説明

照明付きノズル

【課題】溶接装置において、ノズルの先端が溶接面に向いているか否かを目視で確認しなければならず、細密な溶接のために、照明を溶接面に正確にセットし直さなければならなかった。
【解決手段】本発明は、フレキシブルチューブ3の先端に、ノズル4が取り付けられ、このノズル4内に光源8を配置してノズル4先端から光が照射すると共に、チューブ3からの流体がノズル4から噴射するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明を内部に取り付けたノズルに関し、その一例としてレーザ溶接装置の不活性ガスを噴射するノズル内に、光源を内蔵した照明付きノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接装置には、噴射ノズルから冷却媒体(オイルや水等)を噴出しながら冷却して溶接材を溶接しているものがあるが、溶接する部分が暗がりとなるため、溶接部分を明るく照らすためのライトを必要としている。従来の溶接装置の照明装置は、溶接トーチの近傍か、又は溶接トーチに添わせる状態で取り付けられ、溶接材の溶接部分を斜め方向や垂直方向から照明している。
【0003】
さらに、精密金属部品の溶接や小型や大型金型の修正、医療器具の溶接、センサーの溶接、シートメタル加工等の精密な溶接に用いられるレーザ溶接装置において、溶接面が酸化しないように不活性ガス(アルゴンガスやヘリウムガス、窒素ガス等)を溶接面にノズルから噴射しなら、このノズルとは別のフレキシブルなチューブの先端に設けたライトから溶接部分に光を照射しながら溶接作業を行っている。
【特許文献1】特開2005−111551号公報
【特許文献2】特開2003−326368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の溶接装置の照明装置は、溶接作業に伴って冷却媒体の噴射ノズルと照明装置の両方を調節しなければならず、特に後者のレーザ溶接装置の場合は不活性ガスを噴射するフレキシブルなノズルとフレキシブルなチューブの照明装置とは全く別体であるので、ノズルから不活性ガスを溶接面に噴射する場合に、ノズルの先端が溶接面に向いているか否かを目視で確認しなければならない。しかも、溶接面の移動に伴って照明装置が必ずしも溶接面を的確に照射していないこともあるので、細密な溶接のために、照明装置のライトが溶接面に正確に照らすようにセットし直さなければならなかった。また、溶接に際してヒューム(煙)が発生して、その煤が照明装置に付着して時間とともに照明効率を低下させるという問題もあった。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決することを目的としてなされたものであり、溶接面を照明装置で照らせばそれと同時に、気体や液体等の流体が溶接面に的確に噴射される照明付きノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためこの発明の照明付きノズルは、フレキシブルチューブの先端に、ノズルが取り付けられ、このノズル内に光源を配置してノズルの先端から光が照射すると共に、チューブからの流体がノズルから噴射するよう構成した。
【0007】
上記構成により、溶接面を照らすと流体が正確にその溶接面に向くことになり、照明される箇所と、流体が噴射される箇所がピッタリと一致する。さらに、光源はノズル内に配置されているので、ヒューム(煙)による煤で汚れない。また、流体が流れるノズル内に光源があるので、光源が高温になっても照明熱は上がらない。
【0008】
また、本発明の照明付きノズルは、ノズルの内周面に、流体が通過する切れ込みが入れられていることを特徴とする。
さらに、本発明の照明付きノズルは、光源がフレキシブルチューブ内の先端部に位置し、この光源がノズルの細管の流路の端部に嵌まり込んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の照明付きノズルは、光源が照らす溶接面と、ノズルからの流体の噴射先とは一致するので、溶接面を照明すれば、流体は溶接面に正確に噴射され、流体の噴出するノズルの角度を調整する必要が無いので、溶接作業や修正作業が容易であり、非常に作業効率が向上する。また、光源はノズル内に配置されているので、ヒューム(煙)による煤の影響は全く受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態である照明付きノズルを詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の照明付きノズルを装備したレーザ溶接装置の斜視図、図2は本発明の照明付きノズルの平面図、図3はノズルを分解した平面図、図4は図3の部分拡大図である。
【0011】
この実施の形態の照明付きノズル1は、可撓性を有するフレキシブルチューブ3内に、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを流し、ノズル4の先端から不活性ガスを噴射して溶接面の酸化を防止しつつ溶接作業や修正作業を行なう照明付きノズル1の一例である。
【0012】
前記フレキシブルチューブ3は、円錐台状部分5の先端に略球状の連結部6が形成された合成樹脂製のパーツ7が多数連結されており、それぞれの連結部6を円錐台状部分5の後端に気密に嵌め込んで、パーツ同士を長く連結してフレキシブルチューブ3を構成している。本発明のフレキシブルチューブ3は必ずしもこのような円錐台状のパーツ7を連結したものに限定されず、可撓性を有するチューブであればその構成は問わない。
【0013】
この実施の形態の照明付きノズル1の先端部に、光源8としてLED(発光ダイオード)が配置されている。ただし、光源8はLEDに限定されるものでなく、通常の小型電球やレーザ光線、光ファイバー等であってもよく、その種類は問わない。このLEDの光源8に電気を通電するための電線9がフレキシブルチューブ3内に配置されている。そして、フレキシブルチューブ3内の適当な箇所から外部に出て、電源に接続されている。なお、電線部分の孔10からも不活性ガスが漏れないように、シール剤等で完全に塞いでいる。
【0014】
フレキシブルチューブ3の先端には、ノズル4が気密に嵌め込まれている。このノズル4は金属製(例えば、真鍮で内面はクロムメッキを施す)であって、筒状の後端部18が前記球状の連結部6に嵌め込まれている。ノズル4の先端部は細管11であって不活性ガスが噴射できるように流路12を備える。図5はノズル4の後端からノズル4内を見た状態を示したものであるが、円形の中央部がノズル4の細管11の流路12であり、その外周に花びら状に切れ込み13が入れられており、不活性ガスが光源8のLEDに邪魔されることなくこの切れ込み13部分を通過してノズル4の先端から噴射できるように構成されている。
【0015】
図1は、前記照明付きノズル1をレーザ溶接装置2に取り付けた状態を示したものである。このレーザ溶接装置2はレーザヘッド14を備え、レーザ光照射部15は溶接作業のために適した位置にポジショニングすることが可能である。
【0016】
次に、上記照明付きノズルの使用状態について説明する。
一般的には、このレーザ溶接装置2は、種々の細密な溶接や加工に使用できるが、特に金型などの修正作業に使用して従来の金型の製作に比べて大幅な時間短縮が図られている。作業に際しては、図示していないが、作業テーブル上にチャックを載置し、そのチャック上に金型等のワーク16を固定する。そして、照明付きノズル1の光源8を点灯すると共に、不活性ガスをノズル4の先端から噴射しながら作業を行なう。図6は作業中の溶接面の拡大図である。
【0017】
金型16にレーザを当てながら、不具合な箇所を修正する。不活性ガスを高温となる溶接面に噴射しながら作業をすれば、金型表面の酸化を防止でき表面の荒れを防止できる。その際、顕微鏡17を覗きながらの作業になるが、従来は不活性ガスを噴射するノズルと照明用のライトとは別体であったので、不活性ガスのノズルとライトは別々に溶接面に位置合わせをしなければならなかった。
【0018】
本実施の形態の照明付きノズル1は、光源8が照らす先とノズル4からの不活性ガスの噴射先とが一致するので、溶接面を光源8で照らせばノズルは必ず溶接面に向いている。このため、照明の位置を合わせたり、不活性ガスの噴出する角度を目視で調整する必要が無いので、溶接作業や修正作業が容易となり、作業効率が向上する。
【0019】
さらに、光源8はノズル1内に配置されて不活性ガスが表面を流れているので、溶接作業により発生するヒューム(煙)による煤で汚れない。また、不活性ガスが流れるノズル4内に光源8があるので、高温となる光源8を用いても照明熱は上がらない。
【0020】
他の実施の形態
上記では、レーザ溶接装置2に本発明の照明付きノズル1を使用した例を説明したが、本発明は、ノズル4内に不活性ガスを流すものに限定されるものではなく、その他に、トーチ式の溶接装置において、オイルや水を冷却媒体とするノズルであっても適用できる。
【0021】
即ち、フレキシブルチューブの先端のノズル内に、絶縁を施した光源(TED,ライト等)を内装して、不活性ガスの代わりに流体物である水やオイルをノズルから噴射できるようにすればよい。溶接面を冷却するために噴射する冷却媒体の噴射位置と光源からの光の照明位置が一致するので、作業効率が向上することは前記と同様である。
【0022】
なお、前記フレキシブルチューブ3は、円錐台状部分5の先端に略球状の連結部6が形成された合成樹脂製のパーツ7を多数連結したが、本発明のチューブ3はゴム製のホースに網組み線を被覆したようなものでもよい。
【0023】
また、前記フレキシブルチューブとして、針金の埋め込まれた合成ゴム製のチューブのようなものであってもよい。用途に応じて材質は選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態の照明付きノズルを装備したレーザ溶接装置の斜視図である。
【図2】本発明の照明付きノズルの平面図である。
【図3】ノズルを分解した平面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】ノズルの後端部の平面図である。
【図6】作業中の溶接面の拡大図である
【符号の説明】
【0025】
1 照明付きノズル
2 レーザ溶接装置
3 フレキシブルチューブ
4 ノズル
5 円錐台状部分
6 連結部
7 パーツ
8 光源
9 電線
10 孔
11 細管
12 流路
13 切れ込み
14 レーザヘッド
15 レーザ光照射部
16 ワーク(金型)
17 顕微鏡
18 後端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルチューブの先端に、ノズルが取り付けられ、このノズル内に光源を配置してノズルの先端から光が照射すると共に、チューブからの流体がノズルから噴射するよう構成した照明付きノズル。
【請求項2】
ノズルの内周面に、流体が通過する切れ込みが入れられていることを特徴とする請求項1に記載の照明付きノズル。
【請求項3】
光源がフレキシブルチューブ内の先端部に位置し、この光源がノズルの細管の流路の端部に嵌まり込んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明付きノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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