説明

焼却灰リサイクル砂を用いた汚染水の自然浸透浄化装置及び自然浸透浄化方法

【課題】社会的問題である廃棄物の焼却灰の減量化に貢献しつつ、低コストで簡素な汚染水の自然浄化装置とその使用方法を提供することである。
【解決手段】焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターを少なくとも含むことを特徴とする汚染水の自然浸透浄化装置および自然浸透浄化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰リサイクル砂を用いた汚染水の浸透浄化装置および自然浸透浄化方法に関するもので、詳しくは、焼却灰リサイクル砂を汚染水の自然浸透浄化(ろ過)材として使用し、汚染水に含まれる濁度を低減し全リン酸の除去を行い水質改善を図る自然浸透浄化装置及び自然浸透浄化方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、もっとも一般的な水質の改善のための自然浸透浄化(ろ過)法の一つとして、活性炭をろ過材に用いる方法がある。これは、活性炭が多孔質で、100m2/g以上の大きな比表面積を有することを利用するものである。また、最近では、活性炭に代わる材料として、廃材チップから低温炭化焼成して得られる軽量多孔性木炭粒を使用して浄化する方法も考案されている(たとえば、特許文献1参照)。これらの浄化メカニズムは、大きな比表面積を有する多孔質の物性である吸着(以下、「メカニカル吸着」という。)を利用したものと考えられている。
【0003】
これら従来の汚染水の自然浸透浄化法は、わが国で年間約5千万トン排出される廃棄物の焼却灰を利用するものでなく、資源のリサイクル化という面では、十分ではなかった。
【0004】
一方、廃棄物の焼却灰を焼成リサイクルした人工砂については、道路の路盤材などの土木資材としてリサイクルできることについて、土木学会誌に報告がある(非特許文献1参照)。しかしながら、これを水質改善のためのろ過材として利用することは、今までなかった。そもそも、廃棄物の焼却灰は、活性炭や木炭粒のような大きな比表面積を有していないことから、このようなものをろ過材として使用するということも知られていなかった。ちなみに、活性炭は一般に100m2/g以上の比表面積を有するのに対し、廃棄物の焼却灰は、0.3m2/g程度であり、約300分の1である。
【0005】
本発明は、資源のリサイクル化を実現しつつ、汚染水の水質を改善するという観点から、廃棄物の焼却灰をろ過材として使用した場合に、大きな水質改善効果を有することに着目して、なされたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2006−15256
【非特許文献1】花木和文ら、「一般廃棄物焼却灰を焼成リサイクルした人工砂(アークサンド)の特徴」、第49回地盤工学シンポジウム、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、廃棄物の焼却灰をろ過材として利用することにより、社会的問題である廃棄物の減量化に貢献しつつ、低コストで簡素な汚染水の自然浸透浄化装置と自然浸透浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、少なくとも、焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターを含むことを特徴とする汚染水の自然浸透浄化装置とした。
【0009】
この装置を使用することにより、汚染水の濁度の改善および全リン酸の減少を図ることができ、低コストで簡素な構成の自然浸透浄化装置を提供できる。また、埋立廃棄物の約6割を占め、廃棄物として捨てられている焼却灰をリサイクルできる。
【0010】
本発明の浄化のメカニズムについては、焼却灰リサイクル砂に負うものであるが、前述のように焼却灰リサイクル砂の比表面積は活性炭の比表面積の300分の1しかないため、メカニカル吸着によるろ過だけでは考えられない。おそらく、このメカニズムは、焼却灰に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのプラスイオンを有する鉱物によるイオン吸着とメカニカル吸着の両方が働き、相乗効果により、大きな浄化能力を示すものと考えられる。すなわち、プラスイオンを有する焼却灰リサイクル砂がマイナスイオンを有する懸濁粒子やリン酸をイオン結合で捕獲したと考えられる。
【0011】
本発明で用いられる焼却灰リサイクル砂は、廃棄物を焼成法で造粒して製造された人工砂のことをいう。たとえば、次のような製法で作られた砂状物が該当する。すなわち、一般廃棄物を焼却した後に、生じた焼却灰を磁力選別および粒度調整をし、重金属を不溶化・無害化するためにリン酸カルシウウムを主成分として加えた後、ロータリーキルンで材料温度が1000℃以上かつ溶融しないように焼成を行う。その後、ロータリークーラーで冷却し、得られた焼成灰をセメントと同程度まで微粉砕する。その後、消石灰、活性炭を吹き込み酸性ガスの中和とダイオキシン類の吸着を行う。さらに、セメントを乾燥重量比で10〜30%と、水、重金属安定剤(主成分は硫酸鉄)を加え、造粒機で造粒し、養生した後に得られる砂状物である。このような重金属に対する処理をしているため、この人工砂は環境庁告示第46号の土壌汚染環境基準を満足している。また、造粒機の調整により、いろいろな種類の粒度の人工砂を得ることができる。
【0012】
また、焼却灰リサイクル砂フィルターは、堆積させた焼却灰リサイクル砂の厚さが60cm以上であり、かつ、前記焼却灰リサイクル砂の粒度が最大10mmであることが好ましい。なお、堆積させた焼却灰リサイクル砂の厚さが80cm以上あると、さらに、好ましい。
【0013】
堆積させた焼却灰リサイクル砂の厚さ(浸透距離)が60cm以上であり、かつ、焼却灰リサイクル砂の粒度が最大10mmであると、本発明の自然浸透浄化装置の使用により、汚染水の濁度をほぼ0にすることができる。
【0014】
さらに、焼却灰リサイクル砂フィルターは、複数の最大粒度の焼却灰リサイクル砂を堆積させて構成されることが好ましい。
【0015】
複数の最大粒度の焼却灰リサイクル砂を用いると、汚染水を繰り返しろ過しても、目詰まりがおきないようにすることができる。
【0016】
さらに、礫または砂からなる第1フィルターと、この第1フィルターの下部に焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターと、この焼却灰リサイクル砂フィルターの下部に礫または砂からなる第3フィルターとを積層させて構成されることが好ましい。
【0017】
第1フィルターは、礫または砂からなるので、汚染水を浸透させる際の目詰まりが防止され、第3フィルターは、礫または砂からなるので、浸透水が効率的に採取できる。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターの上部から汚染水を供給し、自然浸透させ、前記焼却灰リサイクル砂フィルターの下部から浸透水を取り出すことを特徴とする汚染水の自然浸透浄化方法とした。
【0019】
自然浸透させることにより、汚染水の濁度および全リン酸に関し、水質を改善することができる。
【0020】
この場合、礫または砂からなる第1フィルターの上部から汚染水を供給し、この第1フィルターから順次焼却灰リサイクル砂フィルターを通して礫または砂からなる第3フィルターまで汚染水を自然浸透させ、この第3フィルターの下部から浸透水を取り出すことが好ましい。
【0021】
汚染水を礫または砂からなる第1フィルターに通すことにより、目詰まりが防止され、礫または砂からなる第3フィルターを通すことにより、浸透水が効率的に採取できる。
【0022】
さらに、上記課題を解決するために、焼却灰リサイクル砂を堆積させ自然浸透浄化材として用いた汚染水の浸透浄化方法であって、焼却灰リサイクル砂の最大粒度は10mm以下であり、浸透距離と濁度の関係は、おおよそ下記式で示されることを特徴とする汚染水の浸透浄化方法:
Ps=117・exp(-5.7665x)、ここに、Ps:濁度(mg/l)、x:浸透距離(m)、
とした。
【0023】
この汚染水の浸透浄化方法により、浸透距離を60cmとすると、初期濁度が117mg/l以下であれば、濁度は、ほぼ0とすることができる。
【0024】
さらに、焼却灰リサイクル砂を堆積させ自然浸透浄化材として用いた汚染水の浸透浄化方法であって、焼却灰リサイクル砂の最大粒度は10mm以下であり、浸透距離と全リン酸の関係は、おおよそ下記式で示されることを特徴とする汚染水の浸透浄化方法:
P=0.66・exp(-4.2x)、ここに、P:全リン酸(mg/l)、x:浸透距離(m)、
とした。
【0025】
この汚染水の浸透浄化方法により、浸透距離を80cmとすると、初期全リン酸濃度が0.66mg/l以下であれば、全リン酸は、初期濃度の10%まで減少させることができ、0.1mg/l以下にすることができる。
【0026】
さらに、焼却灰リサイクル砂を堆積させ自然浸透浄化材として用いた汚染水の浸透浄化方法であって、焼却灰リサイクル砂の最大粒度は10mm以下であり、浸透距離と濁度及び全リン酸の関係は、それぞれおおよそ下記二式で示されることを特徴とする汚染水の浸透浄化方法:
Ps=117・exp(-5.7665x)、P=0.66・exp(-4.2x)、ここに、Ps:濁度(mg/l)、P:全リン酸(mg/l)、x:浸透距離(m)、
とした。
【0027】
この汚染水の浸透浄化方法により、浸透距離を80cmとすると、初期濁度が117mg/l以下であれば、濁度は、ほぼ0とすることができるだけでなく、初期全リン酸も濃度も0.66mg/l以下であれば、全リン酸も、初期濃度の10%以下程度まで減少させることができ、具体的には0.1mg/l以下まで減少させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る焼却灰リサイクル砂を用いた汚染水の自然浸透浄化装置及び自然浸透浄化方法により、汚染水の濁度はほぼゼロとなり、全リン酸も10%以下程度まで低下させることができ、全リン酸濃度も0.1mg/l以下まで減少させることができる。したがって、低コストで簡素な構成の自然浸透浄化装置を提供できる。
【0029】
また、本発明に係る焼却灰リサイクル砂を用いた汚染水の自然浸透浄化装置は、焼却灰リサイクル砂をろ過材として利用しているので、社会的問題となっている廃棄物を焼却した場合に残る埋立て廃棄物を減量することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(実施例1)
本発明の自然浸透浄化装置の実施例1および比較例1の構成をそれぞれ、図2(a)および(b)に示す。本装置10は、アクリル製の円筒部6の最上部に第1フィルター1として礫フィルターがあり、この下部に焼却灰リサイクル砂フィルター2として焼却灰リサイクル砂を堆積させ、さらにその下部に第3フィルター3として礫フィルターを積層させて構成される。
【0032】
この円筒部6は、内径5cm、高さ100cmの透明のアクリル製である。第1フィルター1である礫フィルターは、目詰まり防止のために用いられるもので、礫により構成される。礫は9.5mmふるいと4.75mmふるい間に残留した川砂を用いている。礫は同じ機能を果たすものであれば、砂であってもよい。第1フィルター1の厚さは適宜であるが、本装置では、約2cmである。
【0033】
この第1フィルター1の下部には、焼却灰リサイクル砂フィルター2である焼却灰リサイクル砂からなる層を設けている。このリサイクル砂の厚さは80cmである。砂の粒度は最大径が10mmであり、図1で示す粒度分布(平均粒径0.8mm、粒径範囲0.07〜10mm)を持つAf砂を用いている。このAf砂の粒度は、地盤材料の分類法(JGS0051)で分類すると、分類記号〔S〕、分類名〔砂〕、粒度の分布状態を示す均等係数Uc=3.1であり、均等な砂といえる。
【0034】
この焼却灰リサイクル砂フィルター2の下部には、第3フィルター3として礫フィルターの層が積層されている。第3フィルター3は、浸透水を採集するために用いられるもので、礫により構成される。礫は、第1フィルターと同様、9.5mmふるいと4.75mmふるい間に残留した川砂を用いている。礫は砂であってもよい。この厚さは適宜であるが、本装置では、約2cmである。
【0035】
本実施例1の自然浸透浄化装置10に、第1フィルター1の上部から汚染水を自然浸透させ、焼却灰リサイクル砂フィルター2を通して、第3フィルター3の下部から得られた浸透水の濁度、全リン酸の濃度、および全窒素の濃度を測定した。また、比較のため、比較例1として、焼却灰リサイクル砂フィルター2に代えて図1で示す粒度分布(平均粒径0.6mm、粒径範囲0.2〜2mm)を有する川砂を80cm詰めた第2フィルター7を用意し、同様に汚染水を自然浸透させた。この川砂の粒度は、地盤材料の分類法(JGS0051)で分類すると、分類記号〔S〕、分類名〔砂〕、粒度の分布状態を示す均等係数Uc=2.1であり、均等な砂といえる。
【0036】
その測定結果を表1及び図8に示す。図8より、川砂に比較して、焼却灰リサイクル砂を用いた場合の濁度に対する浸透浄化の効果が明らかである。また、表1に示されるように、本実施例1の自然浸透浄化装置10では、浸透水の濁度は0.5mg/lであり、ほぼ0mg/lと評価できる。全リン酸(PO4)は環境基準Vの0.1mg/lを下回る0.085mg/lとなり、汚染水と比べて、一桁小さい値となっている。一方、比較例1では、濁度および全リン酸に改善がみられるものの、実施例1には及ばない。したがって、実施例1は、汚染水の濁度と全リン酸について、優れた水質改善効果を有することが示された。全窒素に関しては、大きな変化はなかった。
【0037】
なお、環境基準Vは、環境省で定めたもので、人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として、終局的に、大気、水、土壌、騒音をどの程度に保つかという目標を定めたものである。この中で、水質汚濁に関わる環境基準として、「工業用水2級、環境保全」の項目においては、全リン酸は0.1mg/l以下となっている。
【表1】

【0038】
比較例1の川砂を用いた場合と比較しても、濁度と全リン酸において、焼却灰リサイクル砂を用いた本実施例1の自然浸透浄化装置10は、浄化能力が優れていることがわかった。
【0039】
なお、窒素に関しては、実施例1、比較例1とも浄化効果はほとんど示されなかった。この原因については、表1の汚染水の採取は12月下旬の外気温が0℃前後の時に行われたため、有機窒素物は微生物による分解がほとんどされず、汚染水に含まれている窒素の形態が無機窒素状態になっていなかったためと考えられる。この結果、焼却灰リサイクル砂のイオン結合による捕獲ができなかったものと考えられる。したがって、未分解窒素状態での窒素の捕獲は、主としてメカニカルな吸着によることとなり、この場合でも汚染水の全窒素を低下させるためには、浸透距離(焼却灰リサイクル砂の厚さ)を長くするか、浸透速度を遅くする必要がある。
【0040】
次に、本実施例1の自然浸透浄化装置10の汚染水の浸透距離(焼却灰のリサイクル砂の厚さ)と浄化の関係を調べた。この本実施例1のリサイクル砂の厚さを80cm、60cm、40cm、20cmと変えて濁度と全リン酸の値を測定した。
【0041】
この結果を、濁度について図3に、全リン酸について図4に、示す。
【0042】
まず、濁度については、図3に示す各値から、浸透距離と濁度の関係は、次の指数関数で整理できる。
【0043】
Ps=P0s・exp(-k0x) (式1)
【0044】
ここで、Ps:濁度(mg/l)、P0s:初期濁度(mg/l)、x:浸透距離(m)、k0:係数である。
【0045】
この浸透浄化装置10で得られた図3に示す各値に(式1)を適用すると、次のようになる。
【0046】
Ps=117・exp(-5.7665x) (式2)
【0047】
この(式2)は、本実施例1の浸透浄化装置10の濁度低減の性能を表すものである。この(式2)から、浸透距離xが60cmあれば、初期濁度が117mg/l以下であることを条件に、ほぼ濁度は0となると評価できる。
【0048】
なお、(式1)を透水係数kと浸透時間tで表すと、x=kitであるので、(式3)のように浸透時間tで濁度を予測することもできる。
【0049】
Ps=P0s・exp(-k0kit) (式3)
【0050】
ここで、k0:係数、k:透水係数(m/h)、i:動水勾配、t:時間(h)である。
【0051】
次に、全リン酸については、図4に示す各値から、浸透距離と全リン酸の関係は、濁度について行ったのと同様に、次の指数関数で整理できる。
【0052】
P=P0・exp(-k0x) (式4)
【0053】
ここで、P:全リン酸(mg/l)、P0:初期全リン酸(mg/l)、x:浸透距離(m)、k0:係数である。
【0054】
本実施例1の浸透浄化装置10で得られた図4に示す各値に(式4)を適用すると、次のようになる。
【0055】
P=0.66・exp(-4.2x) (式5)
【0056】
この(式5)は、本実施例1の浸透浄化装置の全リン酸除去に対する性能を表すものである。この(式5)から浸透距離xが80cmあれば、全リン酸の濃度は約10%まで減少させることができると評価できる。また、浸透距離xが50cmあれば、初期全リン酸濃度が0.66mg/l以下であることを条件に、全リン酸の濃度を0.1mg/l以下まで減少させることができる。
【0057】
また、(式4)を透水係数kと浸透時間tで表すと、濁度と同様に、(式6)のように浸透時間tで全リン酸を予測することもできる。
【0058】
P=P0・exp(-k0kit) (式6)
【0059】
ここで、k0:係数、k:透水係数(m/h)、i:動水勾配、t:時間(h)である。
【0060】
(実施例2、3)
本発明の自然浸透浄化装置20の実施例2および3の構成を図5に示す。本装置20は、アクリル製の円筒部26内の最上部に第1フィルター1として砂フィルターを設け、この下部に焼却灰リサイクル砂フィルター2として焼却灰リサイクル砂を堆積させ、さらにその下部に第3フィルター3として砂フィルターを積層させて構成される。
【0061】
この円筒部26は、直径30cm、高さ100cmの透明のアクリル製である。第1フィルター1である砂フィルターを円筒部26の最上部に設けている。この第1フィルター1は、目詰まり防止のために用いられるもので、たとえば川砂により構成される。砂は礫であっても、同じ機能を果たすものであれば差し支えない。第1フィルター1の厚さは適宜であるが、本装置では、約2cmである。
【0062】
この第1フィルター1の下部には、焼却灰リサイクル砂フィルター2である焼却灰リサイクル砂からなる層が積層されている。このリサイクル砂の層は厚さ80cmである。実施例1と異なるのは、粒度の異なる砂を2層用いている点である。第1フィルター1の直下には図1で示す粒度分布を有するAc砂(平均粒径3.5mm、粒径範囲0.2〜25mm)層21があり、その下に同じく図1で示す粒度分布を有するAf砂(平均粒径0.8mm、粒径範囲0.07〜10mm)層22がある。Ac砂は、比較的粗い砂であり、Af砂は比較的細かい砂である。実施例2として、Af砂層22を68cmとし、その上のAc砂層21を12cmとしたものと、実施例3として、Af砂層22を25cmとし、その上のAc砂層21を55cmとしたものの2種類とした。比較例2として、第2フィルター12について、焼却灰リサイクル砂に代えて、図1で示す粒度分布(平均粒径0.6mm、粒径範囲0.2〜2mm)を有する川砂だけの層を80cmとしたものと比べた。
【0063】
なお、このAf砂の粒度は、実施例1と同様、地盤材料の分類法(JGS0051)で分類すると、分類記号〔S〕、分類名〔砂〕、粒度の分布状態を示す均等係数Uc=3.1であり、均等な砂といえる。
【0064】
また、Ac砂の粒度も、同じく地盤材料の分類法(JGS0051)で分類すると、分類記号〔GS〕、分類名〔砂質礫〕、粒度の分布状態を示す均等係数Uc=3.1であり、均等な砂といえる。
【0065】
さらに、川砂の粒度も、同じく地盤材料の分類法(JGS0051)で分類すると、分類記号〔S〕、分類名〔砂質礫〕、粒度の分布状態を示す均等係数Uc=2.1であり、均等な砂といえる。
【0066】
この焼却灰リサイクル砂フィルター2の下部には、第3フィルター3として砂フィルターの層が積層されている。第3フィルター3は、浸透水を採集するために用いられるもので、川砂により構成されるものである。この厚さは適宜であるが、本装置20では、約2cmである。
【0067】
この実施例2、3及び比較例2に対して上部の貯水タンク23から汚染水を流して自然浸透させ、浸透水を貯水槽24に集め、貯水タンク23の汚染水がなくなると、ポンプで貯水タンク23に浸透水を汲み上げ再度自然浸透させた。この操作を10回繰り返した。浸透距離は1回の自然浸透浄化では、80cmであり、n回行った際の浸透距離は、80cm×nである。なお、浸透速度は、おおよそ8.5m/dayである。
【0068】
実施例2,3及び比較例2の浸透水の濁度と全リン酸について、測定した結果を、それぞれ、図6と図7に示す。図6に示されるように、濁度については、実施例2および3のいずれも浸透距離が80cmでほぼ0mg/lと評価できる。浸透距離が80cmまでの濁度と浸透距離の関係は、実施例1で導出した(式2)に沿っていると考えられる。(式2)の場合も、浸透距離80cmで濁度が0と評価できるからである。
【0069】
これに対して、比較例2の焼却灰リサイクル砂フィルター2に川砂を用いた場合は、浸透距離が80cmを越え、800cmになっても、濁度の値は6mg/l以下にならなかった。この結果から、本発明の実施例2、3の自然浸透浄化装置20は、比較例2の川砂を用いたものに比較して、濁度の改善が顕著である。すなわち、懸濁物を吸着する能力が高いことが示された。なお、実施例2と3では、顕著な違いはなかった。
【0070】
この実施例2、3では、図7に示されるように、全リン酸(PO4)はおおむね0.08〜0.10mg/lまで低減され、環境基準Vの0.1mg/lを下回ることがわかった。
【0071】
本発明の浸透浄化装置10、20では、濁度および全リン酸の点で、汚染水の浄化に優れていることが示された。したがって、湖沼に流入する畔や小川に本発明の浸透浄化装置10、20を設ければ、その水質の改善に大いに役立つであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に用いられる焼却灰リサイクル砂及び比較例で用いた川砂の粒度分布を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の構成と比較例1の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1と比較例1の濁度低減特性を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1と比較例1の全リン酸低減特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例2,3と比較例2の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例2,3および比較例2の繰り返し浄化した場合の濁度低減特性を示す図である。
【図7】本発明の実施例2,3および比較例2の繰り返し浄化した場合の全リン酸低減特性を示す図である。
【図8】本発明の実施例による浸透浄化結果を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0073】
1:第1フィルター
2:焼却灰リサイクル砂フィルター
3:第3フィルター
4:汚染水
5:浸透水
6:円筒部
7:第2フィルター
10:自然浸透浄化装置の一例
12:焼却灰リサイクル砂フィルター
20:自然浸透浄化装置の他例
21:Ac砂層
22:Af砂層
23:貯水タンク
24:貯水槽
26:円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターを含むことを特徴とする汚染水の自然浸透浄化装置。
【請求項2】
前記焼却灰リサイクル砂フィルターは、堆積させた前記焼却灰リサイクル砂の厚さが80cm以上であり、かつ、前記焼却灰リサイクル砂の粒度が最大10mmであることを特徴とする請求項1に記載の汚染水の自然浸透浄化装置。
【請求項3】
前記焼却灰リサイクル砂フィルターは、複数の最大粒度の焼却灰リサイクル砂を堆積させて構成されることを特徴とする請求項1に記載の汚染水の自然浸透浄化装置。
【請求項4】
礫または砂からなる第1フィルターと、この第1フィルターの下部に焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターと、この焼却灰リサイクル砂フィルターの下部に礫または砂からなる第3フィルターとを積層させて構成されることを特徴とする汚染水の自然浸透浄化装置。
【請求項5】
少なくとも、焼成により造粒された焼却灰リサイクル砂を堆積させた焼却灰リサイクル砂フィルターの上部から汚染水を供給し、自然浸透させ、前記焼却灰リサイクル砂フィルターの下部から浸透水を取り出すことを特徴とする汚染水の自然浸透浄化方法。
【請求項6】
礫または砂からなる第1フィルターの上部から汚染水を供給し、この第1フィルターから順次焼却灰リサイクル砂フィルターを通して礫または砂からなる第3フィルターまで汚染水を自然浸透させ、この第3フィルターの下部から浸透水を取り出すことを特徴とした汚染水の自然浸透浄化方法。
【請求項7】
焼却灰リサイクル砂を堆積させ自然浸透浄化材として用いた汚染水の浸透浄化方法であって、前記焼却灰リサイクル砂の最大粒度は10mm以下であり、浸透距離と濁度の関係は、おおよそ下記式で示されることを特徴とする汚染水の自然浸透浄化方法:
Ps=117・exp(-5.7665x)
ここに、Ps:濁度(mg/l)、x:浸透距離(m)。
【請求項8】
焼却灰リサイクル砂を堆積させ自然浸透浄化材として用いた汚染水の浸透浄化方法であって、前記焼却灰リサイクル砂の最大粒度は10mm以下であり、浸透距離と全リン酸の関係は、おおよそ下記式で示されることを特徴とする汚染水の自然浸透浄化方法:
P=0.66・exp(-4.2x)
ここに、P:全リン酸(mg/l)、x:浸透距離(m)。
【請求項9】
焼却灰リサイクル砂を堆積させ自然浸透浄化材として用いた汚染水の浸透浄化方法であって、前記焼却灰リサイクル砂の最大粒度は10mm以下であり、浸透距離と濁度及び全リン酸の関係は、それぞれおおよそ下記二式で示されることを特徴とする汚染水の自然浸透浄化方法:
Ps=117・exp(-5.7665x)
P=0.66・exp(-4.2x)
ここに、Ps:濁度(mg/l)、P:全リン酸(mg/l)、x:浸透距離(m)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−11883(P2009−11883A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173197(P2007−173197)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【出願人】(505068365)初雁興業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】