説明

照明灯用ワイヤハーネス取付構造

【課題】互いに相対回転あるいは相対移動可能な光源と固定部との間に接続されたワイヤハーネスが光源の移動の際に変形しても端部のコネクタとワイヤハーネスとの間に外力が掛からず断線を防止することが可能な照明灯のワイヤハーネス取付構造を提供する。
【解決手段】本ワイヤーハーネス取付構造は、光源4及びスイッチ5を接続するワイヤハーネス38を取り付ける照明灯のワイヤハーネス取付構造であって、ワイヤハーネスの光源側の一部を光源側に固定するクランプ構造である光源側固定手段40と、ワイヤハーネスの前記スイッチ側の一部をスイッチ側に固定するクランプ構造であるスイッチ側固定手段43と、を備えると共に、照射部の回転あるいは移動時にはワイヤハーネスは光源側固定手段とスイッチ側固定手段との間でのみ変形し、尚且つ、光源側固定手段及びスイッチ側固定手段はそれぞれ照明灯の部品に一体形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動光源を備えた照明灯用ワイヤハーネス取付構造に関し、更に詳しくは、互いに相対回転あるいは相対移動可能な光源と固定部との間に接続されたワイヤハーネスが光源の移動の際に変形しても端部のコネクタとワイヤハーネスとの間に外力が掛からず断線を防止することが可能な照明灯用ワイヤハーネス取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の屋根付きの車両の天井に装備する室内照明灯として、光源部を回転させることによって照射方向を変更可能なものが知られている。この種の室内照明灯としては、例えば、図13に示すように、光源100及びレンズ101を保持するランプボディ102と、このランプボディ102を球継手により回転可能に支持するランプハウジング103と、を備えた室内照明灯104が知られている(例えば、特許文献1参照)。この室内照明灯104によれば、天井105に固定されたランプハウジング103に対してランプボディ102を回転させることで照射方向を任意に変更することができる。
このような室内照明灯104では、光源100の電極端子106とランプハウジング103側の制御基板(図示せず)とを規制のないワイヤハーネスにより接続している。
【0003】
【特許文献1】実開平6−42414号公報
【0004】
しかし、前記従来の室内照明灯104では、互いに相対回転する光源100と制御基板とを規制のないワイヤハーネスにより接続しているので、ランプボディ102の回転に伴ってワイヤハーネスが撓んだり伸ばされたりして、ワイヤハーネスの端部のコネクタへの取り付け部分に負荷を掛けてしまう。ワイヤハーネスのコネクタ取付部分は被覆がないので他の被覆部分に比べて強度が弱く、長期に亘り負荷を掛けたりあるいは曲げ伸ばしを繰り返すことにより断線してしまう可能性がある。
また、一般的に、ワイヤハーネスの固定方法として、結束バンドを用いたり、テープやボンドを用いて固定することが知られているが、いずれも別部品として用意する必要があり、コストや作業工程が増大してしまう。
更に、ワイヤハーネスの経路上にある部品に一体的に形成されるワイヤハーネス固定構造として、例えば、図14(A)に示すようなU字溝107にビニルテープで束ねたワイヤハーネス108を嵌め込んだり、あるいは図14(B)に示す鉤爪109にワイヤハーネス110を入れ込むという構造が知られている。
しかし、U字溝107ではワイヤハーネス108をテープ巻きする必要があり作業工数が増加してしまう。また、U字溝107の開放部への押さえがないため、ワイヤハーネス108は撓み時の反発力で容易に外れてしまう。一方、鉤爪109では、ワイヤハーネス110の長手方向への動きは全く規制できない。これらの構造は、移動しないワイヤハーネスの経路を規制するために用いられるものであるため、移動するワイヤハーネスの固定に用いるには十分な効果を得ることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、互いに相対移動可能な光源と固定部との間に接続されたワイヤハーネスが光源の回転又は移動の際に変形しても端部のコネクタとワイヤハーネスとの間に外力が掛からず断線を防止することが可能な取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.光源を具備する照射部、前記光源の点灯制御の選択を行うスイッチ、前記照射部を回転又は移動可能に支持し且つ前記スイッチを固定支持するハウジング、及び、前記光源と前記スイッチとを接続するワイヤハーネス、を備える照明灯用ワイヤハーネス取付構造において、
前記照射部は、前記ワイヤハーネスの前記光源側の一部を前記光源側に固定する光源側固定手段を備える光源側固定部材を具備し、
前記ハウジングは、前記ワイヤハーネスの前記スイッチ側の一部を前記スイッチ側に固定するスイッチ側固定手段を備えるスイッチ側固定部材と、を具備し、
前記ワイヤハーネスは、前記照射部の回転時又は移動時に、前記光源側固定手段と前記スイッチ側固定手段との間で変形し、前記光源側固定手段と一方の端部との間及び前記スイッチ側固定手段と他方の端部の間では変形しないことを特徴とする照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
2.前記光源側固定手段及び前記スイッチ側固定手段は、前記ワイヤハーネスの光源側コネクタと前記光源側固定手段との間及び前記ワイヤハーネスのスイッチ側コネクタと前記スイッチ側固定手段との間において、前記ワイヤハーネス装着時の屈曲による負荷の影響を前記各コネクタに及ぼさない位置で前記ワイヤハーネスをそれぞれ固定するように配設されている上記1.記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
3.前記光源側固定手段及び前記スイッチ側固定手段は、いずれもクランプ構造である上記1.又は2.記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
4.前記クランプ構造は、ワイヤハーネスを押さえ且つ弾性を有する押さえ部と、前記押さえ部の両端側に配設された各固定部と、を備え、
前記押さえ部は、前記固定部の間に前記ワイヤハーネスを押し込んで固定し、且つ、
前記ワイヤハーネス装着前の前記押さえ部と前記各固定部との間隔は、前記ワイヤハーネスの太さより狭く、且つ、
前記ワイヤハーネスは、装着後、前記押さえ部と前記各固定部とによって強固に挟持される上記3.記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
5.前記スイッチ側固定部材は、前記ワイヤハーネスが移動可能に貫通する通過孔を有し、且つ、
前記光源側固定手段は、前記通過孔の近傍に配置され且つ前記光源側固定手段と前記スイッチ側固定手段との間の前記ワイヤハーネスを前記通過孔を移動可能に変形するように固定する上記1.乃至4.のいずれかに記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明の取付構造によれば、ワイヤハーネスを光源側固定手段及びスイッチ側固定手段により2箇所で固定すると共に照射部の回転時又は移動時にはワイヤハーネスは光源側固定手段とスイッチ側固定手段との間で変形し、光源側固定手段と一方の端部との間及び前記スイッチ側固定手段と他方の端部の間では変形しないようにしたので、ワイヤハーネスの変形時でも端部のコネクタ部分に外力が作用しない。これにより、ワイヤハーネスの各コネクタへの取付部における断線を防止することができる。
また、光源側固定手段及びスイッチ側固定手段はそれぞれ照明灯を構成する部材に一体に設けられているので、固定手段のための部材を別に用意する場合に比べて部品点数を少なくすることができ、作業工程やコストの増加を極力抑えることができる。
更に、光源側固定手段及びスイッチ側固定手段がそれぞれワイヤハーネス装着時の屈曲による負荷の影響を各コネクタに及ぼさない位置でワイヤハーネスをそれぞれ固定するように配設されている場合は、照射部の回転時又は移動時のワイヤハーネスの変形による負荷だけでなく、ワイヤハーネスが装着された状態におけるワイヤハーネス自体の屈曲による負荷についても低減することができ、これにより、ワイヤハーネスの各コネクタへの取付部における断線をさらに防ぐことができる。
また、光源側固定手段及びスイッチ側固定手段がクランプ構造である場合は、簡易な構造で強い固定力を得ることができる。
更に、そのクランプ構造が、弾性を有する押さえ部と、その押さえ部の両端側に配設された固定部と、を備え、ワイヤハーネスを押さえ部の弾性によって各固定部の間に押し込んで固定し、且つワイヤハーネス装着前の固定部及び押さえ部の間隔がワイヤハーネスの太さより狭い場合は、各固定部と押さえ部との間の2箇所でワイヤハーネスを噛み込ませることができるので、ワイヤハーネスの固定を確実に行うことができる。しかも、このクランプでは構成部が僅か3つという簡易な構造であるので部品製造も容易である。
更に、スイッチ側固定部材にワイヤハーネスが移動可能に貫通する通過孔が形成され、且つ、光源側固定手段がその通過孔の近傍に配置されている場合は、ワイヤハーネスが確実に通過孔を貫通することができる。このため、照射部の回転時又は移動時において、各固定手段の間のワイヤハーネスは通過孔の中を移動するように変形することができるので、撓んで他の部材に噛み込む可能性を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る取付構造は、光源を具備する照射部、前記光源の点灯制御の選択を行うスイッチ、前記照射部を回転又は移動可能に支持し且つ前記スイッチを固定支持するハウジング、及び、前記光源と前記スイッチとを接続するワイヤハーネス、を備える照明灯用ワイヤハーネス取付構造において、光源及びスイッチを接続するワイヤハーネスを取り付けるものである。
前記「照射部」は、ハウジングに対して回転あるいは移動など可動なものである限り、その動作の態様、形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。ここで、照射部がハウジングに対して回転する場合とは位置を同じくしながら照射方向を変更するものとし、移動する場合とは位置自体を変更するものとする。
前記「スイッチ」は、ハウジングに対して固定支持されるものである限り、その形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。前記「ワイヤハーネス」は、光源とスイッチとを接続するものである限り、その形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。
また、本発明に係る取付構造では、ワイヤハーネスの光源側の一部は光源側固定手段により光源側の部材(例えば、図3におけるレンズホルダ7、LEDホルダ12、又はLEDホールドプレート13等)に固定されると共に、ワイヤハーネスのスイッチ側の一部はスイッチ側固定手段によりスイッチ側の部材(例えば、図3におけるアウターベゼル9、アウタープレート10、又は基板33等)に固定されている。
前記「光源側固定手段」及び「スイッチ側固定手段」は、照射部の回転時又は移動時にワイヤハーネスがこれら固定手段の間で変形し、各固定手段と各端部との間ではそれぞれ変形せず、且つこれら固定手段がそれぞれ照射部を構成している光源側固定部材及びハウジングを構成しているスイッチ側固定部材に備えられている限り、その形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。これら固定手段は、例えば、ワイヤハーネス装着時の屈曲による負荷の影響を各コネクタに及ぼさない位置でワイヤハーネスをそれぞれ固定するように配設されていることができる。
また、各固定手段としては、例えば、弾性を有する押さえ部と、押さえ部の両端側に配設された固定部と、を備え、押さえ部の弾性によって各固定部の間にワイヤハーネスを押し込んで固定する形態、若しくは固定部と弾性を有する押さえ部との間にワイヤハーネスを直接挟み込んで固定する形態であるいわゆるクランプ構造、又は帯状の締結具によってワイヤハーネスを締め込んで固定する形態とすることができる。特に、部品点数を少なくでき、構造も簡易にできるといった観点から、弾性を有する押さえ部と、押さえ部の両端側に配設された固定部と、を備え、押さえ部の弾性によって各固定部の間にワイヤハーネスを押し込んで固定する、という上記形態が最も好適である。
また、ワイヤハーネスの両端部を隔てる部材にワイヤハーネスが移動可能に貫通する通過孔が形成され、且つ、光源側固定手段及びスイッチ側固定手段の少なくとも一方がその通過孔の近傍に配置されるようにすることができる。ここで、「通過孔の近傍」とは、ワイヤハーネスの移動時に、ワイヤハーネスが他の部品に干渉しない又は噛み込まれず、確実に通過孔を移動可能な位置をとり得るように、ワイヤハーネスを固定することができる位置である。具体的には、通過孔を平面投影した時に、照射部の移動範囲がその通過孔の投影範囲に収まる位置とすることができる。
また、本実施形態のようなワイヤハーネス取付構造にすることによって、よりコンパクトな照明灯を製作することができるので、本実施形態を用いた照明灯は、特に、自動車等のスペースの限られた天井に配設するのに好適である。また、照射部を回転させて任意の照射方向を得る必要がある照明灯に用いることができ、例えば、車両、船舶及び飛行機等の乗り物の室内照明、家具の埋め込み照明等を挙げることができる。
【実施例】
【0009】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。本実施例の取付構造は、乗用車の室内灯として用いる照明灯用ワイヤハーネス取付構造としている。
(1)室内照明灯の構成
本実施例の室内照明灯1は、図1〜図3に示すように、光源2及びレンズ3を有する照射部4と、光源2のオンオフ制御を行うリング式スイッチ5と、照射部4を支持するレンズホルダ7と、レンズホルダ7を支持する支持リング8と、支持リング8及びリング式スイッチ5を支持するハウジング6と、を備えている。また、リング式スイッチ5の内縁とレンズホルダ7の表面は近接及び/又は接触するように位置する。これらハウジング6とリング式スイッチ5とレンズホルダ7と照射部4は同心円状に形成されている。
ハウジング6は円形で合成樹脂からなり、室内側に露出するアウターベゼル9と、その裏側に蓋のように取り付けられるアウタープレート10とを備えている。これらアウターベゼル9とアウタープレート10との中に他の部品が収容される。
照射部4は、光源2であるLEDを具備するLEDユニット11と、光源2からの光線の拡散を防止するLEDホルダー12と、レンズ3と、これらを一体化するLEDホールドプレート13と、を備えている。この照射部4はレンズホルダ7に固定されている。
【0010】
レンズホルダ7の内側には円環形状の支持リング8が設けられている。支持リング8は、外周側に突出した第1の回転軸端14と、この第1の回転軸端14の反対側に形成された第1のシム受け孔15と、第1の回転軸端14と90度ずれた位置に形成された第2の軸受16と、この第2の軸受16の反対側に形成された第2のシム受け孔17とを備えている。第1のシム受け孔15には第1のシム18が、第2のシム受け孔17には第2のシム19がそれぞれ回転可能に設けられている。各シム18,19はエラストマー製とされている。
レンズホルダ7の内側には、支持リング8の第1の回転軸端14を受ける第1の軸受20と、第1のシム18を保持する第1のシム受け21とが形成されている。更に、第1の軸受20が第1の回転軸端14と組み合わされ、且つ第1のシム受け21が第1のシム受け孔15に設けられる第1のシム18と組み合わされて第1の回転軸22として構成される。これによって、レンズホルダ7は、任意の角度に回転及び維持することができるように支持リング8によって支持されている(図1参照)。
また、アウタープレート10は、中央に孔が設けられている円板状体である底部10aと、底部10aの孔の周に沿って向かい合うように立設されている2つの支持柱10b、10cと、底部10aの外周部であり且つアウターベゼル9の端部と接続されている外周部10dとからなる。更に、一方の支持柱10bの先端側には、支持リング8の第2の軸受16を受ける第2の回転軸端23が形成されている。また、他方の支持柱10cの先端側には、第2のシム19を保持する第2のシム受け24とが形成されている。更に、第2の軸受16が第2の回転軸端23と組み合わされ、且つ第2のシム受け24が第2のシム受け孔17に設けられる第2のシム19と組み合わされて第2の回転軸25として構成される。これによって、支持リング8は、任意の角度に回転及び維持することができるようにアウタープレート10によって支持されている(図2参照)。
ここで、レンズホルダ7と支持リング8とを連結する第1の回転軸22と、支持リング8とアウタープレート10とを連結する第2の回転軸25とのなす角度は90度としている(図4参照)。また、各回転軸での最大回転角度は56度としている(図5参照)。
【0011】
レンズホルダ7の外側にはリング式スイッチ5が設けられている。リング式スイッチ5は、円環状のスイッチノブ26と、スイッチの接点となる金属製のスイッチプレート27と、スイッチプレート27に付勢するスイッチスプリング28と、スイッチの回転時に節度感を出すためのピン29及びピンスプリング30と、を備えている。スイッチノブ26の周縁には等間隔、つまりスイッチノブ26を二分する位置に設けられた一対のフランジ31を備えている。このフランジ31はアウターベゼル9とアウタープレート10により形成される案内孔32に入って所定の回転角度内で案内され、スイッチノブ26の回転軸となる。
スイッチプレート27は、アウタープレート10に装着された基板33の接点パターンに接触する。ピン29はアウタープレート10に形成された3つの凹部34に移動可能に入り込んでいる。そして、スイッチノブ26を回転することにより、ピンスプリング30によって凹部34に付勢されたピン29が一方の凹部34から他方の凹部34に移動することでスイッチの状態が変化した感触を得ることができる。これと同時にスイッチプレート27が基板33に対して移動し、接点パターンの接続状態が変化する。本実施例では、照明の常時点灯、常時消灯及びドアの開閉に連動する点灯の3つの状態を選択可能なものとしている。
アウターベゼル9は、室内側に露出するフランジ39と、天井35の裏側に引っ掛かる爪36及び係合バネ37とを備えている。係合バネ37は爪36と反対側に配置されており、室内照明灯1の天井35への装着時には弾性変形して装着可能となり、装着後には天井35の裏面に引っ掛かって脱落を防止する構造となっている。アウタープレート10には基板33が取り付けられている。
【0012】
また、基板33とLEDユニット11とはワイヤハーネス38を介して電気的に接続されている。ここで、LEDホールドプレート13には、ワイヤハーネス38のLEDユニット11側の一部を照射部4に固定する光源側固定手段40と、LEDユニット11側のコネクタ41の近傍においてワイヤハーネス38の経路を規制するU字溝42と、がそれぞれ一体形成されている。また、アウタープレート10には、ワイヤハーネス38のスイッチ側の一部を固定するスイッチ側固定手段43が一体形成されている。
これら光源側固定手段40及びスイッチ側固定手段43は、例えば、図8及び図9に示すように、クランプからなるものとしている。即ち、スイッチ側固定手段43は、ワイヤハーネス38を下方へ押さえる押さえ部45と、その押さえ部45の両端側に配設され、押さえ部45とによってワイヤハーネス38を挟持する2箇所の固定部44と、を備えている。押さえ部45は、アウタープレート10に一体的に形成されて弾性を有しており、ワイヤハーネスが側方へずれて外れてしまわないように先端部が鉤状に下方向へ向かって突出するような形状を有している。また、各固定部44もまた、アウタープレート10に一体的に形成されており、そのアウタープレート10の表面から突出するように配設されている。各固定部44の突出高さは、ワイヤハーネス38をスイッチ側コネクタ47に無理なく接続できるような高さに設定してある。これにより、ワイヤハーネス38装着時においても、ワイヤハーネス38自体の屈曲による負荷がワイヤハーネス38のスイッチ側コネクタ47への接続部分に掛かるのを防いでいる。
ここで、固定部44及び押さえ部45の位置関係は、図10に示すように、ワイヤハーネス38の装着前で外力が掛かっていない状態で、固定部44及び押さえ部45a、45bの最も近い部分の間隔(押さえ部45aのように、ワイヤハーネスを押さえる面が固定部44のワイヤハーネスを押さえる面の外側に存在する場合はS1、押さえ部45bのように、ワイヤハーネスを押さえる面が固定部44のワイヤハーネスを押さえる面の内側に存在する場合はS2)がワイヤハーネス38の太さより狭くなるようにしている。この場合、固定部44と押さえ部45にワイヤハーネス38を挟むと押さえ部45がワイヤハーネス38を各固定部44の間に押し込んで固定するようになる。なお、光源側固定手段40も同様に、2箇所の固定部と、各固定部の間にワイヤハーネス38を押し込んで固定する弾性を有する押さえ部と、を備え、ワイヤハーネス38の装着前の状態で、固定部及び押さえ部の最も近い部分の間隔がワイヤハーネス38の太さより狭くなるようにしている(詳細は図示せず)。
更に、アウタープレート10には、ワイヤハーネス38が移動可能に貫通する通過孔46が形成されている。そして、光源側固定手段40は通過孔46の近傍に配置されるようにしている。
【0013】
この室内照明灯1は、乗用車の前部座席上方の天井35であり、バックミラー周辺の位置に1個だけ設けられている。これにより、前部座席の乗員の手元から後部座席の後ろの荷室まで広い範囲を照射することができる。
【0014】
(2)室内照明灯の作用
次に、前記構成の室内照明灯1の組み立て手順について説明する。
先ず、レンズ3にLEDホルダー12を装着し、そこにLEDユニット11を載せてLEDホールドプレート13で挟んで照射部4を組み立てる。LEDユニット11にワイヤハーネス38の光源側コネクタ41を接続し、ワイヤハーネス38をLEDホールドプレート13のU字溝42を通してからLEDユニット11の放熱板を回避させつつLEDホールドプレート13の周囲を半周させて、光源側固定手段40に固定する。
この照射部4をレンズホルダ7に装着する。そして、2つのシム18,19を取り付けた支持リング8をレンズホルダ7の内側に装着する。
この時、第1の回転軸端14を第1の軸受20に支持させ、同時に第1のシム18を第1のシム受け孔15に支持させるようにする。更に、支持リング8をアウタープレート10に装着する。この時、アウタープレート10の第2の回転軸端23を第2の軸受16に支持させ、同時に第2のシム19を第2のシム受け24に支持させるようにする。
一方、アウターベゼル9の内側にスイッチノブ26を装着する。この時、スイッチノブ26のフランジ31がアウターベゼル9の案内孔32に入るようにする。そして、スイッチプレート27とスイッチスプリング28を装着し、またピン29とピンスプリング30も装着する。
続いて、照射部4、レンズホルダ7及び支持リング8を組み付けたアウタープレート10をアウターベゼル9に取り付ける。この時、ワイヤハーネス38を通過孔46を通してアウタープレート10の外側に引き出す。更に、アウタープレート10の外側に基板33をネジ留めし、ワイヤハーネス38のスイッチ側コネクタ47を接続する。そして、ワイヤハーネス38のコネクタ47の近傍をスイッチ側固定手段43に固定する。
室内照明灯1を天井35に取り付ける際は、図6に示すように、アウターベゼル9の爪36を天井35の装着穴の縁に斜めに引っ掛け、それから反対側を持ち上げて係合バネ37を弾性変形させて天井35の裏に押し込むようにする。これにより、爪36と係合バネ37が天井35の裏に引っ掛かって脱落が防止される。
【0015】
次に、前記構成の室内照明灯1の動作について説明する。
使用者がスイッチノブ26を把持して回転させると、スイッチプレート27が移動して光源2のオンオフが切り替わる。また、使用者がレンズホルダ7を把持して光軸を変えるように外力を加えると、図7に示すように、レンズホルダ7がアウタープレート10に対して支持リング8の2つの回転軸22,25を介して適宜回転する。これにより、可動範囲内で任意の位置を照射することができるようになる。ここで、回転軸22,25にはシム18,19を使用しているので、任意の角度に設定したまま維持することができる。
回転時には、図5に示すように、ワイヤハーネス38は光源側固定手段40とスイッチ側固定手段43との間でのみ変形し、ワイヤハーネス38の両端部のコネクタ41,47付近には外力が掛からない。
【0016】
(3)実施例の効果
本実施例の室内照明灯1のワイヤハーネス38の取付構造によれば、スイッチ側固定手段43がワイヤハーネス38の端部近傍を固定しているので、コネクタ41とスイッチ側固定手段43との距離を短くしてワイヤハーネス38が他の部材に噛み込む可能性を低く抑えることができる。
また、本実施例では、スイッチ側固定手段43の固定部44は、図1等に示すように、突出している。このため、ワイヤハーネス38のスイッチ側コネクタ47とスイッチ側固定手段43との高低差が小さくなり、ワイヤハーネス38の屈曲によるコネクタ47への負荷を極力減らすことができる。
また、本実施例では、各固定手段40,43がクランプであるので、簡易な構造で強い固定力を得ることができる。更に、各クランプが、2箇所の固定部44及び押さえ部45を備えると共に固定部44及び押さえ部45の間隔がワイヤハーネス38より狭くなるようにしているので、各固定部44と押さえ部45との間の2箇所でワイヤハーネス38を噛み込ませて固定を確実に行うことができる。
また、本実施例では、ワイヤハーネス38の両端部を隔てる部材であるアウタープレート10にワイヤハーネス38が移動可能に貫通する通過孔46を形成すると共に、光源側固定手段40が通過孔46の近傍に配置されているので、光源側固定手段40で固定されたワイヤハーネス38はそのまま真っ直ぐに通過孔46を貫通する。このため、照射部4の回転時でも光源側固定手段40からのワイヤハーネス38は通過孔46の中を長手方向に移動するので、他の部材に噛み込む可能性を抑えることができる。
【0017】
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、前記実施例では、スイッチ側固定手段43がワイヤハーネス38の端部近傍において固定するようにしたが、これに限定されず、例えば、ワイヤハーネス38の端部よりも離れた箇所を固定するようにしてもよい。この場合でも、ワイヤハーネス38は各固定手段40,43の間でのみ変形し、ワイヤハーネス38自体の屈曲による負荷もスイッチ側コネクタ47に掛からないので、ワイヤハーネス38の両端部のコネクタ41,47付近に外力が掛かることを防止できる。従って、ワイヤハーネス38の抑える位置は各種設計条件に合わせて適宜設定できることになる。
また、本実施例では、スイッチ側固定手段43の固定部44はアウタープレート10の表面から突出するようにしたが、これに限定されず、図11に示すように、固定部44’をアウタープレート10の表面と同一平面上になるようにしてもよい。これにより、より簡易な構造とすることができる。
また、前記実施例では、各固定手段41,47がクランプであるようにしたが、これに限定されず、例えば、図12に示すように、貫通孔48と、その貫通孔48の内側方向に向かって突出するように設けられた突出部49と、において、ワイヤハーネス38を突出部49に屈曲変形させて係止する、といった構成をとるようにしてもよい。これにより、ワイヤハーネス38の長手方向の動きを規制し、コネクタ部に負荷を掛けることなくワイヤハーネス38を固定することができる。
また、前記実施例では、アウタープレート10にワイヤハーネス38が移動可能に貫通する通過孔46を形成すると共に、光源側固定手段40が通過孔46の近傍に配置されるようにしたが、これに限定されず、例えば、ワイヤハーネス38をその両端部が隔てられている部材の周囲を迂回させるようにしてもよい。あるいは、前記実施例では、アウタープレート10の外側に基板33が設けられ、スイッチ側コネクタはハウジング6の外側において接続されているが、これに限定されず、例えば、アウタープレート10の内側に基板33が設けられ、そこへスイッチ側コネクタ47を接続するようにしてもよい。このようにコネクタ41,47を接続する部材が同じ空間(ハウジング6の内側空間)にあってワイヤハーネス38の両端部を隔てる部材が存在しない場合は、通過孔46を省略することができる。
また、本実施例では、ワイヤハーネス取付構造を自動車等の室内照明灯に適用したが、これに限定されず、可動光源を有する照明灯全般に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
可動光源を備えた照明灯におけるワイヤハーネス取付構造として利用される。特に、互いに相対回転あるいは相対移動可能な光源と固定部との間に接続されたワイヤハーネスが光源の移動の際に変形しても端部のコネクタとワイヤハーネスとの間に外力が掛からず断線を防止することが可能な取付構造として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】室内照明灯を第1の回転軸に沿って切断した状態を示す縦断面図である。
【図2】室内照明灯を第2の回転軸に沿って切断した状態を示す縦断面図である。
【図3】室内照明灯の分解組立図である。
【図4】第1の回転軸及び第2の回転軸を示す斜視図である。
【図5】照射部を最大に回転させてワイヤハーネスが屈折した状態を示す縦断面図である。
【図6】室内照明灯を天井に装着する作業途中の状態を示す縦断面図である。
【図7】照射部の回転のパターンを示す斜視図であり、(A)は中立位置にある場合、(B)は第1の回転軸を中心に回転した場合、(C)は第2の回転軸を中心に回転した場合を示す。
【図8】スイッチ側固定手段及び光源側固定手段の位置関係を示す斜視図である。
【図9】スイッチ側固定手段を示す斜視図である。
【図10】スイッチ側固定手段を示す断面図である。
【図11】固定手段の他の実施例を示す断面図である。
【図12】固定手段の更に他の実施例を示す平面図及び断面図である。
【図13】従来の室内照明灯を示す断面図である。
【図14】従来のワイヤハーネス取付構造を示す断面図であり、(A)はU字溝、(B)は鉤爪を示す。
【符号の説明】
【0020】
1;室内照明灯、2;光源、3;レンズ、4;照射部、5;リング式スイッチ、6;ハウジング、38;ワイヤハーネス、40;光源側固定手段、41;光源側コネクタ、43;スイッチ側固定手段、44、44’;固定部、45;押さえ部、46;通過孔、47;スイッチ側コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を具備する照射部、前記光源の点灯制御の選択を行うスイッチ、前記照射部を回転又は移動可能に支持し且つ前記スイッチを固定支持するハウジング、及び、両端に前記光源と前記スイッチとを接続するための各コネクタを有するワイヤハーネス、を備える照明灯用ワイヤハーネス取付構造において、
前記照射部は、前記ワイヤハーネスの前記光源側の一部を前記光源側に固定する光源側固定手段を備える光源側固定部材を具備し、
前記ハウジングは、前記ワイヤハーネスの前記スイッチ側の一部を前記スイッチ側に固定するスイッチ側固定手段を備えるスイッチ側固定部材を具備し、
前記ワイヤハーネスは、前記照射部の回転時又は移動時に、前記光源側固定手段と前記スイッチ側固定手段との間で変形し、前記光源側固定手段と前記光源側コネクタとの間及び前記スイッチ側固定手段と前記スイッチ側コネクタとの間では変形しないことを特徴とする照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
【請求項2】
前記光源側固定手段及び前記スイッチ側固定手段は、前記ワイヤハーネスの前記光源側コネクタと前記光源側固定手段との間及び前記ワイヤハーネスの前記スイッチ側コネクタと前記スイッチ側固定手段との間において、前記ワイヤハーネス装着時の屈曲による負荷の影響を前記ワイヤハーネスの前記各コネクタへの接続部分に及ぼさない位置で前記ワイヤハーネスをそれぞれ固定するように配設されている請求項1記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
【請求項3】
前記光源側固定手段及び前記スイッチ側固定手段は、いずれもクランプ構造である請求項1又は2記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
【請求項4】
前記クランプ構造は、ワイヤハーネスを押さえ且つ弾性を有する押さえ部と、前記押さえ部の両端側に配設された各固定部と、を備え、
前記押さえ部は、前記固定部の間に前記ワイヤハーネスを押し込んで固定し、且つ、
前記ワイヤハーネス装着前の前記押さえ部と前記各固定部との間隔は、前記ワイヤハーネスの太さより狭く、且つ、
前記ワイヤハーネスは、装着後、前記押さえ部の弾性により前記押さえ部と前記各固定部とによって挟持される請求項3記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。
【請求項5】
前記スイッチ側固定部材は、前記ワイヤハーネスが移動可能に貫通する通過孔を有し、且つ、
前記光源側固定手段は、前記通過孔の近傍に配設されている請求項1乃至4のいずれかに記載の照明灯用ワイヤハーネス取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−83795(P2009−83795A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259250(P2007−259250)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】