説明

無線ICタグ読取書込装置および無線ICタグ読取書込方法とプログラム

【課題】複数の無線ICタグが配置された媒体に対して、複数のリーダ/ライタにより各無線ICタグの識別情報を読み取る場合でも、各無線ICタグの識別情報を確実に判定する。
【解決手段】リーダ/ライタユニット11を構成する複数のリーダ/ライタは、ラベル用紙40に内蔵された複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられ、対応する無線ICタグのID情報を、出力電波強度を100%、75%、50%、25%という4段階に変化させてID情報を検出する。ID判定部は、あるリーダ/ライタの周囲に位置する他のリーダ/ライタの読み取り結果に基づいて、当該リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグの識別情報を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野においてRFID(Radio Frequency Identification)技術を用いた無線ICタグが使用されるようになっている。このような無線ICタグを用いて図書館に収蔵された書籍等を管理しようとする場合、無線ICタグが内蔵されたラベルを管理対象物に貼り付けるようなことが行われる。
【0003】
このような無線ICタグが内蔵されたラベルを作成する無線ICタグラベルプリンタでは、1枚に複数のラベルが設けられたラベル用紙に対して所定の画像を印刷するとともに内蔵された無線ICタグに対してデータの書き込みが行われる。
【0004】
このような無線ICタグラベルプリンタでは、所望の無線ICタグとのみ個別に通信が可能となるような各種方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
特許文献1には、近接した無線ICタグが連続して搬送される用紙に対し、リーダ/ライタと無線ICタグの反対側の位置に電波反射板を電波の波長に応じた適切な間隔をつけて設けることにより、振幅が増幅された強い合成波を与えて、所望の無線ICタグのみと個別に通信できるようにする無線ICタグラベルプリンタが開示されている。
【0006】
特許文献2には、複写紙などのように)複数毎積層したシートの各々に付属する無線ICタグについて、これら無線ICタグのアンテナを各々固有のサイズとしておき、電波の出力強度を変えることで各シート上のタグと個別に通信できるようにする技術が開示されている。
【0007】
上記のような従来技術は、1つの無線ICタグに対して1つのリーダ/ライタにより通信を行ってデータの読み取りまたは書き込みを行うものである。そのため、より高速に無線ICタグへのデータの書き込みを行うため、複数のリーダ/ライタにより1枚のラベル用紙に設けられた複数の無線ICタグに対して1対1でデータの書き込みを行うようにすることが考えら得る。
【0008】
ここで、無線ICタグにデータを書き込みする場合、先ず無線ICタグのID情報(識別情報)を取得する必要がある。しかし、複数の無線ICタグが設けられた1枚のラベル用紙から、無線ICタグに対応した複数のリーダ/ライタにより無線ICタグのID情報を読み取とろうとした場合、隣接する無線ICタグのID情報も読み取ってしまう可能性がある。
【0009】
特に、一度に作成するラベルの数を増やそうとすると、隣接する無線ICタグとの間の距離が短いものとなり、このような誤認識が発生し易くなる。また、ラベル用紙をリーダ/ライタに対応する位置に停止する際、位置ずれ、用紙の傾き等が発生することにより、各無線ICタグと各リーダ/ライタとの位置関係がかならずしも正確な位置関係とならない場合もある。その結果、1つのリーダ/ライタにより複数のID情報が読み取られて、そのリーダ/ライタがどのID情報が担当すべき無線ICタグのID情報なのか判定することができなくなってしまう可能性がある。
【0010】
【特許文献1】特開2005−328259号公報
【特許文献2】特開2006−185373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来技術では、複数の無線ICタグが配置された媒体に対して、複数のリーダ/ライタにより各無線ICタグの識別情報を読み取る場合に、各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグの識別情報を特定することができない可能性があるという問題点があった。
【0012】
上記で説明した特許文献1の無線ICタグラベルプリンタも、所望の無線ICタグとのみ個別に通信を行おうとするものであるが、無線ICタグラベルを挟んでリーダ/ライタと対向する位置に、電波の波長に応じた適切な間隔をつけて電波反射板を設ける必要があり、装置がその分大掛かりになってしまうというデメリットがある。
【0013】
本発明の目的は、複数の無線ICタグが配置された媒体に対して、複数のリーダ/ライタにより各無線ICタグの識別情報を読み取る場合でも、各無線ICタグの識別情報を確実に判定することができる無線ICタグ読取書込装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[無線ICタグ読取書込装置]
上記目的を達成するために、本発明の無線ICタグ読取書込装置は、1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込装置であって、
前記複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられ、対応する無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取る複数の読取手段と、
前記複数の読取手段により読み取られた読み取り結果に基づいて、前記複数の読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報をそれぞれ判定する判定手段とを有する。
【0015】
本発明では、複数の読取手段により複数の無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取り、その結果に基づいて各読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報を判定するようにしているので、複数の無線ICタグが配置された媒体に対して、複数のリーダ/ライタにより各無線ICタグの識別情報を読み取る場合でも、各無線ICタグの識別情報を確実に判定することができる。
【0016】
好ましくは、前記判定手段は、ある読取手段の周囲に位置する他の読取手段の読み取り結果に基づいて、当該読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報を判定する。
【0017】
本発明によれば、各読取手段による読み取り結果だけでなく、その読取手段の周囲に位置する他の読取手段による読み取り結果に基づいて、その読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報を判定するようにしているので、各読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報を確実に判定することができる。
【0018】
好ましくは、前記判定手段は、ある読取手段により複数の無線ICタグの識別情報が読み取られた場合、より低い出力電波強度でも読み取り可能な識別情報を当該読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報として優先的に判定する。
【0019】
好ましくは、前記判定手段は、ある読取手段により複数の無線ICタグの識別情報が読み取られた場合、周囲に位置する他の読取手段がより低い出力電波強度でも読み取り可能な識別情報を当該読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報から除いて判定する。
【0020】
好ましくは、前記判定手段は、ある無線ICタグの識別情報が複数の読取手段により読み取られた場合、その識別情報は、当該識別情報しか読み取れなかった読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報であるものとして優先的に判定する。
【0021】
好ましくは、前記複数の読取手段は、それぞれ、ある出力電波強度により複数の無線ICタグの識別情報が読み取られた場合に、出力電波強度を下げて読み取りを行う。
【0022】
[無線ICタグ読取書込方法]
本発明の無線ICタグ読取書込方法は、1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込方法であって、
前記複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられた複数の読取手段により、対応する無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取り、
前記複数の読取手段により読み取られた読み取り結果に基づいて、前記複数の読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報をそれぞれ判定する。
【0023】
[プログラム]
本発明のプログラムは、1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられた複数の読取手段により、対応する無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取るステップと、
前記複数の読取手段により読み取られた読み取り結果に基づいて、前記複数の読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報をそれぞれ判定するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、複数の無線ICタグが配置された媒体に対して、複数の読取手段により各無線ICタグの識別情報を読み取る場合でも、各無線ICタグの識別情報を確実に判定することができるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態の無線ICタグ読取書込装置10の概略構成を示す図である。
【0026】
本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10は、図2に示すようなラベル用紙40に設けられた複数の無線ICタグ(無線集積回路素子)に対してデータの書き込みを行ったり、書き込まれたデータの読み取りを行う。無線ICタグは、無線通信手段と、この無線通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段とを有する記憶媒体として機能する。
【0027】
このラベル用紙40は、無線ICタグを内蔵した複数のラベル41a〜41oから構成されている。そして、この複数のラベル41a〜41oには、それぞれ、無線ICタグが内蔵されている。以下の説明では、ラベル41a〜41oに内蔵されている無線ICタグのID情報(識別情報)が、それぞれ“a”〜“o”であるものとして説明する。
【0028】
そして、本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10は、ラベル用紙40の搬送路の途中にリーダ/ライタユニット11を備えていて、搬送されてきたラベル用紙40は、このリーダ/ライタ11上の所定の位置に一旦停止するようになっている。
【0029】
リーダ/ライタユニット11は、図3に示すように、ラベル用紙40に内蔵された複数の無線ICタグに対応した複数のリーダ/ライタ21A〜21Oにより構成されている。そして、リーダ/ライタ21A〜21Oの間には、それぞれ、電波を遮蔽するための電波遮蔽板22が設けられている。
【0030】
本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10では、ラベル用紙40は、図4に示すような方向で搬送され、リーダ/ライタユニット11上の所定の位置に停止するよう制御される。
【0031】
無線ICタグ読取書込装置10は、図5に示されるように、CPU12、メモリ13、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置14、ネットワークを介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IF)15、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UI)装置16、リーダ/ライタユニット11を有する。これらの構成要素は、制御バス17を介して互いに接続されている。
【0032】
CPU12は、メモリ13または記憶装置14に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、無線ICタグ読取書込装置10の動作を制御する。
【0033】
なお、本実施形態では、CPU12は、メモリ13または記憶装置14内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU12に提供することも可能である。
【0034】
図6は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される無線ICタグ読取書込装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0035】
本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10は、図6に示されるように、リーダ/ライタユニット11と、読み取り結果格納部31と、ID判定部32とを有している。
【0036】
リーダ/ライタユニット11は、図3に示したように、複数のリーダ/ライタ21A〜21Oにより構成されている。そして、この複数のリーダ/ライタ21A〜21Oは、ラベル用紙40に内蔵された複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられ、対応する無線ICタグのID情報を異なる出力電波強度により複数回読み取る。本実施形態では、出力電波強度を100%、75%、50%、25%という4段階に変化させて、ID情報の読み取りを4回行う。
【0037】
読み取り結果格納部31は、複数のリーダ/ライタ21A〜21Oによる読み取り結果を格納する。この読み取り結果格納部31により格納される読み取り結果の一例を図7に示す。
【0038】
図7に示す例では、リーダ/ライタ21A〜21Oの位置を、それぞれ位置A〜位置Oとして表現している。
【0039】
そして、この読み取り結果には、リーダ/ライタ21A〜21Oが出力電波強度を100%、75%、50%、25%と段階的に変化させた場合に読み取ることができたID情報が、ID検出強度毎に記録される。
【0040】
ここで、ID検出強度とは、そのID情報がいかに大きな強度(つまり弱い電波出力電波強度)で検出されたかを示す指数であり、図8に示すような関係となっている。
【0041】
つまり、出力電波強度が25%でも読み取りが可能であったID情報はID検出強度が100%であるものと設定する。逆に、出力電波強度を100%にしなければ読み取りが不可能であったID情報はID検出強度が25%であるものと設定する。
【0042】
図7に示す例では、ラベル用紙40とリーダ/ライタユニット11との位置関係にずれが生じていないため、検出された全てのID情報のID検出強度が100%となっている。
【0043】
ID判定部32は、リーダ/ライタ21A〜21Oより読み取られた読み取り結果に基づいて、リーダ/ライタ21A〜21Oが担当すべき無線ICタグのID情報をそれぞれ判定する。
【0044】
また、ID判定部32は、あるリーダ/ライタ単独の読み取り結果だけでなく、あるリーダ/ライタの周囲に位置する他のリーダ/ライタの読み取り結果に基づいて、当該リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグの識別情報を判定する。
【0045】
具体的には、ID判定部32は、あるリーダ/ライタにより複数の無線ICタグのID情報が読み取られた場合、より低い出力電波強度でも読み取り可能なID情報を当該リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報として優先的に判定する。
【0046】
また、ID判定部32は、あるリーダ/ライタにより複数の無線ICタグのID情報が読み取られた場合、周囲に位置する他のリーダ/ライタがより低い出力電波強度でも読み取り可能なID情報を当該リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報から除いて判定する。
【0047】
さらに、ID判定部32は、ある無線ICタグのID情報が複数のリーダ/ライタにより読み取られた場合、そのID情報は、当該ID情報しか読み取れなかったリーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報であるものとして優先的に判定する。
【0048】
次に、本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10の動作を図面を参照して詳細に説明する。
図9は、本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10の動作を説明するためのフローチャートである。
ラベル用紙40が搬送されてきてリーダ/ライタユニット11上で停すると、リーダ/ライタユニット11の各リーダ/ライタ21A〜21Oは、出力電波強度を25%〜100%の間で段階的に変化させて無線ICタグのID情報を読み取って検出する(ステップS101)。リーダ/ライタユニット11により読み取られた読み取り結果は、読み取り結果格納部31に格納される。
【0049】
すると、ID判定部32は、先ず、読み取り結果格納部31に格納された読み取り結果の中で、他のID情報よりも検出強度が低いID情報を候補から外す(ステップS102)。つまり、ID判定部32は、1つのリーダ/ライタにより読み取られた複数のID情報のうち、他のID情報よりも検出強度の低いID情報を、担当すべきID情報の候補から外す。
【0050】
次に、ID判定部32は、あるリーダ/ライタにおける読み取り結果のうち、他のリーダ/ライタにおいて、より高い検出強度が得られたID情報を候補から外す(ステップS103)。例えば、あるリーダ/ライタにおいて、ID検出強度50%で検出されたID情報がある場合、他のリーダ/ライタにおいてそのID情報がID検出強度75%で検出されている場合、そのID情報を選択対象から除くようにする。
【0051】
そして、ID判定部32は、リーダ/ライタ21A〜21Oの読み取り結果の中で、単独で読み取られたID情報をそのリーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報として確定する(ステップS104)。
【0052】
さらに、ID判定部32は、他のリーダ/ライタにおいて担当すべき無線ICタグのID情報として確定したID情報は、読み取り結果から外す(ステップS105)。
【0053】
そして、このステップS102〜S105の処理が、全てのリーダ/ライタ21A〜21Oが担当すべき無線ICタグのID情報が確定するまで繰り返される(ステップS106)。
【0054】
このような処理が行われることにより、1つのリーダ/ライタによって複数のID情報が検出された場合でも、全てのリーダ/ライタ21A〜21Oが担当すべき無線ICタグのID情報を確定することができる。
【0055】
次に、上記のような処理によって各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていく様子の具体例を図10〜図16に示す。
【0056】
先ず、ラベル用紙40が規定の位置から右方向にずれた場合の様子を図10に示す。この場合、位置F、G、H、・・・等において、ID検出強度が75%のID情報と、25%のID情報という2つのID情報が検出されている。しかし、ID検出強度が25%のID情報については、図9のフローチャートに示したステップS102の判定基準に基づいて、選定対象から外される。その結果、位置A〜位置Oにおいて、担当すべきID情報は1つに特定される。
【0057】
次に、ラベル用紙40が、規定の位置から右上方向にずれた場合の様子を図11に示す。この場合、位置A、B、C、・・・等において、ID検出強度が75%のID情報と、25%のID情報という2つのID情報が検出されている。しかし、ID検出強度が25%のID情報については、図9のフローチャートに示したステップS102の判定基準に基づいて、選定対象から外される。その結果、位置A〜位置Oにおいて、担当すべきID情報は1つに特定される。
【0058】
次に、ラベル用紙40が、規定の位置から上方向に大きくずれた場合の様子を図12に示す。この場合、位置A、B、C、・・・等において、ID検出強度が50%のID情報が2つ検出されている。このような場合には、図9のフローチャートに示したステップS104の判定基準により、単独で読み取られたID情報はそのリーダ/ライタの担当すべき無線ICタグのID情報として確定する。そして、ステップS105の判定基準により、他のリーダ/ライタにおいて確定したID情報は選択対象から外される。例えば、位置Eにおいて検出されたID情報は“e”のみであるため、位置Eのリーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのIC情報は“e”に確定する。その結果、位置Dでは、位置Eのリーダ/ライタにおいて確定したID情報“e”が選択対象から外され、残ったID情報“d”が担当すべき無線ICタグのIC情報として確定される。そして、他のリーダ/ライタにおける読み取り結果においても順次、担当すべき無線ICタグのIC情報が確定されていく。その結果、位置A〜位置Oにおいて、担当すべきID情報は1つに特定される。
【0059】
次に、ラベル用紙40が、右方向に傾いた場合の様子を図13に示す。この場合、位置A、B、C、・・・等において、ID検出強度が異なる2つのID情報が検出されている。しかし、図9のフローチャートに示したステップS102の判定基準に基づいて、よりID検出強度が強いID情報が選択されるため、位置A〜位置Oにおいて、担当すべきID情報は1つに特定される。
【0060】
次に、図14に示すような、ラベル用紙40よりも小型のラベル用紙42が用いられた場合の具体例について説明する。このラベル用紙42には、6つの無線ICタグのみが設けられていて、ID情報は、それぞれ“b”、“c”、“d”、“g”、“h”、“i”となっているものとする。
【0061】
図15は、このような小型のラベル用紙42が、規定の位置から上方向にずれた場合の様子を示したものである。この場合、位置A、D、G、Iにおいて、1つのID情報が検出され、B、C、G、Hにおいて、ID検出強度が75%のID情報と、25%のID情報という2つのID情報が検出されている。このような場合、ID情報“b”については、位置Aと位置Bの両方において検出されているが、位置AにおいてはID検出強度が25%であり、位置BにおいてはID検出強度が75%である。そのため、ID情報“b”については、よりID検出強度が強い位置Bにおいて、担当すべき無線ICタグのID情報として確定する。
【0062】
図16は、このような小型のラベル用紙42が、右方向に傾いた場合の様子を示したものである。この場合、位置A、Jにおいて、1つのID情報が検出され、B、C、D、G、H、Iにおいて、ID検出強度が異なる2つのID情報が検出されている。このような場合、ID情報“b”については、位置Aと位置Bの両方において検出されているが、位置AにおいてはID検出強度が50%であり、位置BにおいてはID検出強度が75%である。そのため、ID情報“b”については、よりID検出強度が強い位置Bにおいて、担当すべき無線ICタグのID情報として確定する。同様にして、ID情報“c”については位置Cにおいて確定し、ID情報“d”については位置Dにおいて確定する。さらに、ID情報“g”、“h”、“i”についても、同様な判定基準に基づいて、位置G、H、Iにそれぞれ確定する。
【0063】
なお、上記の説明では、リーダ/ライタユニット11を構成するリーダ/ライタ21A〜21Oは、新たなラベル用紙40が搬送されてくると4段階(100%、75%、50%、25%)の出力電波強度でID情報を読み取って検出を行うものとして説明している。しかし、ラベル用紙40が、規定の位置にほぼずれずに停止したような場合まで常に4回の読み取り動作を行ったのでは、無駄な処理を行っていることになる。そのため、読み取り回数を減らして処理時間を短縮するために、先ず出力電波強度100%でID情報を読み取り、複数のID情報が検出された場合にのみ、順次出力電波強度を下げてID情報の検出を行うようにしてもよい。
【0064】
つまり、リーダ/ライタ21A〜210は、それぞれ、ある出力電波強度により複数の無線ICタグのID情報が読み取られた場合に、出力電波強度を下げて読み取りを行うようにしてもよい。
【0065】
このような方法によりID情報の検出を行う場合の無線ICタグ読取書込装置10の動作を図17のフローチャートに示す。
この場合、リーダ/ライタ21A〜21Oは、それぞれ、出力電波強度100%でID情報の検出を行い(ステップS201)、複数のID情報が検出されるか他のリーダ/ライタにおいても同じID情報が検出された場合のみ(ステップS202においてYes)、出力電波強度75%でID情報の検出を行う(ステップS203)。そして、複数のID情報が検出されるか他のリーダ/ライタにおいても同じID情報が検出された場合のみ(ステップS204においてYes)、出力電波強度50%でID情報の検出を行う(ステップS205)。同様にして、複数のID情報が検出されるか他のリーダ/ライタにおいても同じID情報が検出された場合のみ(ステップS206においてYes)、出力電波強度25%でID情報の検出を行う(ステップS207)。
【0066】
リーダ/ライタ21A〜21Oは、このような方法でID情報の読み取りを行うことにより、読み取り回数を減らすことが可能となる。
【0067】
本実施形態の無線ICタグ読取書込装置10では、リーダ/ライタ21A〜21Oにより複数の無線ICタグのID情報を異なる出力電波強度により複数回読み取り、その結果に基づいて各リーダ/ライタ21A〜21Oが担当すべき無線ICタグのID情報を判定するようにしている。その結果、ラベル用紙40が規定の停止位置からずれた場所で停止してしまったり、傾いてしまった場合でも、リーダ/ライタ21A〜21Oが担当すべき無線ICタグのID情報を確実に判定することができる。
【0068】
[変形例]
上記実施形態では、複数の無線ICタグが設けられた媒体としてラベル用紙40、42を使用する場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の無線ICタグが設けられた他の媒体に対して書き込みや読み取りを行う場合でも同様に本発明を適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態の無線ICタグ読取書込装置の構成を示すブロック図である。
【図2】複数の無線ICタグを内蔵したラベル用紙40の一例を示す図である。
【図3】複数のリーダ/ライタ21A〜21Oにより構成されたリーダ/ライタユニット11を示す図である。
【図4】ラベル用紙40がリーダ/ライタユニット11上の所定の位置に搬送される様子を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の無線ICタグ読取書込装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態の無線ICタグ読取書込装置10の機能構成を示すブロック図である。
【図7】読み取り結果格納部31により格納される読み取り結果の一例を示す図である。
【図8】ID検出強度と電波出力電波強度との関係を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態の無線ICタグ読取書込装置10の動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていくアルゴリズムの一例を示す図である。
【図11】各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていくアルゴリズムの一例を示す図である。
【図12】各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていくアルゴリズムの一例を示す図である。
【図13】各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていくアルゴリズムの一例を示す図である。
【図14】小型のラベル用紙42の外観を示す図である。
【図15】各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていくアルゴリズムの一例を示す図である。
【図16】各リーダ/ライタが担当すべき無線ICタグのID情報が確定されていくアルゴリズムの一例を示す図である。
【図17】リーダ/ライタによる読み取り回数を減らすようにした方法によりID情報の検出を行う場合の無線ICタグ読取書込装置10の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 無線ICタグ読取書込装置
11 リーダ/ライタユニット
12 CPU
13 メモリ
14 記憶装置
15 通信インタフェース(IF)
16 ユーザインタフェース(UI)装置
17 制御バス
21A〜21O リーダ/ライタ
22 電波遮蔽板
31 読み取り結果格納部
32 ID判定部
40 ラベル用紙
41a〜41o ラベル
42 ラベル用紙
S101〜S106 ステップ
S201〜S207 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込装置であって、
前記複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられ、対応する無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取る複数の読取手段と、
前記複数の読取手段により読み取られた読み取り結果に基づいて、前記複数の読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報をそれぞれ判定する判定手段と、
を有する無線ICタグ読取書込装置。
【請求項2】
前記判定手段は、ある読取手段の周囲に位置する他の読取手段の読み取り結果に基づいて、当該読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報を判定する請求項1記載の無線ICタグ読取書込装置。
【請求項3】
前記判定手段は、ある読取手段により複数の無線ICタグの識別情報が読み取られた場合、より低い出力電波強度でも読み取り可能な識別情報を当該読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報として優先的に判定する請求項2記載の無線ICタグ読取書込装置。
【請求項4】
前記判定手段は、ある読取手段により複数の無線ICタグの識別情報が読み取られた場合、周囲に位置する他の読取手段がより低い出力電波強度でも読み取り可能な識別情報を当該読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報から除いて判定する請求項2または3記載の無線ICタグ読取書込装置。
【請求項5】
前記判定手段は、ある無線ICタグの識別情報が複数の読取手段により読み取られた場合、その識別情報は、当該識別情報しか読み取れなかった読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報であるものとして優先的に判定する請求項2から4のいずれか1項記載の無線ICタグ読取書込装置。
【請求項6】
前記複数の読取手段は、それぞれ、ある出力電波強度により複数の無線ICタグの識別情報が読み取られた場合に、出力電波強度を下げて読み取りを行う請求項1から5のいずれか1項記載の無線ICタグ読取書込装置。
【請求項7】
1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込方法であって、
前記複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられた複数の読取手段により、対応する無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取り、
前記複数の読取手段により読み取られた読み取り結果に基づいて、前記複数の読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報をそれぞれ判定する無線ICタグ読取書込方法。
【請求項8】
1つの媒体に設けられた複数の無線ICタグに対してデータの読み取りおよび書き込みを行うための無線ICタグ読取書込方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記複数の無線ICタグが設けられている位置に対応した位置にそれぞれ設けられた複数の読取手段により、対応する無線ICタグの識別情報を異なる出力電波強度により複数回読み取るステップと、
前記複数の読取手段により読み取られた読み取り結果に基づいて、前記複数の読取手段が担当すべき無線ICタグの識別情報をそれぞれ判定するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−70041(P2009−70041A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236354(P2007−236354)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】