5付近で形成した無線ICタグ1が最も均等にセメント製品の表面付近で分散することが確認されている。すなわち、骨材、セメント、水等を混練するセメント製品製造工程において、1立方メートルのセメント製品中に比重1.5の無線ICタグ1を複数個投入したところ、セメント製品の表面からは平均9.3センチメートルの位置に無線ICタグが位置し、標準偏差3.826、中央値8.00、最小値4.17、最大値11.83が得られた。したがって、無線通信による書き込み・読み取り距離が10センチメートル程度の無線ICタグ1にあっても、確実に情報の書き込み・読み取りを行うことができる。
【0063】
無線ICタグ8の大きさは、骨材と同程度の大きさとすることが望ましく、本実施の形態においては、長手方向17mm、短手方向12mmの略楕円球体(俵型)に形成し、セメント製品との親和性を高め、セメント製品中で沈下しないようにしている。
【0064】
被覆体9は、熱可塑性樹脂材により形成され、被覆体9の中央に無線ICタグ1が位置するように被覆している。具体的に被覆体9は、PH12.0〜13.0のセメントの強アルカリ性に抗することができ、骨材、水、セメントの混練時にかかる温度約100℃に耐えうる、抗アルカリ性の樹脂材を用いる。本発明の実施の形態においては、ポリアミド系樹脂を用い、特に、ポリアミドMXD6系複合樹脂を被覆体9の材料として用いた場合には、広い温度範囲にわたり優れた機械的強度、弾性率を示し、また、吸水率が低く、骨材、水、セメント等と混練したときに吸水による寸法変化や機械的強度の低下が低いことが確認された。
【0065】
尚、ポリアミドMXD6を非透磁性のガラス繊維、無機質フィラー等で強化したレニー材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)を被覆体9として用い、この被覆体9で無線ICタグ本体を被覆し射出成形した。この場合、無線ICタグ8は、強度は長手方向からの荷重では平均197kgf、短手方向からの荷重では少なくとも平均148kgfに耐えうることが確認されている。さらに、アルカリ骨材反応の促進法によるタグの膨張試験によれば、骨材、水、セメント等を混練するセメント製品の製造工程で無線ICタグ1を投入したところ、平均膨張率は0.49パーセントであり、硬化後のセメント製品への影響がない程の膨張率であった。また、非透磁性のガラスファイバーを含有しているが、フェライト等の磁性を有する物質は含有しないため、無線通信に影響も及ぼさない。尚、被覆体9に用いる熱可塑性樹脂材は、ポリアミド系樹脂の他、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂であってもよい。
【0066】
尚、被覆体9で被覆する無線ICタグは、上述した無線ICタグ1の他、外部から無線で充電できる電池16を備えた無線ICタグ15、発電機構18を備えた無線ICタグ17であってもよい。
【0067】
無線ICタグ1を用いた管理システムについて、以下いくつか例を挙げて説明する。無線ICタグ1を用いた管理システムは、図1に示ように無線ICタグ1を構成するFeRAMチップ3とUHF帯通信アンテナチップ4が基板2上に実装されており、図6に示すように、FeRAMチップ3とUHF帯通信アンテナチップ4は相互にデータ交換可能にシステム構築されている。そして、それぞれが有するアンテナ部がリーダーライター6との間でLF波またはUHF波の周波数帯域で通信可能となっている。
【0068】
リーダーライター6は、LF波、UHF波いずれかの周波数帯域または両周波数帯域を切り替えて無線ICタグ1との間でデータ通信可能な装置であり、管理の対象物に関するデータを無線ICタグ1との間で無線通信により読み取り、書き込みするようになっている。
【0069】
リーダーライター6から書き込みデータが出力されると、リーダーライター6から出力される周波数帯に対応する無線ICタグ1のFeRAMチップ3またはUHF帯通信アンテナチップ4のアンテナ部が該データを受信し、このデータはFeRAMチップ3のメモリに記憶される。また、リーダーライター6から読み取り信号が出力されると、リーダーライター6から出力される周波数帯に対応する無線ICタグ1のFeRAMチップ3またはUHF帯通信アンテナチップ4のアンテナ部が該信号を受信し、当該アンテナ部から、FeRAMチップ3に記憶されたデータをリーダーライター6へと出力するようになっている。そしてリーダーライター6で読み取ったデータは、コンピュータ7に格納するようにしてもよい。
【0070】
このような構成からなる無線ICタグ1を用いた管理システムの一実施例として、コンクリート品質管理システムについて、図7に基づいて説明する。始めに、生コン会社において、無線ICタグ1を被覆体9で被覆した初期状態の無線ICタグ8を多数用意し、これをセメント、砂利等の骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程において、例えばセメント製品1立方メールにつき1個程度の割合で混入するときに、セメント製品の測定工程に配置された自動測定装置がセメント製品の水/セメント比、セメント混和剤、温度等の製品特性値を測定するとともに、自動測定装置と連結したICタグ書き込み装置11が、混入している無線ICタグ1に、自動測定装置により測定した製品特性値および製造年月日等からなる製造情報を自動的に書き込む。さらに、この無線ICタグ1に書き込まれた製造情報は、同時にコンクリート品質管理システムを集中管理する集中管理サーバー12にも記録され、コンクリート会社のコンピュータ10等関係機関においてデータの連携を図っている。
【0071】
また、無線ICタグ8を混入したセメント製品をミキサー車13に載せ、運搬年月日等の運搬情報を運搬担当者等が、PDA(携帯情報端末)に組み込まれ、予め暗号化された信号で無線交信するように設定されているリーダーライターによりミキサー車13でセメント製品に混入している無線ICタグ8に書き込む。
【0072】
さらに、ミキサー車13が現場に到着すると、現場の担当者は同じくPDAに組み込まれたリーダーライター14を用いて、受け入れ日時、試験結果、混入確認等の受入情報を暗号化された信号で無線ICタグ1に書き込み、それと同時に集中管理サーバー12にも記録する。そして、この無線ICタグ1を混入したセメント製品が打設され、コンクリート構造物が形成される。現場の工事を担当するゼネコンにあっても、コンクリート構造物の工区ごと、部位ごとに、そこに位置する無線ICタグ8に対してリーダーライター14を用いて配筋データ等の構造物情報を随時追記で記録することができる。
【0073】
このようにしてコンクリート構造物が完成した後は、予め暗号化された信号で無線交信するように設定されているPDAに組み込んだリーダーライター14を用いて、コンクリート構造物中の無線ICタグ8に記録されている各種情報を読み取ることができる。
【0074】
また、上述した集中管理サーバー12は、多数の現場における無線ICタグ1に書き込まれた情報を統括するもので、必要に応じて現場の施工業者、施工依頼主、利用者、各種業界団体等にそれらの情報を提供するものである。
【0075】
無線ICタグ1を用いた他の管理システムの例につき説明する。無線ICタグ1を用いた出荷管理システムは、製品に無線ICタグ1を貼付して、工場出荷時や製品製造時にリーダーライター6にて製品情報、製造情報、配送先情報等を書き込み、配達業者の配送先管理や、製品のトレーサビリティーのための物流管理システムに用いることができる。工場内のラインでは広い通信範囲を有し移動体通信に適するUHF帯通信アンテナチップ4を介して情報を書き込み、出荷後はLF帯の周波数帯域で用いるハンディタイプのリーダーライターによりFeRAMチップ3のアンテナ部を介して情報を読み取り、書きこみすることができる。
【0076】
また、無線ICタグ1を用いた本、書類管理システムは、書庫やキャビネットにおいて、本や書類に無線ICタグ1を貼付して、出入庫時や販売貸出時にリーダーライター6にて本や書類の分類情報、出入庫情報、借用者のID等を書き込み、図書館の貸し出し管理や、企業の書類管理のための出入庫管理システムに用いることができる。書庫等では広い通信範囲を有するUHF帯通信アンテナチップ4を介して分類情報から本や書類の収納位置を検索し、貸出時や販売時にはLF帯の周波数帯域で用いるハンディタイプのリーダーライターによりFeRAMチップ3のアンテナ部を介して情報を読み取り、書きこみすることができる。
【0077】
また、無線ICタグ1を用いた通行量等管理システムは、無線ICタグ1を人や車両に携帯させて、リーダーライター6を設置した観測点通過時にリーダーライター6が識別情報等を書き込み、読み取りし、交通量、通過履歴調査や現在地情報提供のための管理システムに用いることができる。広いエリアでのデータ通信や高速道路ゲート等での高速のデータ通信を必要とするときにはUHF帯通信アンテナチップ4を介して通信を行い、鉄道の改札口等、確実なデータ通信を必要とするときにFeRAMチップ3のアンテナ部を介して情報を読み取り、書きこみすることができる。
【0078】
尚、管理システムの例は、上記したものに限られることはなく、無線ICタグは対象物に、貼付、埋設し、または携帯させることにより様々な管理システムに用いることができる。
【0079】
尚、管理システムに用いる無線ICタグは、上述した無線ICタグ1の他、外部から無線で充電できる電池16を備えた無線ICタグ15、発電機構18を備えた無線ICタグ17であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第一の実施の形態のハイブリット型の無線ICタグの斜視図。
【図2】本発明の第一の実施の形態の無線ICタグの断面図。
【図3】本発明の第一の実施の形態の無線ICタグに対し被覆体を被覆した状態の第四の実施の形態の無線ICタグの平面図。
【図4】図3に示す無線ICタグの長手方向断面図。
【図5】図4に示す無線ICタグの短手方向断面図。
【図6】本発明の無線ICタグを用いた管理システムの例を示す模式図である。
【図7】本発明の無線ICタグを用いたコンクリート品質管理システムの例を示す模式図である。
【図8】本発明の第二の実施の形態のハイブリット型の無線ICタグの斜視図。
【図9】図8に示す無線ICタグを用いた充電システムの例を示す模式図。
【図10】本発明の第三の実施の形態のハイブリット型の無線ICタグの斜視図。
【符号の説明】
【0081】
1 無線ICタグ
2 基板
21配線
3 FeRAMチップ
4 UHF帯通信アンテナチップ
5 被覆体
6 リーダーライター
7 コンピュータ
8 無線ICタグ
9 被覆体
91凹部
10 コンピュータ
11 ICタグ書き込み装置
12 集中管理サーバー
13 ミキサー車
14 リーダーライター
15 無線ICタグ
16 電池
17 無線ICタグ
18 発電機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯域の電波を受信するUHF帯通信アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装し、UHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、UHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行い、前記データを前記強誘電体メモリに記憶させることを特徴とする無線ICタグ。
【請求項2】
外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信アンテナチップとを制御部を介して基板上に実装し、これらを絶縁材料で覆ってなることを特徴とする請求項1記載の無線ICタグ。
【請求項3】
無線ICタグの周部は、抗アルカリ性の熱可塑性樹脂材で被覆してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線ICタグ。
【請求項4】
無線ICタグの周部は、ポリアミド樹脂材をガラス繊維、無機質フィラーにより強化した熱可塑性樹脂材で被覆してなることを特徴とする請求項3に記載の無線ICタグ。
【請求項5】
無線ICタグは、セメント製品に混練される骨材と略同一形状かつ略同一重量に形成したことを特徴とする請求項3または請求項4記載の無線ICタグ。
【請求項6】
無線ICタグを被覆する被覆体には、凹部を形成し前記凹部にセメントが入りこみセメントとの結合を強固にしたことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の無線ICタグ。
【請求項7】
無線ICタグは、充電装置から非接触で充電される電池と電気的に接続されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の無線ICタグ。
【請求項8】
電池は、充電装置からの所定の周波数帯の電波により非接触で充電される電池であることを特徴とする請求項7に記載の無線ICタグ。
【請求項9】
電池は、基板上に実装されてなることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無線ICタグ。
【請求項10】
電池に充電する充電装置は、書き込み・読み取り装置に備えられてなることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の無線ICタグ。
【請求項11】
無線ICタグは、振動、熱または電波により自己発電する発電機構と電気的に接続されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項請求項10のいずれかに記載の無線ICタグ。
【請求項12】
発電機構は、基板上に実装されてなることを特徴とする請求項10に記載の無線ICタグ。
【請求項13】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする無線ICタグを用いた管理システム。
【請求項14】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップとを電気的に接続して基板上に実装するとともに充電装置から非接触で充電される電池を電気的に接続した無線ICタグに対し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする請求項13記載の無線ICタグを用いた管理システム。
【請求項15】
書き込み・読み取り装置との間で無線通信によりデータの書き込み・読み取りが可能な無線ICタグであって、外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と所定の周波数帯域で無線交信するためのアンテナ部を有する強誘電体を利用した強誘電体メモリと、UHF帯通信用アンテナチップと基板上に実装するとともに、振動、熱または電波により自己発電する発電機構を電気的に接続した無線ICタグに対し、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯を超える長い周波数帯の通信を前記強誘電体メモリのアンテナ部で行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させるとともに、データの書き込み・読み取り装置によるUHF帯の通信を前記UHF帯通信用アンテナチップで行いデータを前記強誘電体メモリに記憶させる前記無線ICタグを管理客体に貼着、接着、埋設、携帯等により搭載し、前記搭載した無線ICタグに対し、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする請求項13または請求項14記載の無線ICタグを用いた管理システム。
【請求項16】
無線ICタグをセメント、骨材、水等を混練するセメント製品の製造工程で混入し、前記無線ICタグに前記セメント製品の測定行程に配置された自動測定装置により該セメント製品の製品特性値を測定するとともに自動測定装置と連結したICタグ書き込み装置が前記自動測定装置により測定した製品特性値及び製造年月日等の製造情報を書き込み、前記セメント製品が現場で打設されて構造物となった後、この構造物中の前記無線ICタグに対して、書き込み・読み取り装置でデータ書き込みまたは読み取りすることを特徴とする請求項記載の無線ICタグを用いた請求項13乃至請求項15のいずれかに記載の無線ICタグを用いた管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−22981(P2011−22981A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187641(P2009−187641)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(501415394)三智商事株式会社 (11)
【Fターム(参考)】