説明

焦点検出装置および撮像装置

【課題】焦点調節を行うために採用した焦点検出エリアを表示する。
【解決手段】結像光学系による画面内の画像情報を撮像素子により取得し、基準とする像に関する基準情報と画像情報とに基づいて画面内における対象の領域50を検出するとともに、画面内に設定された複数の焦点検出位置45における結像光学系の焦点調節状態を検出し、対象の領域の検出結果と焦点検出結果とに基づいて複数の焦点検出位置のいずれかを選択し、選択された焦点検出位置が対象の領域内またはその近傍にある場合には、対象の領域の中央に最も近い焦点検出位置46を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焦点検出装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアにおいて撮影レンズのデフォーカス量を検出し、いずれかのエリアのデフォーカス量に基づいて撮影レンズを合焦駆動する自動焦点調節(AF)機能と、撮影画像の中の追尾対象の被写体の画像をテンプレート画像(基準画像)として記憶し、繰り返し撮像される画像の中でテンプレート画像と同一または類似した画像の位置を検索しながら追尾対象の被写体を追尾する画像追尾機能とを備え、画像追尾結果の追尾位置の焦点検出エリアを選択してその焦点検出エリアのデフォーカス量により撮影レンズを合焦駆動するオートフォーカスシステムが知られている(例えば、この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−058431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のオートフォーカスシステムでは、画像追尾結果の追尾位置に複数の焦点検出エリアがある場合、どの焦点検出エリアを焦点調節を行うエリアに採用したのか、あるいは、画像追尾結果の追尾位置にある焦点検出エリアで焦点検出不能もしくは焦点検出結果の信頼性がない場合に、追尾位置以外のどの焦点検出エリアを焦点調節を行うエリアに採用したのか判らないので、対象とする被写体を正しく追尾しているのかどうかを認識することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明は、結像光学系による画面内の画像情報を撮像素子により取得し、基準とする像に関する基準情報と画像情報とに基づいて画面内における対象の領域を検出する画像検出手段と、画面内に設定された複数の焦点検出位置における結像光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段と、画像検出手段による対象の領域の検出結果と、焦点検出手段による焦点調節状態の検出結果とに基づいて、複数の焦点検出位置のいずれかを選択する選択手段と、画面上に焦点検出位置を重畳して表示する表示手段と、選択手段により選択された焦点検出位置が対象の領域内またはその近傍にある場合には、対象の領域の中央に最も近い焦点検出位置を表示手段に表示する制御手段とを備える。
(2) 請求項2の焦点検出装置は、制御手段によって、選択手段により選択された焦点検出位置が対象の領域内およびその近傍にない場合には、選択された焦点検出位置を表示手段に表示するようにしたものである。
(3) 請求項3の焦点検出装置は、選択手段によって、繰り返し前記選択を行うとともに、対象の領域内およびその近傍にある焦点検出位置のいずれに対しても焦点検出手段による焦点検出が不能、または焦点検出結果の信頼性がない場合には、対象の領域内およびその近傍以外の位置にある焦点検出位置に対して検出された焦点調節状態の内、前回選択した焦点検出位置に対する焦点調節状態と類似する焦点調節状態を示す焦点検出位置を選択し、制御手段によって、選択手段により選択された焦点検出位置を表示手段に表示するようにしたものである。
(4) 請求項4の焦点検出装置は、選択手段によって、繰り返し選択を行うとともに、画像検出手段により画面内で対象の領域が検出できない場合には、焦点検出手段により検出された焦点調節状態の内、前回選択した焦点検出位置に対する焦点調節状態と類似する
焦点調節状態を示す焦点検出位置を選択し、制御手段によって、選択手段により選択された焦点検出位置を表示手段に表示するようにしたものである。
(5) 請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の焦点検出装置を備えた撮像装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮影者は追尾したい被写体をカメラが正確に追尾しているか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施の形態の画像追尾装置を備えた撮像装置の構成を示す図
【図2】ボディ駆動制御装置の詳細な構成を示す図
【図3】第2撮像素子の詳細な構成を示す正面図
【図4】第2撮像素子の画素の詳細図
【図5】ファインダー像を示す図
【図6】他のファインダー像を示す図
【図7】一実施の形態の被写体の追尾方法を説明する図
【図8】一実施の形態の被写体の追尾方法を説明する図
【図9】一実施の形態の被写体追尾動作を示すフローチャート
【図10】一実施の形態の追尾制御の初期処理を示すフローチャート
【図11】一実施の形態の追尾演算処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアにおいて撮影レンズの焦点調節状態(この一実施の形態ではデフォーカス量)を検出し、いずれかのエリアのデフォーカス量に基づいて撮影レンズを合焦駆動する自動焦点調節(AF)機能と、撮影画像の中の追尾対象の被写体の画像をテンプレート画像(基準画像)として記憶し、繰り返し撮像される画像の中でテンプレート画像と同一または類似した画像の位置を検索しながら(テンプレートマッチング)追尾対象の被写体を追尾する画像追尾機能とを備え、AF機能と画像追尾機能により撮影レンズを駆動しながら対象を追尾する画像追尾装置を備えた撮像装置(一眼レフデジタルスチルカメラ)の一実施の形態を説明する。
【0009】
図1は、一実施の形態の画像追尾装置を備えた撮像装置(一眼レフデジタルスチルカメラ)1の構成を示す。なお、図1では本願発明と直接関係のないカメラの機器および回路についての図示と説明を省略する。一実施の形態のカメラ1は、カメラ本体2に交換レンズ3が交換可能に装着される。カメラ本体2には被写体像を撮像して画像を記録するための第1撮像素子4が設けられる。この第1撮像素子4はCCDやCMOSなどにより構成することができる。撮影時にはクイックリターンミラー5およびサブミラー6が実線で示す撮影光路外の位置に退避してシャッター7が開放され、撮影レンズ8により第1撮像素子4の受光面に被写体像が結像される。
【0010】
カメラ本体2の底部には、撮影レンズ8の焦点調節状態を検出するための焦点検出光学系9と測距素子10が設けられている。この一実施の形態では、瞳分割型位相差検出方式による焦点検出方法を採用した例を示す。焦点検出光学系9は、撮影レンズ8を通過した対の焦点検出用光束を測距素子10の受光面へ導き、対の光像を結像させる。測距素子10は例えば対のCCDラインセンサーを備え、対の光像に応じた焦点検出信号を出力する。撮影前にはクイックリターンミラー5およびサブミラー6が破線で示すような撮影光路内の位置に設定されており、撮影レンズ8からの対の焦点検出用光束はクイックリターンミラー5のハーフミラー部を透過し、サブミラー6により反射されて焦点検出光学系9および測距素子10へ導かれる。
【0011】
カメラ本体2の上部にはファインダー光学系が設けられている。撮影前にはクイックリターンミラー5およびサブミラー6が破線で示す位置にあり、撮影レンズ8からの被写体光はクイックリターンミラー5に反射されて焦点板11へ導かれ、焦点板11上に被写体像が結像する。液晶表示素子12は、焦点板11上に結像された被写体像に焦点検出エリアマークなどの情報を重畳表示するとともに、被写体像外の位置に露出値などの種々の撮影情報を表示する。焦点板11上の被写体像はペンタダハプリズム13および接眼レンズ14を介して接眼窓15へ導かれ、撮影者が被写体像を視認することができる。
【0012】
また、カメラ本体2上部のファインダー光学系には、被写体追尾や測光のために被写体像を撮像する第2撮像素子16が設けられる。焦点板11に結像した被写体像は、ペンタダハプリズム13、プリズム17および結像レンズ18を介して第2撮像素子16の受光面に再結像される。第2撮像素子16は被写体像に応じた画像信号を出力する。撮影前に
焦点板11上に結像された被写体像は、ペンタダハプリズム13、プリズム17および結像レンズ18を介して第2撮像素子16へ導かれ、第2撮像素子16の受光面に被写体像が再結像される。詳細を後述するが、この第2撮像素子16により撮像された被写体像に基づいて画像追尾制御と露出演算が行われる。
【0013】
カメラ本体2にはまた、ボディ駆動制御装置19、操作部材20などが設けられる。ボディ駆動制御装置19は、詳細を後述するマイクロコンピューターとメモリ、A/D変換器などの周辺部品から構成され、カメラ1の種々の制御と演算を行う。操作部材20には、シャッターボタン、焦点検出エリア選択スイッチ、撮影モード選択スイッチなどのカメラ1を操作するためのスイッチやセレクターが含まれる。
【0014】
交換レンズ3には、ズーミングレンズ8a、フォーカシングレンズ8b、絞り21、レンズ駆動制御装置22などが設けられる。なお、この一実施の形態では撮影レンズ8をズーミングレンズ8a、フォーカシングレンズ8bおよび絞り21で体表的に表すが、撮影レンズ8の構成は図1に示す構成に限定されない。レンズ駆動制御装置22は図示しないマイクロコンピューターとメモリ、駆動回路、アクチュエーターなどの周辺部品から構成され、レンズ8a、8bおよび絞り21の駆動制御とそれらの設定位置検出を行う。レンズ駆動制御装置22に内蔵されるメモリには、交換レンズ3の焦点距離や開放絞り値などの情報が記憶されている。
【0015】
ボディ駆動制御装置19とレンズ駆動制御装置22はレンズマウント部の接点23を介して通信を行い、ボディ駆動制御装置19からレンズ駆動制御装置22へレンズ駆動量や絞り値などの情報を送信し、レンズ駆動制御装置22からボディ駆動制御装置19へレンズ情報や絞り情報を送信する。モニター24はカメラ本体2の背面に設けられ、スルー画や撮影画像の他に各種撮影情報を表示する。
【0016】
図2はボディ駆動制御装置19の詳細な構成を示す。なお、本願発明と直接関係のない制御機能については図示と説明を省略する。ボディ駆動制御装置19は素子制御回路19a、A/D変換器19b、マイクロコンピューター19c、メモリ19dなどを備えている。素子制御回路19aは第2撮像素子16の電荷の蓄積と読み出しを制御する。A/D変換器19bは、第2撮像素子16から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。マイクロコンピューター19cは、ソフトウエア形態により追尾制御部19e、露出制御部19f、焦点検出演算部19gおよびレンズ駆動量演算部19hを構成する。メモリ19dは、画像追尾用のテンプレート画像(基準画像)やデフォーカス量などの情報、あるいは撮影レンズ8の焦点距離、開放F値、絞り値、像ズレ量からデフォーカス量への変換係数などのレンズ情報を記憶する。
【0017】
追尾制御部19eは、第2撮像素子16により撮像した被写体像の内、撮影者が手動で指定した追尾対象位置、あるいはカメラ1が自動で設定した追尾対象位置に対応する画像をテンプレート画像(基準画像)としてメモリ19dに記憶させ、その後に繰り返し撮影
される画像の中からテンプレート画像と一致または類似する画像領域を検索することによって対象の位置を認識する。露出演算部19fは、第2撮像素子16により撮像した画像信号に基づいて露出値を演算する。
【0018】
焦点検出演算部19gは、測距素子10から出力される対の光像に応じた焦点検出信号に基づいて撮影レンズ8の焦点調節状態、ここではデフォーカス量を検出する。なお、詳細を後述するが、撮影レンズ8の撮影画面内には複数の焦点検出エリアが設定されており、測距素子10は焦点検出エリアごとに対の光像に応じた焦点検出信号を出力し、焦点検出演算部19gは焦点検出エリアごとに対の光像に応じた焦点検出信号に基づいてデフォーカス量を検出する。レンズ駆動量演算部19hは検出されたデフォーカス量をレンズ駆
動量に変換する。
【0019】
図3は第2撮像素子16の詳細な構成を示す正面図である。第2撮像素子16は、マトリクス状に配列された複数の画素(光電変換素子)26(ここでは横16個×縦12個=192個)を備えている。各画素26は図4に示すように3個の部分26a、26b、26cに分割され、これらの部分26a、26b、26cにはそれぞれ赤R、緑G、青Bの原色フィルターが設けられている。これにより、各画素26ごとに被写体像のRGB信号を出力することができる。
【0020】
次に、一実施の形態の被写体追尾動作を説明する。図5〜図8は一実施の形態の被写体追尾方法を説明するための図、図9〜図11は一実施の形態の被写体追尾処理を示すフローチャートである。シャッターボタンを全押しして撮影を行うとき以外は、クイックリターンミラー5が図1に破線で示す撮影光路内に設定されており、撮影レンズ8から入射した被写体光は焦点板11上に結像される。そして、焦点板11上の被写体像はペンタダハプリズム13、プリズム17および結像レンズ18を介して第2撮像素子16へ導かれ、第2撮像素子16から被写体像信号が繰り返し出力される。
【0021】
図5および図6は、撮影者が接眼窓15から視認する被写体像(ファインダー像)である。撮影レンズ8により焦点板11上に結像された被写体像には、液晶表示素子12により焦点検出エリアマークなどの情報が重畳表示され、ペンタダハプリズム13および接眼レンズ14を介して接眼窓15へ導かれ、撮影者が被写体像を視認することができる。この一実施の形態では、撮影レンズ8の撮影画面44内に45個の焦点検出エリアが設定されており、液晶表示素子12により焦点板11上の被写体像にエリアマーク45を重畳し、各焦点検出エリアの位置を表示する。操作部材20の焦点検出エリア選択スイッチにより任意のエリアを選択すると、そのエリアのマーク45が点灯表示される。
【0022】
操作部材20の焦点検出エリア選択スイッチによりいずれかの焦点検出エリアが選択され、この状態で操作部材20のシャッターボタンが半押しされると、その焦点検出エリアが初回AFエリアとしてメモリ19dに記憶される。これにより、追尾対称の被写体が指定される。なお、ここでは撮影者が初回AFエリアを選択して追尾対象の被写体を手動で指定する例を示したが、例えば自動的に被写体を認識する機能を備えたカメラでは被写体認識結果に基づいて初回AFエリアおよび追尾対象被写体を設定してもよい。
【0023】
ステップ1において、第2撮像素子16により追尾初期画像(画像追尾処理を開始して最初に取得する画像)を取得する。この追尾初期画像は画素ごとにRGB値で表す。
R[x,y]、G[x,y]、B[x,y] ・・・(1)
この画素ごとのRGB値に基づいて各画素の色情報RG、BG、画像を取得したときの露光時間T、ゲインGain、色合成係数Kr、Kg、Kbから輝度情報Lを算出する。
RG[x,y]=Log(R[x,y])−Log(G[x,y]),
BG[x,y]=Log(B[x,y])−Log(G[x,y]),
L[x,y]=Log(Kr×R[x,y]+Kg×G[x,y]+Kb×B[x,y])−Log(T)−Log(Gain) ・・・(2)
【0024】
続くステップ2では、図10に示す追尾制御初期処理を実行する。図10のステップ101において、第2撮像素子16で取得した追尾初期画像の中の初回AFエリアの位置に対応する位置の画像を、被写体色情報として記憶する。ステップ102では、図7(a)に示すように、追尾初期画像の中の初回AFエリアの位置周辺部において被写体色情報と同様な色情報を示す同色情報領域を検出し、続くステップ103で同色情報領域を初期の追尾被写体領域47とする。
【0025】
ステップ104において、追尾初期画像の中の追尾被写体領域47の画像を画像追尾処理に用いるテンプレート画像48(図7(b)参照)としてメモリ19dに記憶する。例えば、追尾被写体領域47の始点位置が図7(a)に示すように(x,y)=(4,5)の場合には、テンプレート画像48の色情報は次のように表される。
RGref[rx,ry]=RG[x,y]、
BGref[rx,ry]=BG[x,y]、
Lref[rx,ry]=L[x,y] (rx,ry=1〜3、x=4〜6、y=5〜7) ・・・(3)
【0026】
次に、ステップ105で追尾被写体領域47を中心に前後左右に所定画素(ここでは2画素とする)づつ拡大した領域を探索領域49に設定する。図7(a)に示す例では、探索領域49は、x=2〜8、y=3〜9の領域になる。
【0027】
追尾制御の初期処理が終了したら図8のステップ3へ進み、操作部材20のシャッターボタンが全押しされたか否か、つまりシャッターレリーズ操作が行われたか否かを確認する。シャッターレリーズ操作がない場合はステップ4へ進み、第2撮像素子16から追尾次画像を取得し、ステップ1の処理と同様に色情報RG[x,y]、BG[x,y]および輝度情報L[x,y]を算出し、メモリ19dに記憶する。同時に、測距素子10により、各焦
点検出エリアごとに焦点検出用の対の光像に応じた焦点検出信号を取得する。
【0028】
ステップ5では、図11に示す追尾演算処理を実行する。図11のステップ201において、追尾次画像の中の探索領域49からテンプレート画像48と同じサイズの領域を順次切り出し、切り出した画像とテンプレート画像48の対応する画素ごとに色情報の差分Diffを算出する。図8(a)に太い破線で示すように、探索領域49の中で1画素ずつ領
域をずらしながらテンプレート画像48との色情報の差分Diffを算出する。
【0029】
今、図8(a)に示すように探索領域49の始点位置が(scx,scy)=(2,3)であるとすると、差分Diffの演算は次のようにして行う。
Diff[dx,dy]=ΣΣ{ABS(RG[scx+dx−1+rx,scy+dy−1+r
y]−RGref[rx,ry])+ABS(BG[scx+dx−1+rx,scy+dy−1+ry]−BGref[rx,ry])+ABS(L[scx+dx−1+rx,scy+dy−1+ry]−Lref[rx,ry])} ・・・(4)
(4)式において、dx,dy=1〜5、rx,ry=1〜3、scx=2、scy=3、ΣΣはrx=1〜3およびry=1〜3の総和演算である。
【0030】
次に、ステップ202において、差分Diff[dx,dy]の中の最小の差分を検索し、探索領域49内で最小の差分を算出したときの上記切り出し領域を新しい追尾被写体領域47に決定する。ここでは、図8(b)に示すように、始点位置が(x,y)=(5,6)の切り出し領域を新しい追尾被写体領域47とする。
【0031】
ここで、新しく被写体領域47に決定された画像情報を用いてテンプレート画像48の画像情報を更新する処理を加えてもよい。その場合、例えば元のテンプレート画像48の画像情報80%に対して新被写体領域47の画像情報20%を加えることによって、テンプレート画像の情報に対して最新の画像情報が少しずつ更新され、追尾被写体の変化に追従しやすくなる。この場合、追尾演算のたびに毎回更新を行うのではなく、追尾被写体領域47として決定した位置の差分Diffの大きさに基づいて、あるしきい値より小さいと
きのみ更新するようにしてもよい。
【0032】
ステップ203では、新しい追尾被写体領域47を中心に前後左右に所定画素(ここでは2画素とする)づつ拡大した領域を新しい探索領域49に設定する。ここでは、図8(
b)に示すように、x=3〜9、y=4〜10の領域を新しい探索領域49とする。その
後、図9のステップ6へリターンする。
【0033】
リターン後の図9のステップ6において、ステップ4にて取得した焦点検出信号に基づいて各選択焦点検出エリアの撮影レンズ8の焦点調節状態、すなわちデフォーカス量を検出する。続くステップ7では、すべての焦点検出エリアのデフォーカス量の中から、前回の焦点調節時に採用した焦点検出エリアのデフォーカス量に類似するデフォーカス量を示す焦点検出エリアを検索する。
【0034】
ステップ8において、ステップ5における画像追尾結果の新追尾被写体領域と、ステップ6〜7におけるエリア検索結果の焦点検出エリアとに基づいて、焦点調節を行うエリアを決定する。この一実施の形態では、画像追尾結果の新追尾被写体領域47に対応する焦点検出エリアと、エリア検索結果の焦点検出エリアとを比較し、画像追尾結果とエリア探索結果とに共通の焦点検出エリアを焦点調節を行うエリア(以下、焦点調節エリアという)に決定する。
【0035】
具体的には、図5に示すように、画像追尾結果の新追尾被写体領域47内またはその近傍にある焦点検出エリアの内のいずれかが、エリア探索結果の焦点検出エリアと一致した場合には、その一致した焦点検出エリアを上記焦点調節エリアに決定する。しかしこのとき、液晶表示素子12により新追尾被写体領域47の中央に最も近い焦点検出エリア46のエリアマークを点灯表示する。この場合、追尾対象の被写体像50の中央の焦点検出エリア46が点灯表示される確率が高く、撮影者は追尾したい被写体をカメラが正確に追尾しているか否かを容易に確認することができる。
【0036】
一方、図6に示すように、画像追尾結果の新追尾被写体領域47内およびその近傍にある焦点検出エリアと、エリア検索結果の焦点検出エリアとが一致しなかった場合には、新追尾被写体領域47内およびその近傍以外の位置にあるすべての焦点検出エリアで検出されたデフォーカス量の内、前回の焦点調節時に焦点調節を行った焦点検出エリアのデフォーカス量と類似するデフォーカス量を示す焦点検出エリアを焦点調節を行う焦点検出エリアに決定し、焦点調節を行うエリアに決定した焦点検出エリア46のエリアマークを点灯表示する。この場合、撮影画面44内のどの部分にピントを合わせるのかを明確に表示することができ、撮影者が追尾したい被写体をカメラが正確に追尾できているか否かを容易に確認することができる。
【0037】
ここで、画像追尾結果の新追尾被写体領域47とエリア検索結果の焦点検出エリアとが一致しない原因としては、以下に示す(1)、(2)の原因が考えられる。
【0038】
(1) 上述したテンプレート差分演算結果の差分Diff[dx,dy]が類似判定しきい値を超え、撮影した画像の中にテンプレート画像48と類似する像が検出されなかった場合には、画像追尾により新追尾被写体領域47を決定することができず、画像追尾結果の新追尾被写体領域47とエリア検索結果の焦点検出エリアとが一致しない。この原因としては、追尾対象の被写体が別の被写体の陰になったり、追尾対象の被写体の向きが変わって、撮影画像の中からテンプレート画像48と類似する像を検出できない場合が考えられる。
【0039】
画像追尾機能により撮影画面内で追尾被写体領域47が検出できない場合には、AF機能により検出されたデフォーカス量の内、前回の焦点調節時に焦点調節を行った焦点検出エリアのデフォーカス量と類似するデフォーカス量を示す焦点検出エリアを今回の焦点調節を行う焦点検出エリアに決定し、決定された焦点調節を行う焦点検出エリアのエリアマークを点灯表示する。これにより、図6に示すように、撮影画面44内のどの部分にピン
トを合わせるのかを明確に表示することができ、撮影者が追尾したい被写体をカメラが正確に追尾できているか否かを容易に確認することができる。
【0040】
(2) 新追尾被写体領域47内のすべての焦点検出エリアにおいて、信頼性のあるデフォーカス量が検出できなかった場合、あるいは焦点検出不能になった場合には、新追尾被写体領域47外の焦点検出エリアの内、前回の焦点調節時に採用した焦点検出エリアのデフォーカス量に類似するデフォーカス量を示す焦点検出エリアを検索することになり、画像追尾結果の新追尾被写体領域47とエリア検索結果の焦点検出エリアとが一致しない。この原因としては、同じような色の被写体が背景にあったり、同じような被写体がいくつかあってテンプレート画像48と類似する像を検出できるが、新追尾被写体領域47内の焦点検出エリアのデフォーカス量が前回の焦点調節時に採用した焦点検出エリアのデフォーカス量と大きく異なる場合が考えられる。
【0041】
新追尾被写体領域47内およびその近傍にあるすべての焦点検出エリアでAF機能による焦点検出が不能、または焦点検出結果の信頼性がない場合には、新追尾被写体領域47内およびその近傍以外の位置にあるすべての焦点検出エリアで検出されたデフォーカス量の内、前回の焦点調節時に焦点調節を行った焦点検出エリアのデフォーカス量と類似するデフォーカス量を示す焦点検出エリアを焦点調節を行う焦点検出エリアに決定し、決定された焦点調節を行う焦点検出エリアのエリアマークを点灯表示する。これにより、図6に示すように、撮影画面44内のどの部分にピントを合わせるのかを明確に表示することができ、撮影者が追尾したい被写体をカメラが正確に追尾できているか否かを容易に確認することができる。
【0042】
図9のステップ9において、焦点調節エリアで検出されたデフォーカス量をレンズ駆動量に変換し、レンズ駆動制御装置22によりフォーカシングレンズ8bを駆動して焦点調節を行う。焦点調節後のステップ3でレリーズボタンの全押しを確認する。シャッターボタンが半押しされている間、ステップ4〜9の処理を繰り返し実行し、シャッターボタンが全押しされるとステップ10へ進み、撮影処理を実行する。
【0043】
このように、一実施の形態によれば、撮影レンズ8による結像画像を第2撮像素子16により取得し、追尾対象の像に関する基準画像と上記結像画像とに基づいて撮影画面内の追尾被写体領域を検出する画像追尾機能と、撮影画面内の複数の焦点検出エリアにおいて撮影レンズ8のデフォーカス量を検出するAF機能とを備え、画像追尾機能による追尾被写体領域の検出結果とAF機能によるデフォーカス量の検出結果とに基づいて、撮影レンズ8の焦点調節を行う焦点検出エリアを決定し、撮影レンズ8による結像画像上に焦点検出エリアのエリアマークを重畳して点灯表示する際に、決定された焦点調節を行う焦点検出エリアが追尾被写体領域内またはその近傍にある場合には、追尾被写体領域の中央に最も近い焦点検出エリアのエリアマークを点灯表示する。これにより、追尾対象の被写体像の中央の焦点検出エリアが点灯表示される確率が高く、撮影者は追尾したい被写体をカメラが正確に追尾しているか否かを容易に確認することができる。
【0044】
一方、一実施の形態によれば、決定された焦点調節を行う焦点検出エリアが追尾被写体領域内およびその近傍にない場合には、焦点調節を行う焦点検出エリアのエリアマークを点灯表示する。これにより、撮影画面内のどの部分にピントを合わせるのかを明確に表示することができ、撮影者が追尾したい被写体をカメラが正確に追尾できているか否かを容易に確認することができる。
【符号の説明】
【0045】
8 撮影レンズ
10 測距素子
16 第2撮像素子
19 ボディ駆動制御装置
19d メモリ
22 レンズ駆動制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像光学系による画面内の画像情報を撮像素子により取得し、基準とする像に関する基準情報と前記画像情報とに基づいて前記画面内における前記対象の領域を検出する画像検出手段と、
前記画面内に設定された複数の焦点検出位置における前記結像光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段と、
前記画像検出手段による前記対象の領域の検出結果と、前記焦点検出手段による焦点調節状態の検出結果とに基づいて、前記複数の焦点検出位置のいずれかを選択する選択手段と、
前記画面上に前記焦点検出位置を重畳して表示する表示手段と、
前記選択手段により選択された前記焦点検出位置が前記対象の領域内またはその近傍にある場合には、前記対象の領域の中央に最も近い前記焦点検出位置を前記表示手段に表示する制御手段とを備えることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記制御手段は、前記選択手段により選択された前記焦点検出位置が前記対象の領域内およびその近傍にない場合には、前記選択された焦点検出位置を前記表示手段に表示することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の焦点検出装置において、
前記選択手段は、繰り返し前記選択を行うとともに、前記対象の領域内およびその近傍にある前記焦点検出位置のいずれに対しても前記焦点検出手段による焦点検出が不能、または焦点検出結果の信頼性がない場合には、前記対象の領域内およびその近傍以外の位置にある前記焦点検出位置に対して検出された焦点調節状態の内、前回選択した焦点検出位置に対する焦点調節状態と類似する焦点調節状態を示す前記焦点検出位置を選択し、
前記制御手段は、前記選択手段により選択された前記焦点検出位置を前記表示手段に表示することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記選択手段は、繰り返し前記選択を行うとともに、前記画像検出手段により前記画面内で前記対象の領域が検出できない場合には、前記焦点検出手段により検出された焦点調節状態の内、前回選択した焦点検出位置に対する焦点調節状態と類似する焦点調節状態を示す前記焦点検出位置を選択し、
前記制御手段は、前記選択手段により選択された前記焦点検出位置を前記表示手段に表示することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の焦点検出装置を備えることを特徴とする撮像装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−93775(P2012−93775A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273375(P2011−273375)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【分割の表示】特願2007−169917(P2007−169917)の分割
【原出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】