説明

焦点調節装置および撮像装置

【課題】光学系の焦点状態を適切に検出することができる焦点調節装置を提供する。
【解決手段】焦点調節レンズ32を光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、光学系の焦点状態を検出する焦点検出部21と、焦点調節レンズ32のレンズ位置に対応する複数の開放絞り値のうち、最小の開放絞り値を、最小開放絞り値として取得する第1取得部21と、現在の絞り段数を取得する第2取得部21と、最小開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数における最小の絞り値を、最小絞り値として算出する演算部21と、焦点調節レンズ32を駆動させながら、焦点検出部21に焦点検出を行わせる制御部21と、を備え、制御部21は、最小絞り値に基づいて、焦点調節レンズを駆動させながら、焦点検出部に光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、焦点調節レンズ32の駆動速度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦点調節レンズを光軸方向に駆動させながら、光学系によるコントラストに関する評価値を算出することで、光学系の焦点状態を検出する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−139666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、光学系の焦点状態を検出するために、焦点調節レンズを所定の速度で駆動させるものであるため、接写用のレンズ鏡筒を用いて撮影を行う場合など、焦点調節レンズの光軸方向の移動に伴って、光学系の絞り値が変化し、これにより、被写界深度が変化するような場合には、焦点調節レンズを所定の速度で駆動させている場合でも、被写界深度の変化に伴って、焦点調節レンズの駆動速度が、焦点検出に適した速度よりも速くなってしまう場合や、焦点検出に適した速度よりも遅くなってしまう場合があり、光学系の焦点状態を適切に検出できない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、光学系の焦点状態を適切に検出することができる焦点調節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明の第一の観点に係る焦点調節装置は、駆動部(36)により前記焦点調節レンズを光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出部(21)と、前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置に対応する複数の開放絞り値のうち、最小の開放絞り値を、最小開放絞り値として、レンズ鏡筒から取得する第1取得部(21)と、現在の絞り段数を取得する第2取得部(21)と、前記最小開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数にて前記焦点調節レンズを光軸方向に移動させた場合におけるレンズ位置ごとの絞り値のうち、最小の絞り値を、最小絞り値として算出する演算部(21)と、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる制御部(21)と、を備え、前記制御部は、前記最小絞り値に基づいて、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、前記焦点調節レンズの駆動速度である焦点検出駆動速度を決定することを特徴とする。
【0008】
[2] 本発明の第一の観点に係る焦点調節装置において、前記制御部(21)は、前記焦点検出駆動速度を、前記光学系の絞り値を前記最小絞り値にして、前記駆動部(36)に前記焦点調節レンズ(32)を駆動させながら、前記焦点検出部(21)に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた場合に、前記焦点検出部により前記光学系の焦点状態を検出可能な前記焦点調節レンズの駆動速度として決定するように構成することができる。
【0009】
[3] 本発明の第一の観点に係る焦点調節装置において、前記レンズ鏡筒(3)は、接写用のレンズ鏡筒であるように構成することができる。
【0010】
[4] 本発明の第二の観点に係る焦点調節装置は、駆動部(36)により焦点調節レンズ(32)を光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出部(21)と、前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置が第1位置であるときの開放絞り値に対応する第1開放絞り値、及び、前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置が前記第1位置とは異なる第2位置であるときの開放絞り値に対応する第2開放絞り値のうち、小さい方を所定開放絞り値として、レンズ鏡筒(3)から取得する第1取得部(21)と、現在の絞り段数を取得する第2取得部(21)と、前記所定開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数にて前記焦点調節レンズを前記所定開放絞り値に対応するレンズ位置に移動させたときの絞り値を、所定絞り値として算出する演算部(21)と、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる制御部(21)と、を備え、前記制御部は、前記所定絞り値に基づいて、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、前記焦点調節レンズの駆動速度である焦点検出駆動速度を決定することを特徴とする。
【0011】
[5] 本発明の第二の観点に係る焦点調節装置において、前記第1位置は、現在のレンズ位置よりも至近側の位置であり、前記第2位置は、現在のレンズ位置よりも無限側の位置であるように構成することができる。
【0012】
[6] 本発明の第三の観点に係る焦点調節装置は、駆動部(36)により焦点調節レンズ(32)を光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出部(21)と、前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置が第1位置であるときの開放絞り値である所定開放絞り値が、現在のレンズ位置における開放絞り値よりも小さい場合に、前記所定開放絞り値をレンズ鏡筒(3)から取得する第1取得部(21)と、現在の絞り段数を取得する第2取得部(21)と、前記所定開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数にて前記第1位置に移動させたときの絞り値を、所定絞り値として算出する演算部(21)と、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる制御部(21)と、を備え、前記制御部は、前記所定絞り値に基づいて、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、前記焦点調節レンズの駆動速度である焦点検出駆動速度を決定することを特徴とする。
【0013】
[7]本発明に係る撮像装置は、上記焦点調節装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学系の焦点状態を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す撮像素子の撮像面を示す正面図である。
【図3】図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図である。
【図5】図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図である。
【図6】図6は、撮像画素221の一つを拡大して示す断面図である。
【図7】図7(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す断面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す断面図である。
【図8】図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0018】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0019】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
【0020】
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
【0021】
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0022】
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0023】
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0024】
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
【0025】
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
【0026】
なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3として、接写用のマイクロレンズ(接写用レンズ)を用いている。マイクロレンズ(接写用レンズ)は、通常のレンズ鏡筒と比べて、最小撮影距離が短く、最小撮影距離が、たとえば200mm以下(たとえば、105mm)のものなどがある。また、マイクロレンズでは、フォーカスレンズ32の光軸方向への移動に伴い、開放絞り値が変化し、たとえば、至近側のフォーカスレンズ位置では、開放絞り値がF4となるのに対して、無限遠側のフォーカスレンズ位置では、開放絞り値がF2.8となる場合がある。レンズ制御部37は、このようにフォーカスレンズ32の光軸方向におけるレンズ位置ごとの複数の開放絞り値のうち、最小の開放絞り値を、最小開放絞り値として、レンズ制御部37に備えるメモリに記憶するとともに、最小開放絞り値を、カメラ制御部21に送信する。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3として、フォーカスレンズ32の光軸方向への移動に伴って、開放絞り値が変化するようなマイクロレンズを用いるが、レンズ鏡筒3は、フォーカスレンズ32の光軸方向への移動に伴って、開放絞り値が変化するものであれば、接写用のマイクロレンズに特に限定されるものではない。
【0027】
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDやCMOSなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるカメラメモリ24に記録される。なお、カメラメモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
【0028】
カメラ本体2には、撮像素子22で撮像される像を観察するための観察光学系が設けられている。本実施形態の観察光学系は、液晶表示素子からなる電子ビューファインダ(EVF)26と、これを駆動する液晶駆動回路25と、接眼レンズ27とを備えている。液晶駆動回路25は、撮像素子22で撮像され、カメラ制御部21へ送出された撮影画像情報を読み込み、これに基づいて電子ビューファインダ26を駆動する。これにより、ユーザは、接眼レンズ27を通して現在の撮影画像を観察することができる。なお、光軸L2による上記観察光学系に代えて、または、これに加えて、液晶ディスプレイをカメラ本体2の背面等に設け、この液晶ディスプレイに撮影画像を表示させることもできる。
【0029】
カメラ本体2には、カメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41により、レンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0030】
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出を行う。なお、具体的な焦点状態の検出方法については、後述する。
【0031】
操作部28は、シャッターレリーズボタンなどの撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0032】
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
【0033】
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図3は、図2のIII部分を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【0034】
本実施形態の撮像素子22は、図3に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
【0035】
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
【0036】
図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図6は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図6の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
【0037】
また、撮像素子22の撮像面の中心、ならびに中心から左右対称位置の3箇所には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列22a,22b,22cが設けられている。そして、図3に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、横一列(22a,22c,22c)に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
【0038】
なお、図2に示す焦点検出画素列22a〜22cの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所にすることもでき、また、四箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、複数配置された焦点検出画素列22a〜22cの中から、撮影者が操作部28を手動操作することにより所望の焦点検出画素列を、焦点検出エリアとして選択することもできる。
【0039】
図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図7(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図5(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図7(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図5(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図7(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図3に示すように、互いに隣接して交互に、横一列に配列されることにより、図2に示す焦点検出画素列22a〜22cを構成する。
【0040】
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
【0041】
また、図5(A)、図5(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
【0042】
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
【0043】
図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳350の測距瞳351,352から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図8においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、図8に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳351,352から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
【0044】
ここで、射出瞳350とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳351,352とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
【0045】
なお、図8において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳351,352の並び方向と一致している。
【0046】
また、図8に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳350上に投影され、その投影形状は測距瞳351,352を形成する。
【0047】
すなわち、測距距離Dにある射出瞳350上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳351,352)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
【0048】
図8に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0049】
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0050】
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図3に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。そして、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
【0051】
そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出エリアにおける焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
【0052】
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
【0053】
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出することでも求めることができる。
【0054】
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に駆動信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
【0055】
次いで、図9を参照して、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図9は、本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作は、カメラ1の電源がオンされることにより開始される。
【0056】
まず、ステップS101では、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出が開始される。本実施形態では、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出処理は、次のように行なわれる。すなわち、まず、カメラ制御部21により、撮像素子22の3つの焦点検出画素列22a〜22cを構成する各焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しが行なわれる。この場合、使用者の手動操作により、特定の焦点検出位置が選択されているときは、その焦点検出位置に対応する焦点検出画素からのデータのみを読み出すような構成としてもよい。そして、カメラ制御部21は、読み出された一対の像データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を実行し、3つの焦点検出画素列22a〜22cに対応する焦点検出位置における像ズレ量を演算し、さらに像ズレ量をデフォーカス量に変換する。また、カメラ制御部21は、算出したデフォーカス量の信頼性の評価を行う。なお、デフォーカス量の信頼性の評価は、たとえば、一対の像データの一致度やコントラストなどに基づいて行なわれる。そして、このような位相差検出方式によるデフォーカス量の算出処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0057】
ステップS102では、カメラ制御部21により、焦点評価値の算出処理が開始される。本実施形態では、焦点評価値の算出処理は、撮像素子22の撮像画素221の画素出力を読み出し、読み出した画素出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算することにより行われる。また、撮影者の手動操作により特定の焦点検出位置が選択されているときには、選択された焦点検出位置に対応する撮像画素221の画素出力のみを読み出して、焦点評価値を算出するような構成としてもよい。なお、焦点評価値の算出処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0058】
ステップS103では、カメラ制御部21により、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたか否かの判断が行なわれる。第1スイッチSW1がオンした場合は、ステップS104に進み、一方、第1スイッチSW1がオンしていない場合は、ステップS103で待機し、第1スイッチSW1がオンされるまで、デフォーカス量の算出と焦点評価値の算出とが繰り返し行われる。
【0059】
ステップS104では、カメラ制御部21により、位相差検出方式により、デフォーカス量が算出できたか否かの判定が行なわれる。デフォーカス量が算出できた場合には、ステップS113に進み、一方、デフォーカス量が算出できなかった場合には、ステップS105に進む。なお、本実施形態においては、デフォーカス量の算出ができた場合でも、算出されたデフォーカス量の信頼性が低い場合には、デフォーカス量が算出できなかったものとして扱い、ステップS105に進むこととする。本実施形態においては、たとえば、被写体のコントラストが低い場合、被写体が超低輝度被写体である場合、あるいは、被写体が超高輝度被写体である場合などにおいて、デフォーカス量の信頼性が低いと判断される。
【0060】
なお、ステップS104においては、直近の一回のデフォーカス量算出処理の結果を用いて、上記判定を行なうが、直近の所定回数のデフォーカス量算出処理において、連続して、デフォーカス量が算出できなかった場合、あるいは、連続して、デフォーカス量の信頼性が低かった場合に、測距不能と判断して、ステップS105に進み、逆に、直近の所定回数のデフォーカス量算出処理において、一度でもデフォーカス量が算出された場合には、測距可能と判断して、ステップS113に進むような構成としてもよい。
【0061】
ステップS104において、デフォーカス量が算出できたと判定され、測距可能と判断された場合には、ステップS113に進み、位相差検出方式により算出されたデフォーカス量に基づく合焦駆動が行なわれる。具体的には、カメラ制御部21により、位相差検出方式により算出されたデフォーカス量から、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させるのに必要となるレンズ駆動量の算出が行なわれ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、レンズ駆動モータ36に送出される。そして、レンズ駆動モータ36は、カメラ制御部21により算出されたレンズ駆動量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させる。
【0062】
なお、本実施形態においては、レンズ駆動モータ36を駆動させ、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させている間においても、カメラ制御部21は、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出を繰り返し行い、その結果、新たなデフォーカス量が算出された場合には、カメラ制御部21は、新たなデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動させる。
【0063】
一方、ステップS104において、位相差検出方式により、デフォーカス量の算出ができなかったと判定された場合には、ステップS105に進む。ステップS105では、カメラ制御部21により、最小開放絞り値A0_minの取得が行われる。ここで、上述したように、本実施形態では、レンズ鏡筒3として、接写用のマイクロレンズなど、フォーカスレンズ32の光軸方向の移動に伴い、開放絞り値が変化するようなレンズ鏡筒を用いており、レンズ制御部37は、フォーカスレンズ32の光軸方向におけるレンズ位置に対応する複数の開放絞り値のうち、最小の開放絞り値を、最小開放絞り値A0_minとして、レンズ制御部37に備えるメモリに記憶している。たとえば、フォーカスレンズ32が無限遠側に位置するほど、開放絞り値が小さくなるレンズ鏡筒3において、フォーカスレンズ32が至近端に位置する場合の開放絞り値がF4であり、フォーカスレンズ32が無限遠端に位置する場合の開放絞り値がF2.8である場合、開放絞り値の最小値はF2.8となり、この場合、レンズ制御部37は、最小開放絞り値A0_minとして、F2.8を記憶している。ステップS105において、カメラ制御部21は、このような最小開放絞り値A0_minを、レンズ制御部37に備えるメモリから取得する。
【0064】
ステップS106では、カメラ制御部21により、現在の絞り段数Sの取得が行われる。ここで、本実施形態では、たとえば、カメラ制御部21による露出制御などにより、現在の開放絞り値と、目標とする光学系の絞り値とに基づいて、絞り段数Sが設定され、カメラ制御部21は、このように設定された現在の絞り段数Sを取得する。たとえば、現在の開放絞り値がF4であり、目標とする光学系の絞り値がF5.6である場合に、絞り段数Sが1段に設定され、この場合、カメラ制御部21は、現在の絞り段数Sを1段として取得することができる。また、絞り段数Sは、操作部28を介した撮影者の操作により設定することもでき、この場合、カメラ制御部21は、撮影者により設定された絞り段数を、現在の絞り段数Sとして取得することもできる。
【0065】
ステップS107では、カメラ制御部21により、ステップS105で取得した最小開放絞り値A0_minと、ステップS106で取得した現在の絞り段数Sとに基づいて、最小絞り値Aminの算出が行われる。本実施形態では、フォーカスレンズ32の光軸方向の移動に伴って、開放絞り値が変化するため、フォーカスレンズ32の光軸方向の移動に伴って、現在の絞り段数Sにおける光学系の絞り値も変化する。たとえば、フォーカスレンズ32が至近端に位置する場合の開放絞り値がF4であり、フォーカスレンズ32が無限遠端に位置する場合の開放絞り値がF2.8である場合において、現在の絞り段数が1段に設定されている場合には、フォーカスレンズ32が至近端に位置する場合の光学系の絞り値はF5.6となり、フォーカスレンズ32が無限遠端に位置する場合の光学系の絞り値はF4となる。このように、本実施形態では、フォーカスレンズ32の光軸方向におけるレンズ位置ごとに光学系の絞り値が得られる。ステップS107において、カメラ制御部21は、このように、現在の絞り段数Sでフォーカスレンズ32を光軸方向に移動させた場合におけるレンズ位置ごとの光学系の絞り値のうち、最小の絞り値を、最小絞り値Aminとして算出する。具体的には、たとえば、ステップS105で取得した最小開放絞り値A0_minがF4であり、ステップS105で取得した現在の絞り段数Sが1段である場合には、カメラ制御部21は、最小絞り値AminをF5.6として算出する。
【0066】
ステップ108では、カメラ制御部21により、ステップS107で算出した最小絞り値Aminに基づいて、スキャン動作における、フォーカスレンズ32の駆動速度を、スキャン駆動速度Vとして決定する処理が行われる。ここで、スキャン動作とは、フォーカスレンズ駆動モータ36により、フォーカスレンズ32を、このステップS107で決定するスキャン駆動速度Vで駆動させながら、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、およびコントラスト検出方式による焦点評価値の算出を、所定の間隔で同時に行い、これにより、位相差検出方式による合焦位置の検出と、コントラスト検出方式による合焦位置の検出とを、所定の間隔で、同時に並行して実行する動作である。
【0067】
また、コントラスト検出方式による焦点検出では、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、所定のサンプリング間隔で、焦点評価値を算出することで、焦点評価値がピークとなるレンズ位置を、合焦位置として検出する。この焦点評価値のサンプリング間隔は、フォーカスレンズ32の駆動速度が速くなるほど大きくなり、フォーカスレンズ32の駆動速度が所定速度を越えた場合には、焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなり過ぎてしまい、合焦位置を適切に検出することができなくなってしまう。これは、焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなるほど、フォーカスレンズ32を至近端から無限遠端まで駆動させた場合でも、検出対象の被写体が、一度も、焦点状態を適切に検出できる被写界深度内に入らず、被写体の位置における焦点状態を適切に検出できない場合があるためである。特に、光学系の絞り値が小さいほど、被写体深度は狭くなるため、合焦位置を適切に検出するためには、光学系の絞り値が大きい場合と比べて、焦点評価値のサンプリング間隔を小さくする必要がある。そこで、本実施形態において、カメラ制御部21は、ステップS108で算出した最小絞り値Aminにおいて、合焦位置を適切に検出することができるフォーカスレンズレンズ32の駆動速度のうち、最大の駆動速度を、スキャン駆動速度Vとして算出する。
【0068】
そして、ステップS109では、ステップS108で決定したスキャン駆動速度Vで、スキャン動作が開始される。具体的には、カメラ制御部21は、レンズ制御部37にスキャン駆動開始指令を送出し、レンズ制御部37は、カメラ制御部21からの指令に基づき、フォーカスレンズ駆動モータ36を駆動させ、フォーカスレンズ32を、ステップS108で決定したスキャン駆動速度Vでスキャン駆動させる。そして、カメラ制御部21は、スキャン駆動速度Vでフォーカスレンズ32を駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しを行い、これに基づき、位相差検出方式により、デフォーカス量の算出および算出されたデフォーカス量の信頼性の評価を行うとともに、スキャン駆動速度Vでフォーカスレンズ32を駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の撮像画素221から画素出力の読み出しを行い、これに基づき、焦点評価値を算出し、これにより、異なるフォーカスレンズ位置における焦点評価値を取得することで、コントラスト検出方式により合焦位置の検出を行う。
【0069】
そして、ステップS110では、カメラ制御部21により、スキャン動作を行なった結果、位相差検出方式により、デフォーカス量が算出できたか否かの判定が行なわれる。デフォーカス量が算出できた場合には、測距可能と判断して、ステップS113に進み、一方、デフォーカス量が算出できなかった場合には、測距不能と判断して、ステップS111に進む。なお、ステップS110においても、ステップS104と同様に、デフォーカス量の算出ができた場合でも、算出されたデフォーカス量の信頼性が低い場合には、デフォーカス量が算出できなかったものとして扱い、ステップS111に進むこととする。
【0070】
ステップS111では、カメラ制御部21により、スキャン動作を行なった結果、コントラスト検出方式により、合焦位置の検出ができたか否かの判定が行なわれる。コントラスト検出方式により、合焦位置の検出ができた場合には、ステップS114に進み、一方、合焦位置の検出ができなかった場合には、ステップS112に進む。
【0071】
ステップS112では、カメラ制御部21により、スキャン動作を、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について行なったか否かの判定が行なわれる。フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について、スキャン動作を行なっていない場合には、ステップS110に戻り、ステップS110〜S112を繰り返すことにより、スキャン動作、すなわち、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出を、所定の間隔で同時に実行する動作を継続して行なう。一方、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について、スキャン動作の実行を完了している場合には、ステップS115に進む。
【0072】
そして、スキャン動作を実行した結果、ステップS110において、位相差検出方式により、デフォーカス量が算出できたと判定された場合には、スキャン動作の停止処理が行なわれた後、ステップS113に進み、上述のように、位相差検出方式により検出された合焦位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させる合焦駆動が行なわれる。
【0073】
また、スキャン動作を実行した結果、ステップS111において、コントラスト検出方式により、合焦位置が検出できたと判定された場合には、スキャン動作の停止処理が行なわれた後、ステップS114に進み、カメラ制御部21により、コントラスト検出方式により検出された合焦位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させる合焦駆動が行なわれる。
【0074】
一方、ステップS112において、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について、スキャン動作の実行が完了していると判定された場合には、ステップS115に進む。ステップS115では、スキャン動作を行なった結果、コントラスト検出方式により、焦点検出を行うことができなかったため、スキャン動作の終了処理が行なわれ、その後、合焦不能表示が行なわれる。なお、合焦不能表示は、たとえば、電子ビューファインダ26により行われる。
【0075】
以上のように、本実施形態に係るカメラ1は動作する。
【0076】
このように、本実施形態では、接写用のマイクロレンズを用いて撮影を行う場合など、フォーカスレンズ32の光軸方向の移動に伴い、開放絞り値が変化するような場合に、フォーカスレンズ32のレンズ位置に対応する複数の開放絞り値のうち、最小の開放絞り値を、最小開放絞り値A0_minとして取得する。そして、取得した最小開放絞り値A0_minと、現在の絞り段数Sとに基づいて、現在の絞り段数Sでフォーカスレンズ32を光軸方向に移動させた場合における絞り値のうち、最小の絞り値を、最小絞り値Aminとして算出する。そして、光学系の絞り値を最小絞り値Aminとして、スキャン動作を実行した場合に、合焦位置を適切に検出することができるフォーカスレンズ32の駆動速度を、スキャン駆動速度Vとして決定し、決定したスキャン駆動速度Vで、スキャン動作を実行する。これにより、本実施形態では、接写用のマイクロレンズを用いた場合など、フォーカスレンズ32の光軸方向への移動に伴って、開放絞り値が変化し、現在の絞り段数Sにおける光学系の絞り値が変化するような場合でも、焦点検出に適したスキャン駆動速度Vでスキャン動作を行うことができ、合焦位置を適切に検出することができる。
【0077】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0078】
たとえば、上述した実施形態では、フォーカスレンズ32のレンズ位置に対応する複数の開放絞り値のうち最小の開放絞り値である最小開放絞り値A0_minに基づいて、現在の絞り段数で得られる最小の絞り値を最小絞り値Aminとして算出し、光学系の絞り値が最小絞り値Aminである場合でも、光学系の焦点状態を検出可能なフォーカスレンズ32の駆動速度を、スキャン駆動速度Vとして、スキャン動作を行う構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、以下のような構成とすることができる。
【0079】
すなわち、フォーカスレンズ32の現在のレンズ位置よりも至近側の第1位置に対応する開放絞り値(第1開放絞り値)、および、現在のレンズ位置よりも無限側の第2位置に対応する開放絞り値(第2開放絞り値)のうち、小さい方を所定開放絞り値として、レンズ鏡筒3から取得する。そして、現在の絞り段数でフォーカスレンズ32を所定開放絞り値に対応するレンズ位置に移動させた際に得られる絞り値を、所定絞り値として算出する。そして、光学系の絞り値が所定絞り値である場合でも、光学系の焦点状態を検出可能なフォーカスレンズ32の駆動速度を、スキャン駆動速度Vとして、スキャン駆動を行う構成としてもよい。
【0080】
あるいは、フォーカスレンズ32の所定のレンズ位置に対応する開放絞り値である開放絞り値が、現在のレンズ位置に対応する開放絞り値よりも小さい場合に、上記所定のレンズ位置に対応する開放絞り値を所定開放絞り値として、レンズ鏡筒3から取得する。そして、現在の絞り段数でフォーカスレンズ32を、取得した所定開放絞り値に対応するレンズ位置に移動させた際に得られる絞り値を、所定絞り値として算出する。そして、光学系の絞り値が所定絞り値である場合でも、光学系の焦点状態を検出可能なフォーカスレンズ32の駆動速度を、スキャン駆動速度Vとして、スキャン動作を行う構成としてもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、フォーカスレンズ32を駆動させながら、位相差検出方式による焦点検出と、コントラスト検出方式による焦点検出とを、所定間隔で、同時に行うスキャン動作における、スキャン駆動速度Vを、最小絞り値Aminに基づいて算出する構成を例示したが、たとえば、位相差検出方式による焦点検出を行わず、コントラスト検出方式による焦点検出のみを行うような場面においては、コントラスト検出方式による焦点検出における、フォーカスレンズ32の駆動速度を、最小絞り値Aminに基づいて算出する構成としてもよい。
【0082】
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、デジタルビデオカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…デジタルカメラ
2…カメラ本体
21…カメラ制御部
22…撮像素子
221…撮像画素
222a,222b…焦点検出画素
3…レンズ鏡筒
32…フォーカスレンズ
36…フォーカスレンズ駆動モータ
37…レンズ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部により焦点調節レンズを光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出部と、
前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置に対応する複数の開放絞り値のうち、最小の開放絞り値を、最小開放絞り値として、レンズ鏡筒から取得する第1取得部と、
現在の絞り段数を取得する第2取得部と、
前記最小開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数にて前記焦点調節レンズを光軸方向に移動させた場合におけるレンズ位置ごとの絞り値のうち、最小の絞り値を、最小絞り値として算出する演算部と、
前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記最小絞り値に基づいて、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、前記焦点調節レンズの駆動速度である焦点検出駆動速度を決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調節装置であって、
前記制御部は、前記焦点検出駆動速度を、前記光学系の絞り値を前記最小絞り値にして、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた場合に、前記焦点検出部により前記光学系の焦点状態を検出可能な前記焦点調節レンズの駆動速度として決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の焦点調節装置であって、
前記レンズ鏡筒は、接写用のレンズ鏡筒であることを特徴とする焦点調節装置。
【請求項4】
駆動部により焦点調節レンズを光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出部と、
前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置が第1位置であるときの開放絞り値に対応する第1開放絞り値、及び、前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置が前記第1位置とは異なる第2位置であるときの開放絞り値に対応する第2開放絞り値のうち、小さい方を所定開放絞り値として、レンズ鏡筒から取得する第1取得部と、
現在の絞り段数を取得する第2取得部と、
前記所定開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数にて前記焦点調節レンズを前記所定開放絞り値に対応するレンズ位置に移動させたときの絞り値を、所定絞り値として算出する演算部と、
前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記所定絞り値に基づいて、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、前記焦点調節レンズの駆動速度である焦点検出駆動速度を決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項5】
請求項4に記載の焦点調節装置であって、
前記第1位置は、現在のレンズ位置よりも至近側の位置であり、前記第2位置は、現在のレンズ位置よりも無限側の位置であることを特徴とする焦点調節装置。
【請求項6】
駆動部により焦点調節レンズを光軸方向に駆動させながら、光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出部と、
前記焦点調節レンズの光軸方向におけるレンズ位置が第1位置であるときの開放絞り値である所定開放絞り値が、現在のレンズ位置における開放絞り値よりも小さい場合に、前記所定開放絞り値をレンズ鏡筒から取得する第1取得部と、
現在の絞り段数を取得する第2取得部と、
前記所定開放絞り値と現在の絞り段数とに基づいて、現在の絞り段数にて前記第1位置に移動させたときの絞り値を、所定絞り値として算出する演算部と、
前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記所定絞り値に基づいて、前記駆動部に前記焦点調節レンズを駆動させながら、前記焦点検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせる際における、前記焦点調節レンズの駆動速度である焦点検出駆動速度を決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の焦点調節装置を備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104935(P2013−104935A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247084(P2011−247084)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】