照明装置及び投射型映像表示装置
【課題】スペックルノイズが目立つことなく、偏光方向の揃った照明光を出射する照明装置、投射型映像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る照明装置は、光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、光反射素子で反射されたコヒーレント光と、偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が被照明領域を重ねて照明する光拡散素子と、を備える。
【解決手段】本発明に係る照明装置は、光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、光反射素子で反射されたコヒーレント光と、偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が被照明領域を重ねて照明する光拡散素子と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光などのコヒーレント光を使用する照明装置、及び、コヒーレント光を光源に用いて光変調素子を照明し、スクリーン上に映像を投射する投射型映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源からの照明光を、液晶やMEMSなどの光変調素子(マイクロディスプレイ)を用いて映像化し、スクリーンに投影するプロジェクタ(投射型映像表示装置)が知られている。このようなプロジェクタでは、その光源に高圧水銀ランプなどの白色光源を用いたものが知られており、液晶などの2次元光変調素子を照明し得られた画像を投射光学系で拡大してスクリーン上に映像を投射している。
【0003】
しかしながら、高圧水銀ランプなどの高輝度放電ランプは、寿命が比較的短くプロジェクタなどに利用した場合、頻繁にランプを交換する必要がある。また、装置自体が大型化してしまうという欠点もある。さらには、環境負荷の観点から水銀を使用する高圧水銀ランプの仕様は好ましいものとはいえない。このような欠点を解消するため、レーザー光を光源として使用するプロジェクタも提案されている。半導体レーザーは、高圧水銀ランプなどと比較して高寿命であり、また、装置全体の小型化を図ることも可能である。
【0004】
このように、プロジェクタの次世代光源として期待されているレーザー光は直進性に優れるため、LEDなどと比較しても光入射効率の向上を図ることができると考えられる。しかしながら、レーザー光を光源として用いた場合、コヒーレンスの高さに起因するスペックルノイズが発生し、映像を見難くしてしまう欠点がある。
【0005】
スペックルノイズは、コヒーレントなレーザー光を光源とした場合、照射対象表面の微少凹凸からの散乱光が干渉することで生ずる斑点状のノイズであって、プロジェクタで発生した場合には画質劣化の原因となるのみならず、観察者に対して生理的不快感をもたらすこともある。このスペックルノイズを低減するため、レーザー光が通過する拡散板を振動させる、レーザースペクトルの波長スペクトルを拡大する、レーザー光の照射対象となるスクリーン自体を振動させるなど、各種試みが行われている。このようなスペックルノイズ低減の試みとして、特許文献1には、コヒーレント光が通過する拡散素子を回転運動させることで、スペックルノイズの低減を図る無スペックル・ディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるスペックルノイズ低減方法では、拡散素子到達前に生じていたスペックルノイズ(干渉パターン)は平均化できるものの、拡散中心からスクリーンへの入射光線角度はスクリーン上のいずれの点においても不変であるため、スクリーン各点の光散乱特性も一定となり、結果としてスクリーン上で発生するスペックルノイズの除去効果は殆ど得られないという問題があった。
【0008】
このような、コヒーレント光を原因として生ずるスペックルは、コヒーレント光を光源
として使用するプロジェクタ(投射型映像表示装置)のみならず、コヒーレント光を使用する様々な照明装置において問題となっている。
【0009】
ところで、光源に使用されるレーザーは、種類・状況によっては特定の振動方向の偏光成分に揃っていない、もしくは揃っていても振動方向が一定でない場合がある。例えば、ブリュースターウィンドウのないガスレーザー(偏光成分が揃っていない)や、面発光レーザー(ランダム偏光:偏光は揃っているが振動方向が変化する)等が挙げられる。このようなレーザーを光源に用いた場合、入射偏光が揃っている必要がある液晶パネルやLCOSなどの光変調素子、また、偏光成分ごとに視差画像を表示する3Dディスプレイ等の用途では光利用効率の低下、もしくは偏光成分のクロストークによる画質の低下等、様々な問題が生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、コヒーレント光を光源とした場合に生ずるスペックルを抑制するとともに、偏光方向の揃った照明光を出射する照明装置、及び、このような照明光を表示映像形成のために使用する投射型映像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る照明装置は、
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が被照明領域を重ねて照明する光拡散素子と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに本発明に係る照明装置において、前記偏光ビームスプリッターは、前記光源から入射するコヒーレント光がブリュースター角となるように配設された薄膜を含んで構成されることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光走査部は、ミラーデバイスからなることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光反射素子は、ミラーであることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明に係る照明装置において、前記偏光ビームスプリッターと前記光反射素子は、偏光ビームスプリッターアレイで構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明に係る照明装置において、前記波長板は、前記偏光ビームスプリッターの出射面に貼付けられていることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光拡散素子は、ホログラムであることを特徴とする。
【0018】
さらに本発明に係る照明装置において、前記ホログラムは、第2の光拡散素子の像を記録したものであることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明に係る照明装置において、前記ホログラムは、透過型ホログラム、反射型ホログラムの何れかであることを特徴とする。
【0020】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光拡散素子は、拡散板であることを特徴とする。
【0021】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光拡散素子は、レンズアレイであることを特徴とする。
【0022】
また本発明に係る投射型映像表示装置は、
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
像が形成される像形成領域を有する変調素子と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明する光拡散素子と、
前記光変調素子の像をスクリーンに投影する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の照明装置によれば、光走査部でコヒーレント光を走査することで、光拡散素子の各点からの拡散光は、被照明領域を時間的に異なる角度で照射することとなり、被照明領域で発生するスペックルを時間的に変化させ、観察者に不可視の状態とさせることが可能となる。さらに、本発明の投射型映像表示装置では、スクリーンに対しても時間的に異なる角度で照射することで、スクリーン上で発生するスペックルを効果的に抑制することができる。
【0024】
さらに、偏光ビームスプリッターと波長板を用いて偏光成分を揃えることで、光変調素子や一部のホログラムなど、偏光選択性を有する光学素子での光利用効率の向上を図ると共に、クロストークなどの画質劣化を抑制することが可能となる。また偏光変換は、レーザービームの状態で行うことができるため光学系の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る照明装置を備えた投射型映像表示装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る照明装置の構成を示す図
【図3】本発明の実施形態に係る照明装置で使用するホログラム作成の様子を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る光走査の様子を示す図
【図5】本発明の他の実施形態に係る光走査の様子を示す図
【図6】本発明の実施形態に係る照明装置で使用する偏光ビームスプリッターアレイの構成を示す図
【図7】偏光ビームスプリッターアレイを用いた照明装置の実施形態を示す図
【図8】偏光ビームスプリッターアレイを用いた照明装置の他の実施形態を示す図
【図9】偏光ビームスプリッターアレイを用いた他の実施形態における照明領域を示す図
【図10】他の実施形態に係る照明装置を備えた投射型映像表示装置の構成を示す図
【図11】他の実施形態に係る照明装置の構成を示す図
【図12】他の実施形態に係る照明装置で使用するホログラム作成の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
では、本発明の実施形態に係る照明装置、及び、投射型映像表示装置について図面を参照しつつ説明を行う。図1は、本発明の実施形態に係る照明装置を備えた投射型映像表示装置の構成を示す図である。なお、以下に説明する図面は、模式的に示した図であって、実際の形状、寸法、配置とは異なる場合もある。
【0027】
本実施形態の投射型映像表示装置10は、照明装置20と、映像を形成するための光変調素子31、光変調素子31で形成された映像をスクリーン41に投射する投射光学系32を備えている。なお、図では、映像が投影されるスクリーン41面をX−Y平面、それに直交する軸をZ軸としている。スクリーン41には、スクリーン41で反射された映像を観察する反射型スクリーン、あるいは、スクリーン41を透過した映像を観察する透過型スクリーンどちらを使用することもできる。
【0028】
本実施形態の照明装置20は、光源11、偏光ビームスプリッター12、λ/2波長板13(波長板)、光反射素子14、光走査部15、ホログラム21(光拡散素子)を有して構成されている。
【0029】
光源11は、コヒーレント光としてのレーザー光を出射する半導体レーザー装置など各種レーザー装置が使用される。偏光ビームスプリッター12は、光源11から出射される偏光成分が揃っていないコヒーレント光L0をp偏光成分とそれに直交するs偏光成分とに分離する光学素子であって、本実施形態では、プリズム間に挟まれた薄膜12aを有して構成されており、プリズム同士は樹脂接着剤もしくは光学接着(オプティカルコンタクト)にて接合されている。薄膜12aは誘電体多層膜よりなり、プリズム面への0°入射
角がブリュースター角になるよう設計されており、p偏光成分はほぼ透過するがs偏光成分はほぼ反射する特性を有する。
【0030】
λ/2波長板13(波長板)は、偏光ビームスプリッター12から出射される2つのコヒーレント光の偏光方向を揃えるために配置されたものであって、2本に分離されたコヒーレント光のどちらか一方の光路中に配置される。本実施形態では、偏光ビームスプリッター12の一方の射出面に貼り付けられている。このようにλ/2波長板13と偏光ビームスプリッター12を一体化することで、部品点数の数を少なくするとともにレイアウトの簡素化が図られている。
【0031】
λ/2波長板13を透過したコヒーレント光L1は、偏光ビームスプリッター12から出射されたもう一方のコヒーレント光L1’と偏光方向が揃えられる。このとき偏光方向は、後の光路中に配置される光変調素子31の偏光方向に一致させておくことが好ましい。さらに、光拡散素子21として偏光選択特性を有するホログラムを使用する場合には、その偏光方向も考慮した偏光方向とすることが好ましい。このように偏光方向が揃った2つのコヒーレント光L1、L1’は、その一方がミラーなど光反射素子14で反射され光走査部15に導かれる。
【0032】
光走査部15は、回動中心Raを中心として反射面を回動させることのできるミラーデバイスであって、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナ、MEMSスキャナのような可動ミラーを機械的に回動させるミラーデバイスが用いられる。この他、音響光学効果スキャナのような屈折率を変調させるものなど各種形態を採用することができる。
【0033】
λ/2波長板13を透過したコヒーレント光L1と光反射素子14にて反射されたコヒーレント光L1’は、光走査部15の反射面に入射されることとなるが、このとき、両コヒーレント光L1、L1’を、光走査部15が回動運動する場合において位置変動が少ない反射面上の1点(以下、「基準点」とも言う)に入射させることが好ましい。このような基準点に両コヒーレント光L1、L1’を入射させることで、光走査部15が走査する両コヒーレント光L1、L1’の走査範囲を略一致させることが可能となり、後で説明する光変調素子31の入射光の均一化を図ることが可能となる。また、光拡散素子21にホログラムを使用する場合には、ホログラム作成時に使用した参照光の集光位置を、光走査部15の基準点に設定することが可能となり、記録されているホログラム再生像を確実に得ることも可能となる。
【0034】
このように光走査部15で反射された2本のコヒーレント光L1、L1’は、走査光Laとなり、光拡散素子21の入射面上を時間的に位置を変えつつ走査する。図2は、本発明の実施形態に係る照明装置20の構成を示す図であって、光拡散素子21による照明の様子を示した図である。実際には、光走査部15では入射角度の異なる2本のコヒーレント光L1、L1’が反射されることとなるが、各図では説明を容易にするため、どちらか1本のコヒーレント光について時刻t1、t2における光線のみが示されている。本実施形態では、偏光ビームスプリッター12で分離されたコヒーレント光は、異なる光路をとるが、光走査部15の基準点で反射され、光拡散素子21に同じ入射角度で入射するため支障はない。
【0035】
ここで光拡散部15による走査光にて走査される光拡散素子21について説明する。光拡散素子21は、走査光Laが入射されることで被照明領域、すなわち、本実施形態の場合、光変調素子31全体を照明する光学素子であって、本実施形態では透過型ホログラムが用いられている。光拡散素子21としてホログラムを採用したことで、走査光Laの入射位置に因らず、常に同一の再生像を得ることが可能となり、被照明領域となる光変調素子31全体をムラ無く照明することができる。また、ホログラムに入射させる走査光Laのビーム断面形状、あるいは、その入射角度などに自由度を持たせることができ、装置のレイアウトなどを自在なものとすることができる。
【0036】
なお、光拡散素子21には、このようなホログラムに限ることなく、各点から出射される拡散光が被照明領域を照明できる光学素子であればよく、各点から出射される拡散光が被照明領域全体を照明することが好ましい。例えば、微細なレンズがアレイ状に配列されて構成されたレンズアレイ、あるいは、オパールガラス、すりガラス、樹脂拡散板など、いわゆる通常の拡散板を用いてもよい。なお、本発明における光拡散素子における「拡散」とは、入射光を所定の方向に角度的に拡げて出射することを指し、回折光学素子やレンズアレイ等によう拡散角が十分に制御された場合のみならず、オパールガラス等の散乱粒子により出射角を拡げる場合も含まれるものとする。
【0037】
本実施形態で使用する光拡散素子21としての透過型ホログラムは、記録された再生像として拡散板像22iを再生する。図2に示されるように、光走査部15で走査されたコヒーレント光L1は、回動する光走査部15で反射され、走査光Laとなり光拡散素子21の入射面上を往復して走査する。図にはある時刻t1、t2についての走査光La(t1)、La(t2)の様子が示されている。本実施形態の光拡散素子21は、所定の入射角を有する光(再生照明光)に対して、再生像を形成する透過型ホログラムが用いられて
いる。光走査部15にて走査される走査光Laは、何れの走査位置においても、この透過型ホログラムに対する再生照明光となるように設定されている。なお、本実施形態で使用する透過型ホログラムの作成については後で説明する。
【0038】
図2に示されるように、時刻t1のときの走査光La(t1)は、光拡散素子21にて再生光としての照明光Lb(t1)を出射し拡散板像22iを形成する。また、時刻t2のときの走査光La(t2)は、光拡散素子21にて照明光Lb(t2)を出射し、同じ拡散板像22iを形成する。このように走査光Laが走査されることで、光拡散素子21の何れの入射位置を照射するときにも拡散板像22iが重なるように形成される。この拡散板像22iが被照明領域全体を含むように位置させることで、何れの走査位置においても被照明領域全体を均一に照明することが可能となる。
【0039】
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置で使用される透過型ホログラムを記録(作成)する際の構成(干渉露光)を示す図である。拡散板22の背面側からレーザー光を照射し、前方に拡散した物体光Obをホログラム記録材料24の一方の面から入射させる。その際、拡散板22の各点からの拡散光(物体光Ob)は、ホログラム記録材料24の少なくとも使用領域全面を照明するよう拡散させる。
【0040】
そして、ホログラム記録材料24の同じ面から、集光光学系23にて集光した参照光Rが照射される。集光光学系23の焦点位置Aは、使用時の光走査部15による基準点と一致するように配置されている。物体光Obと参照光Rを同時に入射させ、ホログラム記録材料24中で干渉させる。なお、物体光Obと参照光とは干渉性を有する必要がある。そのため、同一の光源から発振されたレーザー光を分割して一方を物体光Ob、他方を参照光Rとして使用することなどが考えられる。
【0041】
ホログラム記録材料24は加熱、紫外線照射等の後処理を経て面上の各点において、同じ位置に拡散板像を再生する透過型ホログラム21が作成される。また、記録時に用いられる物体光Obの照射には、オパールガラスやすりガラスといった拡散板22のみならず、レンズアレイなど、各点からの拡散光が使用領域全面を照明できる光学素子(光拡散素子21と峻別できるよう「第2の光拡散素子」と呼ぶ)を用いることとしてもよい。なお、本実施形態では、物体光Obと参照光Rとを干渉させることで干渉縞の記録(干渉露光)を行うこととしたが、計算機にて計算された干渉縞を直接、ホログラム記録材料21に記録する、いわゆる計算機合成ホログラムを採用するものであってもよい。
【0042】
図2の光拡散素子21で再生される拡散板像22iは、図1において光変調素子31の像形成領域全体を照明するように位置される。図1において光変調素子31の像形成領域は、XY平面に2次元的に位置している。本実施形態では、光走査部15には、入射角度が異なる2本のコヒーレント光L1、L1’が入射することとなるが、両コヒーレント光L1、L1’の光走査部15での基準点を、ホログラム作成時の焦点位置Aと一致させておくことで、どちらのコヒーレント光L1、L1’によっても同じ拡散板像22iを形成させることが可能となる。
【0043】
マイクロディスプレイなどの光変調素子31は、光拡散素子21からの照明光Lbにて照明され、画素毎に照明光を透過して映像を形成する。このとき照明光Lbの偏光方向は、偏光ビームスプリッター12、λ/2波長板13にて偏光方向が揃えられており、この偏光方向を光変調素子31で使用される偏光方向と一致させておくことで、光変調素子31での光利用効率の向上、そして画質の向上を図ることが可能となる。
【0044】
光変調素子31で変調された変調光Lcは、投射光学系32で拡大され映像再生光Ldとしてスクリーン41上に投射され、反射、あるいは、透過される映像を観察者に観察さ
せる。このときスクリーン41の面上に投射されたコヒーレント光は互いに干渉することでスペックルを生じさせる。しかしながら、本実施形態では、光走査部15によってコヒーレント光が走査されるため、結果としてスクリーン41に投射する映像再生光Ldの入射角度を経時的に変化させ、このスペックルを極めて効果的に目立たなくしている。
【0045】
例えば、図1に示されるスクリーン上の点P1においては、時刻t1における映像再生光Ld(t1)と、時刻t2における映像再生光Ld(t2)が異なる入射角度で照射されることとなる。図に示す他の点P2や図示しない他の点においても同様であって、映像再生光Ldは、入射角度を時間的に変化させつつスクリーン41上に映像を投射する。したがって、ごく短い時間ではスクリーン上に形成されるスペックルも、映像再生光Ldが時間によって異なる入射角度で照射されることで平均化され、スクリーン41に投射される像を観察する観察者には十分に目立たない状態となる。
【0046】
観察者によって観察されるスペックルには、このようにスクリーン41上でのコヒーレント光の散乱を原因として発生するスペックルだけではなく、投射型映像表示装置10の各種光学素子上で発生するものもある。このスペックルは、光変調素子31を介してスクリーン41に投影されることで観察者に観察される。本実施形態では、走査光Laが光拡散素子21を走査することで、被照明領域としての光変調素子31の像形成領域を照明する。すなわち被照明領域を、光拡散素子21の各点からの拡散光が時間的に分離されるように照明することで、光拡散素子21より前の位相情報をキャンセルするとともに光拡散素子21の各点からの拡散光同士が干渉することも防ぐことができ、投射型映像表示装置10の各種光学素子で発生するスペックルを十分に目立たない状態とすることが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態に係る照明装置、投射型映像表示装置について説明したが、この照明装置にて使用する各種構成の実施形態について説明する。前述の実施形態では、光走査部15の走査形態については詳細を説明しなかったが、光走査部15の走査は、1次元的、2次元的走査どちらを利用してもよい。何れの場合においても光拡散素子21上の各点からの拡散光が被照明領域全体を十分に照明できることが必要とされる。
【0048】
図4には、1次元的に走査を行う光走査部15の実施形態が示されている。この形態では、光源部11から出射されたコヒーレント光は、1軸方向に共振振動する光走査部15の反射面上で反射し、光拡散素子21上をライン上に往復して走査する。光拡散素子21としてホログラムを用いた場合には、何れの走査位置においても拡散板像22iが形成される。このような実施形態では、走査領域がライン状で済むため、光拡散素子21を小型化することができる。ライン状の走査で十分に被照明領域を得るためには、ホログラムを用いることが好ましい。
【0049】
図5には、2次元的に走査を行う光走査部15の実施形態が示されている。この形態では、光源部11からのコヒーレント光は、2軸方向で共振振動する光走査部15の反射面上で反射し、光拡散素子21上を2次元的に走査する。この実施形態においても光拡散素子21からの拡散光は、被照明領域全体を十分に照明するものとなっており、特にホログラムを用いた場合には、被照明領域に合わせた形状の拡散板像22iを形成することが可能であり光の利用効率が高められる。このような実施形態は、オパールガラスのような通常の拡散板を用いた場合に有効である。各点からの拡散光の照度分布が一定でない場合であっても照度の平均化を図り、被照明領域全体を均一に照明することが可能となる。
【0050】
また、前述の実施形態で使用した偏光ビームスプリッター12と光反射素子14は、偏光ビームスプリッターアレイとして構成することも可能である。図6は、偏光ビームスプリッターアレイの構成を説明する図である。偏光ビームスプリッターアレイ16は、プリ
ズムで挟まれた複数の薄膜16a、16bにて構成され、本実施形態では、薄膜16aは、光源11からのコヒーレント光L0をp偏光成分とs偏光成分とに分離する。もう一方の薄膜16bは、分離された一方のコヒーレント光L1’を光走査部15側に導く光反射素子として機能する。
【0051】
このような偏光ビームスプリッターアレイ16を使用した場合、出射される各コヒーレント光L1、L1’が距離dだけ離れた平行光として出射される。そのため、光拡散部15に入射させる際、あるいは、光拡散素子21で被照明領域を照明する際に工夫が必要となる。
【0052】
図7、図8は、偏光ビームスプリッターアレイを用いた照明装置の実施形態を示す図であって、ちょうど図2で説明した照明装置において、偏光ビームスプリッター12、光反射素子14に代えて、偏光ビームスプリッターアレイ16を用いた実施形態となっている。どちらの実施形態においても図2と同様の点については説明を省略する。
【0053】
図7に示される実施形態では、偏光ビームスプリッターアレイ16で2本の平行光をレンズなどの集光光学系18で、光走査部15の基準点に集光させることとしている。この実施形態では、前述の実施形態と同様、入射角度の異なる2本のコヒーレント光L1、L1’が反射されることとなるが、光拡散素子21の各入射位置において2本のコヒーレント光L1、L1’が同じ入射角度で入射される。そのため、特に、光拡散素子21にホログラムを用いた場合には、光走査部15の基準点を、ホログラム作成時の焦点位置Aと一致させておくことで、どちらのコヒーレント光L1、L1’によっても同じ拡散板像22iを形成させることができ、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0054】
一方、図8に示される実施形態では、偏光ビームスプリッターアレイ16から出射された2本の平行光L1、L1’をそのまま光走査部15に入射させることとしている。このような形態では、光走査部15の反射面の2箇所において各コヒーレント光L1、L1’が反射されることとなる。そのため、光拡散素子21の各入射位置では、2本の走査光LaとLa’による照射範囲が異なったものとなる。しかしながら、光拡散素子21としてホログラムを利用した場合には、常に同じ位置に拡散板像22iを形成することとなるため、光の利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、このような場合、光拡散素子21として、レンズアレイや、オパールガラスなどの通常の拡散板などを用いたときには、光拡散素子21の各点における入射角度の違いによって照明領域にずれが生じる場合がある。そのため、図9に示すようにコヒーレント光Laが入射したときの光拡散素子21による照明領域22iと、コヒーレント光La’が入射したときの光拡散素子21による照明領域22i’がどちらも被照明領域としての光変調素子31の像形成領域全体を照明することが均一な照明を行う上で好ましい。
【0056】
図1の実施形態では、透過型の光拡散素子21を使用したが、光拡散素子21としては反射型のものを用いることとしてもよい。図10〜図11は、光拡散素子21として反射型ホログラムを使用したときの実施形態であって、各図は、それぞれ図1〜図3の透過型のものと対応した図となっている。
【0057】
図10は、投射型映像表示装置の構成を示す図であって、光拡散素子21として反射型ホログラムを使用した実施形態となっている。前述の実施形態と同様、光走査部15からの走査光Laは、光拡散素子21の入射面を時間的に位置を変えつつ走査を行う。反射型ホログラムでこの入射面が、反射面としても機能し、反射された再生像は、前実施形態と同様、被照明領域としての光変調素子31の像形成領域全体を照明する。光拡散素子21の何れの点を走査した場合にも、各点から出射される拡散光は、被照明領域を照明するこ
とで、被照明領域に対する入射角度を時間的に異ならせることが可能となる。したがって、前実施形態と同様、スクリーン41上で発生するスペックル、並びに、投射型映像表示装置10の各種光学素子で発生するスペックルを十分に目立たなくすることができる。
【0058】
図12は、本実施形態で使用する反射型ホログラムを作成する際の構成(干渉露光)を示した図である。拡散板22の背面側からレーザー光を照射し、前方に拡散した物体光Obをホログラム記録材料24の一方の面から入射させる。その際、拡散板22からの各点からの拡散光(物体光Ob)は、ホログラム記録材料24の少なくとも使用領域全面を照明するよう拡散させる。
【0059】
そして、ホログラム記録材料24の他の面から、集光光学系23にて集光した参照光Rが照射される。集光光学系23の焦点位置Aは、使用時の光走査部15による基準点と一致するように配置されている。物体光Obと参照光Rを同時に入射させ、ホログラム記録材料24中で干渉させる。
【0060】
ホログラム記録材料24は加熱、紫外線照射等の後処理を経て面上の各点において、同じ位置に拡散板像を再生する反射型ホログラム21が作成される。なお、前実施形態と同様、物体光Obの照射には、オパールガラスやすりガラスといった拡散板22だけでなく、レンズアレイなど、各点からの拡散光が使用領域全面を照明できる光学素子(第2の光拡散素子)であればよい。また、この反射型ホログラムについても計算機合成ホログラムを使用することとしてもよい。
【0061】
以上、本実施形態によれば、スペックルノイズが目立つことなく、偏光方向の揃った照明光を出射する照明装置、並びに、この照明装置にて光変調素子を照明することでスペックルノイズが目立たない映像を提供することのできる投射型映像表示装置を提供することが可能となる。
【0062】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0063】
10…投射型映像表示装置
11…光源
12…偏光ビームスプリッター
13…λ/2波長板
14…光反射素子
15…光走査部
16…偏光ビームスプリッターアレイ
17…λ/2波長板
20…照明装置
21…光拡散素子(ホログラム)
22i…拡散板像
23…集光光学系
24…ホログラム記録材料
31…光変調素子(マイクロディスプレイ)
31a…像形成領域
32…投射光学系
41…スクリーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光などのコヒーレント光を使用する照明装置、及び、コヒーレント光を光源に用いて光変調素子を照明し、スクリーン上に映像を投射する投射型映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源からの照明光を、液晶やMEMSなどの光変調素子(マイクロディスプレイ)を用いて映像化し、スクリーンに投影するプロジェクタ(投射型映像表示装置)が知られている。このようなプロジェクタでは、その光源に高圧水銀ランプなどの白色光源を用いたものが知られており、液晶などの2次元光変調素子を照明し得られた画像を投射光学系で拡大してスクリーン上に映像を投射している。
【0003】
しかしながら、高圧水銀ランプなどの高輝度放電ランプは、寿命が比較的短くプロジェクタなどに利用した場合、頻繁にランプを交換する必要がある。また、装置自体が大型化してしまうという欠点もある。さらには、環境負荷の観点から水銀を使用する高圧水銀ランプの仕様は好ましいものとはいえない。このような欠点を解消するため、レーザー光を光源として使用するプロジェクタも提案されている。半導体レーザーは、高圧水銀ランプなどと比較して高寿命であり、また、装置全体の小型化を図ることも可能である。
【0004】
このように、プロジェクタの次世代光源として期待されているレーザー光は直進性に優れるため、LEDなどと比較しても光入射効率の向上を図ることができると考えられる。しかしながら、レーザー光を光源として用いた場合、コヒーレンスの高さに起因するスペックルノイズが発生し、映像を見難くしてしまう欠点がある。
【0005】
スペックルノイズは、コヒーレントなレーザー光を光源とした場合、照射対象表面の微少凹凸からの散乱光が干渉することで生ずる斑点状のノイズであって、プロジェクタで発生した場合には画質劣化の原因となるのみならず、観察者に対して生理的不快感をもたらすこともある。このスペックルノイズを低減するため、レーザー光が通過する拡散板を振動させる、レーザースペクトルの波長スペクトルを拡大する、レーザー光の照射対象となるスクリーン自体を振動させるなど、各種試みが行われている。このようなスペックルノイズ低減の試みとして、特許文献1には、コヒーレント光が通過する拡散素子を回転運動させることで、スペックルノイズの低減を図る無スペックル・ディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるスペックルノイズ低減方法では、拡散素子到達前に生じていたスペックルノイズ(干渉パターン)は平均化できるものの、拡散中心からスクリーンへの入射光線角度はスクリーン上のいずれの点においても不変であるため、スクリーン各点の光散乱特性も一定となり、結果としてスクリーン上で発生するスペックルノイズの除去効果は殆ど得られないという問題があった。
【0008】
このような、コヒーレント光を原因として生ずるスペックルは、コヒーレント光を光源
として使用するプロジェクタ(投射型映像表示装置)のみならず、コヒーレント光を使用する様々な照明装置において問題となっている。
【0009】
ところで、光源に使用されるレーザーは、種類・状況によっては特定の振動方向の偏光成分に揃っていない、もしくは揃っていても振動方向が一定でない場合がある。例えば、ブリュースターウィンドウのないガスレーザー(偏光成分が揃っていない)や、面発光レーザー(ランダム偏光:偏光は揃っているが振動方向が変化する)等が挙げられる。このようなレーザーを光源に用いた場合、入射偏光が揃っている必要がある液晶パネルやLCOSなどの光変調素子、また、偏光成分ごとに視差画像を表示する3Dディスプレイ等の用途では光利用効率の低下、もしくは偏光成分のクロストークによる画質の低下等、様々な問題が生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、コヒーレント光を光源とした場合に生ずるスペックルを抑制するとともに、偏光方向の揃った照明光を出射する照明装置、及び、このような照明光を表示映像形成のために使用する投射型映像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る照明装置は、
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が被照明領域を重ねて照明する光拡散素子と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに本発明に係る照明装置において、前記偏光ビームスプリッターは、前記光源から入射するコヒーレント光がブリュースター角となるように配設された薄膜を含んで構成されることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光走査部は、ミラーデバイスからなることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光反射素子は、ミラーであることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明に係る照明装置において、前記偏光ビームスプリッターと前記光反射素子は、偏光ビームスプリッターアレイで構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明に係る照明装置において、前記波長板は、前記偏光ビームスプリッターの出射面に貼付けられていることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光拡散素子は、ホログラムであることを特徴とする。
【0018】
さらに本発明に係る照明装置において、前記ホログラムは、第2の光拡散素子の像を記録したものであることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明に係る照明装置において、前記ホログラムは、透過型ホログラム、反射型ホログラムの何れかであることを特徴とする。
【0020】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光拡散素子は、拡散板であることを特徴とする。
【0021】
さらに本発明に係る照明装置において、前記光拡散素子は、レンズアレイであることを特徴とする。
【0022】
また本発明に係る投射型映像表示装置は、
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
像が形成される像形成領域を有する変調素子と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明する光拡散素子と、
前記光変調素子の像をスクリーンに投影する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の照明装置によれば、光走査部でコヒーレント光を走査することで、光拡散素子の各点からの拡散光は、被照明領域を時間的に異なる角度で照射することとなり、被照明領域で発生するスペックルを時間的に変化させ、観察者に不可視の状態とさせることが可能となる。さらに、本発明の投射型映像表示装置では、スクリーンに対しても時間的に異なる角度で照射することで、スクリーン上で発生するスペックルを効果的に抑制することができる。
【0024】
さらに、偏光ビームスプリッターと波長板を用いて偏光成分を揃えることで、光変調素子や一部のホログラムなど、偏光選択性を有する光学素子での光利用効率の向上を図ると共に、クロストークなどの画質劣化を抑制することが可能となる。また偏光変換は、レーザービームの状態で行うことができるため光学系の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る照明装置を備えた投射型映像表示装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る照明装置の構成を示す図
【図3】本発明の実施形態に係る照明装置で使用するホログラム作成の様子を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る光走査の様子を示す図
【図5】本発明の他の実施形態に係る光走査の様子を示す図
【図6】本発明の実施形態に係る照明装置で使用する偏光ビームスプリッターアレイの構成を示す図
【図7】偏光ビームスプリッターアレイを用いた照明装置の実施形態を示す図
【図8】偏光ビームスプリッターアレイを用いた照明装置の他の実施形態を示す図
【図9】偏光ビームスプリッターアレイを用いた他の実施形態における照明領域を示す図
【図10】他の実施形態に係る照明装置を備えた投射型映像表示装置の構成を示す図
【図11】他の実施形態に係る照明装置の構成を示す図
【図12】他の実施形態に係る照明装置で使用するホログラム作成の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
では、本発明の実施形態に係る照明装置、及び、投射型映像表示装置について図面を参照しつつ説明を行う。図1は、本発明の実施形態に係る照明装置を備えた投射型映像表示装置の構成を示す図である。なお、以下に説明する図面は、模式的に示した図であって、実際の形状、寸法、配置とは異なる場合もある。
【0027】
本実施形態の投射型映像表示装置10は、照明装置20と、映像を形成するための光変調素子31、光変調素子31で形成された映像をスクリーン41に投射する投射光学系32を備えている。なお、図では、映像が投影されるスクリーン41面をX−Y平面、それに直交する軸をZ軸としている。スクリーン41には、スクリーン41で反射された映像を観察する反射型スクリーン、あるいは、スクリーン41を透過した映像を観察する透過型スクリーンどちらを使用することもできる。
【0028】
本実施形態の照明装置20は、光源11、偏光ビームスプリッター12、λ/2波長板13(波長板)、光反射素子14、光走査部15、ホログラム21(光拡散素子)を有して構成されている。
【0029】
光源11は、コヒーレント光としてのレーザー光を出射する半導体レーザー装置など各種レーザー装置が使用される。偏光ビームスプリッター12は、光源11から出射される偏光成分が揃っていないコヒーレント光L0をp偏光成分とそれに直交するs偏光成分とに分離する光学素子であって、本実施形態では、プリズム間に挟まれた薄膜12aを有して構成されており、プリズム同士は樹脂接着剤もしくは光学接着(オプティカルコンタクト)にて接合されている。薄膜12aは誘電体多層膜よりなり、プリズム面への0°入射
角がブリュースター角になるよう設計されており、p偏光成分はほぼ透過するがs偏光成分はほぼ反射する特性を有する。
【0030】
λ/2波長板13(波長板)は、偏光ビームスプリッター12から出射される2つのコヒーレント光の偏光方向を揃えるために配置されたものであって、2本に分離されたコヒーレント光のどちらか一方の光路中に配置される。本実施形態では、偏光ビームスプリッター12の一方の射出面に貼り付けられている。このようにλ/2波長板13と偏光ビームスプリッター12を一体化することで、部品点数の数を少なくするとともにレイアウトの簡素化が図られている。
【0031】
λ/2波長板13を透過したコヒーレント光L1は、偏光ビームスプリッター12から出射されたもう一方のコヒーレント光L1’と偏光方向が揃えられる。このとき偏光方向は、後の光路中に配置される光変調素子31の偏光方向に一致させておくことが好ましい。さらに、光拡散素子21として偏光選択特性を有するホログラムを使用する場合には、その偏光方向も考慮した偏光方向とすることが好ましい。このように偏光方向が揃った2つのコヒーレント光L1、L1’は、その一方がミラーなど光反射素子14で反射され光走査部15に導かれる。
【0032】
光走査部15は、回動中心Raを中心として反射面を回動させることのできるミラーデバイスであって、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナ、MEMSスキャナのような可動ミラーを機械的に回動させるミラーデバイスが用いられる。この他、音響光学効果スキャナのような屈折率を変調させるものなど各種形態を採用することができる。
【0033】
λ/2波長板13を透過したコヒーレント光L1と光反射素子14にて反射されたコヒーレント光L1’は、光走査部15の反射面に入射されることとなるが、このとき、両コヒーレント光L1、L1’を、光走査部15が回動運動する場合において位置変動が少ない反射面上の1点(以下、「基準点」とも言う)に入射させることが好ましい。このような基準点に両コヒーレント光L1、L1’を入射させることで、光走査部15が走査する両コヒーレント光L1、L1’の走査範囲を略一致させることが可能となり、後で説明する光変調素子31の入射光の均一化を図ることが可能となる。また、光拡散素子21にホログラムを使用する場合には、ホログラム作成時に使用した参照光の集光位置を、光走査部15の基準点に設定することが可能となり、記録されているホログラム再生像を確実に得ることも可能となる。
【0034】
このように光走査部15で反射された2本のコヒーレント光L1、L1’は、走査光Laとなり、光拡散素子21の入射面上を時間的に位置を変えつつ走査する。図2は、本発明の実施形態に係る照明装置20の構成を示す図であって、光拡散素子21による照明の様子を示した図である。実際には、光走査部15では入射角度の異なる2本のコヒーレント光L1、L1’が反射されることとなるが、各図では説明を容易にするため、どちらか1本のコヒーレント光について時刻t1、t2における光線のみが示されている。本実施形態では、偏光ビームスプリッター12で分離されたコヒーレント光は、異なる光路をとるが、光走査部15の基準点で反射され、光拡散素子21に同じ入射角度で入射するため支障はない。
【0035】
ここで光拡散部15による走査光にて走査される光拡散素子21について説明する。光拡散素子21は、走査光Laが入射されることで被照明領域、すなわち、本実施形態の場合、光変調素子31全体を照明する光学素子であって、本実施形態では透過型ホログラムが用いられている。光拡散素子21としてホログラムを採用したことで、走査光Laの入射位置に因らず、常に同一の再生像を得ることが可能となり、被照明領域となる光変調素子31全体をムラ無く照明することができる。また、ホログラムに入射させる走査光Laのビーム断面形状、あるいは、その入射角度などに自由度を持たせることができ、装置のレイアウトなどを自在なものとすることができる。
【0036】
なお、光拡散素子21には、このようなホログラムに限ることなく、各点から出射される拡散光が被照明領域を照明できる光学素子であればよく、各点から出射される拡散光が被照明領域全体を照明することが好ましい。例えば、微細なレンズがアレイ状に配列されて構成されたレンズアレイ、あるいは、オパールガラス、すりガラス、樹脂拡散板など、いわゆる通常の拡散板を用いてもよい。なお、本発明における光拡散素子における「拡散」とは、入射光を所定の方向に角度的に拡げて出射することを指し、回折光学素子やレンズアレイ等によう拡散角が十分に制御された場合のみならず、オパールガラス等の散乱粒子により出射角を拡げる場合も含まれるものとする。
【0037】
本実施形態で使用する光拡散素子21としての透過型ホログラムは、記録された再生像として拡散板像22iを再生する。図2に示されるように、光走査部15で走査されたコヒーレント光L1は、回動する光走査部15で反射され、走査光Laとなり光拡散素子21の入射面上を往復して走査する。図にはある時刻t1、t2についての走査光La(t1)、La(t2)の様子が示されている。本実施形態の光拡散素子21は、所定の入射角を有する光(再生照明光)に対して、再生像を形成する透過型ホログラムが用いられて
いる。光走査部15にて走査される走査光Laは、何れの走査位置においても、この透過型ホログラムに対する再生照明光となるように設定されている。なお、本実施形態で使用する透過型ホログラムの作成については後で説明する。
【0038】
図2に示されるように、時刻t1のときの走査光La(t1)は、光拡散素子21にて再生光としての照明光Lb(t1)を出射し拡散板像22iを形成する。また、時刻t2のときの走査光La(t2)は、光拡散素子21にて照明光Lb(t2)を出射し、同じ拡散板像22iを形成する。このように走査光Laが走査されることで、光拡散素子21の何れの入射位置を照射するときにも拡散板像22iが重なるように形成される。この拡散板像22iが被照明領域全体を含むように位置させることで、何れの走査位置においても被照明領域全体を均一に照明することが可能となる。
【0039】
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置で使用される透過型ホログラムを記録(作成)する際の構成(干渉露光)を示す図である。拡散板22の背面側からレーザー光を照射し、前方に拡散した物体光Obをホログラム記録材料24の一方の面から入射させる。その際、拡散板22の各点からの拡散光(物体光Ob)は、ホログラム記録材料24の少なくとも使用領域全面を照明するよう拡散させる。
【0040】
そして、ホログラム記録材料24の同じ面から、集光光学系23にて集光した参照光Rが照射される。集光光学系23の焦点位置Aは、使用時の光走査部15による基準点と一致するように配置されている。物体光Obと参照光Rを同時に入射させ、ホログラム記録材料24中で干渉させる。なお、物体光Obと参照光とは干渉性を有する必要がある。そのため、同一の光源から発振されたレーザー光を分割して一方を物体光Ob、他方を参照光Rとして使用することなどが考えられる。
【0041】
ホログラム記録材料24は加熱、紫外線照射等の後処理を経て面上の各点において、同じ位置に拡散板像を再生する透過型ホログラム21が作成される。また、記録時に用いられる物体光Obの照射には、オパールガラスやすりガラスといった拡散板22のみならず、レンズアレイなど、各点からの拡散光が使用領域全面を照明できる光学素子(光拡散素子21と峻別できるよう「第2の光拡散素子」と呼ぶ)を用いることとしてもよい。なお、本実施形態では、物体光Obと参照光Rとを干渉させることで干渉縞の記録(干渉露光)を行うこととしたが、計算機にて計算された干渉縞を直接、ホログラム記録材料21に記録する、いわゆる計算機合成ホログラムを採用するものであってもよい。
【0042】
図2の光拡散素子21で再生される拡散板像22iは、図1において光変調素子31の像形成領域全体を照明するように位置される。図1において光変調素子31の像形成領域は、XY平面に2次元的に位置している。本実施形態では、光走査部15には、入射角度が異なる2本のコヒーレント光L1、L1’が入射することとなるが、両コヒーレント光L1、L1’の光走査部15での基準点を、ホログラム作成時の焦点位置Aと一致させておくことで、どちらのコヒーレント光L1、L1’によっても同じ拡散板像22iを形成させることが可能となる。
【0043】
マイクロディスプレイなどの光変調素子31は、光拡散素子21からの照明光Lbにて照明され、画素毎に照明光を透過して映像を形成する。このとき照明光Lbの偏光方向は、偏光ビームスプリッター12、λ/2波長板13にて偏光方向が揃えられており、この偏光方向を光変調素子31で使用される偏光方向と一致させておくことで、光変調素子31での光利用効率の向上、そして画質の向上を図ることが可能となる。
【0044】
光変調素子31で変調された変調光Lcは、投射光学系32で拡大され映像再生光Ldとしてスクリーン41上に投射され、反射、あるいは、透過される映像を観察者に観察さ
せる。このときスクリーン41の面上に投射されたコヒーレント光は互いに干渉することでスペックルを生じさせる。しかしながら、本実施形態では、光走査部15によってコヒーレント光が走査されるため、結果としてスクリーン41に投射する映像再生光Ldの入射角度を経時的に変化させ、このスペックルを極めて効果的に目立たなくしている。
【0045】
例えば、図1に示されるスクリーン上の点P1においては、時刻t1における映像再生光Ld(t1)と、時刻t2における映像再生光Ld(t2)が異なる入射角度で照射されることとなる。図に示す他の点P2や図示しない他の点においても同様であって、映像再生光Ldは、入射角度を時間的に変化させつつスクリーン41上に映像を投射する。したがって、ごく短い時間ではスクリーン上に形成されるスペックルも、映像再生光Ldが時間によって異なる入射角度で照射されることで平均化され、スクリーン41に投射される像を観察する観察者には十分に目立たない状態となる。
【0046】
観察者によって観察されるスペックルには、このようにスクリーン41上でのコヒーレント光の散乱を原因として発生するスペックルだけではなく、投射型映像表示装置10の各種光学素子上で発生するものもある。このスペックルは、光変調素子31を介してスクリーン41に投影されることで観察者に観察される。本実施形態では、走査光Laが光拡散素子21を走査することで、被照明領域としての光変調素子31の像形成領域を照明する。すなわち被照明領域を、光拡散素子21の各点からの拡散光が時間的に分離されるように照明することで、光拡散素子21より前の位相情報をキャンセルするとともに光拡散素子21の各点からの拡散光同士が干渉することも防ぐことができ、投射型映像表示装置10の各種光学素子で発生するスペックルを十分に目立たない状態とすることが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態に係る照明装置、投射型映像表示装置について説明したが、この照明装置にて使用する各種構成の実施形態について説明する。前述の実施形態では、光走査部15の走査形態については詳細を説明しなかったが、光走査部15の走査は、1次元的、2次元的走査どちらを利用してもよい。何れの場合においても光拡散素子21上の各点からの拡散光が被照明領域全体を十分に照明できることが必要とされる。
【0048】
図4には、1次元的に走査を行う光走査部15の実施形態が示されている。この形態では、光源部11から出射されたコヒーレント光は、1軸方向に共振振動する光走査部15の反射面上で反射し、光拡散素子21上をライン上に往復して走査する。光拡散素子21としてホログラムを用いた場合には、何れの走査位置においても拡散板像22iが形成される。このような実施形態では、走査領域がライン状で済むため、光拡散素子21を小型化することができる。ライン状の走査で十分に被照明領域を得るためには、ホログラムを用いることが好ましい。
【0049】
図5には、2次元的に走査を行う光走査部15の実施形態が示されている。この形態では、光源部11からのコヒーレント光は、2軸方向で共振振動する光走査部15の反射面上で反射し、光拡散素子21上を2次元的に走査する。この実施形態においても光拡散素子21からの拡散光は、被照明領域全体を十分に照明するものとなっており、特にホログラムを用いた場合には、被照明領域に合わせた形状の拡散板像22iを形成することが可能であり光の利用効率が高められる。このような実施形態は、オパールガラスのような通常の拡散板を用いた場合に有効である。各点からの拡散光の照度分布が一定でない場合であっても照度の平均化を図り、被照明領域全体を均一に照明することが可能となる。
【0050】
また、前述の実施形態で使用した偏光ビームスプリッター12と光反射素子14は、偏光ビームスプリッターアレイとして構成することも可能である。図6は、偏光ビームスプリッターアレイの構成を説明する図である。偏光ビームスプリッターアレイ16は、プリ
ズムで挟まれた複数の薄膜16a、16bにて構成され、本実施形態では、薄膜16aは、光源11からのコヒーレント光L0をp偏光成分とs偏光成分とに分離する。もう一方の薄膜16bは、分離された一方のコヒーレント光L1’を光走査部15側に導く光反射素子として機能する。
【0051】
このような偏光ビームスプリッターアレイ16を使用した場合、出射される各コヒーレント光L1、L1’が距離dだけ離れた平行光として出射される。そのため、光拡散部15に入射させる際、あるいは、光拡散素子21で被照明領域を照明する際に工夫が必要となる。
【0052】
図7、図8は、偏光ビームスプリッターアレイを用いた照明装置の実施形態を示す図であって、ちょうど図2で説明した照明装置において、偏光ビームスプリッター12、光反射素子14に代えて、偏光ビームスプリッターアレイ16を用いた実施形態となっている。どちらの実施形態においても図2と同様の点については説明を省略する。
【0053】
図7に示される実施形態では、偏光ビームスプリッターアレイ16で2本の平行光をレンズなどの集光光学系18で、光走査部15の基準点に集光させることとしている。この実施形態では、前述の実施形態と同様、入射角度の異なる2本のコヒーレント光L1、L1’が反射されることとなるが、光拡散素子21の各入射位置において2本のコヒーレント光L1、L1’が同じ入射角度で入射される。そのため、特に、光拡散素子21にホログラムを用いた場合には、光走査部15の基準点を、ホログラム作成時の焦点位置Aと一致させておくことで、どちらのコヒーレント光L1、L1’によっても同じ拡散板像22iを形成させることができ、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0054】
一方、図8に示される実施形態では、偏光ビームスプリッターアレイ16から出射された2本の平行光L1、L1’をそのまま光走査部15に入射させることとしている。このような形態では、光走査部15の反射面の2箇所において各コヒーレント光L1、L1’が反射されることとなる。そのため、光拡散素子21の各入射位置では、2本の走査光LaとLa’による照射範囲が異なったものとなる。しかしながら、光拡散素子21としてホログラムを利用した場合には、常に同じ位置に拡散板像22iを形成することとなるため、光の利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、このような場合、光拡散素子21として、レンズアレイや、オパールガラスなどの通常の拡散板などを用いたときには、光拡散素子21の各点における入射角度の違いによって照明領域にずれが生じる場合がある。そのため、図9に示すようにコヒーレント光Laが入射したときの光拡散素子21による照明領域22iと、コヒーレント光La’が入射したときの光拡散素子21による照明領域22i’がどちらも被照明領域としての光変調素子31の像形成領域全体を照明することが均一な照明を行う上で好ましい。
【0056】
図1の実施形態では、透過型の光拡散素子21を使用したが、光拡散素子21としては反射型のものを用いることとしてもよい。図10〜図11は、光拡散素子21として反射型ホログラムを使用したときの実施形態であって、各図は、それぞれ図1〜図3の透過型のものと対応した図となっている。
【0057】
図10は、投射型映像表示装置の構成を示す図であって、光拡散素子21として反射型ホログラムを使用した実施形態となっている。前述の実施形態と同様、光走査部15からの走査光Laは、光拡散素子21の入射面を時間的に位置を変えつつ走査を行う。反射型ホログラムでこの入射面が、反射面としても機能し、反射された再生像は、前実施形態と同様、被照明領域としての光変調素子31の像形成領域全体を照明する。光拡散素子21の何れの点を走査した場合にも、各点から出射される拡散光は、被照明領域を照明するこ
とで、被照明領域に対する入射角度を時間的に異ならせることが可能となる。したがって、前実施形態と同様、スクリーン41上で発生するスペックル、並びに、投射型映像表示装置10の各種光学素子で発生するスペックルを十分に目立たなくすることができる。
【0058】
図12は、本実施形態で使用する反射型ホログラムを作成する際の構成(干渉露光)を示した図である。拡散板22の背面側からレーザー光を照射し、前方に拡散した物体光Obをホログラム記録材料24の一方の面から入射させる。その際、拡散板22からの各点からの拡散光(物体光Ob)は、ホログラム記録材料24の少なくとも使用領域全面を照明するよう拡散させる。
【0059】
そして、ホログラム記録材料24の他の面から、集光光学系23にて集光した参照光Rが照射される。集光光学系23の焦点位置Aは、使用時の光走査部15による基準点と一致するように配置されている。物体光Obと参照光Rを同時に入射させ、ホログラム記録材料24中で干渉させる。
【0060】
ホログラム記録材料24は加熱、紫外線照射等の後処理を経て面上の各点において、同じ位置に拡散板像を再生する反射型ホログラム21が作成される。なお、前実施形態と同様、物体光Obの照射には、オパールガラスやすりガラスといった拡散板22だけでなく、レンズアレイなど、各点からの拡散光が使用領域全面を照明できる光学素子(第2の光拡散素子)であればよい。また、この反射型ホログラムについても計算機合成ホログラムを使用することとしてもよい。
【0061】
以上、本実施形態によれば、スペックルノイズが目立つことなく、偏光方向の揃った照明光を出射する照明装置、並びに、この照明装置にて光変調素子を照明することでスペックルノイズが目立たない映像を提供することのできる投射型映像表示装置を提供することが可能となる。
【0062】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0063】
10…投射型映像表示装置
11…光源
12…偏光ビームスプリッター
13…λ/2波長板
14…光反射素子
15…光走査部
16…偏光ビームスプリッターアレイ
17…λ/2波長板
20…照明装置
21…光拡散素子(ホログラム)
22i…拡散板像
23…集光光学系
24…ホログラム記録材料
31…光変調素子(マイクロディスプレイ)
31a…像形成領域
32…投射光学系
41…スクリーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が被照明領域を重ねて照明する光拡散素子と、を備えたことを特徴とする
照明装置。
【請求項2】
前記偏光ビームスプリッターは、前記光源から入射するコヒーレント光がブリュースター角となるように配設された薄膜を含んで構成されることを特徴とする
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光走査部は、ミラーデバイスからなることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光反射素子は、ミラーであることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記偏光ビームスプリッターと前記光反射素子は、偏光ビームスプリッターアレイで構成されていることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記波長板は、前記偏光ビームスプリッターの出射面に貼付けられていることを特徴とする
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光拡散素子は、ホログラムであることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記ホログラムは、第2の光拡散素子の像を記録したものであることを特徴とする
請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記ホログラムは、透過型ホログラム、反射型ホログラムの何れかであることを特徴とする
請求項7または請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記光拡散素子は、拡散板であることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記光拡散素子は、レンズアレイであることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れかに記載の照明装置。
【請求項12】
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
像が形成される像形成領域を有する変調素子と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明する光拡散素子と、
前記光変調素子の像をスクリーンに投影する投射光学系と、を備えることを特徴とする
投射型映像表示装置。
【請求項1】
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が被照明領域を重ねて照明する光拡散素子と、を備えたことを特徴とする
照明装置。
【請求項2】
前記偏光ビームスプリッターは、前記光源から入射するコヒーレント光がブリュースター角となるように配設された薄膜を含んで構成されることを特徴とする
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光走査部は、ミラーデバイスからなることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光反射素子は、ミラーであることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記偏光ビームスプリッターと前記光反射素子は、偏光ビームスプリッターアレイで構成されていることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記波長板は、前記偏光ビームスプリッターの出射面に貼付けられていることを特徴とする
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光拡散素子は、ホログラムであることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記ホログラムは、第2の光拡散素子の像を記録したものであることを特徴とする
請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記ホログラムは、透過型ホログラム、反射型ホログラムの何れかであることを特徴とする
請求項7または請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記光拡散素子は、拡散板であることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記光拡散素子は、レンズアレイであることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れかに記載の照明装置。
【請求項12】
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源から出射したコヒーレント光を異なる方向に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターで分離されたコヒーレント光の一方を反射させる光反射素子と、
前記光反射素子で反射されたコヒーレント光と、前記偏光ビームスプリッターで分離された他方のコヒーレント光を走査する光走査部と、
前記偏光ビームスプリッターで分離された何れか一方のコヒーレント光の光路に配置され、前記偏光ビームスプリッターで分離された2つのコヒーレント光の偏光方向を揃える波長板と、
像が形成される像形成領域を有する変調素子と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明する光拡散素子と、
前記光変調素子の像をスクリーンに投影する投射光学系と、を備えることを特徴とする
投射型映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−226270(P2012−226270A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96306(P2011−96306)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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