説明

焼結原料装入用シュートのクリーナ

【課題】焼結原料を装入するシュート面に摩耗等による変形が生じても、シュート面全体に均一に押し付けて付着物を除去できるクリーナを提供する。
【解決手段】焼結機1において、焼結原料7を装入シュート11を介してパレット台車2上に装入する際に、焼結原料7を滑らせる装入シュート11のシュート面12に付着した付着物を除去するクリーナ1であって、シュート面12の上部側に接触する上部スクレーパ22と、シュート面12の下部側に接触する下部スクレーパ23を有し、上部スクレーパ22および下部スクレーパ23は、それぞれの断面方向下面22b、23bがシュート面12に押し付けられ、下部スクレーパ23は、上部スクレーパ22に対して互いの下面同士の高さおよび角度が可変となるように連結されるとともに、シュート面12に向けて弾性を有して取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機において焼結原料をパレット上に装入する際、焼結原料を滑らせる傾斜式の装入シュートの表面の付着物を除去する焼結原料装入用シュートのクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉鉄鋼業で用いられるDL式焼結機1は、図1に示すように、長手方向に多数個のパレット台車2が連結されて矢印の長手方向に移動可能な一連のパレットP、および、一連のパレットPの下方に固定して設けられた複数個のウインドボックス3からなる吸気手段を有する。図1に示すように、一連のパレットPは、エンドレスに焼結機1内を周回する。ウインドボックス3は、吸気管4を介してブロア(図示省略)で吸気する。一連のパレットPの周回中に、各パレット台車2に、ホッパ5から装入シュート11を介してコークス粉を含む焼結原料が供給され、積載される。その焼結原料層の表面が点火炉6で着火され、ウインドボックス3を介して吸気される。吸気されることにより、焼結原料層の上側の表面から下方に燃焼帯を進行させ、焼結鉱を連続的に製造する。
【0003】
このような焼結機1において、パレット台車2に焼結原料を装入する際、装入された焼結原料層の厚さを一定に保ち、表面の凹凸を少なくするとともに、密度や粒度等を均一になるように調整することは、焼結鉱の生産性や品質安定の上から、極めて重要である。
【0004】
図2に示すように、傾斜式の装入シュート構造を有する原料装入部10において、ホッパ5内の焼結原料7は、ロータリーフィーダ8により切り出されて装入シュート11上を滑ってパレット台車2に装入される。
【0005】
その際、焼結原料7が粉状であり水分を7〜10%程度含有しているため、シュート面12に焼結原料7が付着しやすい。この付着物が成長すると、均一な原料の流れが阻害され、それにより焼結鉱の歩留が低下する。
【0006】
従来、シュート面の付着物を除去して焼結原料の装入を安定させるために、クリーナが設けられている。例えば特許文献1には、クリーナ機能を長時間維持させることができるクリーナを備えた原料装入装置が、特許文献2には、スローピングシュート構造およびスリットバー構造において、原料装入を安定化させる原料装入方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6−3355号公報
【特許文献2】特開平6−58677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、基部に支点を有する片持ち構造の従来のクリーナは、下面が、装入シュートのシュート面の長手方向に沿って延びている。そして、基端に設けたばね等により、クリーナの下面が装入シュートの表面に押し付けられて、例えば装入シュートの幅方向に往復移動しながら、シュート面の付着物を掻き落とす。ところが、シュート面は、例えば幅5m、長さ2m程度の大きさがあり、シュート面に摩耗等による変形が発生すると、シュート面とクリーナとの間に隙間が生じる部分がある。すなわち、例えば図6(a)に示すように、シュート面12の下部側にクリーナ51を強く押し付けると、クリーナ51の基端側が浮き上がり、逆に、図6(b)に示すように、シュート面12の上部側に強く押し付けると、クリーナ51の先端側が浮き上がる。いずれの場合も、クリーナ51のシュート面12への接触が、原料流れ方向に沿って不均一となり、クリーナ51が浮き上がって形成された隙間に付着物52が発生し、この付着物52を完全に除去することができずに、焼結原料の装入が不均一となって、焼結鉱の歩留が低下するという問題が起こる。
【0009】
本発明の目的は、焼結原料を装入する際に焼結原料を滑らせるシュート面に、摩耗等による変形が生じても、シュート面に不均一に接触するのを抑制し、シュート面上の付着物を除去できるクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は、焼結機において、焼結原料を装入シュートを介してパレット台車上に装入する際に、前記焼結原料を滑らせる前記装入シュートのシュート面に付着した付着物を除去するクリーナであって、前記シュート面の上部側に接触する上部スクレーパと、前記シュート面の下部側に接触する下部スクレーパを有し、前記上部スクレーパおよび下部スクレーパは、それぞれの断面方向下面が前記シュート面に押し付けられ、前記下部スクレーパは、前記上部スクレーパに対して互いの下面同士の高さおよび角度が可変となるように連結されるとともに、前記シュート面に向けて弾性を有して取り付けられていることを特徴とする焼結原料装入用シュートのクリーナを提供する。
【0011】
前記下部スクレーパと前記上部スクレーパとを連結し、縦断面方向上下に長い複数の長孔が前記下部スクレーパの長手方向に並列して形成されたプレートが、前記下部スクレーパおよび前記上部スクレーパの縦断面方向左右両側に配置され、
前記プレートは、前記上部スクレーパに対して位置が固定され、前記下部スクレーパに対しては、前記長孔に挿通されたボルトで上下移動可能に取り付けられ、
上端が前記プレートに位置固定され上下方向に弾性を有するばねの下端が、前記下部スクレーパに連結されることにより、前記下部スクレーパが前記シュート面に押し付けられてもよい。この場合、前記ばねは、前記下部スクレーパの長手方向に並列して2本設けられていることが好ましい。
【0012】
複数のスクレーパが、互いの下面同士の高さおよび角度が可変となるように上下方向に連結されるとともに、前記シュート面に向けて弾性を有して取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装入シュートのシュート面が摩耗等により変形しても、上部スクレーパと下部スクレーパとが互いに独立してシュート面に沿い、シュート面に不均一に押し付けられる部分が発生するのを抑制して、シュート面の付着物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる焼結機の概要を示す側面図である。
【図2】焼結機の原料装入部を示す側面図である。
【図3】本発明のクリーナを示す側面図である。
【図4】図3のA部の、プレートの内側の構造を示す拡大図である。
【図5】図4のB−B線から見た断面図である。
【図6】従来のクリーナとシュート面との接触状態を説明する側面図であり、(a)はクリーナの先端側を強く押し付けた場合、(b)はクリーナの基端側を強く押し付けた場合である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明にかかる焼結機の概要を示す。焼結機1内において、長手方向に多数個、例えば数百個のパレット台車2が連結されて矢印の長手方向に移動可能な一連のパレットPが、エンドレスに周回している。一連のパレットPの下方に固定して設けられた複数個のウインドボックス3は、吸気管4を介してブロア(図示省略)で吸気される。一連のパレットPの周回中に、各パレット台車2に、ホッパ5から焼結原料が供給され、積載される。その焼結原料層の表面が点火炉6で着火され、ウインドボックス3を介して吸気される。それにより、焼結原料層の上側の表面から下方に燃焼帯を進行させ、焼結鉱を連続的に製造する。製造された焼結鉱は、パレット台車2が図1の左端の位置に到達したときに排出され、空のパレット台車2が図1の右上のホッパ5の位置に到達すると、再び焼結原料が供給される。
【0017】
図2は、焼結機1において、ホッパ5からパレット台車2に焼結原料7を装入する原料装入部10を示す。傾斜した装入シュート11を有する原料装入部10において、ホッパ5内の焼結原料7は、ロータリーフィーダ8により一定量ずつ供給され、サブゲート9から排出されて、装入シュート11上を滑ってパレット台車2に装入される。
【0018】
装入シュート11の表面であるシュート面12は、焼結原料7が付着しやすいため、クリーナ21が設けられる。クリーナ21は、適宜幅を有する板状部材の下面をシュート面12に押し付けながら、焼結原料の流れ方向である長手方向に対して垂直方向に往復移動することにより、シュート面12の付着物を掻き落とす。
【0019】
図3は、本発明のクリーナ21の例を示す。クリーナ21は、シュート面12の上部側に接触する上部スクレーパ22と、シュート面12の下部側に接触する下部スクレーパ23とを有している。上部スクレーパ22および下部スクレーパ23は、それぞれ別体で形成されている。上部スクレーパ22は、基端部に、シュート面12に対する上下方向の位置および接触角度を調整するための、弾性を有する駆動基部31を有している。駆動基部31は固定板33に対して位置および角度調整が可能であり、固定板33は図示しないクリーナ21の機構部に連結され、上部スクレーパ22は上部支点34を中心として回転可能に取り付けられている。
【0020】
上部スクレーパ22および下部スクレーパ23の接合部には、プレート24が設けられる。プレート24は、上部スクレーパ22および下部スクレーパ23の両側面を挟んで2枚取り付けられる。本発明では、2枚のプレート24に挟まれた下部スクレーパ23の基端側に、支点32を形成している。
【0021】
図4は、図3のA部の、プレート24の内側の構造を示し、図5は、図4のB−B線から見た断面である。上部スクレーパ22および下部スクレーパ23は、下部スクレーパ23の動きを妨げないように、隙間をあけて配置される。上部スクレーパ22と両側のプレート24とは、図示するように例えば3個所をボルト41等で位置固定される。プレート24には、縦断面方向に長い長孔25が3つ設けられている。3つの長孔25は、下部スクレーパ23の長手方向に並列して設けられ、下部スクレーパ23を挟む両側のプレート24を貫通するボルト42が、この長孔25に挿通される。下部スクレーパ23には、ボルト42の軸が挿通できる孔が設けられている。これにより、下部スクレーパ23は、プレート24、すなわちプレート24に固定された上部スクレーパ22に対して、縦断面方向上下に移動可能であるとともに、それぞれのスクレーパ22、23の下面22b、23b同士の角度が可変となる。
【0022】
さらに、両側のプレート24の間に、2本のボルト43が、下部スクレーパ23の長手方向に並列して設けられる。図5に示すように、ボルト43の基端は、両側のプレート24間に架設された架材26に挿通され、架材26の上側からナット44で固定される。ボルト43の先端は、下部スクレーパ23の側方および上方に配置されるコ字状部材27の上面27aに当てられる。コ字状部材27は両側のプレート24間に配置され、ボルト42の軸部が挿通できる孔が設けられている。したがって、ボルト42を介して、下部スクレーパ23とコ字状部材27が上下に連動する。ボルト42は、クリーナ21の運転開始時に、下部スクレーパ23の下面23bがシュート面12に適宜圧力で押し付けられる位置でコ字状部材27の上面27aに当たるように、ナット44で固定される。シュート面12が摩耗等により変形したときには、ナット44を回して、ボルト43先端の高さ方向の位置を調整すればよい。また、ボルト43の周囲には、ばね45が設けられる。ばね45は、架材26とコ字状部材27の上面27aの間に設けられ、下部スクレーパ23の縦断面方向に弾性を有している。
【0023】
以上の構造により、シュート面12が摩耗等で変形した際には、ばね45の弾性により下部スクレーパ23がシュート面12に押し付けられる。すなわち、下部スクレーパ23全体が縦断面方向下方に移動したり、傾いたりして、常に下部スクレーパ23の下面23bがシュート面12に押し付けられる。図4の二点鎖線は、下部スクレーパ23の移動例を示す。
【0024】
また、上部スクレーパ22および下部スクレーパ23がそれぞれシュート面12と接触する長さは、例えば図3に示すシュート面12の長手方向の長さL=700mmであって、上部スクレーパ22と下部スクレーパ23がそれぞれ1体ずつであり1個所の支点32を有している場合、L1=490〜210mm、L2=210〜490mmとすることが好ましいが、L1=350mm、L2=350mm程度とすることが最も好ましい。
【0025】
なお、支点32におけるばね45の数は2本に限らないが、1本では、シュート面12への密着が不十分であり、2本設けることにより密着度が向上する。
【0026】
さらに、本発明のクリーナ21は、上部スクレーパ22と下部スクレーパ23がそれぞれ1つずつに限らず、3つ以上の複数のスクレーパが上下に連結され、それぞれのスクレーパの間に支点32を有するものでも構わない。スクレーパの数が多いほど、すなわち支点32が多いほど、装入シュート11のシュート面12への接触長さが長くなり好ましいが、支点32が3個所を超えると、設備コストやメンテナンスの面で不利となるため、支点は3つ以下であることが好ましい。
【0027】
以上述べたように、本発明のクリーナ21は、上部スクレーパ22と下部スクレーパ23とに分け、上部スクレーパ22の高さや角度を調整する駆動基部31に加えて、下部スクレーパ23の高さや角度を調整できる支点32を設けたことにより、変形したシュート面12であっても、ばね45の作用でシュート面12に沿って密着し、クリーニング効果を向上させることができる。それにより、焼結原料7が均一にパレット台車2に装入される。実際に本発明のクリーナを用いたところ、3ヶ月間の操業で、従来よりも2〜3%程度、歩留が向上した。
【0028】
なお、本発明は、装入シュート11が1段の場合に限らず、途中にスリットを設けた2段式の装入シュートであっても、同様に適用できる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、平面上の付着物を掻き取る片持ち式クリーナに適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 焼結機
2 パレット台車
5 ホッパ
6 点火炉
7 焼結原料
11 装入シュート
12 シュート面
21 クリーナ
22 上部スクレーパ
23 下部スクレーパ
24 プレート
25 長孔
31 駆動基部
32 支点
41、42、43 ボルト
45 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機において、焼結原料を装入シュートを介してパレット台車上に装入する際に、前記焼結原料を滑らせる前記装入シュートのシュート面に付着した付着物を除去するクリーナであって、
前記シュート面の上部側に接触する上部スクレーパと、前記シュート面の下部側に接触する下部スクレーパを有し、前記上部スクレーパおよび下部スクレーパは、それぞれの断面方向下面が前記シュート面に押し付けられ、
前記下部スクレーパは、前記上部スクレーパに対して互いの下面同士の高さおよび角度が可変となるように連結されるとともに、前記シュート面に向けて弾性を有して取り付けられていることを特徴とする、焼結原料装入用シュートのクリーナ。
【請求項2】
前記下部スクレーパと前記上部スクレーパとを連結し、縦断面方向上下に長い複数の長孔が前記下部スクレーパの長手方向に並列して形成されたプレートが、前記下部スクレーパおよび前記上部スクレーパの縦断面方向左右両側に配置され、
前記プレートは、前記上部スクレーパに対して位置が固定され、前記下部スクレーパに対しては、前記長孔に挿通されたボルトで上下移動可能に取り付けられ、
上端が前記プレートに位置固定され上下方向に弾性を有するばねの下端が、前記下部スクレーパに連結されることにより、前記下部スクレーパが前記シュート面に押し付けられることを特徴とする、請求項1に記載の焼結原料装入用シュートのクリーナ。
【請求項3】
前記ばねは、前記下部スクレーパの長手方向に並列して2本設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の焼結原料装入用シュートのクリーナ。
【請求項4】
複数のスクレーパが、互いの下面同士の高さおよび角度が可変となるように上下方向に連結されるとともに、前記シュート面に向けて弾性を有して取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の焼結原料装入用シュートのクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219813(P2011−219813A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89729(P2010−89729)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】