説明

無臭大蒜の製造方法及びその無臭大蒜

【課題】この発明は、大蒜独特の外観や風味を保ったまま、大蒜特有の不快臭を短い時間で効率よく除去することができる無臭大蒜の製造方法及びその無臭大蒜の提供を目的とする。
【解決手段】添加工程aで発芽黒豆A及び発芽玄米Bに発酵菌Cを添加し、発酵工程bで発酵菌Cが添加された発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵させる。抽生大蒜乾燥工程dで特有の不快臭が発せられる生の大蒜Eを乾燥し、大蒜貯蔵工程eで乾燥された大蒜Eを一時貯蔵する。大蒜浸漬工程fで前記フィチンが含まれる発酵液Dに乾燥済みの大蒜Eを浸漬し、該大蒜Eの内部に発酵液Dを吸収或いは浸透させる。無臭大蒜乾燥工程gで発酵液Dに含まれるフィチンによって特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを乾燥させ、特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば大蒜独特の外観や風味を保ったまま、大蒜特有の不快臭を除去する際に用いられる無臭大蒜の製造方法及びその無臭大蒜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記大蒜特有の不快臭を消臭する方法としては、例えば活性ケイ酸ゾル、フィチン、水溶性亜鉛化合物を含有する水溶液中に生大蒜球根を浸漬して、水溶液の浸透により生大蒜球根の不快臭を除去した後、水溶液中から取り出した生大蒜球根を乾燥する特許文献1の生大蒜の脱臭方法がある。また、他の方法として、メゾイノシットヘキサリン酸エステル及び/又はケイ酸ゾルを含有する脱臭液に生大蒜を浸漬して、脱臭液の浸透により生大蒜の不快臭を脱臭した後、脱臭液から取り出した生大蒜を脱水して乾燥する特許文献2の耐久性無臭大蒜加工方法がある。
【0003】
しかし、特許文献1,2の方法は、生大蒜の内部に水溶液及び脱臭液を浸透させて、大蒜特有の不快臭を除去するものであるが、生大蒜には水分が多く含まれており、水溶液及び脱臭液の浸透が妨げられることになる、つまり、水溶液及び脱臭液を生大蒜の内部に浸透させることが難しく、生大蒜の不快臭を完全に除去することができない。また、水溶液及び脱臭液を浸透させるのに時間がかかるため、多数の大蒜を短い時間で処理することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−259157号公報
【特許文献2】特開平1−269465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、大蒜独特の外観や風味を保ったまま、大蒜特有の不快臭を短い時間で効率よく除去することができる無臭大蒜の製造方法及びその無臭大蒜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、収穫された生の大蒜から特有の不快臭を除去する際に用いられる無臭大蒜の製造方法であって、発芽時期に収穫された豆類及び/又は穀類に発酵菌を添加する添加工程と、前記発酵菌が添加された豆類及び/又は穀類を発酵する発酵工程と、前記特有の不快臭が発せられる生の大蒜を適宜水分量に乾燥する生大蒜乾燥工程と、前記豆類及び/又は穀類を発酵菌で発酵してなるフィチンが含まれる発酵液に前記乾燥された大蒜を浸漬し、該大蒜の内部に発酵液を吸収或いは浸透させる大蒜浸漬工程と、前記発酵液に含まれるフィチンによって特有の不快臭が除去された無臭大蒜を適宜水分量に乾燥する無臭大蒜乾燥工程とを備えた無臭大蒜の製造方法であることを特徴とする。
【0007】
この発明の態様として、前記添加工程で添加される前記発酵菌を、乳酸菌、酵母菌、納豆菌の中から選択した単一種又は複数種の菌で構成することができる。
【0008】
また、この発明の態様として、前記生大蒜乾燥工程で乾燥される前記生大蒜を、約70%〜約75%の範囲に含まれる水分量に乾燥することができる。
【0009】
また、この発明の態様として、前記無臭大蒜乾燥工程において前記無臭大蒜を乾燥させる際の温度を20℃〜40℃の範囲に設定することができる。
【0010】
また、この発明は、発芽時期に収穫された豆類及び/又は穀類に発酵菌を添加して発酵させ、前記豆類及び/又は穀類を発酵菌で発酵してなるフィチンが含まれる発酵液に、適宜水分量に乾燥された生の大蒜を浸漬して該大蒜内部に発酵液を吸収或いは浸透させ、前記発酵液に含まれるフィチンによって特有の不快臭が除去された大蒜を適宜水分量に乾燥した無臭大蒜であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明の態様として、前記豆類及び/又は穀類に添加される前記発酵菌を、乳酸菌、酵母菌、納豆菌の中から選択した単一種又は複数種の菌で構成することができる。
【0012】
前記豆類は、例えば黒豆、大豆、インゲン豆、ピーナッツ等で構成することができる。また、穀類は、例えば玄米、大麦、小麦、トウモロコシ等で構成することができる。なお、豆類や穀物には、ビタミンB群の一種・イノシトールとリン酸が結合した化合物であるフィチンが多く含まれている。
【0013】
フィチンは、天然由来の安全な抗酸化剤として食品などにも利用されており、胃の中で「フィチン酸」に分解されて、体内で作用される。また、そのフィチンは、アントシアニンなどのポリフェノールの吸収を助ける働きがある。
【0014】
また、免疫力を高める効果、抗がん作用、体臭・口臭などの消臭・防臭に効果がある。さらに、高い抗酸化力があり、人体にとって有害な金属を解毒する働きがある。加えて、肌細胞の老化を防ぎ、美白や保湿、シミ、シワなどに効果を発揮するなど、さまざまな働きが期待されている。
【0015】
発酵菌は、例えば乳酸菌、酵母菌、納豆菌等の中から選択した単一種又は複数種の発酵菌で構成することができる。
【0016】
また、豆類及び/又は穀類に、例えば有機栽培の農産物から抽出された有機黒糖、或いは、有機栽培されたケール等を適宜量添加してもよい。なお、有機黒糖の代わりに、ステビア草から抽出されたステビア甘味料を用いてもよい。
【0017】
ケールは、例えば稲科植物、アブラナ科植物等の成葉段階で収穫されたケール成葉、或いは、芽出し野菜の1種であるケールスプラウト等の成葉で構成することができる。また、ケールスプラウトは、芽出し野菜の1種であり、例えばキャベツ、ブロッコリー等の種子や豆を発芽させた単一種又は複数種の野菜で構成することができる。
【0018】
また、ケールには、例えばビタミン類、β−カロチン、食物繊維、たんぱく質、カルシウム、マグネシウム等のミネラルに加えて、抗酸化作用・抗ガン作用をもつファイトケミカルが豊富に含まれている。さらに、ファイトケミカルは、例えばアリルイソチオシアネート、ポリフェノール、アントシアニン、イソフラボン、β−カロチン等で構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、豆類及び/又は穀類を発酵菌で発酵してなるフィチンを含んだ発酵液に、適宜水分量に乾燥された生の大蒜をそのまま浸漬する。つまり、従来例のようなフィチンが主として含まれる水溶液又は脱臭液に大蒜を直接浸漬するよりも、フィチンを含んだ発酵液が大蒜の内部に対し吸収或いは浸透されやすく、大蒜独特の外観や風味を保ったまま、大蒜特有の不快臭を短い時間で効率よく除去することができる。
【0020】
これにより、特有の不快臭が除去された無臭大蒜を簡単且つ容易に製造することができるとともに、無臭大蒜が入った料理や食品を食べても、大蒜特有の不快臭が放出されず、人と接する際に不快感を与えることがなくなる。
【0021】
また、豆類及び/又は穀類に含まれるフィチン以外の有効成分が、発酵菌の発酵作用により人体に吸収されやすい状態に分解されるので、豆類、穀類、大蒜に含まれる複数の成分による効果が相乗して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における無臭大蒜の製造方法を示す工程図。
【図2】生大蒜乾燥工程にて乾燥される生大蒜を示す縦断側面図。
【図3】大蒜浸漬工程にて発酵液に浸漬された乾燥大蒜及び発酵液から取り出された無臭大蒜を示す縦断側面図。
【図4】無臭大蒜乾燥工程にて乾燥される無臭大蒜を示す縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態である無臭大蒜Fの製造方法を示す工程、図2は、生大蒜乾燥工程dにて乾燥される生大蒜Eを示す縦断側面図、図3は、大蒜浸漬工程fにて発酵液Dに浸漬された乾燥大蒜E及び発酵液Dから取り出された無臭大蒜Fを示す縦断側面図、図4は、無臭大蒜乾燥工程gにて乾燥される無臭大蒜Fを示す縦断側面図である。
【0024】
本発明の無臭大蒜Fの製造方法は、図1に示すように、収穫された生の大蒜Eから特有の不快臭を除去する際に用いられる無臭大蒜Fの製造方法であって、有機栽培されたフィチンが含まれる発芽黒豆A及び発芽玄米Bに、乳酸菌Ca、酵母菌Cb、納豆菌Ccからなる発酵菌Cを適宜量添加する添加工程aと、前記発酵菌Cが添加された発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵する発酵工程bと、前記発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなる発酵物からフィチンが含まれる発酵液Dを抽出する抽出工程cと、前記特有の不快臭が発せられる生の大蒜Eを乾燥する生大蒜乾燥工程dと、前記乾燥された大蒜Eを低温で貯蔵する大蒜貯蔵工程eと、前記発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなるフィチンが含まれる発酵液Dに前記乾燥された大蒜Eを浸漬し、該大蒜Eの内部に発酵液Dを吸収或いは浸透させる大蒜浸漬工程fと、前記発酵液Dに含まれるフィチンによって特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを乾燥する無臭大蒜乾燥工程gとを備えている。
【0025】
添加工程aは、発芽時期に収穫された豆類の一種である発芽黒豆A及び穀類の一種である発芽玄米Bに、図示しない添加装置を用いて、乳酸菌Ca、酵母菌Cb、納豆菌Ccからなる発酵菌Cを適宜量添加する。実施例では、有機栽培された発芽黒豆A及び発芽玄米Bが使用されている。
【0026】
また、発酵菌Cを、図示しない粉砕装置で粉砕された粉末状の発芽黒豆A及び/又は発芽玄米Bに適宜量添加するか、図示しない抽出装置で抽出された発芽玄米B及び/又は発芽黒豆Aの抽出物に適宜量添加するなどしてもよい。
なお、乳酸菌Caと、酵母菌Cbと、納豆菌Ccからなる発酵菌Cを発芽黒豆A及び/又は発芽玄米Bに添加するのが最適であるが、乳酸菌Caと、酵母菌Cbと、納豆菌Ccのうち単一種又は複数種を、その他の食用に供する菌等の中から選択した発酵菌Cに変更するか、乳酸菌Caと、酵母菌Cbと、納豆菌Ccの全種を、実施例以外の菌に変更する等してもよい。
【0027】
発酵工程bは、添加工程aにて発酵菌Cが添加された発芽黒豆A及び発芽玄米Bを、図示しない発酵装置を用いて適宜発酵時間が経過するまで適宜圧力及び/又は適宜温度で発酵する。
つまり、発酵菌Cによる発酵作用によって、発芽黒豆A及び発芽玄米Bに含まれるγ−アミノ酪酸や必須アミノ酸が分子細分化されるので、体内への吸収効率が向上する。
【0028】
また、γ−アミノ酪酸及び必須アミノ酸が富化することにより、例えば血圧上昇抑制作用、精神安定作用、腎機能改善作用、肝機能改善作用、肥満防止作用、口臭や体臭などの消臭効果が得られる。また、必須アミノ酸は体内で生合成することが不可能なアミノ酸であって、この必須アミノ酸(旨味成分)の富化により、発芽黒豆Aから抽出された豆乳を主原料とする豆乳経口食品の美味しさ及び食感を向上させることができる。
【0029】
また、発芽黒豆Aには、発芽前の黒豆に比べてイソフラボンが多く含まれており、例えば美白作用、保湿性の向上、生理不順の改善、肌荒れ、小皺、肥満、シミ、肌の潤い、或いは、更年期障害の軽減、骨粗鬆症、動脈硬化、乳癌や前立腺癌の予防等の効果が十分に得られる。
【0030】
抽出工程cは、発酵工程bにて発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなる発酵物を、図示しない抽出装置を用いて適宜抽出時間が経過するまで適宜圧力で加圧及び/又は適宜温度で加熱して、発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなる発酵物からフィチンが含まれる発酵液Dを抽出する。
つまり、発芽黒豆A及び発芽玄米Bには、大蒜E特有の不快臭を除去するためのフィチンが多く含まれているので、フィチンが含まれる発酵液Dを適宜量抽出することができる。
【0031】
生大蒜乾燥工程dは、有機栽培された大蒜E特有の不快臭が発せられる生の大蒜Eを発芽タイミングに合せて人為的又は機械的に収穫した後、その収穫された大蒜Eを、図示しない温度及び湿度が管理された乾燥室に収容又は移動して、図示しない乾燥装置から供給される熱風Hにより適宜水分量に乾燥させる。
【0032】
つまり、図2に示すように、発芽時期に収穫された大蒜Eを加工するか、大蒜Eから表皮を剥離することなく、乾燥室に収容された大蒜Eに、乾燥装置から供給される38℃の熱風Hを均一に吹き付けて収穫時の外観を保ったまま適宜水分量に乾燥させる。
これにより、生の大蒜Eに含まれる水分Wの約25%〜約30%が、適宜水分量に乾燥された熱風Hによって蒸発気化し、大蒜Eの水分量が約70%〜約75%となるように均一に乾燥される。
なお、大蒜Eの水分量に応じて、熱風Hの温度を38℃以下又は38℃以上に可変調整してもよい。また、大蒜Eの水分量が約70%以下又は約75%以上となるように調整してもよい。
【0033】
大蒜貯蔵工程eは、生大蒜乾燥工程dにて乾燥された大蒜Eを、図示しない温度及び湿度が管理された貯蔵室に収容又は移動して、図示しない冷凍装置から供給される冷気により、次の大蒜浸漬工程fにおける処理時期が到来するまで貯蔵される。また、無臭大蒜Fの出荷時期が到来するか、貯蔵時間が経過するまで一時的に貯蔵してもよい。
つまり、貯蔵室は、図示しない冷凍装置から供給される冷気によって、大蒜Eを長期保存するのに適した温度及び湿度に保たれており、適宜水分量に乾燥された大蒜Eをそのまま長期間保存することができる。
実施例では、貯蔵室における貯蔵時の温度を、−2℃の低温に設定しているが、大蒜Eの貯蔵状況に応じて、−2℃以下又は−2℃以上に調整してもよい。また、貯蔵室の代わりに、例えば貯蔵庫、貯蔵施設等に貯蔵してもよい。
【0034】
大蒜浸漬工程fは、生大蒜乾燥工程dにて乾燥された大蒜Eを、図3に示す浸漬槽f1の浸漬領域に貯液された発酵液D中に浸漬して、その乾燥された大蒜Eの内部に、フィチンが含まれる発酵液Dを均一に吸収或いは浸透させる。つまり、発酵液Dに含まれるフィチンによって大蒜E特有の不快臭が除去される。
【0035】
浸漬槽f1には、前記抽出工程cにて発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなる発酵物から抽出されたフィチンを含んだ発酵液Dが、生大蒜乾燥工程dにて乾燥された大蒜E全体の浸漬が許容される貯液レベルに貯液されている。
【0036】
また、浸漬槽f1に貯液された発酵液Dは、図示しない液管理装置によってフィチンを含んだ発酵液Dが大蒜Eの内部に対し効率よく吸収或いは浸透される温度及び液量に管理されている。
【0037】
つまり、フィチンが含まれる発酵液D中に、適宜水分量に乾燥された大蒜Eをそのまま浸漬するので、フィチンを含んだ発酵液Dが大蒜Eの内部に対し均一に吸収或いは浸透されやすく、発酵液Dに含まれるフィチンによって大蒜E特有の不快臭が短い時間で効率よく除去される。
【0038】
無臭大蒜乾燥工程gは、大蒜浸漬工程fにて特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを、前記浸漬槽f1に貯液された発酵液Dから取り出した後、その取り出された無臭大蒜Fを、図示しない温度及び湿度が管理された乾燥室に収容又は移動して、図示しない乾燥装置から供給される熱風Hにより適宜水分量に乾燥させる。
【0039】
つまり、図4に示すように、特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを加工するか、無臭大蒜Fから表皮を剥離することなく、乾燥室に収容又は移動された無臭大蒜Fに、乾燥装置から供給される熱風Hを均一に吹き付けて収穫時の外観を保ったまま適宜水分量に乾燥させる。
【0040】
また、乾燥時の温度を20℃〜40℃の低い温度に保ったまま、無臭大蒜Fの内部に存在する発酵液Dなどの水分WDを蒸発気化させ、無臭大蒜F全体を適宜水分量に乾燥させる。
つまり、乾燥時に吹き付けられる熱風Hの熱によって、無臭大蒜Fに含まれるγ−アミノ酪酸や必須アミノ酸、イソフラボン等の成分が分解又は変質することがなく、成分の特性及び効果を損なうことなく適宜水分量に乾燥することができる。
【0041】
したがって、前記本発明の製造方法を用いて製造することにより、特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを製造することができる。また、前記製造方法によって特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fは、無臭大蒜乾燥工程gの後段に設けられた出荷工程hにて袋詰め処理或いは箱詰め処理された後、例えば食品製造工場、料理店、商店、スーパー、個人客等に出荷或いは販売される。
【0042】
以上のように、発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなるフィチンを含んだ発酵液Dに、適宜水分量に乾燥された生の大蒜Eをそのまま浸漬する。つまり、従来例のようなフィチンが主として含まれる水溶液又は脱臭液に大蒜Eを直接浸漬するよりも、フィチンを含んだ発酵液Dが大蒜Eの内部に対し均一に吸収或いは浸透されやすく、大蒜E独特の外観や風味を保ったまま、大蒜E特有の不快臭を短い時間で効率よく除去することができる。
これにより、特有の不快臭が除去された無臭大蒜Fを簡単且つ容易に製造することができるとともに、多数の大蒜Eから不快臭を除去する処理作業及び処理能力の向上を図ることができる。また、無臭大蒜Fが入った料理や食品を食べても、大蒜E特有の不快臭が放出されず、人と接する際に不快感を与えることがなくなる。
【0043】
また、発芽黒豆A及び発芽玄米Bに含まれるフィチン以外の有効成分が、発酵菌Cの発酵作用により人体に吸収されやすい状態に分解されるので、発芽黒豆A、発芽玄米B、大蒜Eに含まれる複数の成分による効果が相乗して得られる。
【0044】
また、発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなる発酵液Dが吸収された無臭大蒜Fを料理用の材料として用いるか、加工食品に添加すれば、発芽黒豆Aと、発芽玄米Bと、発酵菌Cとを一緒に摂取することができ、複数の成分による効果が相乗して得られる。
【0045】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の発酵菌Cは、実施例の乳酸菌Ca、酵母菌Cb、納豆菌Ccに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0046】
本発明の実施例では、発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなる発酵物から抽出されたフィチンが含まれる発酵液Dに、生大蒜乾燥工程dで乾燥された大蒜Eを浸漬する製造方法を説明したが、例えば発芽黒豆A及び発芽玄米Bを発酵菌Cで発酵してなるフィチンが含まれる発酵液Dに、前記生大蒜乾燥工程dで乾燥された大蒜Eを直接浸漬してもよい。
【0047】
つまり、発芽黒豆A及び発芽玄米Bが発酵液D中に混入していても、フィチンが含まれる発酵液Dのみが大蒜Eの内部に吸収或いは浸透されるので、実施例と同等の作用及び効果を奏することができる。
これにより、本発明の無臭大蒜Fの製造方法から抽出工程cを取り除いてもよく、製造工程の簡素化及び製造時間の短縮を図ることができる。
【0048】
前記添加工程aにおいて、発酵菌Cに加えて、例えば天然甘味料の一例である有機栽培の農産物から抽出された有機黒糖を適宜量添加してもよい。つまり、次の発酵工程bにおいて、発芽黒豆A及び発芽玄米Bの発酵が促進され、カリウム、カルシウム、リン、鉄、ビタミンB1、ビタミンE、サポニン、イソフラボノイド及び各種ポリフェノール類等のミネラルが富化される効果が相乗して得られる。また、ミネラルが体内へ吸収されやすくなる。
【0049】
また、有機黒糖を添加すれば、豆乳の脂質量が少なくなり、豆乳アレルギーが発生するのを抑制して、発生率を低減する効果が得られる。なお、有機黒糖の代わりに、ステビア草から抽出されたステビア甘味料を用いてもよく、前記有機黒糖の添加と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0050】
さらにまた、発酵菌Cに加えて、例えば成葉段階で収穫されたケールを所定量添加してもよい。つまり、ケールは、次の発酵工程bにおいて、発酵菌Cによる発酵分解作用によって分子細分化されるので、体内への吸収効率が向上する。
また、成葉段階で収穫されたケールには、例えばビタミン類やβ-カロチン、食物繊維、たんぱく質、カルシウム、マグネシウム等のミネラルが豊富に含まれている。なお、ケールの粉末を添加する代わりに、例えば芽出し野菜の1種であるケールスプラウトの粉末を添加してもよい。
【0051】
また、豆類の一種である発芽黒豆Aの代わりに、例えば大豆、インゲン豆、ピーナッツ等を使用するか、穀類の一種である発芽玄米Bの代わりに、例えば大麦、小麦、トウモロコシ等を使用してもよい。
また、大蒜Eの乾燥に使用される熱風Hの代わりに、例えば遠赤外線照射装置から照射される遠赤外線で乾燥してもよい。
【符号の説明】
【0052】
a…添加工程
b…発酵工程
c…抽出工程
d…生大蒜乾燥工程
e…大蒜貯蔵工程
f…大蒜浸漬工程
g…無臭大蒜乾燥工程
h…出荷工程
A…発芽黒豆
B…発芽玄米
C…発酵菌
Ca…乳酸菌
Cb…酵母菌
Cc…納豆菌
D…発酵液
E…生大蒜
F…無臭大蒜
H…熱風
W,WD…水分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫された生の大蒜から特有の不快臭を除去する際に用いられる無臭大蒜の製造方法であって、
発芽時期に収穫された豆類及び/又は穀類に発酵菌を添加する添加工程と、
前記発酵菌が添加された豆類及び/又は穀類を発酵する発酵工程と、
前記特有の不快臭が発せられる生の大蒜を適宜水分量に乾燥する生大蒜乾燥工程と、
前記豆類及び/又は穀類を発酵菌で発酵してなるフィチンが含まれる発酵液に前記乾燥された大蒜を浸漬し、該大蒜の内部に発酵液を吸収或いは浸透させる大蒜浸漬工程と、
前記発酵液に含まれるフィチンによって特有の不快臭が除去された無臭大蒜を適宜水分量に乾燥する無臭大蒜乾燥工程とを備えた
無臭大蒜の製造方法。
【請求項2】
前記添加工程で添加される前記発酵菌を、乳酸菌、酵母菌、納豆菌の中から選択した単一種又は複数種の菌で構成する
請求項1に記載の無臭大蒜の製造方法。
【請求項3】
前記生大蒜乾燥工程で乾燥される前記生大蒜を、約70%〜約75%の範囲に含まれる水分量に乾燥する
請求項1又は2に記載の無臭大蒜の製造方法。
【請求項4】
前記無臭大蒜乾燥工程において前記無臭大蒜を乾燥させる際の温度を20℃〜40℃の範囲に設定した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の無臭大蒜の製造方法。
【請求項5】
発芽時期に収穫された豆類及び/又は穀類に発酵菌を添加して発酵させ、
前記豆類及び/又は穀類を発酵菌で発酵してなるフィチンが含まれる発酵液に、適宜水分量に乾燥された生の大蒜を浸漬して該大蒜内部に発酵液を吸収或いは浸透させ、
前記発酵液に含まれるフィチンによって特有の不快臭が除去された大蒜を適宜水分量に乾燥した
無臭大蒜。
【請求項6】
前記豆類及び/又は穀類に添加される前記発酵菌を、乳酸菌、酵母菌、納豆菌の中から選択した単一種又は複数種の菌で構成した
請求項5に記載の無臭大蒜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−252662(P2010−252662A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104876(P2009−104876)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(593008494)遠赤青汁株式会社 (11)
【Fターム(参考)】