照明光学系及びそれを用いた蛍光顕微鏡
【課題】照明の均一性を重視した上で、必要に応じて照明の均一性と明るさを調整することができる照明光学系を提供することを課題とする。
【解決手段】照明レンズ(L6)を通して標本面(O)に光を照射する照明光学系(100)であって、光源(S)と、光源から射出された光が入射する集光光学系(L1)と、各々複数のレンズ要素から形成される第1レンズアレイ面(LS1)及び第2レンズアレイ面(LS2)を含むレンズアレイ光学系と、を含むこと特徴とする。第1レンズアレイ面(LS1)は、照明レンズ(L6)の後側焦点位置と共役関係にある。第2レンズアレイ面(LS2)は、レンズアレイ光学系の後側焦点位置にあり、且つ、照明レンズ(L6)の瞳位置(E1)と共役関係にある。光源(S)と集光光学系(L1)は、第1レンズアレイ面(LS1)上に光源(S)の像が形成されるように配置される。
【解決手段】照明レンズ(L6)を通して標本面(O)に光を照射する照明光学系(100)であって、光源(S)と、光源から射出された光が入射する集光光学系(L1)と、各々複数のレンズ要素から形成される第1レンズアレイ面(LS1)及び第2レンズアレイ面(LS2)を含むレンズアレイ光学系と、を含むこと特徴とする。第1レンズアレイ面(LS1)は、照明レンズ(L6)の後側焦点位置と共役関係にある。第2レンズアレイ面(LS2)は、レンズアレイ光学系の後側焦点位置にあり、且つ、照明レンズ(L6)の瞳位置(E1)と共役関係にある。光源(S)と集光光学系(L1)は、第1レンズアレイ面(LS1)上に光源(S)の像が形成されるように配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系及び蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡の代表的な照明方法として、クリティカル照明とケーラー照明が知られている。
クリティカル照明は、標本上に光源像を形成する照明方法である。クリティカル照明では、明るい照明を実現できるが、標本上での明るさの分布は、光源の物理的な広がりに対する輝度分布(以降、光源の輝度分布と記す。)に依存する。より具体的には、光源の輝度分布と投影倍率によって決まる光源像の輝度分布がそのまま標本上での明るさの分布となる。このため、標本を均一に照明することが難しい。
【0003】
一方、ケーラー照明は、例えば蛍光顕微鏡等の照明では、対物レンズの瞳位置に光源像を形成する照明方法であり、標本上には視野絞りの像が形成される照明方法である。ケーラー照明では、得られる明るさはクリティカル照明に比べて劣る。しかしながら、標本上の明るさの分布は光源の輝度分布に依存しないため、標本をより均一に照明することができる。
【0004】
このように、照明の均一性と明るさとの間にはトレードオフが存在するが、一般に顕微鏡の照明では照明の均一性がより重視されるため、ケーラー照明が広く用いられている。
ケーラー照明における照明の均一性をさらに改善する技術として、特許文献1及び特許文献2が開示されている。ケーラー照明では、光源の輝度分布に依存した照明の不均一は抑制されるが、光源に対する角度により光度が異なる特性(以降、配光特性と記す。)に依存した照明の不均一は抑制されない。特許文献1及び特許文献2の技術では、フライアイレンズを用いて複数の光源像を形成することにより、光源の配光特性に依存した照明の不均一が抑制される。これにより、標本をさらに均一に照明することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−283879号公報
【特許文献2】特開2004−004169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、顕微鏡の照明光学系に求められる照明状態は常に一定ではない。照明の均一性を最大限維持したい場合もあれば、照明の均一性をある程度犠牲にしても明るさを向上させた場合もある。このように、顕微鏡の照明光学系には、基本的には照明の均一性を重視した上で、照明の均一性と明るさとのバランスを調整する機能が求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、一定の照明状態が実現されるのみであり、照明の均一性と明るさとのバランスは調整できない。
一方、特許文献2の技術では、対物レンズの瞳位置での各光源像の大きさを調整することにより、照明の明るさを調整することができる。しかしながら、特許文献2の技術では、ケーラー照明として最適な状態、つまり、対物レンズの瞳を光源像で満たした状態に調整できるだけである。従って、明るさの調整は、ケーラー照明として実現できる範囲内に制限される。
【0008】
また、特許文献2の技術は、各光源像の大きさは調整できるが、各光源像の位置(より厳密には中心位置)は調整できない。従って、光源像の一部が対物レンズの瞳の外側に形成される場合には、ケーラー照明として実現できる範囲の明るさでさえも得ることができない。
【0009】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、照明の均一性を重視した上で、必要に応じて照明の均一性と明るさを調整することができる照明光学系を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、照明レンズを通して標本面に光を照射する照明光学系であって、光源と、光源から射出された光が入射する集光光学系と、各々複数のレンズ要素から形成される第1レンズアレイ面及び第2レンズアレイ面を含むレンズアレイ光学系と、を含み、第1レンズアレイ面は、照明レンズの後側焦点位置と共役関係にあり、第2レンズアレイ面は、レンズアレイ光学系の後側焦点位置にあり、且つ、照明レンズの瞳位置と共役関係にあり、光源と集光光学系は、第1レンズアレイ面上に光源の像が形成されるように配置される照明光学系を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点に記載の照明光学系において、集光光学系はコレクタレンズであり、光源とコレクタレンズの少なくとも一方は、第2レンズアレイ面上に光源の像が複数形成される第1照明状態と、第1レンズアレイ面上に光源の像が形成される第2照明状態とを、切替えるための切替え手段として機能する照明光学系を提供する。
【0012】
本発明の第3の観点は、第2の観点に記載の照明光学系において、切替え手段は、光源とコレクタレンズとの距離を変化させる照明光学系を提供する。
本発明の第4の観点は、第2の観点に記載の照明光学系において、コレクタレンズは、複数のレンズを含み、切替え手段は、複数のレンズの一部を光軸方向に移動させる照明光学系を提供する。
【0013】
本発明の第5の観点は、第2の観点に記載の照明光学系において、コレクタレンズは、挿脱可能なレンズを含み、切替え手段は、レンズを光軸に対して挿脱させる照明光学系を提供する。
【0014】
本発明の第6の観点は、第2の観点乃至第5の観点のいずれか1つに記載の照明光学系において、さらに、レンズアレイ光学系と照明レンズの間に、リレー光学系を含み、HLを光源の光源高さとし、Φを照明レンズの瞳径とし、βCLを第2照明状態でのコレクタレンズの倍率とし、βRLをリレー光学系の倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL・βRL/Φ≦1.3 ・・・(1)
を満たす照明光学系を提供する。
【0015】
本発明の第7の観点は、第2の観点乃至第5の観点のいずれか1つに記載の照明光学系において、第2レンズアレイ面と瞳位置が一致するとき、HLを光源の光源高さとし、Φを照明レンズの瞳径とし、βCLを第2照明状態でのコレクタレンズの倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL/Φ≦1.3 ・・・(2)
を満たす照明光学系を提供する。
【0016】
本発明の第8の観点は、第1の観点に記載の照明光学系において、集光光学系は、コレクタレンズと、光源から射出された光をコレクタレンズに向けて反射するリフレクタと、を含む照明光学系を提供する。
【0017】
本発明の第9の観点は、第8の観点に記載の照明光学系において、リフレクタは、コレクタレンズにより第2レンズアレイ面上に光源の像が複数形成される第3照明状態と、コレクタレンズにより第1レンズアレイ面上に光源の像が形成され、且つ、第2レンズアレイ面上に光源の像が複数形成される第4照明状態とを、切替える切替え手段として機能する照明光学系を提供する。
【0018】
本発明の第10の観点は、第9の観点に記載の照明光学系において、第4照明状態では、コレクタレンズは、光源から射出され、直接にコレクタレンズに入射する照明光である直接光を第2レンズアレイ面上に集光させ、光源から射出され、リフレクタを反射してコレクタレンズに入射する照明光である間接光を第1レンズアレイ面上に集光させる照明光学系を提供する。
【0019】
本発明の第11の観点は、第9の観点または第10の観点に記載の照明光学系において、切替え手段は、リフレクタにより形成される光源の像の位置を変化させる照明光学系を提供する。
【0020】
本発明の第12の観点は、第1の観点乃至第11の観点のいずれか1項に記載の照明光学系において、コレクタレンズは、略コリメータ光学系である照明光学系を提供する。
本発明の第13の観点は、第1の観点乃至第12の観点のいずれか1項に記載の照明光学系において、照明レンズは、光学的な仕様の異なる複数の照明レンズを含み、照明光学系は、照明光学系の光軸上にいずれか1つが選択的に挿入される複数の照明レンズとともに使用される照明光学系を提供する。
【0021】
本発明の第14の観点は、第1の観点に記載の照明光学系において、集光光学系は、リフレクタのみからなる照明光学系を提供する。
本発明の第15の観点は、第1の観点乃至第14の観点のいずれか1項に記載の照明光学系を含む蛍光顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、照明の均一性を重視した上で、必要に応じて照明の均一性と明るさを調整することができる照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係る第1照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る第2照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図3A】図2に例示される照明光学系の光源像の大きさが小さい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。
【図3B】図2に例示される照明光学系の光源像の大きさが大きい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。
【図4】図2に例示される照明光学系の光源像の大きさと対物レンズの瞳径の関係について説明するための図である。
【図5A】光源とコレクタレンズの距離を変化させることにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
【図5B】光源とコレクタレンズの距離を変化させることにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える他の方法を例示した図である。
【図6A】コレクタレンズの構成を変更することにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
【図6B】コレクタレンズの構成を変更することにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える他の方法を例示した図である。
【図6C】コレクタレンズの構成を変更することにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える更に他の方法を例示した図である。
【図7A】本発明の実施例1に係る照明光学系の構成の変形例を例示した概略図である。
【図7B】図7Aに例示される照明光学系に含まれるリキッドファイバーの断面図である。
【図8】本発明の実施例1に係る照明光学系の構成の他の変形例を例示した概略図である。
【図9】本発明の実施例2に係る第3照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図10】本発明の実施例2に係る第4照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図11】本発明の実施例3に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図12】図11に例示される蛍光顕微鏡における照明光と蛍光の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1及び図2は、本実施例に係る照明光学系の構成を例示した概略図である。
図1及び図2に例示される照明光学系100は、光源S側から標本面O側に向かって順に、光源Sと、光源Sから射出された照明光が入射するコレクタレンズL1と、光源S側から順にレンズアレイL2及びレンズアレイL3を含むレンズアレイ光学系と、リレーレンズL4a及びリレーレンズL4bを含むリレー光学系と、反射素子M1と、標本面Oに照明光を照射する照明レンズとして機能する対物レンズL6と、を含んで構成されている。また、リレーレンズL4aとリレーレンズL4bの間には視野絞りL5が設けられている。
【0026】
レンズアレイL2は、光源S側に第1レンズアレイ面LS1を、標本面O側に平面を有している。また、レンズアレイL3は、光源S側に平面を、標本面O側に第2レンズアレイ面LS2を有している。レンズアレイ面LS1及びレンズアレイ面LS2の各々は、複数のレンズ要素をレンズ要素の光軸に対して垂直な面内に敷き詰めることにより形成されている。
【0027】
照明光学系100の構成要素間の詳細な位置関係は、以下のとおりである。
まず、第1レンズアレイ面LS1は、対物レンズL6の後側焦点位置と共役関係にある。また、視野絞りL5も、対物レンズL6の後側焦点位置と共役関係にある。従って、第1レンズアレイ面LS1と対物レンズL6の後側焦点位置と視野絞りL5はそれぞれ共役関係にある。なお、図1及び図2では、対物レンズL6の後側焦点位置が標本面O上にある状態が例示されている。また、第2レンズアレイ面LS2は、対物レンズL6の瞳位置E1と共役関係にある。
【0028】
以上のように構成された照明光学系100は、集光光学系であるコレクタレンズL1により形成される光源像の位置を変化させることにより、図1に例示されるケーラー照明(以降、第1照明状態と記す。)と図2に例示されるクリティカル照明(以降、第2照明状態と記す。)を、選択的に実現することができる。
【0029】
なお、詳細には後述するが、図1に例示される第1照明状態では、照明光学系100は、光源の輝度分布に依存する照明の不均一と光源の配光特性に依存する照明の不均一の両方が抑制された均一性の高いケーラー照明を実現できる。一方、図2に例示される第2照明状態では、照明光学系100は、従来のクリティカル照明に比べて照明の均一性が改善された照明を実現できる。従って、第2照明状態では、照明光学系100は、ケーラー照明(第1照明状態)より明るく、且つ、従来のクリティカル照明より均一性の高いクリティカル照明を実現できる。
【0030】
また、図1及び図2では、リレー光学系が例示されているが、リレー光学系は省略することも可能である。この場合、レンズアレイ面LS2と対物レンズL6の瞳位置E1が一致するように、照明光学系を構成すればよい。
【0031】
また、図1及び図2では、レンズアレイ光学系が2つのレンズアレイから構成されているが、レンズアレイ光学系は1つのレンズアレイから構成されても良い。この場合、レンズアレイ光学系は、レンズアレイの両面をそれぞれレンズアレイ面として構成し、標本面O側のレンズアレイ面がレンズアレイ光学系の後側焦点位置上に配置されるように構成すればよい。
【0032】
また、図1及び図2では、レンズアレイL2及びレンズアレイL3は、同一形状のレンズ要素からなる周期的な構造体として形成されているが、周期的な構造体でなくてもよい。レンズアレイL2及びレンズアレイL3は、光源の輝度分布や配光特性を分割できる構造を有していればよい。
【0033】
また、図1及び図2では、照明光学系100は対物レンズL6を介して標本面Oを照明する落射照明光学系として構成されているが、透過照明光学系として構成されてもよい。この場合、標本を照明するための照明レンズとして、対物レンズL6の代わりにコンデンサレンズが使用される。
【0034】
また、本実施例の照明光学系100は、光源として放電管を含む光源を用いた場合に特に効果的であるが、照明光学系100で使用される光源は放電管を有する光源に限定されない。
【0035】
以下、第1照明状態及び第2照明状態のそれぞれについて詳細に説明する。
まず、図1を参照しながら、照明光学系100の第1照明状態について説明する。
第1照明状態では、光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズL1により略平行光に変換されて、レンズアレイ光学系に入射する。レンズアレイ光学系に入射した照明光は、レンズアレイ面LS1で分割されて、分割された照明光の各々が第2レンズアレイ面LS2上に集光する。このため、第2レンズアレイ面LS2上には、照明光が入射するレンズ要素と同じ数だけ、光源像S1が形成される。
【0036】
なお、光源像S1の各々は、光源Sから射出される照明光の一部で、且つ、光源Sからの射出角度がある範囲内にある照明光により形成されている。また、光源像S1の各々で上記の射出角度の範囲は異なっている。例えば、光軸OA上に形成される光源像S1は、光軸OAに対して小さな射出角度の照明光から形成されている。これに対して、光軸OAからずれた位置に形成される光源像S1は、光軸OAに対して大きな射出角度の照明光から形成されている。従って、光源Sの配光特性は分割されて、分割された配光特性が光源像S1の各々に引き継がれることになる。
【0037】
このようにして形成された光源像S1の各々は、リレー光学系により光源像S2として対物レンズL6の瞳位置E1にリレーされる。そして、光源像S2の各々が標本面Oを照明する。従って、分割された配光特性を有する各光源像S2からの照明光が標本面Oに照射され、標本面Oで重なり合うことになる。その結果、光源Sの配光特性に依存した照明の不均一は抑制される。
【0038】
以上、第2レンズアレイ面LS2上に光源像S1が形成される第1照明状態(ケーラー照明)では、照明光学系100は、光源の輝度分布に依存する照明の不均一に加えて、光源の配光特性に依存する照明の不均一も抑制することができる。従って、均一性の高い照明を実現することができる。
【0039】
次に、図2を参照しながら、照明光学系100の第2照明状態について説明する。
第2照明状態では、光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズL1によりレンズアレイ光学系の入射面(第1レンズアレイ面LS1)に集光され、第1レンズアレイ面LS1上に光源像Saが形成される。そして、光源像Saは、レンズアレイ光学系及びリレー光学系のリレーレンズL4aにより、視野絞りL5上に光源像Sbとしてリレーされる。さらに、光源像Sbは、リレー光学系のリレーレンズL4b及び対物レンズL6により、光源像Scとして標本面Oにリレーされる。そして、光源像Scが標本面Oを照明する。このように、第2照明状態の照明光学系100は、標本面O上に光源像が形成されるクリティカル照明を実現している。第1の照明状態の光源像S1の大きさと第2の照明状態の光源像Saの大きさは光源像Saのほうが小さいので、第2のフライアイレンズ面では、第2の照明状態の光束径が細い。つまりリレー光学系を介して入射する対物レンズL6の瞳位置での光線高を比較すると、第1の照明状態では光源像が投影されているので光束径は太く、第2の照明状態は第1の照明状態よりも光束径が細くなる。つまり第1の照明状態のケーラー照明の場合よりも第2の照明状態のほうが光束径を細くできる。このため、対物レンズL6やリレー光学系で生じるビネッティングなどにより無駄になってしまう照明光を抑えて標本面Oまで到達させることができるため、第2の照明状態のほうがより明るい照明が実現できる。
【0040】
また対物レンズL6の瞳位置での光束径が細いため、瞳径の大きさが異なる対物レンズで、例えば瞳径が大きい低倍対物レンズから瞳径が小さい高倍対物レンズで、照明、観察する際にも第2の照明状態では明るく観察が可能となる。
【0041】
次に、第2照明状態での照明光学系100のレンズアレイ光学系の作用について説明する。図3Aは、光源像Saの大きさがレンズアレイ光学系のレンズ要素の大きさより小さい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。図3Bは光源像Saの大きさがレンズアレイ光学系のレンズ要素の大きさより大きい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。図4は、光源像Saの大きさと対物レンズL6の瞳径の関係について説明するための図である。
【0042】
まず、レンズアレイ面LS1上に形成される光源像Saの大きさがレンズ要素の大きさに比べて小さい場合、より厳密には、光源像Saが1つのレンズ要素内に投影されている場合について説明する。
【0043】
図3A(a)に例示されるように、光源像Saが1つのレンズ要素内に投影されている場合、光源像Saから射出される照明光は1つのレンズ要素内に入射する。そして、照明光はレンズアレイL2により分割されることなく標本面Oまで到達する。このため、図3A(b)に例示されるように、標本面O上の照明範囲A1の輝度分布は、光源像Saの輝度分布と同等であり、照明の均一性は良好でない。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしていないため、視野の周辺部分には照明光は照射されない。従って、視野の周辺部分は非常に暗くなってしまう。なお、これは、従来のクリティカル照明でも同様である。
【0044】
一方、図3B(a)に例示されるように、レンズアレイ面LS1上に形成される光源像Saの大きさがレンズ要素の大きさに比べて大きい場合、光源像Saから射出される照明光は複数のレンズ要素に入射する。このため、照明光はレンズアレイL2により分割されて、分割された照明光の各々が標本面Oに到達する。なお、照明光が分割されるとき、光源Sの輝度分布も分割され、分割された輝度分布が照明光の各々に引き継がれることになる。このため、図3B(b)に例示されるように、標本面O上の照明範囲A1の輝度分布は、分割された輝度分布を重ねた輝度分布となり、従来のクリティカル照明に比べて照明の均一性が改善される。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしているため、視野全体に照明光が照射されることになる。
【0045】
以上、第1レンズアレイ面L1上に光源像Saが形成される第2照明状態(クリティカル照明)では、照明光学系100は、光源像Saの大きさをレンズアレイ光学系のレンズ要素の大きさより大きくすることで、従来のクリティカル照明より均一性の高い照明を実現できる。
【0046】
なお、第2照明状態では照明光学系100は、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。
0.1≦HL・βCL・βRL/Φ≦1.3 ・・・(1)
ただし、HLは、光源Sの光源高さであり、βCLは、第2照明状態でのコレクタレンズL1の倍率であり、βRLは、リレー光学系の倍率であり、Φは、対物レンズL6の瞳径である。
【0047】
図4に例示されるように、第2照明状態では、第1レンズアレイ面LS1上の光源像Saの大きさは、光源Sの光源高さHLとコレクタレンズL1の倍率βCLから算出され、HL・βCLとなる。また、対物レンズL6の瞳位置E1と第2レンズアレイ面LS2は共役関係にある。このため、対物レンズL6の瞳を第2レンズアレイ面LS2上に投影すると、その大きさ(以降、逆投影瞳径と記す。)は、対物レンズL6の瞳径Φとリレー光学系の倍率βRLから算出され、Φ/βRLとなる。
【0048】
つまり、条件式(1)は、光源像Saの大きさ(HL・βCL)と逆投影瞳径(Φ/βRL)の関係を規定している。条件式(1)を満たすことで、標本面Oに到達するまでに生じる照明光の光量の損失を抑えた上で、従来のクリティカル照明に比べて均一性の高い照明を実現することができる。
【0049】
条件式(1)の上限値(1.3)を上回ると、光源像Saの大きさが逆投影瞳径に対して大きくなりすぎてしまう。この場合、光源像Saの大きさはレンズアレイL2のレンズ要素の大きさに対して十分に大きくなるため、照明の均一性は改善される。しかしながら、対物レンズL6の瞳の外側を通過する照明光が多くなり、その結果、標本面Oまで到達できる照明光の光量が低下する。
【0050】
一方、条件式(1)の下限値(0.1)を下回ると、逆投影瞳径が光源像Saの大きさに対して大きくなりすぎてしまう。この場合、リレー光学系や対物レンズ内でケラレが生じる。このため、標本面Oまで到達できる照明光の光量が低下する。また、この場合、光源像Saの大きさが小さいため、照明の均一性も十分に改善されない。ただし、照明の均一性については、レンズアレイL2のレンズ要素の大きさを調整することで改善することができる。
【0051】
なお、リレー光学系が省略され、レンズアレイ面LS2と対物レンズL6の瞳位置E1が一致するように構成された照明光学系の場合、条件式(1)の代わりに条件式(2)を満たすことが望ましい。
【0052】
0.1≦HL・βCL/Φ≦1.3 ・・・(2)
次に、コレクタレンズL1により形成される光源像の位置を変化させて、照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法について説明する。照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態の切替えは、光源SとコレクタレンズL1の少なくとも一方が切り替え手段として機能することにより実現される。
【0053】
図5A及び図5Bは、光源SとコレクタレンズL1との距離を変化させることにより、照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
図5Aに例示されるように、照明光学系100は、コレクタレンズL1を光軸方向に移動させることにより、光源SとコレクタレンズL1の間の距離を変化させ、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0054】
図5Bに例示されるように、照明光学系100は、光源Sを光軸方向に移動させることにより、光源SとコレクタレンズL1の間の距離を変化させ、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0055】
図6A、図6B、及び図6Cは、コレクタレンズL1の構成を変更することにより、照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
図6Aに例示されるように、コレクタレンズL1を凸レンズL1aと光軸に対して挿脱可能な凸レンズL1bとから構成する。その上で、照明光学系100は、凸レンズL1bを光軸に対して挿脱させることにより、コレクタレンズL1の焦点距離を変化させて、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0056】
図6Bに例示されるように、コレクタレンズL1を凸レンズL1cと光軸に対して挿脱可能な凹レンズL1dとから構成する。その上で、照明光学系100は、凹レンズL1dを光軸に対して挿脱させることにより、コレクタレンズL1の焦点距離を変化させて、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0057】
図6Cに例示されるように、コレクタレンズL1を凸レンズL1eと光軸方向に移動可能な凹レンズL1fとから構成する。その上で、照明光学系100は、凹レンズL1fを光軸方向に移動させることにより、コレクタレンズL1の焦点距離を変化させて、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0058】
なお、ここで、コレクタレンズL1は、略コリメータ光学系として構成されている。
以上、本実施例の照明光学系100は、光源Sの輝度分布に依存する照明の不均一と光源Sの配光特性に依存した照明の不均一の両方が抑制された均一性の高い第1照明状態と、第1照明状態より明るく、且つ、従来のクリティカル照明より均一性の高い第2照明状態を、選択的に実現することができる。
【0059】
また、照明光学系100は、コレクタレンズL1により形成される光源像の位置を変化させるだけで、第1照明状態と第2照明状態を切り替えることができる。光源像の位置の変更は、上述したように、光源SまたはコレクタレンズL1が切替え手段として機能することで実現されるため、照明光学系100の構成が過度に複雑化することはない。
【0060】
なお、顕微鏡に求められる照明状態は対物レンズの光学的な仕様によっても変化する。従って、本実施例の照明光学系100は、倍率等の光学的な仕様が異なるさまざまな対物レンズを切替えて使用する顕微鏡での使用に好適である。
【0061】
図7Aは、本実施例に係る照明光学系の構成の変形例を例示した概略図である。図7Aに例示される照明光学系101は、リキッドファイバーLGから射出される照明光を用いる点が、図1及び図2に例示される照明光学系100と異なっている。他の構成は、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様である。
【0062】
図7Bは、図7Aに例示される照明光学系に含まれるリキッドファイバーの断面図である。リキッドファイバーLGは、図7Bに例示されるように、ファイバーのコア部分に液体が充填された光ファイバーである。光源から射出される照明光を直接用いる代わりに、リキッドファイバーLGから射出される照明光を用いても、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様の効果を得ることができる。
【0063】
図8は、本実施例に係る照明光学系の構成の他の変形例を例示した概略図である。図8に例示される照明光学系102は、コレクタレンズが省略されている点が、図1及び図2に例示される本実施例に係る照明光学系100と異なっている。他の構成は、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様である。
【0064】
図8に例示される照明光学系102は、光源SとリフレクタRを同時に移動させることによって、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様に、第1照明状態と第2照明状態を、選択的に実現することができる。
【実施例2】
【0065】
図9及び図10は、本実施例に係る照明光学系の構成を例示した概略図である。
図9及び図10に例示される照明光学系200の構成は、光源Sから射出された照明光をコレクタレンズL1に向けて反射するリフレクタR1を含む点を除き、図1及び図2に例示される照明光学系100の構成と同様である。
【0066】
照明光学系200では、光源Sから直接コレクタレンズL1に入射する照明光(以降、直接光と記す。)に加え、光源Sから射出され、リフレクタR1を介してコレクタレンズL2に入射する照明光(以降、間接光と記す。)も標本面O(不図示)に照射される。
【0067】
照明光学系200は、リフレクタR1が形成する光源像の位置を変化させることにより、図9に例示される照明状態(以降、第3照明状態と記す。)と、図10に例示される照明状態(以降、第4照明状態と記す。)を選択的に実現することができる。
【0068】
なお、照明光学系200の第3照明状態と第4照明状態を切替えるは、リフレクタR1が切り替え手段として機能することにより実現される。具体的には、リフレクタR1が光軸方向に移動することにより、第3照明状態と第4照明状態を切替えが可能である。
【0069】
以下、第3照明状態と第4照明状態のそれぞれについて説明する。
図9に例示される第3照明状態では、リフレクタR1により形成される光源像SSの位置が光源Sの位置と一致している。このため、直接光と間接光は、同じ経路を通って標本面O(不図示)に到達する。
【0070】
具体的には、照明光(直接光及び間接光)は、コレクタレンズL1により略平行光に変換されて、レンズアレイ光学系に入射する。レンズアレイ光学系に入射した照明光は、レンズアレイ面LS1で分割されて、分割された照明光の各々が第2レンズアレイ面LS2上に集光する。このため、第2レンズアレイ面LS2上には、照明光が入射するレンズ要素と同じ数だけ、光源像S1が形成される。これは、図1に例示される照明光学系100の第1照明状態と同様である。
【0071】
従って、第3照明状態では、照明光学系200は、光源の輝度分布に依存する照明の不均一と光源の配光特性に依存する照明の不均一とが抑制された、均一性の高いケーラー照明を実現することができる。また、第3照明状態では、間接光も標本面O(不図示)に照射される。このため、第3照明状態では、照明光学系200は、第1照明状態と同等の照明の均一性を確保しながら、より明るい照明を実現することができる。
【0072】
図10に例示される第4照明状態では、リフレクタR1により形成される光源像SSの位置が光源Sの位置は一致していない。このため、直接光と間接光は、異なる経路を通って標本面O(不図示)に到達する。
【0073】
具体的には、直接光は、第2レンズアレイ面LS2上に集光し、第2レンズアレイ面LS2上に光源像S1が形成される。一方、間接光は、コレクタレンズL1によりレンズアレイ光学系の入射面(第1レンズアレイ面LS1)に集光され、第1レンズアレイ面LS1上に光源像Saが形成される。
【0074】
従って、第4照明状態では、照明光学系200は、直接光による第1照明状態と同等のケーラー照明と、間接光による第2照明状態と同等のクリティカル照明とを同時に実現している。
【0075】
このような構成では、ケーラー照明である第3照明状態の場合には、光路中の光学素子(例えば、対物レンズや蛍光キューブなど)でケラレ等が生じて標本面O(不図示)まで到達することのできない照明光の一部を、クリティカル照明として利用することができる。このため、第3照明状態よりも明るい照明が実現される。
【0076】
以上、本実施例の照明光学系200は、第1照明状態より明るく、且つ、第1照明状態と同様に均一性の高い第3照明状態と、第1照明状態と第2照明状態を同時に実現した第4照明状態を、選択的に実現することができる。
【0077】
なお、顕微鏡の照明では一般に照明の均一性が重視されるため、光源Sと間接光による光源像SSが一致するときに、ケーラー照明が実現される構成を例示したが、特にこれに限られない。光源Sと間接光による光源像SSが一致するときに、クリティカル照明が実現される構成としてよい。
【実施例3】
【0078】
図11は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した概略図である。図11に例示される蛍光顕微鏡300は、図1及び図2に例示される実施例1に係る照明光学系100と同等の照明光学系301を含む蛍光顕微鏡である。
【0079】
図11に例示される蛍光顕微鏡300は、ステージST上の標本面Oを照明する照明光学系301と、開口絞りASと、蛍光キューブFCと、結像レンズTLと、撮像素子302と、撮像素子302を制御する制御装置303と、標本面Oの画像を表示するモニタ304と、を含んでいる。蛍光キューブFCは、励起フィルターEF、ダイクロイックミラーDM、及びバリアフィルターBFを含んでいる。また、開口絞りASは、第2レンズアレイ面LS2近傍に設けられている。
【0080】
光源Sから射出された照明光は、照明光学系301内を進行し、励起フィルターEFに入射する。励起に適した波長の照明光は励起フィルターEFを透過する。励起フィルターEFを透過した照明光は、ダイクロイックミラーDMを反射し、対物レンズL6を介して標本面Oを照明する。
【0081】
照明光が照射された標本面Oでは、蛍光物質が励起されて、蛍光が射出される。蛍光は、対物レンズL6を介して入射するダイクロイックミラーDMを透過する。不要な波長の光は、バリアフィルターBFにより遮断されるため、所望の波長の蛍光のみが結像レンズTLにより撮像素子302に導かれる。撮像素子302では、蛍光は光電変換により電気信号に変換される。電気信号は制御装置303へ送信され画像を生成する。制御装置303は、表示装置304に標本面Oの蛍光画像を表示させる。
【0082】
本実施例に係る蛍光顕微鏡300によれば、実施例1に係る照明光学系100と同等の照明光学系301を含んでいるため、光源Sの輝度分布に依存する照明の不均一と光源Sの配光特性に依存した照明の不均一の両方が抑制された均一性の高い第1照明状態と、第1照明状態より明るく、且つ、従来のクリティカル照明より均一性の高い第2照明状態を、選択的に実現することができる。
【0083】
なお、図11では、蛍光顕微鏡300に含まれる照明光学系が、実施例1に係る照明光学系100と同等である例を示したが、特にこれに限られない。本実施例に係る蛍光顕微鏡300は、実施例2に係る照明光学系200を含んでもよい。この場合、本実施例に係る蛍光顕微鏡300は、第1照明状態より明るく、且つ、第1照明状態と同様に均一性の高い第3照明状態と、第1照明状態と第2照明状態を同時に実現した第4照明状態を、選択的に実現することができる。
【0084】
図12は、本実施例に係る蛍光顕微鏡における照明光と蛍光の関係を説明するための図である。図12を参照しながら、実施例1及び実施例2に係る照明光学系は、蛍光顕微鏡へ適用される光学系として特に好適であることについて説明する。
【0085】
照明光学系301を含む蛍光顕微鏡300は、標本面Oで反射された反射光を観察するのではなく、標本面Oに存在する蛍光物質から生じる蛍光LUを検出して標本面Oを観察する顕微鏡である。蛍光は、照明光の入射角(照明の開口数)によらず、さまざまな方向に放出されるため、蛍光顕微鏡300では、反射光を検出する顕微鏡とは異なり、対物レンズL6に取り込まれる観察光の開口数は、照明の開口数に依存しない。
【0086】
このため、蛍光顕微鏡300では、照明光の開口数が観察画像へ及ぼす影響は比較的小さい。例えば、前述したように第2の照明状態の対物レンズL6の瞳での光束径が細く比較的小さな照明の開口数で照明した場合であっても、明るく良好に蛍光画像を観察することができる。従って、実施例1及び実施例2に係る照明光学系は、蛍光顕微鏡への適用が好適である。
【符号の説明】
【0087】
100、101、102、200、301・・・照明光学系
300 ・・・蛍光顕微鏡
302 ・・・撮像素子
303 ・・・制御装置
304 ・・・表示装置
S ・・・光源
SS、Sa、Sb、S1、S2 ・・・光源像
L1 ・・・コレクタレンズ
L2、L2 ・・・レンズアレイ
L4a、L4b ・・・リレーレンズ
L5 ・・・視野絞り
L6 ・・・対物レンズ
M1 ・・・反射素子
E1 ・・・対物レンズの瞳位置
R1 ・・・リフレクタ
O ・・・標本面
LG ・・・リキッドファイバー
AS ・・・開口絞り
ST ・・・ステージ
FC ・・・蛍光キューブ
EF ・・・励起フィルター
BF ・・・バリアフィルター
DM ・・・ダイクロイックミラー
TL ・・・結像レンズ
IL ・・・照明光
LU ・・・蛍光
OA ・・・光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系及び蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡の代表的な照明方法として、クリティカル照明とケーラー照明が知られている。
クリティカル照明は、標本上に光源像を形成する照明方法である。クリティカル照明では、明るい照明を実現できるが、標本上での明るさの分布は、光源の物理的な広がりに対する輝度分布(以降、光源の輝度分布と記す。)に依存する。より具体的には、光源の輝度分布と投影倍率によって決まる光源像の輝度分布がそのまま標本上での明るさの分布となる。このため、標本を均一に照明することが難しい。
【0003】
一方、ケーラー照明は、例えば蛍光顕微鏡等の照明では、対物レンズの瞳位置に光源像を形成する照明方法であり、標本上には視野絞りの像が形成される照明方法である。ケーラー照明では、得られる明るさはクリティカル照明に比べて劣る。しかしながら、標本上の明るさの分布は光源の輝度分布に依存しないため、標本をより均一に照明することができる。
【0004】
このように、照明の均一性と明るさとの間にはトレードオフが存在するが、一般に顕微鏡の照明では照明の均一性がより重視されるため、ケーラー照明が広く用いられている。
ケーラー照明における照明の均一性をさらに改善する技術として、特許文献1及び特許文献2が開示されている。ケーラー照明では、光源の輝度分布に依存した照明の不均一は抑制されるが、光源に対する角度により光度が異なる特性(以降、配光特性と記す。)に依存した照明の不均一は抑制されない。特許文献1及び特許文献2の技術では、フライアイレンズを用いて複数の光源像を形成することにより、光源の配光特性に依存した照明の不均一が抑制される。これにより、標本をさらに均一に照明することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−283879号公報
【特許文献2】特開2004−004169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、顕微鏡の照明光学系に求められる照明状態は常に一定ではない。照明の均一性を最大限維持したい場合もあれば、照明の均一性をある程度犠牲にしても明るさを向上させた場合もある。このように、顕微鏡の照明光学系には、基本的には照明の均一性を重視した上で、照明の均一性と明るさとのバランスを調整する機能が求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、一定の照明状態が実現されるのみであり、照明の均一性と明るさとのバランスは調整できない。
一方、特許文献2の技術では、対物レンズの瞳位置での各光源像の大きさを調整することにより、照明の明るさを調整することができる。しかしながら、特許文献2の技術では、ケーラー照明として最適な状態、つまり、対物レンズの瞳を光源像で満たした状態に調整できるだけである。従って、明るさの調整は、ケーラー照明として実現できる範囲内に制限される。
【0008】
また、特許文献2の技術は、各光源像の大きさは調整できるが、各光源像の位置(より厳密には中心位置)は調整できない。従って、光源像の一部が対物レンズの瞳の外側に形成される場合には、ケーラー照明として実現できる範囲の明るさでさえも得ることができない。
【0009】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、照明の均一性を重視した上で、必要に応じて照明の均一性と明るさを調整することができる照明光学系を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、照明レンズを通して標本面に光を照射する照明光学系であって、光源と、光源から射出された光が入射する集光光学系と、各々複数のレンズ要素から形成される第1レンズアレイ面及び第2レンズアレイ面を含むレンズアレイ光学系と、を含み、第1レンズアレイ面は、照明レンズの後側焦点位置と共役関係にあり、第2レンズアレイ面は、レンズアレイ光学系の後側焦点位置にあり、且つ、照明レンズの瞳位置と共役関係にあり、光源と集光光学系は、第1レンズアレイ面上に光源の像が形成されるように配置される照明光学系を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点に記載の照明光学系において、集光光学系はコレクタレンズであり、光源とコレクタレンズの少なくとも一方は、第2レンズアレイ面上に光源の像が複数形成される第1照明状態と、第1レンズアレイ面上に光源の像が形成される第2照明状態とを、切替えるための切替え手段として機能する照明光学系を提供する。
【0012】
本発明の第3の観点は、第2の観点に記載の照明光学系において、切替え手段は、光源とコレクタレンズとの距離を変化させる照明光学系を提供する。
本発明の第4の観点は、第2の観点に記載の照明光学系において、コレクタレンズは、複数のレンズを含み、切替え手段は、複数のレンズの一部を光軸方向に移動させる照明光学系を提供する。
【0013】
本発明の第5の観点は、第2の観点に記載の照明光学系において、コレクタレンズは、挿脱可能なレンズを含み、切替え手段は、レンズを光軸に対して挿脱させる照明光学系を提供する。
【0014】
本発明の第6の観点は、第2の観点乃至第5の観点のいずれか1つに記載の照明光学系において、さらに、レンズアレイ光学系と照明レンズの間に、リレー光学系を含み、HLを光源の光源高さとし、Φを照明レンズの瞳径とし、βCLを第2照明状態でのコレクタレンズの倍率とし、βRLをリレー光学系の倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL・βRL/Φ≦1.3 ・・・(1)
を満たす照明光学系を提供する。
【0015】
本発明の第7の観点は、第2の観点乃至第5の観点のいずれか1つに記載の照明光学系において、第2レンズアレイ面と瞳位置が一致するとき、HLを光源の光源高さとし、Φを照明レンズの瞳径とし、βCLを第2照明状態でのコレクタレンズの倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL/Φ≦1.3 ・・・(2)
を満たす照明光学系を提供する。
【0016】
本発明の第8の観点は、第1の観点に記載の照明光学系において、集光光学系は、コレクタレンズと、光源から射出された光をコレクタレンズに向けて反射するリフレクタと、を含む照明光学系を提供する。
【0017】
本発明の第9の観点は、第8の観点に記載の照明光学系において、リフレクタは、コレクタレンズにより第2レンズアレイ面上に光源の像が複数形成される第3照明状態と、コレクタレンズにより第1レンズアレイ面上に光源の像が形成され、且つ、第2レンズアレイ面上に光源の像が複数形成される第4照明状態とを、切替える切替え手段として機能する照明光学系を提供する。
【0018】
本発明の第10の観点は、第9の観点に記載の照明光学系において、第4照明状態では、コレクタレンズは、光源から射出され、直接にコレクタレンズに入射する照明光である直接光を第2レンズアレイ面上に集光させ、光源から射出され、リフレクタを反射してコレクタレンズに入射する照明光である間接光を第1レンズアレイ面上に集光させる照明光学系を提供する。
【0019】
本発明の第11の観点は、第9の観点または第10の観点に記載の照明光学系において、切替え手段は、リフレクタにより形成される光源の像の位置を変化させる照明光学系を提供する。
【0020】
本発明の第12の観点は、第1の観点乃至第11の観点のいずれか1項に記載の照明光学系において、コレクタレンズは、略コリメータ光学系である照明光学系を提供する。
本発明の第13の観点は、第1の観点乃至第12の観点のいずれか1項に記載の照明光学系において、照明レンズは、光学的な仕様の異なる複数の照明レンズを含み、照明光学系は、照明光学系の光軸上にいずれか1つが選択的に挿入される複数の照明レンズとともに使用される照明光学系を提供する。
【0021】
本発明の第14の観点は、第1の観点に記載の照明光学系において、集光光学系は、リフレクタのみからなる照明光学系を提供する。
本発明の第15の観点は、第1の観点乃至第14の観点のいずれか1項に記載の照明光学系を含む蛍光顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、照明の均一性を重視した上で、必要に応じて照明の均一性と明るさを調整することができる照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係る第1照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る第2照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図3A】図2に例示される照明光学系の光源像の大きさが小さい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。
【図3B】図2に例示される照明光学系の光源像の大きさが大きい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。
【図4】図2に例示される照明光学系の光源像の大きさと対物レンズの瞳径の関係について説明するための図である。
【図5A】光源とコレクタレンズの距離を変化させることにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
【図5B】光源とコレクタレンズの距離を変化させることにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える他の方法を例示した図である。
【図6A】コレクタレンズの構成を変更することにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
【図6B】コレクタレンズの構成を変更することにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える他の方法を例示した図である。
【図6C】コレクタレンズの構成を変更することにより、照明光学系の第1照明状態と第2照明状態を切替える更に他の方法を例示した図である。
【図7A】本発明の実施例1に係る照明光学系の構成の変形例を例示した概略図である。
【図7B】図7Aに例示される照明光学系に含まれるリキッドファイバーの断面図である。
【図8】本発明の実施例1に係る照明光学系の構成の他の変形例を例示した概略図である。
【図9】本発明の実施例2に係る第3照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図10】本発明の実施例2に係る第4照明状態での照明光学系の構成を例示した概略図である。
【図11】本発明の実施例3に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図12】図11に例示される蛍光顕微鏡における照明光と蛍光の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1及び図2は、本実施例に係る照明光学系の構成を例示した概略図である。
図1及び図2に例示される照明光学系100は、光源S側から標本面O側に向かって順に、光源Sと、光源Sから射出された照明光が入射するコレクタレンズL1と、光源S側から順にレンズアレイL2及びレンズアレイL3を含むレンズアレイ光学系と、リレーレンズL4a及びリレーレンズL4bを含むリレー光学系と、反射素子M1と、標本面Oに照明光を照射する照明レンズとして機能する対物レンズL6と、を含んで構成されている。また、リレーレンズL4aとリレーレンズL4bの間には視野絞りL5が設けられている。
【0026】
レンズアレイL2は、光源S側に第1レンズアレイ面LS1を、標本面O側に平面を有している。また、レンズアレイL3は、光源S側に平面を、標本面O側に第2レンズアレイ面LS2を有している。レンズアレイ面LS1及びレンズアレイ面LS2の各々は、複数のレンズ要素をレンズ要素の光軸に対して垂直な面内に敷き詰めることにより形成されている。
【0027】
照明光学系100の構成要素間の詳細な位置関係は、以下のとおりである。
まず、第1レンズアレイ面LS1は、対物レンズL6の後側焦点位置と共役関係にある。また、視野絞りL5も、対物レンズL6の後側焦点位置と共役関係にある。従って、第1レンズアレイ面LS1と対物レンズL6の後側焦点位置と視野絞りL5はそれぞれ共役関係にある。なお、図1及び図2では、対物レンズL6の後側焦点位置が標本面O上にある状態が例示されている。また、第2レンズアレイ面LS2は、対物レンズL6の瞳位置E1と共役関係にある。
【0028】
以上のように構成された照明光学系100は、集光光学系であるコレクタレンズL1により形成される光源像の位置を変化させることにより、図1に例示されるケーラー照明(以降、第1照明状態と記す。)と図2に例示されるクリティカル照明(以降、第2照明状態と記す。)を、選択的に実現することができる。
【0029】
なお、詳細には後述するが、図1に例示される第1照明状態では、照明光学系100は、光源の輝度分布に依存する照明の不均一と光源の配光特性に依存する照明の不均一の両方が抑制された均一性の高いケーラー照明を実現できる。一方、図2に例示される第2照明状態では、照明光学系100は、従来のクリティカル照明に比べて照明の均一性が改善された照明を実現できる。従って、第2照明状態では、照明光学系100は、ケーラー照明(第1照明状態)より明るく、且つ、従来のクリティカル照明より均一性の高いクリティカル照明を実現できる。
【0030】
また、図1及び図2では、リレー光学系が例示されているが、リレー光学系は省略することも可能である。この場合、レンズアレイ面LS2と対物レンズL6の瞳位置E1が一致するように、照明光学系を構成すればよい。
【0031】
また、図1及び図2では、レンズアレイ光学系が2つのレンズアレイから構成されているが、レンズアレイ光学系は1つのレンズアレイから構成されても良い。この場合、レンズアレイ光学系は、レンズアレイの両面をそれぞれレンズアレイ面として構成し、標本面O側のレンズアレイ面がレンズアレイ光学系の後側焦点位置上に配置されるように構成すればよい。
【0032】
また、図1及び図2では、レンズアレイL2及びレンズアレイL3は、同一形状のレンズ要素からなる周期的な構造体として形成されているが、周期的な構造体でなくてもよい。レンズアレイL2及びレンズアレイL3は、光源の輝度分布や配光特性を分割できる構造を有していればよい。
【0033】
また、図1及び図2では、照明光学系100は対物レンズL6を介して標本面Oを照明する落射照明光学系として構成されているが、透過照明光学系として構成されてもよい。この場合、標本を照明するための照明レンズとして、対物レンズL6の代わりにコンデンサレンズが使用される。
【0034】
また、本実施例の照明光学系100は、光源として放電管を含む光源を用いた場合に特に効果的であるが、照明光学系100で使用される光源は放電管を有する光源に限定されない。
【0035】
以下、第1照明状態及び第2照明状態のそれぞれについて詳細に説明する。
まず、図1を参照しながら、照明光学系100の第1照明状態について説明する。
第1照明状態では、光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズL1により略平行光に変換されて、レンズアレイ光学系に入射する。レンズアレイ光学系に入射した照明光は、レンズアレイ面LS1で分割されて、分割された照明光の各々が第2レンズアレイ面LS2上に集光する。このため、第2レンズアレイ面LS2上には、照明光が入射するレンズ要素と同じ数だけ、光源像S1が形成される。
【0036】
なお、光源像S1の各々は、光源Sから射出される照明光の一部で、且つ、光源Sからの射出角度がある範囲内にある照明光により形成されている。また、光源像S1の各々で上記の射出角度の範囲は異なっている。例えば、光軸OA上に形成される光源像S1は、光軸OAに対して小さな射出角度の照明光から形成されている。これに対して、光軸OAからずれた位置に形成される光源像S1は、光軸OAに対して大きな射出角度の照明光から形成されている。従って、光源Sの配光特性は分割されて、分割された配光特性が光源像S1の各々に引き継がれることになる。
【0037】
このようにして形成された光源像S1の各々は、リレー光学系により光源像S2として対物レンズL6の瞳位置E1にリレーされる。そして、光源像S2の各々が標本面Oを照明する。従って、分割された配光特性を有する各光源像S2からの照明光が標本面Oに照射され、標本面Oで重なり合うことになる。その結果、光源Sの配光特性に依存した照明の不均一は抑制される。
【0038】
以上、第2レンズアレイ面LS2上に光源像S1が形成される第1照明状態(ケーラー照明)では、照明光学系100は、光源の輝度分布に依存する照明の不均一に加えて、光源の配光特性に依存する照明の不均一も抑制することができる。従って、均一性の高い照明を実現することができる。
【0039】
次に、図2を参照しながら、照明光学系100の第2照明状態について説明する。
第2照明状態では、光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズL1によりレンズアレイ光学系の入射面(第1レンズアレイ面LS1)に集光され、第1レンズアレイ面LS1上に光源像Saが形成される。そして、光源像Saは、レンズアレイ光学系及びリレー光学系のリレーレンズL4aにより、視野絞りL5上に光源像Sbとしてリレーされる。さらに、光源像Sbは、リレー光学系のリレーレンズL4b及び対物レンズL6により、光源像Scとして標本面Oにリレーされる。そして、光源像Scが標本面Oを照明する。このように、第2照明状態の照明光学系100は、標本面O上に光源像が形成されるクリティカル照明を実現している。第1の照明状態の光源像S1の大きさと第2の照明状態の光源像Saの大きさは光源像Saのほうが小さいので、第2のフライアイレンズ面では、第2の照明状態の光束径が細い。つまりリレー光学系を介して入射する対物レンズL6の瞳位置での光線高を比較すると、第1の照明状態では光源像が投影されているので光束径は太く、第2の照明状態は第1の照明状態よりも光束径が細くなる。つまり第1の照明状態のケーラー照明の場合よりも第2の照明状態のほうが光束径を細くできる。このため、対物レンズL6やリレー光学系で生じるビネッティングなどにより無駄になってしまう照明光を抑えて標本面Oまで到達させることができるため、第2の照明状態のほうがより明るい照明が実現できる。
【0040】
また対物レンズL6の瞳位置での光束径が細いため、瞳径の大きさが異なる対物レンズで、例えば瞳径が大きい低倍対物レンズから瞳径が小さい高倍対物レンズで、照明、観察する際にも第2の照明状態では明るく観察が可能となる。
【0041】
次に、第2照明状態での照明光学系100のレンズアレイ光学系の作用について説明する。図3Aは、光源像Saの大きさがレンズアレイ光学系のレンズ要素の大きさより小さい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。図3Bは光源像Saの大きさがレンズアレイ光学系のレンズ要素の大きさより大きい場合のレンズアレイ光学系の作用を説明するための図である。図4は、光源像Saの大きさと対物レンズL6の瞳径の関係について説明するための図である。
【0042】
まず、レンズアレイ面LS1上に形成される光源像Saの大きさがレンズ要素の大きさに比べて小さい場合、より厳密には、光源像Saが1つのレンズ要素内に投影されている場合について説明する。
【0043】
図3A(a)に例示されるように、光源像Saが1つのレンズ要素内に投影されている場合、光源像Saから射出される照明光は1つのレンズ要素内に入射する。そして、照明光はレンズアレイL2により分割されることなく標本面Oまで到達する。このため、図3A(b)に例示されるように、標本面O上の照明範囲A1の輝度分布は、光源像Saの輝度分布と同等であり、照明の均一性は良好でない。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしていないため、視野の周辺部分には照明光は照射されない。従って、視野の周辺部分は非常に暗くなってしまう。なお、これは、従来のクリティカル照明でも同様である。
【0044】
一方、図3B(a)に例示されるように、レンズアレイ面LS1上に形成される光源像Saの大きさがレンズ要素の大きさに比べて大きい場合、光源像Saから射出される照明光は複数のレンズ要素に入射する。このため、照明光はレンズアレイL2により分割されて、分割された照明光の各々が標本面Oに到達する。なお、照明光が分割されるとき、光源Sの輝度分布も分割され、分割された輝度分布が照明光の各々に引き継がれることになる。このため、図3B(b)に例示されるように、標本面O上の照明範囲A1の輝度分布は、分割された輝度分布を重ねた輝度分布となり、従来のクリティカル照明に比べて照明の均一性が改善される。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしているため、視野全体に照明光が照射されることになる。
【0045】
以上、第1レンズアレイ面L1上に光源像Saが形成される第2照明状態(クリティカル照明)では、照明光学系100は、光源像Saの大きさをレンズアレイ光学系のレンズ要素の大きさより大きくすることで、従来のクリティカル照明より均一性の高い照明を実現できる。
【0046】
なお、第2照明状態では照明光学系100は、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。
0.1≦HL・βCL・βRL/Φ≦1.3 ・・・(1)
ただし、HLは、光源Sの光源高さであり、βCLは、第2照明状態でのコレクタレンズL1の倍率であり、βRLは、リレー光学系の倍率であり、Φは、対物レンズL6の瞳径である。
【0047】
図4に例示されるように、第2照明状態では、第1レンズアレイ面LS1上の光源像Saの大きさは、光源Sの光源高さHLとコレクタレンズL1の倍率βCLから算出され、HL・βCLとなる。また、対物レンズL6の瞳位置E1と第2レンズアレイ面LS2は共役関係にある。このため、対物レンズL6の瞳を第2レンズアレイ面LS2上に投影すると、その大きさ(以降、逆投影瞳径と記す。)は、対物レンズL6の瞳径Φとリレー光学系の倍率βRLから算出され、Φ/βRLとなる。
【0048】
つまり、条件式(1)は、光源像Saの大きさ(HL・βCL)と逆投影瞳径(Φ/βRL)の関係を規定している。条件式(1)を満たすことで、標本面Oに到達するまでに生じる照明光の光量の損失を抑えた上で、従来のクリティカル照明に比べて均一性の高い照明を実現することができる。
【0049】
条件式(1)の上限値(1.3)を上回ると、光源像Saの大きさが逆投影瞳径に対して大きくなりすぎてしまう。この場合、光源像Saの大きさはレンズアレイL2のレンズ要素の大きさに対して十分に大きくなるため、照明の均一性は改善される。しかしながら、対物レンズL6の瞳の外側を通過する照明光が多くなり、その結果、標本面Oまで到達できる照明光の光量が低下する。
【0050】
一方、条件式(1)の下限値(0.1)を下回ると、逆投影瞳径が光源像Saの大きさに対して大きくなりすぎてしまう。この場合、リレー光学系や対物レンズ内でケラレが生じる。このため、標本面Oまで到達できる照明光の光量が低下する。また、この場合、光源像Saの大きさが小さいため、照明の均一性も十分に改善されない。ただし、照明の均一性については、レンズアレイL2のレンズ要素の大きさを調整することで改善することができる。
【0051】
なお、リレー光学系が省略され、レンズアレイ面LS2と対物レンズL6の瞳位置E1が一致するように構成された照明光学系の場合、条件式(1)の代わりに条件式(2)を満たすことが望ましい。
【0052】
0.1≦HL・βCL/Φ≦1.3 ・・・(2)
次に、コレクタレンズL1により形成される光源像の位置を変化させて、照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法について説明する。照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態の切替えは、光源SとコレクタレンズL1の少なくとも一方が切り替え手段として機能することにより実現される。
【0053】
図5A及び図5Bは、光源SとコレクタレンズL1との距離を変化させることにより、照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
図5Aに例示されるように、照明光学系100は、コレクタレンズL1を光軸方向に移動させることにより、光源SとコレクタレンズL1の間の距離を変化させ、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0054】
図5Bに例示されるように、照明光学系100は、光源Sを光軸方向に移動させることにより、光源SとコレクタレンズL1の間の距離を変化させ、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0055】
図6A、図6B、及び図6Cは、コレクタレンズL1の構成を変更することにより、照明光学系100の第1照明状態と第2照明状態を切替える方法を例示した図である。
図6Aに例示されるように、コレクタレンズL1を凸レンズL1aと光軸に対して挿脱可能な凸レンズL1bとから構成する。その上で、照明光学系100は、凸レンズL1bを光軸に対して挿脱させることにより、コレクタレンズL1の焦点距離を変化させて、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0056】
図6Bに例示されるように、コレクタレンズL1を凸レンズL1cと光軸に対して挿脱可能な凹レンズL1dとから構成する。その上で、照明光学系100は、凹レンズL1dを光軸に対して挿脱させることにより、コレクタレンズL1の焦点距離を変化させて、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0057】
図6Cに例示されるように、コレクタレンズL1を凸レンズL1eと光軸方向に移動可能な凹レンズL1fとから構成する。その上で、照明光学系100は、凹レンズL1fを光軸方向に移動させることにより、コレクタレンズL1の焦点距離を変化させて、それによって、第1照明状態と第2照明状態とを選択的に切替えてもよい。
【0058】
なお、ここで、コレクタレンズL1は、略コリメータ光学系として構成されている。
以上、本実施例の照明光学系100は、光源Sの輝度分布に依存する照明の不均一と光源Sの配光特性に依存した照明の不均一の両方が抑制された均一性の高い第1照明状態と、第1照明状態より明るく、且つ、従来のクリティカル照明より均一性の高い第2照明状態を、選択的に実現することができる。
【0059】
また、照明光学系100は、コレクタレンズL1により形成される光源像の位置を変化させるだけで、第1照明状態と第2照明状態を切り替えることができる。光源像の位置の変更は、上述したように、光源SまたはコレクタレンズL1が切替え手段として機能することで実現されるため、照明光学系100の構成が過度に複雑化することはない。
【0060】
なお、顕微鏡に求められる照明状態は対物レンズの光学的な仕様によっても変化する。従って、本実施例の照明光学系100は、倍率等の光学的な仕様が異なるさまざまな対物レンズを切替えて使用する顕微鏡での使用に好適である。
【0061】
図7Aは、本実施例に係る照明光学系の構成の変形例を例示した概略図である。図7Aに例示される照明光学系101は、リキッドファイバーLGから射出される照明光を用いる点が、図1及び図2に例示される照明光学系100と異なっている。他の構成は、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様である。
【0062】
図7Bは、図7Aに例示される照明光学系に含まれるリキッドファイバーの断面図である。リキッドファイバーLGは、図7Bに例示されるように、ファイバーのコア部分に液体が充填された光ファイバーである。光源から射出される照明光を直接用いる代わりに、リキッドファイバーLGから射出される照明光を用いても、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様の効果を得ることができる。
【0063】
図8は、本実施例に係る照明光学系の構成の他の変形例を例示した概略図である。図8に例示される照明光学系102は、コレクタレンズが省略されている点が、図1及び図2に例示される本実施例に係る照明光学系100と異なっている。他の構成は、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様である。
【0064】
図8に例示される照明光学系102は、光源SとリフレクタRを同時に移動させることによって、図1及び図2に例示される照明光学系100と同様に、第1照明状態と第2照明状態を、選択的に実現することができる。
【実施例2】
【0065】
図9及び図10は、本実施例に係る照明光学系の構成を例示した概略図である。
図9及び図10に例示される照明光学系200の構成は、光源Sから射出された照明光をコレクタレンズL1に向けて反射するリフレクタR1を含む点を除き、図1及び図2に例示される照明光学系100の構成と同様である。
【0066】
照明光学系200では、光源Sから直接コレクタレンズL1に入射する照明光(以降、直接光と記す。)に加え、光源Sから射出され、リフレクタR1を介してコレクタレンズL2に入射する照明光(以降、間接光と記す。)も標本面O(不図示)に照射される。
【0067】
照明光学系200は、リフレクタR1が形成する光源像の位置を変化させることにより、図9に例示される照明状態(以降、第3照明状態と記す。)と、図10に例示される照明状態(以降、第4照明状態と記す。)を選択的に実現することができる。
【0068】
なお、照明光学系200の第3照明状態と第4照明状態を切替えるは、リフレクタR1が切り替え手段として機能することにより実現される。具体的には、リフレクタR1が光軸方向に移動することにより、第3照明状態と第4照明状態を切替えが可能である。
【0069】
以下、第3照明状態と第4照明状態のそれぞれについて説明する。
図9に例示される第3照明状態では、リフレクタR1により形成される光源像SSの位置が光源Sの位置と一致している。このため、直接光と間接光は、同じ経路を通って標本面O(不図示)に到達する。
【0070】
具体的には、照明光(直接光及び間接光)は、コレクタレンズL1により略平行光に変換されて、レンズアレイ光学系に入射する。レンズアレイ光学系に入射した照明光は、レンズアレイ面LS1で分割されて、分割された照明光の各々が第2レンズアレイ面LS2上に集光する。このため、第2レンズアレイ面LS2上には、照明光が入射するレンズ要素と同じ数だけ、光源像S1が形成される。これは、図1に例示される照明光学系100の第1照明状態と同様である。
【0071】
従って、第3照明状態では、照明光学系200は、光源の輝度分布に依存する照明の不均一と光源の配光特性に依存する照明の不均一とが抑制された、均一性の高いケーラー照明を実現することができる。また、第3照明状態では、間接光も標本面O(不図示)に照射される。このため、第3照明状態では、照明光学系200は、第1照明状態と同等の照明の均一性を確保しながら、より明るい照明を実現することができる。
【0072】
図10に例示される第4照明状態では、リフレクタR1により形成される光源像SSの位置が光源Sの位置は一致していない。このため、直接光と間接光は、異なる経路を通って標本面O(不図示)に到達する。
【0073】
具体的には、直接光は、第2レンズアレイ面LS2上に集光し、第2レンズアレイ面LS2上に光源像S1が形成される。一方、間接光は、コレクタレンズL1によりレンズアレイ光学系の入射面(第1レンズアレイ面LS1)に集光され、第1レンズアレイ面LS1上に光源像Saが形成される。
【0074】
従って、第4照明状態では、照明光学系200は、直接光による第1照明状態と同等のケーラー照明と、間接光による第2照明状態と同等のクリティカル照明とを同時に実現している。
【0075】
このような構成では、ケーラー照明である第3照明状態の場合には、光路中の光学素子(例えば、対物レンズや蛍光キューブなど)でケラレ等が生じて標本面O(不図示)まで到達することのできない照明光の一部を、クリティカル照明として利用することができる。このため、第3照明状態よりも明るい照明が実現される。
【0076】
以上、本実施例の照明光学系200は、第1照明状態より明るく、且つ、第1照明状態と同様に均一性の高い第3照明状態と、第1照明状態と第2照明状態を同時に実現した第4照明状態を、選択的に実現することができる。
【0077】
なお、顕微鏡の照明では一般に照明の均一性が重視されるため、光源Sと間接光による光源像SSが一致するときに、ケーラー照明が実現される構成を例示したが、特にこれに限られない。光源Sと間接光による光源像SSが一致するときに、クリティカル照明が実現される構成としてよい。
【実施例3】
【0078】
図11は、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した概略図である。図11に例示される蛍光顕微鏡300は、図1及び図2に例示される実施例1に係る照明光学系100と同等の照明光学系301を含む蛍光顕微鏡である。
【0079】
図11に例示される蛍光顕微鏡300は、ステージST上の標本面Oを照明する照明光学系301と、開口絞りASと、蛍光キューブFCと、結像レンズTLと、撮像素子302と、撮像素子302を制御する制御装置303と、標本面Oの画像を表示するモニタ304と、を含んでいる。蛍光キューブFCは、励起フィルターEF、ダイクロイックミラーDM、及びバリアフィルターBFを含んでいる。また、開口絞りASは、第2レンズアレイ面LS2近傍に設けられている。
【0080】
光源Sから射出された照明光は、照明光学系301内を進行し、励起フィルターEFに入射する。励起に適した波長の照明光は励起フィルターEFを透過する。励起フィルターEFを透過した照明光は、ダイクロイックミラーDMを反射し、対物レンズL6を介して標本面Oを照明する。
【0081】
照明光が照射された標本面Oでは、蛍光物質が励起されて、蛍光が射出される。蛍光は、対物レンズL6を介して入射するダイクロイックミラーDMを透過する。不要な波長の光は、バリアフィルターBFにより遮断されるため、所望の波長の蛍光のみが結像レンズTLにより撮像素子302に導かれる。撮像素子302では、蛍光は光電変換により電気信号に変換される。電気信号は制御装置303へ送信され画像を生成する。制御装置303は、表示装置304に標本面Oの蛍光画像を表示させる。
【0082】
本実施例に係る蛍光顕微鏡300によれば、実施例1に係る照明光学系100と同等の照明光学系301を含んでいるため、光源Sの輝度分布に依存する照明の不均一と光源Sの配光特性に依存した照明の不均一の両方が抑制された均一性の高い第1照明状態と、第1照明状態より明るく、且つ、従来のクリティカル照明より均一性の高い第2照明状態を、選択的に実現することができる。
【0083】
なお、図11では、蛍光顕微鏡300に含まれる照明光学系が、実施例1に係る照明光学系100と同等である例を示したが、特にこれに限られない。本実施例に係る蛍光顕微鏡300は、実施例2に係る照明光学系200を含んでもよい。この場合、本実施例に係る蛍光顕微鏡300は、第1照明状態より明るく、且つ、第1照明状態と同様に均一性の高い第3照明状態と、第1照明状態と第2照明状態を同時に実現した第4照明状態を、選択的に実現することができる。
【0084】
図12は、本実施例に係る蛍光顕微鏡における照明光と蛍光の関係を説明するための図である。図12を参照しながら、実施例1及び実施例2に係る照明光学系は、蛍光顕微鏡へ適用される光学系として特に好適であることについて説明する。
【0085】
照明光学系301を含む蛍光顕微鏡300は、標本面Oで反射された反射光を観察するのではなく、標本面Oに存在する蛍光物質から生じる蛍光LUを検出して標本面Oを観察する顕微鏡である。蛍光は、照明光の入射角(照明の開口数)によらず、さまざまな方向に放出されるため、蛍光顕微鏡300では、反射光を検出する顕微鏡とは異なり、対物レンズL6に取り込まれる観察光の開口数は、照明の開口数に依存しない。
【0086】
このため、蛍光顕微鏡300では、照明光の開口数が観察画像へ及ぼす影響は比較的小さい。例えば、前述したように第2の照明状態の対物レンズL6の瞳での光束径が細く比較的小さな照明の開口数で照明した場合であっても、明るく良好に蛍光画像を観察することができる。従って、実施例1及び実施例2に係る照明光学系は、蛍光顕微鏡への適用が好適である。
【符号の説明】
【0087】
100、101、102、200、301・・・照明光学系
300 ・・・蛍光顕微鏡
302 ・・・撮像素子
303 ・・・制御装置
304 ・・・表示装置
S ・・・光源
SS、Sa、Sb、S1、S2 ・・・光源像
L1 ・・・コレクタレンズ
L2、L2 ・・・レンズアレイ
L4a、L4b ・・・リレーレンズ
L5 ・・・視野絞り
L6 ・・・対物レンズ
M1 ・・・反射素子
E1 ・・・対物レンズの瞳位置
R1 ・・・リフレクタ
O ・・・標本面
LG ・・・リキッドファイバー
AS ・・・開口絞り
ST ・・・ステージ
FC ・・・蛍光キューブ
EF ・・・励起フィルター
BF ・・・バリアフィルター
DM ・・・ダイクロイックミラー
TL ・・・結像レンズ
IL ・・・照明光
LU ・・・蛍光
OA ・・・光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明レンズを通して標本面に光を照射する照明光学系であって、
光源と、
前記光源から射出された光が入射する集光光学系と、
各々複数のレンズ要素から形成される第1レンズアレイ面及び第2レンズアレイ面を含むレンズアレイ光学系と、を含み、
前記第1レンズアレイ面は、前記照明レンズの後側焦点位置と共役関係にあり、
前記第2レンズアレイ面は、前記レンズアレイ光学系の後側焦点位置にあり、且つ、前記照明レンズの瞳位置と共役関係にあり、
前記光源と前記集光光学系は、前記第1レンズアレイ面上に前記光源の像が形成されるように配置されることを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記集光光学系はコレクタレンズであり、
前記光源と前記コレクタレンズの少なくとも一方は、前記第2レンズアレイ面上に前記光源の像が複数形成される第1照明状態と、前記第1レンズアレイ面上に前記光源の像が形成される第2照明状態とを、切替えるための切替え手段として機能することを特徴とする照明光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記切替え手段は、前記光源と前記コレクタレンズとの距離を変化させることを特徴とする照明光学系。
【請求項4】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記コレクタレンズは、複数のレンズを含み、
前記切替え手段は、前記複数のレンズの一部を光軸方向に移動させることを特徴とする照明光学系。
【請求項5】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記コレクタレンズは、挿脱可能なレンズを含み、
前記切替え手段は、前記レンズを光軸に対して挿脱させることを特徴とする照明光学系。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の照明光学系において、さらに、
前記レンズアレイ光学系と前記照明レンズの間に、リレー光学系を含み、
HLを前記光源の光源高さとし、Φを前記照明レンズの瞳径とし、βCLを前記第2照明状態での前記コレクタレンズの倍率とし、βRLを前記リレー光学系の倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL・βRL/Φ≦1.3 ・・・(1)
を満たすことを特徴とする照明光学系。
【請求項7】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の照明光学系において、
前記第2レンズアレイ面と前記瞳位置が一致するとき、
HLを前記光源の光源高さとし、Φを前記照明レンズの瞳径とし、βCLを前記第2照明状態での前記コレクタレンズの倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL/Φ≦1.3 ・・・(2)
を満たすことを特徴とする照明光学系。
【請求項8】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記集光光学系は、
コレクタレンズと
前記光源から射出された光を前記コレクタレンズに向けて反射するリフレクタと、を含むことを特徴とする照明光学系。
【請求項9】
請求項8に記載の照明光学系において、
前記リフレクタは、前記コレクタレンズにより前記第2レンズアレイ面上に前記光源の像が複数形成される第3照明状態と、前記コレクタレンズにより前記第1レンズアレイ面上に前記光源の像が形成され、且つ、前記第2レンズアレイ面上に前記光源の像が複数形成される第4照明状態とを、切替える切替え手段として機能することを特徴とする照明光学系。
【請求項10】
請求項9に記載の照明光学系において、
前記第4照明状態では、前記コレクタレンズは、
前記光源から射出され、直接に前記コレクタレンズに入射する照明光である直接光を前記第2レンズアレイ面上に集光させ、
前記光源から射出され、前記リフレクタを反射して前記コレクタレンズに入射する照明光である間接光を前記第1レンズアレイ面上に集光させることを特徴とする照明光学系。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の照明光学系において、
前記切替え手段は、前記リフレクタにより形成される前記光源の像の位置を変化させることを特徴とする照明光学系。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の照明光学系において、
前記コレクタレンズは、略コリメータ光学系であることを特徴とする照明光学系。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12いずれか1項に記載の照明光学系において、
前記照明レンズは、光学的な仕様の異なる複数の前記照明レンズを含み、
前記照明光学系は、前記照明光学系の光軸上にいずれか1つが選択的に挿入される前記複数の前記照明レンズとともに使用されることを特徴とする照明光学系。
【請求項14】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記集光光学系は、リフレクタのみからなることを特徴とする照明光学系。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の照明光学系を含むことを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項1】
照明レンズを通して標本面に光を照射する照明光学系であって、
光源と、
前記光源から射出された光が入射する集光光学系と、
各々複数のレンズ要素から形成される第1レンズアレイ面及び第2レンズアレイ面を含むレンズアレイ光学系と、を含み、
前記第1レンズアレイ面は、前記照明レンズの後側焦点位置と共役関係にあり、
前記第2レンズアレイ面は、前記レンズアレイ光学系の後側焦点位置にあり、且つ、前記照明レンズの瞳位置と共役関係にあり、
前記光源と前記集光光学系は、前記第1レンズアレイ面上に前記光源の像が形成されるように配置されることを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記集光光学系はコレクタレンズであり、
前記光源と前記コレクタレンズの少なくとも一方は、前記第2レンズアレイ面上に前記光源の像が複数形成される第1照明状態と、前記第1レンズアレイ面上に前記光源の像が形成される第2照明状態とを、切替えるための切替え手段として機能することを特徴とする照明光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記切替え手段は、前記光源と前記コレクタレンズとの距離を変化させることを特徴とする照明光学系。
【請求項4】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記コレクタレンズは、複数のレンズを含み、
前記切替え手段は、前記複数のレンズの一部を光軸方向に移動させることを特徴とする照明光学系。
【請求項5】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記コレクタレンズは、挿脱可能なレンズを含み、
前記切替え手段は、前記レンズを光軸に対して挿脱させることを特徴とする照明光学系。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の照明光学系において、さらに、
前記レンズアレイ光学系と前記照明レンズの間に、リレー光学系を含み、
HLを前記光源の光源高さとし、Φを前記照明レンズの瞳径とし、βCLを前記第2照明状態での前記コレクタレンズの倍率とし、βRLを前記リレー光学系の倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL・βRL/Φ≦1.3 ・・・(1)
を満たすことを特徴とする照明光学系。
【請求項7】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の照明光学系において、
前記第2レンズアレイ面と前記瞳位置が一致するとき、
HLを前記光源の光源高さとし、Φを前記照明レンズの瞳径とし、βCLを前記第2照明状態での前記コレクタレンズの倍率とするとき、以下の条件式
0.1≦HL・βCL/Φ≦1.3 ・・・(2)
を満たすことを特徴とする照明光学系。
【請求項8】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記集光光学系は、
コレクタレンズと
前記光源から射出された光を前記コレクタレンズに向けて反射するリフレクタと、を含むことを特徴とする照明光学系。
【請求項9】
請求項8に記載の照明光学系において、
前記リフレクタは、前記コレクタレンズにより前記第2レンズアレイ面上に前記光源の像が複数形成される第3照明状態と、前記コレクタレンズにより前記第1レンズアレイ面上に前記光源の像が形成され、且つ、前記第2レンズアレイ面上に前記光源の像が複数形成される第4照明状態とを、切替える切替え手段として機能することを特徴とする照明光学系。
【請求項10】
請求項9に記載の照明光学系において、
前記第4照明状態では、前記コレクタレンズは、
前記光源から射出され、直接に前記コレクタレンズに入射する照明光である直接光を前記第2レンズアレイ面上に集光させ、
前記光源から射出され、前記リフレクタを反射して前記コレクタレンズに入射する照明光である間接光を前記第1レンズアレイ面上に集光させることを特徴とする照明光学系。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の照明光学系において、
前記切替え手段は、前記リフレクタにより形成される前記光源の像の位置を変化させることを特徴とする照明光学系。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の照明光学系において、
前記コレクタレンズは、略コリメータ光学系であることを特徴とする照明光学系。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12いずれか1項に記載の照明光学系において、
前記照明レンズは、光学的な仕様の異なる複数の前記照明レンズを含み、
前記照明光学系は、前記照明光学系の光軸上にいずれか1つが選択的に挿入される前記複数の前記照明レンズとともに使用されることを特徴とする照明光学系。
【請求項14】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記集光光学系は、リフレクタのみからなることを特徴とする照明光学系。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の照明光学系を含むことを特徴とする蛍光顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図3A】
【図3B】
【図7A】
【図7B】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図3A】
【図3B】
【図7A】
【図7B】
【図11】
【公開番号】特開2011−28249(P2011−28249A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143612(P2010−143612)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]