説明

焼き付き現象補正方法、自発光装置、焼き付き現象補正装置及びプログラム

【課題】焼き付き現象の補正を優先するために、画像を大きく変化させる可能性があり、結果的に著しい画質の低下を招くおそれがあった。
【解決手段】複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する焼き付き現象補正装置を、(1)各画素に対応する補正量(≦0)を決定する補正量決定部と、(2)補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、(3)自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、(4)ガンマ補正データを参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部とで構成する。
を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の一つの形態は、自発光装置に発生する焼き付き現象の補正方法に関する。また、発明の一つの形態は、焼き付き現象補正装置及びこれを搭載した自発光装置に関する。また、発明の一つの形態は、自発光装置に搭載されたコンピュータに焼き付き補正機能を実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイは、コンピュータディスプレイ、携帯端末、テレビなどの製品で広く普及している。現在、主には液晶ディスプレイパネルが多く採用されているが、依然、視野角の狭さや応答速度の遅さが指摘され続けている。
一方、自発光素子で形成された有機ELディスプレイは、前述した視野角や応答性の課題を克服できるのに加え、バックライト不要の薄い形態、高輝度、高コントラストを達成できる。このため、液晶ディスプレイに代わる次世代表示装置として期待されている。
【0003】
ところで、有機EL素子その他の自発光素子は、その発光量や発光時間に応じて劣化する特性があることは一般的にも知られている。
一方で、ディスプレイに表示される画像の内容は一様ではない。このため、自発光素子の劣化が部分的に進行し易い。例えば時刻表示領域(固定表示領域)の自発光素子は、他の表示領域(動画表示領域)の自発光素子に比べて劣化の進行が速い。
劣化が進行した自発光素子の輝度は、他の表示領域の輝度に比して相対的に低下する。一般に、この現象は“焼き付き”と呼ばれる。以下、部分的な自発光素子の劣化を“焼き付き”と表記する。
【0004】
現在、“焼き付き”現象の改善策として様々な手法が検討されている。以下、その幾つかを列記する。
【特許文献1】特開2003−228329号公報 この文献には、表示パネルを構成する各画素に対する入力データを一定周期で画素毎に積算し、それらの最大値から各画素の積算値を減算して各画素についての補正量を設定する方法が開示されている。また、非使用状態において補正量の大きさに比例する時間だけ各画素を一定輝度で発光することで各画素の表示特性を揃える方法が開示されている。
【0005】
【特許文献2】特開2003−295827号公報 この文献には、静止画の表示時にのみ表示データと表示時間を記憶し、その表示データと最大輝度との差ΔYと、静止画が表示された時間Tとの積算量ΔY・Tを補正データに設定する方法が開示されている。また、この文献には、蓋が閉じられた状態や非使用状態の場合にのみ補正用の表示を実行することで、焼き付き現象を補正する方法が開示されている。 この補正方法にも、特許文献1の場合とまったく同様の問題が存在する。
【特許文献3】特開2000−132139号公報 この文献には、画素毎に入力データを積算し、補正テーブルを用いて積算値を補正量に変換する方法が開示されている。また、求められた補正量により各画素の入力データを補正し、焼き付き現象を視認し難くする方法が開示されている。
【0006】
【特許文献4】特開2001−175221号公報 この文献には、画素の中で一番輝度が劣化した画素にあわせて、その他の画素の輝度データを下げるように補正量を決定する方法が開示されている。また、得られた補正量で各画素の輝度データを変換し、焼き付き現象を視認し難くする方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、既存の補正方法は、焼き付き現象の補正を実現するにあたり、画像を大きく変化させる必要性があった。すなわち、結果的に著しく画質を低下させる可能性があった。例えば、白潰れや黒潰れ等、再現可能な階調幅が狭くなることによる画質の低下が視認される可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置に生じた焼き付き現象の補正方法として、補正対象範囲内で最も大きい値の補正量を検出し、当該補正量の適用時にも、再現可能な階調幅が狭まらないように入力表示信号をガンマ補正する方法を提案する。
具体的には、以下の4つの技術手法を提案する。各技術手法の違いは、処理対象とする補正量に出現する符号の違いによる。
【0009】
(A)技術手法1
この技術手法は、各画素に対応する補正量が全て0又は負値になる場合に好適である。
この技術手法は、以下の処理を実行することを特徴とする。
(1)各画素に対応する補正量を決定する処理
(2)補正量の大きさの最大値を検出する処理
(3)自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、補正量の大きさの最大値を入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成する処理
(4)ガンマ補正データを参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する処理
【0010】
(B)技術手法2
この技術手法は、各画素に対応する補正量が全て0又は正値になる場合に好適である。
この技術手法は、以下の処理を実行することを特徴とする。
(1)各画素に対応する補正量を決定する処理
(2)補正量の大きさの最大値を検出する処理
(3)補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成する処理
(4)ガンマ補正データを参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する処理
【0011】
(C)技術手法3
この技術手法は、各画素に対応する補正量の符号が正と負の両方を含む場合に好適である。なお、補正量が0の場合も含む。
この技術手法は、以下の処理を実行することを特徴とする。
(1)各画素に対応する補正量を決定する処理
(2)補正量の大きさの最大値とその符号を検出する処理
(3)符号が正の場合には、補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成する処理
(4)符号が負の場合には、入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、補正量の大きさの最大値を入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成する処理
(5)生成されたガンマ補正データを参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する処理
【0012】
(D)技術手法4
この技術手法は、各画素に対応する補正量の符号が正と負の両方を含む場合に好適である。なお、補正量が0の場合も含む。
この技術手法は、以下の処理を実行することを特徴とする。
(1)各画素に対応する補正量を決定する処理
(2)補正量の符号別に、補正量の大きさの最大値を検出する処理
(3)補正量の符号が正の画素用に、補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成する処理
(4)補正量の符号が負の画素用に、入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、補正量の大きさの最大値を入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成する処理
(5)補正量の符号を画素毎に検出し、対応するガンマ補正データを参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する処理
【0013】
また、これら技術手法は、自発光装置そのものに適用できるだけでなく、出力装置に出力する画像信号を処理する各種の電子機器に対しても適用できる。また、これらの技術手法は、ハードウェアとして実現できる他、ソフトウェアとしても実現できる。勿論、処理の実行は、一部処理をハードウェアとして実行し、残る処理をソフトウェアとして実行することもできる。
因みに、自発光装置は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(cathode ray tube)、FED(電界放出ディスプレイ)パネル、LEDパネル、プロジェクターを含む。
【発明の効果】
【0014】
これらの技術手法を適用すれば、白潰れや黒潰れ等を発生させない焼き付き補正処理を実現できる。すなわち、全表示階調の再現性を保存した状態のまま、焼き付き現象を補正できる。これにより、画質を一段と向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明に係る技術手法を採用する焼き付き現象補正技術の実施形態例を説明する。以下、焼き付き現象補正装置を「補正装置」という。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0016】
(A)補正装置の形態例
(A−1)形態例1
ここでは、算出される補正量が全て0又は負値になる場合について説明する。
(a)装置構成
図1に、補正装置の形態例を示す。この形態例の場合、補正装置1は、同色で発光する画素毎に配置する。なお、カラー画像の再現には、光の三原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)を使用し、必要に応じて補色も使用する。なお、補正装置1は、各色信号に対して共通に配置することもできる。
補正装置1は、劣化量算出部3、劣化量保存メモリ5、補正量決定部7、最大値検出部9、ガンマ補正データ生成部11、輝度劣化補正部13を主要な構成要素とする。
【0017】
劣化量算出部3は、補正処理前の入力表示信号に基づいて各画素の劣化量を算出する処理デバイスである。ここでは、入力表示信号が階調データとする。
劣化量は、各画素の輝度劣化を推測できる量であれば良く、任意の算出手法を適用できる。勿論、既存の算出手法も適用できる。
例えば、各画素に対応する階調データをフレーム毎に累積加算する手法を適用する。
また例えば、基準画素の劣化量に対する各画素の劣化量の差として与える手法を適用する。
【0018】
なお、階調データと劣化の進行度合いとの間に比例関係が成立しない場合には、実測結果を反映した換算係数を用いて劣化量を算出する。発明者らは、この換算係数を、「劣化率」という概念で規定する。
劣化率は、ある階調データで自発光素子を継続的に発光させた場合における発光輝度の低下率として規定する。
図2に、階調データと劣化率との対応関係を示す変換テーブルの一例を示す。この場合、劣化量は、個々の階調データに対応する劣化率Rに発光期間Tを乗算した値として算出される。
【0019】
もっとも、各画素に対応する階調データから図2に示す劣化量を直接読み出す手法を適用しても良い。このように読み出された1フレーム単位の劣化量をフレーム毎に累積加算したものを、この形態例の場合、各画素に対応する劣化量として扱う。
劣化量保存メモリ5は、1フレーム毎に更新される累積劣化量を保存するメモリである。
補正量決定部7は、劣化量保存メモリ5から読み出した劣化量データに基づいて、各画素に対応する補正量を決定する処理デバイスである。補正量決定部7は、画素間に存在する劣化量の差を解消する方向で補正量を決定する。
【0020】
ここでは、最も劣化の遅れた画素を基準画素とし、他の画素の劣化量が基準画素の劣化量に近づくように補正量を決定する手法を適用する。すなわち、基準画素以外の画素は原画像よりも輝度を下げるように補正量を決定する手法を適用する。
もっとも、補正量が「負値」で与えられるのであれば、補正量の決定手法は問わない。この明細書で提案する技術は、補正量の決定後の処理に特徴があるためである。
決定された補正量は、最大値決定部9に与えられる。
最大値検出部9は、補正量の大きさの最大値を検出する処理デバイスである。例えば、補正量(≦0)の絶対値を全画素について比較し、その最大値Xを検出する。また例えば、補正量(≦0)を全画素について比較し、その最小値の絶対値Xを検出する。
【0021】
ガンマ補正データ生成部11は、0(ゼロ)を最小出力値とし、最大値Xを入力表示信号の許容最大値255から減算した値(=255−X)を最大出力値とするガンマ補正データを生成する処理デバイスである。
例えば、補正量の大きさの最大値Xが“15”である場合、ガンマ補正データ生成部11は、0から240までの間で、0から255までの階調が出力されるようにガンマ補正データを生成する。
図3に、ガンマ補正データの生成イメージを示す。このうち、図3の「減算補正後階調特性」が、従来方法の特性に対応する。従来手法では、低階調部分に黒潰れが発生し、原画像が有していた階調情報が失われている。
【0022】
一方、図3の「ガンマ補正後階調特性」のように、減算補正後の再現可能範囲を用いて階調を再現すると、ある程度の情報の欠落は生じても、ほぼ全ての階調を再現できる。
図4に、ガンマ補正前と後の入出力特性例を示す。図4に太線で示す直線が、ガンマ補正後の入出力特性例に対応する。
ガンマ補正データ生成部11は、この太線に対応する入出力関係を、ガンマ補正データとして輝度劣化補正部13に出力する。
【0023】
輝度劣化補正部13は、ガンマ補正データ(テーブルデータ)を参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する処理デバイスである。
図5に、輝度劣化補正部13の内部構成例を示す。輝度劣化補正部13は、テーブルメモリ13Aと、補正実行部13Bとで構成する。
このうち、テーブルメモリ13Aは、ガンマ補正データの保存に用いられる記憶領域である。ガンマ補正データは、入力階調と出力階調を対応付けたテーブル形式で保存される。
【0024】
補正実行部13Bは、個々の入力表示信号(階調値)に対応する出力表示信号(階調値)をテーブルメモリ13Aから読み出して出力する処理デバイスである。この読み出し動作により、階調変換が実現される。
補正後の出力表示信号は、補正実行部13Bから後段回路(不図示)に出力され、最終的には各画素に対応する発光素子の発光動作を制御する。
この結果、焼き付き現象の補正動作と画質とが両立される。
【0025】
(b)補正処理動作
図6に、補正装置で実行される処理手順例を示す。
まず、劣化量算出部3が、各画素について劣化量を算出する(S1)。この処理は、入力信号である階調データに基づいて実行される。算出された補正量は、劣化量保存メモリ5に保存される。
次に、補正量決定部5が、算出された劣化量に基づいて、各画素の補正量(≦0)を決定する(S2)。前述のように、この形態例では、劣化の最も遅れた画素を基準画素とし、劣化の進行を遅らせるように(輝度を下げるように)補正量が算出される。
次に、最大値検出部9が、補正量の大きさの最大値Xを検出する(S3)。
【0026】
この後、ガンマ補正データ生成部11が、0から255−Xまでの階調で、0から255までの階調を表現できるようにガンマ補正データを生成する(P4)。生成されたガンマ補正データは、テーブルメモリ13Aに保存される(P5)。
補正実行部13Bは、入力表示信号の階調値でテーブルメモリ13Bにアクセスし、その階調値に対応する階調値を読み出す。この読み出された階調値が出力表示信号として出力される。すなわち、階調変換処理が実行される(P6)。
この階調変換処理が補正対象範囲内の全画素について繰り返し実行される。補正対象範囲は、表示デバイスの全画素(有効画像領域)であることが望ましいが、特定の画素や領域を指定することも可能である。
【0027】
(c)形態例の効果
この補正装置を用いれば、黒潰れが原理的に発生しない焼き付き補正処理を実現できる。また、この焼き付き補正処理では、原画像の有する階調情報を一様に保存できる。従って、見かけ上も画質の低下がほとんど視認されずに済む。
勿論、全画素に対する補正処理は常に継続されているので、大きな階調変換を伴う補正動作が必要になる画素数を潜在的に低減できる。また同時に、大きな階調変換を伴う補正動作の回数自体も潜在的に低減できる。このことは、画質を改善する上で効果的である。
【0028】
さらに、この補正装置は、ガンマ補正データの生成を簡単な回路構成で実現できる。すなわち、補正量の大きさの最大値は比較器を用いれば検出でき、ガンマ補正データは、簡単な演算処理やデータテーブルの選択により実現できる。
また、この補正装置は、ガンマ補正データを格納したテーブルメモリを参照するだけで、焼き付き補正処理を実現できる。従って、画素毎に補正量を演算する場合に比して、回路規模の小型化を実現できる。
【0029】
(A−2)形態例2
ここでは、算出される補正量が全て0又は正値になる場合について説明する。
(a)装置構成
図7に、補正装置の他の形態例を示す。図7には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。
補正装置21は、劣化量算出部3、劣化量保存メモリ5、補正量決定部23、最大値検出部25、ガンマ補正データ生成部27、輝度劣化補正部13を主要な構成要素とする。従って、劣化量算出部3、劣化量保存メモリ5及び輝度劣化補正部13については、形態例1と同じものを使用する。
以下、この形態例に特徴的な構成部分についてのみ説明する。
【0030】
補正量決定部23は、劣化量保存メモリ5から読み出した劣化量データに基づいて、各画素に対応する補正量を決定する処理デバイスである。すなわち、補正量決定部23は、画素間に存在する劣化量の差を解消する方向で補正量を決定する。
ただし、この形態例の場合、最も劣化の進んだ画素を基準画素とし、他の画素の劣化量が基準画素の劣化量に近づくように補正量を決定する手法を適用する。すなわち、基準画素以外の画素は原画像よりも輝度を上げるように補正量を決定する手法を適用する。この点が形態例1との違いである。
もっとも、補正量が「正値」で与えられるのであれば、補正量の決定手法は問わない。この明細書で提案する技術は、補正量の決定後の処理に特徴があるためである。
【0031】
決定された補正量は、最大値決定部25に与えられる。
最大値検出部25は、補正量の大きさの最大値を検出する処理デバイスである。例えば、補正量(≧0)を全画素について比較し、その最大値Xを検出する。この形態例の場合、補正量は正値であるので絶対値を求める必要はない。
ガンマ補正データ生成部27は、最大値Xを最小出力値とし、入力表示信号の許容最大値255を最大出力値とするガンマ補正データを生成する処理デバイスである。
例えば、補正量の大きさの最大値が“15”である場合、ガンマ補正データ生成部27は、15から255までの間で、0から255までの階調が出力されるようにガンマ補正データを生成する。
【0032】
図8に、ガンマ補正データの生成イメージを示す。このうち、図8の「加算補正後階調特性」が、従来方法の特性に対応する。従来手法では、高階調部分に白潰れが発生し、原画像が有していた階調情報が失われている。
一方、図8の「ガンマ補正後階調特性」のように、加算補正後の再現可能範囲を用いて階調を再現すると、ある程度の情報の欠落は生じても、ほぼ全ての階調を再現できる。
図9に、ガンマ補正前と後の入出力特性例を示す。図9に太線で示す直線が、ガンマ補正後の入出力特性例に対応する。
ガンマ補正データ生成部27は、この太線に対応する入出力関係を、ガンマ補正データとして輝度劣化補正部13に出力する。
【0033】
(b)補正処理動作
図10に、補正装置で実行される処理手順例を示す。
まず、劣化量算出部3が、各画素について劣化量を算出する(S11)。この処理は、入力信号である階調データに基づいて実行される。算出された補正量は、劣化量保存メモリ5に保存される。
次に、補正量決定部23が、算出された劣化量に基づいて、各画素の補正量(≧0)を決定する(S12)。前述のように、この形態例では、劣化の最も進んだ画素を基準画素とし、劣化の進行を進めるように(輝度を上げるように)補正量が算出される。
次に、最大値検出部25が、補正量の大きさの最大値Xを検出する(S13)。
【0034】
この後、ガンマ補正データ生成部27が、Xから255までの階調で、0から255までの階調を表現できるようにガンマ補正データを生成する(P14)。生成されたガンマ補正データは、テーブルメモリ13Aに保存される(P15)。
補正実行部13Bは、入力表示信号の階調値でテーブルメモリ13Bにアクセスし、その階調値に対応する階調値を読み出す。この読み出された階調値が出力表示信号として出力される。すなわち、階調変換処理が実行される(P16)。
この階調変換処理が補正対象範囲内の全画素について繰り返し実行される。補正対象範囲は、表示デバイスの全画素(有効画像領域)であることが望ましいが、特定の画素や領域を指定することも可能である。
【0035】
(c)形態例の効果
この補正装置を用いれば、白潰れが原理的に発生しない焼き付き補正処理を実現できる。また、この場合も、原画像の有する階調情報を一様に保存できる。従って、見かけ上も画質の低下がほとんど視認されずに済む。
勿論、全画素に対する補正処理は常に継続されているので、大きな階調変換を伴う補正動作が必要になる画素数を潜在的に低減できる。また同時に、大きな階調変換を伴う補正動作の回数自体も潜在的に低減できる。このことは、画質を改善する上で効果的である。
【0036】
さらに、この補正装置は、ガンマ補正データの生成を簡単な回路構成で実現できる。すなわち、補正量の大きさの最大値は比較器を用いれば検出でき、ガンマ補正データは、簡単な演算処理やデータテーブルの選択により実現できる。
また、この補正装置は、ガンマ補正データを格納したテーブルメモリを参照するだけで、焼き付き補正処理を実現できる。従って、画素毎に補正量を演算する場合に比して、回路規模の小型化を実現できる。
【0037】
(A−3)形態例3
ここでは、算出される補正量が正と負の両方の値を採り得る場合について説明する。勿論、採り得る値には0も含む。
(a)装置構成
図11に、かかる場合に好適な補正装置の形態例を示す。図11も、図1との対応部分に同一符号を付して示している。
補正装置31は、劣化量算出部3、劣化量保存メモリ5、補正量決定部33、最大値検出部35、ガンマ補正データ生成部37、輝度劣化補正部13を主要な構成要素とする。従って、劣化量算出部3、劣化量保存メモリ5及び輝度劣化補正部13については、形態例1と同じものを使用する。
以下、この形態例に特徴的な構成部分についてのみ説明する。
【0038】
補正量決定部33は、劣化量保存メモリ5から読み出した劣化量データに基づいて、各画素に対応する補正量を決定する処理デバイスである。すなわち、補正量決定部33は、画素間に存在する劣化量の差を解消する方向で補正量を決定する。
ただし、この形態例では、平均輝度値を与える画素や任意に指定した画素を基準画素として使用する。このため、他の画素の劣化量が基準画素の劣化量に近づくように補正量を算出すると、必然的に正値の補正量や負値の補正量が算出される。
従って、基準画素よりも劣化量データが大きい画素については、原画像よりも輝度を下げるような補正量が決定され、基準画素よりも劣化量データが小さい画素については、原画像よりも輝度を上げるように補正量が決定される。
もっとも、この種の補正量が算出されるのであれば、補正量の決定手法は問わない。この明細書で提案する技術は、補正量の決定後の処理に特徴があるためである。
【0039】
決定された補正量と符号は、最大値決定部35に与えられる。
最大値検出部35は、補正量の大きさの最大値を検出する処理デバイスである。例えば、補正量の絶対値を全画素について比較し、その最大値Xを検出する。この形態例の場合、正値の補正量と負値の補正量の両方を含めて最も値が大きいものを求める。
なお、この最大値検出部35は、最大値Xとその符号をガンマ補正データ生成部37に出力する。
ガンマ補正データ生成部37は、最大値Xの符号に応じたガンマ補正データを選択的に生成する処理デバイスである。
【0040】
例えば、符号が負の場合には、0(ゼロ)を最小出力値とし、最大値Xを入力表示信号の許容最大値255から減算した値(=255−X)を最大出力値とするガンマ補正データを生成する。
また例えば、符号が正の場合には、最大値Xを最小出力値とし、入力表示信号の許容最大値255を最大出力値とするガンマ補正データを生成する。
従って、補正量の大きさの最大値が“15”で符号が負の場合は、0から240までの間で、0から255までの階調が出力されるようにガンマ補正データを生成する。
一方、補正量の大きさの最大値が“15”で符号が正の場合は、15から255までの間で、0から255までの階調が出力されるようにガンマ補正データを生成する。
【0041】
すなわち、ガンマ補正データ生成部37は、補正量の大きさの最も大きい方向の補正を選択する。このため、反対方向の補正が要求される画素については、単一のフレームに関する限り、劣化量が逆に拡大されおそれがある。もっとも、正方向への補正と負方向への補正は、長期的にはほぼ同じ頻度で発生すると考えられるので、本来の焼き付き補正への影響は限定的である。
むしろ、単一のフレーム内において、補正方向が揃うことで階調情報が整合的に再現され、焼き付き補正中も原画像と同等の画質を維持することができる。
ガンマ補正データ生成部37は、このように生成されたガンマ補正データを輝度劣化補正部13に出力する。
【0042】
(b)補正処理動作
図12に、補正装置で実行される処理手順例を示す。
まず、劣化量算出部3が、各画素について劣化量を算出する(S21)。この処理は、入力信号である階調データに基づいて実行される。算出された補正量は、劣化量保存メモリ5に保存される。
次に、補正量決定部33が、算出された劣化量に基づいて、各画素の補正量を決定する(S22)。この形態例では、正負両方の符号を含む補正量が算出される。もっとも、画面や補正方法によっては、符号が全て正又は負の補正量が発生される。
次に、最大値検出部35が、補正量の大きさの最大値Xを検出する(S23)。
【0043】
この後、ガンマ補正データ生成部37が、最大値Xの符号を判定する(S24)。ここで、符号が正の場合、ガンマ補正データ生成部37は、Xから255までの階調で、0から255までの階調を表現できるようにガンマ補正データを生成する(P25)。一方、符号が負の場合、ガンマ補正データ生成部37は、0から255−Xまでの階調で、0から255までの階調を表現できるようにガンマ補正データを生成する(P26)。
生成された1種類のガンマ補正データは、テーブルメモリ13Aに保存される(P27)。
【0044】
補正実行部13Bは、入力表示信号の階調値でテーブルメモリ13Aにアクセスし、その階調値に対応する階調値を読み出す。この読み出された階調値が出力表示信号として出力される。すなわち、階調変換処理が実行される(P28)。
この階調変換処理が補正対象範囲内の全画素について繰り返し実行される。補正対象範囲は、表示デバイスの全画素(有効画像領域)であることが望ましいが、特定の画素や領域を指定することも可能である。
【0045】
(c)形態例の効果
この補正装置を用いれば、黒潰れや白潰れが原理的に発生しない焼き付き補正処理を実現できる。また、この場合も、原画像の有する階調情報を一様に保存できる。従って、見かけ上も画質の低下がほとんど視認されずに済む。
勿論、全画素に対する補正処理は常に継続されているので、大きな階調変換を伴う補正動作が必要になる画素数を潜在的に低減できる。また同時に、大きな階調変換を伴う補正動作の回数自体も潜在的に低減できる。このことは、画質を改善する上で効果的である。
また、回路規模の小型化を実現できる。
【0046】
(A−4)形態例4
この形態例でも、算出される補正量が正と負の両方の値を採り得る場合について説明する。勿論、採り得る値には0も含む。
(a)装置構成
図13に、かかる場合に好適な補正装置の形態例を示す。図13も、図1との対応部分に同一符号を付して示している。
補正装置41は、劣化量算出部3、劣化量保存メモリ5、補正量決定部43、最大値検出部45、ガンマ補正データ生成部47、輝度劣化補正部49を主要な構成要素とする。従って、劣化量算出部3及び劣化量保存メモリ5については、形態例1と同じものを使用する。
以下、この形態例に特徴的な構成部分についてのみ説明する。
【0047】
補正量決定部43は、劣化量保存メモリ5から読み出した劣化量データに基づいて、各画素に対応する補正量を決定する処理デバイスである。すなわち、補正量決定部43は、画素間に存在する劣化量の差を解消する方向で補正量を決定する。
この形態例の場合も、平均輝度値を与える画素や任意に指定した画素を基準画素として使用する。このため、他の画素の劣化量が基準画素の劣化量に近づくように補正量を算出すると、必然的に正値の補正量や負値の補正量が算出される。
従って、基準画素よりも劣化量データが大きい画素については、原画像よりも輝度を下げるような補正量が決定され、基準画素よりも劣化量データが小さい画素については、原画像よりも輝度を上げるように補正量が決定される。
もっとも、この種の補正量が算出されるのであれば、補正量の決定手法は問わない。この明細書で提案する技術は、補正量の決定後の処理に特徴があるためである。
【0048】
決定された補正量と符号は、最大値決定部45に与えられる。また、符号は、輝度劣化補正部49にも与えられる。
最大値検出部45は、補正量の符号別に、補正量の大きさの最大値を検出する処理デバイスである。すなわち、最大値検出部45は、符号が負の補正量だけを対象として補正量の大きさの最大値X1を検出する処理と、符号が正の補正量だけを対象として補正量の大きさの最大値X2を検出する処理とを実行する。
この最大値検出部45は、符号別の最大値をガンマ補正データ生成部47に出力する。
ガンマ補正データ生成部47は、符号別の最大値Xに応じたガンマ補正データを生成する処理デバイスである。すなわち、2種類のガンマ補正データが生成される。
【0049】
ここで、ガンマ補正データ生成部47は、減算補正用に、0(ゼロ)を最小出力値とし、最大値X1を入力表示信号の許容最大値255から減算した値(=255−X1)を最大出力値とするガンマ補正データを生成する。
また、ガンマ補正データ生成部47は、加算補正用に、最大値X2を最小出力値とし、入力表示信号の許容最大値255を最大出力値とするガンマ補正データを生成する。
従って、負の符号用に検出された最大値X1が“15”の場合、0から240までの間で、0から255までの階調が出力されるようにガンマ補正データが生成される。
一方、正の符号用に検出された最大値X2が“15”の場合、15から255までの間で、0から255までの階調が出力されるようにガンマ補正データが生成される。
ガンマ補正データ生成部47は、このように生成された2種類のガンマ補正データを輝度劣化補正部13に出力する。
【0050】
輝度劣化補正部49は、補正量の符号を画素毎に検出し、対応するガンマ補正データ(テーブルデータ)を参照して、入力表示信号を出力表示信号に変換する処理デバイスである。
図14に、輝度劣化補正部49の内部構成例を示す。輝度劣化補正部49は、テーブルメモリ49A、49Bと、補正実行部49Cとで構成する。
このうち、テーブルメモリ49Aは、正値用に生成されたガンマ補正データの記憶領域である。また、テーブルメモリ49Bは、負値用に生成されたガンマ補正データの記憶領域である。これらのガンマ補正データは、入力階調と出力階調を対応付けたテーブル形式で保存される。
【0051】
補正実行部49Cは、個々の入力表示信号(階調値)に対応する補正量の符号が正か負かを検出する機能と、その検出結果に応じてテーブルメモリ49A又は49Bを参照して入力表示信号に対応する出力表示信号(階調値)を読み出す機能とを有する処理デバイスである。
例えば、処理対象とする入力表示信号に対応する補正量が正の場合、補正実行部49Cは、テーブルメモリ49Aを参照して出力表示信号の読み出しを行う。また例えば、処理対象とする入力表示信号に対応する補正量が負の場合、補正実行部49Cは、テーブルメモリ49Bを参照して出力表示信号の読み出しを行う。この読み出し動作により、階調変換が実現される。
補正後の出力表示信号は、補正実行部49Cから後段回路(不図示)に出力され、最終的には各画素に対応する発光素子の発光動作を制御する。
【0052】
(b)補正処理動作
図15に、補正装置で実行される処理手順例を示す。
まず、劣化量算出部3が、各画素について劣化量を算出する(S31)。この処理は、入力信号である階調データに基づいて実行される。算出された補正量は、劣化量保存メモリ5に保存される。
次に、補正量決定部43が、算出された劣化量に基づいて、各画素の補正量を決定する(S32)。この形態例では、正負両方の符号を含む補正量が算出される。もっとも、画面や補正方法によっては、符号が全て正又は負の補正量が発生される。
次に、最大値検出部45が、補正量の大きさの最大値Xを検出する(S33)。
【0053】
この後、ガンマ補正データ生成部47が、最大値Xの符号を判定する(S34)。ここで、ガンマ補正データ生成部47は、正値用としてX2から255までの階調で、0から255までの階調を表現できるようにガンマ補正データを生成する(P35)。また、ガンマ補正データ生成部47は、負値用として0から255−X1までの階調で、0から255までの階調を表現できるようにガンマ補正データを生成する(P36)。
生成された2種類のガンマ補正データは、テーブルメモリ49A及び49Bに保存される(P37)。
【0054】
補正実行部49Cは、入力表示信号に対応する補正量の符号に応じて、テーブルメモリ49A及び49Bのいずれか一方にアクセスし、入力階調値に対応する出力階調値を読み出す。この読み出された階調値が出力表示信号として出力される。すなわち、階調変換処理が実行される(P38)。
この階調変換処理が補正対象範囲内の全画素について繰り返し実行される。補正対象範囲は、表示デバイスの全画素(有効画像領域)であることが望ましいが、特定の画素や領域を指定することも可能である。
【0055】
(c)形態例の効果
この補正装置を用いれば、黒潰れや白潰れが原理的に発生しない焼き付き補正処理を実現できる。
なお、この補正装置の場合、補正方向別に、原画像の有する階調情報が一様に保存される。すなわち、1つの画面内に2種類の基準で階調情報が再現される。このため、1種類の基準を用いて階調を再現する場合に比べると画質の低下が生じるのを避け得ないが、実際上、2種類の基準のずれがわずかの場合には、1種類の基準の場合と同様の画質を実現できる。もっとも、従来技術に比べれば、この補正装置の方が階調情報を保存した画像を再現できる可能性が高い。
勿論、この補正装置の場合も、全画素に対する補正処理は常に継続されているので、大きな階調変換を伴う補正動作が必要になる画素数を潜在的に低減できる。また同時に、大きな階調変換を伴う補正動作の回数自体も潜在的に低減できる。このことは、画質を改善する上で効果的である。
また、他の形態例と同様、回路規模の小型化を実現できる。
【0056】
(A−6)形態例6
図16に、補正装置の他の形態例を示す。なお、図16には、図1との対応部分に同一符号を付して示す。補正装置51の基本的な構成及び処理動作は、形態例1の場合と同様である。
ただし、補正装置51は、各画素に対応する劣化量を、出力表示信号に基づいて算出する点で補正装置1と異なっている。この構成の違いにより、補正装置51は、実際の発光状態を劣化量の算出に直接反映することができる。
また、形態例1の場合、輝度劣化補正部13における補正効果を、劣化量に反映させる処理機能が焼き付き補正の精度を向上する上で必要になる。しかし、この補正装置51の場合には、そのような処理機能が必要なく、システム規模の削減とコストダウンを実現できる。
なお、この補正装置は、他の形態例にも同様に応用できる。
【0057】
(A−7)形態例7
図17に、補正装置の他の形態例を示す。図17にも、図1との対応部分に同一符号を付して示す。補正装置61の基本的な構成及び処理動作は、形態例1の場合と同様である。
ただし、補正装置61は、劣化量の算出に使用する入力表示信号と、焼き付き現象の補正対象とする入力表示信号とが相違する。
図17に示す入力表示信号には、自発光素子の駆動条件に関する信号であれば任意の信号を適用できる。例えば各自発光素子(画素)に対応する階調データの累積値、自発光素子の駆動電流値、自発光素子のアノード・カソード間に印加される駆動電圧値等を適用できる。
これらの信号は、いずれも自発光素子の発光輝度や劣化量を与えるパラメータとして既存の技術においても利用されている。
なお、この補正装置は、他の形態例にも同様に応用できる。
【0058】
(B)自発光装置への搭載例
図18に、焼き付き現象補正装置の自発光装置への搭載例を示す。
自発光装置71は、筐体73に焼き付き現象補正装置75と表示デバイス77を搭載する。
ここで、焼き付き現象補正装置75は、前述した形態例のいずれかに対応する。焼き付き現象補正装置75は、外部端子又は内部で発生された映像信号を入力し、補正対象画素と基準画素との間に劣化量差が発生しないように入力信号の補正動作を実行する。
【0059】
また、表示デバイス77は、表示デバイスとその駆動回路とで構成されるものとする。表示デバイスには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、PDP(プラズマディスプレイパネル)、FED(電界放出ディスプレイ)パネル、LEDパネル、CRTが用いられる。
図18の場合、自発光装置71に、焼き付き現象の補正専用の処理デバイスである焼き付き現象補正装置75が搭載されているものとして表しているが、当該機能がソフトウェア的に全て実行される場合には、これらの機能は自発光装置に搭載されたコンピュータにより実現される。
【0060】
(C)画像処理装置への搭載例
図19に、焼き付き補正装置81を搭載する画像処理装置83のシステム例を示す。画像処理装置83は、自発光型の表示装置85と有線路又は無線路を経由して接続されている。
このシステム例の場合、画像処理装置83の筐体内で焼き付き補正処理が実行される。すなわち、表示装置85に出力される画像信号は、出力インターフェースとの間に配置された焼き付き補正回路81に入力され、前述した焼き付き補正処理が実行される。
この種の画像処理装置83には、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の撮像装置(カメラユニットだけでなく、記録装置と一体に構成されているものを含む。)、コンピュータ(サーバーを含む。)、各種の情報処理端末(携帯型のコンピュータ、携帯電話機、携帯型のゲーム機、電子手帳等)、各種画像の再生装置(ホームサーバーを含む。)、画像編集装置、ゲーム機の適用が可能である。
【0061】
(D)他の形態例
(a)前述の形態例においては、補正対象とする入力信号に補正量を加減算する場合について説明した。しかし、入力信号は、他の手法を用いて補正しても良い。例えば、入力信号に補正量を乗算して入力信号の絶対値を増減する手法を採用しても良い。
(b)前述の形態例では、階調値が8ビットで与えられる(すなわち、0から255で与えられる場合について説明した。しかし、階調値を与えるビット数は8ビット以外の場合にも適用できる。
(c)前述の形態例では、表示領域の全体を処理範囲として、補正対象画素を決定する場合について説明した。
しかし、表示領域を複数のブロックエリアに分割し、各ブロックエリアについて、前述した補正技術を適用しても良い。
【0062】
(d)前述の形態例では、焼き付き現象補正装置の機能構成を説明したが、言うまでもなく、同等の機能をハードウェアとして実現することも、ソフトウェアとして実現することも可能である。
また、焼き付き現象補正装置を構成する各機能の全部をハードウェア又はソフトウェアで実現するだけでなく、その一部の機能はハードウェア又はソフトウェアを用いて実現することもできる。すなわち、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ構成としても良い。
(e)前述の形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】焼き付き現象補正装置の形態例を示す図である。
【図2】階調値と劣化率との対応関係を保持する変換テーブル例を示す図である。
【図3】補正量が全て負の場合におけるガンマ補正データの生成イメージを示す図である。
【図4】ガンマ補正後の入出力特性例を示す図である。
【図5】輝度劣化補正部の内部構成例を示す図である。
【図6】焼き付き現象の補正動作例を示すフローチャートである。
【図7】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図8】補正量が全て正の場合におけるガンマ補正データの生成イメージを示す図である。
【図9】ガンマ補正後の入出力特性例を示す図である。
【図10】焼き付き現象の補正動作例を示すフローチャートである。
【図11】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図12】焼き付き現象の補正動作例を示すフローチャートである。
【図13】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図14】輝度劣化補正部の内部構成例を示す図である。
【図15】焼き付き現象の補正動作例を示すフローチャートである。
【図16】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図17】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図18】焼き付き現象補正装置を自発光装置に搭載したシステム例を示す図である。
【図19】焼き付き現象補正装置を画像処理装置に搭載したシステム例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1、21、31、41、51、61、75、81 焼き付き現象補正装置
3 劣化量算出部
5 劣化量保存メモリ
7、23、33、43 補正量決定部
9、25、35、45 最大値検出部
11、27、37、47 ガンマ補正データ生成部
13、49 輝度劣化補正部
13A、49A、49B テーブルメモリ
13B、49C 補正実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する方法であって、
各画素に対応する補正量(≦0)を決定する処理と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する処理と、
自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成する処理と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項2】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する方法であって、
各画素に対応する補正量(≧0)を決定する処理と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する処理と、
前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成する処理と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項3】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する方法であって、
各画素に対応する補正量を決定する処理と、
前記補正量の大きさの最大値とその符号を検出する処理と、
前記符号が正の場合には、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成する処理と、
前記符号が負の場合には、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成する処理と、
生成されたガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項4】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する方法であって、
各画素に対応する補正量を決定する処理と、
補正量の符号別に、前記補正量の大きさの最大値を検出する処理と、
補正量の符号が正の画素用に、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成する処理と、
補正量の符号が負の画素用に、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成する処理と、
補正量の符号を画素毎に検出し、対応するガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項5】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置であって、
各画素に対応する補正量(≦0)を決定する補正量決定部と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、
自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする自発光装置。
【請求項6】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置であって、
各画素に対応する補正量(≧0)を決定する補正量決定部と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、
前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする自発光装置。
【請求項7】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置であって、
各画素に対応する補正量を決定する補正量決定部と、
前記補正量の大きさの最大値とその符号を検出する最大値検出部と、
前記符号が正の場合には、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成し、前記符号が負の場合には、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
生成されたガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする自発光装置。
【請求項8】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置であって、
各画素に対応する補正量を決定する補正量決定部と、
補正量の符号別に、前記補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、
補正量の符号が正の画素用に、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成し、補正量の符号が負の画素用に、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
補正量の符号を画素毎に検出し、対応するガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする自発光装置。
【請求項9】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する焼き付き現象補正装置であって、
各画素に対応する補正量(≦0)を決定する補正量決定部と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、
自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項10】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する焼き付き現象補正装置であって、
各画素に対応する補正量(≧0)を決定する補正量決定部と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、
前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正装置。
【請求項11】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する焼き付き現象補正装置であって、
各画素に対応する補正量を決定する補正量決定部と、
前記補正量の大きさの最大値とその符号を検出する最大値検出部と、
前記符号が正の場合には、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成し、前記符号が負の場合には、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
生成されたガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項12】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する焼き付き現象補正装置であって、
各画素に対応する補正量を決定する補正量決定部と、
補正量の符号別に、前記補正量の大きさの最大値を検出する最大値検出部と、
補正量の符号が正の画素用に、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成し、補正量の符号が負の画素用に、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成するガンマ補正データ生成部と、
補正量の符号を画素毎に検出し、対応するガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する輝度劣化補正部と
を有することを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項13】
各画素に対応する補正量(≦0)を決定する処理と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する処理と、
自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成する処理と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
をコンピュータに実行させることにより、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正することを特徴とするプログラム。
【請求項14】
各画素に対応する補正量(≧0)を決定する処理と、
前記補正量の大きさの最大値を検出する処理と、
前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現するガンマ補正データを生成する処理と、
前記ガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
をコンピュータに実行させることにより、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正することを特徴とするプログラム。
【請求項15】
各画素に対応する補正量を決定する処理と、
前記補正量の大きさの最大値とその符号を検出する処理と、
前記符号が正の場合には、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成する処理と、
前記符号が負の場合には、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成する処理と、
生成されたガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
をコンピュータに実行させることにより、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正することを特徴とするプログラム。
【請求項16】
各画素に対応する補正量を決定する処理と、
補正量の符号別に、前記補正量の大きさの最大値を検出する処理と、
補正量の符号が正の画素用に、前記補正量の大きさの最大値を最小出力値とし、自発光素子の駆動条件に関する入力表示信号の許容最大値を最大出力値として全表示階調を再現する第1のガンマ補正データを生成する処理と、
補正量の符号が負の画素用に、前記入力表示信号の許容最小値を最小出力値とし、前記補正量の大きさの最大値を前記入力表示信号の許容最大値から減算した値を最大出力値として全表示階調を再現する第2のガンマ補正データを生成する処理と、
補正量の符号を画素毎に検出し、対応するガンマ補正データを参照して、前記入力表示信号を出力表示信号に変換する処理と
をコンピュータに実行させることにより、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−284970(P2006−284970A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105554(P2005−105554)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】