説明

無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質を工業的用途及び商業的用途に用いる方法

本発明は、無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質を用いて特定の化合物を結合または検出する為の方法及び組成物を提供するものである。数ある用途の中には、バイオセンサーまたはその他の感覚装置及び浄化装置または濃縮装置における検出素子としての用法が含まれる。化学感覚性経路に関与する蛋白質の例としては、放臭物質結合蛋白質(OBP)、感覚付属蛋白質(SAP)、キイロショウジョウバエのTakeout蛋白質のオーソログ(TOL)、放臭物質受容体または味覚受容体(OR、GR、または総合してGPCR)、その他の蛇行性受容体、及び放臭物質分解酵素(ODE)が含まれる。これらの様々な等級の蛋白質が無脊椎動物の嗅覚および味覚両方の感覚システムに関与している。本発明は、エフェクター、結合パートナー、または化学感覚性経路に関与する蛋白質と相互作用をするその他の分子のような、分析対象を同定する為の方法及び組成物を提供するものである。センサーとして用いる為の方法は、検出メカニズムを一つまたは複数の無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質と連結し、その化学感覚性蛋白質に対するリガンドまたは結合パートナーのような分析対象がある場合に測定可能なシグナルを生成することからなる。精製用途の為に用いる方法は、複合混合物の中の特定の分析対象を単離する能力を有する化学感覚性蛋白質を利用することを伴う。したがって、本発明は、特定の分析対象の存在を同定し、そしてまた、工程または混合物から特定の分析対象を排除するか、またはそこに含ませたりする方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質を工業的用途及び商業的用途に用いる方法」と題する、2006年10月16日出願の米国特許出願公開第11/581889号明細書への優先権を主張するPCT出願であり、その米国特許出願公開第11/581889号明細書は、「嗅覚経路または化学感覚性経路に関与する蛋白質のエフェクターを単離する効率的な方法、及びこれらのエフェクターを用いて生物の嗅覚、化学感知性、または挙動を変化させる為の効率的な方法」と題する、2006年3月10日出願の米国特許公開出願第11/372777号明細書の一部継続出願であり、この米国特許出願公開第11/372777号明細書は、「機能的なG蛋白質共役受容体を単離し、活性なエフェクターを同定する効率的な方法、及び、嗅覚に関与する蛋白質を単離する効率的な方法、及び活性なエフェクターを単離し同定する効率的な方法」と題する、2002年3月26日出願の米国特許出願公開第10/106749号明細書の一部継続出願であり、この米国特許出願公開第10/106749号明細書は、「機能的なG蛋白質共役受容体を単離し、活性なエフェクターを同定する為の効率的な方法」と題する、2001年3月27日出願の米国特許仮出願番号第60/279168号の優先権を享受するものであって、この段落に記載したこれら出願のそれぞれは、参照することにより、それらの全てが本明細書に組み込まれるものである。本出願はまた、「機能的なG蛋白質共役受容体を単離し、活性なエフェクターを同定する為の効率的な方法、及び、嗅覚に関与する蛋白質を単離し、活性なエフェクターもしくは相互作用因子を同定する効率的な方法」と題する、2002年1月31日出願の米国特許仮出願番号第60/353392号の優先権も享受するものであって、該出願も、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本発明は全体として、無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質を、検出器、センサー、バイオセンサー及びその他のセンサー装置に用いる為の方法及び組成物に関するものである。このような一連の用途の一環として、本発明はまた、コレクションまたはアレイにした複数の化学感覚性蛋白質を用いることにより、検出対象となる特定の化学感覚性信号または分析対象を同定するための方法に関するものでもある。更に、本発明は、空気中または溶液中の複合混合物から問題の分析対象を検出し、単離し、精製する能力を有する精製装置を構築するために必要な方法及び手段を提供するものである。本発明で提示した各種技術は、分析対象の検出または分析対象が存在しないことの検出が望まれる様々な用途において実行可能なものである。
【0003】
本発明は、産業用、家庭用、食品安全、製薬、軍事、保安、精製、及びその他の用途に使用されるバイオセンサーまたはその他の装置に組み込むことができる。
【背景技術】
【0004】
電子鼻は、揮発性の化合物または分析対象を検出する化学センサーシステムである。電子鼻の技術は、医療の診断から環境モニタリングまでの幅広い用途で用いられているか、またはそれらの幅広い用途に向けて開発されている途上にある1−5。例えば、揮発性有機化合物(VOC)が存在することについての安価で信頼性のある検出器の開発は、特に急務である。揮発性有機化合物は、特定の固体または液体から気体として放出される。VOCの中には、短期的及び長期的に健康被害及び/または環境汚染の危険をもたらす化学物質が含まれ、その濃度は、屋外よりも屋内において常に(五倍もの)高濃度である。何千という数に上る広範囲な製品(ペンキ及びラッカー、ペンキの剥離剤、清掃用品、殺虫剤、建築資材及び備品、コピー機やプリンターなどの事務機器、修正液及び感圧複写コピー用紙、糊や接着剤を含むグラフィック材料やクラフト材料、マジック・インキ、写真現像液など)から、場合によっては有害となりうる化学物質が放出される。VOCは人間の疾病の信頼性のあるマーカーであることも実証されている6−13
【0005】
化学センサーの現行の生成方法の主な制約は、検出中の化合物を結合する認識素子である(図1)。電子鼻に現在用いられている認識素子は、主に導電性ポリマー認識素子に基づくものである。そのような制約を挙げると、例えばセンサードリフト(絶対較正がされていないこと)、感度及び選択性に限度があること、センサーの位置決め(高濃度の特定の分析対象への感度)、匂いの質と強度との間の関連の欠如、水またはその他の極性化合物(例えばEtOH)に対する感度、有効寿命に限度があること、そして高価であることなどがある。性能の変動により、データの再現性に難があることが多い。現行のセンサー技術にはもう一つ大きな制約があり、それは、利用可能なセンサーでは、構造的に関連のある化合物同士の区別ができないということである14−16。人工ポリマー認識素子に基づくセンサーもまた、複合混合物中で特定の分析対象を同定する能力は限られたものでしかないのが一般的である15、17、18。したがって、現行の制約の幾つかを解消できる、安価で、実用的で、高感度の認識素子は、センサー技術に大きく貢献するものとなりうる。
【0006】
バイオセンサーは、生体高分子の極めて鋭敏な分子認識特性を、検出可能なシグナルの生成と組み合わせることにより、複合混合物中における単一分子種の存在を判定する分析手段である。したがって、バイオセンサーは、前述の、生物学的手段によらないセンサー技術の致命的な欠陥、つまり、分析対象の特異性の欠如という問題を克服する。現在までのところ、バイオセンサーには、酵素または抗体が組み込まれている19−22
【0007】
本発明は、無脊椎動物由来の化学感覚システムを含む生体分子の多様性、多機能性、及び特異性を利用することにより、現行のセンサーの制約を克服するために必要な手段及び方法を提供するものである。この化学感覚システムには、同様の蛋白質とエフェクターを含む嗅覚システム及び味覚システムが含まれている23。本発明はまた、混合物、溶液または空気から、望ましい、もしくは望ましくない分析対象を選択的に精製し、同定し、または排除することに関するものでもある。
【0008】
昆虫の化学感覚システムに見られる分子多様性の豊かさは、薬学的スクリーニング、医学的診断、及び化学的検出などの広範な分野に応用が期待できる、未だ手つかずの価値ある資源である4、5、24、25。昆虫の化学感覚性の機構は、環境汚染物質または不純物を工業的過程で検出及び単離するため、環境または水の中の化合物または分子を検出するため、ならびに候補となる薬剤をスクリーニングすることが可能なバイオセンサー装置を構成するために応用可能である。効率的な化合物検出器の為の応用例は他にも幾つかあり、例えば、ガン及びその他の疾病を有する患者における、診断のための呼気成分の検出が含まれる5、6、24
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】最新の化学センサーの各部を示す図である。金属酸化膜に基づいたもの(例えば、MOSFET:金属酸化膜半導体電界効果トランジスター、またはCMOS:相補型金属酸化膜半導体)18及び圧電装置に基づいたもの18、106、107を含む、シグナル変換器及びレポーター・メカニズムの両方については、よく開発されたメカニズムが幾つか存在するが、認識素子には幾つかの制約がある(表1)。
【図2】新規なリガンド結合ドメインを有する化学感覚性蛋白質の生成を示す図である。その場合、このようなハイブリッド化学感覚性蛋白質を化学感覚性アレイにおいて用いて、新規な分析対象を認識することが可能である。
【図3】化学感覚性アレイへの結合の「フィンガープリント」の一例を示す図である。20個の潜在的なリガンドへの結合について試験した二つの異なる昆虫OBPについてのプレートアッセイのイメージである。各リガンドにつき、16μM、8μM及び4μMの三つの濃度で試験を行った。三角形は、相対的濃度を示している。対照のウェルは赤色で囲んでいる。インドールはOBPの一方を結合するがもう一方は結合しないことが分かった。これらのレーン(青色で強調した)は、更に詳細にプレートのイメージの下方に示されている。これらの結果により、特定の昆虫のOBPへの結合によりVOCの同定が可能であることが立証されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
他に明記のない限り、本文中で用いられる科学用語及び技術用語はすべて、本発明が属する分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有するものであるとする。一般に、本文中で用いられる用語と、以下に説明する分子生物学、分子遺伝学、生化学、物理化学、細胞培養、蛋白質化学及び核酸化学における実験手順とは、当該分野において周知であり一般に用いられているものである。組換え核酸法、真核生物形質変換、並びに細菌の培養及び形質変換には標準的な技術を用いる。酵素反応と精製手順は、別段の記載がない限り、メーカーの指示に従って行う。技術及び手順は、概して、当該分野の従来の方法によって実施している。一般的な参考文献には、 Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA、そして Ashburner, M., Drosophila: A Laboratory Manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., USAがある。コンビナトリアルケミストリー、合成化学、及び電気生理学で説明されている実験手順、並びに用語は、当該分野において周知であり一般に用いられているものを用いている。発明の開示内容全体を通じて、以下の用語は、他の指示がない限り、以下の意味を有するものとして理解されたい。
【0011】
「アロモン」は、一つの種に属する個体から別の種に属する個体へ送られる化学シグナルであり、そのシグナルの受け手の挙動を送り手に都合のよいように変化させる目的のものである。アロモンは通常、植物種により産生され、昆虫種の挙動に影響を与える。
【0012】
「分析対象」は、分析または検出が行われる物質、分子、化合物、化学的成分、またはその他の形態の物質をいう。一つの分析対象は、単一の化合物または複数の化合物の混合物により構成され得る。
【0013】
「生物情報学」は、バイオテクノロジーと、コンピューターを用いる、統計的な、かつ分析的な、または数学的な、最新の方法とを統合する研究分野である。
【0014】
「cDNA」は、相補的DNAのことであり、細胞内に発現したmRNAつまりメッセンジャーRNAのDNAコピーである。それゆえ、「cDNA」という用語は、遺伝子産物もしくは転写産物を意味する。
【0015】
「化学感覚体とは、昆虫種が香り及び/または味などの化学感覚性信号を検出することを可能にする、蛋白質及びエフェクターの集合体である。
【0016】
「化学感覚性蛋白質」とは、嗅覚システム及び味覚システムを含む化学感覚システムの蛋白質成分のことである。化学感覚性蛋白質は、可溶性、不溶性、膜結合性、細胞外、分泌性、または細胞内のものであり得る。
【0017】
「ドメイン」とは、特定の機能を有するかまたは特定の構造モチーフを示す、蛋白質の領域をいう。
【0018】
「エフェクター」とは、研究対象の化学感覚性蛋白質と相互作用を行う能力を有する、天然に生じるかまたは合成された分子または化合物をいう。エフェクターは、アゴニストでも、アンタゴニストでもよいし、そのどちらでもなくともよい。
【0019】
「ゲノミクス」とは、ゲノム全体をクローニングし分子の特徴づけを行うことをいう。
【0020】
「遺伝子組換え生物(GMO)」とは、(従来の品種改良によるアプローチではなく)遺伝子のスプライシングまたは分子生物学的技術を用いて、特定の遺伝的形質が発現するように遺伝子操作した生物をいう。
【0021】
「G蛋白質共役受容体(GPCR)」とは、細胞内で複数の三量体G蛋白質を結合する、フェロモンまたは放臭物質の蛇行受容体のことである。放臭物質受容体(OR)ともいう。
【0022】
「味覚受容体」、略して「GR」とは、昆虫の神経細胞の細胞膜の中に位置する細胞内構造物であり、生物が特定の味を知覚し始めることに関与するものであり、つまりは、「味覚受容体」により、生物は、様々な香りや味を感じ取ることができるようになる。「GPCR」とも呼ばれる。
【0023】
「ホモログ」とは、祖先が共通する遺伝子をいう。ホモログは、その祖先遺伝子と同じ機能を有するホモログであるオーソログと、その祖先遺伝子とは機能が異なるホモログであるパラログとに分かれる。
【0024】
「相同性」とは、二つ以上の遺伝子をコードするDNA配列の間または二つ以上の蛋白質を含むアミノ酸配列の間の、一つの遺伝子または蛋白質ファミリーにおけるような類似性の程度をいう。
【0025】
「疎水性」とは、特定の蛋白質または分子の、水への溶解度をいう。
【0026】
「IPM」とは、総合的有害生物管理のことであり、捕食生物や寄生生物のような天敵種と、その他の自然制御方法及び均衡のとれた化学殺虫剤の使用とを組み合わせることにより望ましくない種を制御することを目指す最新の手法である。
【0027】
「交信攪乱」とは、農業において極めて一般的に行われる害虫駆除方法のことであり、作物環境を性フェロモンで飽和させることにより、雄を混乱させ、雄が雌を探し出すことを妨げることである。
【0028】
「放臭物質結合蛋白質」、略して「OBP」は、典型的には疎水性である臭気を結合し、それらの臭気を、親水性の細胞外基質を通して、放臭物質受容体が位置する細胞表面にまで送ると考えられている、感覚組織中の蛋白質のことである。
【0029】
「放臭物質分解酵素」、略して「ODE」とは、情報物質、匂い、香り、味、またはその他の化学刺激物質を分解し、それにより、無脊椎動物由来の化学感覚システムの作用を再び高める酵素をいう。
【0030】
「放臭物質受容体」、略して「OR」とは、昆虫の神経細胞の細胞膜の中に位置する細胞内構造物であり、生物が特定の匂いを知覚し始めることに関与するものであり、つまりは、「放臭物質受容体」により、生物は、様々な香りや匂いを感じ取ることができるようになる。「GPCR」とも呼ばれる。
【0031】
「放臭物質」とは、匂い、香りまたは臭気をいう。
【0032】
「オーソログ」とは、他の生物に由来する関連遺伝子と配列要素及び機能を共有する、遺伝子または遺伝子産物のことをいう。上記「ホモログ」参照。
【0033】
「PCR」とは、ポリメラーゼ連鎖反応のことであり、インビトロで核酸配列を増幅させDNAの量を増やす方法である。
【0034】
「フェロモン」とは、昆虫が発する放臭性の化学物質のことであり、同じ種の他の昆虫との特定の相互作用を引き起こすものである。
【0035】
「試薬」とは、他の物質を測定したり、あるいは生じさせたりする為の化学反応で用いられる、化学物質及び化合物(天然に生じるかもしくは合成された)または酵素をいう。
【0036】
「レポーター遺伝子」とは、ある相互作用を観察する為に、生物学的または生化学的実験で用いる遺伝子のことをいう。報告の対象となった遺伝子は、蛍光発光または分析可能な生成物の生成のような、容易に検出可能な効果を誘発することにより、蛋白質−蛋白質の相互作用に応答する。
【0037】
「RFID」とは、無線周波数識別のことであり、無線周波数に基づいた遠隔データ収集技術であって、電子タグを用いてデータを保存する。タグ及びその中のデータは遠隔で管理(変更)し観察することが可能である。
【0038】
「情報物質」とは、生物間の相互作用を仲介する化学物質(香り、匂い、味、フェロモン、フェロモン様化合物、またはその他の化学感覚性化合物)をいう。
【0039】
「感覚付属蛋白質」、略して「SAP」とは、典型的には疎水性である臭気を結合し、そのような臭気を、親水性の細胞外基質を通して、放臭物質受容体が位置する細胞表面にまで送ると考えられている感覚組織中の可溶性の蛋白質のことである。
【0040】
「蛇行受容体」とは、GRまたはORを含むGPCRのことであり、この用語は、細胞膜におけるその蛋白質の実際の構造(蛇のような形の7回膜貫通型)に基づいている。
【0041】
「シグナル伝達カスケード」とは、外部シグナル(例えばフェロモン)をその細胞内での下流の応答(例えば遺伝子活性の変化)に変換するかまたは変化させる、細胞内の一連の分子のことをいう。
【0042】
「Takeout−Like」、略して「TOL」とは、キイロショウジョウバエ遺伝子takeoutにコードされた蛋白質のオーソログのことをいう。これらの蛋白質は概日リズムの調節、交配、及び摂食行動に関与している可能性がある。
【0043】
「導入遺伝子」とは、形質変換により細胞または生物のゲノムの中に導入された遺伝子をいう。
【0044】
「膜貫通領域」とは、細胞膜を貫通する、蛋白質の疎水性領域をいう。
【0045】
序論
本発明は、新規なバイオセンサー、新規な濾過装置、及び新規な精製装置を構築することが必要であるという認識に立ち、昆虫または無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質を、多数の蛋白質からなるアレイにおいて用いるか、幾つかの蛋白質からなる、より小さなアレイもしくは群において用いるか、または個別で用いることにより、そのような装置の構築を行う為の方法及び手段を提供するものである。昆虫の化学感覚性蛋白質は広範囲のリガンドと結合することが知られているため、本発明は、多種多様な昆虫種に由来する数多くの蛋白質を用いて、これらの蛋白質のアレイが認識することができるリガンドまたは分析対象の総数を最大にすることを想定している。本発明はまた、昆虫の化学感覚性蛋白質アレイによって得られるリガンド結合可能性の多様性が非常に大きいものであるにもかかわらず、これらのアレイをもってしても認識不能な分析対象があり、さらに、化学感覚性蛋白質と幾つかの分析対象との間の結合性の特徴を操作する必要もありうるという認識に立っている。したがって、本発明は、新規な結合特性に特徴を有する、つまり、新規な分析対象を結合する能力、または、相互作用の親和性及び/もしくは反応速度に関して新規な態様で既知の分析対象を結合する能力に特徴を有する化学感覚性蛋白質をインビトロで構築するために必要な手段及び方法を提供するものである。本発明は昆虫の化学感覚性蛋白質の多様なリガンド結合能と高い感度とを利用しているため、既存の方法に比べて、分析対象を同定、濃縮、または精製する能力が際立って優れている。
【0046】
以下は、幾つかの通常の及び有益な態様を含めて、本発明の広範さを紹介するものであるが、限定する趣旨のものではない。
【0047】
1)本発明は、様々な昆虫種から収集した膨大な化学感覚性蛋白質の数々を、一つの化学感覚性アレイにまとめる方法を提供するものである。異なる種に由来する蛋白質は、生物情報学的分析と、種の境界を越えて保存されている既知の例との配列データの比較とを用いて同定することが可能であるか、または、様々な種の感覚組織からcDNAライブラリーを構築し、そのクローンをインビトロで発現させることにより、発見することが可能である。利用可能となれば、化学感覚性蛋白質を一つの蛋白質アレイにまとめ、それが、バイオセンサー、濾過装置、及び精製装置の構築における数多くの用途で用いられる。例えば、アレイまたはアレイに由来する蛋白質成分を装置に組み込んで、化学合成の生成物もしくは副生成物を選択的に除去すること、化学合成において望ましい生成物を濃縮すること、または空気もしくは溶液もしくは液体中で望ましいかもしくは望ましくない分析対象を検出することが可能である。
【0048】
2)本発明は、化学感覚性アレイに由来する化学感覚性蛋白質、または一つの特定の分析対象もしくは複数の分析対象と結合する能力を有する化学感覚性蛋白質に基づくバイオセンサーを構築する方法を提供するものである。化学感覚性蛋白質はレポーター・システムに連結されており、化学感覚性蛋白質と分析対象との間の相互作用が指摘される。したがって、センサー装置はその分析対象の存在を検出することができる。
【0049】
3)本発明は、化学感覚性蛋白質の断片、ペプチド誘導体、またはデノボ合成された部分を固有のまたは新規な組み合わせで用いて、蛋白質と分析対象またはリガンドとの間の結合特性を変化させるために必要な方法及び手段を提供するものである。これらの方法は、化学感覚性蛋白質の結合ドメインが、ひいてはその化学感覚性蛋白質が多少なりとも親和性もしくは結合強度を伴って所与のリガンドに結合することを可能にする程度に、つまりは、新規なリガンドを完全に結合する程度に、前記ドメインを修飾することにより、化学感覚性蛋白質の機能性を拡張するものである。
【0050】
4)本発明は、化学感覚性蛋白質アレイを用いて、未知の分析対象についての化学感覚性のプロファイル、つまり「フィンガープリント」を作成する方法を提供するものである。蛋白質アレイを未知の分析対象に暴露し、アレイに連結したレポーター・システムを用いて、アレイにおけるどの化学感覚性蛋白質が未知の分析対象を結合することができるかを指摘する。このパターンはその分析対象に特徴的なものであり、その分析対象の化学感覚性のプロファイルを構成する。そういうわけで、分析対象の正体または化学組成が明らかになっているかどうかに関わらず、アレイを用いて、アレイがそれまでに暴露されたあらゆる分析対象を検出することができるバイオセンサーを構成することができる。本発明を同様に利用して、既知の分析対象についての化学感覚性のプロファイルを作成することもできる。いずれの場合も、バイオセンサー装置を構築して、分析対象の存在を検出することができる。
【0051】
5)本発明は、産業的用途及び化学的用途の為の効率的な濾過装置または精製装置の構築において昆虫の化学感覚性蛋白質の高度な選択性を利用するために必要な方法及び手段を提供するものである。例えば、本発明は、化学式または分子式が同じである立体異性体のような、化学的には同一であるが空間的な配置が異なっている化合物を単離する必要があるという認識に立っており、昆虫の化学感覚性蛋白質を利用することにより、そのような分離を行うために必要な手段及び構築を提供するものである。また、本発明は、汚染物質またはその他の望ましくない化合物を水などの液体から除去する必要がある(例えば水を精製する目的で)という認識に立っており、昆虫の化学感覚性蛋白質を利用することにより、そのような除去を行うために必要な手段及び構築を提供するものである。
【0052】
I.様々な無脊椎動物種由来の化学感覚性蛋白質からなる化学感覚性アレイを作成する方法
昆虫は様々な特化した化学感覚性器官または化学感覚性組織を用いており、そこでは、化学感覚性蛋白質が発現し機能している。そのような組織には、触角、針、及びその他の体中の感覚器官(脚や羽などの付属肢も含む)と、下唇鬚や小顎鬚のような頭部の構造とが含まれる23−26。化学感覚性蛋白質はこれらの組織において富んでいるため、これらの組織を切断し、cDNAライブラリーの作成に用いると、化学感覚性蛋白質を発現する遺伝子に富んだライブラリーが得られる。更に、性別に特異的なライブラリーを、特定の種の化学感覚性組織から作成し、交配反応に関与する化学感覚性遺伝子のような、性別に特異的な化学感覚性遺伝子を迅速に同定できるようにすることも可能である。このようなアプローチは、化学感覚性蛋白質をコードする配列を、特定の種から速やかに単離するために用いることができる23、26、27。化学感覚性蛋白質はまた、他にも様々な方法を用いて同定可能である。一つの方法は生物情報学的分析を利用するものである。例えば、OBPとSAPには特徴的なドメインと、モチーフと、種の境界を越えて保存されている配列の特徴とがある23、26、28。したがって、生物情報学を用いて、ある種において発現した既知の蛋白質の配列を他の種に由来する配列と比較することにより、これらの特徴に基づいて、これらの蛋白質ファミリーの新規な蛋白質を同定することが可能である23、26
【0053】
上記の複数のアプローチを組み合わせることによって、あらゆる数の昆虫種から、広範囲の多種多様な化学感覚性遺伝子を迅速に同定し単離することかできる。数多くの昆虫種が現存していることを考えれば29、化学感覚性遺伝子である可能性がある遺伝子の数は数千を超えることも考えられる。これらの遺伝子は、当該分野において周知の様々な方法を用いてインビトロで発現させ30−34、広範囲の多種多様な分析対象との相互作用が可能な化学感覚性蛋白質の大きなコレクションを作成することができる。これらのコレクションは化学感覚性アレイであり、様々な用途に用いられる。本発明は、このような化学感覚性アレイが必要であるという認識に立ち、既知または未知の分析対象または分析対象の混合物を区別または検出することのできる装置またはバイオセンサー内にこれらのアレイを組み込むために必要な方法及び手段を提供するものである。アレイは、特定の用途の目的に応じて、当該分野において周知の任意の数のレポーター・メカニズム(酵素的、電子的、光学的等)と組み合わせてもよい。
【0054】
II.無脊椎動物由来の様々な化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを用いて未知の刺激についての化学感覚性のプロファイルを作成する方法
以上に説明したように、化学感覚性アレイは、当該分野において周知の方法を用いてインビトロで発現させた化学感覚性蛋白質を多数発現させることにより構築することが可能である30−34。レポーター・システム(酵素的、蛍光的、光学的、電気的、その他)と連結すると、そのようなアレイは、広範囲の多種多様な分析対象または化学感覚性刺激を認識する能力を潜在的に有することになる。特定の分析対象の存在下でアレイによって生じる特異的な応答が、その特定の分析対象についての化学感覚性のプロファイルである。例えば、コドレモン(codlemone)35のようなフェロモンは、コドリンガ(Cydia pomonella)由来の化学感覚性蛋白質を含むアレイにより認識されるが、それは、この生物がインビボでそのフェロモンを認識するからである。化学感覚性アレイの中にあるコドリンガ由来の化学感覚性蛋白質に加えて、他の種由来の化学感覚性蛋白質もまたコドレモンを認識する可能性がある。アレイにおいて使用されているレポーター・システムにより生じた応答のパターン(アレイ中の各蛋白質に対する結合性を有するか否か)を観察することにより、コドレモンに特有の化学感覚性のプロファイルを作成することができる。このプロファイルは、あらゆる所与の分析対象におけるコドレモンの存在に特有のものであり、結果として、コドレモンを同定するために用いることができる。(図3)
【0055】
化学感覚性蛋白質アレイ中のどの蛋白質が所与の物質または分子と結合し得るかを同定する為に、幾つかの方法を利用できる。例えば、N−フェニル−1−ナフチルアミン(1−NPN)36、37または(+/−)−12−(9−アントロイルオキシ)ステアリン酸(ASA)34のような染料は、化学感覚性蛋白質のリガンド結合ポケットに捉えられると蛍光を発する性質があり、そしてこの蛍光は、その染料が別の分子に置き換わると消失する。それゆえ、分光法またはフローサイトメトリーを用いて蛍光の消失を検出することができ、そうして、アレイ中のどの化学感覚性蛋白質が問題の化学物質と相互作用するかを同定することができる。
【0056】
同じ方法を用いて、未知の分析対象に特有の化学感覚性のプロファイルを作成することにより、その未知の分析対象を同定することも可能である。アレイを未知の分析対象に暴露し、得られたプロファイルを、同じ未知の分析対象を含んでいる可能性がある他のサンプルと将来比較する為に記録しておく。分析対象が存在する場合には、特有の化学感覚性のプロファイルがアレイにより作成されることになる。この方法では、検出された分析対象の正体を知っている必要はない。
【0057】
III.空気中または水溶液中の環境化合物を検出する能力を有する装置を開発する方法
本文にて既に説明したように、当該分野において周知の方法を用いてインビトロで発現させた化学感覚性蛋白質を多数発現させることにより、化学感覚性アレイを構築することが可能である30−34。レポーター・システム(酵素的、蛍光的、光学的、電気的、その他)に連結すると、そのようなアレイは、広範囲の多種多様な分析対象または化学感覚性刺激を認識する能力を潜在的に有することになる。特定の分析対象の存在下でアレイによって生じる特異的な応答が、その特定の分析対象についての化学感覚性のプロファイルである。あらゆる所与の分析対象についての化学感覚性のプロファイルに関与する蛋白質を、化学感覚性蛋白質により分析対象の「認識」を行う、レポーター・メカニズム(電気的、機械的、酵素的、またはその他)に連結された検出装置に組み込むことができる。このようにして、本発明は、空気中または水溶液中の所与の分析対象を検出するためのバイオセンサーの構築に必要な手段を提供する。
【0058】
IV.ペプチドまたは誘導体を用いて、インビトロでハイブリッド化学感覚性蛋白質を構築し、これらのハイブリッド蛋白質を化学感覚性アレイにおいて用いることにより、化学感覚性蛋白質の認識の多様性を増大させる方法
化学感覚性蛋白質及びそれらの潜在的なリガンドは幅広く研究されてきており、幾つかの事例においては、構造的研究が行われているか、または結晶構造が確定されている31−33、38−43。現在に至るまで、OBPのような化学感覚性蛋白質は、一つの特定の結合パートナー44、または構造的モチーフを共有するさまざまな潜在的結合パートナーと関連づけられており37、そして化学感覚性蛋白質とリガンドとの関係の特異性は、化学感覚性蛋白質のリガンド結合ポケットにより付与されるものである32、38、45、46。結合ポケットとリガンドとの相互作用を操作すれば、化学感覚性蛋白質に新規な機能性を付与することができ、このアプローチは、バイオセンサー、精製装置、そしてシグナル伝達カスケードに使用できる可能性がある47、48。OBPの構造は、可変領域によって分離されている保存されたドメインに特徴を有しており、この全体的な構造が種の境界を越えて維持されている41。何百万もの昆虫種に由来する化学感覚性蛋白質は膨大な数に上るため、多様性も膨大なものになる可能性があるにもかかわらず29、入手可能な化学感覚性蛋白質のいずれをもってしても認識されない可能性がある分析対象が存在する。更に、リガンド結合性の特異性、強度、または化学感覚性蛋白質と分析対象との間のリガンド結合性の他の特徴を操作することが望ましい場合がある。本発明は化学感覚性蛋白質のペプチドまたは誘導体を用いて、新規な、ハイブリッド化学感覚性蛋白質をインビトロで構築することにより、そのような操作を行う手段を提供するものである。
【0059】
既知の化学感覚性蛋白質の断片をコードするDNA配列を、感覚組織特異的cDNAライブラリーからクローニングすることができ23、26、または、PCRに基づくDNA合成を含む様々な方法を用いて化学的に合成することもできる49。各断片の末端にリンカー配列を利用して、長めのDNA断片を組み合わせ、様々な源に由来するモチーフまたはドメインを有する蛋白質をコードする新規な配列にすることができる。この新規なモチーフの組み合わせの中には複合構造物が含まれることもありうる49。本発明はこれらの方法を利用して、新規なリガンド結合ドメインを有する化学感覚性蛋白質を生成するものである。これらのハイブリッド化学感覚性蛋白質をつぎに化学感覚性アレイにおいて用いて、新規な分析対象を認識することができる(図2)。新規な結合ドメインは、新規なリガンドを認識し得るか、または所与のリガンドへの結合性について特徴が変化しており、例えば、野生型の(変化していない)結合ドメインよりも高いかまたは低い親和性で所与のリガンドと結合する。
【0060】
V.化学合成の副生成物を単離もしくは検出するか、または化学合成の望ましい生成物を単離もしくは検出するための装置を開発する為の方法、及び、混合物または溶液から分析対象を精製または濃縮する為の装置を開発する為の方法
無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質は非常に多様であり、何百万もの香り、匂い、味、情報物質、または分子を、これらの標的と相互作用する能力に基づき、検出することができる23。化学感覚性蛋白質は、当該分野において周知の方法を用いて、インビトロで同定し発現させることが可能である23、26−28。そのような蛋白質が数多く発現すると、上記に説明したような化学感覚性蛋白質のアレイが得られる。このアレイを用いて、所与の物質、例えば匂い、香り、または化学物質を検査することができ、そして入手可能な昆虫の化学感覚性蛋白質のどれが、問題の物質と結合する能力を有するかを同定することができる。
【0061】
したがって、化学感覚性蛋白質を、生化学的または工業的工程において特定の成分または中間化合物を区別する能力を有する選択的濾過装置を構築するために用いることができる。選択性及び特異性の望ましいレベルによって、濾過装置の設計を、関連する化学物質の等級を同定できるように行うことができ、または、化学構造が同じである分子の立体異性体を区別できる程度まで、更に選択性を高めるように設計することもできる。あるいは、水質汚染化合物のような特定の化合物と選択的に結合する能力を有する化学感覚性蛋白質を細菌細胞(例えば大腸菌細胞)において発現させ、細菌細胞膜に結合させて、その化学感覚性蛋白質がその細菌細胞膜の外表面の上に存在するようにすることもできる。つぎにこれらの細菌を、例えば浄水施設におけるように、水から汚染化合物を選択的に除去する必要がある用途に用いることもできる。昆虫の化学感覚性蛋白質が分析対象に対する高度の選択性を有することは、マイマイガ(Lemantria dispart)44で立証されており、この蛾の化学感覚システムは、フェロモンの立体異性体を確実に区別する能力を有する。
【0062】
VI.爆発性物質を検出する能力を有する携帯型装置を開発する方法
本発明は、爆発物と関連のある、空気中や溶液中に少量で存在する特定の分析対象を検出する能力を有する装置を開発する必要があるという認識に立っている。これを達成する為に、化学感覚性アレイを用いて、各分析対象についての、または既に説明したような、分析対象の通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成し、この化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイにおける部分(化学感覚性蛋白質)を検出装置内に組み込む一方で、レポーター・メカニズムと連結する。
【0063】
本発明のこの用途に特に関連する分析対象の例には、限定はされないが、硝酸アンモニウム(NHNO)、黒色火薬(木炭、硫黄、及び硝石、すなわち硝酸カリウムまたは硝酸ナトリウムの混合物)、無煙火薬(主にニトロセルロースからなる)、RDX(シクロトリメチレントリニトラミン、サイクロナイトとしても知られている)、C4(爆発物、典型的にはRDXつまりサイクロナイト、可塑剤、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)つまりセバシン酸ジオクチル、可塑性結合剤、ポリイソブチレン、及び2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタンつまりDMDNBのようなタグまたはマーカーを含むC−4組成物)、HMX(シクロテトラメチレン−テトラニトラミン)のような他のニトロアミン、PETN(ペンスライトつまり四硝酸ペンタエリトリトール)、ダイナマイト、TNT(CH(NOつまりトリニトロトルエン、軍用TNTに通常含まれる物質は2,4−DNTつまり2,4−ジニトロトルエンである)、セムテックス(PETN、RDX、酸化防止剤としてのN−フェニル−2−ナフチルアミン、ジ−n−オクチルフタレートのような可塑剤、及びスチレン−ブタジエンゴム結合剤の混合物、後に貯蔵する場合は、エチレングリコールジニトラートタグを有する)、TATP(過酸化アセトンつまりトリアセトントリペルオキシド)、並びにその他が含まれる。
【0064】
昆虫がこれらの物質のうちの幾つかを認識するということが、行動分析から、また、地雷及び/または不発弾(UXO)の検出ならびに通常の環境モニタリングのために蜜蜂を訓練する試みから知られている50−52。本発明は、蜜蜂やその他の昆虫が爆発物を検出することを可能にする化学感覚性蛋白質に基づいた検出装置を開発する方法を提供するものである。本発明は、生きた昆虫を必要とせず、本文で既に説明したように組換え化学感覚性蛋白質のインビトロでの発現のみを利用するという点において新規である。問題となる分析対象を検出する能力を有する蜜蜂やその他の昆虫に由来する化学感覚性蛋白質を用いて、爆発物に特化した化学感覚性アレイを構築し、それを酵素的、電気的、機械的、またはその他の形態のレポーター・メカニズムと連結して爆発物検出用バイオセンサーを構成する。
【0065】
本発明はまた、製造業者によって爆発性配合物に組み込まれた既知の標識化合物の検出に特化して設計された検出器メカニズムを作成するためにも用いることができる。このような仕組みは、試験対象の爆発物サンプルの出所の迅速な同定を補助することを目的としている。
【0066】
VII.食品産業での調理に応用されるバイオセンサーを開発する為の方法
本発明は、食品腐敗の副生成物を検出して、肉の包装やその他の食品調理への応用などの用途において食品処理の安全性を確保する必要があるという認識に立っている。したがって、本発明は、食品腐敗または食品の質の問題に一般に関連する分析対象を同定するために必要な方法を提供するものである。これをなし遂げる為に、化学感覚性アレイを用いて、各分析対象についての、または本文で既に説明したような、分析対象の通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成し、この化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイにおける部分(化学感覚性蛋白質)を検出装置内に組み込む一方で、レポーター・メカニズムに連結する。このような装置は、包装工場、その他の食品産業調理工場、食品調理用途(レストラン、食堂など)に利用され得るか、または携帯型の形態で、保健所職員やその他の食品業務の専門家により利用され得る。
【0067】
本発明のこの態様は、包装資材に直接組み込むことができ、かつ、例えば酵素的に誘発された色の変化またはその他のメカニズムのようなレポーター・メカニズムと連結することができ、それにより、エンドユーザーすなわち消費者が、特定の食品が腐っているかどうかたちどころに判定することが可能となる。本発明のこの態様を無線周波数識別(RFID)メカニズムに連結すれば、食品またはその他の腐りやすい品目の出荷を、腐敗について遠隔的に監視しながら行うことが可能になる。
【0068】
本発明のこの用途に特に関連する分析対象には、限定はされないが、微生物により生成されるアルコールのような発酵生成物、乳酸のような副生成物、ならびにプトレシン、カダベリン、パルボリン、及びセプシンを含むプトマイン(細菌による蛋白質の腐敗により生じる窒素含有有機化合物)が含まれる。本発明はまた、同様に化学感覚性アレイのプロファイルによるアプローチを用いて、特定の種についてどの化学感覚性蛋白質が化合物を検出し得るかを判定し、よく見られる無脊椎動物の食品への侵入を検出するために必要な方法を提供するものである。
【0069】
この方法で説明した装置はまた、後述する「害虫の存在を検出する能力を有する携帯型の装置を開発する方法」で得られる機能性も加味して、害虫の付いた果物や野菜の検出にまで用途を拡げることもできる。この用途は、食品包装業者、食品輸出業者、農業検査員、そして税関当局にも利益のあるものである。
【0070】
本発明はまた、食品の質を監視して、最終製品の芳香が商業的成功に決定的であって、特定の匂いや匂いの組み合わせを検出する能力を有する熟練した人が芳香に基づく製品の質の監視業務を伝統的に担っている、コーヒー及びワインのような食材の生産中に、製品の一貫性を確保する必要があるという認識に立っている。ここで説明する方法は、この事例でも用いることのできるものである。本発明は、ある化学感覚性蛋白質アレイを用いて、コーヒーまたはワインについての香りのフィンガープリントを開発することにより、そのコーヒーまたはワインの望ましい芳香に寄与する主要な揮発性成分を同定するために必要な手段を提供するものである。製品の質は、対照または基準のコーヒーもしくはワインのサンプルから発せられる揮発性物質を認識する昆虫の化学感覚性蛋白質を備えたバイオセンサーを用いてコーヒーまたはワインのサンプルをチェックして、試験対象のサンプルから発せられる芳香が基準のフィンガープリントと一致することを確実にするよう監視する。
【0071】
VIII.瓦礫の中または被災地において人間の死体を検出する能力を有する携帯型の装置を開発する方法、及び瓦礫の中や被災地において生存者を検出する能力を有する携帯型の装置を開発する方法
本発明は、死体が腐敗する際の副生成物を検出して、遺体のありかをつきとめる必要があるという認識に立っている。したがって、本発明は、一般的に組織の腐敗または組織の分解に関連する分析対象を同定するために必要な方法を提供するものである。これをなし遂げる為に、化学感覚性アレイを用いて、各分析対象についての、または本文で既に説明したような、分析対象の通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成し、この化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイにおける部分(化学感覚性蛋白質)を検出装置内に組み込む一方で、レポーター・メカニズムに連結する。これらの装置は、事故、攻撃、爆破、自然災害、またはその他の多数の死傷者を出す現場に運び込むことのできる携帯型の検出メカニズムにおいて用いることができ、また、犬を伴う捜索隊の代りに、あるいはその捜索隊に加えて、用いることができる。
【0072】
本発明のこの用途に特に関連する分析対象には、限定はされないが、微生物により生成されるアルコールのような発酵生成物、乳酸のような副生成物、ならびにプトレシン、カダベリン、パルボリン、及びセプシンを含むプトマイン(細菌による蛋白質の腐敗により生じる窒素含有有機化合物)が含まれる。
【0073】
生きている人間についての化学感覚性のプロファイルを開発するために同様の方法論を用いることができる。この用途に関連する分析対象は、呼気中の揮発性物質と、生きている人間の皮膚から発せられる揮発性物質である53。この化学感覚性アレイをレポーター・メカニズムと組み合わせて、被災地における生存者を検出するための装置を作成することも可能である。
【0074】
IX.害虫の存在を検出する能力を有する携帯型の装置を開発する方法
昆虫種の多くは、化学的な意思疎通を行い、香りや匂いを発して同じ種の別の個体と意思疎通を図るか、あるいは、様々な理由により、他の種により認識され得るシグナルとしてそのような香りや匂いを発する29、37、53−57。植物もまた、化学シグナル伝達を用いて昆虫と相互作用を行う。植物種はアロモンまたはその他の化学シグナルを発して益虫を引き寄せることが知られている58。これらの化学シグナルは、摂食、採餌、産卵、または交配のような昆虫の行動の決定的な局面を制御する23。化学的刺激による意思疎通の重要性の為に、昆虫は高度に敏感な化学感覚システムを発達させてきた。昆虫の化学感覚性蛋白質は、それゆえ、これらの化学シグナルの認識に理想的に適している。
【0075】
本発明は、特定の種の昆虫に特徴的な化学シグナルを検出することに基づき、その特定の種の昆虫を同定する能力を有する検出装置を開発するために必要な手段を提供するものである。本発明のこの態様は、農業、家庭、国防、または公衆衛生に関するいずれの分野においても、主に害虫駆除において適用される。これをなし遂げる為に、化学感覚性アレイを用いて、各分析対象についての、または既に説明したような、分析対象の通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成し、この化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイにおける部分(化学感覚性蛋白質)を、レポーター・メカニズムに連結された検出装置内に組み込む。化学感覚性アレイは、問題の種に特徴的なフェロモンもしくはその他の情報物質を、または、問題の種の粉砕したサンプルからの抽出物のみを有するものであり得る。本発明のこの態様は、無線周波数識別(RFID)メカニズムと組み合わせて、侵入の遠隔的な監視を可能にすることもできる。
【0076】
化学感覚性蛋白質の入手先として見込みがある可能性がある昆虫の集団の一つは、寄生性の狩蜂のような捕食寄生者である。これらの昆虫は、例えば蛾のような宿主生物の位置をつきとめることに特化しており、それゆえ、総合的有害生物管理(IPM)計画において、害虫個体群を駆除する手段として用いられることが多い59、60。本発明は、捕食寄生狩蜂種及び害虫を化学的に同定することに特化したその他の種から化学感覚性蛋白質を単離することを想定するものである。化学感覚性蛋白質はインビトロで発現させることができ、レポーター・メカニズムと組み合わせれば、問題の害虫種を検出する能力を有する化学感覚性アレイをまとめるために使うことができる。そのような構築物を検出装置に組み込んで、商業的に使うことができる。
【0077】
X.人間の疾病を検出する能力を有する装置を開発する方法
人間の疾病を検出するセンサーは、「電子鼻」の開発が最近注目されていることもあり、数多くの研究の主題となってきている5、10。特定の揮発性物質の存在が、人間の多くの疾病に関連している。例えば、皮膚の上または体内の癌細胞は、血液、空気、または体液の中に揮発性化合物を放出し、つぎに、それらが吐き出される。その揮発性物質を検出して、疾病の同定または診断を速めることができる。これは、前立腺癌61−63、膀胱癌64、肺結核65、乳癌、肺癌66、67、黒色腫68、狭心症67、及び糖尿病9、69−71などの一連の様々な人間の疾病にあてはまることである。更に、ケーススタディーの示唆するところでは、癲癇性発作が差し迫っている場合に、動物の化学感覚システムにより検出可能な揮発性物質が人体から放出される。介助犬を有する癲癇患者により、それらの介助犬が、患者自身が自らの生理的な変化に気づく前に発作が差し迫っていることを感じ取る能力を発達させているということがしばしば報告される。
【0078】
本発明は、電子鼻型のバイオセンサー装置の感度と汎用性を更に高める必要があるという認識に立っており、それを行うために必要な手段を提供するものである。これをなし遂げる為に、人間の特定の疾病と関連する揮発性物質を、本文の別の箇所で説明している昆虫の化学感覚性アレイ中に分析対象として導入する。化学感覚性アレイを用いて、各分析対象についての、あるいは、本文で既に説明したような、分析対象の通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成する。対照として、健康な人間と関連する揮発性物質を用いる。健康な人間により放出された分析対象により作成した化学感覚性のフィンガープリントつまりプロファイルを疾病を有する人間から得たものと比較して、特定の疾病と正の関連を有する分析対象を同定する。疾病の化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイの部分(化学感覚性蛋白質)を検出装置内に組み込む一方で、レポーター・メカニズムに連結する。これらの装置は診療所、病院、移動式健康管理室、野戦病院、人道的救済活動、及びその他の健康管理または診断用途に用いることができる。
【0079】
XI.煙霧のような揮発性物質を検出する能力を有する装置を開発する方法
昆虫種の中には、燃焼の副生成物を検出する自らの能力に頼るものがいる。例えば、タマムシ(Melanophila spp.)は、この種の幼虫が焼けたばかりの林の木の中でしか発育できないため、産卵するには、焼けたばかりの森林区域の位置をつきとめなければならない72。したがって、これらの昆虫は、森林焼失区域に典型的なフェノール化合物のような揮発性物質を検出することにより数キロメートルの距離からでも、燃えた、または燃えている木の位置をつきとめる能力を有し得る。そのような化合物の一例はグアヤコール(C)である72
【0080】
本発明は、フェノール化合物及び/または燃焼副生成物に対する既知の感受性を有する種を含む数多くの昆虫種に由来する化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを作成する手段を提供するものである。このアレイを用いて、燃焼中の木に対する昆虫の感受性をもたらす特定の化学感覚性蛋白質を単離することができ、これらの化学感覚性蛋白質は、電気的もしくは電子的レポーター・システムまたは警報機と組み合わせると、新規な火災検出装置に用いることができる。したがって、本発明は、既存の煙検出器(通常、放射性化合物、酸化アメリシウム、AmOに基づく)に取って代わるか、またはそれを増強する手段を提供するものである。本発明のその他の用途には、森林火災検出システム、及び倉庫、空港、学校、公会堂、スポーツ大会会場、公共交通機関の駅、コンベンションセンター、公衆の集合する場所などで用いる為の商業用または工業用の火災検出システムがある。
【0081】
XII.匂い、香り、またはその他の情報物質をマスキングする化合物または構築物を開発する方法
本発明は、工業、農業及び家庭の環境において情報物質をマスキングする能力を有する化合物、装置または構築物を開発する必要があるという認識に立っている。それゆえ、本発明は、化学感覚性蛋白質に基づいた匂いのマスキング技術を様々な商品または装置に組み込む方法及び手段を提供するものである。使用可能な化学感覚性蛋白質の例としては、OBP、放臭物質分解酵素、感覚付属蛋白質、または化学感覚性受容体などがある。
【0082】
OBPまたはその他の化学感覚性蛋白質をコードするDNA配列は、当該分野において周知の手段を用いてインビトロで発現させることができる。これらの化学感覚性蛋白質を固体形態、懸濁液中の形態、またはゲル中の水性形態で組み込んだ装置には、商業、農業、及び家庭での数多くの用途があり、それには、非限定的に示すと、以下のようなものが含まれる。
a.空港から家庭までどこにでもある公共のまたは家庭の洗面所に配置される消臭剤。
b.家庭でゴミ容器の中で用いられる消臭剤。更に、化学感覚性蛋白質に基づいた化合物をゴミ容器自体の組成に組み込んで防臭容器を作成する。
c.化学感覚性蛋白質に基づいた微粒子状または液状の製品を市販の天然の肥料に導入して、匂いのない環境が求められる用途において肥料の匂いをマスキングすることができる。
d.家庭用や工業用の洗剤製品に組み込んで、学校の食堂から食肉処理場、食品処理工場、及びレストランに至るまでの様々な環境に配置する製品。
【0083】
化学感覚性蛋白質を組み込んだ製品は、たばこ、葉巻、及びパイプの煙に関連する不快な匂いをマスキングすることができる。そのような製品をエアゾールスプレーとして導入することもできるし、あるいは、たばこ、葉巻、及び喫煙用タバコに直接組み込むこともできる。
【0084】
これらの方法は、感覚付属蛋白質(SAP)、放臭物質結合蛋白質(OBP)、放臭物質分解酵素(ODE)、及び嗅覚、味覚、化学感覚性、または化学感覚性によって仲介される行動の制御に関与するその他の蛋白質を含む化学感覚性タンパク質を標的とするためにも用いることができる。
【0085】
更に、匂いをマスキングしたり閉じ込めたりする為の製品は、化学感覚性蛋白質の全体が組み込まれている必要はない。その代りに、ペプチド誘導体またはペプチド断片が組み込まれていてよい。
【実施例1】
【0086】
実施例1:様々な無脊椎動物種由来の化学感覚性蛋白質からなる化学感覚性アレイの作成
昆虫の行動における多くの重要な局面は、化学感覚性信号に左右されている23、73、74。化学感覚性が昆虫の行動に重大な影響を与えることから、化学感覚性経路に関与する分子及びプロセスは、化学感覚性刺激すなわち分析対象に対する極度の感覚性を発達させてきた。昆虫は、極めて多岐にわたる数多くの分析対象を、非常に低い濃度で認識する能力を有している。昆虫が分析対象を検出する分子的メカニズムは様々な種で詳細に研究されてきた23、26、27、75−89。化学感覚性シグナル伝達カスケードを円滑なものにしているのは、細胞外の蛋白質、膜貫通蛋白質、及び細胞内の蛋白質である90−92。関与する主な分子は、放臭性物質結合蛋白質(OBP)、G蛋白質共役受容体(GPCR)、感覚付属蛋白質(SAP)、放臭物質分解酵素(ODE)、概日リズム蛋白質(例えばTOL)、味覚結合蛋白質、及び味覚受容体(GR)である。
【0087】
これらの蛋白質は、当該分野において周知の方法を用いてインビトロで発現させることができる23、26、27。広範で多種多様な種から化学感覚性蛋白質を同定し単離するために数多くの方法が使用可能であり、それらの方法には、生物情報学的分析により既知の蛋白質のオーソログを種の境界を越えて探索すること、及び問題の種から化学感覚性に特異的なcDNAライブラリーを構築し、そこから化学感覚性蛋白質をコードするクローンを発現させることが含まれる。多数の種から得た数多くの化学感覚性蛋白質を組み合わせることにより、化学感覚性蛋白質のアレイを構築することができる。そのアレイに含まれる化学感覚性蛋白質は数多くの種から得たものであるため、アレイは、一つの昆虫種のいずれかが単独で認識できるよりも多くの分析対象を認識する能力を有する。アレイを、機械的、電気的、圧電性、酵素的、または電子的システムのような当該分野において周知のレポーター・システムに連結し、アレイの中の各蛋白質をサンプルに暴露すること、及びそのレポーター・システムがその配列の中のいずれかの蛋白質と問題の分析対象との間の相互作用(結合の発生)を示すかどうかを記録することにより、気体混合物中や溶液中における分析対象の存在を報告させることができる。
【0088】
昆虫の数多くの化学感覚性蛋白質には、既知の天然のリガンド、つまり、それらがインビボで相互作用を行う分析対象が多くある31、75、93−96。所与の目的のために分析対象の認識を強める構成蛋白質でアレイを構築してもよい。例えば、アルコールを分析対象として認識することに特化したアレイは、広範囲の多種多様な昆虫種に由来する、アルコール及びそれらのオーソログを結合する既知の化学感覚性蛋白質または構造的に類似した蛋白質を用いて構築することができる。更に、リガンドの既知の結合パートナーが、アレイ及びレポーター・システムの機能性を試験するための陽性対照として役立つ。
【実施例2】
【0089】
実施例2:様々な無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを用いて、未知の刺激についての化学感覚性のプロファイルつまりフィンガープリントを作成する
実施例1に示されているように、インビボで発現した、広範囲の多種多様な昆虫に由来する化学感覚性蛋白質を含み、当該分野において周知のレポーター・システムと連結した化学感覚性アレイを構築することができる。このようなアレイは広範囲の多種多様な分析対象を溶液中でも空気中でも認識する能力を有し、アレイの機能を、そのアレイの中にある化学感覚性蛋白質と相互作用することが知られている分析対象を用いて試験することができる。
【0090】
アレイにおける各化学感覚性蛋白質の位置及び正体は知られている。化学感覚性蛋白質が、それぞれ個別に、一つの、または少数の分析対象を認識する(と結合する)ことから、つまり、化学感覚性蛋白質は特定のリガンドを有する傾向があることから23、レポーター・システムを用いれば、アレイが問題の分析対象を有する場合、異なる認識パターンが作成され、しかも、この認識パターンは、その分析対象に固有のものとなる(図3)。したがって、アレイは、試験対象の分析対象についての化学感覚性のプロファイルまたは化学感覚性のフィンガープリントの作成に用いることができる。
【0091】
これらの化学感覚性のフィンガープリントには数多くの用途がある。例えば、問題の分析対象が存在する場合に生じることが分かっている化学感覚性のフィンガープリントを、化学感覚性アレイのレポーター・システムが作成すると、その分析対象を簡単に認識することができる。これは、この様々なバイオセンサーを効率的に構成する方法であり、基本的な化学感覚性アレイは共通のもの(大量生産されたもの)でよく、しかも、多種多様な分析対象を検出する装置において用いられる(放出された匂いに基づいて、自然なガス漏れから、爆発物、食品の腐敗、害虫の存在まで)。
【0092】
化学感覚性のフィンガープリントもまた、一つの分析対象、または複数の分析対象の混合物の存在を、これらの分析対象の出所を知る必要なく明らかにすることができる検出装置の効率的な構築に役立つ。例えば、新規なマイコバクテリウム、または肺に感染することにより人間に疾病を引き起こす可能性のあるその他の種が、感染した旅行者によって開発途上国から米国に持ち込まれると、その細菌感染により、患者の呼気5、65に、本文で説明したもののような化学感覚性アレイにより検出される可能性がある揮発性物質が生じる。レポーター・メカニズムを備えた化学感覚性アレイを患者の呼気に暴露すれば、その特定の個体に存在する揮発性物質の化学感覚性のフィンガープリントを作成することができる。感染していない個体から得たフィンガープリントと照合することにより、未知の病原体の生成物である患者の呼気中の揮発性物質に応答する化学感覚性蛋白質が明らかになる。つぎに、この化学感覚性のプロファイルを用いて、新しい疾病を速やかに診断する新規なバイオセンサーを設計することができる。これらのバイオセンサーに、酵素的、電気的、機械的、またはその他のレポーター・システムを用いて、マウス・ピースの中に息を吹き込んだ個体が感染した個体であることを、ユーザーに警告するようにしてもよい。その病原体の正体についての知識は必要ではなく、肺の中の病原体が生成した呼気の中の特定の揮発性物質の正体についての知識も必要もない。そのようなバイオセンサーを空港、通関地、健康管理診療所、病院、またはその他の、感染した個体が確認される可能性のある区域に配置してよい。
【実施例3】
【0093】
実施例3:空気中の環境化合物を検出する装置を開発する
実施例2で説明した化学感覚性のフィンガープリントというコンセプトには、環境中もしくは空気中における化合物の存在を検出するためのバイオセンサーの構築を含む、数多くの用途がある。例えば、音響式ブザーまたは警報器のようなレポーター・システムと連結したアレイにおける昆虫の化学感覚性蛋白質に基づいたバイオセンサーを構築して、人間にとっては無色無臭であるために人間による検出が難しい分子である化合物を検出することができる。
【0094】
そのような検出器は、人間の健康を脅かす空気中の有毒化合物を検出する際に特に役に立つが、それは、多くの場合人間が自身の化学感覚システムでそのような有毒化合物を感じることができないからであるか、または、化学物質が、あまりにも有毒であるため、人間が匂いを感じる前に検出する必要があるからである。そのような化学物質の例は、神経ガス、タブン(GA)、ソマン(GD)、サリン(GB)、シクロサリン(GF)、及びVXである。これらの物質は、化学兵器に用いられ、人間には極めて有毒であるため、それらの検出は、治安上、軍事上、テロリスト対策の用途において重要となる。
【0095】
この実施例において、本発明は、神経ガス、ソマン(1,2,2−トリメチルプロピルメチルホスホノフルオリダート)を検出するために必要な手段及び方法を提供する。ソマンは揮発性、無色の液体で、国連決議687により大量破壊兵器に分類されている。ソマンの貯蔵及び生産は1993年の化学兵器禁止条約により禁止されている。数多くの昆虫種に由来する化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを用いて、ソマンを検出する能力を有する昆虫の化学感覚性蛋白質を同定することができる。つぎに、これらの蛋白質を、電源付きの圧電ブザーのようなレポーター・システムに連結され、携帯型の装置に組み込まれた、特化したアレイに組み込む。これらの装置は、ソマンを検出する能力を有するバイオセンサーであり、軍事、国防及び政府の施設で用いることができる。携帯型の装置は、現場で、軍の人員や兵器条約順守検査員が用いることができる。
【実施例4】
【0096】
実施例4:化学合成の副生成物を単離もしくは検出する装置、または化学合成の望ましい生成物を単離もしくは検出する装置、または混合物もしくは溶液から分析対象を精製もしくは濃縮する為の装置を開発する
昆虫の化学感覚性蛋白質は、リガンドの特定の立体異性体に選択的に結合するが、同じリガンドの別の立体異性体には結合しないことが明らかになっている。例えば蛾のマイマイガは、自身の化学感覚システムを用いて、あるフェロモンの特定の立体異性体を選択することができる44。化学感覚性蛋白質の、この極めて選択的で、高度に特異的な結合活性を、複合混合物からある特定の分析対象を選択し、濃縮し、排除し、または精製するために用いることができ、数多くの産業的用途がある。例えば、レポーター・システムに連結したアレイにおける広範囲の多種多様な昆虫種由来の化学感覚性蛋白質を、様々な用途に用いられ、店頭でも処方箋投薬でも売られている薬品である、エフェドリンのジアステレオマーに暴露することができる。各ジアステレオマーは固有の化学感覚性のプロファイルを作成し、そして一方のジアステレオマーとは結合できるが他のものとは結合できない化学感覚性蛋白質を選んで、精製装置の中に含ませることができる。つぎに、これらの装置を製薬会社が合成工程の中に組み込み、望ましい生成物をそれらの立体異性体及び/または化学合成の副生成物を含む混合物から効率的に単離または精製する。したがって、エフェドリンの(1S,2S)−ジアステレオマー(「偽エフェドリン」と呼ばれ充血除去剤として店頭で入手可能)に対する高度に選択的な結合特異性を有する化学感覚性蛋白質は、(1R,2S)−エフェドリン(ダイエット補助目的での店頭販売は禁じられ、喘息に用いられる)及び/またはその他の構造的に関連のあるアミンを含む化合物の混合物からこの立体異性体を単離及び精製するために用いられる。同様に、なんらかの右旋性異性体をその左旋性の異性体から選ぶこと、またはその逆は、アレイから同定され製薬生産ラインに属する濾過メカニズムに組み込まれた、高度に選択的な化学感覚性蛋白質を用いて達成することができる。例えば、四つの環に配置された17個の炭素原子(ステロイド分子の特徴である)のような特徴的な構造を含む分子のすべてを、それらを選択的に結合する能力を有する化学感覚性蛋白質を用いて、迅速に同定し、単離し、または濃縮することができる。
【0097】
本発明のこの態様はまた、環境の浄化、またはある等級の化合物もしくは一つの化合物だけを選択的に除去することを必要とするあらゆる用途においても役に立つ。
【実施例5】
【0098】
実施例5:爆発性物質を検出する能力を有する携帯型装置を化学感覚性蛋白質アレイを用いて開発する
生きた昆虫は既に不発弾(UXO)を検出するために用いられている。昆虫は、幾つかの爆発性物質を認識することが知られており50−52、そして蜜蜂は、地雷またはその他のUXOを検出するように訓練されている。しかしながら、UXOの検出に生きた昆虫を用いることには幾つかの深刻な欠点がある。第一に、昆虫は、集団としては非常に敏感な化学感覚システムを有しているが、個々の種が検出できる化合物の多様性は、数多くの種により検出され得る化合物の多様性よりも小さい。第二に、ほとんどの種の寿命は短いため、昆虫は大量に入手可能でなければならない。これは要するに、蜜蜂のような家畜化された種の方が、狩蜂のような、同等に敏感な化学感覚システムを有している可能性がある他の種よりも、検出に使いやすいということである。第三に、蜜蜂のような昆虫は、爆発物を検出するように訓練しなければならず、これらの爆発物を検出するところを観察してUXOの位置をつきとめなければならない。
【0099】
本発明は、これらの問題を克服し、生きた昆虫を必要とすることなく、化学感覚性蛋白質に基づいた、爆発物を検出するための検出装置を開発する方法を提供するものである。蜜蜂と、問題の分析対象を検出する能力を有するその他の昆虫とから得た化学感覚性蛋白質を用いて爆発物に特化した化学感覚性アレイを構築し、それを、酵素的、電気的、機械的、またはその他の形態のレポーター・メカニズムと組み合わせて、爆発物検出用のバイオセンサーにする。例えば、数百の昆虫種から得た化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを用いて、一般に入手可能である爆発物、Semtexについての化学感覚性のプロファイルを開発する。この物質は、商業的に製造された、PETN、RDX、N−フェニル−2−ナフチルアミン、ジ−n−オクチルフタレート及びスチレン−ブタジエンゴム結合剤の混合物である。アレイにより、このような物質のそれぞれに個別に結合するか、または成分となる物質の混合物に結合する能力を有する化学感覚性蛋白質が得られる。これらの化学感覚性蛋白質を携帯型の装置に組み込み、圧電ブザーに連結して、戦場、空港で、またはその他の軍事もしくは警備用途に、爆発物警報システムとして用いることができる。
【実施例6】
【0100】
実施例6:爆発物検出用バイオセンサーで用いる為に2,4−ジニトロトルエン(2,4−DNT)への結合親和性を高めた修飾OBPを単離する為のハイスループットスクリーニング
昆虫の化学感覚性蛋白質は、広範囲の多種多様な結合特性を有する多様性に富む集団を代表するものではあるが、既存の発現蛋白質では認識されない可能性がある潜在的な分析対象が幾つかある可能性がある。更に、リガンド結合性の特異性、強度、または化学感覚性蛋白質と分析対象との間のリガンド結合性のその他の特徴を操作することが望ましい場合がある。この実施例では、所定の分析対象への結合親和性を高めた修飾OBPを単離して、爆発物検出用バイオセンサー装置において使えるようにする方法を示している。
【0101】
2,4−DNTという化合物は、トリニトロトルエンの化学分解副生成物であり、多くの高度爆発物の共通の成分である。幾つかのグループが、機雷や地雷を含む爆発物の位置をつきとめる方法として2,4−DNTを検出することに注目した。そのような研究の少なくとも一つは、2,4−DNTを嗅ぎ当て地雷の位置をつきとめるように訓練された蜜蜂(Apis mellifera)を用いて成功し50、97、昆虫にはこの化合物を認識する化学感覚性蛋白質があることが分かった。蜜蜂属のゲノムは配列決定されており、化学感覚性蛋白質をコードする遺伝子の多くは既に同定されている。
【0102】
2,4−DNTは、上記に説明した化学感覚性アレイを用いてスクリーニングされる。アレイに由来する様々な化学感覚性蛋白質は、さまざまな親和性で2,4−DNTと結合するものとして同定される。より高い親和性で蛋白質を単離する為に、2,4−DNTと結合する化学感覚性蛋白質の個別の機能ドメインを示すDNA配列を用いて、約60bpのオリゴマーを生成する。これらの遺伝子は長さが平均して300bpであり、これは要するに、各遺伝子からオリゴマーを約5個生成するということである。その上、逆方向の鎖である30bpの連結オリゴマーが生成され、これらの中には、二つの隣接する60bpのオリゴマーの末端から15bpが含まれる。二組のオリゴマーを共に混合してアニーリングし、そしてDNAポリメラーゼを用いてギャップを埋める。この方法は新規であり、Xiong et al.が詳述した方法を根本的に改善したものである(「単純で、迅速で、高品質で、かつ費用対効果の優れた、PCRに基づく、長い遺伝子配列用の二段階のDNA合成方法」)49。2,4−DNT−結合性化学感覚性蛋白質から得られたオリゴマーを特異な連結オリゴマーと混ぜ合わせることにより、様々な蛋白質から得られた複数の機能的ドメインを含む新規な遺伝子キメラを作成することができる。これらの新規な遺伝子を発現させ、そこから生じた蛋白質を、既に上記に説明した分析を用いて、2,4−DNTへの結合親和性の改善についてスクリーニングする。
【0103】
つぎに、そのようにして改善した蛋白質を製造し、検出装置に組み込み、その一方で、それをレポーター・メカニズムに連結することができる。
【実施例7】
【0104】
実施例7:食品の出荷を遠隔的に追跡し、食品の腐敗または劣化を検出するためのバイオセンサーを開発する
食品業及び海運業では、食品腐敗の副生成物を検出して肉の包装やその他の食品調理のような用途での食品処理の安全性を確保する為に、信頼性の高い方法が必要とされている。肉や野菜は、包装工場のような中央の施設で準備されることが多く、全国に、さらには外国にまで、腐りやすい貨物として出荷され、この貨物が依然として人間が食するために適している状態で目的地に着くように注意が払われなければならない。
【0105】
肉が腐敗していくと、典型的には、細菌やその他の微生物を有するようになり、それらにより、アルコール、乳酸、ならびに、細菌による蛋白質の腐敗により生じる、プトマイン、プトレシン、カダベリン、パルボリン、及びセプシンを含む窒素含有有機化合物のような特徴的な物質が産生される。本発明は、昆虫の化学感覚性蛋白質を用いて、これらの物質を検出することができる。様々な害虫種、特に人間の死体や動物の死骸に引き寄せられることが知られている種から得た数多くの化学感覚性蛋白質からなる化学感覚性アレイを用いて、各分析対象について、または通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成する。つぎに、その問題の分析対象を確実に認識するその化学感覚性アレイに由来する蛋白質を検出装置に組み込み、一方で、それをレポーター・メカニズムと連結する。したがって、本発明は、包装資材に直接組み込まれ、例えば酵素的に引き起こされる色の変化またはその他のメカニズムのようなレポーター・メカニズムと結合して、エンドユーザーすなわち消費者が、特定の食品が腐っているか否かをたちどころに判定できるようにする。無線周波数識別(RFID)メカニズムもまた、バイオセンサーに連結することができ、食品またはその他の腐りやすい品目の出荷を、船舶、トラック、列車、飛行機またはその他の交通手段での輸送中の腐敗について遠隔的に監視することが可能になる。そのRFID連結腐敗バイオセンサーで、倉庫などに保管中の食品を監視することもできる。
【実施例8】
【0106】
実施例8:食品または飲料(コーヒーのような)の質を香りに基づきチェックするためのバイオセンサーを開発する
本発明は、特定の芳香または芳香もしくは香りの組み合わせを特定の食品や飲料における質の指標として検出する必要があるという認識に立っている。例えば、コーヒーやワインの産業では、これらの製品の特定の匂いまたは芳香を検出するように訓練された人間に頼っている。コーヒーまたはワインの質は、消費者からも生産者からも同様に、その芳香と直接関連づられる。本発明は、望ましい芳香に寄与する、コーヒーまたはワインの主要な揮発性成分の同定に必要な手段を提供するものである。これらの揮発性物質がひとたび同定されれば、それらは化学感覚性のフィンガープリントに組み込まれ、つぎに関連産業は、一貫した芳香が得られるように、コーヒーの生産を監視して生産中のバッチについても同じ揮発性の香りや匂いが発せられていることを確実にすることができる。
【0107】
非常に望ましい芳香を有するコーヒーのサンプル(基準となるコーヒー)を用いて、その後の生産のための、「正確な」または望ましい芳香の化学感覚性のフィンガープリントを確立する。レポーター・メカニズムに連結した、数多くの昆虫の化学感覚性蛋白質からなる化学感覚性蛋白質アレイ(図3参照)を、基準となるコーヒーから生じたその揮発性物質の芳香及び香りに暴露し、放出された分子と結合する能力を有する化学感覚性蛋白質を同定する。蛋白質アレイにより生じた認識パターンは基準となるコーヒーを表している。それが、基準となるコーヒーの化学感覚性のフィンガープリントである(図3参照)。つぎに、生産の質を、その後のコーヒーサンプルをチェックして、それらのサンプルの発する香りがフィンガープリントに一致することを確認することで監視する。このように、本発明は、コーヒー、ワイン、またはその他の製品の香り試験において、訓練された人間に代わるか、またはその補助をするために使うことができる。
【実施例9】
【0108】
実施例9:瓦礫、鉱坑、または目視できない他の場所に閉じ込められた生存者を検出するためのバイオセンサー
本発明は、人間の呼吸の副生成物、皮膚から発せられる脂や汗のような香りまたは匂い、及び生きている人間に特徴的な他の匂いを検出して、残骸、瓦礫、鉱山などの下に閉じ込められている可能性がある自然災害または戦時の災害の生存者を発見する為のバイオセンサーを構築する必要があるという認識に立っている。
【0109】
数多くの昆虫種が、人間の検出に特化した化学感覚性蛋白質を有している。例えば、マラリアを運ぶ蚊であるガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)はヒト寄生であり、人間の呼気中にある、及び皮膚から発せられる揮発性物質を感じ取ることにより、暗闇の中で人間の居場所をつきとめることができる23、98−100。本発明は、人間の発する揮発性物質を検出することのできる昆虫から得た化学感覚性蛋白質を人間を検出するためのバイオセンサー装置の構成に応用するという認識に立っている。したがって、本発明は、生きている人間の存在に一般的に関連づけられる分析対象を同定するために必要な方法を提供するものである。これをなし遂げる為に、化学感覚性アレイを用いて、二酸化炭素や乳酸のような、典型的に人間が発する各分析対象についての、または、分析対象の通常用いられる組み合わせについての化学感覚性のプロファイルを作成する23、98−100。既に本文で前述したように、この化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイにおける部分(化学感覚性蛋白質)を検出装置内に組み込む一方で、レポーター・メカニズムに連結する。これらの装置は、事故、攻撃、爆破、自然災害の現場に運び込むことのできる携帯型の検出メカニズムにおいて用いることができ、また、犬を伴う捜索隊の代りに、あるいはその捜索隊に加えて、用いることができる。
【実施例10】
【0110】
実施例10:害虫種であるコドリンガ(CYDIA POMONELLA)の存在を検出するためのバイオセンサー
昆虫は、農業、食品出荷、及び住宅産業のような多くの産業にとって経済的に有害である。これらの産業では、大金を投じ、主に殺虫剤及び/またはその他の形態のIPMのような害虫管理で害虫を駆除している。本発明は、特定の害虫種の存在を検出する能力を有するバイオセンサーを構成する手段を提供するものである。そのような装置は、現場で、包装工場で、並びに多くの国の政府の農業管理部門が感染した食料の輸出入を管理する為に運営しているような検査場でも役に立つ。
【0111】
昆虫種の多くは、化学的な意思疎通を行い、香りまたは匂いを発して同じ種の別の個体と意思疎通を図るか、あるいは、様々な理由により、他の種により認識され得るシグナルとしてそのような香りや匂いを発する29、37、53−57。植物もまた、化学シグナル伝達を用いて昆虫と相互作用を行う。植物種はアロモンまたはその他の化学シグナルを発して益虫を引き寄せることが知られている58。これらの化学シグナルは、摂食、採餌、産卵、または交配のような昆虫の行動の決定的な局面を制御する23。化学的刺激による意思疎通の重要性の為に、昆虫は高度に敏感な化学感覚システムを発達させてきた。したがって、昆虫の化学感覚性蛋白質は、これらの化学シグナルの認識に理想的に適している。
【0112】
コドリンガ(Cydia pomonella)は、合衆国では、仁果類の害虫である。コドリンガはフェロモンであるコドレモンを用いることで、交配のために個体同士が互いの位置をつきとめることが可能である。コドレモンの構造と機能はよく特徴づけられており、雄の蛾がそれに反応することが知られている101−104。現在、リンゴ果樹園におけるコドリンガの侵入の程度を、雄の蛾を捉えるための接着剤とそれらを引き付ける人工のコドレモンとを組み合わせた罠を用いて監視しているが、人間の介入が必要である。本発明は、空気中のコドレモンを同定することにより蛾を検出するコドリンガ・バイオセンサーを開発する手段を提供するものである。コドリンガ由来の化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを、これらの蛋白質をインビトロで発現させることにより作成する。他にも幾つかの種がコドレモンを同定できる蛋白質を発現すると考えられるため、アレイには、他の昆虫種由来の化学感覚性蛋白質が含まれていてもよい。例えば、コドリンガを餌にする狩蜂のような捕食者は、蛾が放出する揮発性の香りや匂いを検出することのできる化学感覚性蛋白質を発現させると考えられる。したがって、蛋白質アレイには狩蜂種由来の化学感覚性蛋白質が含まれていてもよい。そのアレイを用いてコドレモンについての化学感覚性のプロファイルを作成する。この化学感覚性のプロファイルに含まれる化学感覚性蛋白質を検出装置に組み込む一方で、レポーター・メカニズムに連結する。このバイオセンサー装置もまた無線周波数識別(RFID)メカニズムに連結して、侵入を遠隔で監視できるようにしてもよい。
【0113】
コドリンガの付いたリンゴは、合衆国から果物を輸入する幾つかの国で禁止されている。そのため、RFIDメカニズムと組み合わせた本発明のこの態様は、輸送中にコドリンガが侵入する可能性に備えて果実の出荷を監視し、侵入された出荷物が到着しないことを確実にするために用いることができる。
【実施例11】
【0114】
実施例11:人間の結核を検出するためのバイオセンサー
人間の疾病の幾つかは、皮膚、呼気、または体液を通した、患者による検出可能な揮発性物質の放出を引き起こす。そのような疾病の一つが肺結核であり65、マイコバクテリウムが引き起こす、人間における接触伝染性の疾病である。先進国の人々の間での結核(TB)の感染は1990年代に再流行したが、それは、移民の流入、その疾病がそれまでに根絶されていた国々でTB対策が緩和されていたこと、及びエイズにより免疫が抑制された患者の数が増大したことによる。
【0115】
TBの原因となる生物への暴露について人間を試験するために確立された方法は、二十世紀始めに開発され、フランス人医師の名シャルル・マントーにちなんで命名された。そのマントー試験は、通常は被験者の前腕内側に行う、10ツベルクリン単位の皮内注射を伴うものである。被験者は、注射部位でツベルクリンに対する可視的な反応について72時間後まで観察される。マントー試験の一つの欠点は、注射と分析との間に遅れの期間があることである。もう一つの欠点は、その試験は結核が活動性であることを確認するものではないということである。むしろ、それは単に、被験者がある時点で、その微生物にさらされたということを確認するものにすぎない。更に、結果の解釈は原則的に、被験者の病歴に応じて主観的に行われる。例えば、5mmの硬結(ミリメートルで測定した)は、HIV患者では陽性であるが、検査技師、薬物使用者または糖尿病患者では陰性である。後者の人々は10mmで陽性と考えられる。
【0116】
本発明は、被験者の呼気中の肺TBに関連する揮発性物質を検出することに基づき、ヒトにおける活動性結核を迅速に診断する為のバイオセンサーを構成する手段を提供するものである。この装置は、通関地、空港、健康診療所、及びその他の、人工密度が高いために公衆の検診を注意深く行う必要があるところ(寮、軍事基地など)で用いることができる。これをなし遂げる為に、数多くの昆虫種に由来する、インビトロで発現した昆虫の化学感覚性蛋白質を含む昆虫の化学感覚性蛋白質アレイを用いて、ヒトの肺TBに関連する揮発性物質が試験される。その化学感覚性アレイを用いて、既に本文中で前述したように、ヒトにおける活動性のTB感染についての化学感覚性のプロファイルを作成し、この化学感覚性のプロファイルに含まれる、化学感覚性アレイの部分(化学感覚性蛋白質)を検出装置内に組み込む一方で、レポーター・メカニズムに連結する。感染していない人間の呼気を対照として用いて、人間の呼気中の正常な分析対象を認識する化学感覚性蛋白質をTBバイオセンサーにおけるアレイから排除する。これらの装置は診療所、病院、移動式健康管理室、野戦病院、人道的救済活動、及びその他の健康管理または診断用途に用いることができる。そのような装置はまたRFIDメカニズムに連結して、公衆衛生当局が迅速にデータ収集をできるようにすることもできる。
【実施例12】
【0117】
実施例12:森林火災を遠隔的に検出するためのバイオセンサーを開発する
タマムシ(Melanophila spp.)は、産卵するには、焼けたばかりの森林区域の位置をつきとめなければならない。そのため、この種は、森林火災を検出するために、自分の化学感覚システムを頼りにする72。このような甲虫は、グアヤコール72(C)のようなフェノール化合物を同定することにより、数キロメートルの距離からでも、燃えている木を検出することができる。
【0118】
本発明は、森林火災を遠隔的に検出し、しかるべき当局に信号を送るために用いることができる、昆虫の化学感覚性蛋白質に基づいたバイオセンサーを構築する手段を提供するものである。フェノール化合物及び/または燃焼副生成物に感受性を有することが知られている種を含む数多くの昆虫種に由来する化学感覚性蛋白質を含む化学感覚性アレイを用いて、木が燃えることから生じる煙に反応する蛋白質を同定する。これらの化学感覚性蛋白質は、電気的または電子的なレポーター・システムまたは警報機と組み合わせると、新規な火災検出装置に用いることができる。例えば、アレイの蛋白質を、電源と、アレイの蛋白質が煙を検出するとRFID送信機を作動させる電気的レポーター・メカニズムとを備えた小型装置に組み込む。その送信機は防火担当の当局が遠隔的に監視することができる。この装置の他の用途の例には、空港、倉庫または貯蔵施設、出荷、通関地、燃料貯蔵施設、及び公衆の集合する場所などがある。
【実施例13】
【0119】
実施例13:人工的に使用されるコドレモンの量を決定することにより、コドリンガ(CYDIA POMONELLA LINNAEUS)の個体数を管理する
本発明は、現場で人工的に使用されるフェロモンの量を定量化する方法を提供するものである。これは、フェロモンの使用に基づき、交信攪乱を用いて害虫の個体数を制御しようとする場合には特に役に立つ。本発明は、最初にフェロモンを使用した後、つぎの使用はいつが望ましいかを示すことができる。この実施例では、本発明は、コドリンガのコドレモンの使用を監視する為に用いられる。
【0120】
コドリンガによるコドレモン102の検出に関与しているGPCRをコードする遺伝子を、イオン・チャンネルに連結されたレポーター遺伝子カスケードが組み込まれているショウジョウバエ、哺乳動物、酵母菌、またはその他の真核細胞へと形質変換する。これらの細胞を、つぎに、二つの電極の間に検出可能な電流を通す能力を有するシリカゲルの中に埋め込む。コドリンガのコドレモンが空気中にあれば、シリカゲルの中に埋め込んだ細胞の中のGPCRがそれと結合し、シグナル伝達カスケードを開始し、そこから細胞膜を通過するイオンの流れ(例えばカルシウムイオン)が生じる。このイオンの流れが、測定可能な電流または電位の変化を引き起こす。このようにして、本発明は、さらなるコドレモンの使用が望ましいかどうかを示すために用いることができる。
【0121】
別の方法として、コドレモンを検出するために、テスト紙片上に色の変化を引き起こす酵素反応を、イオンの流れの代りに使ってもよい。この方法では、化学感覚性蛋白質を酵素的なレポーター・カスケードに連結し、それが誘発されると、着色した生成物(例えば、ベータガラクトシダーゼ105)が放出される。この生成物の装置上での出現は、コドレモンの存在を示す。
【実施例14】
【0122】
実施例14:化学感覚性蛋白質またはそれらのペプチド誘導体を用いて、環境から選択的に匂いを除去することのできるゲルを開発する
本発明は、匂いを抑える効率の高い製品の開発に望ましい組成物及び方法を提供するものである。これらの製品は、不快な匂いがこもらざるを得ないあらゆる環境で使用できる。これらの製品を開発する為に、本発明による方法を用いて、放臭物質結合蛋白質を精製、濃縮、または同定することができる。
【0123】
例えば、OBPまたはペプチド誘導体をコードするDNA配列を、当該分野において周知の手段を用いてインビトロで発現させる。つぎに、そのOBPまたはペプチド誘導体を、防臭が望ましい環境に配置可能な水性ゲルの中に組み込む。そのような環境から発散される匂い、香り、または情報物質は、OBPまたはOBPのペプチド誘導体によって結合され、それが、原則的に、匂いを閉じ込める作用をする。検出可能な匂いは、そのようにして、大幅に削減される。OBPまたはOBPのペプチド誘導体を組み込んだこれらの防臭ゲルは、限定はされないが、個人または公共の洗面所、車庫、台所、貯蔵区域、またはゴミ容器を含む場所において役に立つ。
【実施例15】
【0124】
実施例15:細菌細胞中に発現する化学感覚性蛋白質を用いて浄水する
浄水または水処理施設では、汚染物質、廃棄物、及びその他の望ましくない化合物を排水システムの中に集められた水から除去し、その水を様々な用途に使えるようにすること、あるいは、単に、環境を汚染することなく、川、湖、または海へと放流することができるほどの安全な水にすることに重点がおかれている。例えば、揮発性有機化合物は水においては極めて望ましくないものであり、処理施設では、水からこのような化合物を除去しなければならない。
【0125】
望ましくない揮発性有機化合物(VOC)を、昆虫の化学感覚性蛋白質アレイを用いてスクリーニングし、既に説明したように、VOCを認識する能力を有する化学感覚性蛋白質を同定する。これらの化学感覚性蛋白質をコードするDNA配列をつぎに、当該分野において周知の細菌発現ベクター及び細菌形質転換ベクター内にクローニングし、大腸菌を形質変換する。細菌細胞は、昆虫の組換え化学感覚性蛋白質を発現し、その蛋白質を細胞膜に組み込んで、その蛋白質がその細胞の外表面の上に存在するようにする。これらの細菌の培養物は、処理対象の水の中で成長し得る。細菌細胞表面上の化学感覚性蛋白質は望ましくないVOCに結合し、そしてそれらを溶液から除去する。このように、本発明のこの態様は水処理施設での使用にふさわしい。
【0126】
本出願において参照される特許文献及び科学論文を含む全ての刊行物、ならびに参考文献一覧及び添付書類は、個々の刊行物のそれぞれが参照することにより組み込まれるのと同様の限りにおいて、参照することによりそれらの全体が本書に組み込まれるものである。全ての表題は読み手の利便性を考慮したものであり、特に明記のない限り、表題につづく本文の意味を限定するために用いられてはならない。
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【先行技術文献】
【非特許文献】
【0127】
【非特許文献1】Canhoto,O.F. & Magan,N. Potential for detection of microorganisms and heavy metals in potable water using electronic nose technology. Biosens Bioelectron 18,751−4(2003).
【非特許文献2】Ouellette,J. Electronic noses sniff out new markets. The Industrial Physicist 5(1999).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中または溶液中の天然または合成の情報物質を、バイオセンサーを用いて同定する方法であり、
a)問題の前記情報物質を認識する能力を有するGPCRまたはGPCR断片またはペプチド誘導体を提供し、
b)前記GPCR、断片またはペプチドをレポーター・システムに組み込み、そして
c)前記レポーター・システムの活性化を検出し、それにより、前記情報物質の存在を検出すること
を含む方法。
【請求項2】
前記レポーター・システムが、測定可能な色の変化を引き起し、測定可能な電気的変化を引き起し、酵素的に活性化され、化学的に活性化され、電気的に活性化され、表面プラズモン共鳴を用い、細胞に基づく分析を用い、または蛍光に基づく分析を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GPCRが放臭物質受容体または味覚受容体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
空気中または溶液中の天然または合成の化学物質を、バイオセンサーを用いて同定する方法であり、
a)問題の前記化学物質を結合する能力を有する、昆虫の化学感覚性蛋白質、蛋白質断片またはペプチド誘導体を提供し、
b)前記蛋白質、断片またはペプチドをレポーター・システムに組み込み、そして
c)前記レポーター・システムの活性化を検出し、それにより、前記化学物質の存在を検出すること
を含む方法。
【請求項5】
前記レポーター・システムが、測定可能な色の変化を引き起し、測定可能な電気的変化を引き起し、酵素的に活性化され、化学的に活性化され、電気的に活性化され、表面プラズモン共鳴を用い、細胞に基づく分析を用い、または蛍光に基づく分析を用いる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化学感覚性蛋白質が、放臭物質結合蛋白質、味覚結合蛋白質、味覚受容体、感覚付属蛋白質、可溶性化学感覚性蛋白質、ショウジョウバエのTakeout蛋白質のオーソログ、概日リズム蛋白質、フェロモン結合蛋白質、または感覚システムに関与する他の可溶性蛋白質である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
所与の分析対象について化学感覚性の「署名」または「フィンガープリント」を作成する方法であり、
a)無脊椎動物由来の化学感覚性蛋白質、断片、またはペプチドのコレクションを作成し、
b)前記コレクションを、酵素または蛍光に基づくレポーター・メカニズムのようなレポーター・メカニズムに連結して、化学感覚性蛋白質アレイを作成し、そして
c)その分析対象をその化学感覚性アレイに暴露し、分析対象を結合することができる、アレイにおける化学感覚性蛋白質、断片、またはペプチドの正体を記録し、その上で、分析対象の化学感覚性のフィンガープリントを作成すること
を含む方法。
【請求項8】
特定の分析対象または分析対象の複合混合物を結合する能力を有する化学感受性蛋白質、断片、またはペプチドを含む化学感受性アレイのサブセットを用いて、特定の分析対象または分析対象の複合混合物についての検出装置または精製装置を作成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レポーター・システムが、測定可能な電気的変化を引き起し、酵素的に活性化され、化学的に活性化され、電気的に活性化され、表面プラズモン共鳴に基づき、細胞に基づく分析を用い、または蛍光に基づく分析を用いる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記蛋白質が、新規な方法で組み合わされた、または定方向突然変異誘発もしくは組換えDNA技術を用いてインビトロで組み合わされた、組換え化学感覚性蛋白質の断片であるペプチド断片から作成されたハイブリッドドメインまたはハイブリッドモチーフを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
空気中または溶液中の天然または合成の化学物質または分析対象を精製する方法であり、
a)問題の前記分析対象を認識する能力を有する化学感覚性蛋白質、断片またはペプチドを提供し、そして
b)前記化学感覚性蛋白質、断片またはペプチドを選択的な濾過装置の中に組み込むこと
を含む方法。
【請求項12】
匂い、情報物質またはその他の化合物を、その匂いまたは情報物質に結合し、ゲル、流体、溶液、エアロゾル、固体またはその他の装置に組み込まれている化学感覚性蛋白質、断片またはペプチドを用いて、マスキングするかまたは閉じ込める方法。
【請求項13】
前記化学感覚性蛋白質が、放臭物質結合蛋白質、味覚結合蛋白質、味覚受容体、感覚付属蛋白質、可溶性化学感覚性蛋白質、ショウジョウバエのTakeout蛋白質のオーソログ、概日リズム蛋白質、フェロモン結合蛋白質、または感覚システムに関与する他の可溶性蛋白質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
化合物、分子または物質の混合物の存在下において特定の化合物、分子または物質を選択する方法であり、
a)似通った構造を有するかまたは非常に選択的な、化合物群を選択し、そして
b)組成が同じで、立体構造だけが異なる二つ以上の分子の間で、一つの立体異性体を選択すること
を含む方法。
【請求項15】
前記化学感覚性蛋白質が、放臭物質結合蛋白質、味覚結合蛋白質、味覚受容体、感覚付属蛋白質、可溶性化学感覚性蛋白質、ショウジョウバエのTakeout蛋白質のオーソログ、概日リズム蛋白質、フェロモン結合蛋白質、または感覚システムに関与する他の可溶性蛋白質である、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−523936(P2010−523936A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533323(P2009−533323)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/021820
【国際公開番号】WO2008/091306
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509107334)
【氏名又は名称原語表記】WOODS, Daniel, F.
【出願人】(509107345)
【氏名又は名称原語表記】DIMITRATOS, Spiros, D.
【出願人】(509107356)
【氏名又は名称原語表記】JUSTICE, Robin, W.
【Fターム(参考)】