説明

照明装置及び車両用客室照明システム

【課題】新幹線車両の客室照明について、読書やパソコン使用などに必要な照明を確保しつつ、全体を柔らかくてリラックスできる照明にすることが必要であり、天井照明が届きにくい荷棚の下方の座席を照明し、支障なく荷棚下面に付設することができ、室内照明の演出効果を高められるような、照明器具を工夫すること。
【解決手段】下面が照明窓であるケーシング3の底面が傾斜面による拡散反射面4であり、上記ケーシング3に平面型放電管による薄型照明灯1を組み込んで上記薄型照明装置が構成されており、上記薄型照明灯1が表裏両面に発光を行なうものであり、上記ケーシング3の下面カバー2が上記薄型照明灯1に対向する直接照明窓2aをその中央に有し、当該直接照明窓2aの外側に間接照明窓2bを有し、上記直接照明窓2aと上記間接照明窓2bとの間に不透明部2cがあって、当該不透明部2cで薄型照明灯1の端縁部を覆って遮蔽していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新幹線車両を含む特急車両等の鉄道車両の客室内照明装置及び客室照明システムに関するものであり、低コストで効果的に鉄道車両の客室照明を演出することができるものである。
【背景技術】
【0002】
新幹線車両を代表とする特急車両等の鉄道車両(以下これを単に「鉄道車両」という)は、特急車両や通勤車両(例えば側壁に沿って縦長にシートを配置した通勤車両)に比較すると若干窓が小さく、開放感に欠けるところがあるので、室内の明るさは室内照明灯に依存するところが大であり、したがって、室内全体が比較的強い照度で照らされているのが実態である。
ところが、新幹線車両内の乗客は、乗っている時間が概して長いこともあって、雑談し、読書し、パソコンを使用し、あるいは目を閉じてリラックスする人など、様々である。このように長い時間の車内での過ごし方は様々であるにもかかわらず、車内照明は、天井の中央部に設けた単一照明器具による単純な照明であり、他方、天井中央に付設された全体照明による窓側座席の明るさは、中央座席の明るさに比して暗い(照明灯からの距離が遠いこと、及び上方に荷棚がありこれが天井中央からの照明を邪魔することなどが理由)。このために天井中央の照明を強くする必要がある(特開2004−345538号公報)。
また、途中の駅での乗り降りを考慮すると、鉄道車両の荷棚は、乗客による荷物の上げ下ろしに便利を良くするため荷棚上面高さが低く、かつ乗客の頭上部分の圧迫感が無いように荷棚の下面高さが高いという相反する両要求を満足させるために薄い荷棚が望ましい。
以上のようなことから、鉄道車両の客室照明は、乗客の様々な過ごし方に対して十分配慮した照明がなされているとは必ずしも言えない。
【0003】
以上の事情を勘案すれば、飛行機の客室照明のように、全体照明を極めて弱くして、読書灯などのスポットライトで一部を明るく照明する方式も考えられるが、鉄道車両(例えば新幹線車両)の場合は飛行機と違って多くの乗客の乗降が途中駅で度々行われるので、上記の照明方式は新幹線車両には不向きである(なお、スポットライトは寿命が短いので、その保守管理が容易でなく、鉄道車両の客室照明には適切でない)。また、仮にスポットライトによる照明方式を採用しようとしても、スポットライトを付設できる位置は左右の荷棚の下面しかなく、前記したように鉄道車両の荷棚は薄いものが望ましいという理由があるため、荷棚にスポットライトを付設することは、スポットライト取付け部分において荷棚が部分的に厚くなるか又は荷棚全体が厚くなるなど、乗客の荷物の扱い、窓側座席の居住性の観点、室内デザインの観点からの点で不都合な点が多い。
【0004】
なお、鉄道車両の客室照明についてその照明器の発熱抑制、消費電力の節減、照明灯の耐久性向上を目的として、LEDアレイを光源とする平面照明装置を荷棚下面に組み付けた発明が特開2005−324694号公報に記載されている。このものは、図7、図8に示すものであり、LEDアレイ21と拡散反射板23,25とによる薄型平面照明器7を各座席9に対応させて荷棚の下面に配置したものであるが、これは客室全体を多数の薄型平面照明器7で一様に照明するにすぎないから、上記事情に適った客室照明を演出することはできない。
他に、蛍光灯と上下のレンズフィルムとによって薄型照明装置を構成し、これを荷棚に組み付ける発明が実用新案登録第2568941号公報に記載されているが、この例のように蛍光灯を使用した場合は蛍光灯取付け部分の荷棚が厚くなり、レンズフィルムを使用しても荷物を載せる荷棚上面が高くなり乗客による荷物の上げ下ろしを容易にする点についての改善効果は少なく、同時に均一な照明となり、上記事情に適った客室照明を演出することはできない。
【0005】
ところで、鉄道車両内での過ごし方は、読書、パソコン使用、睡眠、談話、飲食など様々であるが、このように様々な態様での過ごし方に適した客室照明を演出するためには、客室内での乗客の移動、客室への乗客の出入りに支障がない程度の全体照明を確保するとともに読書やパソコン使用などに必要な照明を確保しつつ、全体を柔らかくてリラックスできる照明にすることが必要であり、天井照明が届きにくい荷棚の下方の座席を照明するため、照明装置を荷棚下面に付設したとき、客室内居住性及び室内デザインを損なうものであってはならず、むしろ荷棚下面に付設したとき、客室内照明の演出効果を高め、室内デザインを向上させるものであることが求められる。
【特許文献1】特開2004−345538号公報
【特許文献2】特開2005−324694号公報
【特許文献3】実用新案登録第2568941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の事情を勘案して、本発明は、鉄道車両(特急車両や新幹線車両等)の客室照明について、客室内での全体照明を確保しつつ、天井照明の届きにくい荷棚の下方の座席においても読書やパソコン使用などに必要な照明を部分的に確保しつつ、室内全体を柔らかくしてリラックスできる室内照明を実現することができ、照明装置を支障なく荷棚下面に付設することができ、室内照明の演出効果を高められるように、鉄道車両の照明を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1の発明〕
この出願の第1番目の発明の手段1は、請求項1に記載の照明装置であって、次の(イ)乃至(ニ)によるものである。
(イ)底面に対向した開口部を有するケーシングと、
(ロ)照明窓を有するとともに前記開口部を覆う下面カバーと
(ハ)前記ケーシング内に内蔵され、表裏の両面から照明される薄型照明灯と、
(ニ)前記ケーシングの底面と前記薄型照明灯の裏面との間に設けられた拡散反射部材とを備えたものであること。
【0008】
〔作用〕
請求項1の構成によれば、照明装置の光源として、薄型照明灯を用いているので、照明装置の厚さを薄くすることができる。また、薄型照明灯は、面発光であるので、面全体を略均一輝度で照射することができるので、外部から照明窓を見た場合に、ムラが見られない。また、前記薄型照明灯は、表裏の両面から発光・照明され、表面から発光される光は、直接、前記照明窓を介して外部に照射される。一方、裏面から発光される光は、前記ケーシングの底面と前記薄型照明灯の裏面との間に設けられた拡散反射部材によって表面側に反射することにより、前記照明窓を介して外部に照射される。このように両面から発光される光を効率よく、外部へ照射することができる。
【0009】
〔請求項2の発明〕
また、第1番目の発明の手段2は、請求項2に記載の照明装置であって、請求項1の構成、すなわち、上記(イ)乃至(ニ)に加えて、次の(ホ)(ヘ)によるものである。
(ホ)前記照明窓は、前記薄型照明灯の表面と対向して設置された直接照明窓と、
(ヘ)前記直接照明窓と隣接した少なくとも一つの間接照明窓とからなること。
【0010】
〔作用〕
請求項2の構成によれば、請求項1に記載の照明装置の作用・効果に加えて、
前記薄型照明灯の表面から発光された光は、前記直接窓を介して外部に照射され、前記薄型照明灯の裏面から発光された光は、前記間接窓を介して外部に照射される。前記直接照明窓は、前記間接照明窓と隣接しており、該直接照明窓から発光した強い光に隣接するように該間接照明窓から発光した比較的弱い光が照射されるので、強い光の照射が必要とされる領域では、直接照明窓からの光が照射されることによって非常に明るくなり、その隣接した領域では淡い光が照射されているので、極めてソフトな感じが醸し出される。
【0011】
〔請求項3の発明〕
第1番目の発明の手段3は、請求項3に記載の照明装置であって、
請求項2の構成、すなわち、上記(イ)乃至(ヘ)に加えて次の(ト)によるものである。
(ト)前記直接照明窓と前記間接照明窓との間に不透明部を備え、該不透明部と前記薄型照明灯の端縁部とが対向配置されていること。
〔作用〕
請求項3の構成によれば、請求項2に記載の照明装置の作用・効果に加えて、
前記直接照明窓と前記間接照明窓との間の不透明部によって、光が照射されない前記薄型照明灯の端縁部を覆い隠しているので、直接照明領域と間接照明領域との区切りが明確になり、直接照明と間接照明とによる照明の演出効果がより顕著になる。
【0012】
〔請求項4の発明〕
第1番目の発明の手段4は、請求項4に記載の照明装置であって、
請求項2の構成または請求項3の構成に加えて、次の(チ)によるものである。
(チ)前記間接照明窓が有色であること。
〔作用〕
請求項4の構成によれば、請求項2または請求項3に記載の照明装置の作用・効果に加えて、
間接照明を有色にすることによって、照明の演出の自由度を高め、演出効果を高めることができる。
【0013】
〔請求項5の発明〕
第1番目の発明の手段の第5は、請求項5に記載の照明装置であって、
請求項1乃至請求項4のいずれかの構成に加えて、次の(リ)によるものである。
(リ)前記拡散反射部材は、前記薄型照明灯の裏面に対し傾斜して設けられるていること。
〔作用〕
請求項5の構成によれば、請求項1乃至請求項4のいずれかの照明装置の作用・効果に加えて、
前記拡散反射部材が、前記薄型照明灯の裏面に対し傾斜して設けられるので、該薄型照明灯の裏面から発光・照射された光が、この該薄型照明灯の裏面自体へ反射され返されることなく、該薄型照明灯の周囲へ向けて効率よく反射されることになる。ひいては、間接照明への光の照射量を確保できる。
【0014】
〔請求項6の発明〕
また、第1番目の発明の手段6は、請求項6に記載の照明装置であって、
請求項1乃至請求項5のいずれかの構成に加えて、次の(ヌ)によるものである。
(ヌ)前記拡散反射部材は、金属材料からなるケーシングの底面からなること。
〔作用〕
請求項6の構成によれば、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の照明装置の作用・効果に加えて、
前記拡散反射部材が金属材料であるため、反射効率を確保できるとともに、拡散反射部材を作成しやすい。また、前記ケーシングの底面が、この拡散反射部材となっているため、拡散部材としての別部品を設ける必要がなく、その分コストが低減される。
【0015】
〔請求項7の発明〕
第1番目の発明の手段7は、請求項7に記載の照明装置であって、請求項1乃至請求項6のいずれかの構成に加えて、次の(ル)によるものである。
(ル)前記薄型照明灯は、対向配置した一対の誘電体平板の周囲を封止して形成した放電空間に放電ガスを充填し、前記一対の誘電体平板のいずれか一方の面には一対の薄膜状の放電電極が備えられ、この電極に電圧を印加することによって、前記一対の誘電体平板の両面側から発光する平面型放電管を具備するものであること。
【0016】
〔作用〕
請求項7の構成によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の照明装置の作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏する。
前記平面型放電管は、他の面光源(例えば特許文献1に開示された平面照明器)と比較して均一面発光が可能である。また、一対の誘電体平板間の周囲を封止して形成された放電空間の両端に一対の棒状電極を形成した平面型放電管があるが、この放電空間の厚みが前記一対の棒状電極に律束されるために、薄くすることができず、したがって、放電管全体を薄くすることができない。しかし、この発明に用いられる前記平面型放電管は、放電空間内に電極がないので、約2〜3mm程度まで薄く作成することができ、ひいては、照明装置全体の厚さを薄くすることができる。
【0017】
〔請求項8の発明〕
また、第1番目の発明の手段8は、請求項8に記載の車両用客室照明システムであって、 荷棚下面に薄型照明器を組み込んだ照明装置の下方の座席を個々に照明する鉄道車両の客室照明システムを前提として、次の(ヲ)(ワ)によるものである。
(ヲ)請求項1乃至請求項7のいずれかの照明装置を当該照明装置の照明窓側を下方にして荷棚下面に所定間隔で多数組み込んであり、
(ワ)上記照明装置を駆動する駆動装置とを備えていること。
【0018】
〔作用〕
請求項8の構成によれば、次の作用・効果を奏する。
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の照明装置の作用・効果を備えるとともに、この照明装置を複数、照明窓側を下方にして荷棚下面に組み込んであり、そして、照明装置を駆動する駆動装置によってこれらの照明装置を点灯させるものであるから、鉄道車両の乗客は、この荷棚下面に組みこまれた照明装置により、この直接照明によって、読書したりパソコンを操作することができる。また、それ以外の領域は、間接照明によってソフトな光が照射されているので、穏やかにくつろいで過ごすことができる。
【0019】
〔請求項9の発明〕
第2番目の発明の手段1は、請求項9の鉄道車両の客室照明システムであって、荷棚下面に請求項8記載の薄型照明装置を組み込んで薄型照明装置の下方の座席を個々に照明する鉄道車両(特急車両や新幹線車両等の鉄道車両)の客室照明システムを前提として、次の(イ)乃至(ハ)によるものである。
(イ)下面が照明窓であるケーシング内側の底面が傾斜面による拡散反射面であり、
(ロ)上記ケーシングに両面発光の薄型照明灯を組み込んで上記薄型照明装置が構成されており、
(ハ)上記ケーシングの下面カバーが上記薄型照明灯に対向する直接照明窓をその中央に有し、当該直接照明窓の外側に間接照明窓を有すること。
【0020】
〔作用〕
請求項9の構成による作用・効果を図1を参照しつつ説明する。
平面型放電管による薄型照明灯は従来公知であり(例えば特開2003−31182号公報)、前記薄型照明灯を使用した照明装置は、厚さが40mm程度の鉄道車両(例えば新幹線車両)の荷棚に支障なく組み込むことは可能である。そして、一つの薄型照明灯を備えた上記薄型照明装置が、図2−1、図2−2に示すような配置で各座席列毎に配置されている。
そして、上記平面型放電管による薄型照明灯1は上下両面から発光し、下面からの光は上記下面カバー2の中央の直接照明窓2aを透過して乗客の手元を直接照明する。他方、上面からの光はケーシング3の底面の拡散反射面4,4に反射して下面カバー2の外側の間接照明窓2b,2bを透過して、乗客の手元の外側を間接照明する。
【0021】
〔請求項10の発明〕
第2番目の発明の手段2は、請求項10の鉄道車両の客室照明システムであって、
荷棚下面に薄型照明装置を組み込んで左右の座席を個々に照明する鉄道車両(特急車両や新幹線車両等の鉄道車両)の客室照明システムを前提として、上記の(イ)乃至(ハ)に加えて次の(ニ)によるものである。
(ニ)上記直接照明窓と上記間接照明窓との間に不透明部があって、当該不透明部で薄型照明灯の端縁部を覆って遮蔽していること。
【0022】
〔作用〕
上記直接照明窓と上記間接照明窓との間に不透明部があって、当該不透明部で薄型照明灯の端縁部を覆って遮蔽しているから、直接照明されている区域と間接照明されている区域とが上記遮蔽によって明確であり、したがって、両照明領域のコントラストが明確で、照明演出効果が顕著である。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、この出願の発明によれば、室内への出入りや移動等に支障がない程度の全体照明の照度を確保しつつ、室内全体を柔らかくてリラックスできる室内照明を実現できる照明装置を提供することができる。また、この照明装置を荷棚へ組み込んだ車両用客室照明システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1番目の発明の実施形態〕
この実施形態は、いわゆる新幹線車両に適用した車両用客室照明システムの一発明形態である。これを図1〜4を用いて説明する。
図1は本実施形態における照明装置Lの長手方向断面図である。図2−1は車両用客室照明システムの平面図であり、図2−2は、この照明器Lを備えた車両構内斜視図である。また、図3は、本実施形態の荷棚の横方向断面図であり、図4は、照明装置Lの下面カバーの平面図である。
【0025】
〔車両用客室照明システムの全体構成〕
この実施形態における車両用客室照明システムでは、天井中央部に蛍光灯11による間接照明の天井照明装置L1があって、天井近傍を柔らかく照明しており、他方、左右の荷棚の下面に座席列毎の照明装置Lを組み込んであって、乗客の手元を直接照明で明るく照らし、その前後を間接照明で柔らかく照明しているものである(図2−1,図2−2、図3参照)。
【0026】
〔照明装置Lの構成〕
照明装置Lは、図8の従来例と同様に長手方向に順次繋がれて荷棚の下面に組み付けられ(図2−1,図2−2参照)、荷棚の下に一定間隔で車両前後方向に一列に配置されていて、その照明光が下面カバー2に設けた照明窓2(図4参照:照明窓2a−1、2a−2、2b)から照射される。そして、照明装置Lは、ステンレス製のケーシング3と、平面型放電管による薄型照明灯1と、下面カバー2とによって構成されており(図1参照)、ケーシング3の底面は、長手方向(車両前後方向)に傾斜した拡散反射部材としての拡散反射面4,4を形成している。
【0027】
この実施例は、いわゆる新幹線車両にこの発明を適用した例であり、この実施例の客室照明システムでは、天井中央部に蛍光灯11による間接照明の天井照明器L1があって天井近傍を柔らかく照明しており、他方、左右の荷棚の下面に照明装置Lを組み込んであって、乗客の手元を直接照明で明るく照らし、その前後を間接照明で柔らかく照明しているものである(図2−1、図2−2、図3)。なお、各座席列毎の照明装置Lが荷棚下面に配置されている。
【0028】
上記照明装置Lは図8の従来例と同様に長手方向に順次繋がれて荷棚の下面に組み付けられているものであり(図2−1、図2−2参照)、荷棚の下に座席ピッチに合わせて一定間隔で車両前後方向に一列に配置されていて、その照明光が下面カバー2に設けた照明窓2(照明窓2a−1,2a−2,2b)から照射される。そして、照明装置Lはケーシング3と面型放電管による薄型照明灯1と下面カバー2とによるものであり(図1参照)、ケーシング3の底面は長手方向(車両前後方向)に傾斜した拡散反射面4,4になっている。薄型照明灯1は図6に示された構成を有する。すなわち、 所定の放電距離だけ離間するように一対のガラス基板31,31を対向して配置し、両ガラス基板31,31間の空間に放電ガスを封入して放電空間40を形成し、ガラス基板31,31の外側に透明電極32,32を設け、ガラス基板31,31の内側面に蛍光体膜45,45を形成してあり、蛍光体膜45,45の蛍光が透明電極32,32から上方、下方両側を照らす。
【0029】
そして、上記下面カバー2は中央の直接照明窓2aと前後の間接照明窓2b,2bを有しており、この実施例では当該カバー2は乳白色なガラスクロス製であり、上記直接照明窓2a、間接照明窓2bの外側が不透明部2cになっている(図1、図4参照)。また、直接照明窓2aは、中央の幅狭帯状透明窓2a−1と前後の帯状透明窓2a−2とによるものである。
【0030】
上記の薄型照明灯1は中央の直接照明窓2aの上方にあり、透明部の外側の不透明部2cによってその周縁が覆われている。
薄型照明灯1の下面から発光された光線は、中央の幅狭帯状透明窓2a−1と前後の帯状透明窓2a−2とによる直接照明窓2aを透過して、乗客の手元を直接照明する。
他方、薄型照明灯1の上面から発光された光線は、ケーシング3の底面の拡散反射面4,4によって拡散して反射され、前後の間接照明窓2bを透過して座席に着座した乗客の前後を照明する(間接照明)。そして、乗客の手元の直接照明領域とその前後の間接照明領域の外の領域は非照明領域(下面カバーの不透明部2cによって照明光を遮蔽された領域)である。したがって、長手方向に非照明領域、間接照明領域、非照明領域、直接照明領域、非照明領域、間接照明領域、非照明領域の順で存在することになる。
【0031】
〔照明器Lの照明実験結果〕
この実施例における直接照明窓2a、間接照明窓2bの直下の明るさは図5に示すとおりであり、間接照明窓2bの測定点A,B,Cは122,206,353cd/m2、直接照明窓2aの測定点D,E,Fは2400,2650,2350cd/m2であり、乗客の周辺の明るさは著しく不均一であり、この明るさの不均一を種々に工夫することによって客室照明を様々に演出することが可能である。
【0032】
〔第1の実施形態の効果〕
次に、本実施形態よる効果は以下のとおりである。
(1)照明装置Lは光源として薄型照明灯1を用いているので、照明装置Lの厚さを薄くすることができる。
(2)薄型照明灯1は面発光であるので、面全体を略均一輝度で照射することができ、外部から照明窓を見た場合、その明るさにムラが見られない。
(3)薄型照明灯1は、上下(表と裏)の両面から発光・照明され、下面(表面)から発光される光は、直接、照明窓2を介して外部に照射される。一方、上面(裏面)から発光される光は、ケーシング3内側の底面で形成された拡散反射面4,4によって表面側に反射することにより、前記照明窓を介して外部に照射される。このように両面から発光される光を効率よく、外部へ照射することができる。
【0033】
(4)薄型照明灯1の表面から発光された光は、直接照明窓2aを介して外部に照射され、薄型照明灯1の裏面から発光された光は、間接照明窓2bを介して外部に照射される。直接照明窓2aは、間接照明窓2bの前後方向の両側にあり、直接照明窓2aから発光した強い光の前後を覆うように、間接照明窓2bから発光した比較的弱い光が照射されるので、強い光の照射が必要とされる乗客の手元には、直接照明窓2aからの光が照射されることによって非常に明るくなり、その他の周辺領域には淡い光が照射されているので、極めてソフトな感じが醸し出される。
【0034】
(5)直接照明窓2aと間接照明窓2bとの間の不透明部2cによって、光が照射されない薄型照明灯の端縁部を覆い隠しているので、直接照明領域と間接照明領域との区切りが明確になり、直接照明と間接照明とによる照明の演出効果がより顕著になる。
(6)間接照明窓2bを有色にすることによって、照明の演出の自由度を高め、演出効果を高めることができる。
(7)拡散反射面4,4が、薄型照明灯1の上面(裏面)に対し傾斜して設けられるので、薄型照明灯1の上面(裏面)から発光・照射された光が、この薄型照明灯1の上面(裏面)自体へ反射され返されることなく、薄型照明灯1の周囲へ向けて効率よく反射されることになる。ひいては、間接照明への光の照射量を確保できる。
【0035】
(8)拡散反射部面4,4は、ステンレス製のケーシング3の底面であるため、高い反射効率を確保できる。
(9)ケーシング3の底面が、この拡散反射面4,4となっているため、拡散部材としての別部品を設ける必要がなく、その分だけコストが低減される。
(10)薄型照明灯1としての平面型放電管は、他の面光源(例えば特許文献1に開示された平面照明器)と比較して均一面発光が可能である。
(11)平面型放電管の他の構造のものとして、一対の誘電体平板間の周囲を封止して形成された放電空間の両端に一対の棒状電極を形成したものがあるが、この放電空間の厚みは前記一対の棒状電極に左右されるので、これを薄くすることができず、したがって、放電管全体を薄くすることができない。しかし、この発明に用いる前記平面型放電管は、放電空間内に電極がないので、約2〜3mm程度まで薄く作成することができる。ひいては、照明装置全体の厚さを薄くすることができる。
【0036】
(12)この照明装置Lを複数、照明窓2側を下方にして荷棚下面に組み込んで照明システムを構成した。そして、照明装置を駆動する駆動装置によって、これらの照明装置を点灯させた。鉄道車両に乗車している乗客は、この荷棚下面に組みこまれた照明装置により、この直接照明によって、読書したりパソコンを操作することができる。この直接照明で照らされる範囲は比較的狭いので、全体的に柔らかい客室内雰囲気を損なうことなく、また、通常のスポットライトによる照明のようなきつい感じがない。一方、それ以外の領域は、間接照明によってソフトな光で照明されているので、穏やかにくつろいで過ごすことができる。
【0037】
(13)通常のスポットライトの耐久時間(例えば旅客機の読書灯は200〜2000時間)に比べてその耐久時間が極めて長い(薄型照明灯の場合の平均耐久性は10000時間)ので、メンテナンスが容易でそのメンテナンス費用を含めたコストは極めて低い。
【0038】
以上のように、この実施例では、天井中央およびその近傍を蛍光灯で間接的に照明し、荷棚下面に座席列毎に設けた照明装置L(薄型照明灯1によるもの)で乗客の手元を直接照明しつつその前後を間接照明するものであるから、全体として柔らかい照明に包まれて、落ち着いた雰囲気が醸し出される。
そして、照明装置Lにより直接照明される範囲は比較的狭いので、全体的に柔らかい客室内雰囲気を損なうことはなく、また、これは薄型照明灯によるものであるから、通常のスポットライトによる照明のようなきつい感じはない。
又、通常のスポットライトの耐久時間に比してその耐久時間が極め長いので、メンテナンスが容易であり、そのメンテナンス費用を含めたコストは極めて低いのは、上記のとおりである。
【0039】
〔他の実施形態等〕
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な形態で実施することが可能である。以下にその他の実施形態等を列記する。
【0040】
本発明において、薄型照明灯として平面型放電管以外の両面発光型照明灯具を用いてもよい。
また、平面型放電管の構造は、第1の実施形態に用いたものに限定されない。
また、第1の実施形態では、拡散反射部材として、ケーシング内面の底面を利用しているが、別部材としての拡散反射部材を使用しても良い。
【0041】
なお、第1の実施形態では、照明窓を直接照明用と間接照明用とに分けているが、これに限定する必要はなく、本発明ではひとつの照明窓として機能させても良い。また、直接照明用と間接照明用との間に不透明部を設けているが、本発明では、これに限定されない。
また、第1の実施形態では、新幹線車両の客室内に適用した客室照明システムを前提としているが、これに限定されない。例えば、特急列車や快速列車のグリーン車両客室にも比較的柔らかい雰囲気の客室照明システムを適用することが考えられる。また、この照明装置を、バスや他の鉄道車両用として適用することもできる。また、この種の車両用に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】は、実施例における照明装置Lの長手方向断面図である。
【図2−1】は、実施例の照明システムの平面図である。
【図2−2】は、実施例の照明システムを備えた車両の客室斜視図である。
【図3】は、実施例の荷棚の横方向断面図である。
【図4】は、下面カバーの平面図である。
【図5】は、図4における照明測定点における明るさの測定値を示す一覧表である。
【図6】(a)は、薄型照明灯の一部を破断した斜視図であり、(b)は断面図である。
【図7】は、鉄道車両の荷棚下面に布設された薄型平面照明装置の従来例の断面図である。
【図8】は、荷棚下面に薄型平面照明装置が布設された従来例の車両構体内側面図である。
【符号の説明】
【0043】
L:照明装置
L1:天井照明
1:面型放電管による薄型照明灯
2:下面カバー
2a:直接照明窓
2a−1,2a−2:帯状透明窓
2b:間接照明窓
2c:不透明部
3:ケーシング
4:拡散反射面
11:蛍光灯
21,22:帯状透明窓
31:ガラス基板
32:透明電極
45:蛍光体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に対向した開口部を有するケーシングと、
照明窓を有するとともに前記開口部を覆う下面カバーと、
前記ケーシング内に内蔵され、表裏の両面から照明される薄型照明灯と、
前記ケーシングの底面と前記薄型照明灯の裏面との間に設けられた拡散反射部材とを備えた照明装置。
【請求項2】
前記照明窓は、前記薄型照明灯の表面と対向して設置された直接照明窓と、
前記直接照明窓と隣接した少なくとも一つの間接照明窓とからなる請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記直接照明窓と前記間接照明窓との間に不透明部を備え、
該不透明部と前記薄型照明灯の端縁部とを対向配置することを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記間接照明窓が有色であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記拡散反射部材は、前記薄型照明灯の裏面に対し傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記拡散反射部材は、金属材料からなるケーシングの底面からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
前記薄型照明灯は、対向配置した一対の誘電体平板の周囲を封止して形成した放電空間に放電ガスを充填し、前記一対の誘電体平板のいずれか一方の面には一対の薄膜状の放電電極が備えられ、この電極に電圧を印加することによって、前記一対の誘電体平板の両面から発光する平面型放電管を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
荷棚下面に両面から発光する薄型照明灯を組み込んだ照明装置の下方の座席を個々に照明する照明装置により構成される鉄道車両の客室照明システムであって、
請求項1乃至請求項7のいずれかの照明装置を当該照明装置の照明窓側を下面にして荷棚下面に所定間隔で多数組み込んであり、
上記照明装置を駆動する駆動装置を備えている車両用客室照明システム。
【請求項9】
請求項8記載の鉄道車両の照明装置により構成された客室照明システムであって、
下面が照明窓であるケーシングの底面が傾斜面による拡散反射面であり、
上記ケーシングに両面から発光する薄型照明灯を組み込んで上記照明装置が構成されており、
上記ケーシングの下面カバーが上記薄型照明灯に対向する直接照明窓をその中央に有し、当該直接照明窓の外側に間接照明窓を有することを特徴とする鉄道車両の客室照明システム。
【請求項10】
請求項9の鉄道車両の客室照明システムであって、
上記ケーシングの下面カバーが上記薄型照明灯に対向する直接照明窓をその中央に有し、当該直接照明窓の外側に間接照明窓を有し、
上記直接照明窓と上記間接照明窓との間に不透明部があり、当該不透明部で薄型照明灯の端縁部を覆って遮蔽していることを特徴とする鉄道車両の客室照明システム。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−302162(P2007−302162A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134258(P2006−134258)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】