説明

焼酎蒸留廃液の保存方法

【課題】 焼酎製造工程で発生する焼酎蒸留廃液の処理迄に、或いは利用する迄に長期間要しても、焼酎蒸留廃液が悪臭を発生することなく、オゾンによる焼酎蒸留廃液の分解等により焼酎蒸留廃液が変質することなく、長期間保存できる焼酎蒸留廃液の保存方法を提供する。
【解決手段】 焼酎蒸留廃液を貯留しているタンク内の上部気相部へオゾンガスを充填することにより、焼酎蒸留廃液を保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼酎製造工場から発生する焼酎蒸留廃液をタンク等の容器内に保存する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎製造工程でモロミからエタノールを主成分とする揮発成分を蒸留除去してなる残渣は、90%以上の水分を含む焼酎蒸留廃液(別名、蒸留粕、蒸留残渣)と呼ばれている。この焼酎蒸留残渣には、不溶性固形分の他に、有機物、ミネラル分が含まれるため、腐敗が早く強い悪臭を発生させるため、1カ月以上の保存が困難である。このため、焼酎製造工程で発生した焼酎蒸留廃液は直ぐに処理する必要がある。
平成17酒造年度において鹿児島県だけで50万tほど焼酎蒸留廃液が発生しており、このような大量の焼酎蒸留廃液は、処理プラント等による無害化処理(例えば、特開平11−319860号公報、特開2005−305398号公報、WO2005/080275公報)、農地還元、家畜の飼料等による利用がなされている。
前記した悪臭発生の問題を解決するのに、発生する焼酎蒸留廃液の廃棄迄に長期の貯蔵時間が許されないことから、焼酎製造工場において発生する焼酎蒸留廃液の廃棄計画量に見合った焼酎製造プラントを建設しなければならず、焼酎製造プラントの規模が抑制されるという不都合があった。
また、いも焼酎の製造工場では、9月〜12月のサツマイモの収穫時期に製造がなされることが多く、それに伴い焼酎蒸留廃液も一時期に多量に発生するため、焼酎蒸留廃液の処理工場における処理や、焼酎蒸留廃液の利用が追いつかないという不都合があった。
また、従来の処理プラント等で処理された焼酎蒸留廃液は、処理薬剤や保存剤を含むことが多く、飼料等に利用することができないという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−319860号公報
【特許文献2】特開2005−305398号公報
【特許文献3】WO2005/080275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1〜3の技術は、オゾンと焼酎蒸留廃液を撹拌して混合処理することにより固形分と水分を分離するものであり、或いは、キャビテーションを施した焼酎蒸留廃液中にオゾンを導入して、焼酎蒸留廃液を効率よく溶解させて、殺菌、脱臭処理するものであり、或いは、焼酎蒸留廃液とオゾンガスを混合装置により、超微粒子化を計り、光線処理により無害化を図るものである。即ち、前記特許文献1〜3の技術は、オゾンと焼酎蒸留廃液を積極的に混合させて焼酎蒸留廃液を分解処理させる技術であり、本発明の目的とする焼酎蒸留廃液の変質を発生させないようにする焼酎蒸留廃液の保存技術ではない。
本発明は、焼酎製造工程で発生する焼酎蒸留廃液の処理迄に、或いは利用する迄に長期間要しても、焼酎蒸留廃液が悪臭を発生することなく、オゾンによる焼酎蒸留廃液の分解等により焼酎蒸留廃液が変質することなく、長期間保存できる焼酎蒸留廃液の保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した目的を達成するための本発明の焼酎蒸留廃液の保存方法は、焼酎蒸留廃液を貯留しているタンク内の上部気相部へオゾンガスを充填することにより、焼酎蒸留廃液を保存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の焼酎蒸留廃液の保存方法は、焼酎蒸留廃液が長期間にわたり悪臭を発生することなく、変質を防止して保存できる。
本発明の焼酎蒸留廃液の保存方法は、保存剤等の添加剤を使用しないので、保存された焼酎蒸留廃液は、飼料等に利用可能である。
【0007】
本発明の焼酎蒸留廃液の保存方法は、タンク内の上部気相部へオゾンガスを充填する方法であり、オゾンを焼酎蒸留廃液中に混合していないので、オゾンにより焼酎蒸留廃液の有効成分の分解が促進されていない。したがって、保存された焼酎蒸留廃液は、オゾンによる分解が促進されていない状態で飼料等に利用可能である。
【実施例】
【0008】
縦1m、横1m、高さ1mの内容量1000klの容器中に、焼酎蒸留廃液を950kl貯留したものを2個用意した。そのうちの1個の容器中には、オゾン発生装置により作製したオゾンガスを、焼酎蒸留廃液の上部気相中に1日に4回1時間ずつ吹込み、10カ月間保管した(オゾン導入区分)。もう1個の容器中には、オゾンガスを吹き込まずに10カ月間保管した(オゾン導入なし区分)。
【0009】
1カ月間経った時点においてオゾン導入した区分では、外見及び香りに異常はみられなかったが、オゾン導入なし区分では、上面一面に泡状の白い膜がみられ、香りも有機物が腐敗したような強い臭気が観察された。
以後、10カ月目迄観察を行ったが、オゾン導入区分では1カ月目と同様な状態で安定した状態が観察された。
【0010】
10カ月保管した両容器内の内容物を採取し、ろ紙(No.2)でろ過し、各試料とした。これらの試料を用いて悪臭防止法の特定物質に指定されている有機酸として、プロピオン酸、ノルマル酪酸、イソ吉草酸を有機分析計により分析定量した。
なお、それぞれの有機酸の匂いは、プロピオン酸は酸っぱいような刺激臭、ノルマル酪酸は汗くさい匂い、イソ吉草酸はむれた靴下の匂いとして知られている。分析結果を下記の表1に示す。有機成分の量は、mg/lである。
【0011】
【表1】

【0012】
表1によれば、プロピオン酸について、オゾン導入区分では、保管開始時と比べ大きな違いは見られないが、オゾン導入なしの区分では保管開始時に比べて15倍ほど高い濃度となっていることがわかる。
またノルマル酪酸、イソ吉草酸ではオゾン導入なし区分からのみ検出されたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は焼酎製造工場から発生する焼酎蒸留廃液を、無害化処理するまでの間、或いは試料等に利用可能になる迄の間に、悪臭を発生することなく保存する方法である。
本発明の焼酎蒸留廃液を保存する方法は、焼酎製造工場から発生する焼酎蒸留廃液のみならず、食品工場から排出される各種廃液に対しても適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎蒸留廃液を貯留しているタンク内の上部気相部へオゾンガスを充填することにより、焼酎蒸留廃液を保存する方法。

【公開番号】特開2009−106223(P2009−106223A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283528(P2007−283528)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【特許番号】特許第4100701号(P4100701)
【特許公報発行日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(500321276)大口酒造株式会社 (2)
【Fターム(参考)】