説明

焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置

【課題】芋や米等からなる醪から効率よく焼酎を蒸留できる蒸留器を提供する。
【解決手段】横型円筒状の蒸留器本体と、該蒸留器本体に設けられ、所定の角度及び周期にて前記醪を遥動攪拌させる攪拌装置と、該攪拌装置に設けられ前記醪を加熱する加熱手段とから構成され、前記加熱手段は水蒸気による加熱であり、前記攪拌装置は、横型円筒状の蒸留器本体の軸方向中心部を貫通する中空の回動軸と、該回動軸の軸方向の所定位置に連通して接続され、複数の小孔が穿設された複数の枝管と、該枝管に設けられ、前記回動軸の回動に伴い遥動し前記醪を攪拌する攪拌板とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留器に関し、とくに焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より焼酎の製造に使用される蒸留器は、縦型円筒状の蒸留器本体の外部より蒸気供給管が挿入され、蒸留器の底部に配管固定されて、その端部の開口部より蒸気が噴出するように構成されており、蒸留器に投入された芋類、穀類からなる醪を前記蒸気により直接加熱して蒸留し、焼酎を製造するものであった。
【0003】
図5により従来の蒸留器をさらに詳細に説明すると、縦型のステンレス製蒸留器本体51の側面蒸気導入口52には蒸気供給装置(図示せず)より蒸気が導入される。蒸留器本体51には芋や米等から製造された醪53が投入され、前記蒸気導入口52から導入された蒸気によって直接加熱が行なわれ、加熱され蒸発した醪成分はスワンネック54を経由し冷却塔55内に送られ、水冷装置(図示せず)により冷却され留液(焼酎)として排出される。
【0004】
しかしながら、上記従来の蒸留器によって芋類や穀類から製造された粘度や濃度の高い醪を蒸留する場合、醪全体を所望の温度に均一に加熱するには長時間が掛かるという問題点があった。すなわち粘度や濃度の高い醪に導入された蒸気は、蒸気噴出口の周辺の醪を急速に加熱するが、蒸気噴出口から離れた位置の醪を所定の温度まで加熱するには長時間を必要とした。そして蒸留器の底部に固定された配管内に蒸気が導入されるため、配管の周囲に滞留する醪が加熱されて焦げが生じ、蒸留された焼酎に焦臭が付くという問題点も有った。
【0005】
これら問題点を解決するため、モロミ蒸留缶の底部に水蒸気配給管を配置し、その端部を蒸留缶のほぼ中央で曲立せしめかつこの水蒸気供給管の曲立端部に、両端に逆方向の水蒸気吹出管を備えた水蒸気吹出本管の中央部を回転自在に連結した焼酎モロミ蒸留用加熱装置が提案されている(特許文献1参照。)。また、蒸留缶の底部に回転自在に取り付けられた攪拌翼の回転軸の下部が上記蒸留缶の外部に設けられた駆動手段に連結され、上記攪拌翼および回転軸に蒸気通路が設けられていると共に、上記蒸留缶の底部に、蒸気を上記蒸気通路に導入する蒸気導入手段が設けられ、上記蒸気導入手段から蒸気を蒸留缶の底部に導入し上記蒸気通路を経て蒸留缶内へ吹き出すように構成された焼酎蒸留機も提案されている(特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開昭49−31898号公報
【特許文献1】実開平6−57197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献1に記載されている焼酎モロミ蒸留用加熱装置では、水蒸気の吹出しによって水蒸気吹出管が回転する構成になっており、醪(モロミ)の初期粘度、濃度によって水蒸気吹出管の回転速度が大きく変動し蒸留完了時間に差が生じるため常に均一な作業条件が得られないという問題点がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されている焼酎蒸留機は、蒸留缶の底部に設けられた攪拌翼の強制的な回転と蒸気の吹出しにより蒸留を行なうものであるが、前記吹出された蒸気と直接接触する醪は上記回転軸を中心とする環状部に位置するものに限られ、他の部位に位置する醪は、自然対流もしくは攪拌翼で生じる強制対流による加熱であるため、とくに蒸留開始時において蒸留機の底部や蒸発面に位置する醪が充分加熱されず、効果的な蒸留ができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、蒸留器に投入された発酵済み醪を短時間にしかも効率的に加熱し蒸留することができ、焦臭が付くこともなく安定した品質の焼酎が均一な作業条件でできる焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明は、発酵済み醪を投入し、加熱手段により前記醪を加熱し蒸留を行なう蒸留器であって、横型円筒状の蒸留器本体と、該蒸留器本体に設けられ、所定の角度及び周期にて前記醪を遥動攪拌する攪拌装置と、該攪拌装置に設けられ前記醪を加熱する加熱手段とから構成されることを第1の特徴とする。
【0011】
また、前記加熱手段は水蒸気による加熱であることを第2の特徴とする。
【0012】
そして、横型円筒状の蒸留器本体の長手方向中心部を貫通する中空の回動軸と、該回動軸の軸方向の所定位置に連通して接続され、複数の小孔が穿設された複数の枝管と、該枝管に設けられ、前記回動軸の回動に伴い遥動し前記醪を攪拌する攪拌板とからなり、前記水蒸気を前記回動軸の端部から導入し、前記枝管の小孔から噴出するように構成された攪拌装置であることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置は、以上のように構成されているので次のような優れた効果を有する。
(1)蒸留器に投入された発酵済み醪が、蒸留器に設けられた攪拌装置によって所定の角度及び周期で攪拌され、しかも常に水蒸気によって加熱されるため、短時間で均一な作業条件で効率よく醪を蒸留し焼酎を製造できる。
(2)横型円筒状の蒸留器であるため、醪の蒸発面の形状は略長方形となり、従来の縦型円筒状の蒸留器の蒸発面と比較し広い面積を獲保できるため、蒸発効率が高くなる。
(3)中空の回動軸と、該回動軸の軸方向の所定位置に連通して接続され、多数の小孔が穿設された複数の枝管と、該枝管に設けられ、前記回動軸の回動に伴い遥動し前記醪を攪拌する攪拌板とから構成された攪拌装置であり、醪を攪拌しながら水蒸気が前記小孔を通じて醪を加熱するため、蒸留器内の醪に温度の偏りが生じることが無く、均一な加熱が可能となり効果的な蒸留ができる。
(4)醪と接触する攪拌装置等の部材は常に可動しているため、醪が滞留して加熱され焦げを生じることが無く、蒸留後の焼酎に焦臭が付かない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明に係る蒸留器の一実施例を示す正面説明図、図2は図2のA−A線断面説明図、第3図は攪拌装置の部分拡大説明図、図4は図3の側面説明図、図5は従来の焼酎蒸留器を示す説明図である。
【実施例】
【0015】
図1、図2に示すように、本発明の焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置は、蒸留器本体1と、蒸留器本体1内に設けられた攪拌装置2とから構成され、蒸留器本体1には長手方向2箇所に蒸気排出筒3が連通して設けられ、攪拌装置2は蒸留器本体1の軸方向中心部を貫通して設けられた中空の回動軸4と、回動軸4の軸方向の所定箇所に連通して接続された枝管5と、枝管5に装着された攪拌板6とから構成されている。そして蒸留器本体1は長手方向で所定の傾斜をつけて設置される。
【0016】
蒸留器本体1は、ステンレス製で略円筒形状をしており、投入口(図示せず)より醪7が投入される。この際醪7の投入量は、回動軸4を完全に覆う位置までとされる。また蒸気排出筒3には冷却装置(図示せず)が連設し蒸留された醪7の蒸気を案内する。そして蒸留が終了した醪7の残渣(焼酎粕)は粕排出口8から排出される。
【0017】
回動軸4は、ステンレス製の円筒で形成され、蒸留器本体1の長手方向中心部を貫通して設けられており、蒸留器本体1との接合部にパッキンを介して設けられた軸受9によって軸支され、回動軸4の長手方向中央部は軸受支持体10にて支持された自動調心軸受11にて保持される。また回動軸4の一端には蒸気導入口12が設けられ、加圧水蒸気発生装置(図示せず)と連結し水蒸気を導入可能とし、他端には回動軸4を回動させる駆動機構13が設けられ、モーター等の駆動装置(図示せず)の駆動により回動軸4を所定の角度及び周期にて回動させる。そして回動軸4の軸方向の所定位置に16本のステンレス製の枝管5が連通して接続され、枝管5には複数の小孔14が穿設され前記導入された水蒸気17を噴出する。尚、小孔14の大きさ、形状、位置はとくに限定されないが、醪7の蒸発面より水蒸気17が噴出しない位置であることが望ましい。さらに枝管5には後述する攪拌板6が取り付けられ、回動軸4の回動に伴い枝管5と連動して遥動し、醪7を攪拌する。
【0018】
また、図3及び図4に示すように、攪拌装置2の枝管5には所定の角度を付けて矩形の攪拌板取付座15が複数挿通して取り付けられ、攪拌板取付座15を介して略長方形の攪拌板6がボルト16により取り付けられている。ここで攪拌板取付座15、攪拌板6、ボルト16は何れもステンレス材が使用され、攪拌板取付座15、攪拌板6の形状、取り付け角度、及び方向は蒸留器本体1の内径や投入される醪5の量により適宜選択される。また攪拌装置2の枝管5及び攪拌板6の取り付け位置、数量、角度は本実施例に限定されない。
【0019】
このように構成された本発明の焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置の作用を説明する。まず蒸留器本体1の投入口から芋類から製造された発酵済醪7を約10m投入する。次にモーター等の駆動装置によって回動軸4を回動させると同時に加圧水蒸気発生装置から水蒸気を回動軸4の蒸気導入口12から導入する。回動軸4の回動に伴い、枝管5及び攪拌板6が醪7内を遥動し攪拌を開始し、枝管5の小孔14からは水蒸気17が噴出される。ここで回動軸4の回動角度及び周期は投入された醪5の量により適宜選定されるが、回動角度は枝管5及び攪拌板6が醪7の蒸発面を超えない角度とされ、周期は略3〜6rpmが望ましい。以上の工程により、蒸留器本体1内の醪7は底部から蒸発面にいたるまで安定して攪拌と加熱が行なえ、芋類などの粘度が高い醪7であっても短時間で効率よく蒸留ができる。
【0020】
さらに、醪7と接触する攪拌装置2の各部材は常に遥動或いは回動しているため醪7が滞留して焦げを生じることもないため焼酎に焦臭も付かず、しかも枝管5及び攪拌板6は常に醪7内で遥動しているため蒸留器本体1内の蒸発面に臨む壁面には醪7の飛沫等が付着せず、蒸留器本体1のメンテナンスがし易い。
【0021】
以上、本発明による焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置によれば、芋類、穀類からなる高い粘度の醪を短時間にしかも効率的に加熱し蒸留することができ、しかも焦臭が付くこともなく安定した品質の焼酎が均一な作業条件でできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
また、本発明による焼酎蒸留器及びそれに使用する攪拌装置は、粘度の高い醪に限らず麦等を原料とする蒸留酒(ウイスキー等)の蒸留器としても好適に使用可能であり、焼酎に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る焼酎蒸留器の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面説明図である。
【図3】本発明に係る攪拌装置の部分拡大説明図である。
【図4】図3の側面説明図である。
【図5】従来の焼酎蒸留器を示す説明図である
【符号の説明】
【0024】
1、51 蒸留器本体
2 攪拌装置
3 蒸気排出筒
4 回動軸
5 枝管
6 攪拌板
7、53 醪
8 粕排出口
9 軸受
10 軸受支持体
11 自動調心軸受
12、52 蒸気導入口
13 駆動機構
14 小孔
15 攪拌板取付座
16 ボルト
17 水蒸気
54 スワンネック
55 冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵済み醪を投入し、加熱手段により前記醪を加熱し蒸留を行なう蒸留器であって、横型円筒状の蒸留器本体と、該蒸留器本体に設けられ、所定の角度及び周期にて前記醪を遥動攪拌する攪拌装置と、該攪拌装置に設けられ前記醪を加熱する加熱手段とから構成される焼酎蒸留器。
【請求項2】
前記加熱手段は水蒸気による加熱であることを特徴とする請求項1記載の焼酎蒸留器。
【請求項3】
請求項1記載の攪拌装置であって、横型円筒状の蒸留器本体の長手方向中心部を貫通する中空の回動軸と、該回動軸の軸方向の所定位置に連通して接続され、複数の小孔が穿設された複数の枝管と、該枝管に設けられ、前記回動軸の回動に伴い遥動し前記醪を攪拌する攪拌板とからなり、前記水蒸気を前記回動軸の端部から導入し、前記枝管の小孔から噴出するように構成されたことを特徴とする攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−340690(P2006−340690A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171374(P2005−171374)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(505218926)向陽鉄工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】