説明

無鉛アンバー着色ランプ

【課題】ガラス壁がアンバー色で、ガラス組成が無鉛であるガラス容器を有するランプを提供すること。
【解決手段】ガラス容器を有し、該ガラス壁がアンバー色であるランプにおいて、前記ガラス壁のガラス組成が重量%で、


を含むランプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランプに関するものである。本発明は、特にガラス壁がアンバー色であるガラス容器を有するランプに関するものである。
本発明は白熱ランプ、特に自動車信号ランプ、例えばインジケータランプ(方向指示ランプ)に適用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はランプ用の無鉛ガラス組成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US特許5470805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ガラス壁がアンバー色で、ガラス組成が無鉛であるガラス容器を有するランプを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、ガラス壁がアンバー色で、ガラス組成が酸化鉛や酸化アンチモンやセレンやカドミウムのような環境に有害になり得る有毒成分や禁止成分を含まないガラス容器を有するランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、これらの目的を達成するために、頭書に記載したランプにおいて、ガラス壁の組成を酸化物形態のモリブデンを1重量%まで含むとともに、SO3を2.5重量%まで含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のランプの一例を示す概略図である。
【図2】本発明によるアンバー又はオレンジ着色ガラスの色点を示す色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
このランプは、酸化モリブデンとSO3を含み、無鉛、無カドミウムの硫酸精製ガラス組成を有するガラス壁を有する。
【0009】
本発明のランプの利点は次の点に関連する。自動車信号ランプのような従来の着色ランプのガラスは通常着色ワニスやラッカーを含んでいる。従来のランプの欠点は,ラッカーやワニスが劣化し、最終的にランプ容器の壁から剥がれてしまう点にある。従来のランプの他の欠点は、ランプの製造プロセス中にランプ容器を清浄にしてワニスを塗布するために追加の工程を必要とする点にある。
【0010】
本発明のランプは製造中に追加の製造工程を必要としない。その理由は、ガラスの特定の組成によりガラス容器の特定の色点(カラーポイント)を実現できるためである。少なくとも清浄工程と塗布工程が不要になる。ガラスの特定の組成により、ガラスは自動車信号ランプに好適なアンバーまたはオレンジ色の色点を有するものとすることができる。
【0011】
また、このガラス組成を使用することにより得られる着色ガラスは高品質ガラスをもたらす。その理由は、このガラス組成により得られるアンバー色またはオレンジ色は永遠に変化しないためであり、このような品質はワニス塗布ガラスの場合には得られない。
【0012】
本発明の実施に適宜使用し得るこれらの特徴及び他の特徴は以下に記載する実施例を参照すると明らかになる。
図1はインジケータランプ(方向指示ランプ)とも呼ばれる自動車信号ランプ1を示し、このランプは、
例えば0.3mm〜1.1mmの壁厚さを有するアンバー着色ガラスからなるランプ容器又はバルブ2と、
ガラスバルブ2の内部に取り付けられたビード4で保持された、コイルフィラメント5を支持する2つのリードワイヤ3a及び3bを具えるマウント部3と、 ランプの製造プロセス中にランプ容器2を排気するとともにランプ容器内に不活性ガスを導入し、マウント部3及びバルブ2とともに加熱封止され、気密ピンチ部を形成する排気管7と、
マウント部3に接続され、ランプを自動車の電気回路により付勢する電気接点8と、
ランプセットのホルダに嵌合する口金9と、
を具える。
【0013】
本発明では、ランプのバルブ2は、無鉛、無カドミウムのアンバー着色硫酸塩精製ガラスからなる。
米国特許US5470805号に記載されているように、使用する出発材料は珪砂、リシア輝石、ドロマイト及びLi,Na,K,Sr及びBaの炭酸塩である。精製剤として硫酸ナトリウム(Na2SO4)使用することができる。
【実施例】
【0014】
本発明の好ましい第1の実施例に基づくランプは表1に示す成分を含むガラス組成のガラスバルブを有する。
【表1】

【0015】
SiO2はガラス中の網状結合形成体として作用する。SiO2は60−75重量%に制限し、他の成分と共同して、容易に溶融し得るガラスにする。Al23はガラスの耐薬品性及び耐腐食性を向上する。アルカリ金属酸化物Li23,Na2OおよびK2Oは溶融剤として使用され、ガラスの粘性を低減する。3つのアルカリ金属酸化物のすべてを所定の組成で使用すると、電気抵抗値が十分に高くなる(混合アルカリ効果)。BaOは、ガラスの電気抵抗値を増大するとともに、ガラスの軟化温度(Tsoft)を低減するという好ましい特性を有する。アルカリ土類金属酸化物SrO,MgOおよびCaOはガラスの液化温度及び溶融温度を低減するという好ましい特性を有する。
【0016】
表1に基づく組成の無鉛、無カドミウムのアンバー色の硫酸塩精製ガラスはNa2SO4で精製され、好ましくは0.25−2.5重量%のSO3を含んでいる。このガラスは使用する原料から発する不純物として若干のFe23をさらに含み得る。
【0017】
既知のランプの無鉛ステムガラスに比較して、本発明のアンバー又はオレンジ着色ガラスは、1重量%までのMoO3と炭素や木炭のような還元剤をガラス組成に加えるとともに、多量の硫酸塩のような精製剤を還元雰囲気中に加えて、ガラス組成が2.5重量%までのSO3を含ことができるようにすることにより得られる。還元雰囲気は還元剤の存在によって生じる。ガラス内で分解されたMoO3は特に290−380nm領域において透過率を低減する。硫黄の存在下では、MoO3は珪酸ガラスをオレンジ色に着色し、これはチオモリブデン酸塩の形成により説明される。MoO3のガラス中の溶解性は比較的低い。
【0018】
本発明のもっと好ましい第1の実施例に基づくランプは表2に示す成分を含むガラス組成のガラスバルブを有する。
【表2】

【0019】
その重量%が零に等しい下限値を有する成分については、これらの成分は原料として加えなくてもよく、原料の汚染の結果として完成ガラスに残留してもよいことを意味している。
【0020】
表2に示す成分からなるガラスは表3に示す特性を有する。
【表3】

【0021】
本発明の好ましい第2の実施例に基づくランプは表4に示す成分を含むガラス組成のガラスバルブを有する。
【表4】

【0022】
表4に示す成分を有するガラスは表1及び表2に示す成分を有するガラスに比較してかなり安価なガラスである。表4に示すガラスではK2Oは省略することができる。第1の実施例の高い電気抵抗率のために必要とされる比較的高価な成分を省略することにより著しく安価なガラスが得られる。これはソーダライムガラスと通常呼ばれるタイプのガラスである。
【0023】
表4に示す成分からなるガラスは表5に示す特性を有する。
【表5】

【0024】
ガラス製造プロセスを以下に記載する。上述したすべての酸化物成分を計量し混合してバッチを用意する。このバッチを慣例の連続溶融タンクに供給する。個々の成分を供給システムに加えることによりレシピ(配合)に対する調整を行って着色を向上させる。温度やガス雰囲気を含む溶融条件を調整して、溶融、精製及び着色安定用の安定な製造状態を得る。Na2SO4を精製剤として用いるのが好ましい。精製プロセスはSO4成分からの酸素の形成により生ずる。一連の複雑な反応中に、CO2及びN2を含む過剰ガスがガラス溶融物から除去され、形成される管内の空気線の形成が避けられる。炉内の雰囲気は精製プロセスにより酸化される。精製剤は多硫化物及びSO3としてガラス中に部分的に組み込まれるのが好ましい。残りは排気ガスとともに排除する。ガラス管を、ガラス製造プロセスの終了時に、工場内の公知のダンナープロセス(Danner process)を用いて製造する。しかし、公知のベロプロセス(Vello process)を適用することもできる。ガラス管の一部分を加熱してランプバルブを製造する。
【0025】
ある量の硫黄は溶融物を黄色又は茶色に変化しやすい。硫黄は殆どの場合還元状態下では多硫化物又は硫化物の形でガラス内に生ずる。アンバーガラスは硫酸塩を硫化物及び多硫化物に還元するために、例えば炭素又は木炭のようなある量の還元剤を必要とする。しかし、Cr,Mn,Vなどを含む他の任意の還元剤を使用することができる。
【0026】
アンバーガラスの黄色は、アルカリ多硫化物と重金属、特にFeの硫化物とにより生ずる。Fe23発色団により組み込まれるS2-の形成はアンバー色又はオレンジ色を生ずる。還元剤としての木炭と共同して、Fe2+の形成が生ずる。微量のFe23のみが、Fe2+及びFe3+(殆どFe2+)が形成される重還元状態の下で硫黄と共同して、アンバー色を生じ得る。Fe23はガラス組成のレシピに必ず加える必要があるわけではない。上で既に示したように、Feの量は使用する原料により得ることができる。
【0027】
特定の理論に固執することを望まなければ、ガラスの着色は、4面体座標で3つの酸素原子により囲まれたFe3+の中心原子からなる発色団の形成により説明することができる。この発色団において、SはFe3+原子に結合することができるか、Fe3+及びSi4+に架橋し得るのみである。アルカリ金属の量に対するアンバーガラスの着色の依存度は証明された。ガラスのアルカリ金属が多いほど、着色は深く暗くなるとともに、吸収が長波長側にシフトする。一価のアルカリ金属のイオン半径が大きくなるほど、多くの多硫化物の形成が容易に生起する。多硫化物の形成が多くなるとともにSチェーンが長くなるほど、色が赤くなるとともに強くなる。K2Oはアンバーガラスの色を改善するとともに強くする。
【0028】
Na−スルホ鉄酸塩錯体NaFeS2は強い赤色で特徴づけられる。スルホ鉄酸塩の濃度はガラスの酸性度の増大とともに減少する。酸性ガラスでは殆どの多硫化物はH2S及びSに分解され、色は汚れた緑色に変化する。上昇した温度では、水分も酸性効果を示し、多硫化物の加水分解を生ずる。
【0029】
モリブデンの存在下では、シリケートガラスはオレンジ色になり、これはチオモリブデン酸塩の形成により説明される。特に,酸化モリブデンは特に290−380nmの領域において透過率を低減する。
【0030】
アンバーガラスの溶融時には、FeSの形成を阻止する必要がある。黄着色はガラスの熱経歴に依存する。透過率曲線は500nmまでのUV及び青色領域において吸収を示すが、黄色,赤色及び赤外放射を妨害することなく透過する。オレンジから赤アンバー色の純度は少量のFeの存在を必要とする。
【0031】
図2は、国際交通規定(International traffic regulations)に基づく信号ランプのガラス容器用のアンバー着色ガラスの種々の色点を色度図のX及びY座標に対し示す。これらの色点は上述した本発明のガラス組成で達成することができる。各色点を与えるガラスの正確な組成は、ガラスの製造、特に還元状態と、バルブの吹き込み成形後の硬化に依存する。
【0032】
ヨーロッパでは、自動車インジケータランプ用のアンバー色点は当業者に既知のECE37規定により規定されている。この色点は図2の太線で示す領域に対応する。ECE37のアンバー領域は、色座標(0.571,0.429)、(0.564,0.429)、(0.595,0.398)、(0.602,0.398)により決定される。
【0033】
GTB(Groupe de Travel de Bruxelles)コミッションは2〜3年以内に予想される図2に点線で示す新しい大きな領域を提案している。この大きな領域はSAE(Society of Automotive Engineers)の要求に対応している。SAEアンバー領域の色座標は、(0.560,0.440)、(0.545,0.425)、(0.597,0.390)、(0.610,0.390)とにより決定される。
【0034】
本発明の第1及び第2の実施例に基づくガラスの種々のバッチを調製した。図2において、三角形,ひし形及び方形は本発明の第1の実施例に基づくガラスの3つの異なる組成に対応し、円は本発明の第2の実施例に基づく組成を有するガラスに対応する。
【0035】
図2において、三角形は、ECE37規定により規定された自動車インジケータの領域内に良好に入っている。ひし形はECE37領域のエッジの近くに位置し、方形はECE37領域のすぐ外側に位置するがSAE領域内に良好に入っている。他のガラスと比較して、図2内の三角形により表される色点に対応するガラスの組成は比較的低いFe含有量であった。400〜700nmの範囲において約60%の透過率を有する前記ガラスの壁厚は約0.6mmであった。
【0036】
図2において、本発明の第2の実施例に基づくガラスの色点を表す円はCEC37規定により規定される要件を満足する。図2内の円で示すガラスの組成は0.03重量%以下のFe含有量を有する。
【0037】
図面及びそれらの説明は本発明の例示であって、本発明を限定するものではない。請求の範囲に含まれる多くの変更が存在すること明らかである。この点に関し、下記の点に注意されたい。
請求の範囲中の「具える」、「含む」は請求の範囲に記載した要素又はステップ以外の要又はステップの存在を除外するものではない。また、各要素またはステップの数を限定してないが、複数の要素又はステップを除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス容器を有し、該ガラス壁がアンバー色であるランプにおいて、前記ガラス壁のガラス組成が重量%で、

を含むことを特徴とするランプ。
【請求項2】
ガラス組成が3重量%までの微量のB2O3を含むことを特徴とする請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
ガラス組成が0.5重量%までの微量のFe2O3を含むことを特徴とする請求項1に記載のランプ。
【請求項4】
ガラス組成が0.2重量%までの微量のCeO2を含むことを特徴とする請求項1に記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−34070(P2010−34070A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250945(P2009−250945)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2008−173115(P2008−173115)の分割
【原出願日】平成13年11月23日(2001.11.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】