説明

煉瓦残厚測定装置

【課題】カーボン煉瓦、温度センサ等の計測機器に損傷や悪影響を与えることなく、CO,HSなどの有毒ガスが洩れることなく、長期間にわたり安定して連続計測することができる煉瓦残厚測定装置を提供する。
【解決手段】金属製の鉄皮6の内側に、キャスタブル5、ステーブ4、スタンプ3、及びカーボン煉瓦2が順に積層されている高炉10に取り付けられ、カーボン煉瓦2の厚さを計測する。高炉10は、鉄皮6を貫通しカーボン煉瓦の外表面まで連通する計測孔12と、計測孔と連通する鉄皮の貫通孔に気密に設けられた取付フランジ14とを有する。計測孔に挿入され接触媒体19を介してカーボン煉瓦の外表面に押し付けられる超音波センサ16と、超音波センサを所定の力でカーボン煉瓦へ向けて押し付けかつ超音波センサからの信号線を鉄皮の外側まで引き出すセンサ押付装置20と、気密を保持したまま外部に取り出す密閉型ハウジング30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを用いた高炉煉瓦の煉瓦残厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉底(下方側壁)構造は、炉内稼働面側(内面側)にカーボン煉瓦(カーボンブロック)が配され、外部容器である鉄皮内面側に配されたステーブ(冷却配管により水冷されている)へ熱が逃げる構造となっている。また、ステーブが無い構造もあるが、この場合は鉄皮へ直接冷却水を散水して冷却される。いずれの構造においても、カーボン煉瓦は、稼働面側(内面側)の高温の溶銑に直接接触するため、長期間の使用により損耗することから、この厚みを計測し、管理する必要がある。
【0003】
従来、炉底煉瓦の厚さを検査する手段として、熱電対を用いた推定手段や、鉄皮をハンマーで打撃し反射波から推測する手段、などが用いられていたが、検査員によるバラツキが大きく、安定した測定が困難であった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1の手段が既に提案されている。なお、本発明に関連する超音波センサは、特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1の手段は、図1,2に示すように、高炉炉底側壁部の冷却方式がステーブ4の高炉の、炉底側壁部の出銑口位置から底盤までの高さ方向の範囲に配置されたステーブ間の目地部に、鉄皮6の表面からステーブ4の内面まで貫通させて設置した鉄製円柱1の高炉外表面に衝撃を印加し、衝撃振動の反射波を鉄製円柱1の高炉外表面に設置した表面波検知センサ8及び反射波検知センサ9で検知するものである。
なおこの図において、2はカーボン煉瓦、3はスタンプ、5はキャスタブル、7はエアーハンマである。
【0006】
特許文献2の超音波センサは、図3に示すように、検査対象面Bに接触させる検出外面52aと検出外面52aに任意の角度を持つ平面である検出内面52bとを有する導電性の台座52と、検出内面52bに密着する耐熱軟金属からなる第1電極54aと、第1電極54aを台座52との間で挟む形で第1電極54aと密着する平板状の圧電素子56と、圧電素子56を第1電極54aとの間で挟む形で圧電素子56と密着する耐熱軟金属からなる第2電極54bと、圧電素子56を第2電極54bを介して検出内面52bに向けて弾性的に付勢する耐熱付勢部材60と、耐熱付勢部材60を検出内面52bに向けて押圧する押さえ部材70と、一端が台座52に連結されており内部に第1電極54a、圧電素子56、第2電極54b、耐熱付勢部材60及び押さえ部材70を収容する本体50と、本体50に螺合し、押さえ部材70よりも本体の他端側で押さえ部材70からの反力を受ける支持手段69とを備え、支持手段69は、検出内面52bに向けて押さえ部材70に外部から押圧力を作用させるための第1貫通穴65を有し、押さえ部材70は、前記押圧力を受ける受け部72を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−268428号公報、「高炉炉底側壁部構造及び炉底れんが残存厚測定方法」
【特許文献2】特開2008−256423号公報、「高温用超音波探触子及びその製造方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の手段は、以下の問題点があった。
(1) 安定した測定を行うためには、鉄製円柱1の外表面にエアーハンマ7により強い衝撃を印加する必要がある。そのため、カーボン煉瓦2、その他の構成部材、及び温度センサ等の計測機器に損傷や悪影響を与えるおそれがある。
(2) 鉄製円柱1を鉄皮6の表面からステーブ4の内面まで貫通させて設置するため、鉄製円柱1の外周面に隙間ができ、内部からCO,HSなどの有毒ガスが洩れる。そのため、長期間の連続計測は困難である。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、カーボン煉瓦、その他の構成部材、及び温度センサ等の計測機器に損傷や悪影響を与えることなく、かつ内部からCO,HSなどの有毒ガスが洩れることなく、カーボン煉瓦の厚さを長期間にわたり安定して連続計測することができる煉瓦残厚測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、金属製の鉄皮の内側に、キャスタブル、ステーブ、スタンプ、及びカーボン煉瓦が順に積層されている高炉に取り付けられ、前記カーボン煉瓦の厚さを計測する煉瓦残厚測定装置であって、
前記高炉は、前記鉄皮を貫通しカーボン煉瓦の外表面まで連通する計測孔と、該計測孔と連通する鉄皮の貫通孔に気密に設けられた取付フランジとを有しており、
前記計測孔に挿入され接触媒体を介してカーボン煉瓦の外表面に押し付けられる超音波センサと、
前記取付フランジに気密に取り付けられ、前記超音波センサを所定の力でカーボン煉瓦へ向けて押し付け、かつ超音波センサからの信号線を鉄皮の外側まで引き出すセンサ押付装置と、
前記センサ押付装置を気密に囲み、前記信号線の信号を気密を保持したまま外部に取り出す密閉型ハウジングと、を備えることを特徴とする煉瓦残厚測定装置が提供される。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記センサ押付装置は、前記取付フランジに気密に取り付けられ前記計測孔の軸心を中心とする雌ネジ部を有する治具フランジと、
前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部を有し、前記軸心に沿って鉄皮の外側から内側まで延びる中空円筒形のネジパイプと、
該ネジパイプの中空孔を貫通してネジパイプの外側から内側まで延び、内端にフレキシブルカップリングを介して前記超音波センサが取り付けられ、中間部にネジパイプの内端面と対向する鍔部を有する中空円筒形のセンサ押付棒と、
前記ネジパイプの内端面とセンサ押付棒の鍔部との間に位置する押し付け力発生要素と、からなる。
【0012】
前記超音波センサは、2枚の電極の間にニオブ酸リチウム振動子が挟持された高温用超音波センサであり、前記信号線は、一端が前記2枚の電極に接続し他端が円筒形部分を有する2芯コネクタに接続された2芯ケーブルであり、
前記密閉型ハウジングは、前記治具フランジに気密に取り付けられ、前記センサ押付装置を気密に囲み、前記2芯コネクタの円筒形部分をシール部材の塑性変形により気密に貫通させて固定するロック部材を有する第1ハウジングと、
該第1ハウジングに気密に取り付けられた第2ハウジングと、
該第2ハウジングに気密に取り付けられ前記超音波センサからの2芯の信号をセラミック又は樹脂により気密に伝達する結線コネクタを有する盲フランジと、
該第2ハウジング内において、前記2芯コネクタと結線コネクタを電気的に接続する同軸ケーブルと、からなる。
また、前記接触媒体は、金属粉又は酸化金属粉の骨材と当該骨材を結合させる結合材とから構成され、使用可能温度での超音波伝達性能を具備し、且つ、前記超音波センサをカーボン煉瓦に密着させるように変形能を有する。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の構成によれば、超音波センサが、鉄皮を貫通しカーボン煉瓦の外表面まで連通する計測孔に挿入され、センサ押付装置により接触媒体を介してカーボン煉瓦の外表面に押し付けられるので、カーボン煉瓦、その他の構成部材、及び温度センサ等の計測機器に損傷や悪影響を与えることなく、超音波センサによりカーボン煉瓦の厚さを長期間にわたり安定して連続計測することができる。
【0014】
また、センサ押付装置が、鉄皮の貫通孔に気密に設けられた取付フランジに気密に取り付けられ、密閉型ハウジングがセンサ押付装置を気密に囲み、超音波センサからの信号線の信号を気密を保持したまま外部に取り出すので、高炉の内部からCO,HSなどの有毒ガスが洩れるのを確実に防止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】特許文献1による鉄製円柱1の配置を示す斜視図である。
【図2】特許文献1による残存厚測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】特許文献2による超音波センサの構成図である。
【図4】本発明による第1実施形態の煉瓦残厚測定装置の全体構成図である。
【図5】図4の主要部の拡大図である。
【図6】本発明の煉瓦残厚測定装置の組立手順を示す図である。
【図7】本発明による第2実施形態の煉瓦残厚測定装置の全体構成図である。
【図8】図8は、荷重と感度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
図4は、本発明による第1実施形態の煉瓦残厚測定装置の全体構成図である。この図において、10は高炉であり、金属製の鉄皮6の内側に、本例では、キャスタブル5、ステーブ4、スタンプ3、及びカーボン煉瓦2が順に積層されている。カーボン煉瓦2の厚さは例えば2m以上であり、カーボン煉瓦2の外表面の温度は、例えば100〜200℃に保持されている。
【0018】
高炉10は、鉄皮6を貫通しカーボン煉瓦2の外表面まで連通する計測孔12と、計測孔12と連通する鉄皮6の貫通孔に気密に設けられた取付フランジ14とを有する。
【0019】
本発明の煉瓦残厚測定装置は、高炉10の取付フランジ14に取り付けられ、カーボン煉瓦2の厚さを計測する装置である。
【0020】
図4において、本発明の煉瓦残厚測定装置は、超音波センサ16、センサ押付装置20、及び密閉型ハウジング30を備える。
【0021】
超音波センサ16は、2枚の電極の間にニオブ酸リチウム振動子が挟持された高温用超音波センサである。この高温用超音波センサは、例えば最高600℃の耐熱性を有し、カーボン煉瓦2の外表面近傍の温度に耐えるように構成されている。
なお、かかる超音波センサ16の構造は、特に限定されるものではないが、例えば図3に示したように、特許文献2にその一例が開示されている。
【0022】
超音波センサ16からの信号線17は、一端が2枚の電極に接続し他端が円筒形部分18aを有する2芯コネクタ18に接続された2芯ケーブルである。なお、2枚の電極の一方を接地(アース)してもよい。
信号線17は、後述するセンサ押付棒26に設けられた中空孔を通してセンサ押付棒26の外方端より外側まで延びる長さを有する。また、2芯コネクタ18の円筒形部分18aは、直径約8mmの密閉された円筒形金属パイプからなり、その外方端にコネクタの接点が設けられている。
【0023】
上述した超音波センサ16は、後述するセンサ押付棒26の内方端にフレキシブルカップリング25を介して取り付けられ、上述した計測孔12に挿入され、接触媒体19を介してカーボン煉瓦2の外表面に押し付けられるようになっている。
フレキシブルカップリング25は、センサ押付棒26の軸線に対して、例えば+/−5°の角度範囲で超音波センサ16がどの方向にも自由に傾動できるようになっている。
なお、フレキシブルカップリングとは、広義の意味で、自由に追従可能な機能を有する継手を意味する。
【0024】
これにより、超音波センサ16は、カーボン煉瓦2の外側面が平面であったり、鉄皮の曲率とは異なった曲面であっても、追従して、接触媒体19を介してカーボン煉瓦2の外表面に密着して押し付けることができる。
【0025】
接触媒体19は、カーボン煉瓦2の外表面の温度(例えば100〜200℃)に耐える接触媒体である。
接触媒体は、超音波伝達時に阻害要因となるカーボン煉瓦およびセンサ面との凹凸面の影響を低減し、損失を極力低減させた超音波伝達を行うために必要であり、かつ使用環境温度領域での超音波伝達性能を安定的に具備していなければならない。このため接触媒体には、変形能を有し、材質として粘土のように応力下で自在に変形し、凹凸部を均してカーボン煉瓦とセンサとを接触媒体を介して密着させ、超音波をセンサ面からカーボン煉瓦へと伝達させることができる材質であればよい。このような機能を満たすために、接触媒体は、粘土質を構成する骨材と、それらを結合させる結合材とから構成されることが好ましい。
この場合、骨材としては比較的高温下でも安定的に超音波を伝達可能な金属や酸化金属等の粉粒体を使用でき(例えば、0.1mm以下)、結合材については骨材同士のバインダーとしての役割を担いながら、変形能が高く、且つ、熱分解開始温度が使用環境温度領域よりも高温で安定的であり、結合剤中の揮発成分が揮発しても大きな空隙をつくらずに、超音波の伝達をできるだけ阻害しないような材料がより好ましい。
骨材の具体例としては、アルミナ粉、ムライト粉、アルミニウム粉、フリット粉などが挙げられ、これらを単独又は混合して使用できる。
また、結合材の具体例としては、樹脂やタールやピッチなどが挙げられ、これらを単独又は混合して使用できる。中でもフェノール樹脂が上記機能を高いレベルで満たすため、結合剤中に含まれていることが好ましい。
また、接触媒体の変形能をより高めるため、例えば、モノエチレングリコールなどが含まれていても構わない。
市販品では、耐火材料製品として販売されている黒崎播磨製「クロジョック」(商標登録)を接触媒体として用いることができる。
【0026】
センサ押付装置20は、高炉10に設けられた取付フランジ14に気密に取り付けられ、超音波センサ16を所定の力(例えば50〜100kg)でカーボン煉瓦2へ向けて押し付け、かつ超音波センサ16からの信号線17を鉄皮6の外側まで引き出すようになっている。
【0027】
図8は、荷重と感度の関係を示す図である。この例では、荷重を0kgf(スタート時は感度0dB)から約170kgfまで徐々に増加させた後、同様に徐々に荷重を減少させて、その間の感度を計測した。
この結果から、超音波センサ16の感度特性は、50kg以上で良好な感度が得られるが、100kgを超えると感度が鈍化することが確認された。
【0028】
図5は、図4の主要部の拡大図である。
この図において、センサ押付装置20は、治具フランジ22、ネジパイプ24、センサ押付棒26、及び押し付け力発生要素28からなる。
【0029】
治具フランジ22は、取付フランジ14にガスケット21を介して気密に取り付けられ、計測孔12の軸心を中心とする雌ネジ部22aを有する。この例において、治具フランジ22は、取付フランジ14に取り付けられる外側フランジ部23aと、その内側に取り付けられ雌ネジ部22aを有する内側フランジ部23bとからなる。
しかし、本発明はこの構成に限定されず、外側フランジ部23aと内側フランジ部23bを一体に構成してもよい。
【0030】
ネジパイプ24は、治具フランジ22の雌ネジ部22aと螺合する雄ネジ部24aを有し、計測孔12の軸心に沿って鉄皮6の外側から内側まで延びる中空円筒形の部材である。
【0031】
センサ押付棒26は、ネジパイプ24の中空孔を貫通してネジパイプ24の外側から内側まで延びる中空円筒形の部材である。また、センサ押付棒26の内端にフレキシブルカップリング25を介して超音波センサ16が取り付けられ、その中間部にネジパイプ24の内端面と対向する鍔部26aを有する。
センサ押付棒26の中心軸に沿って設けられた中空孔は、信号線17と2芯コネクタ18が通る直径(例えば、約10mm)を有する。
【0032】
押し付け力発生要素28は、この例ではバネであり、ネジパイプ24の内端面とセンサ押付棒26の鍔部26aとの間に位置し、その間に軸方向に圧縮して設置され、超音波センサ16を所定の力でカーボン煉瓦2へ向けて押し付けるようになっている。
所定の力は、超音波センサ16で正確かつ安定した計測ができる力(例えば50〜100kg)である。
また、この例では、バネ28とネジパイプ24の内端面との間、及びバネ28と鍔部26aとの間にスラストベアリング29a,29bが設けられ、センサ押付棒26に対してネジパイプ24を軸心を中心に円滑に回転できるようになっている。
なお、押し付け力発生要素28は、バネに限定されず、エアーシリンダ、油圧シリンダ、等であってもよい。
【0033】
上述した構成により、図5,6において、ネジパイプ24の外方端(図で右端)を軸線を中心に回転させることにより、センサ押付棒26を軸方向に移動させて超音波センサ16の内方端(図で左端)を接触媒体19を介してカーボン煉瓦2の外表面に押し付けることができる。
また、この押付けの際に、超音波センサ16の内表面とカーボン煉瓦2の外表面とが完全に平行でない場合でも、上述したフレキシブルカップリング25により、センサ押付棒26の軸線に対して、超音波センサ16がどの方向にも自由に傾動するので、超音波センサ16の内表面とカーボン煉瓦2の外表面とを正確に密着させることができる。
【0034】
従って、本発明によれば、超音波センサ16が、鉄皮6を貫通しカーボン煉瓦2の外表面まで連通する計測孔12に挿入され、センサ押付装置20により接触媒体19を介してカーボン煉瓦2の外表面に押し付けられるので、カーボン煉瓦2、その他の構成部材、及び温度センサ等の計測機器に損傷や悪影響を与えることなく、超音波センサ16によりカーボン煉瓦2の厚さを長期間にわたり安定して連続計測することができる。
【0035】
図4において、密閉型ハウジング30は、センサ押付装置20を気密に囲み、信号線17の信号を、気密を保持したまま外部に取り出すようになっている。
【0036】
密閉型ハウジング30は、この例では第1ハウジング32、第2ハウジング34、盲フランジ36及び同軸ケーブル38からなる。
第1ハウジング32は、内側フランジ32a、外側フランジ32b、及びその間を連結するパイプ32cからなる。外側フランジ32bは、盲フランジであり、その一部にロック部材33を有する。
内側フランジ32aは、治具フランジ22にガスケット31を介して気密に取り付けられ、センサ押付装置20を気密に囲んでいる。また、ロック部材33は、好ましくはスウェージロック(登録商標)であり、2芯コネクタ18の円筒形部分18aをシール部材(フロントフェノールとバックフェノール)の塑性変形により気密に貫通させて固定するようになっている。
【0037】
第2ハウジング34は、内側フランジ34a、外側フランジ34b、及びその間を連結するパイプ34cからなる。
内側フランジ34aは、第1ハウジング32の外側フランジ32bにガスケット37aを介して気密に取り付けられている。
【0038】
盲フランジ36は、第2ハウジング34にガスケット37bを介して気密に取り付けられその一部に結線コネクタ35を有する。
結線コネクタ35は、好ましくはハーメチックコネクタであり、盲フランジ36にセラミック又は樹脂により気密に取り付けられ、超音波センサ16からの信号線17の信号を気密を保持したまま外部に取り出せるようになっている。
【0039】
同軸ケーブル38は、第2ハウジング34内において、2芯コネクタ18と結線コネクタ35を電気的に接続する同軸ケーブルである。同軸ケーブル38の長さは、2芯コネクタ18と結線コネクタ35に両端を接続させた後、盲フランジ36を取り付けできる長さに設定されている。
なお、同軸ケーブル38の両端部のコネクタの大きさは、パイプ34cの内側に収容できる限りで、2芯コネクタ18の円筒形部分18aよりも大きくてもよい。
【0040】
上述した構成により、高炉10の内部に存在するCO,HSなどの有毒ガスは、雌ネジ部22aと雄ネジ部24aとの螺合部、ロック部材33(この例ではスウェージロック)、及び結線コネクタ35(この例ではハーメチックコネクタ)により、外部への漏洩が防止される。
【0041】
このうち特に、ロック部材33(スウェージロック(登録商標))は、2芯コネクタ18の円筒形部分18aをシール部材(フロントフェノールとバックフェノール)の塑性変形により気密に貫通させて固定するので、センサ押付棒26の中空孔を通して超音波センサ16から延びる信号線17を2芯コネクタ18の円筒形部分18aを利用して直接が外側フランジ32bに固定することができ、信号線17の信号を気密を保持したまま外側フランジ32bの外部に取り出すことができる。
【0042】
さらに、結線コネクタ35(ハーメチックコネクタ)は、盲フランジ36にセラミック又は樹脂により気密に取り付けられているので、ロック部材33が損傷してその部分からガスが漏洩する場合でも、超音波センサ16からの信号線17の信号を、気密を保持したまま盲フランジ36の外部に取り出すことができる。
【0043】
密閉型ハウジング30は、第1ハウジング32だけでも密閉性を保つことができるため、第2ハウジングが無くても構わないが、上述した例のように第1と第2の両方のハウジングを有する密閉型ハウジング30は、少なくともロック部材33と結線コネクタ35で二重にガス漏れを防止しており、高炉10の内部からCO,H2Sなどの有毒ガスが外部へ洩れるのを確実に防止することができることから、好ましい構造といえる。特に、結線コネクタ35を第2ハウジング34の盲フランジ36へ固定して取り付けると、コネクタの着け外しの際に、2芯コネクタ18側に、同軸ケーブル38を通じて応力が伝達されないため、ロック部材の損傷をより防ぐことができるため、より好ましい。
【0044】
図6は、本発明の煉瓦残厚測定装置の組立手順を示す図である。このうち、(A)はセンサ押付装置20を取り付けた状態、(B)はさらに密閉型ハウジング30を取り付けた状態を示している。
【0045】
図6(A)に示すように、センサ押付棒26の外方端に適当な治具40を取り付け、センサ押付棒26を軸方向に移動させて超音波センサ16の内方端(図で左端)を接触媒体19を介してカーボン煉瓦2の外表面に押し付ける。
次いで、ネジパイプ24の外方端をその軸線を中心に適当な治具を用いて回転させることにより、ネジパイプ24の内端面(図で左端)とセンサ押付棒26の鍔部26aとの間でバネ28を軸方向に圧縮することができる。
【0046】
バネ28の自然長からの圧縮量は、ネジパイプ24の外方端位置から正確に計測できるので、予め計測したバネ28のバネ定数から超音波センサ16を所定の力でカーボン煉瓦2の外表面へ向けて押し付けることができる。
また、この押付けの際に、超音波センサ16の内表面とカーボン煉瓦2の外表面とが完全に平行でない場合でも、上述したフレキシブルカップリング25により、センサ押付棒26の軸線に対して、超音波センサ16がどの方向にも傾動するので、超音波センサ16の内表面とカーボン煉瓦2の外表面とを正確に密着させることができる。
【0047】
図6(A)の状態において、治具40は取外し、信号線17と2芯コネクタ18は、センサ押付棒26に設けられた中空孔を通してセンサ押付棒26の外方端より外側に位置決めしておく。
【0048】
次いで、図6(B)に示すように、第1ハウジング32、ロック部材33、同軸ケーブル38、第2ハウジング34、及び盲フランジ36を順に取り付ける。
【0049】
図6(B)の状態において、超音波センサ16からの信号は、信号線17、2芯コネクタ18、同軸ケーブル38及び結線コネクタ35を介して密閉型ハウジング30の外部まで取り出されているので、この信号線17を介して超音波センサ16を作動させ、この超音波センサ16によりカーボン煉瓦2の厚さを長期間にわたり安定して連続計測することができる。
【0050】
なお、高炉によっては、カーボン煉瓦の冷却にステーブ(及びキャスタブル)を使用せず、鉄皮に直接冷却水を散水して内部のカーボン煉瓦を冷却する方式もあるが、当該方式においても、本発明は適用可能である。
【0051】
図7は、本発明による第2実施形態の煉瓦残厚測定装置の全体構成図である。
押し付け力発生要素28は、この例では油圧シリンダであり、ネジパイプ24の内端面とセンサ押付棒26の鍔部26aとの間に位置し、超音波センサ16を所定の力でカーボン煉瓦2へ向けて押し付けるようになっている。
油圧シリンダ28への油圧の供給は、固定フランジを通して行う。また、配管の取り出しは、同軸ケーブル38と同様に、2段階で外部まで取り出し、気密性を保つようになっている。
【0052】
なお、油圧シリンダ28は、押込み側のみへの配管で足りるように、単動式であるのが好ましいが、戻り側をフリーにして戻り側への配管を省略してもよい。また、油圧シリンダの代わりに空圧シリンダを用いてもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【実施例】
【0053】
超音波センサとしてニオブ酸リチウム振動子を用い、図4に示す装置を使用して、A製鉄所の高炉改修時に、本発明の装置を、高炉の羽口下方を中心に4箇所設置し、改修後の立ち上げ時から半年間に亘って、連続してカーボン煉瓦の厚みを測定した。
その結果、4箇所共に有毒ガスの漏洩や設備の損傷は全くなく、また、振動子をカーボン煉瓦に密着できたことからカーボン煉瓦の厚みが減少していく状況を問題無く測定することができた。
【0054】
上述した本発明の構成によれば、以下の効果が得られる。
(1)超音波センサ16を、押し付け力発生要素28(バネ、油圧シリンダ、空圧シリンダ)により所定の力で被計測物(カーボン煉瓦2の外表面)へ押し付けることができる
(2)被計測物の姿勢変化による超音波センサ16との相対角度及び変位に対し、フレキシブルカップリング25によりある程度追従することができる。
(3)接触媒体により、カーボン煉瓦に凹凸があっても、その凹凸に追従して接触媒体が変形し、カーボン煉瓦とセンサとを密着させて、超音波を安定的にカーボン煉瓦に伝達することができる。
(4)密閉型ハウジング30により、被測定物からの噴出有毒ガスの漏洩を完全に防止し、または外環境から超音波センサ16を隔離できる。
(5)手動押し付け用アタッチメント、すなわち手動押し付け用ハンドルの装着により、固定設置から可搬への形態変更ができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 鉄製円柱、2 カーボン煉瓦、3 スタンプ、4 ステーブ、
5 キャスタブル、6 鉄皮、7 エアーハンマ、8 表面波検知センサ、
9 反射波検知センサ、
10 高炉、12 計測孔、14 取付フランジ、
16 超音波センサ、17 信号線、18 2芯コネクタ、18a 円筒形部分、
19 接触媒体、20 センサ押付装置、21 ガスケット、22 治具フランジ、
22a 雌ネジ部、23a 外側フランジ部、23b 内側フランジ部、
24 ネジパイプ、24a 雄ネジ部、25 フレキシブルカップリング、
26 センサ押付棒、26a 鍔部、28 バネ、
29a,29b スラストベアリング、
30 密閉型ハウジング、31 ガスケット、32 第1ハウジング、
32a 内側フランジ、32b 外側フランジ、32c パイプ、
33 ロック部材、34 第2ハウジング、
34a 内側フランジ、34b 外側フランジ、34c パイプ、
35 結線コネクタ、36 盲フランジ、
37a ガスケット、37b ガスケット、
38 同軸ケーブル、40 治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の鉄皮の内側にカーボン煉瓦を有する高炉に取り付けられ、前記カーボン煉瓦の厚さを計測する煉瓦残厚測定装置であって、
前記高炉は、前記鉄皮を貫通しカーボン煉瓦の外表面まで連通する計測孔と、該計測孔と連通する鉄皮の貫通孔に気密に設けられた取付フランジとを有しており、
前記計測孔に挿入され接触媒体を介してカーボン煉瓦の外表面に押し付けられる超音波センサと、
前記取付フランジに気密に取り付けられ、前記超音波センサを所定の力でカーボン煉瓦へ向けて押し付け、かつ超音波センサからの信号線を鉄皮の外側まで引き出すセンサ押付装置と、
前記センサ押付装置を気密に囲み、前記信号線の信号を気密を保持したまま外部に取り出す密閉型ハウジングと、を備えることを特徴とする煉瓦残厚測定装置。
【請求項2】
前記センサ押付装置は、前記取付フランジに気密に取り付けられ前記計測孔の軸心を中心とする雌ネジ部を有する治具フランジと、
前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部を有し、前記軸心に沿って鉄皮の外側から内側まで延びる中空円筒形のネジパイプと、
該ネジパイプの中空孔を貫通してネジパイプの外側から内側まで延び、内端にフレキシブルカップリングを介して前記超音波センサが取り付けられ、中間部にネジパイプの内端面と対向する鍔部を有する中空円筒形のセンサ押付棒と、
前記ネジパイプの内端面とセンサ押付棒の鍔部との間に位置する押し付け力発生要素と、からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の煉瓦残厚測定装置。
【請求項3】
前記超音波センサは、2枚の電極の間にニオブ酸リチウム振動子が挟持された高温用超音波センサであり、前記信号線は、一端が前記2枚の電極に接続し他端が円筒形部分を有する2芯コネクタに接続された2芯ケーブルであり、
前記密閉型ハウジングは、前記治具フランジに気密に取り付けられ、前記センサ押付装置を気密に囲み、前記2芯コネクタの円筒形部分をシール部材の塑性変形により気密に貫通させて固定するロック部材を有する第1ハウジングと、
該第1ハウジングに気密に取り付けられた第2ハウジングと、
該第2ハウジングに気密に取り付けられ前記超音波センサからの2芯の信号をセラミック又は樹脂により気密に伝達する結線コネクタを有する盲フランジと、
前記第2ハウジング内において、前記2芯コネクタと結線コネクタを電気的に接続する同軸ケーブルと、からなることを特徴とする請求項2に記載の煉瓦残厚測定装置。
【請求項4】
前記接触媒体は、金属粉又は酸化金属粉の骨材と当該骨材を結合させる結合材とから構成され、使用可能温度での超音波伝達性能を具備し、且つ、前記超音波センサをカーボン煉瓦に密着させるように変形能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の煉瓦残厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79911(P2013−79911A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221131(P2011−221131)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】