説明

無限軌道を備えた走行玩具

【課題】ホイールから外れにくい無限軌道を備えた走行玩具を提供する。
【解決手段】駆動装置を有し、車体を構成するシャーシ11と、シャーシの側面部に回転可能に固定され、駆動装置からの駆動力を出力しうる短円筒状のホイール16と、ホイールの周面部に内周面部が当接して巻装された無限軌道17a、17bとを備え、無限軌道の内周面部には、上記ホイールに係合しうる突起部47aが形成された走行玩具であって、ホイールの、上記突起部との係合部は、周面部へ至るに従って細幅となるテーパ部により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行玩具に係り、特に、無限軌道を備えた走行玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、教育的な観点から、創造的で実践的な活動が期待できるロボットコンテスト(以下、ロボコンという。)が中学校、高校、高専において、活発に行われている。このようなロボコンにおいては、走行車両として無限軌道を備えた走行車両が多く使用されている。
このような無限軌道を備えた走行車両は、一般に、駆動装置を有し、車体を構成するシャーシと、上記シャーシの側面部に回転可能に固定され、上記駆動装置からの駆動力を出力しうる短円筒状のホイールと、上記ホイールの周面部に内周面部が当接して巻装された無限軌道とを備えている。上記無限軌道は一般的には、合成ゴムにより形成されている。
【0003】
ところで、このような無限軌道を備えた走行車両にあっては、従来から、走行時、特に、旋回走行時に無限軌道がホイールから外れるという不具合がある。
上記の無限軌道を備えた走行車両にあっては、旋回時には、一般的に、旋回方向側の無限軌道の駆動を停止し、旋回方向反対側の無限軌道のみを駆動させて旋回走行を行うものであるが、従来より、このような、無限軌道がホイールから外れにくくするための技術が提案されてきている。
【0004】
例えば、一般的な技術として、図10に示すように、ホイール86を幅方向において係合して保持しうる突起部89a,89bが長さ方向に沿って一対に形成されている無限軌道87を備えた走行玩具80が存在している。
【0005】
上記の形状により、走行中に上記無限軌道87が上記ホイール86から幅方向に外れようとする力を受けた場合であっても、上記突起部89a,89bと上記ホイール86が当接して係止されるため、無限軌道がホイールから外れる事態を防止することができる。
【0006】
また、その他の従来例として、ホイールと、ホイールの外周面部に嵌着されているタイヤと、タイヤに巻装されている無限軌道とを有し、タイヤがホイールよりも太い幅方向寸法であると共に、タイヤの幅方向中央部の直径方向寸法が幅方向両端部に対してやや大きな直径寸法に形成されている走行玩具が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
このような構成により、上記無限軌道が上記ホイールに対する本来の装着位置からずれてしまった場合であっても、タイヤの幅方向中央部の直径方向寸法が幅方向両端部に対してやや大きめに形成されていることから、幅方向中央部の周速度が幅方向両端部に対して速くなるために生じ、上記無限軌道がタイヤの幅方向中央部に戻されることにより無限軌道が外れる事態を防止することができるように構成されている。
【0008】
また、その他の従来例として、幅方向に所定の間隔を隔てて2列の歯車部が形成されている駆動輪を有し、上記2列の歯車部の間に配置されている円周溝部の直径方向寸法は歯車部よりも小さく形成されており、無限軌道の内周面部には上記歯車部に係合する突条部及び、上記円周溝部に係合する突部が設けられている無限軌道を備えた走行玩具が存在している(例えば、特許文献2)。
【0009】
この場合、従動輪の構造に関しては、文献中、図6に記載されているように、従動輪の主面方向に一定の間隔を置いて形成されたリムにより形成される、上記突部に係合する溝部が設けられている。
【0010】
しかしながら、上記のような従来の走行玩具であっても、所定の条件において旋回走行を行うことにより無限軌道がホイールから外れる事態が生じる場合がある。
【0011】
平坦な路面を直進走行する場合には、直進方向に作用する駆動力により走行する。
即ち、図6に示すように、直進走行する場合には、無限軌道87a,87bにおいては、ホイールを構成する駆動輪から無限軌道87a,87bに作用する駆動力の作用方向は無限軌道の長さ方向であって、無限軌道が床面に対して発生する推進力F1は無限軌道87a,87bも同様に長さ方向に沿っており、無限軌道に作用する駆動力の方向と進行方向とは一致した状態で推進力F1となっており、直進時には、無限軌道87a,87bに対して幅方向に作用する力は働かないことから、基本的に無限軌道87a,87bが外れる事態はない。
【0012】
しかしながら、図11に示すように、走行玩具80を、例えば、右方向へ旋回させようとした場合には、進行方向右側の無限軌道87bの駆動を停止させると共に同左側の無限軌道87aのみを駆動させることにより、走行玩具80は右方向へ旋回を始める。
即ち、右側の無限軌道87bが停止した場合には、右側の無限軌道87bと設置面との間の摩擦抵抗が発生することから、左側の無限軌道87aにより発生する推進力F1は車体を右方向Rへ回転させる。
【0013】
この場合、上記無限軌道87aにおいては、直進時と同様に、駆動輪により発生して無限軌道87aに伝達されたトルクは、無限軌道87aの長さ方向に沿って作用するが、上記右側の無限軌道87bと床面との間の摩擦力により、結果的に、推進力F1は、図11中、旋回方向Rの方向へ作用し、その結果、右方向へ旋回を開始する。
その結果、無限軌道87aに対しては、図11に示すように、無限軌道87aと設置面との間に作用する摩擦抵抗とあいまってR'の方向へ荷重F3がかかり、図12に示すように、無限軌道87aには幅方向斜め外方に引張る力、即ち、上記荷重F3が作用することとなる。
その結果、無限軌道87aに働く応力により内方側突部89aはホイール86の外周内側面部91に圧接する。
【0014】
この場合、図12に示すように、上記無限軌道87aに作用する荷重F3に上記内方側突部89aが抗している場合には、無限軌道87aはホイール86から外れることはないが、上記荷重F3が無限軌道87aの剛性を上回る場合には、図13に示すように、無限軌道87aが幅方向にねじれ始め、無限軌道87aの内方側部が立ち上がり、上記、内方側突部89aがホイール86の下方へ入り込み、その後、無限軌道87aがホイールから外れる事態に至る。
【0015】
のような事態は、例えば、上記荷重F3が大きく無限軌道に対して作用するような場合、例えば、走行車両に重量の大きな物を積載し車体重量が重い状態であって、かつ高速で旋回走行するような場合や、設置面が平滑ではなく無限軌道がホイールから離間しやすいような場合、さらに、旋回しながら突部を乗り越えるような場合には、生じやすいことが判明している。
【0016】
近年の上記ロボコンにおいては、物を積載して走行したり、物を遠方へ投げる等の動作を行うため、様々な機能を有した複雑な構造のロボット機構が走行玩具に積載されるため、車体重量が重い状態で旋回走行を行う場合が生じている。
また、競技種目の多様化に伴い、特殊な路面で競技を行うことも増えてきており、じゅうたん等の凹凸のある路面上で旋回走行を行う場合もあり、上記のような車体重量が重い状態で旋回走行を行う場合やじゅうたん等の平滑ではない床面上での旋回走行を繰り返すことにより、無限軌道がホイールから外れやすくなる事態が生ずる。
従って、このような現状から、旋回走行時においても無限軌道が外れにくい無限軌道を備えた装甲車両が望まれている。
【0017】
【特許文献1】実開昭60−043295号公報
【特許文献2】特開平05−245270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明の課題は、ホイールから外れにくい無限軌道を備えた走行玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、駆動装置を有し、車体を構成するシャーシと、上記シャーシの側面部に回転可能に固定され、上記駆動装置からの駆動力を出力しうる短円筒状のホイールと、上記ホイールの周面部に内周面部が当接して巻装された無限軌道とを備え、上記無限軌道の内周面部には、上記ホイールに係合しうる突起部が形成された走行玩具であって、上記ホイールの、上記突起部との係合部は、周面部へ至るに従って細幅となるテーパ部により構成されている。
【0020】
即ち、請求項1記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、車体重量が大きい状態で旋回走行を行う場合や、平滑ではない床面上において旋回走行を行った場合であっても、上記突起部がホイールの周面部の下方に入り込んでしまうことがなく、ホイールに形成されているテーパ部に係合するように構成されている。
【0021】
また、請求項2記載の発明は、上記ホイールは、上記シャーシの両側部に一対に固定されると共に、上記無限軌道は上記ホイールに夫々巻装されている。
【0022】
また、請求項3記載の発明は、上記突起部は、上記無限軌道の幅方向において上記ホイールを挟んで一対に形成され、上記ホイールの、内側方突起部との対向部には、上記テーパ部が形成されている。
【0023】
即ち、請求項3記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、上記無限軌道に形成された上記突起部が上記ホイールと幅方向に係合することができるものである。
また、上記走行玩具が旋回することにより、幅方向に力を受けた場合であっても、上記突起部がホイール下方に入り込んでしまうことがなく、上記ホイールと上記内側方突起部との対向部が係合するものである。
【0024】
また、請求項4記載の発明は、上記突起部は、上記無限軌道の長さ方向に沿って連続して形成されている。
【0025】
即ち、請求項4記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、上記無限軌道が駆動することにより、上記ホイールと上記突起部の配置が長さ方向に変わった場合であっても、上記ホイールと上記突起部が連続的に係合することができるように、上記突起部が上記無限軌道の長さ方向に沿って連続して形成されている。
【0026】
また、請求項5記載の発明は、上記ホイールは、シャーシの前部及び後部に夫々設けられ、駆動輪、従動輪及び、上記駆動輪と従動輪との間に設けられた補助輪により構成されており、上記補助輪は駆動輪及び従動輪よりも車体下方側に設けられており、上記補助輪に上記テーパ部が設けられている。
【0027】
即ち、請求項5記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、上記ホイールが駆動輪、従動輪及び、上記駆動輪と従動輪との間に設けられ、駆動輪及び補助輪よりか車体下方に補助輪が設けられていることから、無限軌道は上記補助輪に巻装された部位のみが床面に設置することから、補助輪が設けられていない場合よりも、無限軌道に作用する摩擦力を低減することができ、その結果、旋回走行時に駆動している側の無限軌道へ作用する摩擦力を低減することができる。
その結果、旋回走行時の無限軌道が外れる事態をより低減することができる。
【0028】
また、請求項6記載の発明は、上記テーパ部は、上記突起部の高さ寸法よりも小さな幅寸法に形成され、上記テーパ部の上方には上記突起部に対向しうる当接面部が形成されている。
【0029】
即ち、請求項6記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、旋回走行時において、無限軌道に対して旋回方向外方へ作用する荷重が所定レベル以下の場合には、上記当接面部に突起部が圧接することによりホイールに係合し、上記荷重が所定レベルを超えた場合には、上記テーパ部に上記突起部が圧接することにより、突起部に対して上記荷重に相当する反力を与え、上記突起部とホイールとの係合を維持するものである。
【0030】
また、請求項7記載の発明は、上記補助輪は、補助輪本体部と、補助輪本体部の周面部中央に周面部方向へ突出して全周に形成された突部を有し、上記突部の一対の幅方向外周面部に上記一対の突起部が係合する状態で無限軌道が巻装され、上記テーパ部は、上記突部の補助輪本体部の周面部よりもやや外方から突部周面部にかけて形成され、上記テーパ部の内方端部と上記補助輪本体部の周面部との間には、上記突起部と当接しうる当接面部が形成されている。
【0031】
また、請求項8記載の発明は、上記テーパ部は、上記走行玩具の旋回走行時に上記突起部が上記補助輪に圧接する場合に、上記突起部に対し、上記突起部が上記突部に圧接した場合に作用する荷重以上の大きさの反力を作用せしめることができる角度に形成されている。
【0032】
即ち、請求項8記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、上記テーパ部が上記走行玩具の旋回走行時に上記突起部が上記補助輪に圧接する場合であっても、上記突起部に対し、上記突起部が上記突部に圧接した場合に作用する荷重以上の大きさの反力を作用せしめることができる角度に形成されているものである。
【0033】
また、請求項9記載の発明は、上記無限軌道は合成ゴム製であって、上記ホイールはABS樹脂であって、上記突起部の高さ寸法は2.5mmであって、上記テーパ部の角度は45度であって、上記テーパ部の幅寸法は1.8mmであって、上記走行玩具の重さは400gに形成されている。
【発明の効果】
【0034】
請求項1〜4記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具は、旋回走行を行った場合であっても、上記突起部がホイールの周面部に乗り上げられることがないため、車体重量が重い状態で旋回走行を行う場合や、平滑ではない床面上において旋回走行を行った場合であっても、上記無限軌道が上記ホイールから外れる事態を防止することができる。
また、上記ホイールの上記突起部との係合部が、周面部へ至るに従って細幅となるテーパ部により構成されている簡単な構成であることから、係合作業及び加工作業が容易であり、部品点数が少ないため、製造コストを抑えることができる。
【0035】
また、請求項3記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具は、上記無限軌道に形成された上記突起部が、上記ホイールと圧接することができるため、走行中に上記無限軌道が上記ホイールから幅方向にずれにくくなる。
また、上記走行玩具が旋回走行を行った場合であっても、上記突起部がホイールの周面部下方に入り込むことがなく、上記ホイールと上記内側方突起部との対向部が圧接して係合するため、旋回走行時に無限軌道がホイールから外れる事態を防止することができる。
【0036】
また、請求項5記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、駆動輪と従動輪との間に補助輪が設けられ、駆動輪と従動輪との間に巻装された無限軌道全体ではなく、補助輪に巻装された無限軌道の部位のみが床面に設置することから、旋回走行時に駆動している側の無限軌道へ作用する摩擦力を低減することができる。
その結果、旋回走行時の無限軌道が外れる事態をより低減することができる。
【0037】
また、請求項6記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具にあっては、旋回走行時に無限軌道に作用する、旋回方向とは反対方向に作用する荷重の大きさに応じて、有効に突起部をホイールに係合させておくことができ、より確実に無限軌道が外れる事態を防止することができる。
【0038】
また、請求項7記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具は、補助輪において無限軌道が外れる事態を有効に防止することができる。
【0039】
また、請求項8及び9記載の本発明に係る無限軌道を備えた走行玩具は、旋回方向とは反対方向に作用する荷重の大きさに応じてテーパ部が形成されていることから、無限軌道が外れる事態を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の無限軌道を備えた玩具10は、図1に示すように、駆動装置(図示せず)を有し、車体を構成するシャーシ11と、上記シャーシ11の側面部66,66に回転可能に固定され、上記駆動装置からの駆動力を出力しうる短円筒状のホイール16,16と、ホイール16,16の周面部35,35に内周面部41,41が当接して巻装された無限軌道17a,17bとにより構成されている。
また、上記ホイール16,16は、上記シャーシ11の両側部66,66に一対に固定されると共に、上記無限軌道17a,17bは上記ホイール16,16に夫々巻装されている。
本実施の形態にあっては、上記走行玩具10の重さは400gに形成されている。
【0041】
上記ホイール16は、図1及び図2に示すように、シャーシ11の前後方向一端部に設けられ上記無限軌道17a,17bの内周面において係合する駆動輪12,12と、同様にシャーシ11の前後方向他端部に設けられ、上記無限軌道17a,17bの内周面に係合する従動輪15,15と、上記駆動輪12,12及び従動輪15,15よりも車体下方側に固定され、上記駆動輪12,12と上記従動輪15,15との間に設けられた左右各々2個の補助輪13,14,13,14により構成されており、上記全てのホイールはABS樹脂で形成されている。
上記無限軌道17a,17bは上記駆動輪12,12、従動輪15,15及び補助輪13,14,13,14に巻装されており、上記補助輪13,14との間の部位において床面に当接するように構成されている。
【0042】
上記駆動輪12は、図3に示すように、駆動輪本体部18と、駆動輪本体部の幅方向中央部に形成された駆動輪突部19及びこの駆動輪突部19の先端部に形成された突起列32にを有している。
上記駆動輪突部19は、上記駆動輪本体部18の周面部の幅方向中央に周面部方向へ突出して全周に形成されており、駆動輪本体部18よりも小さい幅寸法で形成されている。
上記突起列32は、図3に示すように、上記駆動輪突部19の周面部の長さ方向に沿って所定の間隔L3をおいて形成されており、上記駆動輪突部19と同一の幅寸法で形成されている。
また、上記所定の間隔L3は、下記にて述べる上記無限軌道17a,17bの内周面部41,41に形成されている溝列46,46と同一の間隔により形成されている。
【0043】
また、図1、図2、図6に示すように、上記駆動輪12,12とシャーシ11に内装されている上記駆動装置が駆動軸51,51を介して取り付けられており、駆動軸51,51の一端は駆動輪12の軸心33,33に取り付けられている。
このような構成であることから、上記駆動装置(図示せず)から駆動力が伝達され、上記駆動輪12に駆動力を与えることができる。
【0044】
上記従動輪15は、図4に示すように、従動輪本体部22及び、この従動輪本体部22の幅方向中央部に形成された従動輪突部23とを有している。
上記従動輪突部23は、上記従動輪本体部22の周面部の幅方向中央に周面部方向へ突出して全周に形成されており、従動輪本体部22よりもやや小さい幅寸法で形成されていると共に、従動輪突部23の直径寸法は上記駆動輪突部19の直径寸法と同一に形成されている。
また、上記従動輪突部23が従動輪本体部22の周面から突出する寸法は、下記にて述べる上記無限軌道17a、17bの内周面部41,41に形成されている突起部47a,47b,47a,47bの突出方向の寸法とほぼ同一に形成されている。
【0045】
また、図1、図2、図6に示すように、従動輪15,15とシャーシ11が従動軸53,53を介して取り付けられており、従動軸53,53の一端は従動輪15,15の軸心37,37に取り付けられている。
また、上記従動輪15,15の高さ位置は、図1に示すように、上記駆動輪12,12と同一の高さ位置に取り付けられている。
【0046】
上記補助輪13及び14は、図5に示すように、補助輪本体部24及び補助輪本体部24の幅方向中央部に設けられた補助輪突部25とを有している。
上記補助輪突部25は、上記補助輪本体部24の周面部の幅方向中央に周面部方向へ突出して全周に形成されており、補助輪本体部24よりもやや小さい幅寸法で形成されていると共に、上記駆動輪12及び上記従動輪15よりも小さい直径寸法に形成されている。
また、上記補助輪突部25が補助輪本体部24から突出している寸法は、上記従動輪突部23が突出している寸法と同様に、下記にて述べる上記無限軌道17a,17bの内周面部41,41に形成されている突起部47a,47b,47a,47bの突出方向の寸法とほぼ同一に形成されている。
【0047】
また、図1、図2、図6に示すように、上記補助輪13,14,13,14と上記シャーシ11が、補助軸54,55,54,55を介して取り付けられており、補助軸54,55,54,55の一端は補助輪13,14,13,14の軸心38,39,38,39に取り付けられている。
また、上記補助輪13,14,13,14の高さ位置は、図1及び図2に示すように、補助輪13,14,13,14の各々が同じ高さであると共に、上記駆動輪12及び上記従動輪15よりも下方に取り付けられている。
【0048】
また、上記補助輪突部25及び上記従動輪突部23には、図4及び図5に示すように、周面部35,35へ至るに従って上記補助輪突部25及び上記従動輪突部23の幅寸法が細幅となるテーパ部36a,36bが形成されている。
【0049】
以下、上記テーパ部36a,36bについて、補助輪13を例に挙げ、図7及び図8を用いて説明する。上記補助輪に付されたテーパ部36bは、図7に示すように、上記無限軌道17a,17bの、車体11に対して内方側に配置されている内側方突起部47a,47aと対向する部位に形成されている。
【0050】
図7に示すように、本実施形態における上記テーパ部36の傾斜角度θは45度の角度に形成されている。この場合、図8に示すように、上記走行玩具10の旋回走行時に上記突起部47aが上記補助輪13に圧接する場合に、上記突起部47aに対し、上記突起部47aが上記補助輪13の上記突部25に圧接した場合に作用する反力F4が、荷重F3以上の大きさに作用せしめることができる角度であれば、自由に設定可能である。
本実施の形態に係る車体の重量、ホイールの素材及び無限軌道の素材との関係においては、上記テーパ部の角度は45度が最適であることが判明している。
【0051】
また、上記テーパ部36,36は、図7に示すように、上記補助輪突部25,25の補助輪本体部24,24の周面部よりもやや外方から上記補助輪突部25,25の周面部35,35にかけて形成されている。
【0052】
したがって、上記テーパ部36,36の内方端部と上記補助輪本体部24,24の周面部との間には、上記無限軌道17a,17bの内側方突起部47a,47aと対向して当接しうる当接面部29,29が形成されている。
【0053】
上記のように当接面部29が形成されることにより、図6に示すように、R方向への旋回走行時において、上記無限軌道17aに対して旋回方向外方へ作用する荷重F3が所定レベル以下の場合には、図7に示すように、上記当接面部29が上記無限軌道17aに形成されている上記内側方突起部47aに圧接することにより上記補助輪13に係合することができる。
また、上記荷重F3が所定レベルを超えた場合には、図8に示すように、上記テーパ部36が上記無限軌道17aに形成されている上記内側方突起部47aに圧接することにより、上記内側方突起部47aに対して上記荷重に相当する反力F4を与え、上記内側方突起部47aと上記補助輪13との係合を維持することができる。
【0054】
したがって、旋回走行時に無限軌道に作用する、旋回方向Rとは反対方向R'に作用する荷重F3の大きさに応じて、有効に上記内側方突起部47aを上記補助輪13に係合させておくことができ、より確実に上記無限軌道が補助輪から外れる事態を防止することができる。
【0055】
なお、上記テーパ部36の幅寸法L4は、図7に示すように、上記突起部47a,47b,47a,47bの高さ寸法L5よりも小さな寸法に形成されており、本実施形態では、上記突起部部47a,47b,47a,47bの高さ寸法L5が2.5mmであって、上記テーパ部36の幅寸法L4が1.8mmに形成されている。その結果、上記当接面部29は7mmの幅寸法に形成されている。
【0056】
上記無限軌道17a,17bは、図1及び図2に示すように、所定の長さ寸法のベルトの両端を接続して環状に形成されており、素材は合成ゴムである。
また、上記無限軌道17a,17bの外周面部48,48には所定間隔ごとに突起部49が形成されており、内周面部41,41には上記ホイールに係合しうる突起部47a,47b,47a,47b及び、これらの突起部47a,47bの間に、溝列46,46が形成されている。
【0057】
また、幅方向の寸法は、上記無限軌道17a,17bの幅寸法と同一の寸法により形成されている。
【0058】
上記突起部47a,47bは、図9に示すように、上記無限軌道17a及び17bの幅方向において上記無限軌道17a及び17bの長さ方向に沿って連続して一対に形成されている。また、上記突起部47a,47bの幅方向の間隔L1は、上記従動輪突部23、上記補助輪突部25の幅寸法とほぼ同一の寸法に形成されている。
【0059】
上記溝列46,46は、図1、図2、図9に示すように、上記無限軌道17a,17bの内周面部41,41に沿って所定の間隔L3をおいて形成されると共に、上記無限軌道17a,17bの内周面部41,41の幅方向中央に形成されている。
また、上記所定の間隔L3は、上記で述べたように、上記駆動輪突部19に形成されている上記突起列32の長さ方向の間隔L3と同一に形成されている。
【0060】
このように、上記突起列32と上記溝列46が同じ間隔で形成されていることから、走行中に互いに噛み合うことができるため、上記駆動輪12の駆動と連動して上記無限軌道17a,17bが回転されることとなる。
【0061】
上記シャーシ11は、図1に示すように、全体矩形状に形成されている。また、上記シャーシ11の大きさは、上記無限軌道17a,17bの下面よりも高い位置に配置されていれば、プレートの形状にする等、用途に合わせて自由に調節可能である。
【0062】
なお、上述したように、図1及び図6に示すように、駆動装置(図示せず)が上記シャーシ11に内装されており、上記駆動装置の両側に上記駆動軸51,51が取り付けられている。また、同様に、上記シャーシ11の両側部66,66に上記従動軸53,53、上記補助軸54,55,54,55が回転可能な状態で取り付けられている。
【0063】
また、上記駆動装置は、上記一対の上記駆動軸51,51を各々独立して駆動させることができるため、上記走行玩具10を左右に旋回させることができる。
例えば、右側の上記駆動軸51を停止させて左側の駆動軸51のみを駆動させると左に旋回する。逆に、左側の駆動軸51を停止させて右側の駆動軸51のみを駆動させると右に旋回する。
【0064】
従って、本実施の形態に係る無限軌道を有する走行玩具にあっては、上記のように、上記無限軌道17a,17bの内側方突起部47a,47aと対向する上記補助輪13の部位には、上記テーパ部36が形成されているため、図6に示すように、例えば、右側の上記無限軌道17bを停止させて、左側の上記無限軌道17aのみを駆動させることにより、走行玩具10がRの方向に旋回して、無限軌道17bの床面との間の摩擦力に起因して無限軌道17aに対して斜め外方に対して作用する 、所定レベル以上の荷重F3が発生した場合には、図8に示すように、上記テーパ部36が上記突起部47aと圧接する。
したがって、図8に示すように、上記テーパ部36が上記突起部47aと圧接することにより、上記テーパ部36に荷重F3に抗する反力F4が作用することとなるため、図13に示すような、車体重量が大きい状態で高速で旋回走行を行う場合や、平滑ではない床面上において旋回走行を行った場合に、内方側突部47aがホイール16の下方へ入り込む事態を防止することができ、結果的に、無限軌道17aがホイールから外れる事態を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、主にロボットコンテストに用いられる無限軌道を備えた走行玩具に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、無限軌道とホイールの関係を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、駆動輪を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、従動輪を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、従動輪を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る走行玩具の一実施の形態であって、走行玩具の平面を略して示す平面図である。
【図7】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、左右の補助輪と無限軌道との関係を示す断面図である。
【図8】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、走行玩具が右方向に旋回した場合における、補助輪のテーパ部と内方側突起部との圧設状態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る走行玩具の一実施の形態を示し、無限軌道と補助輪との関係を示す斜視図である。
【図10】従来の走行玩具の無限軌道とホイールとの関係を示す斜視図である。
【図11】従来の走行玩具において、右旋回を行う場合の推進力と、左側無限軌道に対して作用する荷重の関係を模式的に示説明図である。
【図12】従来の走行玩具において、無限軌道の突起部とホイールとの圧接状態を示す断面図である。
【図13】従来の走行玩具において、例えば、右方向に旋回した場合に、進行方向左側の無限軌道の内側の突起部がホイールの下方に入り込んだ状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10、80 走行玩具
11 シャーシ
12 駆動輪
13、14 補助輪
15 従動輪
16、86 ホイール
17a、17b、87a、87b 無限軌道
18 駆動輪本体部
19 駆動輪突部
91、21 ホイール外周内側面部
22 従動輪本体部
23 従動輪突部
24 補助輪本体部
25 補助輪突部
29 当接面部
32 突起列
33、37、38、39 軸心
34 ホイール内方側
95、35 ホイール周面部
36 テーパ部
41 無限軌道の内周面部
42 無限軌道の一端部
43 無限軌道の他端部
44、45 無限軌道の内周面下部
46 無限軌道の溝列
47a、89a 無限軌道の内側方突起部(突起部)
47b、89b 無限軌道の外側方突起部(突起部)
48 無限軌道の外周面部
49 無限軌道の外周面突起面
51 駆動軸
53 転動軸
54、55 補助軸
66、67 シャーシ側面部(両側部)
L1 ホイール幅寸法
L2 突起部の長さ方向寸法
L3 溝列及び突起列の所定間隔
L4 テーパ部の幅寸法
L5 突起部の高さ寸法
R 旋回方向
R' 旋回方向と反対方向
F1 推進力
F3 荷重
F4 反力
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置を有し、車体を構成するシャーシと、上記シャーシの側面部に回転可能に固定され、上記駆動装置からの駆動力を出力しうる短円筒状のホイールと、上記ホイールの周面部に内周面部が当接して巻装された無限軌道とを備え、上記無限軌道の内周面部には、上記ホイールに係合しうる突起部が形成された走行玩具であって、上記ホイールの、上記突起部との係合部は、周面部へ至るに従って細幅となるテーパ部により構成されていることを特徴とする走行玩具。
【請求項2】
上記ホイールは、上記シャーシの両側部に一対に固定されると共に、上記無限軌道は上記ホイールに夫々巻装されていることを特徴とする請求項1記載の走行玩具。
【請求項3】
上記突起部は、上記無限軌道の幅方向において上記ホイールを挟んで一対に形成され、上記ホイールの、内側方突起部との対向部には、上記テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の走行玩具。
【請求項4】
上記突起部は、上記無限軌道の長さ方向に沿って連続して形成されていることを特徴とする請求項3記載の走行玩具。
【請求項5】
上記ホイールは、シャーシの前部及び後部に夫々設けられ、駆動輪、従動輪及び、上記駆動輪と従動輪との間に設けられた補助輪により構成され、
上記補助輪は駆動輪及び従動輪よりも車体下方側に設けられており、上記補助輪に上記テーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4記載の走行玩具。
【請求項6】
上記テーパ部は、上記突起部の高さ寸法よりも小さな幅寸法に形成され、上記テーパ部の上方には上記突起部に対向しうる当接面が形成されていることを特徴とする請求項1〜5記載の走行玩具。
【請求項7】
上記補助輪は、補助輪本体部と、補助輪本体部の周面部中央に周面部方向へ突出して全周に形成された突部を有し、上記突部の一対の幅方向外周面部に上記一対の突起部が係合する状態で無限軌道が巻装され、上記テーパ部は、上記突部の補助輪本体部の周面部よりもやや外方から突部周面部にかけて形成され、上記テーパ部の内方端部と上記補助輪本体部の周面部との間には、上記突起部と当接しうる当接面部が形成されていることを特徴とする請求項5及び6記載の走行玩具。
【請求項8】
上記テーパ部は、上記走行玩具の旋回走行時に上記突起部が上記補助輪に圧接する場合に、上記突起部に対し、上記突起部が上記突部に圧接した場合に作用する荷重以上の大きさの反力を作用せしめることができる角度に形成されていることを特徴とする請求項1〜7記載の走行玩具。
【請求項9】
上記無限軌道は合成ゴム製であって、上記ホイールはABS樹脂であって、上記突起部の高さ寸法は2.5mmであって、上記テーパ部の角度は45度であって、上記テーパ部の幅寸法は1.8mmであって、上記走行玩具の重さは400gに形成されていることを特徴とする請求項1〜8記載の走行玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−333994(P2006−333994A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160293(P2005−160293)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000129264)株式会社キクイチ (10)
【Fターム(参考)】