無線ICタグ読み取り装置の制御装置
【課題】通信障害が発生する可能性が低い無線チャネルを優先的に使用し、各周波数帯の有効利用を図る。
【解決手段】複数の単位無線チャネルを使用可能な、無線ICタグの読み取りを行うリーダ/ライタを制御するリーダ/ライタ制御装置は、前記無線ICタグ読み取り装置が測定した各単位無線チャネルにおけるRSSIを受け取り、これに基づいて使用可否フラグを記憶させるキャリアセンス制御部と、各単位無線チャネルの使用可否フラグに基づいて、通信可能比率を算出し、この通信可能比率に基づいてリーダ/ライタに使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを決定するチャネル評価部と、前記優先使用チャネルを前記無線ICタグ読み取り装置に指示する送受信制御部とを有する。
【解決手段】複数の単位無線チャネルを使用可能な、無線ICタグの読み取りを行うリーダ/ライタを制御するリーダ/ライタ制御装置は、前記無線ICタグ読み取り装置が測定した各単位無線チャネルにおけるRSSIを受け取り、これに基づいて使用可否フラグを記憶させるキャリアセンス制御部と、各単位無線チャネルの使用可否フラグに基づいて、通信可能比率を算出し、この通信可能比率に基づいてリーダ/ライタに使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを決定するチャネル評価部と、前記優先使用チャネルを前記無線ICタグ読み取り装置に指示する送受信制御部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグ読み取り装置の制御装置に関し、より詳しくはいわゆる無線ICタグ(電子タグ、RFIDともいう)を読み取るための読み取り機能を有する無線ICタグ読み取り装置(例えば、リーダ/ライタ)を制御する制御装置(例えば、リーダ/ライタ制御装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる無線ICタグの読み取り装置は、使用する無線チャネルが、同一チャネルを使用する他の読み取り装置が近傍に存在すると双方の読み取り装置、或いは本来応答すべきではない読み取り装置と無線ICタグとの間に置いて干渉が起こる可能性があり、読み取り装置からの読み取り電波の放射、又は反射など電波が干渉しあうことにより、正常な無線ICタグの読み取りができなくなるおそれがある。
【0003】
かかる不都合を回避する技術の一つとして、複数の無線チャネルを選択的に用いて、ノイズの少ない周波数を選択して送信する技術が提案されている。さらに、単一の無線チャネルを連続して使用し続けた場合、他の無線装置の動作開始などによる干渉電波の発生により通信に障害が発生したりするおそれがある。この不都合を回避する技術として、複数の無線チャネルを次々に切り替えながら使用することにより、連続的な通信の障害発生を回避しようとする周波数ホッピング技術が提案された(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−303379号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、倉庫のような限られた空間内に複数の無線ICタグ読み取り装置を配置しなければならない場合のように、無線ICタグ読み取り装置が互いに他の無線ICタグ読み取り装置の読み取り電波到達範囲内に存在する場合に、ある特定の無線チャネルが継続して他の無線ICタグ読み取り装置に使用されていたり、フロアノイズや飛び込み電波の影響により使用に適さない無線チャネルが発生することがあり、周波数ホッピングによりランダムに無線チャネルの切り替えが行われる場合に、このような使用に適さない無線チャネルへ周波数ホッピングにより使用無線チャネルが切り替えられると、読み取りが困難になったり、不可能になったりするおそれがあり、効率よく無線ICタグの読み取りを行えない場合があった。
【0005】
また、使用に適さない無線チャネルは何らかの理由で間欠的に使用に適さない状況が生ずることもあり、このような場合にその無線チャネルをまったく使用しないとすれば、無線チャネルの利用効率を低下させてしまうという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、一定の時間軸の中で、他のリーダ/ライタが無線ICタグの読み取りに使用する無線チャネルの使用状況や、フロアノイズや電波の反射、飛び込み電波の影響などから、通信障害が発生する頻度を計測し、一定の時間軸の中で通信障害の発生が低い無線チャネルを優先的に使用し、各無線チャネルの効率の良い利用方法の無線ICタグ読み取り技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の単位無線チャネルを使用可能な、無線ICタグの読み取りを行う無線ICタグ読み取り装置(例えば、リーダ/ライタ)を制御する制御装置(例えば、リーダ/ライタ制御装置)として提案される。この制御装置は、前記無線ICタグ読み取り装置が測定した各単位無線チャネルにおける受信電波強度を示す情報(例えばRSSI)を受け取り、これに基づいて各単位無線チャネルの使用可否を示す情報(例えば、使用可否フラグ)を記憶させるキャリアセンス制御手段(例えば、キャリアセンス制御部)と、前記各単位無線チャネルの使用可否を示す情報に基づいて、タイムスロットにおける通信可否状態を示す情報を算出し、この通信可否状態を示す情報に基づいて前記無線ICタグ読み取り装置に使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを決定する評価手段(例えば、チャネル評価部)と、前記優先使用チャネルを前記無線ICタグ読み取り装置に指示する送受信制御手段(例えば、送受信制御部)とを有することを特徴としている。
上記制御装置によれば、通信障害が発生する可能性が低い無線チャネルを優先的に使用し、各無線チャネルの効率の良い利用方法の無線ICタグの読み取りを図ることが可能となる。
【0008】
上記の制御装置において、前記通信可否状態を示す情報は、一定の時間軸の範囲毎の当該タイムスロットにおける通信不可時間により定まる通信不可能比率としてもよい。
また、上記の制御装置において、前記通信可否状態を示す情報は、当該タイムスロットにおける通信可能時間により定まる通信不可能比率としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信障害が発生する可能性が低いと予想される無線チャネルを優先的に使用し、各無線チャネルの有効利用を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本実施の形態における無線ICタグ読み取りシステムの基本的構成の例を説明する。
[1.無線ICタグ読み取りシステム]
図1は、本発明の一実施の形態である無線ICタグ読み取りシステムの基本的構成の例を示す機能ブロック図である。
【0011】
無線ICタグ読み取りシステム1は、リーダ/ライタ制御装置10と、このリーダ/ライタ制御装置10に接続されたリーダ/ライタ20と、リーダ/ライタ20に接続されたアンテナユニット30とで構成される。以下、無線ICタグ読み取りシステム1の各構成要素について説明する。
【0012】
[1.1.リーダ/ライタ制御装置]
リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20の読み取り処理、すなわち無線ICタグ40との送受信処理、これに伴う送信時間制御、及びキャリアセンス(LBT)の結果に基づく空きチャネルの有無判定、送受信に使用する単位無線チャネルの決定及び指令などを行う。すなわち、リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20に読み取り動作(無線ICタグを受信可能状態にするための搬送波などの送信、質問コマンドを載せた変調波の送信、無線ICタグに電源供給し続けるための搬送波などの送信、無線ICタグからの応答の受信)を実行する様に命令し、また、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40から読み取ったデータを送信する様に命令し、リーダ/ライタ20から受け取ったデータを記憶し、所定の情報処理(例えば、無線ICタグのユニークIDの一覧リストの生成)を行う機能を有するとともに、リーダ/ライタ20が送受信に使用する単位無線チャネルの指定、及びキャリアセンスの実行結果の記憶、キャリアセンス結果に基づく使用チャネルの決定及び送信時間制御を行う。
【0013】
リーダ/ライタ制御装置10は、CPUなどの演算処理装置、ROM、RAMなどの記憶装置を備えた情報処理装置であって、例えば、コンピュータや各種コントローラなどである。図2は、リーダ/ライタ制御装置10のハードウエア構成例を示すブロック図である。図2に示す構成例において、リーダ/ライタ制御装置10は、CPU201と、一時記憶手段であるRAM202と、プログラムや固定データを記憶するROM203と、キーボードやポインティングデバイスなど利用者の入力を信号化してCPU201に提供する入力装置204と、CPU201の処理結果を利用者に示すための画面表示装置205(例えば、液晶ディスプレイ装置)と、リーダ/ライタ20と通信を行うための通信制御装置206(例えば、LANボードなど)とを有している。
【0014】
図3は、リーダ/ライタ制御装置10の機能ブロック図である。リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20の送信及び受信動作を制御するとともに、リーダ/ライタ20が無線ICタグ40との送受信及びキャリアセンスを行う際に使用する単位無線チャネル(すなわち、搬送波の周波数)を指定する送受信制御部211と、リーダ/ライタ20からキャリアセンスの結果を受け取り、これを記憶させるとともに、キャリアセンスの対象とする単位無線チャネル(周波数)を指示するキャリアセンス制御部212と、キャリアセンス結果を記憶格納するキャリアセンス結果記憶部213と、キャリアセンス結果記憶部213の記憶内容に基づいて、周波数ホッピングにおいて使用する単位無線チャネルを決定するチャネル評価部214とを有する。
【0015】
図4は、キャリアセンス結果記憶部213の記憶内容の例を示す図である。図4は、キャリアセンス結果記憶部の記憶内容であるキャリアセンス結果テーブルのデータ構成例を示している。キャリアセンス結果テーブル400は、そのリーダ/ライタ制御装置10が管理するリーダ/ライタ20ごとに設けられている。
【0016】
この例では、それぞれのキャリアセンス結果テーブル400は、リーダ/ライタ20の使用可能無線チャネルとして割り当てられた各単位無線チャネルについて、一つずつレコード401を有し、各レコード401はフラグ記憶フィールド402を有する。本実施の形態では、各リーダ/ライタ20はチャネル1(CH1)からチャネル9(CH9)までの9つの単位無線チャネルを使用することが可能であり、その結果、各キャリアセンス結果テーブル400は、チャネル1(CH1)からチャネル9(CH9)までの9つの単位無線チャネルに対応する9つのレコード401を有する。
【0017】
各レコード401のフラグ記憶フィールド402には、当該単位無線チャネルが使用可能であるか否かを示す情報、例えば、当該単位無線チャネルにおける干渉電波の強さが所定の値未満若しくは以下であるか否かを示す情報(チャネル使用可否フラグと呼ぶ)が書き込まれる。このチャネル使用可否フラグの書き込みは一定時間ごとに行われる。
【0018】
例えば、キャリアセンス制御部212が受け取った測定結果が、その単位無線チャネルの干渉波電力が所定値のー74dBm以下であることを示していれば、キャリアセンス制御部212は、該当するレコード401のフラグ記憶フィールド402にチャネル使用可否フラグとして「0」を格納する。一方、キャリアセンス制御部212が受け取った測定結果が、その単位無線チャネルの干渉波電力が所定値のー74dBmを超えていることを示していれば、該当するレコード401のフラグ記憶フィールド402にチャネル使用可否フラグとして「1」を格納する。フラグ記憶フィールド402に書き込まれる情報は、その単位無線チャネルにおける直近のキャリアセンスの結果であって、当該単位無線チャネルにおけるキャリアセンスが実行されるごとに最新の情報が追加して記憶される。
【0019】
チャネル評価部214は、キャリアセンス結果記憶部213の記憶内容に基づいて、対応するリーダ/ライタ20が今後の送受信に使用すべき単位無線チャネルを決定する機能を有する。チャネル評価部214により決定された単位無線チャネル(「優先使用チャネル」と呼ぶ)は送受信制御部211により、対応するリーダ/ライタ20に優先しようチャネルを指定するメッセージ若しくはコマンドが送信され、これを受信したリーダ/ライタ20は主制御部506によりメッセージ若しくはコマンドを解釈し、解釈結果に従って第一周波数可変発振部503に優先使用チャネルに応じた周波数の基準波を発振させる。
なお、リーダ/ライタ制御装置10のこれら各部211〜214及びリーダ/ライタ制御装置10の動作については、後述する。
【0020】
[1.2.リーダ/ライタ]
次に、本実施の形態にかかるリーダ/ライタ20を説明する。
リーダ/ライタ20は、無線により無線ICタグ40と送受信を行い、無線ICタグ40が記憶する情報(例えば、ユニークID)を読み取る装置である。また、リーダ/ライタ20は、無線ICタグ40と送受信を行う場合に、使用可能な複数の単位無線チャネルを選択的に用いることができるようになっている。例えば、いわゆる高出力型950MHz帯パッシブタグを読み取るリーダ/ライタを例にとると、送受信に割り当てられた無線周波数帯域952〜954MHzを200KHz幅で分割した9つの単位無線チャネルを、このリーダ/ライタ20は選択的に用いることができる。
【0021】
また、リーダ/ライタ20は、上記単位無線チャネルのそれぞれについて、別のリーダ/ライタなど他の無線局による単位無線チャネルの使用の有無を監視するため、これら複数の単位無線チャネルを所定期間ずつ順番に継続してキャリアセンスする。本実施の形態にかかるリーダ/ライタ20において、各単位無線チャネルにおけるキャリアセンス時間は、例えばそのリーダ/ライタが従わなければならない規格・基準で定められた時間と同等とし、例えば前述の高出力型950MHz帯パッシブタグのためのリーダ/ライタであれば、各単位無線チャネルについて5msずつキャリアセンスを行う。
【0022】
リーダ/ライタ20は、無線ICタグ40の読み取りのための電波送信中及び送信後の停止時間中であってもキャリアセンスを継続的且つ循環的に実行し続ける。もちろん送信時間及び停止時間以外(例えば、待機時間中)においてもキャリアセンスを継続的且つ循環的に実行し続ける。
【0023】
リーダ/ライタ20は、上記のキャリアセンスの結果をリーダ/ライタ制御装置10に渡す。リーダ/ライタ20からキャリアセンスの結果を受けたリーダ/ライタ制御装置10は、各単位無線チャネルの使用可否を示すデータであるキャリアセンス結果テーブル400を記録する。
【0024】
リーダ/ライタ20は、無線ICタグ40の読み取りを行う場合には、上記のキャリアセンスの結果に応じていずれかの単位無線チャネルを選択し、その単位無線チャネルにおいて無線ICタグ40とのコマンド/データの送受信を行う。
【0025】
リーダ/ライタ20は、各単位無線チャネルを順番に切り替えながらキャリアセンスを行う一方、リーダ/ライタ制御装置10から指令に応じて指定された優先使用チャネルを用いて無線ICタグ40の読み取りのための送受信を行う。なお、リーダ/ライタ20は周波数ホッピングを行う場合には、優先使用チャネルを用いて周波数ホッピングを行う。
【0026】
図5に、リーダ/ライタ20の構成例を示すブロック図を掲げる。以下、図5を参照しながらリーダ/ライタ20の構成例を説明する。リーダ/ライタ20は、送信部501と、受信部502と、第一周波数可変発振部503と、キャリアセンス実行部504と、第二周波数可変発振部505と、主制御部506と、通信制御部507とを有している。
【0027】
[1.2.1.送信部]
送信部501は、アンテナユニット30を介して無線ICタグ40へ搬送波や変調波を無線により送信する。図5は、送信部501の回路構成例を示すブロック図である。以下、図6を参照しながら送信部501の構成例について説明する。
【0028】
図6に示す構成例では、送信部501は変調回路601と、変調回路601の出力側に接続された増幅回路602と、増幅回路602の出力に接続された第1のローパスフィルタ603と、第1のローパスフィルタ603の出力に接続されたカプラ604と、カプラ604の出力に接続された第2のローパスフィルタ605と、カプラ604の別の出力に接続されたパワー・ディテクタ606とを有している。
【0029】
変調回路601は、主制御部506から出力されたコマンドなどをベースバンド信号として、第一周波数可変発振部503から出力された搬送波信号を所定の変調方式(例えば、Direct UP Converter方式)で変調し、変調波を出力する。増幅回路602は、変調波を変調回路601から受け取り、この変調波を空中放射できるレベルまで増幅する。第1のローパスフィルタ603、第2のローパスフィルタ605は、増幅された変調波に含まれるスプリアス信号を除去する役目を有する。カプラ604は、増幅された変調波を第1のローパスフィルタ603から受け取り、この変調波を分配してパワー・ディテクタ606に出力する。パワー・ディテクタ606は分配された変調波を受け取り、送信出力を検出して主制御部506に出力する。
また変調回路601には前記第一周波数可変発振部503の出力が接続され、第一周波数可変発振部503から出力された信号を搬送波として変調を行う。
【0030】
[1.2.2.受信部]
次に、受信部502について説明する。図7に、受信部502の回路構成例を示すブロック図を掲げる。図7に示す受信部502は、復調回路701と、増幅回路702とを有している。復調回路701には、アンテナユニットが受信した電波が供給される。また、復調回路701には、第一周波数可変発振部503の出力が接続されており、送信部が用いている単位無線チャネルと同一の単位無線チャネルを使用して無線ICタグ40からの応答を受信する。復調回路701は、例えばダイレクトコンバージョン方式を用いるデモジュレータで構成される。
【0031】
増幅回路702は、復調回路701の出力のアナログ信号をデジタル変換可能なレベルまで増幅する。例えば、増幅回路702は、復調回路701の出力に接続される第1の差動アンプ、これに接続されるアクティブ・フィルタ、さらにアクティブ・フィルタの出力に接続される第2の差動アンプによって構成される。増幅回路702の出力はADコンバータ(図略)を介してデジタル信号に変換され、主制御部506に渡される。
【0032】
[1.2.3.第一周波数可変発振部]
第一周波数可変発振部503は、リーダ/ライタ制御装置10によって指定された単位無線チャネル、若しくは優先使用チャネルに対応する周波数の搬送波信号を生成し、これを送信部501及び受信部502に供給する。第一周波数可変発振部503は、例えば、PLL(Phase Lock Loop)IC及びVCO(Voltage Control Oscillator)ICを搭載したモジュールである。
【0033】
[1.2.4.キャリアセンス実行部]
キャリアセンス実行部504は、リーダ/ライタ制御装置10によって指定された単位無線チャネルのキャリアセンスを行い、指定された単位無線チャネルにおける受信電波(干渉電波)の信号強度を測定し出力する。図8に、キャリアセンス実行部504の回路構成例を示す。図8に示す構成例では、キャリアセンス実行部504は、アンテナユニット30が受信した受信信号と、第二周波数可変発振部505から出力される基準信号(指定された単位無線チャネルの中心周波数)と混合してIF信号を出力するミキサ801と、ミキサ801の出力から基準信号(PLL_LO信号)やノイズを取り除くローパスフィルタ802と、ローパスフィルタ802の出力をDCレベルで変換可能にするまで増幅する増幅回路(例えば、ログアンプ)803とで構成される。この増幅回路803の出力はRSSI(Received Signal Strength Indicator)として、主制御部506に渡される。
【0034】
[1.2.5 .第二周波数可変発振部]
第ニ周波数可変発振部505は、リーダ/ライタ制御装置10によって指定された単位無線チャネルに対応する周波数で基準信号(PLL_LO信号)を生成し、これをキャリアセンス実行部504に供給する。第二周波数可変発振部505は、例えば、PLL(Phase Lock Loop)IC及びVCO(Voltage Control Oscillator)ICを搭載したモジュールである。
【0035】
[1.2.6.主制御部]
主制御部506は、リーダ/ライタ制御装置10からの制御命令を受け取り、これを解釈して送信部に未変調の搬送波やコマンドを乗せた変調波を送信させ、またこの送信した変調波に反応する無線ICタグ40からの応答信号を受信した受信部502の出力をデータ(ユニークID)にしてリーダ/ライタ制御装置10に渡す。また、主制御部506は、第一周波数可変発振部503、及び第二周波数可変発振部505に基準信号の周波数を個別に指示する。また主制御部506は、キャリアセンス実行部504から出力されるRSSIを受け取り、これをリーダ/ライタ制御装置10に渡して、前述したキャリアセンス実行結果として記憶させる。
【0036】
[1.2.7.通信制御部]
通信制御部507は、リーダ/ライタ制御装置10と通信を行う装置であって、例えばLANボードなどである。
【0037】
[1.3.アンテナユニット]
図1に戻り、本実施の形態における無線ICタグ読み取りシステム1の構成要素の説明を続ける。
【0038】
アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20、より詳しくは送信部501から受け取った搬送波又は変調波を空中に放射し、これら搬送波又は変調波を無線ICタグ40に向けて放射すると共に、無線ICタグ40からの応答を受信し、この応答をリーダ/ライタ20、より詳しくは受信部502に供給する。また、アンテナユニット30は、受信信号(干渉電波を含む)をリーダ/ライタ20,より詳しくはキャリアセンス実行部504に供給する。
【0039】
アンテナユニット30は、一例としては、送信用アンテナ、受信用アンテナ(例えば、ポールアンテナ、パッチアンテナなど)とこれを収納保護するためのケース(例えば、樹脂成形ケース)で構成されている。本実施の形態では、アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20とは別体の装置になっており、アンテナユニット30はリーダ/ライタ20とはLANケーブルなどで接続される。従って、アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20から離れた場所であっても設置できる様になっている。
【0040】
また、本発明が採用しうる別の構成例としては、アンテナユニット30をリーダ/ライタ20と別体とはせずに、アンテナユニット30全体、若しくは送信アンテナ/受信アンテナの一方をリーダ/ライタ20内に組み込む構成としても本実施の形態は成立する。
【0041】
また、リーダ/ライタ20に接続するアンテナユニット30の数は一つに制限されない。一つのリーダ/ライタ20に複数のアンテナユニット30を接続し、リーダ/ライタ20はこれら複数のアンテナユニット30を切り替えながら送受信処理、キャリアセンス実行処理を行う構成としてもかまわない。例えば、ある倉庫のような閉鎖空間内の四方にそれぞれアンテナ/ユニット30を設置し、これら4つのアンテナユニット30を一つのリーダ/ライタ20にケーブルなどを介して接続する。リーダ/ライタ20はこれら4つのアンテナユニット30をスイッチなどの切り替え手段で切り替えて接続し、4つの異なる方向及び位置から送受信、及び/又はキャリアセンスを行うようにしてもよい。
【0042】
[1.5.無線ICタグ]
次に、無線ICタグ40の一般的な構成例を説明する。
無線ICタグ40は、メモリ41と、制御部42と、送受信部43と、アンテナ44とを有している。メモリ41は、商品情報、発送者情報などの識別コードなど、読み取り対象となる情報を記憶している記憶装置である。制御部42は、リーダ/ライタ20からのコマンド、リクエスト、命令などを解釈し、これに応答する動作を実行する。送受信部43は、変調部(図略)、復調部(図略)を有しており、リーダ/ライタ20と交信を行うために信号の変調/復調を行う。アンテナ44はリーダ/ライタ20からの搬送波を受信し、これを送受信部43に給電すると共に、送受信部43からの変調信号を受け取り、これをリーダ/ライタ20に受信させる様、空中に放射する。
以上で、無線ICタグ読み取りシステム1の構成例の説明を終了する。
【0043】
[2.無線ICタグ読み取りシステムの動作例]
次に、上記の無線ICタグ読み取りシステム1の動作例について説明する。
[2.1.送受信(読み取り)処理]
リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40の読み取りを要求する際、最新のキャリアセンス実行結果であるキャリアセンス結果テーブル400を参照して、優先使用チャネルを決定し、この優先使用チャネルを使用して無線ICタグ40の読み取りを行うようリーダ/ライタ20に指令を送る。リーダ/ライタ20はこの指令に従って、優先使用チャネルを使用して無線ICタグ40の読み取りを行う。この読み取りは、所定の連続送信可能時間内(例えば、4秒以内)で行われる。この所定の連続送信可能時間内で無線ICタグ40の読み取りが完了しない場合には、リーダ/ライタ20はその単位無線チャネルでの送受信を終了し、リーダ/ライタ制御装置10に新たな優先使用チャネルを問い合わせるか、リーダ/ライタ制御装置10からの指令を待つ。
【0044】
また、優先使用チャネルは必ずしも一つの単位無線チャネルでなくともよく、複数の単位無線チャネルを優先使用チャネルとして使用するようにしてもかまわない。例えば、リーダ/ライタ20が周波数ホッピングを行いながら無線ICタグ40の読み取りを行う場合には、リーダ/ライタ制御装置10が複数の優先使用チャネルを指定した場合に、リーダ/ライタ20はこの優先使用チャネル間で単位無線チャネルを切り替えながら送受信を行うようにして周波数ホッピングを実行するようにしてよい。
【0045】
[2.2.チャネル評価処理]
優先使用チャネルの決定は、リーダ/ライタ制御装置10のチャネル評価処理部214が行うチャネル評価処理によって行われる。
図9は、チャネル評価処理の例を示すフローチャートである。以下、図9を参照しながらチャネル評価処理について説明する。チャネル評価処理は、空きチャネルが複数ある場合に、過去のキャリアスキャン結果からみて空き状態である期間が長い単位無線チャネルを優先使用チャネルとして選択する処理である。
【0046】
チャネル評価処理を開始すると、リーダ/ライタ制御装置10,より詳しくはチャネル評価部214は、キャリアセンス結果テーブル400を参照して各単位無線チャネルについて通信可能比率を算出する(S901)
【0047】
「通信可能比率」とは、ある期間(タイムスロットと呼ぶ)において、当該単位無線チャネルが使用可となっている期間の合計Yと、そのタイムスロットの長さXとによって定まる値であって、通信可能比率をRとすると、
R=Y/X
によって通信可能比率が算出される。
【0048】
この通信可能比率及び各単位無線チャネルの使用可否に基づいて、リーダ/ライタ20に使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを選択し、選択した優先使用チャネルをリーダ/ライタ20に指示する(S902)。
【0049】
図10は、あるリーダ/ライタ20周辺における単位無線チャネルCH1からCH9の使用状況を示した図である。この図では、斜線ハッチングで示した部分が当該単位無線チャネルの干渉電波の強さが所定値を超えた期間を示している。図に示すように、各無線単位チャネルでの干渉電波の強さが所定値を超える期間はそれぞれ独自のパターンを形成しているものとする。また、時刻t0からt4の間隔は均等であるものとする。
【0050】
ここで、時刻t3において通信可能比率の算出を行うものとする。時刻t3において、単位無線チャネルCH1、CH2、CH3、CH8、CH9において干渉電波の強さが所定値を超えており、キャリアセンスの結果は使用不可チャネルとなる。一方、時刻t3において、単位無線チャネルCH4、CH5、CH6、CH7においてキャリアセンスの結果は空きチャネルとなる。
【0051】
ここで時刻t3において通信可能比率を算出するタイムスロットは時刻t0から時刻t3までの期間とする。キャリアセンス結果記憶部213のキャリアセンス結果テーブル400は、図10に示す各単位無線チャネルの干渉電波の状況を記憶している。
【0052】
チャネル評価部214は、キャリアセンス結果テーブル400から時刻t0から時刻t3までのタイムスロットにおける当該単位無線チャネルが使用可となっている期間の合計Yを算出し、これに基づいて各単位無線チャネルの通信可能比率Rを算出する。
【0053】
図11(a)は、図10に示す時刻t0から時刻t3をタイムスロットとした場合の、チャネル評価部214が生成する、各単位無線チャネルの通信可能比率Rを算出するためのテーブルの一例である。このテーブルには、各単位無線チャネルについて、一つのレコードを有し、各レコードは、チャネル番号、時刻t3における使用不可フラグ、タイムスロットにおける空き時間合計Y、及び使用可能比率Rを格納するフィールドを有している。
【0054】
チャネル評価部214は、図11(a)に示すテーブルから、使用可否フラグが「0」であるものであって、通信可能比率が所定条件を満たすものを優先使用チャネルとして選択する。例えば所定条件として、通信可能比率が50%を超えることが設定されているとすれば、チャネル評価部214は、チャネル番号2、4、5、6を優先使用チャネルとして選択し、送受信制御部211に通知する。チャネル番号7については、通信可能比率が50%を下回る44.4%であるため、この例においては優先使用チャネルから除外している。この単位無線チャネルを使用すると、干渉電波により障害が発生する可能性が高いためである。また、チャネル番号8については、時刻t3において使用不可となっているため、通信可能比率は100%であるが優先使用チャネルとはしない。
【0055】
また、チャネル評価部214は、優先使用チャネルについて優先順位を付けるようにしてもよい。優先順位は通信可能比率が高さに応じて高い順位とするように定める。送受信制御部211は、リーダ/ライタ20に優先使用チャネルのチャネル番号とともにその優先順位を送信するようにしてもよい。リーダ/ライタ20は優先順位の高い優先使用チャネルを優先して使用して送受信を行うようにする。
【0056】
また、リーダ/ライタ20が周波数ホッピングにより送受信を行う場合には、優先使用チャネルとして指定された複数の単位無線チャネルを使用するが、優先順位の高いものをより多く使用するようにしてもよい。かかる処理によりより通信がフロアノイズや干渉電波により妨害される可能性を低減させることが可能となる。
【0057】
さて、時刻t3の後に時刻t4が到来すると、チャネル評価部214は、同様にチャネル評価処理を実行する。図10に示すように、時刻t4におけるタイムスロットは時刻t1から時刻t4となる。図11(b)は、時刻t1から時刻t4までをタイムスロットとした場合の、各単位無線チャネルの通信可能比率Rを算出するためのテーブルの一例であって、そのデータ構成は図11(a)に示したテーブルと同様である。
【0058】
本実施の形態によれば、過去のチャネル使用状況に基づいて、フロアノイズや干渉電波による障害が発生するおそれの少ない単位無線チャネルを用いて、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40の読み取りのための送受信を行わせることが可能となり、無線ICタグ40の読み取りの効率化、高速化を図ることが可能となる。
【0059】
[3.変形例]
(1)上記の実施の形態では、各単位無線チャネルの通信可能比率を算出するタイムスロットについて、同一の始点、終点を用いたが、単位無線チャネルごとにタイムスロットの長さを決定したり、タイムスロットの時間的位置を変更するようにしてもかまわない。例えば、図10に示した例において、単位無線チャネルCH1については、時刻t0から時刻t3までのタイムスロットで通信可能比率を算出し、CH2については時刻t1から刻t2から時刻t3までのタイムスロットで通信可能比率を算出するようにしてもかまわない。
【0060】
(2)上記の実施の形態では、通信可能比率を用いて優先使用チャネルを決定するものとしたが、通信不可能時間の合計をタイムスロットの長さで割って求められる通信不可能比率を、通信可能比率の変わりに用いるようにしても本発明は成立する。この場合、通信不可能比率が低いものほど優先順位の高い優先使用チャネルとして扱われることとなる。
【0061】
(3)なお、タイムスロットの長さを各単位無線チャネルについて同一にしている場合には、通信可能比率の代わりに通信可能時間の合計値を、通信不可能比率の合計の代わりに通信不可能時間の合計値を使用できることはいうまでもない。
(4)その他本発明の本質を変更しない限りにおいて、変更、置換、代替を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】無線ICタグ読み取りシステムの構成例を示すブロック図
【図2】リーダ/ライタ制御装置のハードウエア構成例を示すブロック図
【図3】リーダ/ライタ制御装置の機能ブロック図
【図4】キャリアセンス結果テーブルの例を示す図
【図5】リーダ/ライタの構成例を示すブロック図
【図6】リーダ/ライタの送信部の回路構成例を示すブロック図
【図7】リーダ/ライタの受信部の回路構成例を示すブロック図
【図8】リーダ/ライタのキャリアセンス実行部の回路構成例を示すブロック図
【図9】無線ICタグ読み取りシステムが実行するチャネル評価処理の例を示すフローチャート
【図10】単位無線チャネルCH1からCH9の使用状況を示した図
【図11】(a)は、図10に示す時刻t0からt3までのタイムスロットにおける通信可能比率を算出するテーブルの例を示した図、(b)は、図10に示す時刻t1からt4までのタイムスロットにおける通信可能比率を算出するテーブルの例を示した図、
【符号の説明】
【0063】
1…無線ICタグ読み取りシステム
10…リーダ/ライタ制御装置
20…リーダ/ライタ
30…アンテナユニット
40…無線ICタグ
211…送受信制御部
212…キャリアセンス制御部
214…チャネル評価部
501…送信部
502…受信部
503…第一周波数可変発振部
504…キャリアセンス実行部
505…第二周波数可変発振部
506…主制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグ読み取り装置の制御装置に関し、より詳しくはいわゆる無線ICタグ(電子タグ、RFIDともいう)を読み取るための読み取り機能を有する無線ICタグ読み取り装置(例えば、リーダ/ライタ)を制御する制御装置(例えば、リーダ/ライタ制御装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる無線ICタグの読み取り装置は、使用する無線チャネルが、同一チャネルを使用する他の読み取り装置が近傍に存在すると双方の読み取り装置、或いは本来応答すべきではない読み取り装置と無線ICタグとの間に置いて干渉が起こる可能性があり、読み取り装置からの読み取り電波の放射、又は反射など電波が干渉しあうことにより、正常な無線ICタグの読み取りができなくなるおそれがある。
【0003】
かかる不都合を回避する技術の一つとして、複数の無線チャネルを選択的に用いて、ノイズの少ない周波数を選択して送信する技術が提案されている。さらに、単一の無線チャネルを連続して使用し続けた場合、他の無線装置の動作開始などによる干渉電波の発生により通信に障害が発生したりするおそれがある。この不都合を回避する技術として、複数の無線チャネルを次々に切り替えながら使用することにより、連続的な通信の障害発生を回避しようとする周波数ホッピング技術が提案された(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−303379号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、倉庫のような限られた空間内に複数の無線ICタグ読み取り装置を配置しなければならない場合のように、無線ICタグ読み取り装置が互いに他の無線ICタグ読み取り装置の読み取り電波到達範囲内に存在する場合に、ある特定の無線チャネルが継続して他の無線ICタグ読み取り装置に使用されていたり、フロアノイズや飛び込み電波の影響により使用に適さない無線チャネルが発生することがあり、周波数ホッピングによりランダムに無線チャネルの切り替えが行われる場合に、このような使用に適さない無線チャネルへ周波数ホッピングにより使用無線チャネルが切り替えられると、読み取りが困難になったり、不可能になったりするおそれがあり、効率よく無線ICタグの読み取りを行えない場合があった。
【0005】
また、使用に適さない無線チャネルは何らかの理由で間欠的に使用に適さない状況が生ずることもあり、このような場合にその無線チャネルをまったく使用しないとすれば、無線チャネルの利用効率を低下させてしまうという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、一定の時間軸の中で、他のリーダ/ライタが無線ICタグの読み取りに使用する無線チャネルの使用状況や、フロアノイズや電波の反射、飛び込み電波の影響などから、通信障害が発生する頻度を計測し、一定の時間軸の中で通信障害の発生が低い無線チャネルを優先的に使用し、各無線チャネルの効率の良い利用方法の無線ICタグ読み取り技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の単位無線チャネルを使用可能な、無線ICタグの読み取りを行う無線ICタグ読み取り装置(例えば、リーダ/ライタ)を制御する制御装置(例えば、リーダ/ライタ制御装置)として提案される。この制御装置は、前記無線ICタグ読み取り装置が測定した各単位無線チャネルにおける受信電波強度を示す情報(例えばRSSI)を受け取り、これに基づいて各単位無線チャネルの使用可否を示す情報(例えば、使用可否フラグ)を記憶させるキャリアセンス制御手段(例えば、キャリアセンス制御部)と、前記各単位無線チャネルの使用可否を示す情報に基づいて、タイムスロットにおける通信可否状態を示す情報を算出し、この通信可否状態を示す情報に基づいて前記無線ICタグ読み取り装置に使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを決定する評価手段(例えば、チャネル評価部)と、前記優先使用チャネルを前記無線ICタグ読み取り装置に指示する送受信制御手段(例えば、送受信制御部)とを有することを特徴としている。
上記制御装置によれば、通信障害が発生する可能性が低い無線チャネルを優先的に使用し、各無線チャネルの効率の良い利用方法の無線ICタグの読み取りを図ることが可能となる。
【0008】
上記の制御装置において、前記通信可否状態を示す情報は、一定の時間軸の範囲毎の当該タイムスロットにおける通信不可時間により定まる通信不可能比率としてもよい。
また、上記の制御装置において、前記通信可否状態を示す情報は、当該タイムスロットにおける通信可能時間により定まる通信不可能比率としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信障害が発生する可能性が低いと予想される無線チャネルを優先的に使用し、各無線チャネルの有効利用を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本実施の形態における無線ICタグ読み取りシステムの基本的構成の例を説明する。
[1.無線ICタグ読み取りシステム]
図1は、本発明の一実施の形態である無線ICタグ読み取りシステムの基本的構成の例を示す機能ブロック図である。
【0011】
無線ICタグ読み取りシステム1は、リーダ/ライタ制御装置10と、このリーダ/ライタ制御装置10に接続されたリーダ/ライタ20と、リーダ/ライタ20に接続されたアンテナユニット30とで構成される。以下、無線ICタグ読み取りシステム1の各構成要素について説明する。
【0012】
[1.1.リーダ/ライタ制御装置]
リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20の読み取り処理、すなわち無線ICタグ40との送受信処理、これに伴う送信時間制御、及びキャリアセンス(LBT)の結果に基づく空きチャネルの有無判定、送受信に使用する単位無線チャネルの決定及び指令などを行う。すなわち、リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20に読み取り動作(無線ICタグを受信可能状態にするための搬送波などの送信、質問コマンドを載せた変調波の送信、無線ICタグに電源供給し続けるための搬送波などの送信、無線ICタグからの応答の受信)を実行する様に命令し、また、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40から読み取ったデータを送信する様に命令し、リーダ/ライタ20から受け取ったデータを記憶し、所定の情報処理(例えば、無線ICタグのユニークIDの一覧リストの生成)を行う機能を有するとともに、リーダ/ライタ20が送受信に使用する単位無線チャネルの指定、及びキャリアセンスの実行結果の記憶、キャリアセンス結果に基づく使用チャネルの決定及び送信時間制御を行う。
【0013】
リーダ/ライタ制御装置10は、CPUなどの演算処理装置、ROM、RAMなどの記憶装置を備えた情報処理装置であって、例えば、コンピュータや各種コントローラなどである。図2は、リーダ/ライタ制御装置10のハードウエア構成例を示すブロック図である。図2に示す構成例において、リーダ/ライタ制御装置10は、CPU201と、一時記憶手段であるRAM202と、プログラムや固定データを記憶するROM203と、キーボードやポインティングデバイスなど利用者の入力を信号化してCPU201に提供する入力装置204と、CPU201の処理結果を利用者に示すための画面表示装置205(例えば、液晶ディスプレイ装置)と、リーダ/ライタ20と通信を行うための通信制御装置206(例えば、LANボードなど)とを有している。
【0014】
図3は、リーダ/ライタ制御装置10の機能ブロック図である。リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20の送信及び受信動作を制御するとともに、リーダ/ライタ20が無線ICタグ40との送受信及びキャリアセンスを行う際に使用する単位無線チャネル(すなわち、搬送波の周波数)を指定する送受信制御部211と、リーダ/ライタ20からキャリアセンスの結果を受け取り、これを記憶させるとともに、キャリアセンスの対象とする単位無線チャネル(周波数)を指示するキャリアセンス制御部212と、キャリアセンス結果を記憶格納するキャリアセンス結果記憶部213と、キャリアセンス結果記憶部213の記憶内容に基づいて、周波数ホッピングにおいて使用する単位無線チャネルを決定するチャネル評価部214とを有する。
【0015】
図4は、キャリアセンス結果記憶部213の記憶内容の例を示す図である。図4は、キャリアセンス結果記憶部の記憶内容であるキャリアセンス結果テーブルのデータ構成例を示している。キャリアセンス結果テーブル400は、そのリーダ/ライタ制御装置10が管理するリーダ/ライタ20ごとに設けられている。
【0016】
この例では、それぞれのキャリアセンス結果テーブル400は、リーダ/ライタ20の使用可能無線チャネルとして割り当てられた各単位無線チャネルについて、一つずつレコード401を有し、各レコード401はフラグ記憶フィールド402を有する。本実施の形態では、各リーダ/ライタ20はチャネル1(CH1)からチャネル9(CH9)までの9つの単位無線チャネルを使用することが可能であり、その結果、各キャリアセンス結果テーブル400は、チャネル1(CH1)からチャネル9(CH9)までの9つの単位無線チャネルに対応する9つのレコード401を有する。
【0017】
各レコード401のフラグ記憶フィールド402には、当該単位無線チャネルが使用可能であるか否かを示す情報、例えば、当該単位無線チャネルにおける干渉電波の強さが所定の値未満若しくは以下であるか否かを示す情報(チャネル使用可否フラグと呼ぶ)が書き込まれる。このチャネル使用可否フラグの書き込みは一定時間ごとに行われる。
【0018】
例えば、キャリアセンス制御部212が受け取った測定結果が、その単位無線チャネルの干渉波電力が所定値のー74dBm以下であることを示していれば、キャリアセンス制御部212は、該当するレコード401のフラグ記憶フィールド402にチャネル使用可否フラグとして「0」を格納する。一方、キャリアセンス制御部212が受け取った測定結果が、その単位無線チャネルの干渉波電力が所定値のー74dBmを超えていることを示していれば、該当するレコード401のフラグ記憶フィールド402にチャネル使用可否フラグとして「1」を格納する。フラグ記憶フィールド402に書き込まれる情報は、その単位無線チャネルにおける直近のキャリアセンスの結果であって、当該単位無線チャネルにおけるキャリアセンスが実行されるごとに最新の情報が追加して記憶される。
【0019】
チャネル評価部214は、キャリアセンス結果記憶部213の記憶内容に基づいて、対応するリーダ/ライタ20が今後の送受信に使用すべき単位無線チャネルを決定する機能を有する。チャネル評価部214により決定された単位無線チャネル(「優先使用チャネル」と呼ぶ)は送受信制御部211により、対応するリーダ/ライタ20に優先しようチャネルを指定するメッセージ若しくはコマンドが送信され、これを受信したリーダ/ライタ20は主制御部506によりメッセージ若しくはコマンドを解釈し、解釈結果に従って第一周波数可変発振部503に優先使用チャネルに応じた周波数の基準波を発振させる。
なお、リーダ/ライタ制御装置10のこれら各部211〜214及びリーダ/ライタ制御装置10の動作については、後述する。
【0020】
[1.2.リーダ/ライタ]
次に、本実施の形態にかかるリーダ/ライタ20を説明する。
リーダ/ライタ20は、無線により無線ICタグ40と送受信を行い、無線ICタグ40が記憶する情報(例えば、ユニークID)を読み取る装置である。また、リーダ/ライタ20は、無線ICタグ40と送受信を行う場合に、使用可能な複数の単位無線チャネルを選択的に用いることができるようになっている。例えば、いわゆる高出力型950MHz帯パッシブタグを読み取るリーダ/ライタを例にとると、送受信に割り当てられた無線周波数帯域952〜954MHzを200KHz幅で分割した9つの単位無線チャネルを、このリーダ/ライタ20は選択的に用いることができる。
【0021】
また、リーダ/ライタ20は、上記単位無線チャネルのそれぞれについて、別のリーダ/ライタなど他の無線局による単位無線チャネルの使用の有無を監視するため、これら複数の単位無線チャネルを所定期間ずつ順番に継続してキャリアセンスする。本実施の形態にかかるリーダ/ライタ20において、各単位無線チャネルにおけるキャリアセンス時間は、例えばそのリーダ/ライタが従わなければならない規格・基準で定められた時間と同等とし、例えば前述の高出力型950MHz帯パッシブタグのためのリーダ/ライタであれば、各単位無線チャネルについて5msずつキャリアセンスを行う。
【0022】
リーダ/ライタ20は、無線ICタグ40の読み取りのための電波送信中及び送信後の停止時間中であってもキャリアセンスを継続的且つ循環的に実行し続ける。もちろん送信時間及び停止時間以外(例えば、待機時間中)においてもキャリアセンスを継続的且つ循環的に実行し続ける。
【0023】
リーダ/ライタ20は、上記のキャリアセンスの結果をリーダ/ライタ制御装置10に渡す。リーダ/ライタ20からキャリアセンスの結果を受けたリーダ/ライタ制御装置10は、各単位無線チャネルの使用可否を示すデータであるキャリアセンス結果テーブル400を記録する。
【0024】
リーダ/ライタ20は、無線ICタグ40の読み取りを行う場合には、上記のキャリアセンスの結果に応じていずれかの単位無線チャネルを選択し、その単位無線チャネルにおいて無線ICタグ40とのコマンド/データの送受信を行う。
【0025】
リーダ/ライタ20は、各単位無線チャネルを順番に切り替えながらキャリアセンスを行う一方、リーダ/ライタ制御装置10から指令に応じて指定された優先使用チャネルを用いて無線ICタグ40の読み取りのための送受信を行う。なお、リーダ/ライタ20は周波数ホッピングを行う場合には、優先使用チャネルを用いて周波数ホッピングを行う。
【0026】
図5に、リーダ/ライタ20の構成例を示すブロック図を掲げる。以下、図5を参照しながらリーダ/ライタ20の構成例を説明する。リーダ/ライタ20は、送信部501と、受信部502と、第一周波数可変発振部503と、キャリアセンス実行部504と、第二周波数可変発振部505と、主制御部506と、通信制御部507とを有している。
【0027】
[1.2.1.送信部]
送信部501は、アンテナユニット30を介して無線ICタグ40へ搬送波や変調波を無線により送信する。図5は、送信部501の回路構成例を示すブロック図である。以下、図6を参照しながら送信部501の構成例について説明する。
【0028】
図6に示す構成例では、送信部501は変調回路601と、変調回路601の出力側に接続された増幅回路602と、増幅回路602の出力に接続された第1のローパスフィルタ603と、第1のローパスフィルタ603の出力に接続されたカプラ604と、カプラ604の出力に接続された第2のローパスフィルタ605と、カプラ604の別の出力に接続されたパワー・ディテクタ606とを有している。
【0029】
変調回路601は、主制御部506から出力されたコマンドなどをベースバンド信号として、第一周波数可変発振部503から出力された搬送波信号を所定の変調方式(例えば、Direct UP Converter方式)で変調し、変調波を出力する。増幅回路602は、変調波を変調回路601から受け取り、この変調波を空中放射できるレベルまで増幅する。第1のローパスフィルタ603、第2のローパスフィルタ605は、増幅された変調波に含まれるスプリアス信号を除去する役目を有する。カプラ604は、増幅された変調波を第1のローパスフィルタ603から受け取り、この変調波を分配してパワー・ディテクタ606に出力する。パワー・ディテクタ606は分配された変調波を受け取り、送信出力を検出して主制御部506に出力する。
また変調回路601には前記第一周波数可変発振部503の出力が接続され、第一周波数可変発振部503から出力された信号を搬送波として変調を行う。
【0030】
[1.2.2.受信部]
次に、受信部502について説明する。図7に、受信部502の回路構成例を示すブロック図を掲げる。図7に示す受信部502は、復調回路701と、増幅回路702とを有している。復調回路701には、アンテナユニットが受信した電波が供給される。また、復調回路701には、第一周波数可変発振部503の出力が接続されており、送信部が用いている単位無線チャネルと同一の単位無線チャネルを使用して無線ICタグ40からの応答を受信する。復調回路701は、例えばダイレクトコンバージョン方式を用いるデモジュレータで構成される。
【0031】
増幅回路702は、復調回路701の出力のアナログ信号をデジタル変換可能なレベルまで増幅する。例えば、増幅回路702は、復調回路701の出力に接続される第1の差動アンプ、これに接続されるアクティブ・フィルタ、さらにアクティブ・フィルタの出力に接続される第2の差動アンプによって構成される。増幅回路702の出力はADコンバータ(図略)を介してデジタル信号に変換され、主制御部506に渡される。
【0032】
[1.2.3.第一周波数可変発振部]
第一周波数可変発振部503は、リーダ/ライタ制御装置10によって指定された単位無線チャネル、若しくは優先使用チャネルに対応する周波数の搬送波信号を生成し、これを送信部501及び受信部502に供給する。第一周波数可変発振部503は、例えば、PLL(Phase Lock Loop)IC及びVCO(Voltage Control Oscillator)ICを搭載したモジュールである。
【0033】
[1.2.4.キャリアセンス実行部]
キャリアセンス実行部504は、リーダ/ライタ制御装置10によって指定された単位無線チャネルのキャリアセンスを行い、指定された単位無線チャネルにおける受信電波(干渉電波)の信号強度を測定し出力する。図8に、キャリアセンス実行部504の回路構成例を示す。図8に示す構成例では、キャリアセンス実行部504は、アンテナユニット30が受信した受信信号と、第二周波数可変発振部505から出力される基準信号(指定された単位無線チャネルの中心周波数)と混合してIF信号を出力するミキサ801と、ミキサ801の出力から基準信号(PLL_LO信号)やノイズを取り除くローパスフィルタ802と、ローパスフィルタ802の出力をDCレベルで変換可能にするまで増幅する増幅回路(例えば、ログアンプ)803とで構成される。この増幅回路803の出力はRSSI(Received Signal Strength Indicator)として、主制御部506に渡される。
【0034】
[1.2.5 .第二周波数可変発振部]
第ニ周波数可変発振部505は、リーダ/ライタ制御装置10によって指定された単位無線チャネルに対応する周波数で基準信号(PLL_LO信号)を生成し、これをキャリアセンス実行部504に供給する。第二周波数可変発振部505は、例えば、PLL(Phase Lock Loop)IC及びVCO(Voltage Control Oscillator)ICを搭載したモジュールである。
【0035】
[1.2.6.主制御部]
主制御部506は、リーダ/ライタ制御装置10からの制御命令を受け取り、これを解釈して送信部に未変調の搬送波やコマンドを乗せた変調波を送信させ、またこの送信した変調波に反応する無線ICタグ40からの応答信号を受信した受信部502の出力をデータ(ユニークID)にしてリーダ/ライタ制御装置10に渡す。また、主制御部506は、第一周波数可変発振部503、及び第二周波数可変発振部505に基準信号の周波数を個別に指示する。また主制御部506は、キャリアセンス実行部504から出力されるRSSIを受け取り、これをリーダ/ライタ制御装置10に渡して、前述したキャリアセンス実行結果として記憶させる。
【0036】
[1.2.7.通信制御部]
通信制御部507は、リーダ/ライタ制御装置10と通信を行う装置であって、例えばLANボードなどである。
【0037】
[1.3.アンテナユニット]
図1に戻り、本実施の形態における無線ICタグ読み取りシステム1の構成要素の説明を続ける。
【0038】
アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20、より詳しくは送信部501から受け取った搬送波又は変調波を空中に放射し、これら搬送波又は変調波を無線ICタグ40に向けて放射すると共に、無線ICタグ40からの応答を受信し、この応答をリーダ/ライタ20、より詳しくは受信部502に供給する。また、アンテナユニット30は、受信信号(干渉電波を含む)をリーダ/ライタ20,より詳しくはキャリアセンス実行部504に供給する。
【0039】
アンテナユニット30は、一例としては、送信用アンテナ、受信用アンテナ(例えば、ポールアンテナ、パッチアンテナなど)とこれを収納保護するためのケース(例えば、樹脂成形ケース)で構成されている。本実施の形態では、アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20とは別体の装置になっており、アンテナユニット30はリーダ/ライタ20とはLANケーブルなどで接続される。従って、アンテナユニット30は、リーダ/ライタ20から離れた場所であっても設置できる様になっている。
【0040】
また、本発明が採用しうる別の構成例としては、アンテナユニット30をリーダ/ライタ20と別体とはせずに、アンテナユニット30全体、若しくは送信アンテナ/受信アンテナの一方をリーダ/ライタ20内に組み込む構成としても本実施の形態は成立する。
【0041】
また、リーダ/ライタ20に接続するアンテナユニット30の数は一つに制限されない。一つのリーダ/ライタ20に複数のアンテナユニット30を接続し、リーダ/ライタ20はこれら複数のアンテナユニット30を切り替えながら送受信処理、キャリアセンス実行処理を行う構成としてもかまわない。例えば、ある倉庫のような閉鎖空間内の四方にそれぞれアンテナ/ユニット30を設置し、これら4つのアンテナユニット30を一つのリーダ/ライタ20にケーブルなどを介して接続する。リーダ/ライタ20はこれら4つのアンテナユニット30をスイッチなどの切り替え手段で切り替えて接続し、4つの異なる方向及び位置から送受信、及び/又はキャリアセンスを行うようにしてもよい。
【0042】
[1.5.無線ICタグ]
次に、無線ICタグ40の一般的な構成例を説明する。
無線ICタグ40は、メモリ41と、制御部42と、送受信部43と、アンテナ44とを有している。メモリ41は、商品情報、発送者情報などの識別コードなど、読み取り対象となる情報を記憶している記憶装置である。制御部42は、リーダ/ライタ20からのコマンド、リクエスト、命令などを解釈し、これに応答する動作を実行する。送受信部43は、変調部(図略)、復調部(図略)を有しており、リーダ/ライタ20と交信を行うために信号の変調/復調を行う。アンテナ44はリーダ/ライタ20からの搬送波を受信し、これを送受信部43に給電すると共に、送受信部43からの変調信号を受け取り、これをリーダ/ライタ20に受信させる様、空中に放射する。
以上で、無線ICタグ読み取りシステム1の構成例の説明を終了する。
【0043】
[2.無線ICタグ読み取りシステムの動作例]
次に、上記の無線ICタグ読み取りシステム1の動作例について説明する。
[2.1.送受信(読み取り)処理]
リーダ/ライタ制御装置10は、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40の読み取りを要求する際、最新のキャリアセンス実行結果であるキャリアセンス結果テーブル400を参照して、優先使用チャネルを決定し、この優先使用チャネルを使用して無線ICタグ40の読み取りを行うようリーダ/ライタ20に指令を送る。リーダ/ライタ20はこの指令に従って、優先使用チャネルを使用して無線ICタグ40の読み取りを行う。この読み取りは、所定の連続送信可能時間内(例えば、4秒以内)で行われる。この所定の連続送信可能時間内で無線ICタグ40の読み取りが完了しない場合には、リーダ/ライタ20はその単位無線チャネルでの送受信を終了し、リーダ/ライタ制御装置10に新たな優先使用チャネルを問い合わせるか、リーダ/ライタ制御装置10からの指令を待つ。
【0044】
また、優先使用チャネルは必ずしも一つの単位無線チャネルでなくともよく、複数の単位無線チャネルを優先使用チャネルとして使用するようにしてもかまわない。例えば、リーダ/ライタ20が周波数ホッピングを行いながら無線ICタグ40の読み取りを行う場合には、リーダ/ライタ制御装置10が複数の優先使用チャネルを指定した場合に、リーダ/ライタ20はこの優先使用チャネル間で単位無線チャネルを切り替えながら送受信を行うようにして周波数ホッピングを実行するようにしてよい。
【0045】
[2.2.チャネル評価処理]
優先使用チャネルの決定は、リーダ/ライタ制御装置10のチャネル評価処理部214が行うチャネル評価処理によって行われる。
図9は、チャネル評価処理の例を示すフローチャートである。以下、図9を参照しながらチャネル評価処理について説明する。チャネル評価処理は、空きチャネルが複数ある場合に、過去のキャリアスキャン結果からみて空き状態である期間が長い単位無線チャネルを優先使用チャネルとして選択する処理である。
【0046】
チャネル評価処理を開始すると、リーダ/ライタ制御装置10,より詳しくはチャネル評価部214は、キャリアセンス結果テーブル400を参照して各単位無線チャネルについて通信可能比率を算出する(S901)
【0047】
「通信可能比率」とは、ある期間(タイムスロットと呼ぶ)において、当該単位無線チャネルが使用可となっている期間の合計Yと、そのタイムスロットの長さXとによって定まる値であって、通信可能比率をRとすると、
R=Y/X
によって通信可能比率が算出される。
【0048】
この通信可能比率及び各単位無線チャネルの使用可否に基づいて、リーダ/ライタ20に使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを選択し、選択した優先使用チャネルをリーダ/ライタ20に指示する(S902)。
【0049】
図10は、あるリーダ/ライタ20周辺における単位無線チャネルCH1からCH9の使用状況を示した図である。この図では、斜線ハッチングで示した部分が当該単位無線チャネルの干渉電波の強さが所定値を超えた期間を示している。図に示すように、各無線単位チャネルでの干渉電波の強さが所定値を超える期間はそれぞれ独自のパターンを形成しているものとする。また、時刻t0からt4の間隔は均等であるものとする。
【0050】
ここで、時刻t3において通信可能比率の算出を行うものとする。時刻t3において、単位無線チャネルCH1、CH2、CH3、CH8、CH9において干渉電波の強さが所定値を超えており、キャリアセンスの結果は使用不可チャネルとなる。一方、時刻t3において、単位無線チャネルCH4、CH5、CH6、CH7においてキャリアセンスの結果は空きチャネルとなる。
【0051】
ここで時刻t3において通信可能比率を算出するタイムスロットは時刻t0から時刻t3までの期間とする。キャリアセンス結果記憶部213のキャリアセンス結果テーブル400は、図10に示す各単位無線チャネルの干渉電波の状況を記憶している。
【0052】
チャネル評価部214は、キャリアセンス結果テーブル400から時刻t0から時刻t3までのタイムスロットにおける当該単位無線チャネルが使用可となっている期間の合計Yを算出し、これに基づいて各単位無線チャネルの通信可能比率Rを算出する。
【0053】
図11(a)は、図10に示す時刻t0から時刻t3をタイムスロットとした場合の、チャネル評価部214が生成する、各単位無線チャネルの通信可能比率Rを算出するためのテーブルの一例である。このテーブルには、各単位無線チャネルについて、一つのレコードを有し、各レコードは、チャネル番号、時刻t3における使用不可フラグ、タイムスロットにおける空き時間合計Y、及び使用可能比率Rを格納するフィールドを有している。
【0054】
チャネル評価部214は、図11(a)に示すテーブルから、使用可否フラグが「0」であるものであって、通信可能比率が所定条件を満たすものを優先使用チャネルとして選択する。例えば所定条件として、通信可能比率が50%を超えることが設定されているとすれば、チャネル評価部214は、チャネル番号2、4、5、6を優先使用チャネルとして選択し、送受信制御部211に通知する。チャネル番号7については、通信可能比率が50%を下回る44.4%であるため、この例においては優先使用チャネルから除外している。この単位無線チャネルを使用すると、干渉電波により障害が発生する可能性が高いためである。また、チャネル番号8については、時刻t3において使用不可となっているため、通信可能比率は100%であるが優先使用チャネルとはしない。
【0055】
また、チャネル評価部214は、優先使用チャネルについて優先順位を付けるようにしてもよい。優先順位は通信可能比率が高さに応じて高い順位とするように定める。送受信制御部211は、リーダ/ライタ20に優先使用チャネルのチャネル番号とともにその優先順位を送信するようにしてもよい。リーダ/ライタ20は優先順位の高い優先使用チャネルを優先して使用して送受信を行うようにする。
【0056】
また、リーダ/ライタ20が周波数ホッピングにより送受信を行う場合には、優先使用チャネルとして指定された複数の単位無線チャネルを使用するが、優先順位の高いものをより多く使用するようにしてもよい。かかる処理によりより通信がフロアノイズや干渉電波により妨害される可能性を低減させることが可能となる。
【0057】
さて、時刻t3の後に時刻t4が到来すると、チャネル評価部214は、同様にチャネル評価処理を実行する。図10に示すように、時刻t4におけるタイムスロットは時刻t1から時刻t4となる。図11(b)は、時刻t1から時刻t4までをタイムスロットとした場合の、各単位無線チャネルの通信可能比率Rを算出するためのテーブルの一例であって、そのデータ構成は図11(a)に示したテーブルと同様である。
【0058】
本実施の形態によれば、過去のチャネル使用状況に基づいて、フロアノイズや干渉電波による障害が発生するおそれの少ない単位無線チャネルを用いて、リーダ/ライタ20に無線ICタグ40の読み取りのための送受信を行わせることが可能となり、無線ICタグ40の読み取りの効率化、高速化を図ることが可能となる。
【0059】
[3.変形例]
(1)上記の実施の形態では、各単位無線チャネルの通信可能比率を算出するタイムスロットについて、同一の始点、終点を用いたが、単位無線チャネルごとにタイムスロットの長さを決定したり、タイムスロットの時間的位置を変更するようにしてもかまわない。例えば、図10に示した例において、単位無線チャネルCH1については、時刻t0から時刻t3までのタイムスロットで通信可能比率を算出し、CH2については時刻t1から刻t2から時刻t3までのタイムスロットで通信可能比率を算出するようにしてもかまわない。
【0060】
(2)上記の実施の形態では、通信可能比率を用いて優先使用チャネルを決定するものとしたが、通信不可能時間の合計をタイムスロットの長さで割って求められる通信不可能比率を、通信可能比率の変わりに用いるようにしても本発明は成立する。この場合、通信不可能比率が低いものほど優先順位の高い優先使用チャネルとして扱われることとなる。
【0061】
(3)なお、タイムスロットの長さを各単位無線チャネルについて同一にしている場合には、通信可能比率の代わりに通信可能時間の合計値を、通信不可能比率の合計の代わりに通信不可能時間の合計値を使用できることはいうまでもない。
(4)その他本発明の本質を変更しない限りにおいて、変更、置換、代替を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】無線ICタグ読み取りシステムの構成例を示すブロック図
【図2】リーダ/ライタ制御装置のハードウエア構成例を示すブロック図
【図3】リーダ/ライタ制御装置の機能ブロック図
【図4】キャリアセンス結果テーブルの例を示す図
【図5】リーダ/ライタの構成例を示すブロック図
【図6】リーダ/ライタの送信部の回路構成例を示すブロック図
【図7】リーダ/ライタの受信部の回路構成例を示すブロック図
【図8】リーダ/ライタのキャリアセンス実行部の回路構成例を示すブロック図
【図9】無線ICタグ読み取りシステムが実行するチャネル評価処理の例を示すフローチャート
【図10】単位無線チャネルCH1からCH9の使用状況を示した図
【図11】(a)は、図10に示す時刻t0からt3までのタイムスロットにおける通信可能比率を算出するテーブルの例を示した図、(b)は、図10に示す時刻t1からt4までのタイムスロットにおける通信可能比率を算出するテーブルの例を示した図、
【符号の説明】
【0063】
1…無線ICタグ読み取りシステム
10…リーダ/ライタ制御装置
20…リーダ/ライタ
30…アンテナユニット
40…無線ICタグ
211…送受信制御部
212…キャリアセンス制御部
214…チャネル評価部
501…送信部
502…受信部
503…第一周波数可変発振部
504…キャリアセンス実行部
505…第二周波数可変発振部
506…主制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位無線チャネルを使用可能な、無線ICタグの読み取りを行う無線ICタグ読み取り装置を制御する制御装置であって、
前記無線ICタグ読み取り装置が測定した各単位無線チャネルにおける受信電波強度を示す情報を受け取り、これに基づいて各単位無線チャネルの使用可否を示す情報を記憶させるキャリアセンス制御手段と
前記各単位無線チャネルの使用可否を示す情報に基づいて、タイムスロットにおける通信可否状態を示す情報を算出し、この通信可否状態を示す情報に基づいて前記無線ICタグ読み取り装置に使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを決定する無線チャネル評価手段と、
前記優先使用チャネルを前記無線ICタグ読み取り装置に指示する送受信制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記通信可否状態を示す情報は、当該タイムスロットにおける通信不可時間により定まる通信不可能比率であることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記通信可否状態を示す情報は、当該タイムスロットにおける通信可能時間とにより定まる通信不可能比率であることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項1】
複数の単位無線チャネルを使用可能な、無線ICタグの読み取りを行う無線ICタグ読み取り装置を制御する制御装置であって、
前記無線ICタグ読み取り装置が測定した各単位無線チャネルにおける受信電波強度を示す情報を受け取り、これに基づいて各単位無線チャネルの使用可否を示す情報を記憶させるキャリアセンス制御手段と
前記各単位無線チャネルの使用可否を示す情報に基づいて、タイムスロットにおける通信可否状態を示す情報を算出し、この通信可否状態を示す情報に基づいて前記無線ICタグ読み取り装置に使用させる単位無線チャネルである優先使用チャネルを決定する無線チャネル評価手段と、
前記優先使用チャネルを前記無線ICタグ読み取り装置に指示する送受信制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記通信可否状態を示す情報は、当該タイムスロットにおける通信不可時間により定まる通信不可能比率であることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記通信可否状態を示す情報は、当該タイムスロットにおける通信可能時間とにより定まる通信不可能比率であることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−65276(P2009−65276A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229288(P2007−229288)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【Fターム(参考)】
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