熱アシスト磁気記録装置及び熱アシスト磁気記録方法
【課題】パタン媒体を用いた熱アシスト磁気記録における加熱パワー制御を行う。
【解決手段】記録媒体上に複数設けられた試し書き領域のパタン列に対して加熱パワー強度を連続的に変化させながら試し書きを行い、その再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーとの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定し、最適記録パワーを決定する。
【解決手段】記録媒体上に複数設けられた試し書き領域のパタン列に対して加熱パワー強度を連続的に変化させながら試し書きを行い、その再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーとの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定し、最適記録パワーを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録装置及び熱アシスト磁気記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等に装着されている情報記録システムの1種である磁気ディスク装置は、処理すべき情報量の増大に伴い、記録密度の向上が求められている。磁気ディスク装置の記録密度の向上のため、磁気記録寸法の微小化が進められており、このために、磁気ディスクと磁気ヘッドの距離を狭めること、磁気記録媒体の磁気記録層を構成する磁性粒子の粒径を微細化すること、磁気記録媒体の保磁力(異方性磁界)を増大させること、等が行われている。
【0003】
しかしながら、磁気記録ヘッドの磁界強度の増大に物理的限界があることが、磁気記録密度の向上を制限する要因となっている。高密度記録において、ノイズ低減の観点から、磁気記録媒体の結晶粒径を微細化することが必要であるが、磁性粒子が熱的に不安定になるという問題が生じる。従って、結晶粒径を微細化して更に熱安定性も確保するためには、磁気異方性エネルギーを大きくしなければならない。異方性エネルギーの増加、即ち、異方性磁界(保磁力)の増加は、記録に必要なヘッド磁界強度の増加を必要とする。しかし、記録用ヘッドに使われる磁極材料の飽和磁化の上限、磁気ディスクと磁気ヘッドの距離の狭小化の限界から、今後、高記録密度化に比例して異方性磁界を増大させ、記録ヘッドからの磁界強度を増加させることは困難である。
【0004】
パタン媒体を用いる磁気記録方式(J. Appl. Phys., 76 6673(1994)、特開2003−45004号公報等)は、以上の問題の一つの解決方法として期待されている。この方式は、記録媒体の磁気記録層を記録単位の寸法でパタン化し、パタン内の磁気結合を強化することで、複数の磁性粒子を記録単位とする従来の磁気記録方式に比べ、熱揺らぎに対する耐性を強化するものである。
【0005】
他方で、光記録技術と磁気記録技術を結合した熱アシスト磁気記録技術が提案され、注目を浴びている。ここで用いられている磁気記録再生ヘッドには、媒体を加熱する機構が付加されている。記録時には、印加磁界発生とともに媒体を加熱して、媒体保磁力を低減させる。これにより、従来の磁気ヘッドでは記録磁界強度が不足して記録が困難であった高保磁力の媒体にも記録が容易になる。高密度記録に必要な微小領域の加熱には、近接場光を熱源とする光ヘッドの利用が提案されている(特開2003−45004号公報等)。
【0006】
さらに、熱アシスト磁気記録方式にパタン媒体を組合せる、高密度磁気記録方式も挙げられている(特開2004−35579号公報等)。熱アシスト磁気記録方式においても、複数の磁性粒子からなる記録単位よりも、磁気結合が強化されたひとつのパタンを記録単位とする方が、熱揺らぎに対して耐性が高く、さらなる高密度化に有利である。
【0007】
熱アシスト磁気記録においては、記録温度を制御する機構が必要となる。記録加熱パワーが低く、記録温度が低いと、記録材料の保磁力の低下が十分でなく、磁気記録が行われない。反対に、記録加熱パワーが過剰で記録温度が高いと、温度分布が拡大し、記録位置に隣接する既記録情報を書き換える恐れがある。熱源素子や記録材料の個体差、スライダヘッドに搭載した際の浮上量変動、環境温度の変動などにより記録時の媒体加熱温度が変動するため、記録加熱パワーを加減して、記録時の媒体温度を最適な昇温に制御しなければならない。光源からの光量をホトデテクターで検出して光量を制御し、記録時の媒体加熱温度の変動を抑制する方式が特開2002−133602号公報に記載されている。また、ディスクの内外周の線速度の違いに起因する記録時の媒体加熱温度の変動を制御するため、特定の領域で試行記録を行い、記録データとこれによる再生データとの比較から加熱パワー制御する方式が特開2002−29830号公報に記載されている。
【0008】
【非特許文献1】J. Appl. Phys., 76 6673(1994)
【特許文献1】特開2003−45004号公報
【特許文献2】特開2004−35579号公報
【特許文献3】特開2002−133602号公報
【特許文献4】特開2002−29830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これら上記の加熱パワーの制御方式は、半導体レーザーを加熱源としてそのパワー制御を行うDVD等の光記録ディスクシステムで実用化されているパワー方式と同様であるが、従来の記録媒体の形態である面内に連続的な薄膜記録媒体を想定しており、記録単位がパタン状に形成された記録層を有するパタン媒体に対しては有効ではない。つまり、パタン媒体を用いた磁気記録においては、レーザーの記録パワーに対する記録変調度やジッタの応答が連続媒体とはまったく異なるので、記録温度の変動を抑制し、記録パワーを最適化する指標が新たに必要になる。
【0010】
さらに、パタン媒体に対して記録のパワー制御を行うためには、パタンサイズやその磁気特性のばらつきにも対応しなければならない。このばらつきにより、一定磁界で記録を行う場合、磁化反転磁界の大きなパタンは記録に伴う磁化反転を生ぜず、また、磁化反転磁界の小さいパタンは隣接トラックを記録するヘッドからの漏洩磁界により磁化反転するおそれがある。パタンサイズのばらつきは、パタン媒体の製造プロセスにより生じるため、パタンサイズが縮小するほど、パタン間隔に対するばらつきの比が増大し、この障害が増大する。
【0011】
本発明の目的は、パタン媒体を用いた熱アシスト磁気記録における加熱パワー制御を行い、パタンサイズのばらつきの影響を抑制し、記録密度の向上を可能にする熱アシスト磁気記録装置及び熱アシスト磁気記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の熱アシスト磁気記録装置は、相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配置された磁気記録層を有するパタン媒体を用い、ユーザーデータを記録するための最適加熱パワーの決定を試し書きにより行う。試し書きの領域は記録媒体上に複数設けられ、試し書き領域の記録単位列に対して加熱パワー強度を単調に変化させながら記録磁界を印加して試し書きを行い、それを再生した再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーとの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定し、最適加熱パワーを決定する。
【0013】
また、本発明の熱アシスト磁気記録装置は、相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、セクタのヘッダー部に設けられた試し書き領域に事前に試し書きが行われているパタン媒体を用いる。そして、事前に試し書きが行われている加熱パワー学習領域に新たに試し書きを行い、事前の試し書きの再生信号と新たな試し書きの再生信号とが一致するように光源による加熱パワーを制御することで、事前の試し書き時の加熱条件を再現する。所望のセクタにユーザーデータを記録する時には、そのセクタのヘッダーに事前に行われた試し書きを再生した再生信号をもとに光源の最適加熱パワーを決定する。この場合、ユーザーデータを記録するセクタの試し書き領域に逐次試し書きを行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による磁気ディスクドライブの構造を示す模式図である。磁気ディスクドライブ内部の主要な構成要素は、スピンドルに搭載され回転駆動される磁気ディスク11、キャリッジ12に搭載されボイスコイルモータ13より任意のトラックにアクセスし、磁気ディスク(媒体)上で情報の記録再生を行うスライダ14と磁気ヘッド15、及びデータの入出力から記録再生、アクチュエータの制御を担う制御回路系16である。磁気ディスク11は、相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を有するパタン媒体である。
【0015】
スライダヘッド内部の主要構成素子は、図2に示すように再生素子21、磁気記録素子22、及び微小な記録熱源を発生する近接場光発生素子23と光導入系24である。再生素子21は磁気抵抗効果素子からなり、磁気記録素子22はコイル26に流す電流により記録磁界を発生する単磁極型の磁気記録ヘッド25であって、近接場光発生領域において最大10KOeの垂直方向の磁界を発生する。
【0016】
図3に示すように、半導体レーザー31からなる光源は、キャリッジ12上に配置され、光カプラー33、光ファイバー34、スライダ14上のカプラーレンズ35を通じて、近接場光発生素子23に光が導かれる。近接場光発生素子23はプラズモン共鳴を利用して微小な領域に近接場光を発生させるアンテナ型の金の薄膜素子である。これにより、半値幅50nm以下の空間的な広がりを有する近接場光を発生する。光源の半導体レーザーをスライダ上に装荷することも可能であり、近接場光発生素子への光導入に導波路を用いることも可能である。
【0017】
次に、半導体レーザーからの出力パルス光の振幅である加熱パワーの最適値を、試し書き領域内のパタンへの試し書きにより得る仕組みについて説明する。図4に、記録媒体上に設けた試し書き領域の媒体パタン(記録単位列)と記録波形とを示す。図4(a)は記録磁界振幅、図4(b)は記録信号振幅(レーザーダイオード駆動電流振幅)、図4(c)は再生信号振幅、図4(d)は試し書き領域の媒体パタンを示している。図4(a)〜図4(c)の時間軸と図4(d)の位置軸とはヘッドと記録媒体との相対速度を介して対応付けられる。また、図4(a)〜図4(d)の横軸位置は、それぞれ他の図の横軸位置に対応している。
【0018】
パタン媒体であるため、試し書き領域の媒体パタンは、ユーザーデータ記録領域の媒体パタンと同様に、磁気的に互いに分離された記録単位41の列によって構成されている。記録波形は磁界波形42と媒体加熱パワーを与える半導体レーザーの出力光波形43からなる。本実施例の試し書きでは、記録磁界を一定振幅で与え、半導体レーザーの出力光をパルス波形として、その振幅を所定の増加率で単調増加するように変化させた。出力光パルスの周期は記録単位41の配列周期の2倍の周期とした。
【0019】
試し書き領域の記録単位41に照射される光の加熱パワーが不足の場合は加熱昇温が低いため、記録単位は磁化反転しない。反対に、加熱パワーが過剰の場合は加熱領域が拡大し、隣接する記録単位の磁化も反転させる。このためこれらの中間的な加熱パワーが最適パワーとなる。すなわち、加熱パワーの振幅を時間とともに増大させながら試し書き領域への記録を行い、その後に再生信号44を得ると、次の3つの範囲に加熱パワーが区分できる。
(1)反転信号が得られない加熱パワーが不足した範囲A
(2)記録信号に応じた記録単位の配列周期の2倍の周期の変調信号が得られる記録に最適な加熱パワーの範囲B
(3)加熱領域が拡大して隣接する記録単位も磁化反転した過剰な加熱パワーの範囲C
【0020】
言い換えると、記録可能な最小加熱パワー43a及び、隣接パタンの記録情報を消去しない記録の最大加熱パワー43bとを検出すれば、この最小加熱パワー43aと最大加熱パワー43bの間の中間的な加熱パワーが記録に最適な加熱パワーとなる。
【0021】
この試し書き領域を記録媒体上の複数箇所に設ける。セクタやゾーンにより区切られた記録領域のまとまった区分のヘッダー部などにもこの試し書き領域を配置する。媒体パタンサイズのばらつきはディスク製造時のプロセスにより生じるため、ばらつきの分布は局在する。そこで、ばらつきの分布の程度にあわせ、セクタやゾーンを指定し、そのヘッダー部でパワー制御を行い最適なレーザー駆動電流を設定すれば、パタンサイズのばらつきによる記録への影響を抑制できる。これとあわせて、ディスク半径位置により線速度が異なっても、記録時の記録媒体の昇温を一定とするためのレーザーの出力光パワーの制御も可能になる。
【0022】
図5は、本発明によるパタン媒体の一例を示す概略図である。ここでは、直径2.5インチのガラス基板上に膜厚10nmのFeNiPt合金薄膜を設け、その合金薄膜を電子線リソグラフィーにより加工して、記録単位となる一辺40nmの正方形のFeNiPt合金薄膜ドットが周期60nmでトラック方向へ配列した磁気記録層を形成した。この磁気記録層を有するパタン媒体に対し、1つのトラック51を40分割した長さの範囲をセクタとし、それぞれのセクタのヘッダー部に、サーボ、アドレス、クロックなどのヘッダー信号パタンを記録したヘッダー信号領域52を設け、続いてパワー制御のための試し書き領域53を設けた。ユーザーデータを記録するデータ記録領域54がこれに続く。パタン媒体の熱拡散シミュレーションから、1nsのパルスによる加熱パワー0.6mWにより、記録磁界4KOeでの記録が可能となる350℃の昇温が得られる見込みを得た。本実施例の光ヘッドでは、媒体加熱パワーに対する半導体レーザー出力光パワーの効率は約5%である。
【0023】
図6に、装置の全体図を示す。記録データは記録信号生成回路61でパルスデータに変換され、磁気記録ヘッド駆動回路62と、LD駆動回路63に送られる。これら2つの駆動回路により、記録再生ヘッド64の記録ヘッドにおいて記録磁界と加熱パワーが生成され、パタン媒体11に対して記録が行われる。半導体レーザーによる加熱パワーを決めるための試し書きの場合には、試し書き信号発生回路65からの信号に基づいて記録信号生成回路61にて半導体レーザー駆動のためのパルスデータとその振幅データが生成され、記録データが磁気記録ヘッド駆動回路62とLD駆動回路63に送られ、記録ヘッドが駆動されてパタン媒体11の試し書き領域に記録が行われる。その後、その試し書き領域に対する再生ヘッドの信号を再生回路66で再生し、その再生信号をもとに最適加熱パワー判定回路67によって最適加熱パワーを判定し、記録ヘッドを駆動する信号振幅が決定される。
【0024】
試し書きによる最適加熱パワーの決定を経て、半導体レーザーをパワー制御してユーザーデータを記録するまでの手順を図7に示す。磁気記録装置は、ユーザーデータの書き込み要求を受けると、所定のセクタ位置にアクセスし(S11)、まず、1周目の回転において、そのセクタの試し書き領域の媒体パタンに対して消去を行って磁化状態を初期化し(S12)、次に2周目において再びそのセクタにアクセスし(S13)、初期化された試し書き領域に対して試し書きを行う(S14)。このとき、試し書きの半導体レーザー駆動電流振幅を、例えば図4に示すように、39mAから54mAへと変化させた波形とし、記録磁界を4KOe一定とする。3周目において、試し書きを行った位置にアクセスし(S15)、試し書き領域を再生する(S16)。次に、再生信号に記録単位の配列周期の2倍周期の変調信号が現れたタイミングを抽出し(S17)、2倍周期の変調信号が出現したタイミングと消失したタイミングをもとに最適加熱パワーを判定し(S18)、LDを駆動する電流振幅として設定する(S19)。例えば図4の例に即して説明すると、セクタのヘッダー部の16個の記録単位をパワー制御用の記録単位列とし、4番目から8番目までの記録単位で変調信号が得られたことから、変化させたレーザー出力39mAから54mAの範囲の中で、43mAから47mAが記録可能なレーザー駆動電流であると判断でき、この中央値である45mAを最適な加熱パワーが得られるレーザー駆動電流振幅として設定する。続いて、ヘッダーに続くセクタの記録領域にアクセスし(S20)、設定された記録レーザー出力でユーザーデータを記録する(S21)。
【0025】
1つのトラック上に配置する試し書き領域の数は、媒体パタンサイズのばらつきの程度に応じて加減でき、ばらつきの小さい媒体ディスクでは、複数トラックをまとめたゾーンごとに、試し書き領域を設けてもよい。
【0026】
図7の手順ではユーザーデータの書き込み要求を受けて、消去および試し書きの周回を行っているが、これらの動作を、ユーザーデータの書き込み要求がない状態において、つまり装置のバックグラウンドの動作として、あらかじめ行うことも可能である。これにより、ユーザーデータの書き込み要求をうけると直ちに、バックグラウンド動作により試し書きをおこなっておいた箇所にアクセスし、最適記録パワーを判定して記録を実施でき、記録開始までの時間を図7の手順よりも低減できる。温度変動により最適記録パワーが異なる為、装置温度が記録学習時の装置温度に対して増減した場合は、再度学習動作を行う。
【0027】
図7の手順では、記録磁界を一定振幅とし、レーザーのみを振幅変調しているが、記録磁界振幅の変調を行うことで、本例と同様に、記録可能な加熱パワー及び、隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーを検出し、最適記録パワーを設定してもよい。試し書きされたパタンを再生し、図4(c)44のBの範囲のように、正常な周期の再生信号が得られる記録条件の範囲から、最適加熱パワーを判定する。たとえば、正常な周期の再生信号が得られる上限の記録パワーを最大記録パワーとし、この指定倍を最適記録パワーとすることが可能である。指定倍の値は装置を設計する際に調べておくことができる。本例では、最大記録パワーの約80%が最適記録であり、この指定倍は、環境温度や記録速度に対して変動が小さく許容できるものであった。これにより、図7の手順で説明した初期化動作を省略できる。
【0028】
ユーザーデータの記録を行う前に上記の試し書きを行って最適加熱パワーを決定することで、パタンの寸法ばらつきや磁気特性のばらつき、さらにはディスク半径による線速度の違い、環境温度の変動や半導体レーザーの変動を補償し、その記録領域に最適な条件で熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0029】
上記の実施例では記録動作に伴う試し書きが必要であり、記録のためにディスクを2周以上周回させる必要があった。次に説明する実施例は、予め試し書きが行われた記録媒体を用いることで、上記に示した記録直前の試し書きを省き、ユーザーが記録を行う際に、一周の周回で記録を行うものである。
【0030】
本実施例では、事前の試し書きを、装置の出荷前あるいは出荷後のフォーマット時などに行うことを想定している。このパタン媒体には、試し書きを行う2種類の領域を設け、いずれの領域にも予め同じ条件で試し書きが行われる。1つは、上記の実施例と同様に、ディスク上のセクタやゾーンのヘッダー部に位置する複数の試し書き領域であり、ディスクの異なる位置に対して最適な加熱パワーを判定するために利用する試し書き領域である。2つめは、事前の試し書き時の加熱条件を再現する為に、LD駆動電流振幅を調整する、加熱パワー学習領域である。温度変動、LDや光学系の経時変化等により、LD駆動電流振幅が同じでも、記録の加熱パワーが異なる。そこで、LD駆動電流振幅を事前の試し書き時の値から変更することで、事前の試し書き時と同等の加熱パワーが得られるように学習を行うのである。図4bのLD駆動電流が単調に変化するパルス列に対して、電流を加算し、この加算量を変化させて記録を行い、事前に試し書きされたパタンからの再生信号が一致するように、この電流振幅加算量を学習する。ユーザーデータの書き込み要求を受けて記録を行う際、試し書き領域の事前に試し書きを行ったパタンを再生し、その再生信号から得られる最適加熱パワーを与えるLD駆動電流振幅に対し、加熱パワー学習領域で学習した電流振幅加算量により補正を行い、最適なLD駆動電流振幅を得る。
【0031】
加熱パワー学習領域でのLD駆動電流振幅の学習動作は、記録装置の起動毎あるいは、環境温度の変動が規定値を超えた場合、あるいは記録エラーが規定値を超えた場合などに、行われる。
【0032】
加熱パワー学習領域は、事前に試し書きを行うパタンと、学習動作に用いられるパタン領域とに別れ、図9に示すように、ディスクの内周や外周など特定の場所に設けられる。この中で、事前の試し書き領域93は書き換えられないが、学習記録領域94は学習が完了するまで繰り返し書き換えられる。また、この学習記録領域を試し書き領域よりも長くとることで、一回の周回で電流振幅加算量を変えた複数の試し書きを行い、2回目の周回でこれらを再生し事前の試し書きパタンからの再生信号と同一となる電流振幅加算量を見つけ出すことも可能であり、学習に要する時間を低減できる。
【0033】
本実施例による、加熱パワー学習領域でのLD駆動電流振幅の学習動作を図10に例示する。加熱パワー学習領域の試し書きパタンと記録条件は図4に示した試し書きと同様である。図10(a)は事前に試し書きされたパタンの再生信号、図10(b)は駆動電流振幅の学習のために学習記録領域で試し書きしたパタンの再生信号、図10(c)は図9(a)の再生信号に対応する試し書き領域の記録状態を示す模式図である。図10(a)と図10(b)で再生波形が異なるのは、試し書き時の環境温度を変化させた為で、事前に行った試し書き時の環境温度は25℃、学習時の環境温度は50℃である。環境温度が上昇すると、LD電流振幅に対する発光パワー、すなわち発光効率が低下する為、より高振幅のLD駆動電流が必要となるのである。再生波形を比較すると、学習時の電流振幅に10mAの加算を行えば、事前の試し書き信号を再生できることが判断できる。これにより、ユーザーデータの書き込み要求を受けて記録を行う場合、試し書き領域の事前に試し書きを行ったパタンを再生し、その再生信号から得られる最適加熱パワーを与えるLD駆動電流振幅に対し10mAの加算を行い、記録を行う。
【0034】
図8に従って、本実施例による記録の手順を説明する。図8に示した手順のうち、ステップ31からステップ34は、装置の出荷前あるいは出荷後のフォーマット時などに一度だけ行われる事前の試し書きである。ステップ35からステップ41は、ユーザーが装置を起動したときに実行される。また、ステップ42からステップ48は、ユーザーデータの記録時に実行される。
【0035】
まず、事前の試し書きの時点で、ディスクの内周あるいは外周の決められたトラックに設けられた加熱パワー学習領域にアクセスし(S31)、試し書き信号を記録する(S32)。同様に、セクタやゾーンのヘッダー部に設けられた試し書き領域にアクセスし(S33)、試し書き信号を記録する(S34)。試し書き信号の記録は、例えば図4に示した試し書き信号を用い、加熱パワー学習領域及び複数の試し書き領域に対して同じ条件で行われる。
【0036】
ユーザーが磁気記録装置を起動すると、装置は、加熱パワー学習領域にアクセスし(S35)、事前に試し書きされた記録単位列を再生する(S36)。次に、加熱パワー学習領域の学習記録領域に試し書き信号を記録し(S37)、その信号を再生する(S38)。2つの再生信号を対比し(S39)、両者が不一致の場合は、学習記録領域に記録する試し書き信号の電流信号振幅を変化させ(S40)、再度記録再生を行い(S37,S38)、対比を繰り返す。これにより、現在の試し書きの加熱パワーを、事前の試し書きで使用した加熱パワーと一致させるLD駆動電流振幅加算量を得る(S41)。つまり、この加熱パワー学習で学習されたLD駆動電流振幅を用いると、事前にパタン媒体上の複数の試し書き領域に試し書きされている記録状態を再現できることになる。
【0037】
ユーザーデータの書き込み要求を受けて、所望の記録位置にアクセスし(S42)、そのヘッダー領域にある事前の試し書き信号を再生する(S43)。次に、図7のS16からS18までと同様に、再生信号に記録単位の配列周期の2倍周期の変調信号が現れたタイミングを抽出し(S44)、2倍周期の変調信号が出現したタイミングと消失したタイミングをもとに事前の試し書きにおける最適加熱パワーを判定する(S45)。さらに、S41で決定したLD駆動電流振幅加算量によりLD駆動電流振幅を補正して、最適記録パワーを与えるLD駆動電流振幅を決定する(S46)。その後、試し書き位置に続く記録位置にアクセスし(S47)、ユーザーデータの記録を行う(S48)。
【0038】
以上、本発明を、記録磁界振幅を一定に保ち、加熱用レーザーの出力光パルスの周期をパタン媒体のパタン周期の2倍周期とする例によって説明した。しかし、本発明は必ずしもこの例の場合に限定されるものではなく、例えば記録磁界を加熱用レーザーパルスに同期させて反転させて印加してもよいし、レーザーパルスの周期をパタン媒体のパタン周期の2倍以外の周期、例えばパタン媒体のパタン周期の3倍以上の周期としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】磁気ディスク装置の概略図。
【図2】熱アシスト磁気記録ヘッドの構成例を示す図。
【図3】光導入系の構成図。
【図4】加熱パワー制御方式の説明図。
【図5】本発明によるパタン媒体の一例を示す概略図。
【図6】装置の全体図。
【図7】加熱パワー制御の手順を説明する図。
【図8】加熱パワー制御の手順を説明する図。
【図9】加熱パワー学習の動作を説明する図。
【図10】加熱パワー学習領域を説明する図
【符号の説明】
【0040】
11…磁気ディスク
12…キャリッジ
13…ボイスコイルモータ
14…スライダ
15…磁気ヘッド
16…制御回路系
21…再生素子
22…磁気記録素子
23…近接場光発生素子
24…光導入系
25…単磁極型磁気ヘッド
26…コイル
31…半導体レーザー
33…光カプラー
34…光ファイバー
35…カプラーレンズ
51…トラック
52…ヘッダー信号領域
53…試し書き領域
54…データ記録領域
91…トラック
92…ヘッダー信号領域
93…事前の試し書き領域
94…学習記録領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録装置及び熱アシスト磁気記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等に装着されている情報記録システムの1種である磁気ディスク装置は、処理すべき情報量の増大に伴い、記録密度の向上が求められている。磁気ディスク装置の記録密度の向上のため、磁気記録寸法の微小化が進められており、このために、磁気ディスクと磁気ヘッドの距離を狭めること、磁気記録媒体の磁気記録層を構成する磁性粒子の粒径を微細化すること、磁気記録媒体の保磁力(異方性磁界)を増大させること、等が行われている。
【0003】
しかしながら、磁気記録ヘッドの磁界強度の増大に物理的限界があることが、磁気記録密度の向上を制限する要因となっている。高密度記録において、ノイズ低減の観点から、磁気記録媒体の結晶粒径を微細化することが必要であるが、磁性粒子が熱的に不安定になるという問題が生じる。従って、結晶粒径を微細化して更に熱安定性も確保するためには、磁気異方性エネルギーを大きくしなければならない。異方性エネルギーの増加、即ち、異方性磁界(保磁力)の増加は、記録に必要なヘッド磁界強度の増加を必要とする。しかし、記録用ヘッドに使われる磁極材料の飽和磁化の上限、磁気ディスクと磁気ヘッドの距離の狭小化の限界から、今後、高記録密度化に比例して異方性磁界を増大させ、記録ヘッドからの磁界強度を増加させることは困難である。
【0004】
パタン媒体を用いる磁気記録方式(J. Appl. Phys., 76 6673(1994)、特開2003−45004号公報等)は、以上の問題の一つの解決方法として期待されている。この方式は、記録媒体の磁気記録層を記録単位の寸法でパタン化し、パタン内の磁気結合を強化することで、複数の磁性粒子を記録単位とする従来の磁気記録方式に比べ、熱揺らぎに対する耐性を強化するものである。
【0005】
他方で、光記録技術と磁気記録技術を結合した熱アシスト磁気記録技術が提案され、注目を浴びている。ここで用いられている磁気記録再生ヘッドには、媒体を加熱する機構が付加されている。記録時には、印加磁界発生とともに媒体を加熱して、媒体保磁力を低減させる。これにより、従来の磁気ヘッドでは記録磁界強度が不足して記録が困難であった高保磁力の媒体にも記録が容易になる。高密度記録に必要な微小領域の加熱には、近接場光を熱源とする光ヘッドの利用が提案されている(特開2003−45004号公報等)。
【0006】
さらに、熱アシスト磁気記録方式にパタン媒体を組合せる、高密度磁気記録方式も挙げられている(特開2004−35579号公報等)。熱アシスト磁気記録方式においても、複数の磁性粒子からなる記録単位よりも、磁気結合が強化されたひとつのパタンを記録単位とする方が、熱揺らぎに対して耐性が高く、さらなる高密度化に有利である。
【0007】
熱アシスト磁気記録においては、記録温度を制御する機構が必要となる。記録加熱パワーが低く、記録温度が低いと、記録材料の保磁力の低下が十分でなく、磁気記録が行われない。反対に、記録加熱パワーが過剰で記録温度が高いと、温度分布が拡大し、記録位置に隣接する既記録情報を書き換える恐れがある。熱源素子や記録材料の個体差、スライダヘッドに搭載した際の浮上量変動、環境温度の変動などにより記録時の媒体加熱温度が変動するため、記録加熱パワーを加減して、記録時の媒体温度を最適な昇温に制御しなければならない。光源からの光量をホトデテクターで検出して光量を制御し、記録時の媒体加熱温度の変動を抑制する方式が特開2002−133602号公報に記載されている。また、ディスクの内外周の線速度の違いに起因する記録時の媒体加熱温度の変動を制御するため、特定の領域で試行記録を行い、記録データとこれによる再生データとの比較から加熱パワー制御する方式が特開2002−29830号公報に記載されている。
【0008】
【非特許文献1】J. Appl. Phys., 76 6673(1994)
【特許文献1】特開2003−45004号公報
【特許文献2】特開2004−35579号公報
【特許文献3】特開2002−133602号公報
【特許文献4】特開2002−29830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これら上記の加熱パワーの制御方式は、半導体レーザーを加熱源としてそのパワー制御を行うDVD等の光記録ディスクシステムで実用化されているパワー方式と同様であるが、従来の記録媒体の形態である面内に連続的な薄膜記録媒体を想定しており、記録単位がパタン状に形成された記録層を有するパタン媒体に対しては有効ではない。つまり、パタン媒体を用いた磁気記録においては、レーザーの記録パワーに対する記録変調度やジッタの応答が連続媒体とはまったく異なるので、記録温度の変動を抑制し、記録パワーを最適化する指標が新たに必要になる。
【0010】
さらに、パタン媒体に対して記録のパワー制御を行うためには、パタンサイズやその磁気特性のばらつきにも対応しなければならない。このばらつきにより、一定磁界で記録を行う場合、磁化反転磁界の大きなパタンは記録に伴う磁化反転を生ぜず、また、磁化反転磁界の小さいパタンは隣接トラックを記録するヘッドからの漏洩磁界により磁化反転するおそれがある。パタンサイズのばらつきは、パタン媒体の製造プロセスにより生じるため、パタンサイズが縮小するほど、パタン間隔に対するばらつきの比が増大し、この障害が増大する。
【0011】
本発明の目的は、パタン媒体を用いた熱アシスト磁気記録における加熱パワー制御を行い、パタンサイズのばらつきの影響を抑制し、記録密度の向上を可能にする熱アシスト磁気記録装置及び熱アシスト磁気記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の熱アシスト磁気記録装置は、相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配置された磁気記録層を有するパタン媒体を用い、ユーザーデータを記録するための最適加熱パワーの決定を試し書きにより行う。試し書きの領域は記録媒体上に複数設けられ、試し書き領域の記録単位列に対して加熱パワー強度を単調に変化させながら記録磁界を印加して試し書きを行い、それを再生した再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーとの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定し、最適加熱パワーを決定する。
【0013】
また、本発明の熱アシスト磁気記録装置は、相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、セクタのヘッダー部に設けられた試し書き領域に事前に試し書きが行われているパタン媒体を用いる。そして、事前に試し書きが行われている加熱パワー学習領域に新たに試し書きを行い、事前の試し書きの再生信号と新たな試し書きの再生信号とが一致するように光源による加熱パワーを制御することで、事前の試し書き時の加熱条件を再現する。所望のセクタにユーザーデータを記録する時には、そのセクタのヘッダーに事前に行われた試し書きを再生した再生信号をもとに光源の最適加熱パワーを決定する。この場合、ユーザーデータを記録するセクタの試し書き領域に逐次試し書きを行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による磁気ディスクドライブの構造を示す模式図である。磁気ディスクドライブ内部の主要な構成要素は、スピンドルに搭載され回転駆動される磁気ディスク11、キャリッジ12に搭載されボイスコイルモータ13より任意のトラックにアクセスし、磁気ディスク(媒体)上で情報の記録再生を行うスライダ14と磁気ヘッド15、及びデータの入出力から記録再生、アクチュエータの制御を担う制御回路系16である。磁気ディスク11は、相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を有するパタン媒体である。
【0015】
スライダヘッド内部の主要構成素子は、図2に示すように再生素子21、磁気記録素子22、及び微小な記録熱源を発生する近接場光発生素子23と光導入系24である。再生素子21は磁気抵抗効果素子からなり、磁気記録素子22はコイル26に流す電流により記録磁界を発生する単磁極型の磁気記録ヘッド25であって、近接場光発生領域において最大10KOeの垂直方向の磁界を発生する。
【0016】
図3に示すように、半導体レーザー31からなる光源は、キャリッジ12上に配置され、光カプラー33、光ファイバー34、スライダ14上のカプラーレンズ35を通じて、近接場光発生素子23に光が導かれる。近接場光発生素子23はプラズモン共鳴を利用して微小な領域に近接場光を発生させるアンテナ型の金の薄膜素子である。これにより、半値幅50nm以下の空間的な広がりを有する近接場光を発生する。光源の半導体レーザーをスライダ上に装荷することも可能であり、近接場光発生素子への光導入に導波路を用いることも可能である。
【0017】
次に、半導体レーザーからの出力パルス光の振幅である加熱パワーの最適値を、試し書き領域内のパタンへの試し書きにより得る仕組みについて説明する。図4に、記録媒体上に設けた試し書き領域の媒体パタン(記録単位列)と記録波形とを示す。図4(a)は記録磁界振幅、図4(b)は記録信号振幅(レーザーダイオード駆動電流振幅)、図4(c)は再生信号振幅、図4(d)は試し書き領域の媒体パタンを示している。図4(a)〜図4(c)の時間軸と図4(d)の位置軸とはヘッドと記録媒体との相対速度を介して対応付けられる。また、図4(a)〜図4(d)の横軸位置は、それぞれ他の図の横軸位置に対応している。
【0018】
パタン媒体であるため、試し書き領域の媒体パタンは、ユーザーデータ記録領域の媒体パタンと同様に、磁気的に互いに分離された記録単位41の列によって構成されている。記録波形は磁界波形42と媒体加熱パワーを与える半導体レーザーの出力光波形43からなる。本実施例の試し書きでは、記録磁界を一定振幅で与え、半導体レーザーの出力光をパルス波形として、その振幅を所定の増加率で単調増加するように変化させた。出力光パルスの周期は記録単位41の配列周期の2倍の周期とした。
【0019】
試し書き領域の記録単位41に照射される光の加熱パワーが不足の場合は加熱昇温が低いため、記録単位は磁化反転しない。反対に、加熱パワーが過剰の場合は加熱領域が拡大し、隣接する記録単位の磁化も反転させる。このためこれらの中間的な加熱パワーが最適パワーとなる。すなわち、加熱パワーの振幅を時間とともに増大させながら試し書き領域への記録を行い、その後に再生信号44を得ると、次の3つの範囲に加熱パワーが区分できる。
(1)反転信号が得られない加熱パワーが不足した範囲A
(2)記録信号に応じた記録単位の配列周期の2倍の周期の変調信号が得られる記録に最適な加熱パワーの範囲B
(3)加熱領域が拡大して隣接する記録単位も磁化反転した過剰な加熱パワーの範囲C
【0020】
言い換えると、記録可能な最小加熱パワー43a及び、隣接パタンの記録情報を消去しない記録の最大加熱パワー43bとを検出すれば、この最小加熱パワー43aと最大加熱パワー43bの間の中間的な加熱パワーが記録に最適な加熱パワーとなる。
【0021】
この試し書き領域を記録媒体上の複数箇所に設ける。セクタやゾーンにより区切られた記録領域のまとまった区分のヘッダー部などにもこの試し書き領域を配置する。媒体パタンサイズのばらつきはディスク製造時のプロセスにより生じるため、ばらつきの分布は局在する。そこで、ばらつきの分布の程度にあわせ、セクタやゾーンを指定し、そのヘッダー部でパワー制御を行い最適なレーザー駆動電流を設定すれば、パタンサイズのばらつきによる記録への影響を抑制できる。これとあわせて、ディスク半径位置により線速度が異なっても、記録時の記録媒体の昇温を一定とするためのレーザーの出力光パワーの制御も可能になる。
【0022】
図5は、本発明によるパタン媒体の一例を示す概略図である。ここでは、直径2.5インチのガラス基板上に膜厚10nmのFeNiPt合金薄膜を設け、その合金薄膜を電子線リソグラフィーにより加工して、記録単位となる一辺40nmの正方形のFeNiPt合金薄膜ドットが周期60nmでトラック方向へ配列した磁気記録層を形成した。この磁気記録層を有するパタン媒体に対し、1つのトラック51を40分割した長さの範囲をセクタとし、それぞれのセクタのヘッダー部に、サーボ、アドレス、クロックなどのヘッダー信号パタンを記録したヘッダー信号領域52を設け、続いてパワー制御のための試し書き領域53を設けた。ユーザーデータを記録するデータ記録領域54がこれに続く。パタン媒体の熱拡散シミュレーションから、1nsのパルスによる加熱パワー0.6mWにより、記録磁界4KOeでの記録が可能となる350℃の昇温が得られる見込みを得た。本実施例の光ヘッドでは、媒体加熱パワーに対する半導体レーザー出力光パワーの効率は約5%である。
【0023】
図6に、装置の全体図を示す。記録データは記録信号生成回路61でパルスデータに変換され、磁気記録ヘッド駆動回路62と、LD駆動回路63に送られる。これら2つの駆動回路により、記録再生ヘッド64の記録ヘッドにおいて記録磁界と加熱パワーが生成され、パタン媒体11に対して記録が行われる。半導体レーザーによる加熱パワーを決めるための試し書きの場合には、試し書き信号発生回路65からの信号に基づいて記録信号生成回路61にて半導体レーザー駆動のためのパルスデータとその振幅データが生成され、記録データが磁気記録ヘッド駆動回路62とLD駆動回路63に送られ、記録ヘッドが駆動されてパタン媒体11の試し書き領域に記録が行われる。その後、その試し書き領域に対する再生ヘッドの信号を再生回路66で再生し、その再生信号をもとに最適加熱パワー判定回路67によって最適加熱パワーを判定し、記録ヘッドを駆動する信号振幅が決定される。
【0024】
試し書きによる最適加熱パワーの決定を経て、半導体レーザーをパワー制御してユーザーデータを記録するまでの手順を図7に示す。磁気記録装置は、ユーザーデータの書き込み要求を受けると、所定のセクタ位置にアクセスし(S11)、まず、1周目の回転において、そのセクタの試し書き領域の媒体パタンに対して消去を行って磁化状態を初期化し(S12)、次に2周目において再びそのセクタにアクセスし(S13)、初期化された試し書き領域に対して試し書きを行う(S14)。このとき、試し書きの半導体レーザー駆動電流振幅を、例えば図4に示すように、39mAから54mAへと変化させた波形とし、記録磁界を4KOe一定とする。3周目において、試し書きを行った位置にアクセスし(S15)、試し書き領域を再生する(S16)。次に、再生信号に記録単位の配列周期の2倍周期の変調信号が現れたタイミングを抽出し(S17)、2倍周期の変調信号が出現したタイミングと消失したタイミングをもとに最適加熱パワーを判定し(S18)、LDを駆動する電流振幅として設定する(S19)。例えば図4の例に即して説明すると、セクタのヘッダー部の16個の記録単位をパワー制御用の記録単位列とし、4番目から8番目までの記録単位で変調信号が得られたことから、変化させたレーザー出力39mAから54mAの範囲の中で、43mAから47mAが記録可能なレーザー駆動電流であると判断でき、この中央値である45mAを最適な加熱パワーが得られるレーザー駆動電流振幅として設定する。続いて、ヘッダーに続くセクタの記録領域にアクセスし(S20)、設定された記録レーザー出力でユーザーデータを記録する(S21)。
【0025】
1つのトラック上に配置する試し書き領域の数は、媒体パタンサイズのばらつきの程度に応じて加減でき、ばらつきの小さい媒体ディスクでは、複数トラックをまとめたゾーンごとに、試し書き領域を設けてもよい。
【0026】
図7の手順ではユーザーデータの書き込み要求を受けて、消去および試し書きの周回を行っているが、これらの動作を、ユーザーデータの書き込み要求がない状態において、つまり装置のバックグラウンドの動作として、あらかじめ行うことも可能である。これにより、ユーザーデータの書き込み要求をうけると直ちに、バックグラウンド動作により試し書きをおこなっておいた箇所にアクセスし、最適記録パワーを判定して記録を実施でき、記録開始までの時間を図7の手順よりも低減できる。温度変動により最適記録パワーが異なる為、装置温度が記録学習時の装置温度に対して増減した場合は、再度学習動作を行う。
【0027】
図7の手順では、記録磁界を一定振幅とし、レーザーのみを振幅変調しているが、記録磁界振幅の変調を行うことで、本例と同様に、記録可能な加熱パワー及び、隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーを検出し、最適記録パワーを設定してもよい。試し書きされたパタンを再生し、図4(c)44のBの範囲のように、正常な周期の再生信号が得られる記録条件の範囲から、最適加熱パワーを判定する。たとえば、正常な周期の再生信号が得られる上限の記録パワーを最大記録パワーとし、この指定倍を最適記録パワーとすることが可能である。指定倍の値は装置を設計する際に調べておくことができる。本例では、最大記録パワーの約80%が最適記録であり、この指定倍は、環境温度や記録速度に対して変動が小さく許容できるものであった。これにより、図7の手順で説明した初期化動作を省略できる。
【0028】
ユーザーデータの記録を行う前に上記の試し書きを行って最適加熱パワーを決定することで、パタンの寸法ばらつきや磁気特性のばらつき、さらにはディスク半径による線速度の違い、環境温度の変動や半導体レーザーの変動を補償し、その記録領域に最適な条件で熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0029】
上記の実施例では記録動作に伴う試し書きが必要であり、記録のためにディスクを2周以上周回させる必要があった。次に説明する実施例は、予め試し書きが行われた記録媒体を用いることで、上記に示した記録直前の試し書きを省き、ユーザーが記録を行う際に、一周の周回で記録を行うものである。
【0030】
本実施例では、事前の試し書きを、装置の出荷前あるいは出荷後のフォーマット時などに行うことを想定している。このパタン媒体には、試し書きを行う2種類の領域を設け、いずれの領域にも予め同じ条件で試し書きが行われる。1つは、上記の実施例と同様に、ディスク上のセクタやゾーンのヘッダー部に位置する複数の試し書き領域であり、ディスクの異なる位置に対して最適な加熱パワーを判定するために利用する試し書き領域である。2つめは、事前の試し書き時の加熱条件を再現する為に、LD駆動電流振幅を調整する、加熱パワー学習領域である。温度変動、LDや光学系の経時変化等により、LD駆動電流振幅が同じでも、記録の加熱パワーが異なる。そこで、LD駆動電流振幅を事前の試し書き時の値から変更することで、事前の試し書き時と同等の加熱パワーが得られるように学習を行うのである。図4bのLD駆動電流が単調に変化するパルス列に対して、電流を加算し、この加算量を変化させて記録を行い、事前に試し書きされたパタンからの再生信号が一致するように、この電流振幅加算量を学習する。ユーザーデータの書き込み要求を受けて記録を行う際、試し書き領域の事前に試し書きを行ったパタンを再生し、その再生信号から得られる最適加熱パワーを与えるLD駆動電流振幅に対し、加熱パワー学習領域で学習した電流振幅加算量により補正を行い、最適なLD駆動電流振幅を得る。
【0031】
加熱パワー学習領域でのLD駆動電流振幅の学習動作は、記録装置の起動毎あるいは、環境温度の変動が規定値を超えた場合、あるいは記録エラーが規定値を超えた場合などに、行われる。
【0032】
加熱パワー学習領域は、事前に試し書きを行うパタンと、学習動作に用いられるパタン領域とに別れ、図9に示すように、ディスクの内周や外周など特定の場所に設けられる。この中で、事前の試し書き領域93は書き換えられないが、学習記録領域94は学習が完了するまで繰り返し書き換えられる。また、この学習記録領域を試し書き領域よりも長くとることで、一回の周回で電流振幅加算量を変えた複数の試し書きを行い、2回目の周回でこれらを再生し事前の試し書きパタンからの再生信号と同一となる電流振幅加算量を見つけ出すことも可能であり、学習に要する時間を低減できる。
【0033】
本実施例による、加熱パワー学習領域でのLD駆動電流振幅の学習動作を図10に例示する。加熱パワー学習領域の試し書きパタンと記録条件は図4に示した試し書きと同様である。図10(a)は事前に試し書きされたパタンの再生信号、図10(b)は駆動電流振幅の学習のために学習記録領域で試し書きしたパタンの再生信号、図10(c)は図9(a)の再生信号に対応する試し書き領域の記録状態を示す模式図である。図10(a)と図10(b)で再生波形が異なるのは、試し書き時の環境温度を変化させた為で、事前に行った試し書き時の環境温度は25℃、学習時の環境温度は50℃である。環境温度が上昇すると、LD電流振幅に対する発光パワー、すなわち発光効率が低下する為、より高振幅のLD駆動電流が必要となるのである。再生波形を比較すると、学習時の電流振幅に10mAの加算を行えば、事前の試し書き信号を再生できることが判断できる。これにより、ユーザーデータの書き込み要求を受けて記録を行う場合、試し書き領域の事前に試し書きを行ったパタンを再生し、その再生信号から得られる最適加熱パワーを与えるLD駆動電流振幅に対し10mAの加算を行い、記録を行う。
【0034】
図8に従って、本実施例による記録の手順を説明する。図8に示した手順のうち、ステップ31からステップ34は、装置の出荷前あるいは出荷後のフォーマット時などに一度だけ行われる事前の試し書きである。ステップ35からステップ41は、ユーザーが装置を起動したときに実行される。また、ステップ42からステップ48は、ユーザーデータの記録時に実行される。
【0035】
まず、事前の試し書きの時点で、ディスクの内周あるいは外周の決められたトラックに設けられた加熱パワー学習領域にアクセスし(S31)、試し書き信号を記録する(S32)。同様に、セクタやゾーンのヘッダー部に設けられた試し書き領域にアクセスし(S33)、試し書き信号を記録する(S34)。試し書き信号の記録は、例えば図4に示した試し書き信号を用い、加熱パワー学習領域及び複数の試し書き領域に対して同じ条件で行われる。
【0036】
ユーザーが磁気記録装置を起動すると、装置は、加熱パワー学習領域にアクセスし(S35)、事前に試し書きされた記録単位列を再生する(S36)。次に、加熱パワー学習領域の学習記録領域に試し書き信号を記録し(S37)、その信号を再生する(S38)。2つの再生信号を対比し(S39)、両者が不一致の場合は、学習記録領域に記録する試し書き信号の電流信号振幅を変化させ(S40)、再度記録再生を行い(S37,S38)、対比を繰り返す。これにより、現在の試し書きの加熱パワーを、事前の試し書きで使用した加熱パワーと一致させるLD駆動電流振幅加算量を得る(S41)。つまり、この加熱パワー学習で学習されたLD駆動電流振幅を用いると、事前にパタン媒体上の複数の試し書き領域に試し書きされている記録状態を再現できることになる。
【0037】
ユーザーデータの書き込み要求を受けて、所望の記録位置にアクセスし(S42)、そのヘッダー領域にある事前の試し書き信号を再生する(S43)。次に、図7のS16からS18までと同様に、再生信号に記録単位の配列周期の2倍周期の変調信号が現れたタイミングを抽出し(S44)、2倍周期の変調信号が出現したタイミングと消失したタイミングをもとに事前の試し書きにおける最適加熱パワーを判定する(S45)。さらに、S41で決定したLD駆動電流振幅加算量によりLD駆動電流振幅を補正して、最適記録パワーを与えるLD駆動電流振幅を決定する(S46)。その後、試し書き位置に続く記録位置にアクセスし(S47)、ユーザーデータの記録を行う(S48)。
【0038】
以上、本発明を、記録磁界振幅を一定に保ち、加熱用レーザーの出力光パルスの周期をパタン媒体のパタン周期の2倍周期とする例によって説明した。しかし、本発明は必ずしもこの例の場合に限定されるものではなく、例えば記録磁界を加熱用レーザーパルスに同期させて反転させて印加してもよいし、レーザーパルスの周期をパタン媒体のパタン周期の2倍以外の周期、例えばパタン媒体のパタン周期の3倍以上の周期としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】磁気ディスク装置の概略図。
【図2】熱アシスト磁気記録ヘッドの構成例を示す図。
【図3】光導入系の構成図。
【図4】加熱パワー制御方式の説明図。
【図5】本発明によるパタン媒体の一例を示す概略図。
【図6】装置の全体図。
【図7】加熱パワー制御の手順を説明する図。
【図8】加熱パワー制御の手順を説明する図。
【図9】加熱パワー学習の動作を説明する図。
【図10】加熱パワー学習領域を説明する図
【符号の説明】
【0040】
11…磁気ディスク
12…キャリッジ
13…ボイスコイルモータ
14…スライダ
15…磁気ヘッド
16…制御回路系
21…再生素子
22…磁気記録素子
23…近接場光発生素子
24…光導入系
25…単磁極型磁気ヘッド
26…コイル
31…半導体レーザー
33…光カプラー
34…光ファイバー
35…カプラーレンズ
51…トラック
52…ヘッダー信号領域
53…試し書き領域
54…データ記録領域
91…トラック
92…ヘッダー信号領域
93…事前の試し書き領域
94…学習記録領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、試し書き領域を有するパタン媒体と、
前記パタン媒体に記録磁界を印加する磁気記録ヘッド、光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱する加熱機構、及び再生ヘッドを搭載した熱アシスト磁気記録ヘッドと、
前記光源による加熱パワーを制御する手段と、
前記試し書き領域の前記記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記磁気記録ヘッドから記録磁界を印加して試し書きを行い、当該試し書き領域を前記再生ヘッドによって再生した再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定し、前記光源による加熱パワーを決定する手段と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射し、前記再生信号に現れる前記パルス照射の周期と同じ周期の信号の開始タイミングと終了タイミングとを検出し、当該開始タイミングと終了タイミングに基づいて前記記録の最小加熱パワーと前記最大加熱パワーとを判定することを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記試し書き領域は前記パタン媒体の全面に分散して複数設けられていることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項4】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、前記試し書き領域は前記セクタのヘッダー部に設けられていることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項5】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、前記トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、前記セクタのヘッダー部に設けられた試し書き領域及び特定のトラックに設けられた加熱パワー学習領域に事前に試し書きが行われているパタン媒体と、
前記パタン媒体に記録磁界を印加する磁気記録ヘッド、光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱する加熱機構、及び再生ヘッドを搭載した熱アシスト磁気記録ヘッドと、
前記光源による加熱パワーを制御する手段と、
前記加熱パワー学習領域の記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記磁気記録ヘッドから記録磁界を印加して新たに試し書きを行い、前記加熱パワー学習領域に記録された事前の試し書きを前記再生ヘッドによって再生した再生信号と前記新たな試し書きを前記再生ヘッドによって再生した再生信号とが一致するように前記光源による加熱パワーを制御する手段と、
ユーザーデータを記録すべきセクタのヘッダーに事前に行われた試し書きを前記再生ヘッドによって再生した再生信号をもとに、当該セクタにユーザーデータを記録する際の前記光源の加熱パワーを決定する手段と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記光源の加熱パワーを決定する手段は、前記加熱パワー学習領域における学習動作においてLD駆動電流振幅の加算量を判定し、この加算量を用いて試し書き領域の再生信号から得られる最適記録パワーの判定に補正を加えることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項7】
請求項5記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記試し書きは前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射して行われることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項8】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、試し書き領域を有するパタン媒体に、記録磁界を印加すると共に光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録方法において、
前記試し書き領域の前記記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら記録磁界を印加して試し書きを行う工程と、
当該試し書き領域を再生して再生信号を得る工程と、
前記再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定する工程と、
前記光源による加熱パワーを前記記録の最小加熱パワーと前記記録の最大加熱パワーの間のパワーに設定する工程と、
前記設定した加熱パワーのもとでユーザーデータを記録する工程と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項9】
請求項8記載の熱アシスト磁気記録方法において、
前記試し書きを行う工程では前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射し、
前記記録の最小加熱パワーと前記最大加熱パワーとを判定する工程では、前記再生信号に現れる前記パルス照射の周期と同じ周期の信号の開始タイミングと終了タイミングとを検出し、当該開始タイミングと終了タイミングに基づいて前記記録の最小加熱パワーと前記最大加熱パワーとを判定することを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項10】
請求項8記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記試し書きを行う工程では前記光源による加熱パワーを所定の割合で単調に増加させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射して試し書きを行うことを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項11】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、前記トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、前記セクタのヘッダー部に設けられた試し書き領域及び所定のトラックに設けられた加熱パワー学習領域に事前に試し書きが行われているパタン媒体に、記録磁界を印加すると共に光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録方法において、
前記加熱パワー学習領域に、当該試し書き領域の前記記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら記録磁界を印加して新たに試し書きを行う工程と、
前記加熱パワー学習領域に記録された事前の試し書きの再生信号と前記新たな試し書きの再生信号とが一致するように前記光源による加熱パワーを制御する工程と、
ユーザーデータを記録すべきセクタのヘッダーに事前に行われた試し書きを再生して再生信号を得る工程と、
前記再生信号をもとに当該セクタにユーザーデータを記録する際の前記光源による加熱パワーを決定する工程と、
前記光源による加熱パワーを前記決定された加熱パワーに設定する工程と、
前記設定した加熱パワーのもとでユーザーデータを記録する工程と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項12】
請求項11記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記光源による加熱パワーを決定する工程では前記加熱パワー学習領域における学習動作においてLD駆動電流振幅の加算量を判定し、この加算量を用いて試し書き領域の再生信号から得られる最適記録パワーの判定に補正を加えることを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項13】
請求項11記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記事前の試し書きは前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射して行われたものであることを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項14】
請求項11記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記加熱パワー学習領域は内周トラックあるいは外周トラックに設けられていることを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項1】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、試し書き領域を有するパタン媒体と、
前記パタン媒体に記録磁界を印加する磁気記録ヘッド、光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱する加熱機構、及び再生ヘッドを搭載した熱アシスト磁気記録ヘッドと、
前記光源による加熱パワーを制御する手段と、
前記試し書き領域の前記記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記磁気記録ヘッドから記録磁界を印加して試し書きを行い、当該試し書き領域を前記再生ヘッドによって再生した再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定し、前記光源による加熱パワーを決定する手段と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射し、前記再生信号に現れる前記パルス照射の周期と同じ周期の信号の開始タイミングと終了タイミングとを検出し、当該開始タイミングと終了タイミングに基づいて前記記録の最小加熱パワーと前記最大加熱パワーとを判定することを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記試し書き領域は前記パタン媒体の全面に分散して複数設けられていることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項4】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、前記試し書き領域は前記セクタのヘッダー部に設けられていることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項5】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、前記トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、前記セクタのヘッダー部に設けられた試し書き領域及び特定のトラックに設けられた加熱パワー学習領域に事前に試し書きが行われているパタン媒体と、
前記パタン媒体に記録磁界を印加する磁気記録ヘッド、光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱する加熱機構、及び再生ヘッドを搭載した熱アシスト磁気記録ヘッドと、
前記光源による加熱パワーを制御する手段と、
前記加熱パワー学習領域の記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記磁気記録ヘッドから記録磁界を印加して新たに試し書きを行い、前記加熱パワー学習領域に記録された事前の試し書きを前記再生ヘッドによって再生した再生信号と前記新たな試し書きを前記再生ヘッドによって再生した再生信号とが一致するように前記光源による加熱パワーを制御する手段と、
ユーザーデータを記録すべきセクタのヘッダーに事前に行われた試し書きを前記再生ヘッドによって再生した再生信号をもとに、当該セクタにユーザーデータを記録する際の前記光源の加熱パワーを決定する手段と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記光源の加熱パワーを決定する手段は、前記加熱パワー学習領域における学習動作においてLD駆動電流振幅の加算量を判定し、この加算量を用いて試し書き領域の再生信号から得られる最適記録パワーの判定に補正を加えることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項7】
請求項5記載の熱アシスト磁気記録装置において、前記試し書きは前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射して行われることを特徴とする熱アシスト磁気記録装置。
【請求項8】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、試し書き領域を有するパタン媒体に、記録磁界を印加すると共に光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録方法において、
前記試し書き領域の前記記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら記録磁界を印加して試し書きを行う工程と、
当該試し書き領域を再生して再生信号を得る工程と、
前記再生信号から、記録と未記録の境界パワーである記録の最小加熱パワーと、記録と隣接パタンの記録情報を消去する加熱パワーの境界パワーである記録の最大加熱パワーとを判定する工程と、
前記光源による加熱パワーを前記記録の最小加熱パワーと前記記録の最大加熱パワーの間のパワーに設定する工程と、
前記設定した加熱パワーのもとでユーザーデータを記録する工程と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項9】
請求項8記載の熱アシスト磁気記録方法において、
前記試し書きを行う工程では前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射し、
前記記録の最小加熱パワーと前記最大加熱パワーとを判定する工程では、前記再生信号に現れる前記パルス照射の周期と同じ周期の信号の開始タイミングと終了タイミングとを検出し、当該開始タイミングと終了タイミングに基づいて前記記録の最小加熱パワーと前記最大加熱パワーとを判定することを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項10】
請求項8記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記試し書きを行う工程では前記光源による加熱パワーを所定の割合で単調に増加させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射して試し書きを行うことを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項11】
相互に磁気的に分離した記録単位がトラックに沿って配列された磁気記録層を備え、前記トラックはそれぞれがヘッダー部とデータ記録領域を備える複数のセクタに分割され、前記セクタのヘッダー部に設けられた試し書き領域及び所定のトラックに設けられた加熱パワー学習領域に事前に試し書きが行われているパタン媒体に、記録磁界を印加すると共に光源からの出力光により前記パタン媒体の一部の領域を加熱して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録方法において、
前記加熱パワー学習領域に、当該試し書き領域の前記記録単位列に対して前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら記録磁界を印加して新たに試し書きを行う工程と、
前記加熱パワー学習領域に記録された事前の試し書きの再生信号と前記新たな試し書きの再生信号とが一致するように前記光源による加熱パワーを制御する工程と、
ユーザーデータを記録すべきセクタのヘッダーに事前に行われた試し書きを再生して再生信号を得る工程と、
前記再生信号をもとに当該セクタにユーザーデータを記録する際の前記光源による加熱パワーを決定する工程と、
前記光源による加熱パワーを前記決定された加熱パワーに設定する工程と、
前記設定した加熱パワーのもとでユーザーデータを記録する工程と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項12】
請求項11記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記光源による加熱パワーを決定する工程では前記加熱パワー学習領域における学習動作においてLD駆動電流振幅の加算量を判定し、この加算量を用いて試し書き領域の再生信号から得られる最適記録パワーの判定に補正を加えることを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項13】
請求項11記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記事前の試し書きは前記光源による加熱パワーを単調に変化させながら前記記録単位の配列周期の2倍以上の周期でパルス照射して行われたものであることを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【請求項14】
請求項11記載の熱アシスト磁気記録方法において、前記加熱パワー学習領域は内周トラックあるいは外周トラックに設けられていることを特徴とする熱アシスト磁気記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−20947(P2009−20947A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182094(P2007−182094)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]