説明

熱に安定な水酸化アルミニウム粒子およびそれらをエポキシ積層用樹脂に入れる充填材として用いる使用

熱安定性を向上させた水酸化アルミニウム粒子およびそれらをエポキシ積層品で用いるに適した樹脂に入れる難燃剤として用いることおよびそれを含有させた積層品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、以前に出願した米国仮出願60/816,455および60/728,199(これらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)の利点を請求するものである。
【0002】
本発明は粒子状水酸化アルミニウムの使用に関する。より詳細には、本発明は、熱安定性を向上させた水酸化アルミニウム粒子を難燃剤として用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
水酸化アルミニウムはいろいろな代替名、例えば水和アルミニウム、三水和アルミニウム、三水酸化アルミニウムなどの名称を有するが、通常はATHと呼ばれ、このように、本明細書ではATHを用いる。ATH粒子はいろいろな材料、例えば紙、樹脂、ゴム、プラスチックなどに入れる充填材として数多くの用途を有する。そのような製品は多様な商業的用途、例えばケーブルおよびワイヤーの鞘(seath)、コンベアベルト、熱可塑性プラスチック成形品、接着剤などで用いられる。ATH粒子は典型的にそのような材料の難燃性を向上させる目的で用いられ、かつまた防煙剤としても働く。
【0004】
ATHの熱安定性は、ATHが通常用いられる用途が理由で、最終使用者が密に監視する品質である。例えば、印刷回路基板用途の場合、その基板を構築する時に用いられる積層品が示す熱安定性は無鉛ハンダ付けが可能なほど充分に高くなければならない。従って、熱安定性を向上させたATHが本技術分野で求められている。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明の発明者は、予想外に、ATHの熱安定性とATHのソーダ含有量が関連していることを見いだした。経験的証拠によってATHの熱安定性と総ソーダ含有量が関連していることが示されてはいたが、本発明の発明者らは、理論で範囲を限定することを望むものでないが、本発明のATHが示す向上した熱安定性は不溶ソーダの含有量に関係していて前記含有量は典型的に全ソーダを基準にして総ソーダ含有量の約70から約99重量%の範囲内で残りは可溶ソーダであると考えている。従って、本発明は、下記の特徴:d10が約0.5から約1.4μmの範囲、d50が約1.2から約3.0μmの範囲、d90が約2.2から約6.0μmの範囲、総ソーダ含有量がATHを基準にして約0.2重量%未満、ISO 787−5:1980で測定した時の亜麻仁油吸収率が約15から約40ml/100gの範囲、およびDIN−66132で測定した時の比表面積(BET)が約2.0から約8m/gの範囲の中の1つ以上、好適には2つ以上、より好適には3つ以上を有するATHを含有して成る難燃性樹脂配合物に関し、ここで、前記ATHを水に10重量%入れて水中で測定した時に前記ATHが示す導電率は約200μS/cm未満である。本難燃性樹脂配合物に、また、少なくとも1種の合成樹脂を含有させることも可能でありかつ場合により本技術分野で通常用いられる他のいずれかの1種以上の添加剤を含有させることも可能である。
【0006】
いくつかの態様において、本発明のATHは、更に、可溶ソーダ含有量が約0.1重量%未満であることも特徴とする。
【0007】
いくつかの態様において、本発明は、この上および以下に記述する如きATH粒子に関
する。
【0008】
発明の詳細な説明
本明細書で用いる如きATHは、水酸化アルミニウムおよびこの無機物(mineral)である難燃剤を呼ぶ時に本技術分野で通常用いられるいろいろな名称、例えば水和アルミニウム、三水和アルミニウム、三水酸化アルミニウムなどを指すことを意味する。
【0009】
本明細書に開示する粒径測定値、即ちd10、d50およびd90は全部QuantachromeのCilas 1064 Lレーザースペクトロメーターを用いたレーザー回折で測定した値であることを注目すべきである。本明細書でd10、d50およびd90を測定する時に用いる手順は、一般に、最初に適切な水分散溶液(調製に関しては以下を参照)を前記装置のサンプル調製用容器の中に導入することを通して実施可能である。次に、「Particle Expert」と呼ぶ標準的測定を選択し、また、測定モデル「Range 1」も選択した後、装置内部パラメーター(これを予測粒径分布に適用)を選択する。測定中、当該サンプルに典型的には超音波を分散中および測定中に約60秒間当てることを注目すべきである。バックグラウンド測定を実施した後、分析すべきサンプルをサンプル用容器の中の水/分散剤溶液に約75から約100mgを入れそして測定を開始する。前記水/分散剤溶液の調製は、最初にKMF Laborchemieから入手可能なCalgonを500gとBASFから入手可能なCAL Polysaltを3リットル用いて濃縮液を調製することを通して実施可能である。その溶液を脱イオン水で10リットルにする。この元々の10リットルから100mlを取り出した後、更に脱イオン水で10リットルになるまで希釈し、そしてこの最終的な溶液を前記水−分散剤溶液として用いる。
【0010】
この上で述べたように、本発明は、ATHおよび少なくとも1種の合成樹脂を含有して成る難燃性樹脂配合物に関する。本難燃性樹脂配合物のATH含有量を典型的には約5から約200phrにする。好適な態様では、本難燃性樹脂配合物のATH含有量を約15から約100phrの範囲、好適には約15から約75phrの範囲、より好適には約20から約55phrの範囲内にする。
【0011】
本発明の実施で用いるATHは、1つ以上、好適には2つ以上、より好適には3つ以上の特徴を有することを特徴とする。本発明のATHは、約0.5から約1.4μmの範囲、好適には約0.6から約1.0μmの範囲内のd10、約1.2から約3.0μmの範囲、好適には約1.3から約2.8μmの範囲内のd50を示し得る。他の態様における本発明のATHは約1.4から約2.6μmの範囲内のd50を示し得る。
【0012】
本発明のATHが示し得る1種以上の特徴の中の別の特徴は、約2.2から約6.0μmの範囲、好適には約2.5から約5.5μmの範囲内のd90である。別の態様において、本発明のATHは約2.7から約5.0μmの範囲内のd90を示し得る。
【0013】
本発明のATHに持たせることができる1種以上の特徴の中の別の特徴は、ATHを基準にして約0.2重量%未満の総ソーダ含有量である。好適な態様において、可溶ソーダ含有量が本発明のATHの特徴である場合、総ソーダ含有量が0.18重量%未満、より好適には0.12重量%未満であるようにする。ATHの総ソーダ含有量の測定は、Dr.Bruno Lange GmbH(Duesseldorf/ドイツ)の炎光光度計M7DCを用いて実施可能である。本発明では、最初に1gのATHを石英ガラス製ボウルに加えた後、前記石英ガラス製ボウルに濃硫酸を3ml添加しそして前記ガラス製ボウルの内容物をガラス棒で注意深く撹拌することを通して、ATHの総ソーダ含有量の測定を実施した。次に、その混合物を観察し、ATH−結晶が完全に溶解しない時には、更に3mlの濃硫酸を加えた後、その内容物を再び混合する。次に、前記ボウルを加熱板上で余分な硫酸が完全に蒸発するまで加熱する。次に、前記石英ガラス製ボウルの内容物をほぼ室温に冷却した後、前記ボウル内にいくらか存在する塩を溶解させる目的で脱イオン水を約50ml添加する。次に、前記ボウルの内容物を高温に前記塩が溶解するまで約20分間維持する。次に、前記ガラス製ボウルの内容物を約20℃に冷却し、500mlのメスフラスコに移し、脱イオン水で満杯にした後、振とうして均一にする。次に、前記500mlのメスフラスコ内の溶液に炎光光度計を用いた分析をATHの総ソーダ含有量に関して受けさせる。
【0014】
本発明の実施で用いるATHに持たせることができる1種以上の特徴の中の別の特徴は、以下の表1に記述する如き熱安定性である。本明細書で用いる如き熱安定性は、ATHからの水の放出を指し、これの評価はいくつかの熱分析方法、例えば熱重量分析(「TGA」)などで直接実施可能であるが、本発明ではATHが示す熱安定性の測定をTGAを用いて実施した。測定を行う前に、ATHサンプルを約105℃のオーブンに4時間入れて乾燥させることで表面の水分を除去しておいた。次に、Mettler Toledoを用い、70μlのアルミナ製るつぼ(初期重量が約12mg)を用いて、N(1分当たり70ml)下で下記の加熱速度を用いてTGA測定を実施した:1分当たり10℃で30℃から150℃にし、1分当たり1℃で150℃から350℃にし、1分当たり10℃で350℃から600℃にする。本発明のATHが示すTGA温度はロスが1重量%の時および損失が2重量%(両方ともATHを基準)の時の測定温度であり得(本ケースではそうであり)、その測定結果を以下の表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
また、本発明のATHが示す1種以上の特徴を下記から選択することも可能である:i)ISO 787/5で測定した時の亜麻仁油吸収率が約15から約50ml/100gの範囲内および/またはii)DIN−66132で測定した時の比表面積(BET)が約2.0から約8m/gの範囲内。好適な態様において、亜麻仁油吸収率を本発明のATHの特徴にする場合、その亜麻仁油吸収率が好適には30以上から約50ml/100gの範囲内、より好適には約36から約46ml/100gの範囲内になるようにする。BETを本発明のATHの特徴にする場合、そのBET比表面積が好適には約2.3から約6m/gの範囲、より好適には約2.5から約4.5m/gの範囲内になるようにする。
【0017】
本発明のATHが示す導電率もまた本発明の実施で用いるATHが示す特徴の中の1つであり得、その場合、その導電率が典型的に約200μS/cm未満の範囲内になるようにする。導電率測定の全部を以下に記述するように水と溶液を基準にして約10重量%のATHを含む溶液を用いて実施したことに注目すべきである。本発明のATHが示す導電率は好適には約100μS/cm未満である。本発明の他の態様における導電率は約20から約45μS/cmの範囲内である。導電率の測定をWissenschaftlic
h−Technische−Werkstaetten GmbH(Weilheim/ドイツ)のMultiLab 540導電率測定装置を用いて下記の手順で実施した:分析すべきサンプルを10gおよび脱イオン水(周囲温度の)を90ml用いて、これらを100mlの三角フラスコに入れて、Gesellschaft for Labortechnik mbH(Burgwedel/ドイツ)から入手可能なGFL 3015振とう装置上でそれの最大能力で10分間振とうする。次に、導電性電極を懸濁液の中に浸漬した後、導電率を測定する。
【0018】
他の態様における本発明のATHは、更に、ATHを基準にした可溶ソーダ含有量が約0.1重量%未満であることも特徴とし得る。他の態様における本発明のATHは、更に、可溶ソーダ含有量が約0.001より上から約0.1重量%の範囲、いくつかの態様では、約0.02から約0.1重量%(両方ともATHを基準)の範囲であることも特徴とし得る。一方、他の態様における本発明のATHは、更に、可溶ソーダ含有量が約0.001から約0.02重量%未満の範囲内であることも特徴とし得る。この可溶ソーダ含有量の測定値は炎光光度計を用いて測定した値である。この可溶ソーダ含有量を測定する時、サンプルの溶液の調製を下記の如く実施した:20gのサンプルを1000mlのメスフラスコに移した後、それに浸出を約250mlの脱イオン水を用いて約95℃の水浴上で約45分間受けさせる。次に、前記フラスコを20℃に冷却し、脱イオン水で目盛の所まで満たした後、振とうして均一にした。サンプルに沈降を起こさせて透明な溶液をフラスコ口の中に生じさせ後、濾過シリンジまたは遠心分離を用いて、炎光光度計を用いた測定に必要な量の溶液を前記フラスコから取り出してもよい。
【0019】
しかしながら、本発明の実施で用いるATHにただ1つの特徴を持たせると記述する場合、その特徴は不溶ソーダ含有量である。本発明の発明者らは、予想外に、ATHの熱安定性とATHのソーダ含有量が関連していることを見いだした。経験的証拠によってATHの熱安定性と総ソーダ含有量が関連していることが示されてはいたが、本発明の発明者らは、理論で範囲を限定することを望むものでないが、本発明のATHが示す向上した熱安定性は不溶ソーダの含有量に関係していて前記含有量は典型的に総ソーダ含有量の約70から約99重量%の範囲内(この上に記述したように好適な態様を包含)で、その残りは可溶ソーダであり、かつ本発明の実施で用いるATHの総ソーダ含有量は典型的にATHを基準にして約0.18重量%未満の範囲、好適には同じ基準で約0.12重量%未満の範囲であると考えている。
【0020】
本発明の難燃性樹脂配合物に、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、燐含有樹脂(DOPOの如き)、臭素化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステルから選択した少なくとも1種、ある場合には2種以上の合成樹脂を含有させる。
【0021】
本難燃性樹脂配合物にまた本技術分野で通常用いられる他の添加剤を含有させることも可能である。本発明の難燃性重合体配合で用いるに適した他の添加剤の非限定例には、他の難燃剤、例えば臭素、燐または窒素などが基になった難燃剤、溶媒、硬化剤(硬化剤または硬化促進剤の如き)、分散剤または燐化合物、微細シリカ、粘土またはタルクなどが含まれる。そのような他の任意の添加剤の比率は通常の比率であり、所定状況の必要性に適合させるように変えることができる。
【0022】
本重合体配合物の成分を混合および添加する好適な方法は高せん断混合である。例えばヘッドミキサー(head mixer)、例えばSilverson社が製造しているミキサーなどを用いてせん断をかける。本樹脂充填材混合物から「プレプレグ」を生じさせそして次に硬化積層品を生じさせるさらなる処理段階は通常の最新技術であり、文献、例えばMcGraw−Hill Book Companyが出版している「Handbook of Epoxide Resins」(これは引用することによって全体が本
明細書に組み入れられる)などに記述されている。
【0023】
この上で行った説明は本発明のいくつかの態様に向けたものである。本分野の技術者は、本発明の精神を実施するに適した等しく有効な他の態様を考案することができることを認識するであろう。以下の実施例は本発明を例示するものであり、決して限定することを意味するものでない。
【0024】
[実施例]
【実施例1】
【0025】
この実施例では、2種類の市販ATH製品、即ちMartinswerk GmbHから入手可能なMartinal(商標)OL−104 LEおよびMartinal(商標)OL−104 WEが示す熱安定性を本発明のATHが示す熱安定性と比較した。熱安定性の測定をTGA試験に従って実施した。図1に示すように、本発明のATHグレードが示す熱安定性特徴の方が現在入手可能なATHグレードが示すそれよりも優れている。
【実施例2】
【0026】
本発明に従うATHが示す熱安定性を更に分析する目的で、本発明に従うATHを充填したエポキシ樹脂積層品(印刷回路盤を模擬)ばかりでなく市販グレードのMartinal(商標)OL−104 LEおよびOL−104 WEを充填した積層品も製造した。これらのエポキシ樹脂積層品の製造をハンドレーアップ(HLU)と呼ぶ加工技術を用いて実施した後、IPC 4101に従うハンダフロート(solder float)試験手順(IPC−TM−650)に従って8層積層品が288±5℃の錫浴内で層剥離を起こすまでの時間を測定することで熱安定性を調査した。
【0027】
前記樹脂の調製は以下に記述する2ストックミックス(stock mixes)が基になった調製である。
【0028】
ストックミックス1
Silverson高速せん断装置L4Rを用いて450gのアセトンにShell Chemicals社のEpikote 1001樹脂を1250g溶解させることでストックミックス1を製造した。撹拌を20分間実施した後の溶液(「Epikote基礎樹脂」)は透明であった。温度が50℃を超えた時には撹拌を止めて温度を約5℃降下させたことを注目すべきである。次に、撹拌を前記溶液が透明になるまで継続した。
【0029】
Epikote基礎樹脂に加えて、450gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に50gのジシアンジアミドを加えることでジシアンジアミド溶液(「ダイサイ溶液」)を生じさせた。VMA Getzmann社の溶解装置を用いて得た前記透明な溶液に2.5gの2−メチルイミダゾールを加えた。
【0030】
前記ダイサイ溶液を前記Epikote基礎樹脂に加えた後、その混合物を室温で10分間撹拌した。ストックミックス1を24時間放置することで熟成させた。
【0031】
ストックミックス2
ストックミックス2はDow Chemical Company(ドイツ)から商業的に入手可能なD.E.N.438を基にした混合物である。D.E.N.438の粘度を低くしかつ必要量である500gを計り取る目的で、それを水浴中で約80から約90℃の範囲に加熱した。その後、それを50℃に冷却した後、100gのアセトンに溶解させた。その混合物をSilverson高せん断混合装置L4Rを最大速度の30−40%で用いて撹拌した。
【0032】
180gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に15gのジシアンジアミド(ダイサイ)を加えることで2番目のジシアンジアミド溶液(「2番目のダイサイ溶液」)を調製した。その混合物を溶解装置(VMA Getzmann社の)で前記溶液が透明になるまで撹拌した後、2−メチルイミダゾールを1.0g加えた。
【0033】
前記2番目のダイサイ溶液を前記D.E.N.438基礎樹脂に加えた後、その混合物を室温で10分間撹拌した。ストックミックス2に熟成を24時間受けさせることで使用の準備ができた状態にした。
【0034】
エポキシ樹脂積層品の製造
ストックミックス1を100gおよびストックミックス2を80gに加えてBYK−Chemie,GmbHから商業的に入手可能な分散剤であるByk LP W 20037を1g用いて、それらを最大ローター速度の30−40%で1分間混合することで、水酸化アルミニウム充填エポキシ樹脂を調製した。次に、前記エポキシ樹脂に本発明に従うATHを50gまたはMartinal(商標)OL−104/WEを50gまたはMartinal(商標)OL−104/LEを50g混合することで異なる3種類のATH/樹脂混合物を生じさせた。再び、Silverson高せん断混合装置を最大速度の30−40%で用いてATHの添加を約5分間かけて実施した。再び、温度が50℃を超えた時には混合を止めて、温度を約5℃降下させた後、混合を総混合時間が約5分間になるように継続した。
【0035】
エポキシ積層品の製造では、幅が300mmの容器に前記ATH/樹脂混合物を充填した。寸法が180mmx250mmになるように織りガラス布(210g/m)を8片細断して、前記ガラス布の上部および下部の全ての層の一方の末端部に2片の木(5mmx10mmx220mm)を固定した。その調製したガラス布を個別に前記ATH/樹脂混合物の中に浸漬した後、含浸を受けたガラス布がもたらされるようにガラス布全体が前記樹脂を担持することを保証する目的で、前記ATH/樹脂混合物を用いた追加的ハケ塗りを実施した。
【0036】
前記含浸を受けさせたガラス布を実験室のスタンドに固定した。2本の円形金属製棒を前記含浸を受けさせておいたガラス布の表面の上で転がすことで余分な樹脂を除去した。そのガラス布を160℃のオーブンに入れて90秒間乾燥させた後、室温に冷却した。全ての乾燥させた層の樹脂含有量は、樹脂を加える前および樹脂を加えた後の調製ガラス布の重量で測定して、38重量%から42重量%の範囲であった。そのガラス布を150mmx200mmの寸法に切断した。8層を重ねそして2層のTedlar(商標)(Dupontから商業的に入手可能)を前記切断ガラス布の上部および下部に加えた。その層を195kp/cmの圧力を用いて170℃で2時間圧縮した。室温に冷却した後、前記Tedlar(商標)の層を剥がした。その結果として得た8層積層品の樹脂含有量は約38から約42重量%の範囲で厚みは0.8mmであった。
【0037】
次に、8層布の各々を切断して寸法が40mmx50mmの9個の試験片を生じさせた。各試験片が層剥離を起こすまでの時間を下記の如く測定することで前記8層エポキシ樹脂積層品が示す熱安定性を調査した。その試験品をホルダーの中に固定して、それを288±5℃の錫浴の中に浸漬した。1番目の層剥離が起こるまでの時間を測定した。前記ホルダーに衝撃を与えることで層剥離を検出した後、目で見た観察で実証した。水酸化アルミニウムが吸熱性分解を起こしてアルミナと水になることによって層剥離が引き起こされた。水酸化アルミナを含有させないで上述した手順に従って製造したエポキシ樹脂積層品は10分経っても層剥離を示さなかった。
【0038】
図2に、本発明のATHを充填材として含有させた試験片が層剥離を起こすまでの相対的平均時間をMartinal(商標)OL−104/WEおよびMartinal(商標)OL−104/LEを含有させた試験片が示したそれと比較して示し、ここでは、後者が示した層剥離までの平均時間を100%に設定した。示した層剥離までの時間は1個の8層エポキシ樹脂積層品が基になった9試験品の平均値である。この上に記述した手順に従って個別に製造した2積層品の結果を示す。
【0039】
図2に示すように、本発明に従うATH粒子を充填材として用いたエポキシ樹脂積層品が示す熱安定性は、層剥離を起こすまでの平均時間で測定して、通常のATHを充填材として含有させた樹脂のそれよりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明に従う水酸化アルミニウムが示した熱安定性を現在商業的に入手可能な水酸化アルミニウムが示したそれと比較するグラフである。
【図2】図2は、本発明に従うATH、Martinal(商標)OL−104/WEおよびMartinal(商標)OL−104/LEを充填材として含有させたエポキシ樹脂積層品が層剥離を起こすまでの平均時間を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性樹脂配合物であって、
a)下記の特徴:i)d10が約0.5から約1.4μmの範囲、ii)d50が約1.2から約3.0μmの範囲、iii)d90が約2.2から約6.0μmの範囲、iii)総ソーダ含有量が水酸化アルミニウム(「ATH」)を基準にして約0.2重量%未満、iv)亜麻仁油吸収率が約15から約50ml/100gの範囲、およびv)BET比表面積が約2.0から約8m/gの範囲の中の少なくとも1つ以上を有する水酸化アルミニウム(「ATH」)粒子、および
b)少なくとも1種の合成樹脂、
を含有して成っていて前記ATHが示す導電率が約200μS/cm未満である難燃性樹脂配合物。
【請求項2】
前記ATHの可溶ソーダ含有量が約0.1重量%未満である請求項1記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項3】
前記ATHがi)約0.6から約1.0μmの範囲内のd10および/またはii)約1.3から約2.8μmの範囲内のd50または約1.4から約2.6μmの範囲内のd50および/またはiii)約2.5から約5.5μmの範囲内のd90または約2.7から約5.0μmの範囲内のd90を示す請求項2記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項4】
前記ATHの総ソーダ含有量が0.18重量%未満である請求項3記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項5】
前記ATHの総ソーダ含有量がATHを基準にして0.12重量%未満である請求項3記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項6】
前記ATHが下記:
【表1】

または
【表2】

または
【表3】

のTGAプロファイルを示す請求項3−5のいずれか記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項7】
前記ATHが示す亜麻仁油吸収率が30より上から約50ml/100gの範囲内である請求項6記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項8】
前記ATHが示すBET比表面積が約2.3から約6m/gの範囲内である請求項7記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項9】
前記ATHの可溶ソーダ含有量がATHを基準にして約0.001から約0.1重量%の範囲内である請求項4または5のいずれか記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項10】
前記ATHの可溶ソーダ含有量が約0.001から0.02重量%未満の範囲内である請求項4または5のいずれか記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項11】
前記ATHの不溶ソーダ含有量が全ソーダを基準にして総ソーダ含有量の約70から約99重量%の範囲内である請求項9記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項12】
前記ATHが示す導電率が約100μS/cm未満である請求項11記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項13】
前記ATHが示す導電率が約20から約45μS/cmの範囲内である請求項10記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項14】
難燃性樹脂配合物であって、
a)下記の特徴:i)d10が約0.6から約1.0μmの範囲、ii)d50が約1.3から約2.6μmの範囲、iii)d90が約2.7から約5.0μmの範囲、iii)総ソーダ含有量が水酸化アルミニウム(「ATH」)を基準にして約0.12重量%未満、iv)亜麻仁油吸収率が約15から約50ml/100gの範囲、およびv)BET比表面積が約2.0から約6m/gの範囲の中の少なくとも1つ以上を有する水酸化アルミニウム(「ATH」)、および
b)少なくとも1種の合成樹脂、
を含有して成っていて前記少なくとも1種の合成樹脂がエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、燐含有樹脂、臭素化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステルから選択され、前記ATHが示す導電率が約100μS/cm未満であり、前記ATHの可溶ソーダ含有量が約0.1重量%未満でありかつ前記ATHが下記:
【表4】

のTGAプロファイルを示す難燃性樹脂配合物。
【請求項15】
前記ATHが下記:
【表5】

または
【表6】

のTGAプロファイルを示す請求項14記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項16】
前記ATHが示す亜麻仁油吸収率が30より上から約50ml/100gの範囲内である請求項15記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項17】
前記ATHが示すBET比表面積が約2.5から約4.5m/gの範囲内である請求項16記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項18】
前記ATHの可溶ソーダ含有量がATHを基準にして約0.001から約0.1重量%の範囲内である請求項15または17のいずれか記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項19】
前記ATHの可溶ソーダ含有量が約0.001から0.02重量%未満の範囲内である請求項15または17のいずれか記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項20】
前記ATHの不溶ソーダ含有量が全ソーダを基準にして総ソーダ含有量の約70から約99重量%の範囲内である請求項19記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項21】
前記ATHが示す導電率が約20から約45μS/cmの範囲内である請求項19記載の難燃性樹脂配合物。
【請求項22】
請求項21記載の難燃性樹脂配合物から作られたエポキシ積層品。
【請求項23】
請求項14記載の難燃性樹脂配合物から作られたエポキシ積層品。
【請求項24】
約0.6から約1.0μmの範囲内のd10、約1.2から約3.0μmの範囲内のd50、約2.5から約6.0μmの範囲内のd90、ATHを基準にして約0.2重量%未満の総ソーダ含有量、ISO 787−5:1980で測定した時に約15から約40ml/100gの範囲内の亜麻仁油吸収率およびDIN−66132で測定した時に約2.0から約5m/gの範囲内の比表面積(BET)を示すATHであって、前記ATHを水に10重量%入れて水中で測定した時に約200μS/cm未満の導電率を示すATH。
【請求項25】
可溶ソーダ含有量が約0.1重量%未満である請求項24記載のATH。
【請求項26】
10が約0.6から約1.0μmの範囲内である請求項25記載のATH。
【請求項27】
50が約1.3から約2.8μmの範囲内である請求項26記載のATH。
【請求項28】
50が約1.4から約2.6μmの範囲内である請求項25記載のATH。
【請求項29】
90が約2.5から約5.5μmの範囲内である請求項27記載のATH。
【請求項30】
90が約2.7から約5.0μmの範囲内である請求項28記載のATH。
【請求項31】
総ソーダ含有量が0.18重量%未満である請求項29記載のATH。
【請求項32】
ATHを基準にした総ソーダ含有量が0.12重量%未満である請求項30記載のATH。
【請求項33】
ATHを熱重量分析(TGA)で測定した時に下記:
【表7】

の熱安定性を示す請求項25記載のATH。
【請求項34】
ATHを熱重量分析(TGA)で測定した時に下記:
【表8】

の熱安定性を示す請求項31記載のATH。
【請求項35】
ATHを熱重量分析(TGA)で測定した時に下記:
【表9】

の熱安定性を示す請求項32記載のATH。
【請求項36】
約30以上から約40ml/100gの範囲内の亜麻仁油吸収率を示す請求項34記載のATH。
【請求項37】
約2.3から約4.3m/gの範囲内のBET比表面積を示す請求項36記載のATH。
【請求項38】
ATHを水に10重量%入れて水中で測定した時に約100μS/cm未満の導電率を示す請求項34記載のATH。
【請求項39】
ATHを水に10重量%入れて水中で測定した時に約20から約45μS/cmの範囲内の導電率を示す請求項35記載のATH。
【請求項40】
ATHを基準にして約0.02より上から約0.1重量%の範囲内の可溶ソーダ含有量を有する請求項38記載のATH。
【請求項41】
可溶ソーダ含有量が0.02重量%未満の範囲内である請求項38記載のATH。
【請求項42】
不溶ソーダ含有量が全ソーダを基準にして総ソーダ含有量の約70から約99重量%の
範囲内である請求項25記載のATH。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−514763(P2009−514763A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536707(P2008−536707)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/040241
【国際公開番号】WO2007/047528
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】