説明

照明機能を備えた電子機器

【課題】例えばキー接点用の回路パターンおよびLEDに電流供給するための回路パターンの相互の配置関係に制約を受けることがなく、設計の自由度を緩和させることができる照明機能を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】光透過性樹脂を基材として、当該基材の両面に銅箔層が形成された両面銅箔基板3が用いられ、前記基板の第1の面には、LED6が搭載されると共に、当該LEDに対する電流供給用の回路パターン4c,4dが形成される。前記基板の第2の面には、キー接点用の回路パターン4a,4bが形成され、これに対峙するようにしてキートップ2、およびドーム状のキー接点5が配置される。前記LED6からの光は、基板3の第1の面に貼着されたカバーレイフィルム7に導入され、光反射部7aを介して前記透明基板3を透過し、キートップ2に向かって投射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばキー操作部を裏面側から照明することができる照明機能を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話機等においては、フロントパネル(化粧板)の前面に複数の操作キーがマトリクス状に配列されており、暗い環境においてキー操作を行う場合には、キー操作部(キートップ)がケース内部側より照明され、操作ミスが防止できるように構成されている。
【0003】
図4は、従来の携帯電話機等におけるキー操作部を照明する構成例を断面図で示したものである。符号1は機器のフロントパネルであり、当該フロントパネル1に形成された各開口1aに、その裏面側より複数のキートップ2が挿入された状態で保持されている。前記各キートップ2は、光透過性の合成樹脂素材により成形されており、その前面には数字や記号等の表示が例えば印刷等の手段により形成されている。
【0004】
前記キートップ2が配列された裏面には、回路基板3が配置されており、当該回路基板3における一方の面、すなわちキートップ2に対峙する面には、各キートップ2に対応した部分にキー接点用パターン4a,4bが形成されている。
前記キー接点用パターン4a,4bは、中央の接点を構成するパターン4aと、このパターン4aを取り囲むようにして形成された外側のパターン4bとにより構成されており、外側のパターン4bにドーム状に形成された導電性のキー接点5が取り付けられている。
【0005】
したがって、前記各キートップ2をプッシュ操作することで、ドーム状に形成された前記キー接点5が変形し、キー接点5が中央の接点を構成するパターン4aに接触することでパターン4a,4b間が短絡され、これによりプッシュ操作を示す電気的な信号出力を得ることができる。
【0006】
一方、前記回路基板3における前記キー接点用パターン4a,4bが形成された面には、各キートップ2を照明するための複数のLED6が配置されている。これらLED6は例えばチップ型LEDが用いられ、前記回路基板3におけるキー接点用パターン4a,4bと同一面に隣接して形成された電流給電用のパターン4c,4dに直に取り付けられている。
【0007】
この構成により、暗い環境においてキー操作を行う場合には、前記LED6に駆動電流が通電され、これによるLED6からの光は、矢印に示すように各キートップ2を裏面側から照射し、これによりキーの誤操作が防止できるようになされる。
【0008】
前記したようにキートップを裏側から照射するようにしたキー操作部の照明装置については、次に示す先行技術文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−167659号公報
【特許文献2】特開平8−79354号公報
【0010】
ところで、前記した構成のキー操作部の照明装置においては、キートップと対峙する回路基板の一方の面に、キー接点用の複数のパターンと、照明用のLEDに電流供給するための回路パターンを少なくとも設ける必要があり、回路設計に制約を受けるという問題を抱えている。また、キートップと対峙する回路基板の一方の面にはドーム状に形成された導電性のキー接点やLEDを配置するスペース等も確保しなければならず、設計の自由度が制限されるなどの問題もあり、改良の余地が残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、前記した問題点を解消し、例えば前記したキー接点用の回路パターンおよびLEDに電流供給するための回路パターンの相互の配置関係に制約を受けることがなく、またLEDについても機能的に配置することができるなど、設計の自由度を大幅に緩和させることができる照明機能を備えた電子機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る照明機能を備えた電子機器は、光透過性樹脂を基材として、当該基材の両面に銅箔層が形成された両面銅箔基板が用いられ、前記基板の第1の面には、LEDが搭載されると共に、当該LEDに対する電流供給用の回路パターンが形成され、前記基板の第2の面には、機器に利用される回路パターンが形成されると共に、前記基板を透過した前記LEDからの光が投射される前記機器の被照射部が、前記第2の面に対峙するように配置されている点に特徴を有する。
【0013】
この場合、一つの好ましい形態においては、LEDが搭載された前記基板の第1の面に、光透過性の素材により構成されたカバーレイフィルムが貼着され、当該カバーレイフィルムの端部から導入された前記LEDからの光が、前記基板を透過して前記被照射部に至るように構成される。
【0014】
加えて、前記カバーレイフィルムにおける前記基板への非貼着面は表面処理により光反射部が形成されていることが望ましい。また前記した表面処理による光反射部に代えて、光反射体が配置された構成も採用し得る。
【0015】
そして、前記した照明機能を備えた電子機器の応用例として、前記機器の被照射部が、透明樹脂により形成されたキートップ部材になされ、前記基板の第2の面に形成された回路パターンが、キー接点用回路パターンになされたキー操作部の照明装置に好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
前記した照明機能を備えた電子機器によると、光透過性樹脂を基材とした両面銅箔基板が用いられ、当該基板の第1の面にはLEDと当該LEDへの電流供給用回路パターンが形成され、第2の面には機器に利用される例えばキー接点用の回路パターンが形成される。そして、前記LEDからの光が前記基板を透過して機器の被照射部に至るように構成される。
【0017】
これにより、前記した例えばキー接点用の回路パターンおよびLEDに電流供給するための回路パターンの相互の配置関係に制約を受けることがなく、またLEDについても機能的に配置することができるなど、設計の自由度を大幅に緩和させることができる照明機能を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明にかかる電子機器における主要部の構成を示した断面図である。
【図2】同じく第2の実施の形態を示した断面図である。
【図3】同じく第3の実施の形態を示した断面図である。
【図4】従来の電子機器における主要部の構成例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明にかかる照明機能を備えた電子機器について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に示す実施の形態は、すでに説明した図4に示す形態と同様に、キー操作部を備え当該キー操作部を照明することができる例えば携帯電話機等の電子機器に応用した例を示している。したがって、図1〜図3に示す各実施の形態においては、図4に示す各部と同一の機能を果たす部分をそれぞれ同一符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0020】
なお、図1〜図3に示す各実施の形態においては、光透過性樹脂を基材として、当該基材の両面に銅箔層が形成された両面銅箔基板3が用いられる。前記両面銅箔基板3における基材としては、熱可塑性耐熱樹脂である例えばポリアミドイミドフィルムを好適に用いることができる。これによると厚さが18μmの基材を例にした場合、400nm以下の波長の光透過率を80%以上確保することができる。
【0021】
まず、図1に示す実施の形態においては、基板3の第1の面(図に示す下側の面)には、LED6が搭載されると共に、当該LED6に対する電流供給用の回路パターン4c,4dが形成されている。すなわち、前記LED6としてチップ型LEDが用いられ、前記回路基板3の第1の面に形成されたLEDに対する電流給電用パターン4c,4dに直に取り付けられている。
【0022】
また、前記基板3の第2の面(キートップ2の配置側)には、機器に利用される回路パターン、すなわちこの実施の形態においては、キー接点用パターン4a,4bが形成されている。そして、外側のキー接点用パターン4bにドーム型のキー接点5がそれぞれ配置されている。
【0023】
前記回路基板3の第1の面に形成されたLED6からの光は、前記基板3に向かって投射され、前記基板3を透過した前記LEDからの光は、図1に矢印で示すように機器の被照射部、すなわちキートップ2に向かって投射される。キートップ2は前記したとおり、光透過性の合成樹脂素材により成形されており、これにより、キートップ2の前面に形成された数字や記号等が、前記LEDからの透過光によって明瞭に認識することができる。
【0024】
以上説明した図1に示す実施の形態によると、光透過性樹脂を基材とした両面銅箔基板3が用いられ、当該基板の第1の面にはLEDと当該LEDへの電流供給用回路パターン4c,4dが形成され、第2の面には機器に利用される例えばキー接点用の回路パターン4a,4bが形成され、前記LEDからの光が前記基板3を透過して機器の被照射部、すなわちキートップ2に向かって投射されるようになされる。
【0025】
したがって、前記した構成によると、例えばキー接点用の回路パターンおよびLEDに電流供給するための回路パターンは独立して形成することができるので、相互の回路パターンの配置関係に制約を受けることがなく、回路設計の自由度を緩和させることができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【0026】
次に図2に示す実施の形態においては、前記LED6が搭載された回路基板3の第1の面には、光透過性の素材により構成されたカバーレイフィルム7が接着層8を介して貼着されている。そして、前記LED6からの光はカバーレイフィルム7の端部から導入されるように構成されている。
【0027】
なおこの場合、例えばフィルムにより構成されたライトガイド(図示せず)を併用することで、前記LED6からの光は、図2に示すようにカバーレイフィルム7の端部に導入できるように構成することができる。
【0028】
加えて、図2に示す実施の形態においては、カバーレイフィルム7における前記基板3への非貼着面、すなわちカバーレイフィルム7における前記接着層8とは反対面に、表面処理(加工)による光反射部7aが形成されている。
【0029】
前記光反射部7aを形成するためのカバーレイフィルム7に施す表面処理としては、例えばレーザ光を用いてカバーレイフィルム7の表面を荒らす手段、もしくは前記レーザ光または機械的な処理によりカバーレイフィルムに例えば鋸歯状の凹凸加工を施すなどの手段を採用することができる。
【0030】
前記した構成によると、カバーレイフィルム7内に導入されたLEDからの光は、カバーレイフィルムに形成された光反射部7aを介して効率良く前記透明基板3に向かって投射することができる。そして、前記基板3を透過した前記LEDからの光は、図2に矢印で示すように機器の被照射部であるキートップ2に向かって投射される。
【0031】
図2に示した構成によると、前記したカバーレイフィルム7が光導光板としての機能を果たすことができるので、図1に示した構成による作用効果に加えて、LED6の実装数を減らすことができ、さらにカバーレイフィルム7が光拡散の効果を発揮した照明効果を得ることができる。
【0032】
図3に示す実施の形態においては、LED6が搭載された回路基板3の第1の面に、カバーレイフィルム7が同様に接着層8を介して貼着されており、前記LED6からの光はカバーレイフィルム7の端部から導入されるように構成されている。そして、カバーレイフィルム7における前記基板3への非貼着面、すなわちカバーレイフィルム7における前記接着層8とは反対面には、光反射体9が配置されている。
【0033】
前記光反射体9としては、金属製の素材により構成されたものでも良く、また非金属の素材に例えば白色塗料を施したもの等も採用することができる。加えて、前記光反射体9はカバーレイフィルム7に接着層を介して貼着されていても良く、また機械的に接合された状態で配置されていても良い。
【0034】
図3に示した構成によると、カバーレイフィルム7内に導入されたLEDからの光は、カバーレイフィルムに沿って配置された前記光反射体9の作用により前記透明基板3に向かって投射することができる。そして、前記基板3を透過した光は、図3に矢印で示すように機器の被照射部であるキートップ2に向かって投射される。
【0035】
したがって、図3に示したように光反射体9を用いた場合には、図2に示したようなカバーレイフィルム7に対する表面処理(加工)による光反射部7aの形成工程を省略することができ、図2に示した構成とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明による照明機能を備えた電子機器は、前記したとおりキー操作部を備え当該キー操作部を照明することができる例えば携帯電話機等に利用されるだけでなく、例えば、パーソナルコンピュータのキーボード(バックライトキーボート)や、ゲーム機等に用いられる操作キー部分等にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 フロントパネル
1a 開口
2 キートップ(被照射部)
3 回路基板
4a,4b キー接点用パターン
4c,4d 電流給電用パターン
5 キー接点
6 LED
7 カバーレイフィルム
7a 光反射部(表面処理部)
8 接着層
9 光反射体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性樹脂を基材として、当該基材の両面に銅箔層が形成された両面銅箔基板が用いられ、前記基板の第1の面には、LEDが搭載されると共に、当該LEDに対する電流供給用の回路パターンが形成され、前記基板の第2の面には、機器に利用される回路パターンが形成されると共に、前記基板を透過した前記LEDからの光が投射される前記機器の被照射部が、前記第2の面に対峙するように配置されていることを特徴とする照明機能を備えた電子機器。
【請求項2】
前記LEDが搭載された前記基板の第1の面には、光透過性の素材により構成されたカバーレイフィルムが貼着され、当該カバーレイフィルムの端部から導入された前記LEDからの光が、前記基板を透過して前記被照射部に至るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載された照明機能を備えた電子機器。
【請求項3】
前記カバーレイフィルムにおける前記基板への非貼着面は表面処理により光反射部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載された照明機能を備えた電子機器。
【請求項4】
前記カバーレイフィルムにおける前記基板への非貼着面には、光反射体が配置されていることを特徴とする請求項2に記載された照明機能を備えた電子機器。
【請求項5】
前記機器の被照射部が、透明樹脂により形成されたキートップ部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された照明機能を備えた電子機器。
【請求項6】
前記基板の第2の面に形成された機器に利用される回路パターンは、キー接点用回路パターンであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された照明機能を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−14492(P2011−14492A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159784(P2009−159784)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】