説明

煤洗浄剤

【課題】煤を表面から除去するための洗浄剤を提供する。
【解決手段】煤洗浄剤として、水溶性の高分子ポリカルボキシレート、有利にはポリアスパラギン酸及び/又はそれらの塩の使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤として水溶性の高分子ポリカルボキシレートを基礎とする、有利には粉末、ペースト又は水性配合物としての、煤けた表面を洗浄するための洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
煤は80〜99.5%が炭素であり、共に融合して鎖状凝集体を形成する非常に小さな球状粒子よりなる黒色粉末である。比表面積は約10〜1000m/gである。煤は、炭化水素の完全燃焼又は熱分解において形成される重要な生産品であってカーボンブラックとして知られる他の房状の炭素と混同すべきではない。ファーネス法は最も重要な製造方法である。ファーネス法では、芳香族化合物に富み、コールタール又は石油から得られる炭化水素油を1200〜1800℃のガス炎中に注入する。製造される90%超のカーボンブラックはゴム工業で充填剤として使用されるが、またカーボンブラックは印刷インキ、筆記用インキ、塗料のための顔料として、かつ電気工業においても使用される。煤は、通常は、制御がなされていない燃焼による不所望な生成物であり、そして通常はその表面に吸着された油状成分と熱分解産物を含有する。煤は、動物実験において発癌性が裏付けられ、それは屡々存在する多環式芳香族化合物によって強められる。
【0003】
また毎日、煤は、機関燃料、有利には加熱用燃料、ディーゼル機関燃料、ガソリン、脂質などの燃焼を通じても形成される。
【0004】
機関燃料及び脂質のこれらの燃焼過程により、表面上にしばしば固着する脂様膜がもたらされ、これは道路交通において、例えばトンネルライニング、道路標識、信号機だけでなく、加熱用装置、エンジンにも、そして煤塵フィルタ中に、網戸又は家の外装及び家屋中に生ずる。
【0005】
水溶性の高分子ポリカルボキシレート、有利にはポリアスパラギン酸を洗浄剤として使用することは先行技術から公知である。
【0006】
EP−A0987316号及びEP−A0987318号は、洗浄剤配合物中のポリアスパラギン酸を洗浄されるべき硬質表面に使用することは水噴射洗浄作業の過程で適用される砂吹き工程に通ずるものがあると述べている。
【0007】
EP−A1149143号は、アルカリ可溶性の高分子化合物と非イオン系界面活性剤との組合せ物を含有する床の機械洗浄のための硬質表面洗浄剤組成物を記載している。
【0008】
煤けた表面の洗浄は、特に機関燃料の燃焼時に生成が避けられない煤と多環式芳香族化合物の油膜で覆われている場合に、従来は考えられなかった。
【特許文献1】EP−A0987316号
【特許文献2】EP−A0987318号
【特許文献3】EP−A1149143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の課題は、煤を表面から除去するための洗浄剤を提供することであった。本願で使用する場合に、表面とは硬質表面と軟質表面の両方を指す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、水溶性の高分子ポリカルボキシレート、有利にはポリアスパラギン酸及び/又はそれらの塩の使用によって解決されることが判明した。
【0011】
ポリアスパラギン酸としては、WO96/31554号に記載されるポリアスパラギン酸ホモポリマー及びそれらの塩を使用することが好ましい。しかしながら、先行技術、例えばEP−A0677080号の他の方法によって製造されるポリアスパラギン酸を使用することも可能である。ポリアスパラギン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩を使用することが好ましいのは、これらが一般に環境学者によって安全であると認識されている生分解性材料だからである。もちろん、任意の他の塩及びポリアスパラギン酸の水溶性コポリマー及びそれらの塩を使用することも可能である。同様に、ポリアスパラギン酸の無水物、ポリスクシンイミド(PSI)を使用することも可能である。
【0012】
前記のポリアスパラギン酸及び/又はそれらの誘導体は、煤洗浄剤中に別個に又は混合されて、1質量%以上かつ50質量%以下の量で存在する。
【0013】
本発明の洗浄剤は、ポリアスパラギン酸のナトリウム塩を2質量%〜12質量%の量で使用してもよい。
【0014】
有利な一実施態様では、本発明の煤洗浄剤は更に少なくとも1種の界面活性剤又は乳化剤及び/又は少なくとも1種のキレート化剤を含有する。
【0015】
本発明の洗浄剤のために有用な界面活性剤には、通常のセッケンだけでなく、特にアニオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤の種類からの合成界面活性剤も含まれる。特に好適な界面活性剤の例は、アルカンスルホン酸ナトリウム及びエトキシ化脂肪アルコールである。
【0016】
前記の分散剤、キレート化剤及び界面活性剤は、別個に又は混合されて、1質量%以上の量で存在する。全ての場合に、本発明の洗浄剤は、少なくとも1種の水溶性の高分子ポリカルボキシレート、有利にはポリアスパラギン酸を特徴的な構成成分として含有する。
【0017】
界面活性剤に加えて、本発明の洗浄剤は、補助界面活性剤、アルカリ化剤、アルカリ錯化剤、水混和性の有機溶剤、洗浄塩、安定剤並びに他の慣用の添加剤を含有してよい。
【0018】
有用なアニオン系補助界面活性剤には、特にC〜C22−アルカンスルホン酸塩、C〜C22−アルキルベンゼンスルホン酸塩、C〜C22−アルキル硫酸塩、C〜C22−脂肪酸エステルスルホン酸塩、C〜C22−脂肪アルコールエーテル硫酸塩、脂肪酸セッケン又はそれらの混合物が含まれる。アニオン系補助界面活性剤は、完成した洗浄剤に対して3質量%以下の量、有利には0.5質量%〜1質量%の範囲の量で添加してよい。
【0019】
有用な非イオン系補助界面活性剤には、例えば13〜40モルのエチレンオキシドとC〜C22−アルコールとの付加物又は1〜40モルのエチレンオキシドとC〜C22−アルキルフェノールとの付加物及びアルキルポリグリコシドが含まれる。非イオン系補助界面活性剤は、完成した煤洗浄剤に対して8質量%以下の量で、特に6質量%以下の量で、より有利には2質量%以下の量で使用してよい。
【0020】
本発明の煤洗浄剤は、いわゆる通常製品として、濃縮物として、かつペーストとして存在してよく、その場合に、当業者はこれらの製品間の境界線が絶対的に明瞭でないことを認識している。
【0021】
通常製品は、一般に液状であり、それらの成分の構成溶液である。いわゆる濃縮物はそれらの成分の溶液又はエマルジョンであり、液状ないし粘稠性を有する。一般的な界面活性剤含有率は通常製品中で35質量%以下であり、濃縮物中で65質量%以下であり、そしてペースト中で90質量%以下である。好適な機器により配量可能なペーストは考えられる第三の実施態様を構成する。ペーストには、有効成分が95質量%以下の量で含まれる。添加剤及び溶剤は有利にはペーストからは省かれる。
【0022】
一実施態様では、煤洗浄剤は錯化剤を含有し、これらは極度の水硬度による洗浄剤の性能低下を補償しうる。好適な錯化剤は、特に三リン酸五ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA−Na)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム(DTPA−Na)、1,3−プロピレンジアミン四酢酸四ナトリウム(1,3−PDTA−Na)である。それらの良好な生分解性のため、イミノジコハク酸(IDSA)、ニトリロ三酢酸(NTA)又はβ−アラニン二酢酸(β−ADA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDSA)及び2−ヒドロキシエチレンイミノ二酢酸(HEIDA)を基礎とする製品がそれらの遊離塩の形で、相応のナトリウム塩又はアンモニウム塩としても使用される。IDSA、NTA−Na及び/又はグルコン酸ナトリウムを使用することが好ましい。錯化剤は、完成した洗浄剤に対して15質量%以下の量で、有利には0.5質量%〜12質量%の範囲の量で使用することができる。該洗浄剤がリン酸塩を含有する場合に、錯化剤の量はより少量であってよい。
【0023】
洗浄力を高めるために、水混和性の有機溶剤が含まれていてよく、その場合に易脂溶性の溶剤が好ましい。好適な溶剤の例は、モノアルコール及びジアルコール、エーテルアルコール及びポリエーテルである。
【0024】
一般的な代表物として、イソプロパノール、ブチルグリコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジメチルグリコール及びメチルピロリドンを挙げることができる。低級エーテルアルコール、例えばアルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するモノ−又はジエチレンモノアルキルエーテルを使用することが好ましい。有機溶剤含有率は、完成した洗浄剤に対して30質量%以下、有利には20質量%以下、特に0.5質量%〜10質量%である。
【0025】
アルカリ化剤として挙げられる化合物以外では、本発明の煤洗浄剤の性能は、例えばポリリン酸塩及びピロリン酸塩、特にトリポリリン酸ナトリウム又はピロリン酸四カリウムのようなアルカリ塩を添加することによって高めることができる。しかしながらアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを使用することもできる。これらの塩は、有利には完成した洗浄剤に対して2質量%〜8質量%の量であるが、15質量%以下の量で使用される。
【0026】
本発明の煤洗浄剤中の個々の成分を安定化するために、洗浄剤は、可溶化剤、例えばクメンスルホン酸塩、オクチル硫酸塩、トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩又は尿素を含有してよい。これらの安定剤は、本発明の煤洗浄剤中に、完成した洗浄剤全てに対して10質量%以下の量で、特に1質量%〜6質量%の範囲の量で存在してよい。脂肪酸セッケンは同様に溶解特性を有する。従って、煤洗浄剤がセッケンを含有する場合には、可溶化剤の量は通常非常に低くてよい。
【0027】
更なる随意の構成成分として、本発明の煤洗浄剤は、無機中性塩、染料、香料、増粘剤及び腐蝕防止剤、そして適宜に殺菌剤を含有してもよい。有利には添加剤の量は、完成した洗浄剤に対して5質量%以下、有利には2質量%以下、特に0.05質量%〜1質量%の範囲である。工業用途の洗浄剤において慣用の更なる助剤が同様に存在してよいが、これらは本発明による効果を減退させないことを前提とする。
【0028】
本発明の可能な一実施態様では、洗浄剤は、5質量%〜30質量%のポリアスパラギン酸、2質量%〜45質量%の錯化剤、0.1質量%〜10質量%の更なる非イオン系の乳化剤又は界面活性剤、0.1質量%〜10質量%のアニオン系界面活性剤、0.1質量%〜10質量%のアルカリ化剤、0.1質量%〜5質量%のアルカリ錯化剤、0.1質量%〜30質量%の水混和性の有機溶剤及び0.1質量%〜8質量%の更なる添加剤、例えば可溶化剤、増粘剤、染料及び香料を含有する。
【0029】
洗浄試験により、本発明による煤洗浄剤が、例えば重油燃焼ボイラ又は石炭燃焼ボイラ中に生じ、煤に加えて更には灰を含有する汚れにも非常に効果的であることが示された。
【0030】
更に、本発明は、硬質表面、特にトンネルライニング、道路標識、信号機、加熱用装置、エンジン、窓ガラス、車体、煤塵フィルタ又は家屋の外装を洗浄化するための、前記の煤洗浄剤の使用に関する。
【0031】
更に、本発明は、本発明による煤洗浄剤を使用して洗浄機で慣用のように表面を洗浄することによる表面の機械洗浄のための方法を提供する。
【実施例】
【0032】
実施例1
外装及びトンネルライニング上の煤に対する洗浄
【0033】
【表1】

【0034】
実施例2
エンジンブロック上の煤に対する洗浄
【0035】
【表2】

【0036】
実施例3
窓ガラス上の煤膜用のガラス洗浄剤
【0037】
【表3】

【0038】
実施例4
煤と灰に対する用途の重油燃焼ボイラ用洗浄剤
【0039】
【表4】

【0040】
驚くべきことに本発明の洗浄剤配合物は、煤けた表面上で優れた洗浄力を示す。先行技術で水溶性の高分子ポリカルボキシレートにより洗浄される汚れとは異なり、煤は中性電荷を有し、夾雑物成分と一緒になって油膜を形成するものである。しかしながら、本洗浄剤は特に煤に対するものであり、その際、本発明による煤洗浄剤が卓越している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煤けた表面の洗浄のための水溶性の高分子ポリカルボキシレートの使用。
【請求項2】
水溶性の高分子ポリカルボキシレートとしてポリアスパラギン酸を使用する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
錯化剤、有利にはイミノジコハク酸を基礎とする製品を付加的に使用する、請求項1記載の使用。
【請求項4】
乳化剤又は界面活性剤を付加的に使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
煤けた表面の洗浄法において、水溶性の高分子ポリカルボキシレートを使用することを特徴とする方法。
【請求項6】
煤けた表面が、トンネルライニング、道路標識、信号機、加熱用装置、エンジン、煤塵フィルタ、窓ガラス、車体又は家屋の外装である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
水溶性の高分子ポリカルボキシレート、有利にはポリアスパラギン酸を含有する煤洗浄剤。
【請求項8】
界面活性剤又は乳化剤及び/又は錯化剤を更に含有する、請求項7記載の煤洗浄剤。
【請求項9】
錯化剤として、イミノジコハク酸を基礎とする製品を使用する、請求項8記載の煤洗浄剤。
【請求項10】
煤と灰を含有する汚れに適用する、請求項7又は8記載の煤洗浄剤。

【公開番号】特開2006−131909(P2006−131909A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319426(P2005−319426)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】D−51369 Leverkusen、 Germany
【Fターム(参考)】