説明

焦点検出装置および焦点調節装置

【課題】デフォーカス量が大きい場合においても、像ズレ量からデフォーカス量への変換誤差が微小となる焦点検出装置および焦点調節装置を提供する。
【解決手段】焦点検出装置は、射出瞳面を通過する一対の光束を受光し、一対の信号を出力する複数の焦点検出画素と、一対の光束による一対の像の像ズレ量を検出する像ズレ量検出手段と、像ズレ量に所定の変換係数を乗じて光学系のデフォーカス量を算出するデフォーカス量算出手段とを備え、デフォーカス量算出手段は、合焦近傍状態においては所定の変換係数の値として第1の値を用いるとともに、大デフォーカス状態においては所定の変換係数の値として第1の値よりも小さい第2の値を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焦点検出装置および焦点調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズとその背後に配置された一対の光電変換部とを有する焦点検出画素を撮影レンズの予定焦点面上に配列し、これにより撮影レンズを含む光学系(撮影光学系)を通る一対の焦点検出光束が形成する一対の像に応じた一対の像信号を生成し、この一対の像信号間の像ズレ量を検出することによって撮影レンズの焦点調節状態を検出する、いわゆる瞳分割型位相差検出方式の焦点検出装置が知られている。
【0003】
この種の焦点検出装置では、光学系の射出瞳距離を、該光学系の射出瞳上で一対の焦点検出光束が通過する一対の領域の重心間の距離で除した値を変換係数とし、検出された一対の像信号間の像ズレ量(位相差)に上記変換係数を乗じることにより光学系のデフォーカス量を算出して、焦点調節状態を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−268403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したこの種の焦点検出装置において、デフォーカス量が大きい場合には、上述した従来技術のように像ズレ量をデフォーカス量に変換したのでは変換誤差が増大する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1に記載の焦点検出装置は、光学系の射出瞳面を通過する一対の光束を受光し、一対の信号を出力する複数の焦点検出画素と、一対の信号に対する相関演算処理により、一対の光束による一対の像の像ズレ量を検出する像ズレ量検出手段と、像ズレ量に所定の変換係数を乗じて光学系のデフォーカス量を算出するデフォーカス量算出手段とを備え、射出瞳面における一対の光束の光量分布の各々は、一対の光量分布の各々の分布重心に関して不対称性を有し、デフォーカス量算出手段は、算出したデフォーカス量の絶対値が所定の閾値未満である合焦近傍状態においては所定の変換係数の値として第1の値を用いるとともに、絶対値が所定の閾値以上である大デフォーカス状態においては所定の変換係数の値として第1の値よりも小さい第2の値を用いることを特徴とする。
(2)請求項13に記載の焦点調節装置は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の焦点検出装置と、 焦点検出装置により算出されたデフォーカス量に応じて光学系の焦点調節を行う焦点調節手段とを備えることを特徴とする。
(3)請求項14に記載の焦点検出装置は、光学系の射出瞳面を通過する一対の光束を受光し、一対の信号を出力する複数の焦点検出画素と、一対の信号に対する相関演算処理により、一対の光束による一対の像の像ズレ量を検出する像ズレ量検出手段と、像ズレ量に所定の変換係数を乗じて光学系のデフォーカス量を算出するデフォーカス量算出手段とを備え、デフォーカス量算出手段は、算出したデフォーカス量の絶対値が所定の閾値未満である合焦近傍状態においては所定の変換係数の値として第1の値を用いるとともに、絶対値が所定の閾値以上である大デフォーカス状態においては所定の変換係数の値として第1の値よりも小さい第2の値を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デフォーカス量が大きい場合においても、像ズレ量からデフォーカス量への変換誤差が微小となる焦点検出装置および焦点調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施の形態の焦点検出装置および焦点調節装置を有するデジタルスチルカメラの構成を示す横断面図である。
【図2】交換レンズの予定結像面に設定した撮影画面上における焦点検出エリアを示す図である。
【図3】撮像素子の詳細な構成を示す正面図である。
【図4】焦点検出画素が受光する焦点検出光束の状態を説明するための断面図である。
【図5】焦点検出画素が受光する焦点検出光束の状態を説明するための断面図である。
【図6】一対の測距瞳から各焦点検出エリアに到来する一対の焦点検出光束の関係を示す図である。
【図7】一対の焦点検出光束が交換レンズの射出瞳によりどのように制限されるかを示した図である。
【図8】デジタルスチルカメラの動作を示すフローチャートである。
【図9】像ズレ検出演算処理を説明するための図である。
【図10】像ズレ量検出演算処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】実デフォーカス量と算出デフォーカス量との関係を示した図である。
【図12】像ズレ量の絶対値に応じて連続的に変化するように変換係数を定めた一例を示す図である。
【図13】一対の測距瞳から結像面の中央に配置された焦点検出画素に到来する一対の焦点検出光束の関係を示す図である。
【図14】大デフォーカス時の一対のボケ像の光量分布形状を示した図である。
【図15】一対のボケ像を相対的にシフトさせてそれぞれの重心位置を通る重心線を一致させた場合の概念図である。
【図16】相関量が極小になるように一対のボケ像を相対的にシフトさせた場合の概念図である。
【図17】デフォーカス量が比較的小さい場合の一対のボケ像の光量分布形状を示した図である。
【図18】一対のボケ像を相対的にシフトさせてそれぞれの重心位置を通る重心線を一致させた場合の概念図である。
【図19】光学系のF値が比較的大きな場合の一対の測距瞳分布の形状を示す図である。
【図20】一対の焦点検出光束がケラレにより不均一に制限される場合の一対の測距瞳分布の形状を示す図である。
【図21】撮像素子の詳細な構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態の焦点検出装置および焦点調節装置を有する撮像装置として、レンズ交換式のデジタルスチルカメラを例に挙げて説明する。図1は一実施の形態の焦点検出装置および焦点調節装置を有するデジタルスチルカメラの構成を示す横断面図である。本実施の形態のデジタルスチルカメラ201は、交換レンズ202とカメラボディ203とから構成され、交換レンズ202がマウント部204を介してカメラボディ203に装着される。カメラボディ203にはマウント部204を介して種々の撮影光学系を有する交換レンズ202が装着可能である。
【0010】
交換レンズ202は、レンズ209、ズーミング用レンズ208、フォーカシング用レンズ210、絞り211、レンズ駆動制御装置206などを備えている。レンズ駆動制御装置206は不図示のマイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路などから構成され、フォーカシング用レンズ210の焦点調節、絞り211の開口径調節のための駆動制御、ズーミング用レンズ208、フォーカシング用レンズ210および絞り211の状態検出などを行う。また、後述するボディ駆動制御装置214との通信によりレンズ情報の送信とカメラ情報(デフォーカス量や絞り値など)の受信とを行う。絞り211は、光量およびボケ量調整のために光軸中心に開口径が可変な開口を形成する。
【0011】
カメラボディ203は、撮像素子212、ボディ駆動制御装置214、液晶表示素子駆動回路215、液晶表示素子216、接眼レンズ217、メモリカード219などを備えている。撮像素子212には、撮像画素が二次元状に配置されるとともに、焦点検出位置(焦点検出エリア)に対応した部分に焦点検出画素が組み込まれている。この撮像素子212については詳細を後述する。
【0012】
ボディ駆動制御装置214は、マイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路などから構成される。ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212の露光制御および撮像素子212からの画素信号の読み出しと、焦点検出画素の画素信号に基づく焦点検出演算と、交換レンズ202の焦点調節とを繰り返し行うとともに、画像信号の処理および記録、カメラの動作制御などを行う。また、ボディ駆動制御装置214は電気接点213を介してレンズ駆動制御装置206との通信を行い、レンズ情報の受信およびカメラ情報の送信を行う。
【0013】
液晶表示素子216は電気的なビューファインダー(EVF:Electronic View Finder)として機能する。液晶表示素子駆動回路215は撮像素子212から読み出された画像データに基づき、スルー画像を液晶表示素子216に表示し、撮影者は接眼レンズ217を介してスルー画像を観察することができる。メモリカード219は、撮像素子212により撮像された画像データを記憶する画像ストレージである。
【0014】
交換レンズ202を通過した光束により、撮像素子212の受光面上に被写体像が形成される。この被写体像は撮像素子212により光電変換され、撮像画素の画素信号(撮像信号)および焦点検出画素の画素信号(焦点検出信号)がボディ駆動制御装置214へ送られる。
【0015】
ボディ駆動制御装置214は、図8を用いて後述するように、撮像素子212の焦点検出画素からの画素信号(焦点検出信号)に基づいて一対の像データの像ズレ量を検出し、検出した像ズレ量に基づいてデフォーカス量を算出する。すなわち、本実施の形態における焦点検出装置は、少なくとも、焦点検出信号を出力する撮像素子212と、像ズレ量検出およびデフォーカス量算出を行うボディ駆動制御装置214とを含む。ボディ駆動制御装置214は、デフォーカス量に基づいて交換レンズ202の焦点調節状態を検出し、合焦近傍でないと判定したとき、このデフォーカス量をレンズ駆動制御装置206へ送り、レンズ駆動制御装置206にフォーカシング用レンズ210および絞り211を駆動させることにより、焦点調節を行う。すなわち、本実施の形態における焦点調節装置は上述した焦点検出装置を含むとともに、その焦点調節装置に含まれる焦点検出装置のボディ駆動制御装置214はさらに焦点調節を行う。また、ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212からの画素信号を処理して画像データを生成し、メモリカード219に格納するとともに、撮像素子212から読み出されたスルー画像信号を液晶表示素子駆動回路215へ送り、スルー画像を液晶表示素子216に表示させる。さらに、ボディ駆動制御装置214は、レンズ駆動制御装置206へ絞り制御情報を送って絞り211の開口制御を行う。
【0016】
レンズ駆動制御装置206は、フォーカシング状態、ズーミング状態、絞り設定状態、絞り開放F値などに応じてレンズ情報を更新する。具体的には、ズーミング用レンズ208およびフォーカシング用レンズ210の位置と絞り211の絞り値とを検出し、これらのレンズ位置と絞り値とに応じてレンズ情報を演算したり、あるいは予め用意されたルックアップテーブルからレンズ位置と絞り値とに応じたレンズ情報を選択する。
【0017】
レンズ駆動制御装置206は、受信したデフォーカス量に基づいてレンズ駆動量を算出し、レンズ駆動量に応じてフォーカシング用レンズ210を合焦位置へ駆動する。また、レンズ駆動制御装置206は受信した絞り値に応じて絞り211を駆動する。
【0018】
図2は、交換レンズ202の予定結像面に規定した撮影画面上における焦点検出エリア(焦点検出位置)の一例を示す図である。図2に示す焦点検出エリアは、後述する撮像素子212上の焦点検出画素列が焦点検出の際に撮影画面上で像をサンプリングする領域の一例を示す。この例では、矩形の撮影画面100上の中央および上下の3箇所に焦点検出エリア101、102、103が配置される。焦点検出エリア101、102、103においては、長方形で示す焦点検出エリアの長手方向、すなわち図2の撮影画面100の垂直方向(縦方向)に対応するように、焦点検出画素が直線的に配列される。
【0019】
図3は撮像素子212の詳細な構成を示す正面図であり、図2の焦点検出エリア101、102、103に対応する撮像素子212上の領域の近傍を拡大して示す。撮像素子212には撮像画素310が二次元正方格子状に稠密に配列されるとともに、焦点検出エリア101、102、103に対応する位置には焦点検出用の焦点検出画素312、313が垂直方向(縦方向)の直線上に隣接して交互に配列され、焦点検出画素列が形成されている。
【0020】
撮像画素310は、マイクロレンズ10、遮光マスク(不図示)で受光領域を正方形に制限された光電変換部11、および色フィルタ(不図示)から構成される。色フィルタは赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類からなり、それぞれの色に対応する分光感度特性を有している。撮像素子212には、各色フィルタを備えた撮像画素310がベイヤー配列されている。
【0021】
焦点検出画素312、313には全ての色に対して焦点検出を行うために全ての可視光を透過する白色フィルタ(不図示)が設けられている。その白色フィルタは、緑画素、赤画素および青画素の分光感度特性を加算したような分光感度特性を有し、高い感度を示す光波長領域は、緑画素、赤画素および青画素の各々において各色フィルタが高い感度を示す光波長領域を包括している。
【0022】
焦点検出画素312は、マイクロレンズ10、遮光マスク(不図示)で受光領域を矩形(正方形を水平線で2等分した場合の略上半分)に制限された光電変換部12、および白色フィルタ(不図示)から構成される。焦点検出画素313は、マイクロレンズ10、遮光マスク(不図示)で受光領域を矩形(正方形を水平線で2等分した場合の略下半分)に制限された光電変換部13、および白色フィルタ(不図示)から構成される。焦点検出画素312と焦点検出画素313とをマイクロレンズ10を基準として重ね合わせて表示すると、遮光マスクで受光領域を制限された一対の光電変換部12および13が垂直方向に並ぶ。
【0023】
図4は、撮影画面100の中央近傍にて垂直方向(縦方向)に延在する焦点検出エリア101に対応して撮像素子212に配置された焦点検出画素列を形成する焦点検出画素312,313が受光する焦点検出光束の状態を説明するための断面図である。
【0024】
図4には、交換レンズの光軸91、マイクロレンズ10a〜10d、遮光マスク開口により受光領域を制限された光電変換部12a、12b、13a、13b、焦点検出画素312a、312b、313a、313b、焦点検出光束72、73、82、83が示されている。
【0025】
撮像素子212上に配列された全ての焦点検出画素312、313の光電変換部12,13は、光電変換部12,13に近接して配置された遮光マスク開口を通過した光束を受光する。各焦点検出画素312の光電変換部12に近接して配置された遮光マスク開口の形状は、マイクロレンズ10によりマイクロレンズ10から測距瞳距離dだけ離間した測距瞳面90上の、焦点検出画素312の全てに共通した領域92に投影される。同じく各焦点検出画素313の光電変換部13に近接して配置された遮光マスク開口の形状は、マイクロレンズ10によりマイクロレンズ10から測距瞳距離dだけ離間した測距瞳面90上の、焦点検出画素313の全てに共通した領域93に投影される。測距瞳面90は、交換レンズ202に含まれる光学系の射出瞳面と実質的に同一の位置に規定される。すなわち、マイクロレンズ10から測距瞳面90までの測距瞳距離dは、マイクロレンズ10から光学系の射出瞳までの射出瞳距離と実質的に等しい。測距瞳面90上の一対の領域92,93を測距瞳と呼ぶ。
【0026】
焦点検出画素312a、312bは、光電変換部12a、12bにより、測距瞳92と各撮像画素のマイクロレンズ10a,10cとを通過する焦点検出光束72,82を受光し、焦点検出光束72,82によって各マイクロレンズ10a,10c上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。また焦点検出画素313a、313bは、光電変換部13a、13bにより、測距瞳93と各撮像画素のマイクロレンズ10b,10dとを通過する焦点検出光束73,83を受光し、焦点検出光束73,83によって各マイクロレンズ10b,10d上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0027】
図4においては、撮影光軸91に隣接する4つの焦点検出画素(画素312a、313a、312b、313b)を模式的に例示しているが、焦点検出エリア101に対応して撮像素子212に配置される焦点検出画素列に含まれるその他の焦点検出画素においても、光電変換部はそれぞれ対応した測距瞳92、93から各マイクロレンズに到来する光束を受光する。焦点検出画素の配列方向は一対の測距瞳の並び方向、すなわち一対の光電変換部の並び方向と一致している。
【0028】
図5は、撮影画面100の周辺領域にて垂直方向(縦方向)に延在する焦点検出エリア102に対応して撮像素子212に配置された焦点検出画素列を形成する焦点検出画素312,313が受光する焦点検出光束の状態を説明するための図である。
【0029】
図5には、マイクロレンズ10e、10f、10g、10h、遮光マスク開口により受光領域を制限された光電変換部12c、12d、13c、13d、焦点検出画素312c、312d、313c、313d、焦点検出光束172、173、182、183が示されている。
【0030】
焦点検出画素312c、312dは、光電変換部12c、12dにより、測距瞳92と各撮像画素のマイクロレンズ10e,10gとを通過する焦点検出光束172,182を受光し、焦点検出光束172,182によって各マイクロレンズ10e,10g上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。また焦点検出画素313c、313dは、光電変換部13c、13dにより、測距瞳93と各撮像画素のマイクロレンズ10f,10hとを通過する焦点検出光束173,183を受光し、焦点検出光束173,183によって各マイクロレンズ10f,10h上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0031】
図5においては、焦点検出エリア102内の隣接する4焦点検出画素(画素312a、313a、312b、313b)を模式的に例示しているが、焦点検出エリア102に含まれるその他の焦点検出画素においても、光電変換部はそれぞれ対応した測距瞳92、93から各マイクロレンズに到来する光束を受光する。
【0032】
図4,図5において一対の測距瞳92、93は光軸91に対して対称に配置されている。図5のように焦点検出エリアが撮影画面周辺に配置されている場合、一対の測距瞳92および93の間の丁度中間点Cを通る光線は、マイクロレンズ10から測距瞳距離dの位置にある中間点Cのみにおいて光軸91と交わる。
【0033】
焦点検出エリア103に対応する焦点検出画素の配列も、焦点検出エリア102に対応する焦点検出画素の配列と同様な配置となっており、焦点検出エリア103に対応する焦点検出画素も測距瞳92、93を通る光束を受光する。
【0034】
上述したように焦点検出エリア101〜103に対応する領域においては一対の焦点検出画素312、313が交互にかつ直線状に多数配置される。各焦点検出画素の光電変換部の出力を測距瞳92および測距瞳93に対応した一対の出力グループにまとめることによって、測距瞳92と測距瞳93とをそれぞれ通過する一対の焦点検出光束が垂直方向の焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。この情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割型位相差検出方式で一対の像の像ズレ量が検出される。さらに、像ズレ量に、一対の測距瞳の重心間隔と測距瞳距離との比例関係に応じた変換係数を用いた変換演算を行うことによって、各焦点検出エリアにおける焦点調節状態(デフォーカス量)が算出される。
【0035】
図6は、一対の測距瞳から各焦点検出エリアに到来する一対の焦点検出光束の関係を示す図である。図4および図5に示す構成によって、焦点検出エリア101,102,103に対応する焦点検出領域101A,102A,103Aには一対の測距瞳92、93を通過する一対の焦点検出光束により一対の像が形成される。該一対の像に対応する画素信号を各焦点検出領域101A,102A,103Aに対応して配置された焦点検出画素が出力することになる。測距瞳92を通る焦点検出光束272と測距瞳93を通る焦点検出光束273とが、焦点検出領域101Aに一対の像を形成する。測距瞳92を通る焦点検出光束282と測距瞳93を通る焦点検出光束283とが、焦点検出領域102Aに一対の像を形成する。測距瞳92を通る焦点検出光束292と測距瞳93を通る焦点検出光束293とが、焦点検出領域103Aに一対の像を形成する。
【0036】
上述したように、通常、測距瞳面90は、交換レンズ202に含まれる光学系の射出瞳面と実質的に同一の位置に規定されるが、測距瞳面90の位置と射出瞳面の位置とが相異なることにより、一対の焦点検出光束にケラレが生じる場合がある。図7は図6に対応した図であって、撮像素子212から交換レンズの射出瞳95までの射出瞳距離dnが測距瞳距離dより短い場合、および射出瞳距離dfが測距瞳距離dより長い場合において、各焦点検出領域101A,102A,103Aに到来する各一対の焦点検出光束(272,273)、(282,283)、(292,293)が、交換レンズの射出瞳95による口径蝕、ケラレによりどのように制限されるかを示した図である。図7に示す交換レンズの射出瞳95は、絞り開口を撮像素子側から見た時の射出瞳である。
【0037】
交換レンズの射出瞳95が撮像素子212から測距瞳距離dの位置にある射出瞳95Aの場合は、一対の測距瞳92,93は光軸上に中心を持つ円形の射出瞳に制限されるため、各焦点検出領域101A,102A,103Aに到来する各一対の焦点検出光束(272,273)、(282,283)、(292,293)は、光軸に対して対称に制限される。
【0038】
図7において交換レンズの射出瞳95が撮像素子212から射出瞳距離dnの位置にある射出瞳95Bの場合は、焦点検出領域101Aに到来する一対の焦点検出光束(272,273)は光軸に対して対称に制限されるが、焦点検出領域102A,103Aに到来する各一対の焦点検出光束(282,283)、(292,293)は光軸に対して非対称となっているため、光軸対称な射出瞳95Bにより非対称に制限される。
【0039】
図8は、図1に示すデジタルスチルカメラ201の動作を示すフローチャートである。図8に示す各処理ステップは、ボディ駆動制御装置214によって実行される。ボディ駆動制御装置214は、ステップS100でデジタルスチルカメラ201の電源がオンされると、ステップS110以降の動作を開始する。ステップS110で撮像画素のデータを間引き読み出しし、液晶表示素子216に表示する。続くステップS120では、焦点検出画素列から、一対の測距瞳を通過する一対の焦点検出を受光した一対の光電変換部が出力する、一対の像に対応した一対の像データ(一対の信号、一対のデータ列)を読み出す。なお、焦点検出エリアは、エリア選択スイッチ(不図示)を用いて撮影者により選択されているものとする。
【0040】
ステップS130において、ボディ駆動制御装置214は、読み出された一対の像データに対して後述する像ズレ検出演算処理(差分型相関演算処理)を行い、像ズレ量を算出する。ステップS135で、ボディ駆動制御装置214は、像ズレ量に変換係数を乗じてデフォーカス量に変換する。変換処理の詳細については後述する。
【0041】
ステップS140で、ボディ駆動制御装置214は、合焦近傍か否か、つまり算出されたデフォーカス量の絶対値が所定値以内であるか否かを調べる。合焦近傍でないと判定された場合は、ステップS150へ進み、ボディ駆動制御装置214は、デフォーカス量をレンズ駆動制御装置206へ送信し、交換レンズ202のフォーカシングレンズ用210を合焦位置に駆動させ、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。焦点検出不能な場合もこのステップに分岐し、ボディ駆動制御装置214は、レンズ駆動制御装置206へスキャン駆動命令を送信し、交換レンズ202のフォーカシング用レンズ210を無限から至近までの間でスキャン駆動させる。その後、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
【0042】
一方、ステップS140で合焦近傍であると判定された場合はステップS160へ進み、ボディ駆動制御装置214は、シャッターボタン(不図示)の操作によりシャッターレリーズがなされたか否かを判定する。シャッターレリーズがなされていないと判定された場合はステップS110へ戻り、上述した動作を繰り返す。シャッターレリーズがなされた場合はステップS170へ進み、ボディ駆動制御装置214は、レンズ駆動制御装置206へ絞り調整命令を送信し、交換レンズ202の絞り値を制御F値(撮影者により設定されたF値または自動設定されたF値)に設定する。
【0043】
絞り制御が終了した時点で、ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212に撮像動作を行わせ、撮像素子212の撮像画素およびすべての焦点検出画素から画像データを読み出す。ステップS180では、ボディ駆動制御装置214は、焦点検出画素列の各画素位置の画素データを、焦点検出画素の周囲の撮像画素の画素データに基づく画素補間により生成する。続くステップS190で、ボディ駆動制御装置214は、撮像画素の画素データおよび画素補間により生成された画素データからなる画像データを、メモリカード219に保存し、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
【0044】
次に、図8のステップS130で用いられる一般的な像ズレ検出演算処理(差分型相関演算処理)の詳細について説明する。
【0045】
一対の焦点検出画素列から読み出された一対の信号、すなわち一対のデータ列(焦点検出画素313のデータ:A1〜A1、焦点検出画素314のデータ:A2〜A2、Mはデータ数)に対し、下記の相関演算式(1)を用いて相関量C(k)を演算する。式(1)におけるΣ演算では、変数nの値を変化させて一対のデータ列を相対的に変位させることにより、一対の焦点検出画素313および314のデータの差が累積される。変数nのとる値の範囲は、一対の焦点検出画素313および314のデータの差が累積される際の一対のデータ列の相対的な変位量、すなわち位相差kに応じてデータA1、A1n+1、A2n+k、A2n+1+kが存在する範囲に限定される。位相差kは整数であり、データ列のデータ間隔を単位とした相対的な位相差である。式(1)に示すように、相関量C(k)は位相差kに応じて変化する。
C(k)=Σ|A1−A2n+k| ・・・(1)
【0046】
式(1)に表される演算が差分の絶対値を積算する演算であることから、式(1)に表される減算を含む相関演算は差分型相関演算と呼ばれる。一般に差分型相関演算においては、相関量C(k)は、一対の像の一致度に対応する一対のデータ列の相関度が極大値を示すときの位相差kにおいて極小値をとる特性を示す。相関量C(k)が小さいほど相関度が高い。
【0047】
式(1)の演算結果は、図9(a)に示すように、一対のデータ列の相関が高いときの位相差(図9(a)ではk=kj=2)において離散的な相関量C(k)が極小になる。
【0048】
式(2)〜(5)による3点内挿の手法を用いて連続的な相関量の極小値C(ks)を与える位相差ksを求める。
ks=kj+D/SLOP・・・(2)
C(ks)= C(kj)−|D|・・・(3)
D={C(kj−1)−C(kj+1)}/2・・・(4)
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj−1)−C(kj)}・・(5)
【0049】
式(2)で算出された位相差ksの信頼性があるかどうかは、以下のようにして判定される。
【0050】
図9(b)に示すように、一対のデータ列の相関度が低い場合は、内挿された相関量の極小値C(ks)の値が大きくなる。したがって、相関量の極小値C(ks)が所定の閾値以上の場合は算出された位相差ksの信頼性が低いと判定し、算出された位相差ksをキャンセルする。
【0051】
あるいは、相関量の極小値C(ks)を一対のデータ列のコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPで相関量の極小値C(ks)を除した除算値を求め、その除算値が所定値以上の場合は、算出された位相差ksの信頼性が低いと判定し、算出された位相差ksをキャンセルする。
【0052】
あるいはまた、コントラストに比例した値となるSLOPが所定値以下の場合は、被写体が低コントラストであり、算出された位相差ksの信頼性が低いと判定し、算出された位相差ksをキャンセルする。
【0053】
図9(c)に示すように、一対のデータ列の相関度が低く、位相差kのシフト範囲kmin〜kmaxの間で相関量C(k)の落ち込みがない場合は、相関量の極小値C(ks)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定する。
【0054】
なお、差分型相関演算式としては式(1)に限定されず、例えば特開2007−333720号公報に開示された以下の演算式を用いてもよい。
C(k)=Σ|A1n・A2n+1+k−A2n+k・A1n+1| ・・・(6)
【0055】
算出された位相差ksの信頼性があると判定された場合は、式(7)により位相差ksが上述した一対の像の位相差を表す像ズレ量shftに換算される。このようにして、ボディ駆動制御装置214は像ズレ量shftを検出する。式(7)において、係数PYは画素ピッチの2倍である。
shft=PY・ks・・・(7)
【0056】
以上が図8のステップS130の像ズレ量検出演算処理の詳細を示すフローチャートである。次に図8のステップS135における像ズレ量からデフォーカス量へのボディ駆動制御装置214による変換処理(デフォーカス量算出処理)の詳細を示す図10について説明する。
【0057】
図10のステップS200において、ボディ駆動制御装置214は、式(8)により像ズレ量shftに変換係数Kd1を乗じて、光学系の予定焦点面と光学系の結像面との間の距離に対応するデフォーカス量defへ変換する(算出する)。
def=Kd1・shft・・・(8)
【0058】
なお変換係数Kd1は合焦近傍用の変換係数であって、焦点検出画素が受光する一対の光束の平均的な開き角(一対の光束の重心を通る光線の開き角)に対応している。焦点検出画素が受光する一対の光束の平均的な開き角は光学系(撮影光学系)のF値に応じて変化するため、変換係数Kd1もボディ駆動制御装置214がレンズ駆動制御装置206との通信により取得したレンズ情報(焦点検出画素データを読み出した時のF値)に応じて変化する。
【0059】
ステップS210では、ボディ駆動制御装置214は、式(8)で算出したデフォーカス量の絶対値が所定の閾値Dt1以上であるか否かをチェックし、所定の閾値Dt1以上でない場合は図10に示すデフォーカス量算出処理を抜ける。式(8)で算出したデフォーカス量の絶対値が所定の閾値Dt1以上である場合には、式(9)により像ズレ量shftに変換係数Kd2を乗じてデフォーカス量defへ変換し、その後、図10に示すデフォーカス量算出処理を抜ける。
def=Kd2・shft・・・(9)
【0060】
なお変換係数Kd2は大デフォーカス用の変換係数であって、変換係数Kd1以下の値となっている。変換係数Kd2もボディ駆動制御装置214がレンズ駆動制御装置206との通信により取得したレンズ情報(焦点検出画素データを読み出した時のF値)に応じて変化する。
【0061】
すなわち図10の動作フローにおいては撮影光学系の焦点調節状態が合焦近傍の範囲に含まれる場合は比較的大きな値を持つ変換係数Kd1を像ズレ量shftに乗じてデフォーカス量defへ変換し、それ以外の場合(撮影光学系の焦点調節状態が合焦近傍の範囲外に含まれる場合)は比較的小さな値を持つ変換係数Kd2を像ズレ量shftに乗じてデフォーカス量defへ変換することにより、デフォーカス量の検出誤差を少なくしている。デフォーカス量の絶対値が所定の閾値Dt1未満であるとき、撮影光学系の焦点調節状態が合焦近傍の範囲に含まれると判定される。
【0062】
図10の動作フローにおいては所定の閾値Dt1を光学系のF値に応じて変更する(F値が大きいほど閾値を大きくし、Dt1/Fが略一定になるようにする)ようにしてもよい。
【0063】
図10の動作フローにおいてはデフォーカス量の絶対値が所定の閾値Dt1未満の場合に合焦近傍であり、デフォーカス量の絶対値が所定の閾値Dt1以上の場合に合焦近傍外(大デフォーカス)であると判定している。しかし、像ズレ量の絶対値が所定閾値未満の場合に合焦近傍であり、像ズレ量の絶対値が所定閾値以上の場合に合焦近傍外(大デフォーカス)であると判定するようにしてもよい。
【0064】
図10の動作フローにおいてはデフォーカス量の絶対値が所定閾値未満の場合に合焦近傍であり、デフォーカス量の絶対値が所定閾値以上の場合に合焦近傍外(大デフォーカス)であると判定している。このようにするとデフォーカス量の絶対値が所定閾値以上となるか否かで、最終的な算出デフォーカス量の値が不連続に変化してしまう。
【0065】
図11は横軸に実デフォーカス量、縦軸に算出デフォーカス量をとって、実デフォーカス量と算出デフォーカス量との関係を示した図である。算出デフォーカス量に誤差が含まれない場合は、実デフォーカス量と算出デフォーカス量との関係は、一点鎖線301に示すように、原点を通り45度の傾きを持つ直線関係となる。しかし実際には後述するように実デフォーカス量の絶対値が大きくなるにつれて、算出デフォーカス量の絶対値が誤差のために実デフォーカス量の絶対値より大きくなる傾向にある。破線302はこのような実デフォーカス量と誤差を含む算出デフォーカス量との関係を示したグラフである。図10の動作フローに応じて合焦近傍と合焦近傍外(大デフォーカス)とで変換係数を変更する場合(合焦近傍外の変換係数を合焦近傍の変換係数より小さくする場合)には、実デフォーカス量と算出デフォーカス量との関係は実線303aおよび303bに示すグラフとなる。実線503aおよび503bに示すグラフによると、大デフォーカス時の誤差は減少するが、合焦近傍と合焦近傍外(大デフォーカス)との変わり目で値が不連続に変化してしまう。図11において実デフォーカス量の値が±defの内側の範囲が合焦近傍に相当し、それ以外の範囲が合焦近傍外(大デフォーカス)に相当する。
【0066】
そこで、例えば図12に示すように像ズレ量の絶対値に応じて変換係数Kdが連続的に変化するように、計算により変換係数Kdを定める。あるいは、交換レンズ202のレンズ情報および被写体に関する情報に応じて、実験評価に基づき統計的に定めることとしてもよい。図12によると、像ズレ量の絶対値0のときの変換係数Kdの値がk0であり、像ズレ量の絶対値が大きくなるに従って変換係数Kdの値がなめらかにk0より小さくなる。像ズレ量の絶対値s1(>0)のときの変換係数Kdの値k1はk0よりも小さい。検出した像ズレ量の絶対値に応じて図12に基づいて変換係数Kdの値を決定し、決定した変換係数Kdの値を用いて像ズレ量をデフォーカス量に変換する。このようにすれば、最終的に算出されるデフォーカス量の不連続な変化をなくすとともに誤差を減少することができ、実デフォーカス量と算出デフォーカス量との関係を図11の一点鎖線301に概ね近づけることが可能になる。
【0067】
合焦近傍か否かに応じて変換係数を調整しない場合に、図11の破線302のように実デフォーカス量の絶対値が大きくなるにつれ、算出デフォーカス量の絶対値が実デフォーカス量の絶対値より大きくなることの定性的な理由について説明する。
【0068】
このような現象は、一対の測距瞳分布(すなわち測距瞳面上における一対の焦点検出光束の光量分布)の各々において、その一対の測距瞳の並び方向に沿った光量分布が、その光量分布の重心に関して不対称となっていることに起因している。なお、以下においては、ボケ像の不対称という表現も同様に、一対のボケ像の並び方向に沿った光量分布が、その光量分布の重心に関して不対称となっていることを表している。
【0069】
図13は、測距瞳面90上の一対の測距瞳から結像面96の中央に配置された焦点検出画素(図2の焦点検出エリア101に対応して撮像素子212に配置される焦点検出画素)に到来する一対の焦点検出光束の関係を示す図である。図13は、結像面96に対して合焦近傍時の光学系の予定焦点面97および合焦近傍外時の光学系の予定焦点面98の位置を相対的に表した図である。測距瞳面90上の一対の焦点検出光束の光量分布である一対の測距瞳分布402および403は、図4に示すような、光電変換部12a、13a、12bおよび13bの受光領域の形状をマイクロレンズ10a、10b、10cおよび10dにより測距瞳面90に投影した時の、測距瞳92および93に対応する一対の投影像と等価になる。その一対の投影像の外周は絞り開口などにより略円形に制限されるとともに、マイクロレンズによる回折や収差のため、その一対の投影像の形状にぼけが発生する。したがって、測距瞳面90上の一対の焦点検出光束は、釣り鐘状でかつ一方の側に裾野が延びた一対の測距瞳分布を形成する。該一対の測距瞳分布を一対の測距瞳92および93の並び方向に垂直なスリットで走査した場合には、図13に示すような一対の測距瞳分布402および403が得られる。
【0070】
測距瞳分布402、403の外周は光学系の絞りによって制限されているので、その外周に向かうと比較的急激に減少するが、測距瞳分布402、403の重なり部分の裾野は絞りによって制限されないので比較的緩慢に減少し、裾野が延びた分布形状となる。図13において、測距瞳分布402,403のそれぞれの重心位置を通る重心線412,413に関して、測距瞳分布402、403の重なり部分が属する方の側の測距瞳分布と、その重なり部分が属していない方の側の測距瞳分布とが不対称であり、すなわち測距瞳分布402,403はそれぞれ不対称となっている。
【0071】
光学系により結像面96上の中央P0に点像(または紙面に垂直方向の線像)が結像するとする。予定焦点面98と結像面96とのデフォーカス量が比較的大きい場合(合焦近傍外の場合)には、予定焦点面98上において一対の焦点検出光束は一対のボケ像502、503を形成する。図14は大デフォーカス時のボケ像502、503の光量分布形状を示したものであり、ボケ像502、503の光量分布形状は測距瞳分布402、403の光量分布形状に略相似した形状となっている。したがって、一対のボケ像の各々の光量分布形状も不対称である。すなわち、一対のボケ像の各々において、一対のボケ像の並び方向に沿った光量分布が、その光量分布の重心に関して不対称となっている。図14におけるボケ像502、503のそれぞれの重心位置を通る重心線512,513は、図13における、測距瞳分布402,403のそれぞれの重心位置と結像面96上の中央P0における点像とを結んだ直線322,323と、予定焦点面98とが交差する位置と略一致している。
【0072】
従来、像ズレ量をデフォーカス量に変換するための変換係数には、一対の測距瞳分布のそれぞれの重心間の距離で測距瞳距離を除した値が用いられている。すなわち、図13においては、直線322、323の間の距離が像ズレ量であり、該像ズレ量とデフォーカス量との比例関係における比例係数(像ズレ量をデフォーカス量に変換するための変換係数)は、一対の測距瞳分布のそれぞれの重心間の距離と測距瞳距離との間の比例関係における比例係数と等しいという前提に基づき、該比例係数を変換係数として像ズレ量からデフォーカス量への変換が行われている。図15はこのような前提に基づき、図14に示したボケ像502、503を相対的にシフトさせてそれぞれの重心位置を通る重心線512,513を一致させた場合の概念図である。一方、図16は、差分型位相差検出演算(式(1)、式(6))を用いて最も相関度が高くなるように、すなわち相関量C(k)が極小になるようにボケ像502、503を相対的にシフトさせた場合の概念図である。
【0073】
図16におけるボケ像502および503の相対的なシフト量(像ズレ量)は、図15におけるボケ像502および503の相対的なシフト量(像ズレ量)と比較して大きい。これはボケ像502、503の光量分布形状が、測距瞳分布402、403の光量分布形状に略相似して互いに非対称な形状になっているためである。図14に示すようにボケ像502の光量分布形状はボケ像503側に裾野が延びるとともに、ボケ像503の光量分布形状はボケ像502側に裾野が延びるので、互いの重心位置が裾野側、すなわちもう一方のボケ像側に寄る。差分型位相差検出演算においては、概念的に図16に示すボケ像502および503の不一致部分の面積が最小になるような像ズレ量を算出するので、その像ズレ量の算出に対してボケ像分布の光量が多い部分(すなわちボケ像の外周方向に寄った部分)の寄与度が大きい。そのため、差分型位相差検出演算により算出される像ズレ量は、一対のボケ像の重心位置を一致させるように相対的にシフトさせた場合の像ズレ量よりも大きな像ズレ量が算出される。
【0074】
従って、大デフォーカスにおいて、差分型位相差検出演算により算出された像ズレ量に、一対の測距瞳分布のそれぞれの重心位置間の距離(瞳分布重心位置間の距離)に基づいて定められた変換係数を乗じて算出されたデフォーカス量は、本来のデフォーカス量と比較して大きな値になるのである。
【0075】
予定焦点面97と結像面96とのデフォーカス量が比較的小さい場合(合焦近傍の場合)には、予定焦点面97上において一対の焦点検出光束は一対のボケ像602、603を形成する。図17は、ボケ像602、603の光量分布形状を示したものであり、合焦近傍時のボケ像602、603の光量分布形状は、それぞれ、結像面96上の中央P0における点像に略相似した対称な形状となる。図17におけるボケ像602、603のそれぞれの重心線612,613が通る重心位置は、図13における、測距瞳分布402,403の重心位置と結像面96上の中央P0における点像とを結んだ直線322,323と、予定焦点面97とが交差する位置と略一致している。
【0076】
図18は、図17に示したボケ像602、603を相対的にシフトさせてそれぞれの重心位置を通る重心線612,613を一致させた場合の概念図である。また、差分型位相差検出演算(式(1)、式(6))を用いて最も相関度が高くなるように、すなわち相関量C(k)が極小になるようにボケ像602、603を相対的にシフトさせた場合の概念図も図18と略同様の図となる。すなわち、合焦近傍におけるボケ像602、603の光量分布形状は、それぞれの重心位置を通る重心線612,613に関してそれぞれ略対称形となる。そのため、ボケ像602、603の重心位置を通る重心線612,613を一致させるようにボケ像602、603を相対的にシフトさせた場合の相対的なシフト量(像ズレ量)と、ボケ像602、603の一致度(相関度)が高くなるようにボケ像602、603を相対的にシフトさせた場合の相対的なシフト量(像ズレ量)とが略一致する。従って、差分型位相差検出演算により算出された像ズレ量に、一対の測距瞳分布のそれぞれの重心位置間の距離(瞳分布重心位置間の距離)に基づいて定められた変換係数を乗じて算出されたデフォーカス量と、本来のデフォーカス量との誤差は小さくなる。
【0077】
図13においては、予定焦点面に対して結像面が光学系と同じ側にある場合を示している。予定焦点面に対して結像面が光学系と反対側にある場合についても、上述と同様の理由で、合焦近傍においては、差分型位相差検出演算により算出された像ズレ量に、瞳分布重心位置間の距離に基づいて定められた変換係数を乗じて算出されたデフォーカス量と、本来のデフォーカス量との誤差は小さくなる。また、大デフォーカスにおいて、差分型位相差検出演算により算出された像ズレ量に、瞳分布重心位置間の距離に基づいて定められた変換係数を乗じて算出されたデフォーカス量は、本来のデフォーカス量と比較して大きな値になる。
【0078】
上述した説明においては、光学系により結像面96上に形成される像を点像として説明を行ったが、点像ではない一般的な像を点像の集合と見なせば、光学系により結像面96上に一般的な像が形成される場合であっても、上述した説明と同様にして説明出来る。
【0079】
図13に示す測距瞳分布402、403の形状は光学系のF値が比較的小さな場合に対応しているが、光学系のF値が比較的大きな場合の測距瞳分布は図19に示す測距瞳分布404、405のような形状をしている。図19において、測距瞳分布404,405の重心位置を通る重心線414,415に関して、測距瞳分布404、405のそれぞれの形状は不対称であるが、測距瞳分布404、405のそれぞれの形状の不対称性の程度が、図13に示す測距瞳分布402、403に比較して改善される。そのため、大デフォーカス時において、差分型位相差検出演算により算出された像ズレ量に、瞳分布重心位置間の距離に基づいて定められた変換係数を乗じて算出されたデフォーカス量と、本来のデフォーカス量との差(算出されたデフォーカス量に含まれる誤差)は、光学系のF値が比較的大きい場合、小さくなる。すなわち、合焦近傍における変換係数と合焦近傍外における変換係数との比の値は、光学系のF値が比較的小さな場合に比較して光学系のF値が比較大きな場合の方が、より1に近づく。このように光学系のF値に応じて変換係数を定めることにより、より高精度な焦点検出を行うことができる。
【0080】
図19に示す重心線414と415との間の距離(瞳分布重心位置間の距離)は、図13における重心線412と413との間の距離(瞳分布重心位置間の距離)よりも小さい。上述したように、像ズレ量をデフォーカス量に変換するための変換係数には、一対の測距瞳分布のそれぞれの重心間の距離(瞳分布重心位置間の距離)で測距瞳距離を除した値が用いられる。したがって、瞳分布重心位置間の距離が小さくなるほど、変換係数は大きくなる。上述したように、図13に示す測距瞳分布402、403の形状は光学系のF値が比較的小さな場合に対応し、図19に示す測距瞳分布404、405の形状は光学系のF値が比較的大きな場合に対応している。したがって、光学系のF値が大きいほど、変換係数は大きい。
【0081】
図2の焦点検出エリア102、103に対応して撮像素子212に配置される焦点検出画素については、図7に示すように光学系の射出瞳距離dn、dfが測距瞳距離dと一致しない場合には、一対の焦点検出光束がケラレにより不均一に制限されることになる。このような場合には、測距瞳面90上の一対の測距瞳分布の形状は、図13に示す測距瞳分布402、403とは異なり、図20に示す測距瞳分布406、407のように表される。図20において、測距瞳分布406,407の重心位置を通る重心線416,417に関して、測距瞳分布406、407のそれぞれの形状が不対称であるだけでなく、測距瞳分布406、407の互いの形状の相違度が、ケラレの影響が無い測距瞳分布402、403の互いの形状の相違度に比較して大きい。そのため、合焦近傍における変換係数と合焦近傍外における変換係数との比の値に関して、撮影画面100の中央に配置された焦点検出エリア101に対応する結像面上の中央の焦点検出画素の光電変換信号に基づいて焦点検出処理を行う場合の該比の値と、撮影画面100の周辺に配置された焦点検出エリア102、103に対応する結像面上の周辺の焦点検出画素の光電変換信号に基づいて焦点検出処理を行う場合の該比の値とが相異なる必要がある。該比の値は、具体的には、上述したケラレの状態に依存するため、交換レンズ202の種類に応じて予め実験によって得られる値を用いてもよいし、様々な種類の交換レンズ202に共通して統計的に像高に基づき定められる値を用いてもよい。焦点検出エリア102、103に対応して撮像素子212に配置した焦点検出画素のように、像高の高い位置の焦点検出画素に対応する該比の値は、図20に基づいて算出される。このように、焦点検出画素が配置された位置、すなわち像高に応じて合焦近傍における変換係数および合焦近傍外における変換係数を調整することにより、より高精度な焦点検出を行うことができる。
【0082】
合焦近傍における変換係数の値および合焦近傍外(大デフォーカス)における変換係数の値の決め方には以下のような方法(1)〜(3)がある。例えばコンピュータを有する不図示の変換係数決定装置がボディ駆動制御装置214に含まれ、変換係数決定装置の内部に記憶された演算プログラムに従って、それらの方法(1)〜(3)により変換係数の値を決定し、決定した変換係数の値に基づき、以下で説明する変換係数のルックアップテーブルを作成し、ボディ駆動制御装置214に記憶させる。
【0083】
(1)変換係数を理論計算で求めるという方法
変換係数決定装置は、図13の測距瞳分布402,403の形状、図19の測距瞳分布404,405の形状、および図20の測距瞳分布406,407の形状を、光学系の射出瞳の光学特性、焦点検出画素の光学設計パラメータ(マイクロレンズ径、マイクロレンズから光電変換部までの距離など)、測距瞳距離、焦点検出画素の像高などに基づいて予め特定される。光学系の射出瞳の光学特性は、光学系の射出瞳距離と、光学系の射出瞳径と、光学系のF値とを含む。変換係数決定装置は、形状を特定した図13に示す一対の測距瞳分布402,403、図19に示す一対の測距瞳分布404,405、および図20に示す一対の測距瞳分布406,407の重心位置を計算して求め、各対の測距瞳分布における該重心位置間の距離を測距瞳距離で除することにより合焦近傍時における変換係数を算出する。変換係数決定装置は、算出した合焦近傍時における変換係数に基づき、光学系の射出瞳の光学特性(光学系の射出瞳距離、射出瞳径およびF値)、測距瞳距離、焦点検出画素の像高などを入力パラメータとする変換係数のルックアップテーブルを作成する。
【0084】
また、変換係数決定装置は、計算で求めた測距瞳分布に基づき、図14に示すような大デフォーカス時の所定デフォーカス量におけるボケ像の分布形状を推定算出し、算出したボケ像の分布に対して差分型位相差検出相関演算を施し、その演算の結果に基づいて得られる像ズレ量と上述した所定デフォーカス量とに基づいて合焦近傍外における変換係数を算出する。変換係数決定装置は、算出した合焦近傍外における変換係数に基づき、光学系の射出瞳の光学特性(光学系の射出瞳距離、射出瞳径およびF値)、焦点検出画素の像高などを入力パラメータとする変換係数のルックアップテーブルを作成する。変換係数決定装置は、作成したルックアップテーブルを、ボディ駆動制御装置214に記憶させる。
【0085】
測距瞳分布やボケ像の分布を計算で求めると誤差が大きくなる可能性があるので、測距瞳分布およびボケ像の分布を実際に測定し、測定した測距瞳分布およびボケ像の分布を用いて上述した変換係数の計算を行い、変換係数のルックアップテーブルを作成することとしてもよい。
【0086】
実際の焦点検出処理時に像ズレ量からデフォーカス量への変換を行う場合には、ボディ駆動制御装置214は、カメラボディ203に装着されている交換レンズ202から光学系の射出瞳の光学特性に関する情報、すなわち射出瞳距離、射出瞳径およびF値の情報を読み出す。ボディ駆動制御装置214は、それらの読み出した情報と、焦点検出を行う焦点検出エリアに対応する焦点検出画素の像高とに基づき、上記ルックアップテーブルを参照して合焦近傍における変換係数Kd1および合焦近傍外(大デフォーカス)における変換係数Kd2を取得する。ボディ駆動制御装置214は、取得した変換係数を、差分型位相差検出相関演算で算出した像ズレ量shftに乗じることによってデフォーカス量を算出する。
【0087】
実際の焦点検出処理時に変換係数の算出演算を短時間に簡略に行うことが出来る場合には上述した変換係数のルックアップテーブルを作成する必要は無い。その場合、変換係数決定装置を内部に有するボディ駆動制御装置214は、カメラボディ203に装着されている交換レンズ202から読み出した光学系の射出瞳の光学特性に関する情報(射出瞳距離、射出瞳径およびF値の情報)と、焦点検出を行う焦点検出エリアに対応する焦点検出画素の像高と、焦点検出画素の光学パラメータなどとに基づき、実際の焦点検出処理のたびに変換係数をその都度算出し、算出した変換係数に基づき像ズレ量からデフォーカス量への変換を行うこととしてもよい。
【0088】
(2)各交換レンズ毎に変換係数を測定するという方法
測距瞳分布やボケ像の分布は光学系の収差に影響されるので、実際に焦点検出処理時に使用される個々の光学系についてそれぞれ合焦近傍における変換係数および合焦近傍外における変換係数が、変換係数決定装置によって予め測定されることとしてもよい。測定された変換係数のルックアップテーブルが、光学系のF値および焦点距離、ならびに像高をパラメータとして変換係数決定装置によって作成され、交換レンズ202側のレンズ駆動制御装置206に予め記憶されている。実際の焦点検出処理時に像ズレ量からデフォーカス量への変換を行う場合には、ボディ駆動制御装置214はカメラボディ203に装着されている交換レンズ202に像高を送る。交換レンズ202のレンズ駆動制御装置206は、その像高を受信した時に設定されているF値と焦点距離と受信した像高とに応じた合焦近傍における変換係数および合焦近傍外(大デフォーカス)における変換係数を、カメラボディ側のボディ駆動制御装置214に送る。カメラボディのボディ駆動制御装置214は、受信した合焦近傍における変換係数および合焦近傍外(大デフォーカス)における変換係数を用いて像ズレ量をデフォーカス量へ変換する。すなわち、ボディ駆動制御装置214は、カメラボディ203に装着されている実際の交換レンズ202が有する光学系と同一の光学系に対応して予め測定された変換係数を用いて、像ズレ量をデフォーカス量へ変換する。
【0089】
上述した合焦近傍における変換係数の測定においては、各交換レンズ202により点像または線像が結像面に形成され、結像面が予定焦点面に対して交換レンズ202の光軸方向に微小変位した際の、変位量と差分型位相差検出相関演算で算出される像ズレ量との関係が測定される。その測定された変位量をその算出された像ズレ量で除した値が変換係数の値として定められる。複数組の変位量と像ズレ量との関係が測定される場合は、その関係がグラフ化された時の回帰直線の傾きに基づき合焦近傍の変換係数の値を定めることによって、より高精度な変換係数の測定が行われることとしてもよい。
【0090】
合焦近傍外における変換係数の測定においては、各交換レンズ202により点像または線像が形成される結像面が予定焦点面に対して交換レンズ202の光軸方向に大デフォーカス量変位した時に測定される変位量と、該点像または該線像に対応して該予定焦点面に形成されるボケ像に対して差分型位相差検出相関演算を施すことにより算出される像ズレ量との関係が測定される。その測定された変位量をその算出された像ズレ量で除した値が変換係数の値として定められる。
【0091】
(3)基準光学系に対して測定した値を変換係数として用いるという方法
上述した方法(2)のように個々の光学系について変換係数が測定されるのは手間がかかる。本方法(3)によると、変換係数決定装置は、所定の基準光学系において、F値、射出瞳距離および像高をパラメータとして合焦近傍における変換係数および合焦近傍外における変換係数を測定し、測定した該変換係数のルックアップテーブルを作成し、そのルックアップテーブルをカメラボディ203側のボディ駆動制御装置214に予め記憶させる。実際の焦点検出時に像ズレ量からデフォーカス量への変換を行う場合には、ボディ駆動制御装置214はカメラボディ203に装着されている交換レンズ202から読み出したF値および射出瞳距離の情報と、焦点検出を行う焦点検出エリアに対応する焦点検出画素の像高とに基づき、上記ルックアップテーブルを参照して合焦近傍における変換係数および合焦近傍外(大デフォーカス)における変換係数を取得し、取得した変換係数に基づいてデフォーカス量を算出する。すなわち、カメラボディ203に装着されている交換レンズ202が所定の基準光学系とは異なる光学系を有する場合であっても、所定の基準光学系において測定された変換係数に基づいてデフォーカス量が算出される。
【0092】
上述した方法(1)、(2)、(3)によって算出する合焦近傍外(大デフォーカス)における変換係数は、合焦近傍外における変換誤差の増大を防止するという、本発明が解決しようとする課題に対応する必要があるものの、合焦近傍における変換係数ほどの精度は要求されない。例えば、合焦近傍における変換係数に対して像ズレ量に応じた調整係数(<1)を乗ずることにより、合焦近傍外における変換係数を簡略的に求めるようにしてもかまわない。その調整係数を1未満の値、例えば0.8とすることにより合焦近傍外における変換係数が得られることで、合焦近傍外における変換誤差の増大を防止するという上記課題が解決される。変換係数決定装置は、予め変換係数決定装置の内部に記憶されたその調整係数と演算プログラムとに基づいて、合焦近傍における変換係数にその調整係数を乗じ、合焦近傍外における変換係数を算出する。
【0093】
上述した一実施の形態では、一対のデータ列に対し、相関演算式(1)または(6)を用いた減算を含む差分型相関演算処理により相関量C(k)を演算することとしたが、例えば下記の相関演算式(10)を用いた乗算を含む乗算型相関演算処理により相関量C(k)を演算することとしてもよい。式(10)による相関演算においては、相関量C(k)は、一対の像の一致度に対応する一対のデータ列の相関度が最も高いときの位相差kにおいて極大値をとる特性を示す。相関量C(k)が大きいほど相関度が高い。
C(k)=Σ(A1×A2n+k) ・・・(10)
【0094】
図3に示す撮像素子212では、焦点検出画素312、313がひとつの画素内にひとつの光電変換部を備えた例を示したが、ひとつの画素内に一対の光電変換部を備えてもよい。図21は、図3に示す撮像素子212に対応する変形例の撮像素子212Bを示す。図21において、焦点検出画素311はひとつの画素内に一対の光電変換部を備える。図21に示す焦点検出画素311が、図3に示す焦点検出画素312と焦点検出画素313とのペアに相当した機能を果たす。
【0095】
焦点検出画素311は、マイクロレンズ10、一対の光電変換部22,23からなる。焦点検出画素311には光量をかせぐために色フィルタが配置されていない。焦点検出画素311の示す分光感度特性は、光電変換部に含まれる光電変換を行うフォトダイオードの分光感度特性、赤外カットフィルタ(不図示)の分光感度特性とを総合した分光感度特性となる。すなわち、焦点検出画素311は、緑画素、赤画素、青画素の分光感度特性を加算したような分光感度特性を示す。高い感度を示す光波長領域は、緑画素、赤画素、青画素の各々において各色フィルタが高い感度を示す光波長領域を包括している。
【0096】
上述した一実施の形態では、マイクロレンズを用いた瞳分割方式による焦点検出動作を説明したが、本発明はこのような方式の焦点検出に限定されず、特開平7-159680号公報に開示されたような再結像瞳分割方式の焦点検出にも、一対の測距瞳の分布がそれぞれの分布重心位置に関して不対称となる場合には適用可能である。
【0097】
図3に示す撮像素子212において、撮像画素310がベイヤー配列の色フィルタを備えた例を示したが、色フィルタの構成や配列はこれに限定されることはない。たとえば、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用してもよい。
【0098】
図3に示す撮像素子212において、焦点検出画素312および313には色フィルタを設けない例を示したが、撮像画素310が有する色フィルタのうちのひとつのフィルタ(たとえば緑フィルタ)を焦点検出画素312および313が備えるようにした場合でも、本発明を適用することができる。
【0099】
図3に示す撮像素子212では、撮像画素310、ならびに焦点検出画素312および313を稠密正方格子配列に配置した例を示したが、稠密六方格子配列に配置してもよい。
【0100】
撮像装置としては、上述したような、カメラボディに交換レンズが装着される構成のデジタルスチルカメラやフィルムスチルカメラに限定されない。例えば、レンズ一体型のデジタルスチルカメラ、フィルムスチルカメラ、あるいはビデオカメラにも本発明を適用することができる。さらには、携帯電話などに内蔵される小型カメラモジュール、監視カメラやロボット用の視覚認識装置などにも適用できる。カメラ以外の焦点検出装置や測距装置、さらにはステレオ測距装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0101】
10 マイクロレンズ、11、12、13、22、23 光電変換部、
72、73、82、83 焦点検出光束、
90 測距瞳面、 91 光軸、 92、93 測距瞳、95 射出瞳、
96 結像面、97、98 予定焦点面、
100 撮影画面、101、102、103 焦点検出エリア、
172、173、182、183 焦点検出光束、
201 デジタルスチルカメラ、202 交換レンズ、203 カメラボディ、
204 マウント部、206 レンズ駆動制御装置、
208 ズーミング用レンズ、209 レンズ、210 フォーカシング用レンズ、
211 絞り、212 撮像素子、213 電気接点、
214 ボディ駆動制御装置、
215 液晶表示素子駆動回路、216 液晶表示素子、217 接眼レンズ、
219 メモリカード、
272、273、282、283、292、293 焦点検出光束、
301 一点鎖線、302 破線、303 実線、
310 撮像画素、311、312、313 焦点検出画素、
322、323 直線、
402、403、404、405、406、407 測距瞳分布、
412、413、414、415、416、417 重心線、
502、503、602、603 ボケ像、
512、513、612、613 重心線、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の射出瞳面を通過する一対の光束を受光し、一対の信号を出力する複数の焦点検出画素と、
前記一対の信号に対する相関演算処理により、前記一対の光束による一対の像の像ズレ量を検出する像ズレ量検出手段と、
前記像ズレ量に所定の変換係数を乗じて前記光学系のデフォーカス量を算出するデフォーカス量算出手段とを備え、
前記射出瞳面における前記一対の光束の光量分布の各々は、前記一対の光量分布の各々の分布重心に関して不対称性を有し、
前記デフォーカス量算出手段は、算出した前記デフォーカス量の絶対値が所定の閾値未満である合焦近傍状態においては前記所定の変換係数の値として第1の値を用いるとともに、前記絶対値が前記所定の閾値以上である大デフォーカス状態においては前記所定の変換係数の値として前記第1の値よりも小さい第2の値を用いることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記第1の値は前記光学系のF値が大きくなるほど大きく定められるとともに、
前記第1の値と前記第2の値との比の値は、前記光学系のF値が大きくなるほど1に近づくことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記合焦近傍状態においては、前記第1の値が、前記光学系の結像面が前記光学系の光軸方向に変位する際に測定される前記結像面の変位量と、前記像ズレ量検出手段により検出される前記像ズレ量との関係に基づいて定められることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の焦点検出装置において、
前記関係が測定される際の前記光学系は所定の基準光学系であることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の焦点検出装置において、
前記関係が測定される際の前記光学系は、前記デフォーカス量算出手段により前記デフォーカス量が算出される際の前記光学系と同一であることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記第1の値は、前記光学系のF値と、前記光学系の射出瞳距離と、前記光学系の射出瞳径とに基づいて定められることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記大デフォーカス状態においては、前記第2の値が、前記光学系の結像面が前記光学系の光軸方向に変位する際に測定される前記結像面の変位量と、前記像ズレ量検出手段により検出される前記像ズレ量との関係に基づいて定められることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の焦点検出装置において、
前記第2の値は、前記第1の値に1未満の調整係数を乗じて得られることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記光学系の結像面上の中央で検出される前記像ズレ量に乗じられる前記所定の変換係数の前記第1の値および前記第2の値の比の値と、前記結像面上の周辺で検出される前記像ズレ量に乗じられる前記所定の変換係数の前記第1の値および前記第2の値の比の値とは相異なることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記相関演算処理は前記一対の信号に関する減算を含む差分型相関演算処理であり、
前記像ズレ量検出手段は、前記一対の信号を相対的に変位させ、相対的に変位された前記一対の信号に対する前記差分型相関演算処理により、相対的に変位された前記一対の信号間の相関量を検出するとともに、相対的に変位された前記一対の信号間の位相差に応じて変化する該相関量が極小値を示すときの前記位相差に基づいて前記像ズレ量を検出することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の焦点検出装置において、
前記一対の信号は、n個の信号を含む一方の信号A1〜A1nと、n個の信号を含む他方の信号A2〜A2nとを含み、
相対的に変位された前記一対の信号間の前記位相差kに応じて変化する前記相関量C(k)は、式「C(k)=Σ|A1n・A2n+1+k−A2n+k・A1n+1|」により算出されることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項12】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記複数の焦点検出画素は、第1焦点検出画素と第2焦点検出画素とを含み、
前記第1焦点検出画素は、マイクロレンズと、該マイクロレンズに対応する第1光電変換部とを有して、前記一対の光束の一方を受光し、
前記第2焦点検出画素は、マイクロレンズと、該マイクロレンズに対応する第2光電変換部とを有して、前記一対の光束の他方を受光することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の焦点検出装置と、
前記焦点検出装置により算出された前記デフォーカス量に応じて前記光学系の焦点調節を行う焦点調節手段とを備えることを特徴とする焦点調節装置。
【請求項14】
光学系の射出瞳面を通過する一対の光束を受光し、一対の信号を出力する複数の焦点検出画素と、
前記一対の信号に対する相関演算処理により、前記一対の光束による一対の像の像ズレ量を検出する像ズレ量検出手段と、
前記像ズレ量に所定の変換係数を乗じて前記光学系のデフォーカス量を算出するデフォーカス量算出手段とを備え、
前記デフォーカス量算出手段は、算出した前記デフォーカス量の絶対値が所定の閾値未満である合焦近傍状態においては前記所定の変換係数の値として第1の値を用いるとともに、前記絶対値が前記所定の閾値以上である大デフォーカス状態においては前記所定の変換係数の値として前記第1の値よりも小さい第2の値を用いることを特徴とする焦点検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−54120(P2013−54120A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190920(P2011−190920)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】