説明

無線LANシステム

【課題】ユーザの利便性を高めることができる無線LANシステムを提供する。
【解決手段】無線LAN端末200との無線通信を行う無線LANアクセスポイントAPが照明器具に設けられる無線LANシステムにおいて、照明器具は、光源としてLED素子150を使用するLED電球100を具備しており、無線LANアクセスポイントAPは、LED電球100に内蔵される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANによる無線通信を行う無線LANシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANシステムでは、無線LAN端末と無線LANアクセスポイントとが無線LANによる無線通信を行う。無線LANアクセスポイントには、インフラ側の外部ネットワークとの通信を行うためのLANケーブルと、電力供給を受けるための電源ケーブルとが接続されるため、室内の景観を損なうといった問題や、無線LANアクセスポイントを設置可能な場所が限られるといった問題がある。
【0003】
このような問題点に鑑みて、部屋の天井にある照明器具に無線LANアクセスポイントが取り付けられる無線LANシステムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の無線LANシステムでは、照明器具に取り付けられた無線LANアクセスポイントは、照明器具が電力供給を受けるための電力線を用いた電力線通信(PLC)によって、インフラ側の外部ネットワークとの通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/007514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の無線LANシステムでは、照明器具及び無線LANアクセスポイントが別体であるため、照明器具及び無線LANアクセスポイントのそれぞれをユーザが設置する手間が生じ、ユーザの利便性を高める点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザの利便性を高めることができる無線LANシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。本発明に係る無線LANシステムの特徴は、無線LAN端末(無線LAN端末200)との無線通信を行う無線LANアクセスポイント(無線LANアクセスポイントAP)が照明器具に設けられる無線LANシステムであって、前記照明器具は、光源としてLED素子(LED素子150)を使用するLED電球(LED電球100)を具備しており、前記無線LANアクセスポイントは、前記LED電球に内蔵されることを要旨とする。
【0008】
このような特徴によれば、LED電球は発熱量が小さく且つ長寿命であるという特性を活用して、無線LANアクセスポイントをLED電球に内蔵している。これにより、LED電球をソケットに差し込めば無線LAN環境を構築することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0009】
本発明に係る無線LANシステムの他の特徴は、上記特徴に係る無線LANシステムにおいて、前記照明器具は、光照射角が制限された光照射パターンで光を照射し、前記無線LANアクセスポイントは、前記光照射パターンと一致あるいは略一致する電波放射パターンで電波を放射するように構成されることを要旨とする。
【0010】
このような特徴によれば、無線LANアクセスポイントは、光照射角が制限された光照射パターンと一致あるいは略一致する電波放射パターンで電波を放射するため、他の無線LANアクセスポイントからの電波に干渉の影響を与える可能性を低減できる。ここで、上記特徴のように、照明器具と無線LANアクセスポイントとが一体化されているので、光照射パターンと電波放射パターンとを予め一致あるいは略一致させることができる。また、無線LAN端末を所持するユーザにとっては、無線LANアクセスポイントの通信可能範囲を、照明器具から光が照射される範囲として視認することができる。
【0011】
本発明に係る無線LANシステムの他の特徴は、上記特徴に係る無線LANシステムにおいて、前記無線LANアクセスポイントは、指向性アンテナ(指向性アンテナ170)を具備することを要旨とする。
【0012】
このような特徴によれば、指向性アンテナによって、光照射パターンと一致あるいは略一致する電波放射パターンで電波を放射可能になる。
【0013】
本発明に係る無線LANシステムの他の特徴は、上記特徴に係る無線LANシステムにおいて、前記LED電球は、前記無線LANアクセスポイントは、アンテナ(無指向性アンテナ170’)と、前記アンテナからの電波のうち特定方向(方向D1)とは異なる方向への電波を吸収するための電波吸収部(電波吸収部181)とを具備することを要旨とする。
【0014】
このような特徴によれば、アンテナが指向性を有していない構成であっても、照明器具の光照射パターンと無線LANアクセスポイントの電波放射パターンとを一致あるいは略一致させることができる。
【0015】
本発明に係る無線LANシステムの他の特徴は、上記特徴に係る無線LANシステムにおいて、前記LED電球は、前記LED素子を駆動するLED駆動回路(LED駆動回路140)と、少なくとも前記LED駆動回路に電力を供給する電源回路(電源回路130)と、前記LED素子、前記LED駆動回路、及び前記電源回路を少なくとも収納する筐体(筐体110)とを具備し、前記無線LANアクセスポイントは、前記筐体に収納されるアンテナと、前記筐体に収納され、前記アンテナと接続され、且つ前記電源回路から電力供給を受ける無線LAN通信回路(無線LAN通信回路160)とを具備することを要旨とする。
【0016】
このような特徴によれば、LED電球内に無線LANアクセスポイントを設け、LED駆動回路への電力供給を行う電源回路と、無線LAN通信回路への電力供給を行う電源回路とを共通化しており、部品点数及び製造コストを低減可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ユーザの利便性を高めることができる無線LANシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る無線LANシステムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るLED電球のブロック構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るLED電球の各ブロックのレイアウトを説明するための概略レイアウト図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線LANシステムの応用例を示す全体概略構成である。
【図5】その他の実施形態に係るリフレクタ周辺の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施形態について、(1)無線LANシステムの構成、(2)LED電球の構成、(3)応用例、(4)実施形態の効果、(5)変形例、(6)その他の実施形態の順に説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0020】
(1)無線LANシステムの構成
図1は、本実施形態に係る無線LANシステムの全体概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る無線LANシステムは、無線LAN端末200との無線通信を行う無線LANアクセスポイントAPが照明器具に設けられる無線LANシステムであって、照明器具は、光源としてLED素子150(図2及び図3参照)を使用するLED電球100を具備しており、無線LANアクセスポイントAPは、LED電球100に内蔵される。
【0022】
無線LAN端末200は、無線LAN通信機能を有するタブレット機器やノートPC、カード型の端末である。なお、無線LAN通信とは、例えばIEEE82.11規格に従った通信を意味する。
【0023】
LED電球100は、天井10の開口部11に設けられたソケット21に差し込まれる。ソケット21は、天井10に設けられた電力線22に接続されており、電力線22から電力供給を受ける。本実施形態では、LED電球100に内蔵された無線LANアクセスポイントAPは、電力線22を用いた電力線通信(PLC)によって、インフラ側の外部ネットワークとの通信を行う。
【0024】
LED電球100は、光指向性を有しており、光照射角が制限された光照射パターンで光を照射する。すなわち、LED電球100は、スポット照明として構成されている。LED電球100の光照射角θは、例えば90°未満である。なお、光照射角θとは、LED電球100からの光度が一様に分布するケースでは、光の広がる角度を意味する。ただし、外側の光度が低いケースでは、光度が非常に低い部分を除いた光の広がる角度を光照射角θとしてもよい。
【0025】
LED電球100に内蔵された無線LANアクセスポイントAPは、電波指向性を有しており、LED電球100の光照射パターンと一致あるいは略一致する電波放射パターンで電波を放射するように構成される。ここで略一致とは、例えば光照射角θ±30°程度の範囲を意味する。
【0026】
(2)LED電球の構成
次に、本実施形態に係るLED電球100の構成について、(2.1)ブロック構成、(2.2)レイアウトの順に説明する。
【0027】
(2.1)ブロック構成
図2は、LED電球100のブロック構成を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、LED電球100は、ソケット21と口金111(図3参照)とを介して電力線22に接続される電力信号処理回路121と、電力信号処理回路121に接続されたPLC信号処理回路122及び電源回路130と、PLC信号処理回路122及び電源回路130に接続された無線LAN通信回路160と、無線LAN通信回路160に接続された指向性アンテナ170と、電源回路130に接続されたLED駆動回路140と、LED駆動回路140に接続されたLED素子150とを具備する。
【0029】
電力信号処理回路121、PLC信号処理回路122、電源回路130、及び無線LAN通信回路160のそれぞれは、例えば半導体集積回路(すなわち、IC)として構成される。
【0030】
電力信号処理回路121及びPLC信号処理回路122は、電力線通信(PLC)を行うPLC回路120を構成する。PLC回路120、無線LAN通信回路160、及びアンテナ170は、無線LAN端末200との無線LAN通信を行う無線LANアクセスポイントAPを構成する。
【0031】
電力信号処理回路121は、電力線22からの電力信号に重畳されているPLC信号(下り方向の信号)を抽出してPLC信号処理回路122に出力する処理と、PLC信号処理回路122からのPLC信号(上り方向の信号)を電力信号に重畳する処理とを行う。
【0032】
電源回路130は、PLC信号処理回路122を通過した電力信号から電源電力を生成してLED駆動回路140及び無線LAN通信回路160に出力する。LED駆動回路140は、電源回路130からの電源電力によって動作し、LED素子150を駆動する。
【0033】
PLC信号処理回路122は、電力信号処理回路121からのPLC信号(下り方向の信号)に対する信号処理を行い、その結果を無線LAN通信回路160に出力する。また、PLC信号処理回路122は、無線LAN通信回路160からの信号(上り方向の信号)に対する信号処理を行い、その結果を電力信号処理回路121に出力する。
【0034】
無線LAN通信回路160は、アンテナ170を介して無線LAN信号を送受信する。具体的には、無線LAN通信回路160は、PLC信号処理回路122からの信号(下り方向の信号)を無線LAN信号に変換して送信する。また、無線LAN通信回路160は、アンテナ170が受信した無線LAN信号(上り方向の信号)を処理してPLC信号処理回路122に出力する。
【0035】
指向性アンテナ170は、誘電体アンテナ又はフラクタルアンテナ等のアンテナであり、光照射角と一致するような電波放射角となるように構成されている。また、無線LAN通信回路160は、電波放射パターンが光照射パターンに一致するような送信電力に予め設定されている。
【0036】
(2.2)レイアウト
図3は、LED電球100の各ブロックのレイアウトを説明するための概略レイアウト図である。
【0037】
図3に示すように、図2を用いて説明した各ブロックは、LED電球100の筐体110内に収納される。筐体110は、ソケット21に差し込まれる口金111と、口金111の端部からラッパ状に広がるラッパ状カバー1121と、ラッパ状カバー1121の開口部に取り付けられた光透過性カバー1122とを具備する。ラッパ状カバー1121及び光透過性カバー1122は、球状カバー112を構成する。
【0038】
PLC回路120及び電源回路130は、口金111の内側に配置される。ここではPLC回路120が電源回路130よりも照射方向D1側に配置されているが、位置関係が逆であってもよい。
【0039】
LED駆動回路140及び無線LAN通信回路160は、ラッパ状カバー1121の内側に配置される。また、球状カバー112の内側には、LED駆動回路140及び無線LAN通信回路160よりも照射方向D1側において、LED素子150からの光を照射方向D1に向けて照射するためのリフレクタ180が配置される。リフレクタ180は、半球状に形成されており、LED素子150及び指向性アンテナ170を収容する。なお、指向性アンテナ170は、リフレクタ180の側方に配置されもよく、リフレクタ180の裏側に配置されもよい。
【0040】
(3)応用例
図4は、上述した実施形態に係る無線LANシステムの応用例を示す全体概略構成である。本応用例では、博物館や美術館のように、展示物毎にスポット照明が設けられるケースを想定している。
【0041】
図4に示すように、本応用例では、スポット照明としてのLED電球100(100#1〜100#3)が相互に近接して設置されている。無線LAN端末200は、展示物の前であってLED電球100から光が照射されている位置において、当該LED電球100に内蔵された無線LANアクセスポイントAPからの電波を受信し、当該無線LANアクセスポイントAPとの無線LAN通信を開始する。無線LANアクセスポイントAPは、対応する展示物に関する情報を予め記憶しており、当該情報を無線LAN端末200に送信する。そして、無線LAN端末200は、展示物に関する情報を受信して表示する。
【0042】
(4)実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、LED電球100は発熱量が小さく且つ長寿命であるという特性を活用して、無線LANアクセスポイントAPをLED電球100に内蔵している。これにより、LED電球100をソケット21に差し込めば無線LAN環境を構築することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、無線LANアクセスポイントAPは、光照射角が制限された光照射パターンと一致あるいは略一致する電波放射パターンで電波を放射するため、他の無線LANアクセスポイントAPからの電波に干渉の影響を与える可能性を低減できる。ここで、LED電球100と無線LANアクセスポイントAPとが一体化されているので、光照射パターンと電波放射パターンとを予め一致あるいは略一致させることができる。また、無線LAN端末200を所持するユーザにとっては、無線LANアクセスポイントAPの通信可能範囲を、照明器具(LED電球100)から光が照射される範囲として視認できる。
【0044】
さらに、本実施形態では、LED電球100内に無線LANアクセスポイントAPを設け、LED駆動回路140への電力供給を行う電源回路130と、無線LAN通信回路160への電力供給を行う電源回路130とを共通化しており、部品点数及び製造コストを低減可能になる。
【0045】
(5)変形例
図5は、上述した実施形態の変更例に係るリフレクタ180周辺の構成を示す概略断面図である。本変更例では、上述した実施形態のような指向性アンテナ170に代えて、無指向性アンテナ170’を使用している。
【0046】
図5に示すように、本変更例では、リフレクタ180の外側を覆い、無指向性アンテナ170’からの電波のうち方向D1とは異なる方向への電波を吸収するための電波吸収部181を具備する。
【0047】
このような構成では、LED素子150からの光はリフレクタ180での反射によって照射方向D1に向けて照射される。無指向性アンテナ170’からの電波は、リフレクタ180を通過するものの、電波吸収部181で吸収される。その結果、無指向性アンテナ170’からの電波は、照射方向D1に向かう部分が残ることになる。
【0048】
このように、本変更例によれば、無指向性アンテナ170’を用いる構成であっても、光照射パターンと電波放射パターンとを一致あるいは略一致させることができる。
【0049】
なお、電波吸収部181は、少なくとも出射方向D1(特定方向)に開口を有する形状であり、本変更例ではリフレクタ180の形状に合わせて半球状に形成されているが、円筒形状等の他の形状であっても良い。
【0050】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、無線LAN通信回路160は電波放射パターンが光照射パターンに一致するような送信電力に予め設定されていると説明したが、仮に床面での電波反射によって通信可能範囲が拡大してしまうケースでは、床面に電波吸収シートを設けてもよい。
【0052】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0053】
AP…無線LANアクセスポイント、10…天井、11…開口部、21…ソケット、22…電力線、100…LED電球、110…筐体、111…口金、112…球状カバー、120…PLC回路、121…電力信号処理回路、122…PLC信号処理回路、130…電源回路、140…LED駆動回路、150…LED素子、160…無線LAN通信回路、170…指向性アンテナ、170’…無指向性アンテナ、180…リフレクタ、181…電波吸収部、200…無線LAN端末、1121…ラッパ状カバー、1122…光透過性カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN端末との無線通信を行う無線LANアクセスポイントが照明器具に設けられる無線LANシステムであって、
前記照明器具は、光源としてLED素子を使用するLED電球を具備しており、
前記無線LANアクセスポイントは、前記LED電球に内蔵されることを特徴とする無線LANシステム。
【請求項2】
前記LED電球は、光照射角が制限された光照射パターンで光を照射し、
前記無線LANアクセスポイントは、前記光照射パターンと一致あるいは略一致する電波放射パターンで電波を放射するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線LANシステム。
【請求項3】
前記無線LANアクセスポイントは、指向性アンテナを具備することを特徴とする請求項2に記載の無線LANシステム。
【請求項4】
前記無線LANアクセスポイントは、
アンテナと、
前記アンテナからの電波のうち特定方向とは異なる方向への電波を吸収するための電波吸収部と
を具備することを特徴とする請求項2に記載の無線LANシステム。
【請求項5】
前記LED電球は、
前記LED素子を駆動するLED駆動回路と、
少なくとも前記LED駆動回路に電力を供給する電源回路と、
前記LED素子、前記LED駆動回路、及び前記電源回路を少なくとも収納する筐体とを具備し、
前記無線LANアクセスポイントは、
前記筐体に収納されるアンテナと、
前記筐体に収納され、前記アンテナと接続され、且つ前記電源回路から電力供給を受ける無線LAN通信回路とを具備することを特徴とする請求項1に記載の無線LANシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−100027(P2012−100027A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245436(P2010−245436)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】