熱アシスト磁気ヘッド及びその製造方法
【課題】 効率的に近接場光を発生させる構造を有する熱アシスト磁気ヘッド、及び、かかる熱アシスト磁気ヘッドを高精度に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】 コア4内を進行するレーザ光等の励起光LBと、散乱体STによって散乱された散乱光が近接場光発生部8において、同位相で重畳させるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。高強度の励起光LBの入射によって近接場光発生部8においては、強い近接場光が発生し、磁気記録媒体10の磁気記録領域が加熱される。近接場光発生部8の隣には主磁極6Aが位置しているため、近接場光によって加熱され保持力が低下した磁気記録領域Rに、主磁極6Aから延びる磁束を与えることができ、したがって、高密度に記録を行うことができる。
【解決手段】 コア4内を進行するレーザ光等の励起光LBと、散乱体STによって散乱された散乱光が近接場光発生部8において、同位相で重畳させるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。高強度の励起光LBの入射によって近接場光発生部8においては、強い近接場光が発生し、磁気記録媒体10の磁気記録領域が加熱される。近接場光発生部8の隣には主磁極6Aが位置しているため、近接場光によって加熱され保持力が低下した磁気記録領域Rに、主磁極6Aから延びる磁束を与えることができ、したがって、高密度に記録を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的に近接場光を発生させる構造を有する熱アシスト磁気ヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KUV/kBTで与えられる。ここで、KUは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kBはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKUV/kBTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKUを大きくすることが考えられるが、このKUの増加は、記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、KUの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
特許文献1は、記録再生装置に固体イマージョンレンズを用いたヘッドを利用し、光ディスクに超微細な光ビームスポットで超微細な磁区信号を記録する技術を開示している。特許文献2は、金属膜内に周期的な微細構造を有し発生した表面プラズモンを一点に集束させる光ヘッドを開示している。特許文献3は、光導波路を用いて光を曲げて近接場光を発生させる技術を開示している。特許文献4及び特許文献5には、媒体対向面に導電性の板状の近接場光発生部を配置し、これに対して媒体側とは反対の側から光を照射することにより近接場光を発生させる熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。近接場光発生部の一端には尖った先端部が形成されており、近接場光は主としてこの先端部から放射される。
【特許文献1】特開平10−162444号公報
【特許文献2】特開2005−025868号公報
【特許文献3】特開2006−331508号公報
【特許文献4】特開2001−255254号公報
【特許文献5】特開2003−114184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の構造ではレーザ光などの光を近接場光発生部に集中させることができず、その他の構造でも、特に特許文献2に記載の構造においても、レーザ光等の励起用の光が金属膜内において吸収されるため、効率的に近接場光を発生することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、効率的に近接場光を発生させる構造を有する熱アシスト磁気ヘッド、及び、かかる熱アシスト磁気ヘッドを高精度に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドにおいて、媒体対向面に向けて延びた主磁極と、媒体対向面を光出射面として有するコアと、光出射面の主磁極の隣に設けられた近接場光発生部と、コア内を通る入射光の進行経路上に設けられ、コア内に埋設された金属又は半導体からなる散乱体とを備え、近接場光発生部と散乱体との間の距離R、近接場光発生部への散乱体からの散乱光の入射角θ、及び、入射光の波長λは、自然数をnとして、R(1−cosθ)=nλ×(100%±10%)を満たすことを特徴とする。
【0010】
かかる条件を満たす場合、コア内を進行するレーザ光等の励起光と、散乱体によって散乱された散乱光が近接場光発生部において、同位相で重畳させるため、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。高強度の励起光の入射によって近接場光発生部においては、近接場光が発生し、磁気記録媒体の磁気記録領域が加熱される。近接場光発生部の隣には主磁極が位置しているため、近接場光によって加熱され保持力が低下した磁気記録領域に、主磁極から延びる磁束を与えることができ、したがって、高密度に記録を行うことができる。
【0011】
また、散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、近接場光発生部の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されていることが好ましい。二次元平面内に拡散して配置された散乱体からの励起光の散乱光は、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。
【0012】
また、散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、近接場光発生部の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されていることが好ましい。すなわち、三次元空間内において散乱体が拡散して配置されている場合には、三次元空間内を伝播する励起光の散乱光を、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部に入射する光の強度が更に高くなる。
【0013】
本発明に係る第1の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法は、媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、基板上に下部コア層を形成する工程と、下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、材料層をパターニングして、媒体対向面から垂直に延びるラインパターンと、ラインパターンから離隔した所定位置に散乱体パターンとを形成する工程と、下部コア層上に中部コア層を堆積し、ラインパターン及び散乱体パターンの側面に中部コア層を接触させる工程と、ラインパターンに沿って媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを中部コア層上に形成する工程と、マスクを介して露出した中部コア層及びラインパターンをエッチングする工程と、中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、ラインパターンを構成していた材料が残留するように媒体対向面をラッピングする工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構造では、同一の材料層をパターニングすることで、中部コア層内に、ラインパターンの他、散乱体のパターンも形成されている。散乱体の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部において重ね合わせられるように設定される。
【0015】
媒体対向面から垂直に延びたラインパターンの長さは、スリットパターンを有するマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができる。ラッピング後に残留したラインパターンの構成材料は、近接場光発生部を構成する。したがって、ラッピング時に残留する近接場光発生部の位置は、予め形成されている散乱体の位置に対して精密に決定されることとなる。したがって、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。
【0016】
本発明に係る第2の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法は、媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、基板上に下部コア層を形成する工程と、下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、材料層をパターニングして媒体対向面から垂直に延びるラインパターンを形成する工程と、下部コア層上に中部コア層を堆積し、ラインパターンの側面に中部コア層を接触させる工程と、ラインパターンに沿って媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを中部コア層上に形成する工程と、マスクを介して露出した中部コア層及びラインパターンをエッチングする工程と、中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、上部コア層の所定位置をエッチングし、エッチングされた領域内に散乱体を埋め込む工程と、ラインパターンを構成していた材料が残留するように媒体対向面をラッピングする工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
この構造では、中部コア層内にラインパターンが形成され、上部コア層内に、散乱体が形成されている。散乱体の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部において重ね合わせられるように設定される。
【0018】
この製造方法の場合も、媒体対向面から垂直に延びたラインパターンの長さは、スリットパターンを有するマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができ、したがって、上述のように、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱アシスト磁気ヘッドによれば、効率的に近接場光を発生させることができ、その製造方法によれば、高精度に熱アシスト磁気ヘッドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施の形態に係る近接場光発生素子、熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置について説明する。同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【0022】
ハードディスク装置100は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する複数の磁気記録媒体である磁気ディスク10、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12、この熱アシスト磁気ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに後に詳述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードを制御するための記録再生及び発光制御回路(制御回路)13を備えている。
【0023】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM)15によってピボットベアリング軸16を中心にして揺動可能であり、この軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。磁気ディスク10の表面に対向する面が熱アシスト磁気ヘッド21の媒体対向面S(エアベアリング面とも呼ばれる)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
【0024】
図2は、HGA17の斜視図である。同図は、HGA17の媒体対向面Sを上にして示してある。
【0025】
HGA17は、サスペンション20の先端部に、熱アシスト磁気ヘッド21を固着し、さらにその熱アシスト磁気ヘッド21の端子電極に配線部材203の一端を電気的に接続して構成される。サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200上に固着され支持された弾性を有するフレクシャ201と、フレックシャの先端に板ばね状に形成されたタング部204と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203とから主として構成されている。
【0026】
なお、HGA17におけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0027】
図3は、図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【0028】
サスペンション20の先端部に熱アシスト磁気ヘッド21が取り付けられている。熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダー1と光源ユニット2とを貼りあわせてなる。スライダー1は、スライダー基板1AのYZ平面上に形成された磁気ヘッド部1Bを備えている。磁気ヘッド部1Bの−Z方向のXY平面は媒体対向面Sを成している。一方、光源ユニット2は、光源支持基板2AのYZ平面上に絶縁層2Bを備えており、絶縁層2BのYZ平面上に発光素子3が固定されている。
【0029】
磁気ヘッド部1Bは、絶縁体内に埋設された複数の素子を備えている。これらの素子は、電流の供給によって磁界を発生する螺旋状のコイル5と、情報書き込み用のコイル5において発生した磁束を媒体対向面Sまで導くようにコイル中心から延びた主磁極6Aと、媒体対向面S上に露出した磁気感応面を有する磁気抵抗効果素子(MR素子)7と、周囲の絶縁体をクラッドとしてZ軸方向に沿って延びる導波路のコア4である。コア4内には単数又は複数の散乱体STが埋設されている。
【0030】
散乱体STを含み、励起光の進行方向に垂直なコア4の断面(XY平面)への近接場光発生部8の投影位置と、近接場光発生部8との間の距離をRcosθとし(θは散乱光の入射角)、散乱体STと近接場光発生部8との間の距離Rとすると、これらの距離の差が励起光(入射光)の波長λの自然数倍に設定されている。また、各散乱体STからの散乱光の位相は、近接場光発生部8上において、同位相となるように設定されている。なお、散乱体STと近接場光発生部8との間の距離は、これらの間の散乱光の経路の最短距離で与えられるが、近接場光発生部8及び散乱体STの寸法が微小薄膜や微小球などのように小さい場合には、それぞれの重心間距離で与えられるものとしてよい。
【0031】
なお、コア4は屈折率の異なる複数の誘電体層を積層して形成することもでき、この場合、単位厚み当りの平均屈折率が高い方へ、内部を伝播する光が屈折する。なお、コアは全体の平均屈折率がクラッドよりも高屈折率の誘電体層からなり、クラッドはコア全体よりも低屈折率の誘電体層からなる。コアが多層の誘電体層からなる場合、複数の誘電体層の厚みと屈折率は、内部を伝播する光が近接場光発生部に近づくように設定される。すなわち、近接場光発生部に近づくほどコア4内の単位厚み当りの平均屈折率が高くなる。
【0032】
なお、主磁極6Aは媒体対向面S上に露出しているが、主磁極6Aは磁気ディスク10の表面にある記録領域Rに磁界を与えることができる位置であれば、媒体対向面S上に露出している必要はない。また、主磁極6Aの近傍には必要に応じて副磁極が設けられ、主磁極6Aからの磁力線(磁束)MFが記録領域Rを介して副磁極に流れるようにしてもよい(図5参照)。
【0033】
コア4は、発光素子3からの光が入射する光入射面4AをZ軸の正方向のXY平面上に有しており、負方向のXY平面、すなわち媒体対向面S上に光出射面4Bを備えている。発光素子3は、本例では端面発光型のレーザダイオードであり、XY平面に平行な端面から出射されたレーザ光は、光入射面4Aを介してコア4内に入り、光出射面4B上に形成された近接場光発生素子8に照射される。
【0034】
近接場光発生素子8は、入射光に共鳴して近接場光を発生し、この近接場光によって記録領域Rが加熱される。加熱された記録領域Rに主磁極6Aの先端からの磁力線が入ると、記録領域Rに情報が書き込まれる。
【0035】
磁気ヘッド部1BのX軸の負方向のYZ平面上には、複数の電極パッドからなる電極パッド群G1が形成されている。それぞれの電極パッドは、コイル5の両端、MR素子7の上下の電極に接続されている。MR素子7は、磁化の向きが固定された固定層と、周辺の磁界に応じて磁化の向きが偏向するフリー層を積層してなり、フリー層と固定層の磁化の向きの相違に応じて、磁気抵抗が変化する。すなわち、記録領域Rの周囲に発生する磁界に感応して、MR素子7の磁気抵抗が変化し、電極パッド群G1の中の一対の電極パッド間を流れる電流が変化する。なお、フリー層のY軸方向両端にはハードマグネットが配置されている。
【0036】
書き込み時には、電極パッド群G1の中の別の一対の電極パッド間に電流を流し、コイル5の両端間を電流が流れるようにする。なお、磁気記録素子は垂直磁気記録型のものが好ましい。電極パッド群G1内の電極パッドは、サスペンション20上に形成された第2の電極パッド群G2に電気的に接続され、配線部材203を介して外部に接続されている。なお、配線部材203に接続される第2の電極パッド群G2には、発光素子3に駆動電流を供給するための一対の電極パッドも含まれており、この電極パッド間に駆動電流を流すことで、発光素子3は発光し、励起光としてのレーザ光が出射される。
【0037】
なお、コア4の形状としては様々ものが挙げられるが、本例ではZ軸に沿って直線的に延びている。なお、説明の明確化のため、コア4は発光素子3からの光LB(図4参照)の光路と同一符号で示している。
【0038】
スライダー基板1A及び光源支持基板2Aは、例えばアルティック(Al2O3−TiC)から構成されている。これらの基板1A,2Aに熱伝導性が高い基板を使用した場合には、基板が放熱機能を有することになる。光源支持基板2AのZ軸の正方向側のXY面は、サスペンション20の裏面に貼り付けられている。
【0039】
磁気ヘッド部1BはMR素子7、クラッド、コア4、コイル5及び主磁極6AをX軸に沿って積層してなるが、この積層方向はトラック内の記録領域Rの配列方向に沿っており、トラック幅はY軸に平行である。
【0040】
図4は、図3に示した熱アシスト磁気ヘッドのIV−IV矢印断面図である。
【0041】
絶縁層2B上には、発光素子3が接着・固定されており、発光素子3から−Z方向に出射されたエネルギー線がコア4の光入射面4Aを介してコア4の内部に入射し、コア4の光出射面4Bに設けられた近接場光発生素子8に照射される。
【0042】
近接場光発生素子8の隣には主磁極6Aの先端が位置している。主磁極6Aは、磁気ヨークとしての図示しない磁性材料層に物理的に連続し、これは更に、副磁極を構成する磁性材料層6Bに物理的に連続している。なお、クラッドとしての絶縁体層1B2は、コア4の周囲を囲んでいる。
【0043】
コア4上に絶縁材料からなるクラッドとしてのオーバーコート層1B3が設けられている。絶縁体層1B2と基板1Aとの間には下部絶縁体層1B1が介在している。下部絶縁体層1B1内には、MR素子7が埋設されている。MR素子7は、上部シールド電極7a、下部シールド電極7c、及び、上部シールド電極7aと下部シールド電極7cとの間に介在するMR素子層7bからなる。MR素子層7bは、フリー層及び固定層をトンネル障壁層を介して積層してなる。本例の絶縁体層1B1,1B2,1B3は、低屈折率のAl2O3からなり、コア4は高屈折率のタンタル酸化物(TaOX)からなる。磁極6A,6Bの材料はNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。
【0044】
図5は、熱アシスト磁気ヘッドの電気的接続を示す図である。
【0045】
発光素子3、コイル5、MR素子7の両端は、それぞれ配線部材203に接続されている。配線部材203を介して発光素子3及びコイル5に通電が行われ、MR素子7からの出力は配線部材203を介して読み出される。
【0046】
発光素子3に通電を行うと、レーザ光などの励起光LBが、近接場光発生素子8に照射され、これに近接する磁気ディスク10の記録領域Rが加熱される。磁気ディスク10は、図の矢印ARの方向に移動するので、加熱の直後、主磁極6Aの先端が加熱された記録領域R上に位置する。このとき、コイル5に通電すると、コイル5を発生した磁束が主磁極6Aの先端に至り、主磁極6Aの先端から出る磁力線MFが磁気ディスク10を通って、副磁極6Bに帰還する。したがって、磁気ディスク10の記録領域R内に情報が書き込まれる。
【0047】
このように、熱アシスト磁気ヘッドは、近接場光発生部8の隣にレーザ光などの励起光を照射する発光素子3を更に備えており、励起光LBの照射により近接場光発生部8において十分な近接場光を発生させることができる。
【0048】
情報の書き込まれた記録領域RがMR素子7に対向した場合には、記録領域Rからの磁界に感応してMR素子7内のフリー層の磁化の向きが変化し、MR素子7の磁気抵抗が変化する。したがって、記録領域R内に書き込まれた情報を読み出すことができる。
【0049】
図6は、近接場光発生部8と、散乱体STとの位置関係を示す図である。
【0050】
近接場光発生部(プラズモン・プローブ)8は、微小金属片からなり、本例では三角形の薄膜が図示されている。近接場光発生部8は、XY平面に平行な光出射面(媒体対向面)に設けられており、コア内を伝播する励起光LBはZ軸の負方向に向かって進行してくる。コア内の原点Oを通るXY断面内において、複数の各散乱体ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6が分布して配置されているとする。
【0051】
各散乱体ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6には、Z軸に対して平行に励起光LBが入射する。各散乱体ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6からの散乱光の近接場光発生部8への入射角をθ(=θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6)とし、各散乱体ST(=ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6)と近接場光発生部8との間の距離をR(=R1、R2、R3、R4、R5、R6)とする。原点Oから近接場光発生部8までの距離は、Rcosθで与えられる。したがって、原点Oから近接場光発生部8までの距離Rcosθと、各散乱体から近接場光発生部8までの距離Rの差Δは、以下の式(Δ=R−Rcosθ)で与えられる。この光路差Δが励起光LBの波長λの自然数倍である場合には、近接場光発生部8に照射される励起光強度が高くなる。波長λとしては、赤外線の他、青色発光や紫外線を用いることもできる。
【0052】
すなわち、自然数をn(=1,2,3・・・)として、光路差Δは以下の式を満足する。
【0053】
Δ=R(1−cosθ)=nλ×(100%±α%)
【0054】
更に、各距離R1、R2、R3、R4、R5、R6のうちのいずれか2つの差分δ(例:δ=R1−R3)も、δ=nλ×(100%±α%)を満たすと、近接場光発生部8に照射される励起光強度が高くなる。
【0055】
なお、αは誤差であり、本例では10%に設定される。
【0056】
以上、説明したように、上述の実施の形態に係る熱アシスト磁気ヘッドは、媒体対向面Sを有する熱アシスト磁気ヘッドにおいて、媒体対向面Sに向けて延びた主磁極6Aと、媒体対向面Sを光出射面4Bとして有するコア4と、光出射面4Bの主磁極6Aの隣に設けられた近接場光発生部8と、コア4内を通る入射光LBの進行経路上に設けられ、コア4内に埋設された金属又は半導体からなる散乱体STとを備え、近接場光発生部8と散乱体STとの間の距離R、近接場光発生部8への散乱体STからの散乱光の入射角θ、及び、入射光の波長λは、自然数をnとして、R(1−cosθ)=nλ×(100%±10%)を満たすことを特徴とする。
【0057】
かかる条件を満たす場合、コア4内を進行するレーザ光等の励起光LBと、散乱体STによって散乱された散乱光が近接場光発生部8において、同位相で重畳させるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。高強度の励起光LBの入射によって近接場光発生部8においては、強い近接場光が発生し、磁気記録媒体10の磁気記録領域が加熱される。近接場光発生部8の隣には主磁極6Aが位置しているため、近接場光によって加熱され保持力が低下した磁気記録領域Rに、主磁極6Aから延びる磁束を与えることができ、したがって、高密度に記録を行うことができる。なお、磁極の位置としては様々なものを適用することができる。
【0058】
なお、励起光LBがレーザ光である場合、そのファーフィールドパターンの短軸径はY軸方向に一致しており、これはTE偏波の向きとなる。また、Auなどの金属体からなる近接場光発生部8に光を照射すると、近接場光発生部8を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その先端部において電界の集中が生じる。近接場光のそれぞれの拡がりは、先端部の半径程度となるため、それぞれの先端部の半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光が回折限界以下にまで絞り込まれた効果を奏する。なお、説明の便宜上、各要素の寸法は実際のものとは異なって記載されている。
【0059】
なお、近接場光を効率的に発生させるためには、近接場光発生部8の媒体対向面におけるXY平面内の面積は1μm2以下であることが好ましい。また、近接場光発生部8の媒体対向面における形状は、三角形や五角形などの多角形、或いは、その角部が丸くなったものを採用することができる。
【0060】
また、散乱体STの分布には様々な形態が考えられる。
【0061】
散乱体STの数は複数であって、これらの散乱体STは、近接場光発生部8の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されていることが好ましい。二次元平面内に拡散して配置された散乱体STからの励起光の散乱光は、近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0062】
図7は、二次元平面内で分布した複数の散乱体ST1,ST2,ST3,ST4を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0063】
下部クラッドを構成する基板としての絶縁体層1B2上には、下部コア層4a、中部コア層4b、上部コア層4cからなるコア4が形成されており、コア4は上部クラッド層を構成する絶縁体層1B3によって被覆されている。すなわち、コア4の周囲はクラッドによって囲まれている。絶縁体層1B3内には、主磁極6Aと副磁極(補助磁極)6Bが埋め込まれている。なお、これらの磁極構造は模式的に示されているものである。絶縁体層1B3内には、情報書き込み用のコイル5も埋め込まれており、コイル5内部で発生した磁束が主磁極6A内を通るようになっている。
【0064】
媒体対向面上には近接場光発生部8が露出しているが、これは必ずしも露出している必要はない。
【0065】
近接場光発生部8の各断面形状は台形であり、絶縁体層1B2側の辺の寸法が長く設定されている。近接場光発生部8及び散乱体ST1,ST2,ST3,ST4は、中部コア層4b内に形成され、これらは同一平面内に位置している。散乱体ST1,ST2,ST3,ST4は、近接場光発生部8の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されている。
【0066】
次に、図8〜図10を用いて、図7に示した構造の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0067】
図8〜図10は、製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【0068】
まず、基板としての絶縁体層1B2上に、スパッタ法などを用いて下部コア層4aを形成し、次に、金属又は半導体からなる材料層STFを下部コア層4a上に形成する(図8(A)。例えば、材料層STFはAuからなる。金属としては、CuやAgを用いることもでき、半導体としてはSi、Ge、GaAsなどを用いることができる。
【0069】
しかる後、材料層STFをパターニングして、媒体対向面Sから垂直に延びるラインパターン8(説明の便宜上、近接場光発生部8と同一の符号を用いて示す)と、ラインパターン8からトラック幅方向に離隔した所定位置に散乱体パターン(散乱体)ST1,ST2,ST3,ST4を形成する(図8(B)、図8(C))。
【0070】
すなわち、材料層STF上に2層のレジストRE1,RE2を塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、パターニングを施し、ラインパターンレジストRE1(X)、RE2(X)と、散乱体パターンレジスト(長方形)RE1(1〜4)、RE2(2〜4)を材料層STFに残留させる(図8(B))。これらのレジストをマスクとして、材料層STFをArガスによるミリング又は反応性イオンエッチング(RIE)法を用いてドライエッチングすることで、各レジストの直下にラインパターン8及び散乱体パターンST1,ST2,ST3,ST4を形成する(図8(C))。
【0071】
なお、下方のレジストRE1のエッチング液に対する溶解度は、上方のレジストRE2の溶解度よりも高く、現像時にレジストRE1がレジストRE2よりも多く侵食され、2層のレジストの下部が括れることとなる。このような2層のレジストは剥離が容易という利点がある。
【0072】
次に、各レジストを残した状態で、下部コア層4a上に中部コア層4bをスパッタ法などで堆積し、ラインパターン8及び散乱体パターンST1,ST2,ST3,ST4の側面に中部コア層4bを接触させる(図9(A))。しかる後、これらのレジストはアセトン等の有機溶剤を用いて除去される。
【0073】
次に、ラインパターン8に沿って媒体対向面S側に向かって切り込まれたスリットパターンSLTを有するレジストRE3(マスク)を中部コア層4b上に形成する(図9(B))。適当なレジストを中部コア層4b上に塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、レジストRE3には、スリットパターンSLTがパターニングされる。
【0074】
このレジストRE3をマスクとして、中部コア層4bをイオンミリング又はRIE法で下部コア層4aが露出するまでエッチングし、露出した下部コア層4a上に新たな中部コア層4b’を形成する(図9(C))。必要に応じて露出表面は化学機械研磨(CMP)する。すわなち、ここでは、レジストRE3からなるマスクを介して、露出した中部コア層4b及びラインパターン8をエッチングしている。
【0075】
更に、中部コア層4b,4b’上に、スパッタ法などで上部コア層4cを形成する(図10(A))。この工程により、散乱体ST1〜ST4は、コア4内に完全に埋め込まれる。次に、コア4の周囲をミリングやRIE法を用いてエッチングし、絶縁層1B2の表面を露出させる(図10(B))。
【0076】
次に、コア4の露出表面上にクラッドとなる絶縁体層1B3を堆積し、しかる後、ラインパターン8を構成していた材料が残留するように、媒体対向面Sを、新たな媒体対向面となる点線LPの位置までラッピングする(図10(C))。
【0077】
この構造では、同一の材料層STFをパターニングすることで、中部コア層4b内に、ラインパターン8の他、散乱体ST1〜ST4のパターンも形成している。散乱体ST1〜ST4の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部8において重ね合わせられるように設定される。
【0078】
媒体対向面Sから垂直に延びたラインパターン8の長さは、図9(B)、(C)において示したように、スリットパターンSLTを有するレジストRE3からなるマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができる。図10(C)に示したラッピング後に残留したラインパターン8の構成材料は、図7に示した近接場光発生部8を構成する。したがって、ラッピング時に残留する近接場光発生部8の位置は、予め形成されている散乱体ST1〜ST4の位置に対して精密に決定されることとなる。したがって、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0079】
しかる後、主磁極及び副磁極を従来のように製造し、図4に示したように、発光素子3を搭載した光源ユニット2をスライダー1に貼りあわせると、熱アシスト磁気ヘッドが完成する。
【0080】
上述のように、3層のコア層4a,4b.4cを用いれば、任意の位置に近接場光発生部8と散乱体STを作製することができることが示された。以下では、これらの配置の変形例について説明する。
【0081】
図11は、三次元空間内で分布した複数の散乱体ST11〜ST18を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0082】
このように散乱体STの数は複数であって、これらの散乱体ST11〜ST18は、近接場光発生部8の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されている。すなわち、三次元空間内において散乱体ST11〜ST18が拡散して配置されている場合には、三次元空間内を伝播する励起光の散乱光を、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。
【0083】
なお、同図では、3層のコア層4a,4b,4cにそれぞれ下付文字で基板側からの順番を付している。中部コア層4b1内には散乱体ST11,ST12が形成されており、中部コア層4b2内には散乱体ST13,ST18が形成されており、中部コア層4b3内には近接場光発生部8が形成されており、中部コア層4b4内には散乱体ST14,ST17が形成されており、中部コア層4b5内には散乱体ST15,ST16が形成されている。これらの散乱体ST11〜ST18の媒体対向面Sからの距離は等しく、媒体対向面Sからみた散乱体ST11〜ST18は、近接場光発生部8を中心とする円弧上に配置されている。
【0084】
図12は、三次元空間内で分布した複数の散乱体ST21〜ST24を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0085】
散乱体ST21〜ST24は、近接場光発生部8の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されている。すなわち、三次元空間内において散乱体ST21〜ST24が拡散して配置されている場合には、三次元空間内を伝播する励起光の散乱光を、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。
【0086】
なお、同図では、3層のコア層4a,4b,4cにそれぞれ下付文字で基板側からの順番を付している。中部コア層4b2内には散乱体ST21,ST22が形成されており、中部コア層4b3内には近接場光発生部8が形成されており、中部コア層4b4内には散乱体ST23,ST24が形成されている。これらの散乱体ST21〜ST24の媒体対向面Sからの距離は等しく、媒体対向面Sからみた散乱体ST21〜ST24は、近接場光発生部8を重心とする長方形の角部に配置されている。
【0087】
なお、第1段目のコア層4a1,4b1,4c1、第5段目のコア層4a5,4b5,4c5は説明の便宜上複数の層として記載しているが、これらは単一の層であってもよく、また、無くてもよい。すなわち、散乱体が層内に形成されていない場合にはコア層は不要である。以下、同様に複数のコア層が記載されるが、これらは勿論かかる規則に従って省略することができる。
【0088】
図13は、1つの散乱体ST31を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0089】
この場合においても、散乱体ST31によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。
【0090】
本例では、中部コア層4b5内に散乱体ST31が形成されており、散乱体ST31は媒体対向面Sからの離隔しており、媒体対向面Sからみた散乱体ST31は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)に位置している。
【0091】
図14は、1つの散乱体ST41を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0092】
本例の散乱体ST41は、図13に示した散乱体ST31のコア光軸に沿った長さ(Z方向長)を長くしたものであり、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST41によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST41は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)に位置している。
【0093】
図15は、複数の散乱体ST51,ST52を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0094】
本例の散乱体ST51,ST52のZ方向長は近接場光発生部8のZ方向長よりも長く、散乱体ST51,ST52の先端は、媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST51,ST521によって散乱される散乱光同士、或いは散乱光と散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。なお、これらの散乱体ST51〜ST52の媒体対向面Sからの最大離隔距離は等しく、媒体対向面Sからみた散乱体ST51,ST52は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)位置からY軸方向に離隔した位置に配置されている。
【0095】
図16は、1つの散乱体ST61を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0096】
本例の散乱体ST61は、図14に示した散乱体ST41を下方の中部コア層4b1内に移動させたものであり、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST61によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST61は、近接場光発生部8の直下(X軸上:図6参照)に位置している。
【0097】
図17は、1つの散乱体ST71を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0098】
基板となる絶縁体層1B2上には、コア層4a,4b,4cが積層され、その上にコア材料からなるスペーサ層SPを介して、コア層4d,4eが積層されている。近接場光発生部8は、コア層4b内に埋設され、散乱体ST71はコア層4d内に埋設されている。散乱体ST71のZ方向の寸法(媒体対向面Sに垂直な方向の長さは、近接場光発生素子8のZ方向長よりも長く、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST71によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST71は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)に位置している。
【0099】
なお、散乱体ST71の媒体対向面Sから見た形状は台形であって、基板に近い辺の方が遠い辺よりも短く設定されている。この散乱体ST71は溝内に散乱用の材料を埋め込んで形成する。
【0100】
図18は、複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0101】
基板となる絶縁体層1B2上には、コア層4a,4b,4cが積層され、その上にコア材料からなるスペーサ層SPを介して、コア層4d,4eが積層されている。近接場光発生部8は、コア層4b内に埋設され、散乱体ST81、ST82はコア層4d内に埋設されている。散乱体ST81、ST82のZ方向の寸法(媒体対向面Sに垂直な方向の長さは、近接場光発生部8のZ方向長よりも長く、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST81、ST82によって散乱される励起光の散乱光同士、或いは、散乱光と散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST61は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)からY軸方向に離隔した位置に配置されている。
【0102】
なお、散乱体ST81、ST82の媒体対向面Sから見た形状は台形であって、基板に近い辺の方が遠い辺よりも短く設定されている。各散乱体ST81、ST82は溝内に散乱用の材料を埋め込んで形成する。
【0103】
図19は、複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0104】
これは図18に示したものからコア層4c、スペーサ層SPを抜いたものであり、その他の構成は同一である。このような構造においても、散乱体ST81、ST82によって散乱される励起光の散乱光同士、或いは、散乱光と散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0105】
次に、図20〜図23を用いて、図19に示した構造の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0106】
図20〜図23は、製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【0107】
まず、基板としての絶縁体層1B2上に、スパッタ法などを用いて下部コア層4aを形成し、次に、金属又は半導体からなる材料層STFを下部コア層4a上に形成する(図20(A)。例えば、材料層STFはAuからなる。
【0108】
しかる後、材料層STFをパターニングして、媒体対向面Sから垂直に延びるラインパターン8(説明の便宜上、近接場光発生部8と同一の符号を用いて示す)を形成する(図20(B)、図20(C))。
【0109】
すなわち、材料層STF上に2層のレジストRE1,RE2を塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、パターニングを施し、ラインパターンレジストRE1、RE2を材料層STFに残留させる(図20(B))。このレジストをマスクとして、材料層STFをArガスによるミリング又は反応性イオンエッチング(RIE)法を用いてドライエッチングすることで、レジストの直下にラインパターン8を形成する(図20(C))。
【0110】
次に、レジストを残した状態で、下部コア層4a上に中部コア層4bをスパッタ法などで堆積し、ラインパターン8の側面に中部コア層4bを接触させる(図21(A))。しかる後、これらのレジストはアセトン等の有機溶剤を用いて除去される。
【0111】
次に、ラインパターン8に沿って媒体対向面S側に向かって切り込まれたスリットパターンSLTを有するレジストRE3(マスク)を中部コア層4b上に形成する(図21(B))。適当なレジストを中部コア層4b上に塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、レジストRE3には、スリットパターンSLTがパターニングされている。
【0112】
このレジストRE3をマスクとして、中部コア層4bをイオンミリング又はRIE法で下部コア層4aが露出するまでエッチングし、露出した下部コア層4a上に新たな中部コア層4b’を形成する(図21(C))。必要に応じて露出表面は化学機械研磨(CMP)する。すわなち、ここでは、レジストRE3からなるマスクを介して、露出した中部コア層4b及びラインパターン8をエッチングしている。
【0113】
更に、中部コア層4b,4b’上に、スパッタ法などで上部コア層4dを形成する(図22(A))。この工程により、ラインパターン8は、コア4内に完全に埋め込まれる。
【0114】
次に、上部コア層4d上にレジストRE10を塗布し、これに所定のパターンを露光し、現像処理することで、媒体対向面Sから垂直に延びた2つのスリット開口GV1,GV2を有するパターンを形成する(図22(B))。このレジストRE10をマスクとして、上部コア層4dの所定位置をエッチングする。すなわち、スリット開口GV1,GV2の直下の領域の上部コア層4dをエッチングする。このエッチングされた領域内には、散乱体ST81,ST82が埋め込まれる(図22(C))。すなわち、レジストRE10を介して散乱体用の金属又は半導体材料をスリット開口GV1,GV2内に堆積し、レジストRE10をアセトン等の有機溶剤で剥離する。このときの露出表面は必要に応じて機械化学研磨し、平坦化することができる。なお、レジストRE10の剥離後に散乱体用の材料をエッチングされた領域内に堆積し、しかる後、上部コア層4dが露出するまで化学機械研磨を行うこともできる。
【0115】
次に、コア4の周囲をミリングやRIE法を用いてエッチングし、絶縁体層1B2の表面を露出させる(図23(A))。しかる後、コア4及び絶縁体層1B2の露出表面上にクラッドとなる絶縁体層1B3を堆積する(図23(B))。しかる後、ラインパターン8を構成していた材料が残留するように、媒体対向面Sを、新たな媒体対向面となる点線LPの位置までラッピングする(図23(C))。
【0116】
この構造では、中部コア層4b内にラインパターン8が形成され、上部コア層4d内に、散乱体ST81,ST82が形成されている。散乱体ST81,ST82の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部8において重ね合わせられるように設定される。
【0117】
この製造方法の場合も、媒体対向面Sから垂直に延びたラインパターン8の長さは、図21(B)に示したスリットパターンSLTを有するマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができ、したがって、上述のように、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0118】
しかる後、主磁極及び副磁極を従来のように製造し、図4に示したように、発光素子3を搭載した光源ユニット2をスライダー1に貼りあわせると、熱アシスト磁気ヘッドが完成する。なお、上述のRIE法に用いるエッチングガスとしてはCl2+BCl3を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【図2】HGA17の斜視図である。
【図3】図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【図4】図3に示した熱アシスト磁気ヘッドのIV−IV矢印断面図である。
【図5】熱アシスト磁気ヘッドの電気的接続を示す図である。
【図6】近接場光発生部8と、散乱体STとの位置関係を示す図である。
【図7】二次元平面内で分布した複数の散乱体ST1,ST2,ST3,ST4を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図8】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図9】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図10】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図11】三次元空間内で分布した複数の散乱体ST11〜ST18を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図12】三次元空間内で分布した複数の散乱体ST21〜ST24を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図13】1つの散乱体ST31を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図14】1つの散乱体ST41を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図15】複数の散乱体ST51,ST52を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図16】1つの散乱体ST61を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図17】1つの散乱体ST71を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図18】複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図19】複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図20】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図21】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図22】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図23】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【符号の説明】
【0120】
4・・・コア、6A・・・主磁極、ST・・・散乱体、8・・・近接場光発生部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的に近接場光を発生させる構造を有する熱アシスト磁気ヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KUV/kBTで与えられる。ここで、KUは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kBはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKUV/kBTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKUを大きくすることが考えられるが、このKUの増加は、記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、KUの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
特許文献1は、記録再生装置に固体イマージョンレンズを用いたヘッドを利用し、光ディスクに超微細な光ビームスポットで超微細な磁区信号を記録する技術を開示している。特許文献2は、金属膜内に周期的な微細構造を有し発生した表面プラズモンを一点に集束させる光ヘッドを開示している。特許文献3は、光導波路を用いて光を曲げて近接場光を発生させる技術を開示している。特許文献4及び特許文献5には、媒体対向面に導電性の板状の近接場光発生部を配置し、これに対して媒体側とは反対の側から光を照射することにより近接場光を発生させる熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。近接場光発生部の一端には尖った先端部が形成されており、近接場光は主としてこの先端部から放射される。
【特許文献1】特開平10−162444号公報
【特許文献2】特開2005−025868号公報
【特許文献3】特開2006−331508号公報
【特許文献4】特開2001−255254号公報
【特許文献5】特開2003−114184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の構造ではレーザ光などの光を近接場光発生部に集中させることができず、その他の構造でも、特に特許文献2に記載の構造においても、レーザ光等の励起用の光が金属膜内において吸収されるため、効率的に近接場光を発生することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、効率的に近接場光を発生させる構造を有する熱アシスト磁気ヘッド、及び、かかる熱アシスト磁気ヘッドを高精度に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドにおいて、媒体対向面に向けて延びた主磁極と、媒体対向面を光出射面として有するコアと、光出射面の主磁極の隣に設けられた近接場光発生部と、コア内を通る入射光の進行経路上に設けられ、コア内に埋設された金属又は半導体からなる散乱体とを備え、近接場光発生部と散乱体との間の距離R、近接場光発生部への散乱体からの散乱光の入射角θ、及び、入射光の波長λは、自然数をnとして、R(1−cosθ)=nλ×(100%±10%)を満たすことを特徴とする。
【0010】
かかる条件を満たす場合、コア内を進行するレーザ光等の励起光と、散乱体によって散乱された散乱光が近接場光発生部において、同位相で重畳させるため、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。高強度の励起光の入射によって近接場光発生部においては、近接場光が発生し、磁気記録媒体の磁気記録領域が加熱される。近接場光発生部の隣には主磁極が位置しているため、近接場光によって加熱され保持力が低下した磁気記録領域に、主磁極から延びる磁束を与えることができ、したがって、高密度に記録を行うことができる。
【0011】
また、散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、近接場光発生部の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されていることが好ましい。二次元平面内に拡散して配置された散乱体からの励起光の散乱光は、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。
【0012】
また、散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、近接場光発生部の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されていることが好ましい。すなわち、三次元空間内において散乱体が拡散して配置されている場合には、三次元空間内を伝播する励起光の散乱光を、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部に入射する光の強度が更に高くなる。
【0013】
本発明に係る第1の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法は、媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、基板上に下部コア層を形成する工程と、下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、材料層をパターニングして、媒体対向面から垂直に延びるラインパターンと、ラインパターンから離隔した所定位置に散乱体パターンとを形成する工程と、下部コア層上に中部コア層を堆積し、ラインパターン及び散乱体パターンの側面に中部コア層を接触させる工程と、ラインパターンに沿って媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを中部コア層上に形成する工程と、マスクを介して露出した中部コア層及びラインパターンをエッチングする工程と、中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、ラインパターンを構成していた材料が残留するように媒体対向面をラッピングする工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構造では、同一の材料層をパターニングすることで、中部コア層内に、ラインパターンの他、散乱体のパターンも形成されている。散乱体の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部において重ね合わせられるように設定される。
【0015】
媒体対向面から垂直に延びたラインパターンの長さは、スリットパターンを有するマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができる。ラッピング後に残留したラインパターンの構成材料は、近接場光発生部を構成する。したがって、ラッピング時に残留する近接場光発生部の位置は、予め形成されている散乱体の位置に対して精密に決定されることとなる。したがって、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。
【0016】
本発明に係る第2の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法は、媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、基板上に下部コア層を形成する工程と、下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、材料層をパターニングして媒体対向面から垂直に延びるラインパターンを形成する工程と、下部コア層上に中部コア層を堆積し、ラインパターンの側面に中部コア層を接触させる工程と、ラインパターンに沿って媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを中部コア層上に形成する工程と、マスクを介して露出した中部コア層及びラインパターンをエッチングする工程と、中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、上部コア層の所定位置をエッチングし、エッチングされた領域内に散乱体を埋め込む工程と、ラインパターンを構成していた材料が残留するように媒体対向面をラッピングする工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
この構造では、中部コア層内にラインパターンが形成され、上部コア層内に、散乱体が形成されている。散乱体の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部において重ね合わせられるように設定される。
【0018】
この製造方法の場合も、媒体対向面から垂直に延びたラインパターンの長さは、スリットパターンを有するマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができ、したがって、上述のように、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部に入射する光の強度が高くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱アシスト磁気ヘッドによれば、効率的に近接場光を発生させることができ、その製造方法によれば、高精度に熱アシスト磁気ヘッドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施の形態に係る近接場光発生素子、熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置について説明する。同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【0022】
ハードディスク装置100は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する複数の磁気記録媒体である磁気ディスク10、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12、この熱アシスト磁気ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに後に詳述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードを制御するための記録再生及び発光制御回路(制御回路)13を備えている。
【0023】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM)15によってピボットベアリング軸16を中心にして揺動可能であり、この軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。磁気ディスク10の表面に対向する面が熱アシスト磁気ヘッド21の媒体対向面S(エアベアリング面とも呼ばれる)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
【0024】
図2は、HGA17の斜視図である。同図は、HGA17の媒体対向面Sを上にして示してある。
【0025】
HGA17は、サスペンション20の先端部に、熱アシスト磁気ヘッド21を固着し、さらにその熱アシスト磁気ヘッド21の端子電極に配線部材203の一端を電気的に接続して構成される。サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200上に固着され支持された弾性を有するフレクシャ201と、フレックシャの先端に板ばね状に形成されたタング部204と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203とから主として構成されている。
【0026】
なお、HGA17におけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0027】
図3は、図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【0028】
サスペンション20の先端部に熱アシスト磁気ヘッド21が取り付けられている。熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダー1と光源ユニット2とを貼りあわせてなる。スライダー1は、スライダー基板1AのYZ平面上に形成された磁気ヘッド部1Bを備えている。磁気ヘッド部1Bの−Z方向のXY平面は媒体対向面Sを成している。一方、光源ユニット2は、光源支持基板2AのYZ平面上に絶縁層2Bを備えており、絶縁層2BのYZ平面上に発光素子3が固定されている。
【0029】
磁気ヘッド部1Bは、絶縁体内に埋設された複数の素子を備えている。これらの素子は、電流の供給によって磁界を発生する螺旋状のコイル5と、情報書き込み用のコイル5において発生した磁束を媒体対向面Sまで導くようにコイル中心から延びた主磁極6Aと、媒体対向面S上に露出した磁気感応面を有する磁気抵抗効果素子(MR素子)7と、周囲の絶縁体をクラッドとしてZ軸方向に沿って延びる導波路のコア4である。コア4内には単数又は複数の散乱体STが埋設されている。
【0030】
散乱体STを含み、励起光の進行方向に垂直なコア4の断面(XY平面)への近接場光発生部8の投影位置と、近接場光発生部8との間の距離をRcosθとし(θは散乱光の入射角)、散乱体STと近接場光発生部8との間の距離Rとすると、これらの距離の差が励起光(入射光)の波長λの自然数倍に設定されている。また、各散乱体STからの散乱光の位相は、近接場光発生部8上において、同位相となるように設定されている。なお、散乱体STと近接場光発生部8との間の距離は、これらの間の散乱光の経路の最短距離で与えられるが、近接場光発生部8及び散乱体STの寸法が微小薄膜や微小球などのように小さい場合には、それぞれの重心間距離で与えられるものとしてよい。
【0031】
なお、コア4は屈折率の異なる複数の誘電体層を積層して形成することもでき、この場合、単位厚み当りの平均屈折率が高い方へ、内部を伝播する光が屈折する。なお、コアは全体の平均屈折率がクラッドよりも高屈折率の誘電体層からなり、クラッドはコア全体よりも低屈折率の誘電体層からなる。コアが多層の誘電体層からなる場合、複数の誘電体層の厚みと屈折率は、内部を伝播する光が近接場光発生部に近づくように設定される。すなわち、近接場光発生部に近づくほどコア4内の単位厚み当りの平均屈折率が高くなる。
【0032】
なお、主磁極6Aは媒体対向面S上に露出しているが、主磁極6Aは磁気ディスク10の表面にある記録領域Rに磁界を与えることができる位置であれば、媒体対向面S上に露出している必要はない。また、主磁極6Aの近傍には必要に応じて副磁極が設けられ、主磁極6Aからの磁力線(磁束)MFが記録領域Rを介して副磁極に流れるようにしてもよい(図5参照)。
【0033】
コア4は、発光素子3からの光が入射する光入射面4AをZ軸の正方向のXY平面上に有しており、負方向のXY平面、すなわち媒体対向面S上に光出射面4Bを備えている。発光素子3は、本例では端面発光型のレーザダイオードであり、XY平面に平行な端面から出射されたレーザ光は、光入射面4Aを介してコア4内に入り、光出射面4B上に形成された近接場光発生素子8に照射される。
【0034】
近接場光発生素子8は、入射光に共鳴して近接場光を発生し、この近接場光によって記録領域Rが加熱される。加熱された記録領域Rに主磁極6Aの先端からの磁力線が入ると、記録領域Rに情報が書き込まれる。
【0035】
磁気ヘッド部1BのX軸の負方向のYZ平面上には、複数の電極パッドからなる電極パッド群G1が形成されている。それぞれの電極パッドは、コイル5の両端、MR素子7の上下の電極に接続されている。MR素子7は、磁化の向きが固定された固定層と、周辺の磁界に応じて磁化の向きが偏向するフリー層を積層してなり、フリー層と固定層の磁化の向きの相違に応じて、磁気抵抗が変化する。すなわち、記録領域Rの周囲に発生する磁界に感応して、MR素子7の磁気抵抗が変化し、電極パッド群G1の中の一対の電極パッド間を流れる電流が変化する。なお、フリー層のY軸方向両端にはハードマグネットが配置されている。
【0036】
書き込み時には、電極パッド群G1の中の別の一対の電極パッド間に電流を流し、コイル5の両端間を電流が流れるようにする。なお、磁気記録素子は垂直磁気記録型のものが好ましい。電極パッド群G1内の電極パッドは、サスペンション20上に形成された第2の電極パッド群G2に電気的に接続され、配線部材203を介して外部に接続されている。なお、配線部材203に接続される第2の電極パッド群G2には、発光素子3に駆動電流を供給するための一対の電極パッドも含まれており、この電極パッド間に駆動電流を流すことで、発光素子3は発光し、励起光としてのレーザ光が出射される。
【0037】
なお、コア4の形状としては様々ものが挙げられるが、本例ではZ軸に沿って直線的に延びている。なお、説明の明確化のため、コア4は発光素子3からの光LB(図4参照)の光路と同一符号で示している。
【0038】
スライダー基板1A及び光源支持基板2Aは、例えばアルティック(Al2O3−TiC)から構成されている。これらの基板1A,2Aに熱伝導性が高い基板を使用した場合には、基板が放熱機能を有することになる。光源支持基板2AのZ軸の正方向側のXY面は、サスペンション20の裏面に貼り付けられている。
【0039】
磁気ヘッド部1BはMR素子7、クラッド、コア4、コイル5及び主磁極6AをX軸に沿って積層してなるが、この積層方向はトラック内の記録領域Rの配列方向に沿っており、トラック幅はY軸に平行である。
【0040】
図4は、図3に示した熱アシスト磁気ヘッドのIV−IV矢印断面図である。
【0041】
絶縁層2B上には、発光素子3が接着・固定されており、発光素子3から−Z方向に出射されたエネルギー線がコア4の光入射面4Aを介してコア4の内部に入射し、コア4の光出射面4Bに設けられた近接場光発生素子8に照射される。
【0042】
近接場光発生素子8の隣には主磁極6Aの先端が位置している。主磁極6Aは、磁気ヨークとしての図示しない磁性材料層に物理的に連続し、これは更に、副磁極を構成する磁性材料層6Bに物理的に連続している。なお、クラッドとしての絶縁体層1B2は、コア4の周囲を囲んでいる。
【0043】
コア4上に絶縁材料からなるクラッドとしてのオーバーコート層1B3が設けられている。絶縁体層1B2と基板1Aとの間には下部絶縁体層1B1が介在している。下部絶縁体層1B1内には、MR素子7が埋設されている。MR素子7は、上部シールド電極7a、下部シールド電極7c、及び、上部シールド電極7aと下部シールド電極7cとの間に介在するMR素子層7bからなる。MR素子層7bは、フリー層及び固定層をトンネル障壁層を介して積層してなる。本例の絶縁体層1B1,1B2,1B3は、低屈折率のAl2O3からなり、コア4は高屈折率のタンタル酸化物(TaOX)からなる。磁極6A,6Bの材料はNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。
【0044】
図5は、熱アシスト磁気ヘッドの電気的接続を示す図である。
【0045】
発光素子3、コイル5、MR素子7の両端は、それぞれ配線部材203に接続されている。配線部材203を介して発光素子3及びコイル5に通電が行われ、MR素子7からの出力は配線部材203を介して読み出される。
【0046】
発光素子3に通電を行うと、レーザ光などの励起光LBが、近接場光発生素子8に照射され、これに近接する磁気ディスク10の記録領域Rが加熱される。磁気ディスク10は、図の矢印ARの方向に移動するので、加熱の直後、主磁極6Aの先端が加熱された記録領域R上に位置する。このとき、コイル5に通電すると、コイル5を発生した磁束が主磁極6Aの先端に至り、主磁極6Aの先端から出る磁力線MFが磁気ディスク10を通って、副磁極6Bに帰還する。したがって、磁気ディスク10の記録領域R内に情報が書き込まれる。
【0047】
このように、熱アシスト磁気ヘッドは、近接場光発生部8の隣にレーザ光などの励起光を照射する発光素子3を更に備えており、励起光LBの照射により近接場光発生部8において十分な近接場光を発生させることができる。
【0048】
情報の書き込まれた記録領域RがMR素子7に対向した場合には、記録領域Rからの磁界に感応してMR素子7内のフリー層の磁化の向きが変化し、MR素子7の磁気抵抗が変化する。したがって、記録領域R内に書き込まれた情報を読み出すことができる。
【0049】
図6は、近接場光発生部8と、散乱体STとの位置関係を示す図である。
【0050】
近接場光発生部(プラズモン・プローブ)8は、微小金属片からなり、本例では三角形の薄膜が図示されている。近接場光発生部8は、XY平面に平行な光出射面(媒体対向面)に設けられており、コア内を伝播する励起光LBはZ軸の負方向に向かって進行してくる。コア内の原点Oを通るXY断面内において、複数の各散乱体ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6が分布して配置されているとする。
【0051】
各散乱体ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6には、Z軸に対して平行に励起光LBが入射する。各散乱体ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6からの散乱光の近接場光発生部8への入射角をθ(=θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6)とし、各散乱体ST(=ST1,ST2、ST3、ST4、ST5、ST6)と近接場光発生部8との間の距離をR(=R1、R2、R3、R4、R5、R6)とする。原点Oから近接場光発生部8までの距離は、Rcosθで与えられる。したがって、原点Oから近接場光発生部8までの距離Rcosθと、各散乱体から近接場光発生部8までの距離Rの差Δは、以下の式(Δ=R−Rcosθ)で与えられる。この光路差Δが励起光LBの波長λの自然数倍である場合には、近接場光発生部8に照射される励起光強度が高くなる。波長λとしては、赤外線の他、青色発光や紫外線を用いることもできる。
【0052】
すなわち、自然数をn(=1,2,3・・・)として、光路差Δは以下の式を満足する。
【0053】
Δ=R(1−cosθ)=nλ×(100%±α%)
【0054】
更に、各距離R1、R2、R3、R4、R5、R6のうちのいずれか2つの差分δ(例:δ=R1−R3)も、δ=nλ×(100%±α%)を満たすと、近接場光発生部8に照射される励起光強度が高くなる。
【0055】
なお、αは誤差であり、本例では10%に設定される。
【0056】
以上、説明したように、上述の実施の形態に係る熱アシスト磁気ヘッドは、媒体対向面Sを有する熱アシスト磁気ヘッドにおいて、媒体対向面Sに向けて延びた主磁極6Aと、媒体対向面Sを光出射面4Bとして有するコア4と、光出射面4Bの主磁極6Aの隣に設けられた近接場光発生部8と、コア4内を通る入射光LBの進行経路上に設けられ、コア4内に埋設された金属又は半導体からなる散乱体STとを備え、近接場光発生部8と散乱体STとの間の距離R、近接場光発生部8への散乱体STからの散乱光の入射角θ、及び、入射光の波長λは、自然数をnとして、R(1−cosθ)=nλ×(100%±10%)を満たすことを特徴とする。
【0057】
かかる条件を満たす場合、コア4内を進行するレーザ光等の励起光LBと、散乱体STによって散乱された散乱光が近接場光発生部8において、同位相で重畳させるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。高強度の励起光LBの入射によって近接場光発生部8においては、強い近接場光が発生し、磁気記録媒体10の磁気記録領域が加熱される。近接場光発生部8の隣には主磁極6Aが位置しているため、近接場光によって加熱され保持力が低下した磁気記録領域Rに、主磁極6Aから延びる磁束を与えることができ、したがって、高密度に記録を行うことができる。なお、磁極の位置としては様々なものを適用することができる。
【0058】
なお、励起光LBがレーザ光である場合、そのファーフィールドパターンの短軸径はY軸方向に一致しており、これはTE偏波の向きとなる。また、Auなどの金属体からなる近接場光発生部8に光を照射すると、近接場光発生部8を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その先端部において電界の集中が生じる。近接場光のそれぞれの拡がりは、先端部の半径程度となるため、それぞれの先端部の半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光が回折限界以下にまで絞り込まれた効果を奏する。なお、説明の便宜上、各要素の寸法は実際のものとは異なって記載されている。
【0059】
なお、近接場光を効率的に発生させるためには、近接場光発生部8の媒体対向面におけるXY平面内の面積は1μm2以下であることが好ましい。また、近接場光発生部8の媒体対向面における形状は、三角形や五角形などの多角形、或いは、その角部が丸くなったものを採用することができる。
【0060】
また、散乱体STの分布には様々な形態が考えられる。
【0061】
散乱体STの数は複数であって、これらの散乱体STは、近接場光発生部8の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されていることが好ましい。二次元平面内に拡散して配置された散乱体STからの励起光の散乱光は、近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0062】
図7は、二次元平面内で分布した複数の散乱体ST1,ST2,ST3,ST4を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0063】
下部クラッドを構成する基板としての絶縁体層1B2上には、下部コア層4a、中部コア層4b、上部コア層4cからなるコア4が形成されており、コア4は上部クラッド層を構成する絶縁体層1B3によって被覆されている。すなわち、コア4の周囲はクラッドによって囲まれている。絶縁体層1B3内には、主磁極6Aと副磁極(補助磁極)6Bが埋め込まれている。なお、これらの磁極構造は模式的に示されているものである。絶縁体層1B3内には、情報書き込み用のコイル5も埋め込まれており、コイル5内部で発生した磁束が主磁極6A内を通るようになっている。
【0064】
媒体対向面上には近接場光発生部8が露出しているが、これは必ずしも露出している必要はない。
【0065】
近接場光発生部8の各断面形状は台形であり、絶縁体層1B2側の辺の寸法が長く設定されている。近接場光発生部8及び散乱体ST1,ST2,ST3,ST4は、中部コア層4b内に形成され、これらは同一平面内に位置している。散乱体ST1,ST2,ST3,ST4は、近接場光発生部8の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されている。
【0066】
次に、図8〜図10を用いて、図7に示した構造の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0067】
図8〜図10は、製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【0068】
まず、基板としての絶縁体層1B2上に、スパッタ法などを用いて下部コア層4aを形成し、次に、金属又は半導体からなる材料層STFを下部コア層4a上に形成する(図8(A)。例えば、材料層STFはAuからなる。金属としては、CuやAgを用いることもでき、半導体としてはSi、Ge、GaAsなどを用いることができる。
【0069】
しかる後、材料層STFをパターニングして、媒体対向面Sから垂直に延びるラインパターン8(説明の便宜上、近接場光発生部8と同一の符号を用いて示す)と、ラインパターン8からトラック幅方向に離隔した所定位置に散乱体パターン(散乱体)ST1,ST2,ST3,ST4を形成する(図8(B)、図8(C))。
【0070】
すなわち、材料層STF上に2層のレジストRE1,RE2を塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、パターニングを施し、ラインパターンレジストRE1(X)、RE2(X)と、散乱体パターンレジスト(長方形)RE1(1〜4)、RE2(2〜4)を材料層STFに残留させる(図8(B))。これらのレジストをマスクとして、材料層STFをArガスによるミリング又は反応性イオンエッチング(RIE)法を用いてドライエッチングすることで、各レジストの直下にラインパターン8及び散乱体パターンST1,ST2,ST3,ST4を形成する(図8(C))。
【0071】
なお、下方のレジストRE1のエッチング液に対する溶解度は、上方のレジストRE2の溶解度よりも高く、現像時にレジストRE1がレジストRE2よりも多く侵食され、2層のレジストの下部が括れることとなる。このような2層のレジストは剥離が容易という利点がある。
【0072】
次に、各レジストを残した状態で、下部コア層4a上に中部コア層4bをスパッタ法などで堆積し、ラインパターン8及び散乱体パターンST1,ST2,ST3,ST4の側面に中部コア層4bを接触させる(図9(A))。しかる後、これらのレジストはアセトン等の有機溶剤を用いて除去される。
【0073】
次に、ラインパターン8に沿って媒体対向面S側に向かって切り込まれたスリットパターンSLTを有するレジストRE3(マスク)を中部コア層4b上に形成する(図9(B))。適当なレジストを中部コア層4b上に塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、レジストRE3には、スリットパターンSLTがパターニングされる。
【0074】
このレジストRE3をマスクとして、中部コア層4bをイオンミリング又はRIE法で下部コア層4aが露出するまでエッチングし、露出した下部コア層4a上に新たな中部コア層4b’を形成する(図9(C))。必要に応じて露出表面は化学機械研磨(CMP)する。すわなち、ここでは、レジストRE3からなるマスクを介して、露出した中部コア層4b及びラインパターン8をエッチングしている。
【0075】
更に、中部コア層4b,4b’上に、スパッタ法などで上部コア層4cを形成する(図10(A))。この工程により、散乱体ST1〜ST4は、コア4内に完全に埋め込まれる。次に、コア4の周囲をミリングやRIE法を用いてエッチングし、絶縁層1B2の表面を露出させる(図10(B))。
【0076】
次に、コア4の露出表面上にクラッドとなる絶縁体層1B3を堆積し、しかる後、ラインパターン8を構成していた材料が残留するように、媒体対向面Sを、新たな媒体対向面となる点線LPの位置までラッピングする(図10(C))。
【0077】
この構造では、同一の材料層STFをパターニングすることで、中部コア層4b内に、ラインパターン8の他、散乱体ST1〜ST4のパターンも形成している。散乱体ST1〜ST4の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部8において重ね合わせられるように設定される。
【0078】
媒体対向面Sから垂直に延びたラインパターン8の長さは、図9(B)、(C)において示したように、スリットパターンSLTを有するレジストRE3からなるマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができる。図10(C)に示したラッピング後に残留したラインパターン8の構成材料は、図7に示した近接場光発生部8を構成する。したがって、ラッピング時に残留する近接場光発生部8の位置は、予め形成されている散乱体ST1〜ST4の位置に対して精密に決定されることとなる。したがって、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0079】
しかる後、主磁極及び副磁極を従来のように製造し、図4に示したように、発光素子3を搭載した光源ユニット2をスライダー1に貼りあわせると、熱アシスト磁気ヘッドが完成する。
【0080】
上述のように、3層のコア層4a,4b.4cを用いれば、任意の位置に近接場光発生部8と散乱体STを作製することができることが示された。以下では、これらの配置の変形例について説明する。
【0081】
図11は、三次元空間内で分布した複数の散乱体ST11〜ST18を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0082】
このように散乱体STの数は複数であって、これらの散乱体ST11〜ST18は、近接場光発生部8の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されている。すなわち、三次元空間内において散乱体ST11〜ST18が拡散して配置されている場合には、三次元空間内を伝播する励起光の散乱光を、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。
【0083】
なお、同図では、3層のコア層4a,4b,4cにそれぞれ下付文字で基板側からの順番を付している。中部コア層4b1内には散乱体ST11,ST12が形成されており、中部コア層4b2内には散乱体ST13,ST18が形成されており、中部コア層4b3内には近接場光発生部8が形成されており、中部コア層4b4内には散乱体ST14,ST17が形成されており、中部コア層4b5内には散乱体ST15,ST16が形成されている。これらの散乱体ST11〜ST18の媒体対向面Sからの距離は等しく、媒体対向面Sからみた散乱体ST11〜ST18は、近接場光発生部8を中心とする円弧上に配置されている。
【0084】
図12は、三次元空間内で分布した複数の散乱体ST21〜ST24を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0085】
散乱体ST21〜ST24は、近接場光発生部8の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されている。すなわち、三次元空間内において散乱体ST21〜ST24が拡散して配置されている場合には、三次元空間内を伝播する励起光の散乱光を、近接場光発生部において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。
【0086】
なお、同図では、3層のコア層4a,4b,4cにそれぞれ下付文字で基板側からの順番を付している。中部コア層4b2内には散乱体ST21,ST22が形成されており、中部コア層4b3内には近接場光発生部8が形成されており、中部コア層4b4内には散乱体ST23,ST24が形成されている。これらの散乱体ST21〜ST24の媒体対向面Sからの距離は等しく、媒体対向面Sからみた散乱体ST21〜ST24は、近接場光発生部8を重心とする長方形の角部に配置されている。
【0087】
なお、第1段目のコア層4a1,4b1,4c1、第5段目のコア層4a5,4b5,4c5は説明の便宜上複数の層として記載しているが、これらは単一の層であってもよく、また、無くてもよい。すなわち、散乱体が層内に形成されていない場合にはコア層は不要である。以下、同様に複数のコア層が記載されるが、これらは勿論かかる規則に従って省略することができる。
【0088】
図13は、1つの散乱体ST31を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0089】
この場合においても、散乱体ST31によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。
【0090】
本例では、中部コア層4b5内に散乱体ST31が形成されており、散乱体ST31は媒体対向面Sからの離隔しており、媒体対向面Sからみた散乱体ST31は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)に位置している。
【0091】
図14は、1つの散乱体ST41を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0092】
本例の散乱体ST41は、図13に示した散乱体ST31のコア光軸に沿った長さ(Z方向長)を長くしたものであり、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST41によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST41は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)に位置している。
【0093】
図15は、複数の散乱体ST51,ST52を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0094】
本例の散乱体ST51,ST52のZ方向長は近接場光発生部8のZ方向長よりも長く、散乱体ST51,ST52の先端は、媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST51,ST521によって散乱される散乱光同士、或いは散乱光と散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。なお、これらの散乱体ST51〜ST52の媒体対向面Sからの最大離隔距離は等しく、媒体対向面Sからみた散乱体ST51,ST52は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)位置からY軸方向に離隔した位置に配置されている。
【0095】
図16は、1つの散乱体ST61を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0096】
本例の散乱体ST61は、図14に示した散乱体ST41を下方の中部コア層4b1内に移動させたものであり、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST61によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が更に高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST61は、近接場光発生部8の直下(X軸上:図6参照)に位置している。
【0097】
図17は、1つの散乱体ST71を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0098】
基板となる絶縁体層1B2上には、コア層4a,4b,4cが積層され、その上にコア材料からなるスペーサ層SPを介して、コア層4d,4eが積層されている。近接場光発生部8は、コア層4b内に埋設され、散乱体ST71はコア層4d内に埋設されている。散乱体ST71のZ方向の寸法(媒体対向面Sに垂直な方向の長さは、近接場光発生素子8のZ方向長よりも長く、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST71によって散乱される励起光の散乱光と、散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST71は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)に位置している。
【0099】
なお、散乱体ST71の媒体対向面Sから見た形状は台形であって、基板に近い辺の方が遠い辺よりも短く設定されている。この散乱体ST71は溝内に散乱用の材料を埋め込んで形成する。
【0100】
図18は、複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0101】
基板となる絶縁体層1B2上には、コア層4a,4b,4cが積層され、その上にコア材料からなるスペーサ層SPを介して、コア層4d,4eが積層されている。近接場光発生部8は、コア層4b内に埋設され、散乱体ST81、ST82はコア層4d内に埋設されている。散乱体ST81、ST82のZ方向の寸法(媒体対向面Sに垂直な方向の長さは、近接場光発生部8のZ方向長よりも長く、その先端は媒体対向面Sに到達している。この場合においても、散乱体ST81、ST82によって散乱される励起光の散乱光同士、或いは、散乱光と散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。なお、媒体対向面Sからみた散乱体ST61は、近接場光発生部8の直上(X軸上:図6参照)からY軸方向に離隔した位置に配置されている。
【0102】
なお、散乱体ST81、ST82の媒体対向面Sから見た形状は台形であって、基板に近い辺の方が遠い辺よりも短く設定されている。各散乱体ST81、ST82は溝内に散乱用の材料を埋め込んで形成する。
【0103】
図19は、複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【0104】
これは図18に示したものからコア層4c、スペーサ層SPを抜いたものであり、その他の構成は同一である。このような構造においても、散乱体ST81、ST82によって散乱される励起光の散乱光同士、或いは、散乱光と散乱されなかった励起光とを近接場光発生部8において同位相で重ね合わせられるので、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0105】
次に、図20〜図23を用いて、図19に示した構造の熱アシスト磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0106】
図20〜図23は、製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【0107】
まず、基板としての絶縁体層1B2上に、スパッタ法などを用いて下部コア層4aを形成し、次に、金属又は半導体からなる材料層STFを下部コア層4a上に形成する(図20(A)。例えば、材料層STFはAuからなる。
【0108】
しかる後、材料層STFをパターニングして、媒体対向面Sから垂直に延びるラインパターン8(説明の便宜上、近接場光発生部8と同一の符号を用いて示す)を形成する(図20(B)、図20(C))。
【0109】
すなわち、材料層STF上に2層のレジストRE1,RE2を塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、パターニングを施し、ラインパターンレジストRE1、RE2を材料層STFに残留させる(図20(B))。このレジストをマスクとして、材料層STFをArガスによるミリング又は反応性イオンエッチング(RIE)法を用いてドライエッチングすることで、レジストの直下にラインパターン8を形成する(図20(C))。
【0110】
次に、レジストを残した状態で、下部コア層4a上に中部コア層4bをスパッタ法などで堆積し、ラインパターン8の側面に中部コア層4bを接触させる(図21(A))。しかる後、これらのレジストはアセトン等の有機溶剤を用いて除去される。
【0111】
次に、ラインパターン8に沿って媒体対向面S側に向かって切り込まれたスリットパターンSLTを有するレジストRE3(マスク)を中部コア層4b上に形成する(図21(B))。適当なレジストを中部コア層4b上に塗布し、このレジストに所定のパターンを露光し、現像処理をすることで、レジストRE3には、スリットパターンSLTがパターニングされている。
【0112】
このレジストRE3をマスクとして、中部コア層4bをイオンミリング又はRIE法で下部コア層4aが露出するまでエッチングし、露出した下部コア層4a上に新たな中部コア層4b’を形成する(図21(C))。必要に応じて露出表面は化学機械研磨(CMP)する。すわなち、ここでは、レジストRE3からなるマスクを介して、露出した中部コア層4b及びラインパターン8をエッチングしている。
【0113】
更に、中部コア層4b,4b’上に、スパッタ法などで上部コア層4dを形成する(図22(A))。この工程により、ラインパターン8は、コア4内に完全に埋め込まれる。
【0114】
次に、上部コア層4d上にレジストRE10を塗布し、これに所定のパターンを露光し、現像処理することで、媒体対向面Sから垂直に延びた2つのスリット開口GV1,GV2を有するパターンを形成する(図22(B))。このレジストRE10をマスクとして、上部コア層4dの所定位置をエッチングする。すなわち、スリット開口GV1,GV2の直下の領域の上部コア層4dをエッチングする。このエッチングされた領域内には、散乱体ST81,ST82が埋め込まれる(図22(C))。すなわち、レジストRE10を介して散乱体用の金属又は半導体材料をスリット開口GV1,GV2内に堆積し、レジストRE10をアセトン等の有機溶剤で剥離する。このときの露出表面は必要に応じて機械化学研磨し、平坦化することができる。なお、レジストRE10の剥離後に散乱体用の材料をエッチングされた領域内に堆積し、しかる後、上部コア層4dが露出するまで化学機械研磨を行うこともできる。
【0115】
次に、コア4の周囲をミリングやRIE法を用いてエッチングし、絶縁体層1B2の表面を露出させる(図23(A))。しかる後、コア4及び絶縁体層1B2の露出表面上にクラッドとなる絶縁体層1B3を堆積する(図23(B))。しかる後、ラインパターン8を構成していた材料が残留するように、媒体対向面Sを、新たな媒体対向面となる点線LPの位置までラッピングする(図23(C))。
【0116】
この構造では、中部コア層4b内にラインパターン8が形成され、上部コア層4d内に、散乱体ST81,ST82が形成されている。散乱体ST81,ST82の形成される位置は、上述の如く散乱光が近接場光発生部8において重ね合わせられるように設定される。
【0117】
この製造方法の場合も、媒体対向面Sから垂直に延びたラインパターン8の長さは、図21(B)に示したスリットパターンSLTを有するマスクを介してエッチングする際に、精密に制御することができ、したがって、上述のように、高精度に集光構造を製造することができるため、近接場光発生部8に入射する光の強度が高くなる。
【0118】
しかる後、主磁極及び副磁極を従来のように製造し、図4に示したように、発光素子3を搭載した光源ユニット2をスライダー1に貼りあわせると、熱アシスト磁気ヘッドが完成する。なお、上述のRIE法に用いるエッチングガスとしてはCl2+BCl3を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【図2】HGA17の斜視図である。
【図3】図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【図4】図3に示した熱アシスト磁気ヘッドのIV−IV矢印断面図である。
【図5】熱アシスト磁気ヘッドの電気的接続を示す図である。
【図6】近接場光発生部8と、散乱体STとの位置関係を示す図である。
【図7】二次元平面内で分布した複数の散乱体ST1,ST2,ST3,ST4を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図8】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図9】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図10】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図11】三次元空間内で分布した複数の散乱体ST11〜ST18を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図12】三次元空間内で分布した複数の散乱体ST21〜ST24を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図13】1つの散乱体ST31を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図14】1つの散乱体ST41を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図15】複数の散乱体ST51,ST52を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図16】1つの散乱体ST61を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図17】1つの散乱体ST71を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図18】複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図19】複数の散乱体ST81、ST82を備えた熱アシスト磁気ヘッドを媒体対向面からみた熱アシスト磁気ヘッド主要部の平面図(A)、B−B矢印断面図(B)、C−C矢印断面図(C)である。
【図20】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図21】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図22】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【図23】製造方法を説明するための熱アシスト磁気ヘッド中間体の斜視図である。
【符号の説明】
【0120】
4・・・コア、6A・・・主磁極、ST・・・散乱体、8・・・近接場光発生部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドにおいて、
前記媒体対向面に向けて延びた主磁極と、
前記媒体対向面を光出射面として有するコアと、
前記光出射面の前記主磁極の隣に設けられた近接場光発生部と、
前記コア内を通る入射光の進行経路上に設けられ、前記コア内に埋設された金属又は半導体からなる散乱体と、
を備え、
前記近接場光発生部と前記散乱体との間の距離R、
前記近接場光発生部への前記散乱体からの散乱光の入射角θ、及び、
前記入射光の波長λは、
自然数をnとして、
R(1−cosθ)=nλ×(100%±10%)
を満たすことを特徴とする熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、前記近接場光発生部の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、前記近接場光発生部の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、
基板上に下部コア層を形成する工程と、
前記下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、
前記材料層をパターニングして、前記媒体対向面から垂直に延びるラインパターンと、前記ラインパターンから離隔した所定位置に散乱体パターンとを形成する工程と、
前記下部コア層上に中部コア層を堆積し、前記ラインパターン及び前記散乱体パターンの側面に前記中部コア層を接触させる工程と、
前記ラインパターンに沿って前記媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを前記中部コア層上に形成する工程と、
前記マスクを介して露出した前記中部コア層及び前記ラインパターンをエッチングする工程と、
前記中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、
前記ラインパターンを構成していた材料が残留するように前記媒体対向面をラッピングする工程と、
を備えることを特徴とする熱アシスト磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】
媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、
基板上に下部コア層を形成する工程と、
前記下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、
前記材料層をパターニングして前記媒体対向面から垂直に延びるラインパターンを形成する工程と、
前記下部コア層上に中部コア層を堆積し、前記ラインパターンの側面に前記中部コア層を接触させる工程と、
前記ラインパターンに沿って前記媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを前記中部コア層上に形成する工程と、
前記マスクを介して露出した前記中部コア層及び前記ラインパターンをエッチングする工程と、
前記中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、
前記上部コア層の所定位置をエッチングし、エッチングされた領域内に散乱体を埋め込む工程と、
前記ラインパターンを構成していた材料が残留するように前記媒体対向面をラッピングする工程と、
を備えることを特徴とする熱アシスト磁気ヘッドの製造方法。
【請求項1】
媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドにおいて、
前記媒体対向面に向けて延びた主磁極と、
前記媒体対向面を光出射面として有するコアと、
前記光出射面の前記主磁極の隣に設けられた近接場光発生部と、
前記コア内を通る入射光の進行経路上に設けられ、前記コア内に埋設された金属又は半導体からなる散乱体と、
を備え、
前記近接場光発生部と前記散乱体との間の距離R、
前記近接場光発生部への前記散乱体からの散乱光の入射角θ、及び、
前記入射光の波長λは、
自然数をnとして、
R(1−cosθ)=nλ×(100%±10%)
を満たすことを特徴とする熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、前記近接場光発生部の位置を基点として、二次元平面内で放射状に広がって配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記散乱体の数は複数であって、これらの散乱体は、前記近接場光発生部の位置を基点として、三次元空間内で放射状に広がって配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、
基板上に下部コア層を形成する工程と、
前記下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、
前記材料層をパターニングして、前記媒体対向面から垂直に延びるラインパターンと、前記ラインパターンから離隔した所定位置に散乱体パターンとを形成する工程と、
前記下部コア層上に中部コア層を堆積し、前記ラインパターン及び前記散乱体パターンの側面に前記中部コア層を接触させる工程と、
前記ラインパターンに沿って前記媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを前記中部コア層上に形成する工程と、
前記マスクを介して露出した前記中部コア層及び前記ラインパターンをエッチングする工程と、
前記中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、
前記ラインパターンを構成していた材料が残留するように前記媒体対向面をラッピングする工程と、
を備えることを特徴とする熱アシスト磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】
媒体対向面を有する熱アシスト磁気ヘッドの製造方法において、
基板上に下部コア層を形成する工程と、
前記下部コア層上に金属又は半導体からなる材料層を形成する工程と、
前記材料層をパターニングして前記媒体対向面から垂直に延びるラインパターンを形成する工程と、
前記下部コア層上に中部コア層を堆積し、前記ラインパターンの側面に前記中部コア層を接触させる工程と、
前記ラインパターンに沿って前記媒体対向面側に向かって切り込まれたスリットパターンを有するマスクを前記中部コア層上に形成する工程と、
前記マスクを介して露出した前記中部コア層及び前記ラインパターンをエッチングする工程と、
前記中部コア層上に上部コア層を形成する工程と、
前記上部コア層の所定位置をエッチングし、エッチングされた領域内に散乱体を埋め込む工程と、
前記ラインパターンを構成していた材料が残留するように前記媒体対向面をラッピングする工程と、
を備えることを特徴とする熱アシスト磁気ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−163805(P2009−163805A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341095(P2007−341095)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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