説明

照明装置

【課題】照明装置において、EL素子の発光による空間演出を行なうことができ、且つ利用者が自然光による恩恵を受けられるようにする。
【解決手段】照明装置1は、透明なEL素子2を建造物Sの採光部Rに配置した発光体3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。この構成によれば、制御部4がEL素子2を点灯制御することにより、空間演出を行なうことができ、また、透明なEL素子2を用いているので、EL素子2を消灯させることにより、利用者が自然光による恩恵を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL素子を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、発光層を陽極及び陰極で挟持させた発光部が透明基板上に形成されたものであり、電極間に電圧印加されたとき、発光層にキャリアとして注入された電子及びホールの再結合により生成された励起子によって発光する。
【0003】
EL素子は、発光層の蛍光物質に有機物を用いた有機EL素子と、無機物を用いた無機EL素子に大別される。特に、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が可能であり、蛍光物質の種類によって様々な発光色が得られ、また、平面発光体としての製造が容易であるという特性がある。
【0004】
この特性を活かして、有機EL素子から成るディスプレイ装置を、壁面や窓等に配置して、ディスプレイ装置に画像を再生させることにより、内装デザインを簡易に変更できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/075032パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなEL素子から成るディスプレイ装置の使用は、壁面や窓に映像表示をすることによって、擬似的な仮想空間を演出するものであって、壁面等の全面に大型テレビ等の平面ディスプレイを設置することと実質的に変わらない。従って、ディスプレイ装置に対面する人は、EL素子の発光による人工的な光を用いた空間演出といった種々のサービス等を享受できるが、その一方で、自然光による恩恵を受けられない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、EL素子の発光による空間演出を行なうことができ、且つ利用者が自然光による恩恵を受けられる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、照明装置において、透明なEL素子を建造物の採光部に配置した発光体と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記照明装置において、前記EL素子を複数個、前記採光部に格子状に配置したものが好ましい。
【0010】
また、上記照明装置において、前記EL素子は、前記採光部の内面に配設されていることが好ましい。
【0011】
また、上記照明装置において、前記制御部は、前記EL素子を所定のパターンに従って点灯制御することによって、前記採光部に映像又は広告を表示させるものであってもよい。
【0012】
また、上記照明装置において、前記制御部は、前記EL素子を所定のパターンに従って点灯制御することによって、前記採光部に避難誘導又は警告を表示させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の照明装置によれば、制御部がEL素子を点灯制御することにより、空間演出を行なうことができ、また、透明なEL素子を用いているので、EL素子を消灯させることにより、利用者が自然光による恩恵を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明装置を用いたアーケードの概略構成を示す図。
【図2】同照明装置を用いた空間におけるシステム構成を示すブロック図。
【図3】同照明装置の一部分解斜視図。
【図4】同照明装置に用いられるEL素子の概略構成を示す側断面図。
【図5】同照明装置をアーケード天井の採光部に用いた空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図6】同空間において、EL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図7】同空間において、EL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図8】同空間において、EL素子を所定パターンで点灯させて避難誘導を表示している状態を示す図。
【図9】同空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図10】同照明装置の変形例を示す斜視図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る照明装置を天井に用いた室内空間において、EL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図12】同室内空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図13】同室内空間において、曇り空又は雨天時等にEL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図14】同室内空間において、夜間にEL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図15】同室内空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る照明装置を車のサンルーフに用いた車内空間において、夜間にEL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図17】同車内空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図18】同車内空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る照明装置を高層ビルの窓に用いたときの高層ビルBの外観において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図20】同外観において、夜間にEL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図21】同外観において、夜間にEL素子を個別に点灯制御して広告を表示させている状態を示す図。
【図22】同車内空間において、夜間にEL素子を個別に点灯制御して映像を表示させている状態を示す図。
【図23】同車内空間において、夜間にEL素子を個別に点灯制御して映像を表示させている状態を示す図。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る照明装置を農業用ハウスの天井に用いたときのハウス内において、夜間や雨天時にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図25】同ハウス内において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る照明装置について、図1乃至図10を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、図1及び図2に示すように、アーケード天井Sの採光部Rに用いられるものである。具体的には、照明装置1は、透明なEL素子2をアーケード天井Sの採光部R(建造物の採光部)に配置した発光体3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備えている。アーケード天井Sは、連続的に配置されたアーチ状のフレームFが複数の支柱Tによって支持された構造となっている。フレームF及び支柱Tには、給電線及び信号線の双方を含む配線5(図1では、破線で示す)が設けられており、この配線5が各発光体3の一端部に設けられた制御部4の受信部41と電気的に接続されている。また、配線5は、制御装置6に接続される。制御装置6は、給電部ACに接続され、所定電力を照明装置1の制御部4に供給すると共に、それらの点灯制御信号を出力する。なお、図1では、制御装置6を、屋外設置型の集中管理システムとして示している。
【0016】
制御部4は、上述した受信部41に加えて、駆動回路42と、記憶部43と、演算部44とを備える。駆動回路42は、演算部44から出力される制御信号に従ってオンオフ動作をする少なくとも1つ以上のスイッチ素子等から成り、各EL素子2を点灯駆動させる。記憶部43は、EEPROM等の汎用のメモリ及びマイコン等から成り、各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、制御装置6から受信した制御信号に従って所定アドレスのEL素子2の点灯パターン等を記憶する。また、演算部44は、汎用のマイコン等から成り、駆動回路42を制御して所定アドレスのEL素子2を記憶部43に記憶された点灯パターンに基づいて点灯させるための出力値を決定し、それを駆動回路42に実行させる。
【0017】
制御装置6は、操作部61と、送信部62と、記憶部63と、演算部64とを備える。操作部61は、ユーザの操作によるEL素子2の点灯制御内容を入力するものである。この操作部61には、EL素子2の点灯状態を表示する表示部等が設けられてもよい。送信部62は、演算部64の命令に従って所定の制御信号を制御部4へ送信する。記憶部63は、照明装置1が複数である場合、照明装置1毎の各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、夫々のEL素子2の点灯パターン等を記憶する。演算部64は、記憶部63に記憶された点灯パターンに基づいて所定のEL素子2を点灯させる制御信号を送信部62に出力させる。なお、上述した制御部4の記憶部43及び演算部44は、制御装置6の記憶部63及び演算部64に共用化されていてもよい。なお、制御装置6には、インターネットに接続されたパソコンや携帯電話といった情報処理端末や、アーケード内外に設置された照度センサ(不図示)等と接続可能な情報出力手段が設けられてもよい。
【0018】
照明装置1は、図3に示す通り、複数個のEL素子2が格子状に配置された発光体3が、対向する2枚の透光板10,11に挟持された構成となっている。なお、図例では、一方の透光板10の一部を切り欠いて表現している。また、各EL素子2は、個別に点灯制御されるように、ITO(酸化インジウムスズ:インジウムチンオキサイド)等の透明な配線12によって制御部4の駆動回路42(図2参照)に接続されている。各EL素子2間の間隔は、絶縁性を確保できる範囲において、なるべく狭く形成されることが望ましい。なお、この間隔に、例えば、光拡散材を含有した絶縁性樹脂膜が設けられてもよい。
【0019】
EL素子2は、無機EL素子であってもよいが、素子の平面化に適した有機EL素子が好ましい。また、その形状は、5〜600mm角、好ましくは50〜100mmの略正方形形状の平面発光体である。一つのEL素子2が、単体の発光パネルを構成するものであってもよいし、例えば、10mm角のEL素子(発光セル)を格子状に100個設けることによって一つの発光パネルを構成するものであってもよい。後者の場合、セル単位で点灯制御されるように透明な配線のパターンニングが施されることが望ましい。また、その場合の駆動方式は、アクティブ型、パッシブ型のいずれであってもよい。
【0020】
また、EL素子2は、図4に示すように、透光性を有する基板22上に、発光部23を形成し、その外側を封止材24で被覆したものである。なお、ここでは、EL素子2が単体の発光パネルとして構成されている例を示すが、上述した複数のEL素子を組み合わせた発光パネルにおいても、発光部のサイズや配線のパターンニング等の相違点を除き、基本的な構成は同じである。発光部23は、透明導電膜から成る陽極23a、発光機能を有する発光層23b、透光性を有する陰極23cを、順に基板22上に積層形成したものである。封止材24は、透明な材料から構成されており、各電極の一部が露出するように被覆され、これら電極の露出部は、直接又はリード線等を介して電極端子(不図示)に電気的に接続される。
【0021】
基板22は、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等の透光性ガラスや、透光性樹脂材料等から成り、矩形板状に形成される。なお、照明装置1を構成する透光板11(図3参照)上に発光部23等を形成してもよく、この場合、透光板11が実質的な基板22ということになる。
【0022】
陽極23aは、発光層23bにホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料が用いられ、好ましくは、仕事関数が4eV以上のものが用いられる。特に、ITO、SnO(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料が好ましい。陽極23aは、これらの電極材料を、基板22の表面に、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜及びパターニングすることによって形成される。
【0023】
発光層23bは、所望の白色光を発光させ得る有機蛍光材料が用いられ、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物から成る基を分子構造の一部に有する化合物、高分子材料、各種蛍光色素の混合材料等が用いられる。なお、上述したような複数のEL素子によって発光パネルが構成される場合、各EL素子がRGBの異なる発光色となるように、適宜に蛍光体が選択されることが望ましい。
【0024】
発光層23bは、陽極23aの表面に上述した化合物を、例えば、真空蒸着法により成膜及びパターニングすることによって形成される。なお、発光層23bは、複数の異なる材料が積層されたものであってもよく、これら複数層の間に電位を調整するためのバッファ層を介在させてもよい。
【0025】
陰極23cは、発光層23bに電子を注入するための電極であり、陽極23aと同様に、ITO、SnO、ZnO等の透光性の導電材料によって形成される。また、陰極23cも陽極23aと同様の方法により形成される。なお、陽極23a及び発光層23bの間には、陽極23aから発光層23bへのホール注入効果を促進するホール注入・輸送層(不図示)が設けられてもよい。また、発光層23b及び陰極23cの間には、好ましくは、陰極23cから発光層23bへの電子注入効果を促進する電子注入・輸送層(図示せず)が設けられる。
【0026】
このように構成されたEL素子2においては、電極端子を介して所定の電力が供給されることにより、発光層23bが発光する。発光した光は、陽極23a及び陰極23bを透過してEL素子2外へ取り出され、発光体3の両面から出射する。なお、EL素子2の発光面には、基板22を傷や汚れ等から保護するため、アクリル樹脂等から成る保護層や、基板22からの光取り出し効率を高めるための拡散層等が設けられてもよい(不図示)。
【0027】
ここで、照明装置1がアーケード天井Sの採光部Rに用いられたときの作動例を説明する。例えば、昼間において、アーケード天井Sの外側が十分に明るいとき、図5に示すように、全ての照明装置1におけるEL素子2を消灯させる。このとき、EL素子2は透明であるため、照明装置1は、アーケード外の光をアーケード内に取り込むための採光部として機能し、歩行者は自然光を浴びることができる。また、照明装置1は、自然光の入射を遮ぎらないので、アーケード内に照明装置1の陰を生じさせることがなく、アーケード内を通行する歩行者等に対して、全く存在感を与えない。そのため、アーケード内を開放感あふれた空間とすることができる。
【0028】
続いて、夜間等、アーケード天井Sの外側が暗くなると、制御装置6(図1及び図2参照)からの制御信号を受けて、各照明装置1の制御部4は、図6に示すように、格子状に配置された複数のEL素子2の全てを点灯させる。つまり、照明装置1を、文字通り照明装置として機能させ、アーケード内を明るくする。このとき、アーケード内を通行する歩行者等は、アーケード天井Sの採光部Rから光が差し込んでいるかのように見える。そのため、アーケード内における照明装置の存在感が無く、広々とした空間を演出することができる。
【0029】
また、昼間であっても、曇り空や雨天時においては、図7に示すように、アーケード天井Sの採光部Rにおいて、点灯していない箇所と点灯している箇所とが、市松模様となるように、各EL素子2を点灯させる。すなわち、発光してない箇所においては、透明なEL素子2は、アーケード外の自然光をアーケード内に入射させ、発光しているEL素子2は、アーケード内を補光する。つまり、本実施形態の照明装置1は、この照明装置1が設けられたアーケードの日照状態に応じて、制御部4が、適宜に格子状に配置された透明なEL素子2を個別に点灯又は消灯させることにより、アーケード外から光を採り入れつつアーケード内へ光を補うことができる。こうすることで、自然との調和が取れた、歩行者等に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができると共に、アーケード内の明るさを確保しながらも、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0030】
また、制御部4は、EL素子2を所定のパターンに従って点灯制御することによって、採光部Rに映像又は広告を表示させたり、避難誘導又は警告を表示させることができる。図8には、それらの一例として、アーケード天井Sの採光部Rに、歩行者等を出口へ誘導する避難誘導を表示させた例を示す。
【0031】
従来から、アーケード天井に多数の電飾を配置して、アーケード天井全体をスクリーンのようにして、様々な映像を表示させる技術があり、例えば、ラスベガスのフリーモントストリートのアーケードショーがよく知られている。しかし、この種のアーケードでは、電飾にLEDを用いているため、アーケード外の光を採り入れることができない。これに対して、本実施形態の照明装置1によれば、EL素子2を点灯又は消灯させることにより、映像を表示させることもでき、かつ自然光を採り入れることもできる。
【0032】
また、アーケード内を通行する歩行者等と、アーケード天井Sとは、10数メートル程度の距離がある。そのため、一つのEL素子2がある程度大きな平面発光体として構成されていても、複数のEL素子2を格子状に配置した状態で、それらを所定パターンで個別に点灯制御すれば、遠めで見る歩行者等に対しては、それをクリアな映像として見せることができる。なお、図9に示すように、夜間に全消灯させれば、歩行者等はアーケード内に居ながら夜空を眺めることができる。
【0033】
また、図10に示すように、EL素子パネル2の基板に柔軟性を有する樹脂シート25を用い、この樹脂シート25上に、所定寸法の発光部23及び封止材24(図4参照)を、複数個設けて、いわゆるフレキシブルEL素子シート26を作成する。このフレキシブルEL素子シート26を透光板21の内面に貼着させて、これを照明装置1としてもよい。例えば、既存のアーケード天井Sの採光部Rを構成するガラス等の内側に、フレキシブルEL素子シート26を貼着させれば、この採光部Rを、本実施形態の照明装置1と同様の機能を持たせることができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明装置について、図11乃至図12参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、居住空間の天井Cに設けられた開口部に取り付けられるものである。ここでは、一つの照明装置1が開口部に取り付けられた例を示すが、照明装置1の数は特に限定されない。また、照明装置1自体の基本的な構成は、上記第1の実施形態と同様である。本実施形態によれば、図11に示すように、EL素子2を全点灯させれば、照明装置1は照明器具として機能し、室内を明るくすることができる。しかも、通常の照明器具では、器具本体等が室内で大きな存在感を示すが、本実施形態の照明装置1は、一見したところ通常の天窓であり、照明器具としての存在感がない。そのため、室内を広々とした開放感ある空間とすることができる。また、昼間は、図12に示すように、EL素子2を全消灯せれば、照明装置1は、いわゆる天窓として機能し、居住者は解放的な大空を眺めることができ、また、自然光によって室内を明るくすることができる。更に、曇り空や雨天時には、図13に示すように、部分的にEL素子2を点灯させれば、室内の補光をすることができる。また、夜間に、図14に示すように、照明装置1の周囲のみを点灯させることにより、ムードのある空間演出も可能となる。なお、図15に示すように、夜間に全消灯させれば、居住者が室内に居ながら夜空を眺めることができるようになる。
【0035】
すなわち、本実施形態の照明装置1を居住空間の天井Cに設けられた開口部に取り付けると共に、日照量や天候、及び居住者のライフスタイルに応じた点灯パターンを用いることで、居住者に寛ぎを感じさせる空間演出をすることができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態に係る照明装置について、図16乃至図18を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、自動車のサンルーフUとして用いられるものである。この照明装置1は、自動車の停車時又は駐車時に、図16に示すように、EL素子2を点灯させる。近年では、自動車の車内が個室空間として認識されるようになってきており、特に、電気自動車ではその傾向が顕著である。本実施形態においては、サンルーフを点灯させることにより、ドライバーが、例えば、停車時に読書を楽しんだりすることができ、車内を居心地良い空間とすることができる。また、図示を省略しているが、本実施形態においても、照明装置1の一部のみを個別に点灯させて、ドライバーの嗜好に従って、EL素子2が適宜に点灯制御される。なお、昼間や走行時は、図17、図18に示すように、EL素子2を消灯させておけば、照明装置1は、通常のサンルーフとして機能する。
【0037】
なお、ここでは、照明装置1をサンルーフUとして用いた例のみを示すが、例えば、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスにも本実施形態の照明装置1を適用することができ、全ての面を点灯させれば、車外から車内を見ることができなくなり、プライベートな空間をつくることができる。
【0038】
次に、本発明の第4の実施形態に係る照明装置について、図19乃至図23を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、高層ビルBの窓の夫々に配置されたものである。例えば、昼間、屋外が十分に明るいとき、図19に示すように、全ての照明装置1におけるEL素子2を消灯させる。このとき、EL素子2は透明であるため、照明装置1は屋外の光を屋内に取り込む、通常の窓として機能する。照明装置1は、自然光の入射を遮ぎらないので、屋内に照明装置1の陰を生じさせることがなく、全く存在感を与えない。そのため、ビルB内の人は、自然光を浴びることができる。また、夜間等、屋外が暗くなると、制御装置6(図1及び図2参照)からの制御信号を受けて、各照明装置1の制御部4は、図20に示すように、EL素子2を点灯させる。このとき、照明装置1は透明なEL素子2を用いているので、実際には、照明装置1の両面から光が照射される。すなわち、照明装置1を点灯させれば、高層ビルB外だけでなく、高層ビルB屋内にも光が照射され、室内を明るくすることができる。
【0039】
また、夜間に、複数の照明装置1に含まれる各EL素子2を所定のパターンで個別に点灯制御することにより、図21に示すように、高層ビルB外に居る人に対して、広告や映像を表示することができる。上述したように、照明装置1の両面から光が照射される。上記第1の実施形態においては、アーケード天井Sの採光部Rに照明装置1を用いてアーケード内に居る人に対して映像表示を行っている。一方、本実施形態においては、高層ビルB外に居る人に対して、広告や映像を表示することを実現したものである。その結果、高層ビルBの外面を用いて様々な映像表現をすることができる。例えば、図22に示すように、現実に存在する高層ビルBとは異なる形状のビルが存在するかのように見せることができる。また、図23に示すように、高層ビルBが、まるで踊っているかのように見せることができる。
【0040】
次に、本発明の第5の実施形態に係る照明装置について、図24及び図25を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、植物を育成するための農業用ハウスHの透明屋根に配置されたものである。照明装置1は、ハウスHを構成する骨組みに沿って取り付けられる。従来から、植物の温室栽培においては、日照量の少ない冬季や天候不順時等に、照明器具を擬似太陽として用いることにより、日照量を補って植物の育成を促進させ、年間を通じて安定して農作物を生産している。本実施形態においては、図24に示すように、夜間や雨天時等に、温室の天井面に配置された照明装置1のEL素子2を点灯させることにより、照明装置1を擬似太陽として機能させ、植物に対する日照量を補足することができる。
【0041】
また、晴天時の昼間のように、自然光を採り入れられるときは、図25に示すように、照明装置1のEL素子2を消灯させる。こうすれば、EL素子2は透明であるため、自然光の入射を遮ることなく、温室内に多くの光を採り入れることができる。従来の照明装置においては、照明装置が温室内に吊り下げられていると、照明器具の器具本体や反射鏡等よって陰ができてしまい、植物に照射される日照量を低下させることがあった。これに対して、本実施形態によれば、透明なEL素子2を用いているので、照明装置1によって陰ができることはなく、植物に照射される日照量を低下せることもない。なお、図示を省略しているが、例えば、EL素子2を個別に点灯制御して、一部のEL素子2のみを点灯させることにより、ハウスH外から自然光を採り入れつつ、EL素子2による補光を行なうようにしてもよい。
【0042】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した本実施形態では、格子状に配置された複数のEL素子2を個別にオンオフ制御して、照明装置1全体における発光面積を変化させる例を示したが、制御部4が複数のEL素子2の夫々の調光出力を制御するようにしてもよい。また、赤色、青色、黄色の3色を発光可能なEL素子2を用い、制御部4が、これらの発光色を組み合わせて点灯制御することにより、例えば、様々なシチュエーションに室内空間の演色性を変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 照明装置
2 EL素子
3 発光体
4 制御部
21 窓ガラス
S アーケード(建造物)
R 採光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なEL素子を建造物の採光部に配置した発光体と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記EL素子を複数個、前記採光部に格子状に配置したことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記EL素子は、前記採光部の内面に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記EL素子を所定のパターンに従って点灯制御することによって、前記採光部に映像又は広告を表示させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記EL素子を所定のパターンに従って点灯制御することによって、前記採光部に避難誘導又は警告を表示させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−15081(P2012−15081A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153490(P2010−153490)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】