説明

煙突用石綿除去装置

【課題】 高圧水の反力を用いずにノズルヘッドを回転させ、高圧水による産業廃棄物の排出を抑制できる煙突用石綿除去装置を提供する。
【解決手段】 煙突用石綿除去装置10は、ローター12の導水路に高圧水14を送り込むロータリジョイント16を有する装置本体18と、ローター12に高圧水14を供給する高圧水供給装置20と、ローター12を駆動するエアモータ22と、ローター12に連結するノズルヘッド24とを備えるものである。エアモータ22によると、ノズルヘッド24を高圧水14の反力を用いずに駆動できる。また、ノズルヘッド24を駆動するための動力として使用する高圧水14の供給が不要になり、アスベスト除去作業で排出されるアスベスト繊維を含む産業廃棄物の排出を抑制することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突のアスベストライニング材を高圧水で除去する煙突用石綿除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昭和年代に建設されたボイラーなどに接続される筒状構造物の煙突のほとんどは、煙突内壁に結合材によって圧縮筒状に形成されるアスベスト含有のライニング材(煙突石綿断熱材、以下、単に「アスベスト材」という。)が設けられていた。煙突内は高温な酸性ガスの通り道であるため、そのガスにより結合材が劣化するとアスベスト繊維のくずれが生じ、アスベスト材の剥落が起こり、煙突の脚部点検口にアスベストが堆積していた。このような状態で、排煙させると、煙突内壁のアスベスト繊維が煙とともに大気中に排出されるおそれがあった。また、アスベスト繊維を吸い込むと中皮腫・肺がんの原因となるため、現在、アスベストの製造・輸入は禁止され、またアスベストの飛散防止対策が義務付けられている。
【0003】
現在、上記問題を解決するために、高圧水を用いたブラスト洗浄により煙突内壁を洗浄する石綿管破砕装置や煙突洗浄装置が提供されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−70331(図3及び図4)
【特許文献2】特開平9−248536(図1及び図2)
【0004】
特許文献1の石綿管破砕装置は、ノズルヘッドに高圧水を導水する流路を当該ノズルヘッドの中心から所定距離ずれた位置に2つの流路を設け、その流路に取り付けられるノズルから高圧水を噴射することによってノズルヘッドに回転力が生ずるように構成したものである。すなわち、特許文献1の石綿管破砕装置は、ノズルから噴射される高圧水の反力を用いてノズルヘッドを回転しノズルを旋回させて、高圧水で建物の躯体に埋設された石綿管を破砕除去するものであった。
【0005】
特許文献2の煙突洗浄装置は、ストレートノズルと曲折ノズルを備えるノズルヘッドを有するものである。ストレートノズルから噴射される高圧水は、煙突の石綿管の表面に噴き付けられる。一方、曲折ノズルから噴射される高圧水は、その噴出によりノズルヘッドに周方向の推力を与え当該ノズルヘッドを適切な速度で回転させる。すなわち、特許文献2の煙突洗浄装置は、曲折ノズルから噴射される高圧水の反力によりノズルヘッドを回転し、ストレートノズルを旋回させて、その高圧水で煙突の煤を洗浄するものであった。
【0006】
上記2つの特許文献の装置は、高圧水の反力を利用してノズルヘッドを適切な速度で回転させるものであったため、煙突の石綿管等に噴射する高圧水以外に、ノズルヘッドを回転させるための高圧水の供給も必要であった。
上記装置を使用して煙突のアスベスト材を除去する場合、その除去処理後、ノズルから射出された高圧水は、アスベスト繊維を含む汚染水(産業廃棄物)となる。当該産業廃棄物を処分するためには、その産業廃棄物を回収し浄化処理を行う必要があるが、従来の装置では、大量の産業廃棄物が排出されるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するために、高圧水の反力を用いずにノズルヘッドを回転させ、高圧水による産業廃棄物の排出を抑制できる煙突用石綿除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の煙突用石綿除去装置は、ローターの導水路に高圧水を送り込むロータリジョイントを有する装置本体と、ローターに高圧水を供給する高圧水供給装置と、ローターを駆動するエアモータと、ローターに連結するノズルヘッドとを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の煙突用石綿除去装置は、エアモータを用いてノズルヘッドを所定の回転速度に制御するものである。これにより、ノズルには、アスベスト材の除去のみに必要な高圧水を供給すればよいため、アスベスト繊維を含む汚染水(産業廃棄物)の排出量を抑制でき、また、その浄化処理を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、高圧水を用いたアスベスト除去処理によって排出されるアスベスト繊維を含む産業廃棄物の排出量を抑制することを実現するものである。
【実施例1】
【0011】
本発明の煙突用石綿除去装置を図に基づいて説明する。図1は、本発明の煙突用石綿除去装置の主要部を表す図である。
煙突用石綿除去装置10は、ローター12の導水路に高圧水14を送り込むロータリジョイント(ロータリー継手)16を有する装置本体(ボディ)18と、ローター12に高圧水14を供給する高圧水供給装置20と、ローター12を駆動するエアモータ22と、ローター12に連結するノズルヘッド24とを備えるものである。ノズルヘッド24には、高圧水供給装置20からローター12を介して供給される高圧水14を噴射するノズル26が取り付けられている。なお、装置本体18にはアイナット(又はアイボルト)28が設けられており、図1において、装置本体18は吊り部材(ロープ)30を介して図示しない巻き上げ機(例えば、電動のチェーンブロックやホイスト)により煙突32内に吊り下げられた状態にあるものとする。
【0012】
装置本体18上部には、エアモータ台34が固定されている。エアモータ台34に備えるカップリング(軸継ぎ手)36には、ローター12の先端部12aが挿入され、所定の固定部材(螺子)で固定されている。上記カップリング36にエアモータ22の回転軸22aを挿入することにより、ローター12とエアモータ22とがカップリング36によって連結させることができる。エアモータ22に図示しないエアポンプからホースを介して供給される圧縮空気38を供給口22aから送り込むと、エアモータ22の動力は連結されるローター12に伝達される。供給口22bから送り込まれた空気38は、エアモータ22内部を通過して排気口22cから煙突32内に放出される。
なお、装置本体18の下部には、ベアリング押さえ40が所定の固定部材(ボルト)により固定されている。また、ローター12は、ケーシング42内に装着されており、エアモータ22の動力を受けて自在に回転するように設けられているものとする。
【0013】
ローター12の下端部12bは、ノズルヘッド24の流路24aに挿入され、ノズルヘッド24はローター12に連結されている。高圧水供給装置20から供給される高圧水14は、ローター12の内部(高圧水の導水路)を通りノズルヘッド24の流路24aに排出され、当該流路24aに取り付けられているノズル26から噴射される。この場合、ノズル26からは、アスベスト材32aを剥離除去するために必要な分量の高圧水14が噴射される。これにより、従来の装置において、ノズルヘッド24を回転させるための動力として使用されていた高圧水14の供給が不要となり、アスベスト繊維を含む産業廃棄物の排出を抑制することができる。
【0014】
エアモータ22によると、ノズルヘッド24を駆動するための回転数やトルクの調整は、高圧水の反力でノズルヘッドを駆動させる従来の装置と異なり、スピードコントローラー等で簡単に調整できる。従って、ノズルヘッド24の回転速度(又はノズル26の旋回速度)を容易に制御することができる。過負荷時は、電気モータとは異なり、自動的に停止するため作業の安全を図ることができる。装置本体18への取り付けも簡単である。電気モータを使用する場合は、防水処理を確実にする必要がある。
また、電気モータに比べ、小型軽量でありかつ高い動力を得ることが可能である。エアモータ22をノズルヘッド24の駆動源とすることにより、装置全体を小型軽量化でき、作業時の取り扱いも容易になる。さらに、エアモータは、圧縮空気で作動するため、可燃性ガスが発生する場所での作業も安全に行うことができる。
【0015】
ノズルヘッド24を駆動する他のモータとして、油圧を利用するものが考えられる。しかし、油圧のような流体でモータを作動させる場合、油圧をモータへ供給するホース以外に、それらを排出するホースを備える必要がある。また、ホースが劣化や損傷で破裂した場合、ホースから排出される油の回収処理が問題となる。エアモータ22では、エアモータ22へ供給した空気38は排気口22cからそのまま煙突32内に放出でき、ホースが破裂した場合も問題は生じないという利点がある。
【0016】
以上のように、本発明の煙突用石綿除去装置によると、ノズルヘッドを高圧水の反力を用いずに駆動できるため、従来ノズルヘッドを駆動するための動力として使用されていた高圧水の供給が不要となる。これにより、アスベスト除去作業で排出されるアスベスト繊維を含む産業廃棄物(汚染水)の排出を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の煙突用石綿除去装置の主要部を表す図である。
【符号の説明】
【0018】
10 煙突用石綿除去装置
12 ローター
14 高圧水
16 ロータリジョイント
18 装置本体
20 高圧水供給装置
22 エアモータ
24 ノズルヘッド




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターの導水路に高圧水を送り込むロータリジョイントを有する装置本体と、ローターに高圧水を供給する高圧水供給装置と、ローターを駆動するエアモータと、ローターに連結するノズルヘッドとを備えることを特徴とする煙突用石綿除去装置。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−97208(P2009−97208A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268633(P2007−268633)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(506418954)株式会社藤林商会 (5)
【Fターム(参考)】