説明

無電源計測装置及び無電源計測システム

【課題】外部電源が不要であると共に、計測エリアを限定することなく任意のエリアを計測すること。
【解決手段】無電源計測装置10は、外部圧力が加わると電力を発生する発電素子14と、前記発電素子14に接続され該発電素子14の発生電力を蓄積する蓄電部15とをそれぞれ有し、所定エリアに二次元状に敷設される複数の発電ユニット12と、前記発電ユニット12から電力供給を受けて動作し、前記各発電ユニット12の蓄電部15に蓄積された電力をそれぞれ測定して電力測定値を得る測定手段16と、前記発電ユニット12から電力供給を受けて動作し、前記測定手段16で測定された電力測定値を無線送信する無線送信部17と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力が加えられると起電力を発生する発電素子を利用した無電源計測装置及びこれを備えた無電源計測システムに関し、例えば、通行者の通行状況の計測に利用可能な無電源計測装置及び無電源計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の通行者の通行状況を計測するものとして、駅のホームや駅構内等を通行する通行者の通行量を監視する監視システムが知られている(特許文献1)。この監視システムでは、所定領域内に敷かれ、当該領域内を通行する通行者の圧力を検出するシート状の圧力検出部と、検出した圧力を示す検出信号に基づいて通行量を算出する演算部と、算出した通行量を表示部に表示すると共に当該通行量を移動通信端末に無線送信する通知部と、が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−296869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された監視システムでは、通行量の計測用電力、表示部への表示用電力及び移動通信端末への送信用電力が必要となるため、電池やバッテリー等の外部電源を新たに設ける必要があると共にこの電源供給用の配線工事を行う必要があった。また、外部電源を新たに設ける場合には、外部電源からの電力供給が可能なエリアに、通行量等の計測エリアが限定されてしまう問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、外部電源が不要であると共に、計測エリアを限定することなく任意のエリアで計測することができる無電源計測装置及び無電源計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無電源計測装置は、外部圧力が加わると電力を発生する発電素子と、前記発電素子に接続され該発電素子の発生電力を蓄積する蓄電部とをそれぞれ有し、所定エリアに二次元状に敷設される複数の発電ユニットと、前記発電ユニットから電力供給を受けて動作し、前記各発電ユニットの蓄電部に蓄積された電力をそれぞれ測定して電力測定値を得る測定手段と、前記発電ユニットから電力供給を受けて動作し、前記測定手段で測定された電力測定値を無線送信する無線送信部と、を具備したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、発電ユニットにおける発電素子がセンサとして機能し、センシング結果情報が発電ユニットにおける蓄電部に保持される。そして、測定手段が発電ユニットから電力供給を受けて、各発電ユニットの蓄電部に蓄積された電力(センシング結果)をそれぞれ測定して、発電ユニットから電力供給を受けた無線送信部が電力測定値を無線送信する。したがって、従来の監視システムのように新たな外部電源を設けることなく、センシング結果そのものとなる電力を利用してセンシング結果情報を無線送信でき、歩行者や車両の通行状況の監視や、落石や地滑りなどの監視を、無電源で行うことができる。また、計測エリアが外部電源からの電力供給が可能なエリアに限定されないので、任意のエリアを計測エリアにすることができる。
【0008】
本発明は、上記無電源計測装置において、前記測定手段は、前記各発電ユニットから前記蓄電部の正側端子と負側端子とがそれぞれ接続され、前記複数の蓄電部の端子間の電圧を順番にデジタルデータに変換するAD変換器を有する構成が可能である。
【0009】
本発明は、上記無電源計測装置において、前記複数の発電ユニットは、歩行者及び又は車両の通行状況を監視する領域に設置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、歩行者及び車両の通行に伴う外部圧力が複数の発電ユニットに加えられると、各発電ユニットの蓄電部に蓄積された電力をそれぞれ測定して、測定された電力測定値をセンシング結果として無線送信するので、新たに外部電源を設けることなく、歩行者及び又は車両の通行状況を監視することができる。
【0011】
本発明は、上記無電源計測装置において、前記複数の発電ユニットは、落石又は地すべりを監視する領域に設置されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、落石又は地すべりに伴う外部圧力が発電ユニットに加えられると、その落石等を受けた場所に設置された発電ユニットの蓄電部に電力が蓄積されて電源となり、その発電ユニットの蓄電部に蓄積された電力を測定手段で測定して、測定された電力測定値を無線送信するので、落石又は地すべりが発生すると、センシング結果である電力測定値が無線送信され、電力測定値の大きさ又は頻度から落石又は地すべりの発生状況を迅速に検知できると共に被害規模まで予測することができる。
【0013】
この場合において、前記無線送信部は、前記発電ユニットによる総発生電力が閾値よりも大きい場合に、電力測定値を無線送信することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、例えば、小規模で現実に問題が生じないと判断されるような落石に対応した閾値を設定することにより、交通に影響を与えない小さな落石ではセンシング結果の送信を行わず、交通に影響を与えるような大きな落石又は地すべりが発生した場合に迅速にセンシング結果の無線送信を行い、効果的に監視することができる。
【0015】
本発明の無電源計測システムは、上記無電源計測装置と、前記無電源計測装置の無線送信部と通信して前記各発電ユニットでの発生電力の電力測定値を受信する無線受信装置と、を具備したことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、各発電ユニットでの発生電力の電力測定値を受信するので、従来の監視システムのように新たな外部電源を設けることなく、例えば、歩行者及び又は車両の通行状況を監視することができる。
【0017】
本発明は、上記無電源計測システムにおいて、前記無線受信装置は、前記測定手段における端子間電圧のAD変換順位を基に、各電力測定値に対応した発電ユニットを特定することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、測定手段における端子間電圧のAD変換順位を基に、各電力測定値に対応した発電ユニットを特定するので、二次元状に敷設された複数の発電ユニットから電力を発生した発電ユニットの電力発生位置を特定することができ、外部圧力の加えられたエリアを把握することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外部電源が不要であると共に、計測エリアを限定することなく任意のエリアを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無電源計測システムを示す図である。
【図2】本実施の形態に係る無電源計測システムを説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る無電源計測装置の無線送信ユニットを示すブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る無電源計測装置の回路構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る無電源計測システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明の実施の形態に係る無電源計測装置を備えた無電源計測システムは、外部圧力が加わると起電力を発生する発電素子の発生電力に基づいて計測処理を行うものである。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る無電源計測システム1を示す図である。図1に示す無電源計測システム1は、複数の発電ユニット12を有する無電源計測装置10と、無電源計測装置10と通信する無線受信装置11と、を備えている。この無電源計測システム1は、無電源計測装置10が外部圧力が加わると発生する発電ユニット12の発生電力を計測し、この発生電力を使って計測した電力計測値を無線受信装置11に送信するものであり、例えば、歩行者や車両の移動に伴う圧力から通行状況を監視する通行状況監視システムに適用可能なものである。以下、この無電源計測システム1を通行状況監視システムに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0023】
無電源計測装置10は、発電素子14及び蓄電器15を有する複数の発電ユニット12と、AD変換機能及び送信機能を有する無線送信ユニット13とを備えている。複数の発電ユニット12は、例えば、マトリクス状に設けられると共にシート状部材Sで構成されている(図2(a))。このシート状部材Sは、所定エリアに二次元状に敷設されて用いられ、計測エリアの面積・環境等に応じて発電ユニット12数を変えることが好ましい。例えば、駅構内のコンコース等の段差の無い平面部では、発電ユニット12数の多いシート状部材S1を敷設して十分な計測エリアを確保し(図2(b))、階段では、発電ユニット12数が各踏面部(図2(c)に示す斜線部分)に対応したシート状部材S2を敷設して最適な計測エリアのみを確保することが可能である(図2(c))。
【0024】
発電素子14は、例えば、ピエゾ素子等の圧電素子であり、圧力が加えられると起電力を発生する素子である。この発電素子14は、2つの電極と、これら電極に挟み込まれた圧電体とから構成され(不図示)、電極を介して圧電体が圧力を受けて変形することで起電力が発生するように構成されている。蓄電器15は、この発電素子14の起電力により発生した電流による電荷を蓄電する。すなわち、蓄電器15は、外部圧力が加えられた発電素子14に発生した電力(発生電力)を蓄積する。例えば、所望の計測エリアにシート状部材Sが敷かれると、シート状部材Sの上を移動する歩行者の移動に伴う外部圧力を受けて発電素子14から起電力が発生し、この起電力により生じた電荷が蓄電器15に蓄積されていく。
【0025】
無線送信ユニット13は、各発電ユニット12からの電力供給を受けて動作し、この発電ユニット12の蓄電器15に蓄積された電力を測定し、測定した電力測定値を無線受信装置11に無線送信する。具体的には、図3に示すように、無線送信ユニット13は、AD変換器16を有するマイクロコントローラ部18と、電源制御部19と、発振部20と、RF部17とを備えている。
【0026】
電源制御部19は、蓄電器15から供給される電圧で動作し、蓄電器15から受けた電圧Vccをマイクロコントローラ部18及びRF部17に供給する。この電圧Vccは、マイクロコントローラ部18(AD変換器16)及びRF部17を駆動する駆動電圧となる。また、電源制御部19は、蓄電器15から印加される電圧Vccから、AD変換器16のAD変換用の基準電圧Arfを生成してAD変換器16に供給する。
【0027】
AD変換器16は、電源制御部19からの電力供給を受けて動作するように構成されており、各蓄電器15の正側端子及び負側端子がそれぞれ接続されている(後述する)。AD変換器16は、電源制御部19から駆動電圧Vccを受けると、電源制御部19から受けた基準電圧Arfと比較して、蓄電器15の正側端子及び負側端子間の電圧(電位差)を順番にデジタルデータに変換し、このデジタルデータをRF部17に送る。すなわち、AD変換器16は、蓄電器15の端子間の電位差をデジタル変換して電力測定値に変換し、この電力測定値のデジタル信号をRF部17に送る。なお、マイクロコントローラ部18は、CPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)内の各種プログラムに従ってRAM(Random Access Memory)内のデータを演算し、各部と協働して電力測定値の送信タイミング制御等を実行するようになっている。発振部20は、RF帯に周波数変換するための局部発振信号をRF部17に供給する。
【0028】
RF部17は、外付けチップアンテナANT1を有しており、電源制御部19からの電力供給を受けて動作するように構成されている。RF部17は、電源制御部19から駆動電圧Vccが印加され、AD変換器16から入力されたデジタル信号を、発振部20から受けた局部発振信号に基づいてRF帯(例えば、2.4GHz)に周波数変換し、周波数変換されたデジタル信号をチップアンテナANT1を介して無線送信する。
【0029】
無線受信装置11は、無電源計測装置10のRF部17とアンテナANT2を介して無線通信し、各発電ユニット12での発生電力の電力値を受信する。この無線受信装置11は、AD変換器16における端子間電圧のAD変換順位を基に、電力測定された各電力値に対応した発電ユニット12を特定する。すなわち、AD変換順位が判れば、発電ユニット12と電力測定値とを1対1で対応付けることができるので、シート状部材Sで二次元状に構成される複数の発電ユニット12から電力発生位置(電力測定された発電ユニット12)を特定することができる。
【0030】
次に、図4を用いて無電源計測装置10の回路構成について説明する。図4は、無電源計測装置10の回路構成を示す図である。図4に示す無電源計測装置10は、縦3個×横3個の計9個の発電ユニット12(12a〜12i)と、無線送信ユニット13とから構成されており、9個の発電ユニット12がマトリクス状に設けられている。各発電ユニット12は、発電素子14とキャパシタCとが並列に接続され、発電素子14とキャパシタCとの間に整流ダイオードD1が接続されている。発電素子14の一端は、整流ダイオードD1のアノードに接続され、キャパシタCの一端は、整流ダイオードD1のカソードに接続されている。発電素子14の他端は、キャパシタCの他端に接続されている。
【0031】
各発電ユニット12の一方の出力端は、縦方向に並んだ発電ユニット12の出力端と共通接続され、整流ダイオードD2を介して無線送信ユニット13の電源端子Tに接続されると共に、一方のアナログ入力端子(正側入力端子)ADCに接続されている。一方、各発電ユニット12の他方の出力端は、横方向に並んだ発電ユニット12の出力端と共通接続され、無線送信ユニット13の他方のアナログ入力端子(負側入力端子)ADCに接続されている。例えば、発電ユニット12aの一方の出力端は、発電ユニット12b,12cの一方の出力端と共通接続されて整流ダイオードD2を介して電源端子T及び正側のアナログ入力端子ADC01に接続され、他方の出力端は、発電ユニット12d,12gの他方の出力端と共通接続されて負側のアナログ入力端子ADC04に接続されている。
【0032】
次に、本実施の形態に係る無電源計測装置10の動作について説明する。ここでは、歩行者が発電ユニット12a、12b上を歩行したことにより、発電ユニット12a、12bの順に外部圧力が加えられた場合を例に説明する。
【0033】
まず、歩行者が発電ユニット12a上を踏みつけて歩行したことに伴い、発電ユニット12aの発電素子14に圧力が加わり、起電力が発生し、起電力により生じた電流が整流ダイオードD1で整流され、キャパシタCに電荷が蓄電される。キャパシタCの端子間には蓄積電荷量に応じた電圧が発生する。キャパシタCの一方の電極に生じた電圧は、整流ダイオードD2を順方向に介して電源端子Tに印加されると共に、正側入力端子ADC01に印加される。また、発電ユニット12aのキャパシタCの他方の電極に生じた電圧は、負側入力端子ADC04に印加される。
【0034】
無線送信ユニット13は、電源端子Tを介して電圧Vccが印加されると、電源制御部19で基準電圧Arfが生成され、駆動電圧Vcc及び基準電圧ArfがAD変換器16に送られる。AD変換器16では、駆動電圧Vccを受けると、アナログ入力端子ADC01及びADC04間の電圧が基準電圧Arfに基づいてデジタル信号に変換され、この端子間電圧を示すデジタル信号がRF部17に送られる。電源制御部19から駆動電圧Vccを受けたRF部17では、発振部20からの局部発振信号に基づいて、AD変換器16から入力されたデジタル信号がRF信号に変換され、RF信号に変換されたデジタル信号(センシング結果)がアンテナANT1を介して無線送信される。無線受信装置11は、無線送信ユニット13から無線送信された信号を受信してセンシング結果を取り込む。
【0035】
また、歩行者が別の発電ユニット12bの発電素子14を踏み付けて外部圧力が加わると起電力が発生し、起電力により生じた電流が整流ダイオードD1で整流され、キャパシタCに電荷が蓄積される。キャパシタCに蓄積された電荷に応じた電圧が端子間に発生する。キャパシタCの一方の電極に現れた電圧は、整流ダイオードD2を介して電源端子Tに印加されると共に、正側入力端子ADC02に印加される。また、同キャパシタCの他方の電極に現れた電圧は、負側入力端子ADC04に印加される。
【0036】
上記同様、無線送信ユニット13は、電源端子Tを介して電圧Vccが供給されると、電源制御部19で基準電圧Arfが生成され、駆動電圧Vcc及び基準電圧ArfがAD変換器16に送られる。駆動電圧Vccを受けると、AD変換器16では、アナログ入力端子ADC02及びADC04間の電圧が基準電圧Arfに基づいてデジタル信号に変換され、この端子間電圧を示すデジタル信号がRF部17に送られる。電源制御部19から駆動電圧Vccを受けたRF部17では、発振部20からの局部発振信号に基づいて、AD変換器16から入力されたデジタル信号がRF信号に変換され、RF信号に変換されたセンシング結果がアンテナANT1からを無線受信装置11に無線送信される。
【0037】
このように、本実施の形態に係る無電源計測システム1によれば、各発電ユニット12でのセンシング結果を電力として蓄積し、各発電ユニット12の蓄電器15から電力測定値を取り込み、その電力測定値を無線送信し、電力測定値の取り込み及び電力測定値の無線送信に要する電力は、複数の発電ユニット12から供給を受けるようにしたので、従来の監視システムのように外部電源を設けることなく、例えば、歩行者及び又は車両の通行量を計測することができる。また、計測エリアが外部電源からの電力供給が可能なエリアに限定されないので、任意のエリアを計測エリアにすることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る無電源計測システムについて説明する。上記第1の実施の形態では、無電源計測システムを通行状況監視システムに適用したが、第2の実施の形態では、無電源計測システムを落石、土砂崩れ、地すべり等を監視する落石監視システムに適用した場合を例に説明する。第2の実施の形態に係る無電源計測システム1aは、上記第1の実施の形態に係る無電源計測システム1と比べて、無線受信装置11の構成のみ相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。
【0039】
図5は、本実施の形態に係る落石監視システムに適用された無電源計測システム1aを説明するための模式図である。図5(a)は落石監視システムを上方から見た図であり、(b)は落石監視システムを電車車両の進行方向から見た図である。
【0040】
図5に示すように、本実施の形態に係る無電源計測システム1aは、無電源計測装置10及び無線送受信装置11aを備えている。複数の発電ユニット12を有するシート状部材Sは、電車線路Rと、落石・地すべりの起こりやすい崖との間を埋めるように敷かれている。無線送受信装置11aは、無電源計測装置10から各発電ユニット12での発生電力の電力測定値を無線受信すると共に、受信した電力測定値に無線処理等を施し、電車車両TRに対して無線送信する。この無線送受信装置11aは、電車車両TRへの電源供給路である架線Lと接続され、架線Lを介して電源が供給されるように構成されている。
【0041】
この無電源計測システム1aでは、崖からの落石によりシート状部材S内の発電素子14に落石に伴う外部圧力が加わると起電力が発生して蓄電器15に電荷が蓄積され、この蓄積電荷に応じた電圧が電源端子T、正側のアナログ入力端子ADC、負側のアナログ入力端子ADCに印加される。電源端子Tに電圧Vccが印加されると、電源制御部19で基準電圧Arfが生成され、駆動電圧Vcc及び基準電圧ArfがAD変換器16に供給される。駆動電圧Vccを受けると、AD変換器16では、2つのアナログ入力端子ADC及びADC間の電圧が基準電圧Arfに基づいてデジタル信号に変換され、この端子間電圧(電力測定値)を示すデジタル信号がRF部17に送られる。電源制御部19から駆動電圧Vccを受けたRF部17では、発振部20からの局部発振信号に基づいて、AD変換器16から入力されたデジタル信号がRF信号に変換され、RF信号に変換されたデジタル信号がアンテナANT1を介して無線送受信装置11aに無線送信される。無電源計測装置10からデジタル信号を無線受信した無線送受信装置11aは、各発電ユニット12での発生電力の電力測定値(落石などの有無)を示すデジタル信号を電車車両TRに対して無線送信する。
【0042】
このように、本実施の形態に係る無電源計測システム1aによれば、複数の発電ユニット12から電力供給を受けて、各発電ユニット12の蓄電器15に蓄積された電力をそれぞれ測定して、落石などの発生状況を示す電力測定値を無線送信し、無線送受信装置11aが電車車両TRに対して電力測定値を無線送信するので、センシング部に外部電源を設けることなく、落石や土砂崩れを監視して、落石・土砂災害による電車脱線等の事故を未然に回避することができる。また、AD変換器16における端子間電圧のAD変換順位を基に、各電力測定値に対応した発電ユニット12を特定するので、二次元状に敷設された複数の発電ユニット12から電力を発生した発電ユニット12の電力発生位置(落石位置)を特定することができる。
【0043】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0044】
上記実施の形態では、無電源計測システム1(1a)を通行状況監視システム及び落石監視システムに適用した場合を例に説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、外部圧力による発生電力の電力値を測定するものであれば、例えば、住居等の建物内への侵入防止等のセキュリティシステムに適用可能である。
【0045】
また、上記実施の形態では、各発電ユニット12の発生電力を各々測定したが、複数の発電ユニット12の総発生電力を測定し、この総発生電力の電力測定値を送信する構成にしてもよい。すなわち、AD変換器16では、複数の発電ユニット12の蓄電器15の正側のアナログ入力端子ADC及び負側のアナログ入力端子ADCの端子間の電圧をそれぞれデジタル信号に変換し、端子間電圧の総和を計算して、その端子間電圧の総和を示すデジタル信号がRF部17に送られる。
【0046】
この場合に、マイクロコントローラ部18内に送信要否を判断するための閾値を設けるようにしてもよい。例えば、第2の実施の形態に係る落石監視システムに適用する場合には、小石等の落石検出では電力測定値を送信しないように閾値を設定し、総電力測定値がこの閾値より大きい場合にのみ電力測定値を無線送受信装置11aに対して無線送信する。これにより、交通に支障を与えない小さな落石等では電車車両等の運行を妨げないようにする。また、安全性に影響を与えるような落石又は地すべりは、確実に警告を発して、周辺を走行中の車両の走行を迅速に停止させる。
【0047】
また、電源制御部19は、マイクロコントローラ部18及びRF部17への蓄電器15からの電源供給タイミングを変えてもよい。この場合において、蓄電器15から電源電圧(Vcc)が印加されると、電源制御部19はマイクロコントローラ部18に駆動電圧Vccを供給してマイクロコントローラ部18を動作させるが(アクティブモード)、電源制御部19からRF部17へは、この時点では駆動電圧Vccを供給しないでRF部17は動作させない(スリープモード)。AD変換器16で測定された電力測定値は最大を維持するように更新され、間欠的にRF部17を動作させる。そのため、電源制御部19はスリープモードが解除されると、RF部17に駆動電圧Vccを供給し、RF部17を動作させる。すなわち、電源制御部19は、RF部17に対して、電力測定値の送信タイミング時には駆動電圧Vccを供給してアクティブモードに切り替え、非送信タイミング時には駆動電圧Vccの供給を停止してスリープモードに切り替える。2つの動作モードの切り替えは、本無電源計測システム1(1a)の適用用途により変更することが好ましく、例えば、スリープモード時間を設定により100msecから1時間の間で設定可能である。また、送信対象となる電力測定値がある場合にのみRF部17を動作させ、送信用電力を有効利用する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、圧力が加えられると起電力を発生する発電素子を利用した無電源計測装置に関し、例えば、歩行者等の通行状況を監視する通行状況監視システムや落石等を監視する落石監視システムに有用である。
【符号の説明】
【0049】
1,1a 無電源計測システム
10 無電源計測装置
11 無線受信装置
11a 無線送受信装置
12 発電ユニット
13 無線送信ユニット
14 発電素子
15 蓄電器(蓄電部)
16 AD変換器
17 RF部(無線送信部)
18 マイクロコントローラ部
19 電源制御部
20 発振部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部圧力が加わると電力を発生する発電素子と、前記発電素子に接続され該発電素子の発生電力を蓄積する蓄電部とをそれぞれ有し、所定エリアに二次元状に敷設される複数の発電ユニットと、
前記発電ユニットから電力供給を受けて動作し、前記各発電ユニットの蓄電部に蓄積された電力をそれぞれ測定して電力測定値を得る測定手段と、
前記発電ユニットから電力供給を受けて動作し、前記測定手段で測定された電力測定値を無線送信する無線送信部と、
を具備したことを特徴とする無電源計測装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記各発電ユニットから前記蓄電部の正側端子と負側端子とがそれぞれ接続され、前記複数の蓄電部の端子間の電圧を順番にデジタルデータに変換するAD変換器を有することを特徴とする請求項1記載の無電源計測装置。
【請求項3】
前記複数の発電ユニットは、歩行者及び又は車両の通行状況を監視する領域に設置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無電源計測装置。
【請求項4】
前記複数の発電ユニットは、落石又は地すべりを監視する領域に設置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無電源計測装置。
【請求項5】
前記無線送信部は、前記発電ユニットによる総発生電力が閾値よりも大きい場合に、電力測定値を無線送信することを特徴とする特徴とする請求項4記載の無電源計測装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の無電源計測装置と、前記無電源計測装置の無線送信部と通信して前記各発電ユニットでの発生電力の電力測定値を受信する無線受信装置と、を具備したことを特徴とする無電源計測システム。
【請求項7】
前記無線受信装置は、前記測定手段における端子間電圧のAD変換順位を基に、各電力測定値に対応した発電ユニットを特定することを特徴とする請求項6記載の無電源計測システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−17605(P2011−17605A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162131(P2009−162131)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(592145268)ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社 (53)
【出願人】(509193418)アイ・サイナップ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】