説明

照明装置

【課題】輸送手段の室内におけて、居住空間性を悪化させることなく、高効率に室内を照明することができる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置20は、複数の発光体21と、光線制御部25を有する導光体22とを備えている。発光体21からの光は、導光体22へ入光面28から入射し、反射面24側に配設された光線制御部25を経て、その発光面23から光を出射する。前記照明装置は、反射面の反射効率を高めるため、反射部材26を反射面側に備えていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送手段の室内において、薄型で省スペースに配置できる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内を照明する場合、光源として白熱電球を用い、これにハウジングを設けた照明装置が利用されてきた。しかしながら、このような照明装置では、白熱光源によって生じる熱のため、車室内空間の居住性が悪化するという課題があった。一方で、白熱光源からの熱を回避するためにハウジングの遮熱性を高める方法についても検討されてきたが、その場合、ハウジングの材質が制限されてコストが上昇するという課題が存在した。
【0003】
白熱光源を使用せずに車内照明を行うために、特許文献1(特開平6−24272号公報)には、後部座席前方にビーム光を照射するスポットライトを配設するとともに、車室天井にはこのビーム光を反射するための反射手段を配設した車両用室内照明装置が開示されている。この照明装置では、効率の高い照明が可能となり、小型かつ高照度を実現できる。
【0004】
また、特許文献2(特開2000−127847号公報)には、照明装置の薄型化を達成するために、断面半円曲面状の連続な溝構造を乱反射面として有する導光板と、この導光板の一側面に複数の発光ダイオードを配置させた車両用室内灯が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3(特開2008−174131号公報)には、複数個の発光素子を並列配置した光源と、この光源からの光を一側面から入射させ、正面方向へと出射させる導光板からなり、これらを車両の天井側および床側の双方に配設した車両用室内照明装置が開示されている。この発明によると、大型かつ薄型で、室内全体をむらなく照明することができる。
【0006】
さらにまた、特許文献4(特開2008−189134号公報)には、長尺状で、発光側の表面に透過散光処理がされた導光体と、前記導光体の両端部に対向して配設された発光体とを備える車両用照明装置が開示されている。この発明によると、導光体を効率的かつ均一に発光させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−24272号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−127847号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2008−174131号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2008−189134号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の発明では、座席側からビーム光を照射して、天井に設けられた反射手段により室内照明を行うため、照射範囲が狭くなるだけでなく、ビーム光の設置場所との関係で照射範囲が制限されてしまう。
【0009】
また、特許文献2の発明では、発光体が並ぶ方向に平行な向きに明暗の差が生じたり、輝線が発生してしまうため、照明装置そのものの発光品位について解決できない。さらに、光の向きを制御するために施されている溝構造が連続的であるために、モアレなどの光学性能の低下を引き起こしてしまう。
【0010】
さらに、特許文献3の発明では、天井側と床側への照明装置の複数配置が必須条件となるため、スペースやコストの点で問題となる。さらにまた、特許文献4の発明では、車室内空間確保のために前部座席の前方上部に配置したときに、シート上を効率よく照らすための光制御が困難となるだけでなく、効率を上げるために、光源をフロントガラス側やシートに対向する位置に配置すると、運転手が光源を直視した場合に目が眩むなどの不都合が発生してしまう。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記課題を解決するために、薄型で省スペース化が可能であるとともに、高効率に車室内の所定の位置を照明することができる照明装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、照明装置の意匠性を向上できるだけでなく、その照度を向上することができる照明装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ギラツキ感を低減するとともに、室内の所望の位置を適切に照明できる照明装置を提供することである。
本発明の別の目的は、複数の発光体間に生じる明暗ムラを解消し、高品位の発光をすることができる照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意研究を行った結果、発光体と導光体とを特定の位置に配設するとともに、導光体の反射面において特定の光線制御部を設けると、輸送手段の室内の天井に取り付けた場合であっても、室内の居住空間性を悪化させることなく、高効率に車室内を照明することができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、輸送手段の室内の天井面に配設される照明装置であって、
前記照明装置は、室内の所定の座席よりも前方に取り付けられるとともに、発光体と、この発光体から出射される光を一側面から入光させて、光出射側の主面から発光する導光体とを備え、
前記導光体は、その発光面と相対する反射面に、複数の点状の陥凹部からなる光線制御部を有し、前記陥凹部は、前記導光体の反射面に底面を有し、導光体の内部に向かって陥凹している。
前記陥凹部では、導光体の反射面と入光面の双方と直交する切断面において、陥凹部の前記入光面側の頂点と底面とを結ぶ直線と、前記導光体の入光面との間の角度が、1°〜85°であってもよい。この照明装置には、導光体の反射面と隣接して、反射部材が形成されていてもよい。
【0015】
また、前記光線制御部に形成されている陥凹部の形状は、導光体の反射面と入光面の双方と直交する切断面において、三角形、台形、および円弧状から選択された少なくとも一種であってもよい。また、光線制御部には、底面からの高さが異なる複数の陥凹部が含まれていてもよい。
【0016】
また、光線制御部に、複数の陥凹部のうち、導光体の反射面において、入光面と平行に配列された陥凹部が少なくとも含まれていてもよく、このような複数の陥凹部は、導光体の反射面にランダムに配列されていてもよい。
また、導光体は、その発光面側に、入光面側に向かって低くなる段差を有していてもよく、その入光面に光学パターンが形成されていてもよい。
【0017】
なお、本発明において、「複数の点状の陥凹部」とは、導光体の反射面に、複数の陥凹部が非連続に散在していることを意味しており、導光体幅の1/2以上に亘って連続した壁を有する「溝状」とは、明確に区別される。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、導光体に設けられた特定の光線制御部によって、モアレ等のマクロ的な光学性能の低下を抑制するとともに、導光体へ入光した光線を所定の方向に発光させることが可能となり、狭い室内環境でも、室内の居住性を悪化させることなく、効率よく照明することができる。
また、反射部材を設けると、さらなる照度の向上や発光面の均一化を実現することが可能であるだけでなく、点灯時および/または非点灯時の照明装置の外観を向上することができる。
【0019】
さらに、光線制御部を構成する陥凹部の形状を制御することにより、照明装置からの発光量やその分布密度を個別に制御できる。
さらにまた、光線制御部における陥凹部の配列を制御することにより、光線方向に輝線が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0020】
さらに、導光体の入光面に、光学パターンを形成すると、発光体によって生じる入光部の強い明暗ムラ、いわゆる目玉を容易に解消することができる。
さらにまた、導光体の発光面において、入光面側に向かって低くなる段差を設けると、発光体の光が直接視認されてしまう、いわゆる光漏れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解される。図面は必ずしも一定の縮尺で示されておらず、本発明の原理を示す上で誇張したものになっている。また、添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一部分を示す。
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の照明装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】第1の実施形態の照明装置の概略断面図である。
【図3】第1の実施形態で用いられている光線制御部を説明するための概略斜視図である。
【図4】第1の実施形態の光線制御部の概略断面図である。
【図5】第1の実施形態の光線制御部に設けられている陥凹部を説明するための概念図である。
【図6】第1の実施形態の照明装置を天井に配置した際の、光の照射方向を説明するための概念図である。
【図7】第1の実施形態における変形例である、光線制御部を構成する各陥凹部の高さの推移を説明するための概略図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の照明装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】第2の実施形態で用いられている光線制御部の概略断面図である。
【図10】第2の実施形態の光線制御部に設けられている陥凹部を説明するための概念図である。
【図11】第1および第2の実施形態における変形例として用いられる導光体の概略斜視図である。
【図12】第1および第2の実施形態における変形例として用いられる導光体の概略斜視図である。
【図13】実施例1で作製した照明装置を説明するための概略断面図である。
【図14】実施例1の照明装置の陥凹部を説明するための概略図である。
【図15】実施例1の照明装置の各陥凹部の半径の推移を説明するための概略図である。
【図16】実施例の照明装置の照度を測定する際の測定位置を説明するための概略正面図である。
【図17】実施例8〜16で作製した照明装置を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、本発明の照明装置の第1の実施形態の構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1のA−A線により切断した概略断面図である。また、図3は、第1の実施形態で用いられている光線制御部を説明するための概略斜視図であり、図4は、図3のB−B線により切断した概略断面図である。また、図5は、前記光線制御部に設けられている陥凹部を説明するための概念図である。
【0024】
第1の実施形態において、図1および図2に示すように、照明装置10は、発光体11と、この発光体11から出射される光を一側面(または入光面)18から入光させて、正面(または発光面)13方向へと発光させる導光体12とを備えている。この導光体12には、発光面13と相対する反射面14側に光線制御部15が形成されている。
【0025】
図3〜図5に示すように、光線制御部15は、複数の点状の陥凹部19,19,・・・19を有しており、各陥凹部19は、導光体12の反射面14と一致した底面Bと、高さhとを有する円錐形状である。導光体12の反射面14と入光面18の双方と直交する切断面において、陥凹部19は、その頂点19aと入光面18側の底面との交点19bとを結ぶ直線と、前記導光体の入光面18との間で、角度θを有している。
【0026】
図6に示すように、第1の実施形態の照明装置10では、例えば、車室の天井面1上において、所定の座席2よりも前方に取り付けられ、発光体11から出射した光は、導光体12の発光面13から、この発光体11よりも後方に存在する座席2側に向かって主に照射される。
【0027】
また、図7は、第1の実施形態における変形例として、光線制御部を構成する各陥凹部の高さが異なる例を説明するための概略図であり、この図では、導光体12の反射面14と入光面18の双方と直交する切断面における各陥凹部の高さhの推移を示す。
【0028】
図7に示すように、光線制御部に設けられた各陥凹部19の高さhは、まず、入光面18側において高さHを示し、その後入光面18から遠ざかるにつれて上昇し、一旦極大値Lmaxとなった後、極小値Lminを経由して再度上昇し、光線制御部の入光面と相対する面側でHを示している。なお、この変形例では、陥凹部の高さが推移する以外は、実質的に第1の実施形態と同一であり、図3に示すように、導光体12の反射面14において、光線制御部15の各陥凹部19は、所定の間隔で、この高さの推移にしたがって入光面18と平行に配列されている。
【0029】
このような光線制御部15を設けることにより、発光体11から導光体12へ入射した光は、光線制御部15の各陥凹部19によりその反射する方向が制御され、導光体12の発光面13から、所定の方向に対して高い照度を持つように出射することが可能となる。
【0030】
図8は、本発明の第2の実施形態を説明するための概略断面図であり、図9は、第2の実施形態で用いられている光線制御部の概略断面図であり、図10は、前記光線制御部に設けられている陥凹部を説明するための概念図である。
【0031】
第2の実施形態において、図8に示すように、照明装置20は、発光体21と、この発光体21から出射される光を一側面(または入光面)28から入光させて、正面(または発光面)23方向へと発光させる導光体22とを備えている。導光体22において、発光面23と相対する反射面24側には、光線制御部25が形成されている。さらに、反射面24の反射効率を高めるために、反射面24と隣接して反射材26が設けられている。
【0032】
図9および図10に示すように、光線制御部25は、複数の陥凹部29,29,・・・29を有しており、陥凹部29は、導光体22の反射面24と一致した底面Bと、高さhとを有する四角錘台形状である。なお、底面Bは、縦(入光面に平行な方向)の長さlと横(入光面に垂直な方向)の長さwとで構成されている。導光体22の反射面24と入光面28の双方と直交する切断面において、陥凹部29は、その入光面28側の頂点29aと底面29bとを結ぶ直線と、前記導光体の入光面28との間で、角度θを有している。
【0033】
第2の実施形態の照明装置20においても、導光体22の入光面28と陥凹部29とが所定の関係を有するように配列されているので、図6に示す第1の実施形態の照明装置10と同様に、車室の天井面1上において所定の座席2よりも前方に取り付けられた場合、発光体21から出射した光は、導光体22の発光面23から、この発光体21よりも後方に存在する座席2側に向かって主に照射される。
【0034】
さらにまた、図11は、第1および第2の実施形態における変形例として用いられる導光体32の概略斜視図であり、図12は、導光体32の反射面34と入光面38の双方と直交する切断面を示す概略断面図である。図11および図12に示すように、導光体32は、入光面側に向かって段差dだけ低くなる構造を有している。このような段差dを有すると、照明装置と自動車の天井との埋め込み性が高くなるだけでなく、発光体からの光が座席側へ直接入射することを有効に防止することができる。
【0035】
以下、各構成要素の詳細について、詳述する。
(発光体)
照明装置に配設される発光体としては、例えば各種LED(白色LEDなど)などが例示できる。発光体の数は、照明装置のサイズおよび必要とされる輝度などに応じて適宜設定することができ、例えば、2〜15個程度、好ましくは3〜10個程度であってもよい。
【0036】
(導光体)
導光体は、透明材料から形成され、有機材料(例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂など)および無機材料(例えば、ガラスなど)のいずれでもよい。これらのうち、(メタ)アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、ガラス等が好ましい。
【0037】
また、良好に室内を照明する観点から、導光体の発光面は、9cm以上(例えば、12〜400cm程度)、好ましくは15cm以上(例えば、18〜250cm程度)などであってもよい。また、本発明では、光線制御部が導光体の反射面側に形成されているため、導光体の発光面には、適宜、意匠性の高い造形(例えば、各種曲面加工、彫刻加工など)を行い、照明装置の外観を向上することが可能となる。
【0038】
また、導光体は、発光体からの光を目的の照射方向へ出射できるかぎり、特に形状は制限されないが、例えば、平板形状や楔形状などであってもよい。例えば、楔形状の導光板では、通常、その底面が、光入射面から徐々に正面方向に向かって厚みが薄くなる傾斜面となる場合が多い。
【0039】
また、導光体の発光面を室内の天井へ埋め込める観点から、例えば、導光体の発光面は、入光面側に向かって低くなる段差を有していてもよく、図12において、段差dは、例えば、0.1〜5mm程度、好ましくは0.3〜3mm程度であってもよい。
【0040】
また、導光体の入光面には、必要に応じて、入射する光の分布を均一にするための光学パターンを形成してもよい。このような光学パターンとしては、例えば、微細な凹凸形状(例えば、ドット形状、溝形状など)が挙げられる。
【0041】
(光線制御部)
導光体は、その発光面と相対する反射面に、複数の点状の陥凹部からなる光線制御部を有している。
各陥凹部は、その形状に応じて、反射面において規則的に配設されても、ランダムに配設されてもよいが、規則的な配列によってモアレなどが生じる場合、ランダムに配設されるのが好ましい。
【0042】
これらの陥凹部は、前記導光体の反射面に底面を有するとともに、導光体の反射面と入光面の双方と直交する切断面において、各陥凹部の前記入光面側の頂点と底面とを結ぶ直線と、前記導光体の入光面との角度が、1°〜85°であるのが好ましい。前記角度は、好ましくは20°〜80°程度、より好ましくは25°〜75°程度であってもよい。
これらの陥凹部は、前記角度を維持する限り、互いに必ずしも同一形状である必要はないが、複数の陥凹部の前記角度は一致しているのが好ましく、複数の陥凹部のすべてが、互いに相似形状であるのがより好ましい。
【0043】
例えば、陥凹部は、導光体の反射面と入光面の双方と直交する切断面が、三角形、台形、円弧状などを有しているのが好ましく、このような陥凹部は、円錐形状、円錐台形状、だ円錐形状、だ円錐台形状、多角錐形状(例えば、三角錐形状、四角錘形状、五角錐形状、六角錘形状など)、多角錐台形状(例えば、三角錐台形状、四角錘台形状、五角錐台形状、六角錘台形状など)、欠球形状、釣鐘状、頭切釣鐘状などであってもよい。
また、各陥凹部の底面のアスペクト比は、陥凹部の底面積に応じて適宜設定することができ、例えば、(長辺)/(短辺)=5/1〜1/1程度であってもよく、好ましくは4/1〜1/1程度、より好ましくは3/1〜1/1程度であってもよい。
【0044】
また、陥凹部の高さhは、入光面からの距離に従って、変化してもよく、例えば、最も入光面側の陥凹部の高さ(H)と、最も入光面から離れた側の陥凹部の高さ(H)との比(H)/(H)は、2〜7倍程度、好ましくは2.5〜5倍程度であってもよい。
【0045】
また、陥凹部の高さhは、必ずしも入光面から連続して高くなる必要はなく、所定の方向に対する照度を高める観点から、図7に示すように、各陥凹部の高さは、入光面18からX方向へ向かって遠ざかるにつれて上昇し、一旦極大値Lmaxとなった後、極小値Lminを経由して再度上昇してHとなってもよい。
このような場合、Lmaxに対する、LmaxとLminとの差(Lmax−Lmin)/Lmaxは、例えば、0.1〜0.5程度、好ましくは0.15〜0.3程度であってもよい。
【0046】
本発明では、導光体の反射面側にこのような光線制御部を配設することにより、薄型で省スペースであっても、目的とするエリアには確実に光を照射することが可能となる。
【0047】
(反射部材)
導光体の反射面の反射効率を高める観点から、必要に応じて、導光体の反射面と隣接して、反射部材を形成してもよい。反射部材は、照明装置に求められる性質に応じて、正反射する材質(例えば、ステンレス、アルミニウム、銅、Ag、各種合金などの金属性物質)から形成してもよく、拡散反射する材質(例えば、白色樹脂、セラミックなど)から形成してもよい。このような反射部材を設けると、照明装置の照度を高めることができるだけでなく、点灯時や非点灯時の美観も向上できる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
図13に示すように、照明装置40を作製した。照明装置40は、基板4Aに取り付けられた発光体41と、この発光体41から出射される光を一側面(または入光面)48から入光させて、正面(または発光面)43方向へと発光させる導光体42とを備えている。導光体42において、発光面43と相対する反射面44側には、光線制御部45が形成されている。車室内に取り付けるために、白色のポリカーボネート製のケースCの中に前記構成物を入れ、全体を保持した。次いで、表面の意匠性を高めるために、発光面43に、外側に凸となる半径2000mm程度の曲面加工を施した。
【0050】
なお、発光体41としては、日亜化学工業社製のNSSW064Eを7個使用し、基板1Aは片面のガラスエポキシ基板に銅箔にてLEDを同時に点灯させるための配線パターンを施したものを使用した。また、導光体42はPMMAで形成し、厚みは約4mm、入光面48に対し平行な方向の長さが180mmであり、入光面48に対し垂直な方向の長さが90mmである。
【0051】
また、導光体42の光線制御部45には、複数の円錐形状の陥凹部が、それぞれ約2.5mm間隔で配列されており、各陥凹部は、図14で示すように、開き角θとして90°を有している。これはすなわち、導光体42の反射面44と入光面48の双方と直交する切断面において、すなわち陥凹部の前記入光面側の頂点と底面とを結ぶ直線と、前記導光体の入光面との間の角度θが45°となることを意味している。
【0052】
そして、これらの陥凹部の底面Bの半径rは、入光面付近を起点として、図15に示すように、0.3mmから1.0mmまで変化している。
【0053】
照明装置40の照明性能を確認するため、図16に示すように、発光面を下向きにして照明装置を配置し、照明装置の、所定の角度θaにおける発光面中央部からの距離780mm地点での照度を、照度計51(トプコン社製、「Im−3」)を用いて測定した。なお、照度を測定する際の角度は、導光体42の光源側の下面の一端を0°とし、導光体42の発光面から下方の鉛直方向を90°とし、導光体の下面の光源と相反する一端を180°として設定した。その照度を表1に示す。また、作製された照明装置には、モアレは発生せず、発光面43の見栄えも良好であるとともに、光線方向に輝線は発生していなかった。
【0054】
(実施例2〜7)
陥凹部の入光面側の頂点と底面とを結ぶ直線と、前記導光体の入光面との間の角度θを、表1に示すように変化させる以外は、実施例1と同様にして照明装置を作製した。その照度を表1に示す。また、作製された照明装置では、いずれも、モアレは発生せず、発光部の見栄えも良好であるとともに、光線方向に輝線は発生していなかった。
【0055】
【表1】

【0056】
(比較例1)
実施例1の導光体42の光線制御部45において、入光面に沿って平行に配列された複数の連続した溝(ピッチ0.5mm、高さ0.43mm、底面を底辺として窪む断面三角形状)を設ける以外、実施例1と同様にして照明装置を作製した。作製された照明装置の照度は17.6lxと高い照度であったが、その照射範囲は狭く、また、照射面にはモアレやギラツキが発生していた。さらに、発光部の見栄えも劣っており、光線方向に輝線が発生していた。
【0057】
(実施例8〜10)
実施例1〜3の照明装置に対して、それぞれ図17で示されるように、導光板42の反射面44と隣接して0.1mm厚の拡散シートを反射板46として配置する以外は、実施例1〜3と同様にして照明装置を製造した。
【0058】
各LEDに定格である20mAの定電流を流して測定したところ、実施例1〜3に対応する各測定地点の照度は、実施例8の照明装置では、9.4lxと、実施例1の1.22倍の照度向上が確認された。また、実施例9の照明装置では10.5lxと実施例2の1.22倍、実施例10の照明装置では9.4lxと実施例3の1.22倍とさらなる照度向上が確認された。
【0059】
実施例8〜10の照明装置では、実施例1の効果に加え、非点灯時には拡散シートにより、裏面がおおよそにおいて他の意匠と同じ色味となり、良好な視認性を保ち、かつ、照度も向上させることが可能となった。
【0060】
(実施例11〜13)
実施例1〜3の照明装置に対して、それぞれ図17で示されるように、導光板42の反射面44と隣接して0.18mm厚の白色PETフィルムを反射板46として配置する以外は、実施例1〜3と同様にして照明装置を製造した。
【0061】
各LEDに定格である20mAの定電流を流して測定したところ、実施例1〜3に対応する各測定地点の照度は、実施例11の照明装置では、11.4lxと、実施例1の
1.48倍の照度向上が確認された。また、実施例12の照明装置では12.7lxと実施例2の1.48倍、実施例13の照明装置では11.4lxと実施例3の1.48倍とさらなる照度向上が確認された。
【0062】
実施例11〜13の照明装置では、実施例1の効果に加え、反射目的のシートを反射板として採用することにより、大幅な照度向上が可能であることが確認された。
【0063】
(実施例14〜16)
実施例1〜3の照明装置に対して、それぞれ図17で示されるように、導光板42の反射面44と隣接して0.3mm厚のアルミ板を反射板46として配置する以外は、実施例1〜3と同様にして照明装置を製造した。
【0064】
各LEDに定格である20mAの定電流を流して測定したところ、実施例1〜3に対応する各測定地点の照度は、実施例14の照明装置では、12.1lxと、実施例1の
1.57倍の照度向上が確認された。また、実施例15の照明装置では13.5lxと実施例2の1.57倍、実施例16の照明装置では12.1lxと実施例3の1.57倍とさらなる照度向上が確認された。
【0065】
実施例14〜16の照明装置では、実施例1の効果に加え、非点灯時の見栄えも向上するだけでなく、大幅な照度向上が可能であることが確認された。
【0066】
(実施例17)
光線制御部として、下記に示す所定の四角錘台形状の複数の陥凹部が、約2.5mm間隔で配列されたものを用いる以外、実施例14と同様にして照明装置を作製した。
【0067】
この照明装置の光線制御部の陥凹部は、図10に示すような四角錘台形状の陥凹部であり、導光体22の反射面24と入光面28の双方と直交する断面において、陥凹部の入光面側の頂点29aと底面29bとを結ぶ直線と、導光体の入光面との間の角度θは、45°である。
【0068】
そして、これらの陥凹部の底面Bの入光面に平行な方向の長さw、垂直な方向の長さl、および発光面方向への高さhは、それぞれ入光面から遠ざかるにつれて、直線的に、w=1mm〜2mm、l=0.5〜1.5mm、h=0.1〜0.6mmの範囲で変化している。
【0069】
実施例1と同様に、20mAの電流を流し、測定したところ、7.6lxと、実施例1の同程度の照度が得られた。本実施例により、発明の効果を得るために施すべき機械的光学構造は、円錐だけに限らないことが確認された。
【0070】
(実施例18)
実施例1の照明装置の導光体において、入光面48にドット形状を施す以外は、実施例1と同様にして照明装置を作製した。
このドット形状は、半径0.1mm、深さ0.1mmの半球状の窪みであり、それぞれのドット間隔を0.25mmとして連続的に入光面48に施した。
【0071】
実施例1と同様に、20mAの電流を流し、照度を測定したところ、実施例1と同程度の照度が得られただけでなく、複数の発光体41の間に生じる入光部分の明暗ムラが低減された。
【0072】
(実施例19)
実施例1の照明装置の導光体を、底面44全体を入光面48から遠ざかるにつれて傾斜させた楔状とする以外は、実施例1と同様にして照明装置を作製した。
前記導光体は、その入光面48側の厚みが4mmであり、入光面48と対向する面側の厚みが2.5mmである。また、図14で示すように、各陥凹部は、開き角θとして90°を有しており、導光体42の反射面44と入光面48の双方と直交する切断面において、すなわち陥凹部の前記入光面側の頂点と底面とを結ぶ直線と、前記導光体の入光面との間の角度θは、44°である。実施例1と同様に、20mAの電流を流し、照度を測定したところ、実施例1と同程度の照度が得られた。
【0073】
(実施例20)
円錐の開き角θを、75°とする以外は、実施例19と同様にして照明装置を作製した。なお、これらの開きθは、上記角度θとしては、36.5°に対応している。
【0074】
(実施例21)
円錐の開き角θを、65°とする以外は、実施例19と同様にして照明装置を作製した。なお、これらの開きθは、上記角度θとしては、31.5°に対応している。
【0075】
実施例19〜21においても、実施例1と同程度の照度が得られ、底面44が必ずしも入光面48と直交した平面でなくても同様な効果が得られることが確認できた。
【0076】
(実施例22)
実施例1の照明装置の導光板において、図12に示すような段差をもうける以外は、実施例1と同様にして照明装置を作製した。
すなわち、この導光体の発光面には、入光面38に接する部分から有効発光エリアまで、有効発光エリアの面より低くなるように、1mmの段差が幅4mmで設けられている。
【0077】
本実施例においても、実施例1と同程度の照度が得られ、かつ、入光面側とは反対方向(すなわち、図12のD方向)から照明装置を直視するような場合でも、発光体の光線が直接目に飛び込み、それにより目がくらむというような現象が発生していないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の照明装置は、さまざまな輸送手段(自動車、バス、トラックなどの道路用車両;鉄道車両;飛行機、ヘリコプターなどの航空機など)の天井において、座席との関係で適当な箇所に配設することができ、例えば、マップライト、ルームライトなどとして有用である。
【0079】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
10,20,30,40…照明装置
11,21,31,41…発光体
12,22,32,42…導光体
13,23,33,43…導光体の発光面
14,24,34,44…導光体の反射面
15,25,35,45…導光体の光線制御部
26,46…反射部材
19,29…陥凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送手段の室内の天井面に配設される照明装置であって、
前記照明装置は、室内の所定の座席よりも前方に取り付けられるとともに、発光体と、この発光体から出射される光を一側面から入光させて、光出射側の主面から発光する導光体とを備え、
前記導光体は、その発光面と相対する反射面に、複数の点状の陥凹部からなる光線制御部を有し、前記陥凹部は、前記導光体の反射面に底面を有し、導光体の内部に向かって陥凹している照明装置。
【請求項2】
請求項1において、各陥凹部では、導光体の反射面と入光面の双方と直交する切断面において、陥凹部の前記入光面側の頂点と底面とを結ぶ直線と、前記導光体の入光面との間の角度が、1°〜85°である照明装置。
【請求項3】
請求項1または2において、導光体の反射面と隣接して、反射部材が形成されている照明装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、陥凹部の形状が、導光体の反射面と入光面の双方と直交する切断面において、三角形、台形、および円弧状から選択された少なくとも一種である照明装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、光線制御部に、底面からの高さが異なる陥凹部が含まれている照明装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、光線制御部に、複数の陥凹部のうち、導光体の反射面において、入光面と平行に配列された陥凹部が少なくとも含まれている照明装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、複数の陥凹部が、導光体の反射面にランダムに配列されている照明装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、導光体は、その発光面側に、入光面側に向かって低くなる段差を有している照明装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、導光体の入光面に光学パターンが形成されている照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−269759(P2010−269759A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125304(P2009−125304)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000251060)林テレンプ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】